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2. 連係入力が破綻したケースの分析と状態遷移図による入力プロセスの説明技能的に同等の入力者が, 同等の難易度の発話に対して連係入力を行っても, 非常にスムーズに入力できる場合と, 話の内容がごっそり抜ける 連係破綻が発生する場合がある. そのようなスムーズに入力できたケースと連係破綻が発生したケー

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Academic year: 2021

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パソコン要約筆記における連係入力方法の分析とQ方式の提案

Process analysis of coordinated entry in text interpreting and a proposal of Q-Method

栗田茂明

Shigeaki KURITA

†NPO 法人日本遠隔コミュニケーション支援協会 †Japan Association for Remote CART Services

E-mail: †shigeaki_kurita@ybb.ne.jp

1. は じ め に

厚 生 労 働 省 の 「 平 成 18 年身 体障害 児・ 者実 態調査 結 果 」[1]によ る と,聴 覚 障害 者(者: 343 千 人,児 :17.3 千 人)の 内,手話 通訳 を必 要とす る人 は 18.9%(約 65 千 人)であ るの に対し て,筆 談・要 約筆記(文字 通訳)を必要 と す る 人 は 30.2%(約 104 千人)と手話 通訳 を必 要とす る 人 よ り 筆 談 ・ 要 約 筆 記 を 必 要 と す る 人 が 多 い.一 方 , 自 治 体 が 行 う コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 支 援 事 業 の 登 録 者 数 は,平 成 20 年度 の調 査 [2]で は,手話 関係 は 19,498 人に 対 し て,要約筆 記関 係は 11,464 人と,必要者 に対 して,手 話 関 係 が 30%,要約 筆記 関係が 11%で,要約 筆記 による 支 援 者 が 不 足 し て い る. コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 支 援 事 業 従 事 者 の 養 成 は,平 成 18 年 度の 障害者 自立 支援 法施行 以 降,自 治 体 が 実 施 す る こ と に な っ て い る が ,養 成 は 充 分 と は 言 い 難 く 要 約 筆 記 従 事 者 が 不 足 し て い る[3]. 要 約 筆 記 は,大 別 し て ,パ ソ コ ン を 使 っ て 行 う 「 パ ソ コ ン 要 約 筆 記(パソ コン 文字 通訳)」と手 書き で行う「手 書 き 要 約 筆 記 」 が あ る. 手 書 き 要 約 筆 記 に お い て は,人が 1 分 間 に 話 す文 字 数 は 約 350~400 文字 に対 して,1 分間 に手 で書 くこと が で き る 文 字 数 は 約 70 文 字で ある ため,要 約筆 記者は 話 者 の 話 の 内 容 を 聞 き な が ら 逐 次 要 約 し て 書 き 留 め る こ と に な る.こ の た め ,話 の 内 容 を 全 て 伝 え る こ と が 困 難 な 場 合 が あ り, 聴 覚 障 害 者 の 不 満 と な っ て い る [4] [5]. パ ソ コ ン 要 約 筆 記 で は,1 分 間 に 入 力 で き る 文 字 数 が,1 人 入力 で 約 100~150 文 字,2 人連 係入力 で 約 160 ~240 文字 と手 書き 要約筆 記に 比較 して著 しく 増加 し, 話 の 内 容 を 全 て 文 字 化 す る こ と も 可 能 と な る.し か し , パ ソ コ ン 要 約 筆 記 は 充 分 に 普 及 し て お ら ず,そ の 理 由 の 一 つ は,技 術 を 習 得 し た パ ソ コ ン 要 約 筆 記 入 力 者 (以 下,入力 者と略 す)の 養成 が難し いこ とに ある.特に 2 人 連 係 入 力 は,約 14 年 の歴史 があ り,全国 で多 くの 入力者 が 情 報 保 障 と し て 行 っ て い る に も か か わ ら ず, 入 力 プ ロ セ ス の 解 明,入 力 者 に 必 要 な 技 能 の 特 定 ,養 成 方 法 な ど が 確 立 し て い る と は 言 え な い. 2 人連係 入力の 困難 さは,一 言で 言う と,「パ ートナ ー が ど こ ま で 入 力 す る か 分 か ら な い 」「 パ ー ト ナ ー が ど こ か ら 入 力 開 始 す る か 分 か ら な い 」 と い う 入 力 者 同 士 の 意 思 疎 通 の 困 難 さ に 起 因 し て い る と 言 わ れ て 来 た. こ の 困 難 さ の 解 決 方 法 と し て, ① 文 節 ご と の 交 代 な ど と 決 め る,② 合 図 す る ,③ モ ニ タ ー 部 で パ ー ト ナ ー の 入 力 状 況 を 監 視 す る な ど の 方 法 が 工 夫 さ れ て い る. こ れ ら の 意 思 疎 通 は,入 力 作 業 と 平 行 し て 行 わ れ る た め ,変 換 に 手 間 ど っ た り,入 力 ミ ス を 訂 正 し た り ,入 力 が 間 に 合 わ ず パ ニ ッ ク と な っ て い る 時 な ど は, 充 分 に 機 能 せ ず,連 係 入 力 が 困 難 と な る .入 力 ペ ア の 片 側 の 連 係 の 乱 れ は,入 力 文 の 重 複 や 欠 落 を 招 き ,そ れ を 修 復 す る 作 業 を 誘 発 さ せ,も う 1 人 の 入 力 に も 影 響 を 与 え ,そ れ が 負 の ル ー プ と な り,連 係状 態は破 綻し てし まう. こ の た め,2 人連 係入 力の練 習で は,「 意思 疎通 」を 重 視 し て,「モ ニター を良 く見 る」などの 指導 が行 われて 来 た.し か し,こ の 指 導だ け では ,2 人 連係 入 力 技能 の向 上 は 難 し く,入 力者 養成 の長年 の懸 案と なって いる. こ う し た 課 題 に 対 し て, 白 澤 他 [6]に よ り 連 係 入 力 の プ ロ セ ス 分 析 が 行 わ れ,入力作 業を 時系 列的に「 割り込 み 位 置 の 検 討 」「 文 頭 入 力 」「 本 文 入 力 」「 文 末 処 理 」の 4 つに分 けると とも に,それ らの 作業 の中に「割 り込み 位 置 の 決 定 」「 1 つ 前 の 文 末 と の 照 合 」「 相 手 の 文 頭 と の 照 合 」「 衝 突 回 避 」 と い う プ ロ セ ス の 存 在 を 指 摘 し, 「 割 り 込 み 位 置 の 決 定 」 に つ い て は 詳 細 フ ロ ー チ ャ ー ト が 提 示 さ れ て い る. 本 論 文 で は,パ ソコ ン要 約筆記 の 2 人連 係入 力に関 し て,連 係 入 力 が 破 綻 し た ケ ー ス の 分 析 か ら ,発 話 に 対 す る 入 力 の 追 従 状 態 に よ る 複 数 の 状 態(フ ェ ー ズ)と し て 連 係 入 力 を 捉 え,状 態 遷 移 図 を 作 成 し ,熟 練 者 入 力 チ ー ム が 連 係 破 綻 状 態 か ら 連 係 入 力 に 復 帰 す る プ ロ セ ス に つ い て 検 討 し,入力 者 に 必要 な 技能 を 考 察し た.ま た, 入 力 者 に 必 要 な 技 能 を 役 割 分 担 す る こ と で,連 係 入 力 の プ ロ セ ス を 単 純 化 し, 初 心 者 が 実 施 で き る 方 法 と し て Q(cue)方式 を 提 案し た.さ らに,パ ソコ ン 要 約筆 記の 経 験 が 全 く な い 手 書 き 要 約 筆 記 サ ー ク ル に 20 時間の 講 習 会 を 行 い Q 方 式を 導入 した 事例 を紹 介し,そ の知 見 か ら 2 人 連係入 力の 困難 さと 指導方 法に つい て考察 し た.

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2. 連 係 入 力 が 破 綻 し た ケ ー ス の 分 析 と 状 態 遷

移 図 に よ る入 力 プ ロセ ス の説 明

技 能 的 に 同 等 の 入 力 者 が, 同 等 の 難 易 度 の 発 話 に 対 し て 連 係 入 力 を 行 っ て も,非 常 に ス ム ー ズ に 入 力 で き る 場 合 と,「 話の内 容が ごっ そり抜 ける 」連 係破 綻が発 生 す る 場 合 が あ る. そ の よ う な ス ム ー ズ に 入 力 で き た ケ ー ス と 連 係 破 綻 が 発 生 し た ケ ー ス に つ い て, 入 力 記 録 の 分 析 や 入 力 者 へ の イ ン タ ビ ュ ー を 行 い,両 者 を 比 較 す る こ と で,連係 破綻 の原因 につ いて 分析し た. ま た 、熟 練 し た 入 力 チ ー ム の 入 力 を 観 察 し,初心者 入 力 チ ー ム と 入 力 プ ロ セ ス を 比 較 し た.

2.1 観 察 結 果

ス ム ー ズ に 入 力 で き た ケ ー ス と 連 係 破 綻 し た ケ ー ス の 比 較 調 査 で 以 下 の こ と が 分 か っ た.以 下 ,連 係 破 綻 な し をA チ ーム,連携破 綻発 生を B チ ーム と呼ぶ. ・A チ ームと B チー ムでは,入力 技能の 差が 根本 的な原 因 と は 思 わ れ な い. ・A チー ム,B チ ーム とも,パ ート ナー間 の意 思疎 通の方 法 や 技 能 に 差 は 無 か っ た. ・A チ ーム は,リー ダー 主導で,8 人モニ ター を使 った入 力 補 助 や フ ォ ロ ー 入 力 な ど を 行 っ た. ・B チ ーム では,入 力補 助や フォ ロー入 力を 行わ なかっ た. 一 方,熟 練 し た 入 力 者 チ ー ム を 観 察 し た 結 果 ,連 携 破 綻 を 以 下 の よ う な 段 階 で 対 処 し て い る よ う に 見 え た. 第 一 段 階:入 力 速 度 を 上 げ,入力 に手間 取っ てい る入力 者 の 担 当 文 も 入 力 し よ う と 努 力 す る. 第 二 段 階 : 要 約 度 を 上 げ, 入力 に 手 間 取 って い る 入力 者 の 担 当 文 の 内 容 も 入 力 し よ う と 努 力 す る. 第 三 段 階 : 休 憩 中 の 入 力 者 が, 一 時 的 に 入 力 を 開 始 す る.(フォ ローに 入り 一時 的に 3 人入 力と なる)

2.2 考 察

従 来,連 係 入 力 は ,入 力 負 荷 を 均 等 に 分 担 し た 状 態 を 想 定 し て い る.し かし ,片 方 の入 力 者 の入 力 ミス は,即座 に,も う 1 人 の 入 力 者 の 負 荷 の 増 加 を 招 き ,こ の 前 提 が 崩 れ る.入力ミ スか ら復 帰する 期間(ミ スタ ッチ などを 訂 正 し て い る 時 間 )は,復帰 を待 つ入力 者は 1人 入力で 対 処 す る 必 要 が あ る.つ ま り ,現 実 の 「 2 人 連 係 入 力 」 と は,正 常 時 の 「 均 等 負 荷 分 担 の 2 人 交 互 入 力 」 と ,連 係 破 綻 時 の 「 1 人 入 力 」 の 混 在 か ら 成 立 し て い る と 捉 え る の が 妥 当 と 考 え る.

2.2.1 2 人 連 係 入 力の状 態 遷移 図

こ の よ う な プ ロ セ ス は, フ ロ ー チ ャ ー ト で 表 現 す る と 複 雑 に な る た め,状態 遷移図 を作 成し た図 1. 図 1.で ,四 角 の 枠 は 入 力 状 態 (フ ェ ー ズ )を ,矢 印 は 遷 移 条 件 を 表 し て い る.2 人 連係 入 力は ,大 き くは ,連 係が う ま く 行 っ て い る 状 態 の ① 「 均 等 負 荷 分 担 の 2 人交互 入 力 」 フ ェ ー ズ と 連 係 破 綻 状 態 か ら 復 帰 し よ う と 努 力 す る ② 「 交 互 入 力 復 帰 」 フ ェ ー ズ の 2 つ か ら 成 っ て い る.こ の 遷 移 図 は ,入 力 者 の 入 力 技 能 が 正 常 に 発 揮 さ れ れ ば,発 話 に 対 し て 入 力 が 充 分 追 従 で き る こ と (① 「 均 等 負 荷 分 担 の 交 互 入 力 」フ ェ ー ズ が 出 現 す る)を 前提に 作 成 さ れ て い る.ま た ,簡 略 化 の た め に ② 「 交 互 入 力 復 帰 」 フ ェ ー ズ で 原 因 入 力 者 と 表 示 落 ち 防 止 入 力 者 が 異 な る フ ェ ー ズ を 同 時 に 取 る 表 現 と な っ て い る. 図1. 2人 連係 入力 の状態 遷移 図 以 下 に 各 フ ェ ー ズ を 簡 単 に 説 明 す る. ① 「 均 等 負 荷 分 担 の 2 人交 互入力 」フ ェー ズ こ の フ ェ ー ズ は,理 想 的 な 連 係 入 力 状 態 で あ る .2 人 の 入 力 者 の 入 力 負 荷 は,ほ ぼ 同 等 で ,時 間 的 に も ほ ぼ 等 間 隔 で 表 示 し て い る.熟 練 し た 入 力 ペ ア が ,ポ ン ポ ン と タ イ ミ ン グ 良 く 表 示 を 出 し て い る よ う な 状 態 で あ る. こ の 状 態 の 入 力 者 は, パ ー ト ナ ー が 入 力 す る 部 分 を 予 想 す る こ と が で き る と 言 わ れ て い る.つ ま り ,パ ー ト ナ ー の 入 力 過 程 を モ ニ タ ー を し て は い る が, 完 全 な 予 定 調 和 の 中 で 入 力 を 行 っ て い る.いわ ゆる 「阿吽 の呼 吸」 と い わ れ る 状 態 に あ る. こ の フ ェ ー ズ が 成 立 す る た め に は,発 話 に 対 し て 入 力 速 度 が 追 従 で き る こ と が 必 要 と な る.入 力 速 度 が 不 足 す る 場 合 は ,追 従 す る た め に 要 約 な ど が 行 わ れ る. ② 「 交 互 入 力 復 帰 」 フ ェ ー ズ 入 力 ミ ス な ど が 発 生 し,2 人 交互入 力が 続行 できな く な っ た 状 態 で あ る. 入 力 ミ ス を し た 入 力 者 ( 原 因 入 力 者 ) と 表 示 落 ち し な い よ う に 努 力 す る 入 力 者 ( 表 示 落 ち 防 止 入 力 者 )で 異 な る フ ェ ー ズ( ② a,② b)を取 る. ②a「入 力ミ ス対 応」フ ェー ズ 入 力 ミ ス を し た 原 因 入 力 者 が, そ れ に 対 応 し て い る 状 態 で あ る.入 力 ミス は,単 純な ミ ス タッ チ,入 力文 の重 複,内容 欠落な どい ろい ろある. 入 力 者 の 内 省 報 告 に よ る と 、 入 力 ミ ス に 対 処 し て い る 原 因 入 力 者 は,パ ー ト ナ ー の 入 力 状 況 の モ ニ タ ー を 放 棄 し( 連 係 入 力 か ら の 離 脱 ),自分の 入力 ミス のリカ バ リ に 集 中 し て 作 業 す る の が 一 般 的 で あ る.初 心 者 の 場 合 は,パニッ クに 陥る ことも ある. 対 応 に か か る 時 間 に よ っ て, フ ェ ー ズ が ② a-1, ② a-2

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と 遷 移 す る. ②a-1「 入力修 正」 フェ ーズ 原 因 入 力 者 が,入 力 ミ ス を 訂 正 し た り ,重 複 を 消 し た り,内 容 が 欠 落 し た 部 分 を 追 記 し た り す る .連 係 入 力 か ら 離 脱 し て い る た め,入 力 す る 担 当 文 は ,入 力 ミ ス が 発 生 す る 直 前 に 原 因 入 力 者 が 認 識 し て い た 部 分 と な る. ②a-2「 入力修 正チ ーム 支援」 フェ ーズ 入 力 ミ ス の 対 応 に 手 間 取 る と, 入 力 チ ー ム の 休 憩 者 は, 固 有 名 詞 や 数 字 な ど を 8 人 モ ニ タ ー に 表 示 し て 教 え る な ど 入 力 支 援 を 行 う.入 力 者 が パ ニ ッ ク に 陥 る な ど,入力 自 体が 不 可能 な 場 合は,休 憩 中の 入 力者 が,原因 入 力 者 の 担 当 文 を 入 力 し 表 示 に 流 す 場 合 も あ る. こ の よ う な 場 合,リ ーダ ーの 声によ る指 示(「 A さ ん消 して」 「B さ ん,流し て 」 な ど)が 入 力者 に 出 る こと が 観 察さ れ る 場 合 も あ る. ② b 「 表 示 落 ち 防 止 入 力 」 フ ェ ー ズ 原 因 入 力 者 が 入 力 ミ ス の リ カ バ リ を 行 っ て い る 間 は,連 係 入 力 か ら 離 脱 す る た め ,一 時 的 に 1 人 入 力 状 態 と な る.2 人 入 力 は ,発 話 速 度 に 入 力 速 度 が 間 に 合 わ な い た め に 選 択 し て い る 方 法 で あ る か ら, こ の フ ェ ー ズ の 1 人 入 力 は 原 理 的 に 入 力 が 発 話 に 追 従 で き な い.こ の た め,表 示落 ち 防止 入 力 者は,聞 き 溜め を 行い ,発 話に 対 し て 時 間 的 に 遅 れ が 拡 大 す る 状 況 で 入 力 を 継 続 し, 話 の 内 容 の 欠 落 の 防 止 に 努 力 し つ つ, 原 因 入 力 者 の 2 人 交 互 入 力 へ の 復 帰(入 力 ミ ス を 修 正 し て 表 示 に流 す ) を 待 つ. 原 因 入 力 者 が 入 力 を 表 示 に 流 す の が 最 初 で あ る た め, 表 示 落 ち 防 止 者 の 入 力 は 入 力 部 に 溜 め る こ と と な る. 復 帰 の 時 間 が 長 時 間 に な る に し た が い, 以 下 の 各 フ ェ ー ズ を 遷 移 す る. ②b-1「 入力 速度ア ップ 」フ ェーズ 入 力 速 度 を 上 げ, 原 因 入 力 者 の 担 当 文 も 入 力 す る 努 力 を す る.発話 が ゆっ く り だっ た り,「間 」 が多 い と,こ の フ ェ ー ズ で 対 処 で き る こ と も あ る.「 表示 落ち 防止入 力 」 フ ェ ー ズ の 初 期 状 態 で あ る. ②b-2「 要約 度アッ プ」 フェ ーズ 入 力 速 度 が 発 話 に 追 従 で き な い 場 合 は, 要 約 度 を 上 げ て 入 力 し,内 容が 落ち ないよ うに 努力 する. ②b-3「 表示 落ち防 止チ ーム 支援」 フェ ーズ 表 示 落 ち 防 止 入 力 者 の み で は, 発 話 に 追 従 で き な い と 判 断 さ れ た 場 合,休 憩 中 の 入 力 者 が ,一 時 的 に 入 力 に 参 加 す る.こ の 場 合 ,原 因 入 力 者 の 入 力 が 最 初 に 表 示 に 流 れ る 必 要 が あ る た め, 表 示 落 ち 防 止 入 力 者 と 3 人 目 の 入 力 者 の 2 人連 係入 力には 移行 しな い.つま り,原因 入 力 者 が 表 示 に 流 さ な い 場 合 は, 表 示 落 ち 防 止 者 の 入 力 部 に 入 力 文 が 溜 ま っ た 状 態 で 入 力 を 停 止 し,3 人目が 入 力 を 行 っ て い る 状 態 に な る.3 人目の 入力 が発 話に追 従 で き な い 場 合,理 論 的に は 4 人 目 の 入 力も 考 え られ る. ③ 「 表 示 落 ち な し 復 帰 放 棄 」 フ ェ ー ズ 原 因 入 力 者 の 入 力 ミ ス 対 応 を あ き ら め, 表 示 落 ち 防 止 者 の 入 力 を 表 示 に 流 し,交 互 入 力 を リ ス タ ー ト す る フ ェ ー ズ で あ る.この 場 合,原因 入 力 者の 担 当文 は,表示 落 ち す る こ と に な る.熟 練 し た 入 力 チ ー ム で は ,こ の フ ェ ー ズ に 移 行 す る こ と を 防 止 す る た め,② a-2「 入 力 修 正 チ ー ム 支 援 」フ ェ ー ズ に 入 り,原因入 力者 の担 当文を 休 憩 者 が 高 要 約 度 入 力 や 要 旨 入 力 な ど で 短 時 間 に 行 い,[c]交互 入力復 帰す るこ とが観 察さ れた.

2.2.2 熟 練 者 入 力 チームと初 心 者 入 力 チームの連

係 入 力の違い

2 人 連 係 入 力 は, 話 の 内 容 を あ ま り 要 約 し な く て も 発 話 に 入 力 が 追 従 で き る と 言 わ れ て い る.し か し ,そ れ が 可 能 な の は, 連 係 に よ り 交 互 入 力 が う ま く 行 っ て い る 場 合 で あ っ て,交 互 入 力 が 破 綻 し た 1 人 入 力 状 態 で は,原理 的 に発 話 に入 力 は 追従 で きな い.も ちろ ん,この 1 人 入 力 状 態 で も,聞 き 溜 や 要 約 度 を 上 げ る こ と で ,短 時 間 で あ れ ば, 表 示 落 ち せ ず に 交 互 入 力 に 復 帰 は 可 能 で あ る が,長 時 間 に な れ ば ,速 く 正 確 な キ ー 入 力 の 技 能 を 持 つ 熟 練 入 力 者 で も 対 処 は 難 し い. 熟 練 者 の 入 力 チ ー ム で は, 交 互 入 力 の 破 綻 の 頻 度 は 低 く,発 生し た 場 合は,②a-2「 入 力修 正 チー ム 支援 」フ ェ ー ズ や ②b-3「表示 落ち 防止 チーム 支援」フェ ーズへ の 移 行 が 観 察 さ れ た. 一 方,初 心 者 の 入 力 チ ー ム で は ,交 互 入 力 が 破 綻 し た 時 の 状 態 遷 移 は,②a-1「入 力修 正」フ ェーズ と② b-1「入 力 速 度 ア ッ プ 」フ ェ ー ズ や ②b-2「 要約 度ア ップ 」フェ ー ズ ま で で,②a-2 や②b-3 の チー ム 支援 のフ ェー ズへ の 移 行 は な く,③「 表示 落ち 無し復 帰放 棄」フェ ーズが 観 察 さ れ る こ と も あ っ た.ま た ,交 互 入 力 の 破 綻 の 原 因 は,「パ ート ナー間 の意 思疎 通」がうま くで きな いこと に よ る 重 複 や 欠 落 の リ カ バ リ 作 業 だ け で な く, 単 純 な 入 力 ミ ス も 多 い よ う に 見 え た. つ ま り,初心者 入力 チー ムは 、高い 頻度 で連 係破綻 し た ② 「 交 互 入 力 復 帰 」 フ ェ ー ズ に あ る に も か か わ ら ず そ こ で の 対 処 は 入 力 者 個 人 の 技 能 の み に 頼 っ て い る よ う に 見 え た.一 方,熟 練者 入 力チ ー ム は,チ ー ム 全体 で分 担 し て 対 処 し て い る よ う に 思 わ れ た.

3. Q 方 式 の 提 案

連 係 入 力 の 状 態 遷 移 図 に よ る 分 析 と 観 察 か ら,「パ ー ト ナ ー 間 の 意 思 疎 通 」と な ら ん で,「連 係破 綻時 のチー ム 対 応 」が 重 要 で あ る こ と 分 か っ た が,「パ ート ナー間 の 意 思 疎 通 」 さ え 困 難 な 初 心 者 入 力 チ ー ム が 「 連 係 破 綻 時 の チ ー ム 対 応 」 を 行 う こ と は さ ら に 難 し い と 思 わ れ る.そ こ で ,入 力 分 担 を 音 声 切 替 器 に よ り 明 示 的 に 指 示 し,①「均 等負荷 分担の 2 人交互 入力 」フ ェー ズと②

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b-3「 表示 落ち 防止チ ーム 支援」フェー ズを 入力 するQ (cue)方式 を考 案した. Q 方 式で は,入力 者は,連携入 力中 も連 係破綻 時も「 聞 こ え た 話 を 入 力 す る 」 と い う 同 一 の 入 力 作 業 に な り, 交 互 入 力 状 態 の 維 持 や 連 係 破 綻 か ら の 復 帰 は, 入 力 分 担 を 指 示 す る Q 係 の役 割と なる.この 役割 の分散 によ り,初 心 者 入 力 チ ー ム が 交 互 入 力 状 態 を 容 易 に 維 持 し , 破 綻 し た 場 合 は,容 易に 復帰す るこ とが 期待で きる.

3.1 Q(cue)方 式 の概 要

Q 方 式 は ,音 声 切 替 ス イ ッ チ を 使 っ て 入 力 す る 部 分 の 音 声 を 入 力 者 に 流 す こ と で, 入 力 分 担 を 明 示 的 に 指 示(cue) す る 複 数 人 入 力 の 方 法 で あ る . 音 声 切 替 器 で 入 力 指 示 を 出 す 担 当 を 「Q 係」 と呼 ぶ. Q 方式に は以 下の 2 つの 方法 が考 えられ る. ① 全 文Q 方 式: 話者 の生の 音声 を入 力者 に伝え る. ② 要 約Q 方 式:発話 を復唱 者が 聞き,要 約し た文 を入力 者 に 伝 え る.

3.1.1 全 文 Q(cue)方 式

会 場 音 声 な ど, 話 者 の 生 の 音 声 を 入 力 者 に 伝 え る 方 法 で あ る 図2. 図2. 全文 Q 方 式の 概要 図3. 全文 Q方 式の 音声関 係接 続図 以 下 に 手 順 の 概 要 を 示 す. ① 入 力 者 は,片 耳 にイ ヤ フ ォン を 装着 す る.会場 音 声 は, イ ヤ フ ォ ン 未 装 着 の 耳 で は 直 接 聞 こ え て い る. ② 会 場 音 声 を マ イ ク で 拾 い, 音 声 切 替 器 で 入 力 者 の イ ヤ フ ォ ン に 音 声 を 流 す よ う に 設 営 す る 図3. ③Q 係 は,話 者 の 発話 を 聞 き な が ら,内 容の 切 れ 目 で各 入 力 者 の イ ヤ フ ォ ン へ の 会 場 音 声 を 切 り 換 え, 入 力 合 図(cue)を 出す. ④ 会 場 音 声 を 聞 き な が ら 待 機 し て い た 入 力 者 は,イ ヤ フ ォ ン か ら 流 れ て 来 た 話 の 内 容 を 入 力 す る.前 の文 が 表 示 に 流 れ て い る こ と を 確 認 し て 入 力 文 を 表 示 に 流 す. ⑤Q 係は,入力 の状況 を 8 人モ ニタ ーで監 視し,入力が 間 に 合 わ な い 場 合 は,3 人目,4 人目に 入力 合図(cue)を出 し,内容 が落ち ない よう にする.

3.1.2 要 約 Q(cue)方 式

復 唱 者 が 要 約 し て 入 力 者 に 伝 え る 方 法 で あ る.話 者 の 話 を 聞 き 要 約 復 唱 し, 音 声 切 替 器 で 入 力 指 示 を 出 す 担 当 を 「 復 唱&Q 係」 と呼 ぶ図 4. 図4. 要約 Q 方 式の 概要 図5. 要約 Q 方 式の 音声 関係接 続図 以 下 に 手 順 の 概 要 を 示 す. ① 入 力 者 は,片 耳 にイ ヤ フ ォン を 装着 す る.会場 音 声 は, イ ヤ フ ォ ン 未 装 着 の 耳 で は 直 接 聞 こ え て い る. ② マ イ ク は 復 唱&Q 係の 音 声の みを 拾う よう にセ ッテ ィ ン グ し, 音 声 切 替 器 で 入 力 者 の イ ヤ フ ォ ン に 音 声 を 流 す よ う に 設 営 す る 図5. ③ 復 唱&Q 係 は,話 者 の発 話 を 聞 き,内 容を 要 約 復 唱 し, 内 容 の 切 れ 目 で 各 入 力 者 の イ ヤ フ ォ ン へ 音 声 を 切 り 換 え,入力 合図(cue)を出 す. ④ 会 場 音 声 を 聞 き な が ら 待 機 し て い た 入 力 者 は, イ ヤ フ ォ ン か ら 流 れ て 来 た 話 の 内 容 を 入 力 す る.前 の 文 が 表 示 に 流 れ て い る こ と を 確 認 し て 入 力 文 を 表 示 に 流 す. ⑤ 復 唱&Q 係は, 入力 の状 況を 8 人 モニタ ーで 監視 し, 入 力 が 間 に 合 わ な い 場 合 は,3 人 目 ,4 人 目 に 入 力 合 図 (cue)を出 し,内容 が落 ちな いよう にす る.

3.2 通 常 の 2 人 連 係 入力 と Q 方 式の入 力プロセス

の比較

図 6.は,通 常の 2人 連係 入力プ ロセ ス(白澤 他 [6]よ り 引 用)と Q 方式 の入力 プロ セス の比較 を示 して いる.Q 方 式 で は,入力 者の「パ ート ナー間 の意 思疎 通」プロセ ス は,入 力 文 を 表 示 に 流 す 時 に ,前 の 入 力 が 表 示 に 流 れ て い る こ と の 確 認 を 行 う こ と の み と な り, 単 純 な フ ロ ー と な っ て い る こ と が 分 か る. 図7. に Q 方式 の状 態遷 移図を 示す.Q 方 式は,Q 係 の 指 示 で 入 力 す る 人 が 決 ま る 方 法 の た め,「チー ム支 援」 フ ェ ー ズ が 存 在 し な い. 入 力 者 の 入 力 プ ロ セ ス は , ① 「 均 等 負 荷 分 担 の 2 人 交 互 入 力 」 フ ェ ー ズ と ② 「 交 互 入 力 復 帰 」 フ ェ ー ズ で 同 一 と な っ て い る.

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図 6. 通常 の2 人連 係入力 プロ セス と Q 方式の 入 力 プ ロ セ ス の 比 較 図7. Q 方 式の状 態遷 移図

3.3 Q 方 式 の改 良「前の入力が表 示に流 れている

か?」プロセスの省略

後 述 す る 導 入 事 例 に お い て 要 約Q 方式 を実 施した 時 , 表 示 に 入 力 文 の 順 番 が 入 れ 替 わ る 例 が 観 察 さ れ, 入 力 者 か ら 「 前 の 入 力 表 示 が 流 れ て い る か ? 」 の プ ロ セ ス を 実 施 す る こ と が 困 難 で あ る と の 意 見 が 出 た. 入 力 者 の 内 省 報 告 に よ る と, 以 下 の よ う な 困 難 さ が 指 摘 さ れ た. ・ 入 力 の 合 図 を 聞 く た め に イ ヤ フ ォ ン に 集 中 し て い る と 会 場 音 声 に 注 意 が 行 き 難 い. ・自 分 が 入 力 指 示 を 受 け て 初 め て 記 憶 す べ き「 前 の 話 」 が 判 明 し, 同 時 に 担 当 す る 話 を 聞 き 入 力 を 開 始 し な く て は い け な い た め,前の 話を記 憶す るこ とが困 難. ・ 記 憶 し て い る 会 場 音 声 の 文 と 要 約 さ れ て 表 示 さ れ た 文 が 完 全 に 同 一 で は な い た め 判 断 が 難 し い. こ の た め IPtalk の 「確 認修 正パレ ット 」の 機能を 用 い て,「 前の 入力表 示が 流れ いるか ?」のプ ロセ スを役 割 分 散 し た.

3.3.1 確 認 修 正 パレットの機 能

IPtalk の確 認修 正パ レット は,6 段 の入 力枠 を持つ ウ イ ン ド で,入 力 者 が 送 信 し た 文 を 受 信 し ,枠 に 一 時 的 に 保 存 し, 発 話 さ れ た 順 に 表 示 パ ソ コ ン に 送 信 す る こ と が で き る.確認 修正 パレ ットを 操作 する 担当を「 確認修 正 係 」 と 呼 ぶ.入力 枠で Enter を 押すと その 文が 表示パ ソ コ ン に 送 信 さ れ,下 の 枠 に あ る 文 が 上 に 移 動 す る .入 力 者 が 送 信 し た 文 は,空 白 の入 力 枠に 入 る.入力 枠 で は, 文 を 修 正 す る こ と も で き る.図 8.に、確 認修 正パ レット の 機 能 概 要 を 示 す. 確 認 修 正 パ レ ッ ト は,IPtalk の「訂 正」 ペー ジの「 確 認 修 正 パ レ ッ ト 」枠 に あ り,入力者 は「 入力 をパ レット に 送 信 す る 」チ ェ ッ ク を 入 れ,確認 修正 係は「確 認修正 パ レ ッ ト 表 示 」 ボ タ ン を 押 す こ と で 利 用 で き る. 図8. 確認 修正 パレ ットの 機能 概要

3.3.2 改 良 要 約 Q 方 式

復 唱 者 が 要 約 し て 入 力 者 に 伝 え る 方 法 は 要 約Q 方 式 と 同 じ で あ る が,入 力者 は「 前の 入力が 表示 に流 れてい る か ? 」を 確 認 せ ず 文 を 送 信 し,確認修 正係 が確 認修正 パ レ ッ ト を 操 作 し て 発 話 順 に 表 示 す る 方 法 で あ る 図9. 要 約 Q(cue)方 式の手 順に 対し て,④で「 前の 入力 が表示 に 流 れ て い る か ? 」が 省 略 さ れ,⑤の確 認修 正係 の手順 が 追 加 に な っ て い る. 音 声 関 係 の 接 続 は,図 -5 要約 Q 方 式の 音声 関係接 続 図 と 同 じ で あ る. 図9. 確認 修正係 を置 いた 要約 Q 方 式の 概要 以 下 に 手 順 の 概 要 を 示 す. ① 入 力 者 は,両 耳 に イ ヤ フ ォ ン を 装 着 す る .会 場 音 声 を 聞 く 必 要 は な い. ② マ イ ク は 復 唱&Q 係の 音 声の みを 拾う よう にセ ッテ ィ ン グ し, 音 声 切 替 器 で 入 力 者 の イ ヤ フ ォ ン に 音 声 を 流 す よ う に 設 営 す る 図5. ③ 復 唱&Q 係 は,話 者 の発 話 を 聞 き,内 容を 要 約 復 唱 し, 内 容 の 切 れ 目 で 各 入 力 者 の イ ヤ フ ォ ン へ の 音 声 を 切 り 換 え,入 力合図(cue)を 出す. ④ 入 力 者 は, イ ヤ フ ォ ン か ら 流 れ て 来 た 話 の 内 容 を 入 力 し,確 認修正 係に 送信 する. ⑤ 確 認 修 正 係 は,入 力文 を発話 順に 表示 に流す.

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⑥ 復 唱&Q 係は, 入力 の状 況を 8 人 モニタ ーを 監視 し, 入 力 が 間 に 合 わ な い 場 合 は,3 人 目 ,4 人 目 に 入 力 合 図 (cue)を出 し,内容 が落 ちな いよう にす る.

3.4 通 常 の 2 人 連 係 入力 と改 良 Q 方 式の入 力プロ

セスの比 較

図 10.は, 通常 の2 人連 係入力 プロ セス(白 澤他 [6]よ り 引 用)と改 良 Q 方式 の入 力プ ロセス の比 較を 示して い る. . 改 良 Q 方 式 で は 「 前 の 入 力 が 表 示 に 流 れ て い る か ? 」の 分 岐 が 無 く な り, 「 パー トナ ー間の 意思 疎通」 プ ロ セ ス が 無 い 非 常 に 単 純 な フ ロ ー と な っ て い る こ と が 分 か る. 図10. 通常 の2 人連 係入力 と改 良 Q 方 式の 入力プ ロ セ ス の 比 較

3.5 Q 方 式 の利 点と欠点の予 想

熟 練 し た 入 力 者 に,要約 Q 方 式,全 文 Q 方式 を練習 会 で 試 し て も ら い,利 点 と 欠 点 な ど の 感 想 を 報 告 し て も ら い,通 常 の パ ソ コ ン 要 約 筆 記 サ ー ク ル に 導 入 し た 場 合 の 利 点 と 欠 点 を 予 想 し た.熟 練 した 入 力 者 に は,Q 方 式 は,総 じて不 評で あっ た. ① 予 想 さ れ る 利 点 ・ 入 力 者 は キ ー ボ ー ド 入 力 が 速 く ・ 正 確 で あ れ ば,2 人 連 携 入 力 の パ ソ コ ン 要 約 筆 記 が で き る. ・要 約 Q 方 式で は、長 年活 躍し て来た 手書 き要 約筆記 の 熟 練 者 を パ ソ コ ン 要 約 筆 記 に 取 り 込 む こ と が で き る. ・ 初 心 者 を 入 力 チ ー ム に 組 み 込 む こ と が 容 易 な た め, 養 成 期 間 を 短 縮 し,現場 経験で の養 成が 可能と なる. ・方 法 が 標 準 化 さ れ る の で,地域 の異な る入 力者 でチー ム を 組 む こ と が 容 易 と な る. ② 予 想 さ れ る 欠 点 ・ 入 力 チ ー ム の 人 数 が 増 え る. ・ ア ン プ や 音 声 切 替 器 な ど, 新 し い 機 器 類 が 必 要 と な る. ・ 入 力 指 示 が い つ 来 る か 分 か ら な く 緊 張 を 解 く 暇 が な い た め 入 力 者 の 負 担 が 増 え る. ・ 入 力 者 が 「 聞 い た 事 を 正 確 に 入 力 す れ ば 良 い 」 と い う 役 割 に 反 発 を 感 じ る か も し れ な い.(特 に 熟 練 し た 入 力 者.「 私は 通訳者 であ り単 なる キーパ ンチ ャー ではな い 」) ・ 音 声 切 替 器 の 操 作 音 が う る さ い. ・「 復 唱&Q 係」と いう 新し い役 割の人 材を 養成 する必 要 が あ る. ・必 要 と な る 技 能 が,従 来の パソ コン要 約筆 記と は異な る た め, 地 域 で 長 年 パ ソ コ ン 要 約 筆 記 を 指 導 し て 来 た リ ー ダ ー 的 入 力 者 に 受 け 入 れ ら れ な い 可 能 性 が あ る.

4. Q 方 式 の 導 入 事 例

大 分 県 中 津 市 の 中 津 要 約 筆 記 「 ま な ざ し 」 か ら,20 時 間 の 講 習 会 で パ ソ コ ン 要 約 筆 記 を 導 入 し た い と い う 依 頼 を 筆 者 が 受 け た.「 ま な ざ し 」 は ,手 書 き の 要 約 筆 記 サ ー ク ル で パ ソ コ ン 要 約 筆 記 を 実 施 し た こ と は な く,1 名 の会 員のみ パソ コン 要約 筆記の 経験 があ るとの こ と で あ っ た. パ ソ コ ン 要 約 筆 記 に は,① 機 器 類 の 設 営 の 知 識 ,② 入 力 ソ フ ト の 知 識,③ 連 係 入 力 の 技 能 が 必 要 で あ る .こ の 内, ③ 連 係 入 力 の 技 能 に 関 し て パ ソ コ ン 要 約 筆 記 活 動 が 可 能 な レ ベ ル を 短 時 間 の 講 習 会 で 実 現 す る た め に は, 毎 分120 文 字以上 の入 力技 能を 持つ会 員が 数名 いるこ と が 前 提 と な る.しか し,事 前の ヒ ア リン グ では ,こ の前 提 を 満 た し て い な い と の こ と で あ っ た. こ の た め,入力 技能 に対 する要 求が 低く,「ま なざ し」 の 手 書 き 要 約 筆 記 者 の 技 能 を 活 か す こ と が で き, 短 時 間 で パ ソ コ ン 要 約 筆 記 を 導 入 で き る 可 能 性 が あ る 要 約 Q 方式(た だし 改良 前の方 式)で 講習 会を計 画し た.

4.1 講 習 会 の概要

講 習 会 は,1回 5 時間を 計 4 回,合計 20 時 間行っ た.2 回 目 と 3 回 目 の 講 習 会の 間 が 約 1 ヶ 月あ り,こ の 間に 週 1 回 の練習 会を 「ま なざし 」で 開催 した.当 初,確認 修 正 係 は 置 か な か っ た が,練習 会で「前 の入 力が 表示に 流 れ て い る か ? 」プ ロ セ ス の 困 難 さ が 指 摘 さ れ,第 3 回 目 の 講 習 会 か ら 確 認 修 正 係 を 置 く チ ー ム 編 成 に 変 更 し た. IPtalk の操作 に関 して は,PEPNet-Japan のパ ソコン ノ ー ト テ イ ク 導 入 支 援 ガ イ ド[7]を 抜 粋 し て テ キ ス ト に 使 用 し た. 講 習 会 の 概 要 は,以 下の 通りで ある. ・11 月 5 日(土)9:00~15:00(5 時間) 19 名 聴 覚 障 害 ・ パ ソ コ ン 要 約 筆 記 の 概 要 IPtalk を使 った 2 人連 係入 力の 方法の 実習 (モニ ター 部を 使う通 常の 連係 入力) 入 力 速 度 の 計 測 ・11 月 6 日(日) 9:00~15:00(5 時 間) 13 名

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機 器 類 の 設 営 方 法 の 実 習(ネット ワー ク,音響 関係) 要 約Q 方 式の 実習 模 擬 練 習 会 ( 練 習 会 の 方 法 の 習 得 ) ・(週 1 回の 「まな ざし 」練 習会) ・12 月 10 日(土)9:00~ 15:00(5 時 間) 16 名 機 器 類 の 設 営 方 法 の 復 習(ネット ワー ク,音響 関係) 要 約Q 方 式の 復習 確 認 修 正 係 の 実 習 改 良 要 約Q 方 式の 模擬現 場(会 長挨 拶,座談 会な ど) ・12 月 11 日(日)9:00~15:00(5 時間) 14 名 機 器 類 の 設 営 方 法 の 復 習(ネット ワー ク,音響 関係) 改 良 要 約Q 方 式の 模擬現 場(ク リス マス会)

4.2 入 力 速 度 の計 測 結果

表-1.に IPtalk の「 練習 リモ コン」機能 を使 って計 測 し た 11 月 5 日 の参 加者全 員の 入力 速度の 分布 を示 す. 通 常 の2 人 連係入 力に 必要 な毎分 120 字の 入力 技能に 達 し て い な い た め,関係 者と相 談し,要約 Q 方式 による パ ソ コ ン 要 約 筆 記 の 導 入 を 目 指 す こ と と し た. 表1.参加者 の入 力速 度の分 布

4.3 チーム編成 と機 器 構成 の概 要

第2 回と第 3 回の 間に 「ま なざし 」で 開催 した練 習 会 の 結 果 を フ ィ ー ド バ ッ ク し て,最 初の 2 回(11 月 5 日 6 日)と後 半の 2 回(12 月 10 日 11 日)では,チ ーム 編成が 異 な っ て い る.

4.3.1 11 月 5 日 6 日 のチーム編 成と機 器 構成

講 習 会 を 行 う 前 の 事 前 ヒ ア リ ン グ の 情 報 を 基 に 計 画 し た チ ー ム 編 成 と 機 器 構 成 を 図11.に 示す. 復 唱 係 と Q 係 は,それ ぞれ 1 名 づつが 担当 した.入 力 者 は,4 人を置 いた.IPtalk の 訂正 送信ウ ィン ドで 表示に 出 た 文 を 訂 正 す る 訂 正 係 を 1 名 置 い た.表示 機 の 設定 を 担 当 す る 表 示 機 係 を 置 い た.ネ ッ ト ワ ー ク は ,ル ー タ ー を 置 き,IP アド レス を自 動取 得で き るよ うに して,パ ソ コ ン の IP ア ドレ スの 設 定変 更 の手 間を 省 略す るな ど の 工 夫 を し た.

4.3.2 12 月 10 日 11 日 のチーム編 成と機 器構 成

練 習 会 で の 意 見 を フ ィ ー ド バ ッ ク し 変 更 し た 12 月 の チ ー ム 編 成 と 機 器 構 成 を 図12.に示 す. 11 月との変 更点 と理 由は以 下の 通り である. ・ 確 認 修 正 係 を 置 い た 練 習 会 で 表 示 順 が 入 れ 替 わ る こ と が あ り, 原 因 と し て 「 前 の 入 力 が 表 示 に 流 れ て い る か ? 」 プ ロ セ ス の 困 難 さ が 指 摘 さ れ た た め で あ る. ・ 復 唱 係 とQ 係 を1 人が担 当す るこ とと した. 復 唱 係 の 発 話 の 切 れ 目 とQ 係が 音声切 替器 を操 作する タ イ ミ ン グ を 合 わ せ る こ と が 難 し く, 1 人 で 行 う 方 が 容 易 で あ る と の 意 見 が 出 た た め で あ る.発 話 を 聞 き ,要 約 し,復 唱 する の と 同時 に,8 人 モ ニ ター を 監視 し,次の 入 力 者 に 音 声 を 切 り 替 え る 作 業 は,机 上 検 討 で は 難 易 度 が 高 い と 考 え た が,熟 練 し た 手 書 き 要 約 筆 記 者 に は , そ れ ほ ど 困 難 な 作 業 で は 無 い と い う 意 見 で あ っ た. ・ 前 ロ ー ル 係 を 置 い た. 前 ロ ー ル は, 大 会 な ど で は 非 常 に 有 用 で あ る こ と と,IPtalk の 使用経 験の ある 会員 が前ロ ール の操 作を知 っ て い た め,前 ロー ル係 を担当 して もら うこと とし た. ・ 訂 正 係,確 認 修 正 係 が ,復 唱 者 の 音 声 を ヘ ッ ド フ ォ ン (片耳タ イプ)で 聞く よう にし た. 会 場 で 発 話 さ れ た 文 と 復 唱 者 の 要 約 文 が 異 な る た め, 要 約 文 を 聞 か な い と 判 断 が 困 難 と の 意 見 が 出 た た め で あ る.ヘ ッドフ ォン アン プの出 力が 4 つあ った ため,前 ロ ー ル 係 も 含 め 全 員 が ヘ ッ ド フ ォ ン の 音 声 を 聞 け る よ う に し た. ・ ネ ッ ト ワ ー ク の 設 営 担 当 2 名,音 声関係 の設 営担当 2 名 を 決 め た. 図11. 11 月 5 日 6 日のチーム 編成 と機器 構成 図12. 12 月 10 日 11 日の チー ム編 成と機 器構 成 最 終 的 な チ ー ム 編 成 は,復唱 &Q 係 1 名,入 力者 4 名, 確 認 修 正 係 1 名,訂正 係1 名,前ロ ール 係 1 名 で合 計 8 名 で あ る. 表 示 機 を 入 れ る と パ ソ コ ン が 9 台 と な り IPtalk の上 限台 数に なる.こ の内,要 約 Q 方 式で 必須な

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の は, 復 唱&Q 係 1 名,確認 修正係 1 名と入 力者 であ る. 入 力 者 は,参 加 者 の 中 か ら 入 力 速 度 の 速 い 人 を 選 抜 し た.平 均は毎分 99 字(4 名 中,3名 のみ の平均.1 名は初 日 不 参 加 の た め 計 測 デ ー タ な し)であ っ た.他 に,設 営担 当 者 と し て 表 示 機 設 定 担 当 1 名,ネ ッ ト ワー ク 設 営担 当 2 名,音響 関係 設営 担当 2 名 を決 めた.最 終日 の設営 で は,準 備時間 は 30 分 程度で 完了 した.図 13.に 復唱 &Q 係 の 様 子 を 示 す. 図13. 復唱 &Q 係

4.4 結 果

図14. 最 終日の 模擬 現場(クリス マス 会)の 字幕例 4 日 間 20 時間 の講習 会を 終了 して,受 講生 からは,「 会 話 文 ら し い 表 記 が で き て い た 」「 会 話 の 速 度 に つ い て い け た 」 な ど の 感 想 が 聞 か れ た.筆 者 の 感 想 で は ,手 書 き 要 約 筆 記 の 熟 練 者 が 要 約 し た 文 で あ る た め, 読 み や す い 字 幕 で あ っ た.ま た ,ロ グ を 取 り 定 量 的 に 検 証 し た わ け で は な い が,表 示 文 字 数 も ,標 準 的 な パ ソ コ ン 要 約 筆 記 サ ー ク ル と 同 等 と 感 じ ら れ た.図 14.は,最終 日の模 擬 現 場(クリ スマス 会)の Q 方式 による リア ルタ イム入 力 の 字 幕 で あ る. Q 方 式 を 用 い る こ と で ,パ ソ コ ン 要 約 筆 記 の 経 験 が な く, 通 常の 2 人連 係入 力に必 要な 毎分 120 字 の入力 技 能 に 達 し て い な い 入 力 者 に 対 し て,20 時間 と い う短 時 間 の 講 習 会 で,充 分 実 用 に な る パ ソ コ ン 要 約 筆 記 を が 可 能 と な っ た と 考 え る.

4.5 考 察

高 度 な 技 能 が 必 要 と さ れ る 2 人 連 係 入 力 を, 比 較 的 容 易 な 「 そ の 場 で 判 断 し 完 結 す る 1 人 作 業 」 の 組 み 合 わ せ で 実 現 で き た. こ の こ と か ら,2 人 連 係 入 力 の 困 難 さ は ,そ れ ぞ れ の 作 業 自 体 に 高 度 な 技 能 を 要 求 し て い る の で は な く,「複 数 の 作 業 を 同 時 に 行 う こ と の 困 難 さ 」 や 「 パ ー ト ナ ー の 作 業 に 影 響 さ れ る こ と に よ る 困 難 さ 」 や 「 そ の 場 の 情 報 の み で 判 断 で き な い こ と に よ る 困 難 さ 」 な ど に 起 因 す る と 推 定 さ れ る. 複 数 の 作 業 を 同 時 に 行 う こ と の 困 難 さ は,従来 よ り「 聞 き なが ら,要 約し,入 力 する 」の 困 難 さ と し て 指 摘 さ れ て 来 た[8].また ,パー ト ナ ー の作 業 に 影 響 を 受 け る こ と に 起 因 す る 困 難 さ も 指 摘 さ れ て い る. し か し,「そ の場の 情報 のみ で判断 でき ない ことに よ る 困 難 さ 」 に つ い て は,従 来 ,明 確 に 指 摘 さ れ て は い な い よ う に 思 う.「前 の入 力が 表示に 流れ てい るか? 」が 困 難 で あ っ た 理 由 に つ い て 考 察 し た.

4.5.1 11 月 の Q 方 式の「前の入 力が表 示に流れて

いるか?」プロセス

図 15. は , 入 力 終 了 後 , 前 の 文 と の 整 合 を 取 る た め に 「 前 の 入 力 が 表 示 に 流 れ て い る か ? 」 プ ロ セ ス が 必 要 な 11 月時点 での入 力者 C の作 業を時 系列 的に 表して い る.図 中の「 前文 との 整合 」が「前の 入力 が表 示に流 れ て い る か ? 」プ ロ セ ス に 当 た り,「表 示部 の文末 」と 「 想 起 し た 文 2 」と を 比 較 す る こ と で,整合 性の チェッ ク を 行 う. こ の 文 2 の 想起は 、同 時に 行う作 業が 無い にもか か わ ら ず,要約筆 記の「聞 き溜 め」と呼ば れる 記憶 作業よ り 難 易 度 が 格 段 に 高 い.「 聞 き 溜 め 」 は ,「 聞 く → 要 約 → 筆 記 」 と い う よ う に,対象 とす る文(情報)が同一 の一 連 の 作 業 の 中 で 記 憶 で あ り,「その 場の 情報 」に よる作 業 と 言 え る. 一 方,「 前の入 力が 表示 に流 れてい るか ?」プロセ ス の た め に 必 要 な 記 憶 は, 直 前 の 入 力 作 業 と は 関 係 な い 記 憶 で あ り,「 その 場の 情報」 とは 言え ない. さ ら に,B 担 当の 入力が 間に 合わ ず,文 2 が 表示さ れ て い な い 場 合 は,「 表 示 文 の 文 末 」に は,A 担 当 の文 1 が 表 示 さ れ て い る.この 時,文 1 と 文 2 が似 た内 容であ り 要 約 さ れ て い る 場 合 な ど は,表 示 文 と文 2 と の 同一 性 を 文 2 の情 報(記憶)のみ で判断 する のは 困難 で,文 1 の 情 報(記憶)も 判断 に必 要と なる. 「 前 の 入 力 が 表 示 に 流 れ て い る か ? 」 の 判 断 に は,

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「 表 示 の 文 末 」 と 「 直 前 に 自 分 が 入 力 し た 文 」 と い う 「 そ の 場 の 情 報 」だ け で は 不 十 分 で,数 プロ セス 前の情 報 が 必 要 と な り,こ れが 困難さ の原 因と 考える. 図 15. Q 方 式 の 「 前 の 入 力 が 表 示 に 流 れ て い る か ? 」 プ ロ セ ス の 説 明

4.5.2 「均 等 負 荷 の交 互 入 力 」フェーズにおける熟

練 者の2人 連係 入 力「前 文との整合 」プロセス

図16.は,「均等 負荷 の交 互入力」フェ ーズ(理想的 な 2 人 入 力 状 態)にお ける 熟練 入力 者 B の「 前文 との整 合 」 プ ロ セ ス の 説 明 で あ る. 図 16.「 均等 負 荷 の 交 互 入 力」 フ ェ ー ズ に お ける 熟 練 者 の 2 人 連 係 入 力 「 前 文 と の 整 合 」 プ ロ セ ス の 説 明 プ ロ セ ス の 概 要 は 、 以 下 の 通 り で あ る. ① 入 力 者 B は,話を 聞き内 容理 解を 行いつ つ,モ ニター 部 で パ ー ト ナ ー の 入 力 を 観 察 し, 話 と 入 力 文 の 整 合 性 を チ ェ ッ ク し て い る. ② 入 力 開 始 は,「 均 等 負 荷 の 交 互 入 力 」 フ ェ ー ズ で は , 「 話 し の 切 れ 目 」と 入 力 者B が 判断す るこ とで 開始す る の が 一 般 的 で あ る.(B 入 力開始) ③ 入 力 を 開 始 し た 入 力 者 B は,自 分 の入 力作 業の 必要 性 か ら 単 語 な ど に 注 意 を 払 い, 入 力 待 機 中 よ り も よ り 逐 語 的 に 話 を 聞 き, 同 時 に モ ニ タ ー 部 や 表 示 部 で パ ー ト ナ ー の 「 入 力 終 了 ⇒ 表 示 」 を 監 視 す る. ④ 表 示 部 に 入 力 者 A の 文 1 が 表示 された 時,入 力者 B は,自 分 の 入 力 開 始 文 と の 整 合 性 を ,「 そ の 場 の 情 報 」 を 元 に 判 断 す る. 不 整 合 が あ る 場 合 は , 後 プ ロ セ ス の 「 前 文 と 整 合 」 で 修 正 す る た め に 「 修 正 す る 内 容 を 記 憶 」 し て お く.(そ の 場 で 自 分 の 入 力 の 文 頭 に 追 加 削 除 す る 場 合 も あ る) ⑤ 入 力 者 B は,文 2 を入力 しつ つ,モニ ター 部で 入力者 A の文 3 の入 力開 始を監 視す る. ⑥ 入 力 者 B は,入 力 者 A が 文 3 の入力 を開 始し たこと を モ ニ タ ー 部 で 確 認 す る と,「その 場の 情報 」を 元に自 分 が 入 力 す る 文 末 を 決 定 し 、そ の 後 は,予定 した 文の入 力 に 集 中 し,文 2 を 完成 させる.(B 入力 終了) ⑦「 前 文 と の 整 合 」で は,④ で記 憶した 訂正 文の 修正を 行 い 表 示 す る. こ の よ う に,熟 練者 にお いては, 「 その場 の情 報」を 元 に 判 断 し, 後 プ ロ セ ス で 必 要 な 情 報 の み を 効 率 よ く 記 憶 し て い る と 思 わ れ る. ま た,「 均等負 荷の 交互 入力 」フェ ーズ では「衝突 回 避 」は 後 続 す る 入 力 者 が「 前 文 と の 整 合 」で 行 い,先行 す る 入 力 者 は 「 後 続 文 と の 整 合 」 は 通 常 は 行 っ て い な い と 考 え る.

4.5.3 非 熟 練 者 の2人 連 係 入 力 「前 文 との整 合 」プ

ロセス

図17.は,2人 連係 入力 の非熟 練者 の「 前文と の整 合」 プ ロ セ ス の 説 明 で あ る. 非 熟 練 者 の 2 人 連 係 入 力 で は, 入 力 中 は 表 示 部 や モ ニ タ ー 部 を 見 る な ど の 余 裕 が 無 い.こ の た め ,熟 練 者 の よ う に,パ ー ト ナ ー が 表 示 に 流 し た 文 を 確 認 し ,整 合 性 の チ ェ ッ ク を「 そ の 場 で 判 断 」す る こ と が で き な い. 非 熟 練 者 は,図 17.の よう に,「 前文と の整 合」プロ セス で, 文 1 の 想起が 必要 とな るが,困 難で あるた め,整 合を取 ら ず に 表 示 に 流 す こ と と な り, 文 の 重 複 や 欠 落 が 発 生 し 易 い. 図 17. 非熟 練 者 の 2 人 連 係入 力 「 前 文 と の 整合 」 プ ロ セ ス の 説 明

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4.5.4 「 均 等 負 荷 の 交 互 入 力 」 フ ェ ー ズ に お ける

「前 文との整 合」に関する指 導方 法の提 案

従 来 よ り2 人連係 入力 の指 導とし て「 パー トナー 間 の 意 思 疎 通 」 の た め に 「 モ ニ タ ー 部 を 良 く 見 る 」 と い う こ と が 行 わ れ て 来 た が,単に「見 る」とい う指 導では 不 足 で,上記の よう に「 その 場の情 報で 判断 する 」こと を 指 導 す る 必 要 が あ る. 具 体 的 に は,以 下の よう な指導 が有 効と 思われ る. ・「 均 等 負 荷 の 交 互 入 力 」フ ェ ー ズ に お い て は 、入 力 開 始 後 も モ ニ タ ー 部 や 表 示 部 で パ ー ト ナ ー が 表 示 に 流 す 瞬 間 を 監 視 し, 流 れ た 時 に 自 分 の 入 力 作 業 を 一 時 的 に 停 止 し,「自 分の文 頭」と「 前の 文末と の照 合」を行 い, 「 訂 正 の 有 無 を 判 断 し,訂正方 法を 記憶 する 」を 意識的 に 行 う. こ れ を 実 施 す る た め に は, 入 力 と 同 時 に こ の よ う な 判 断 作 業 を 行 な う こ と が で き る 入 力 技 能 が 前 提 と な る こ と は 言 う ま で も な い.

5. ま と め

・IPtalk を使 用した 2 人連係 入力 は約 14 年 の歴 史があ り, 全 国 で 多 く の 入 力 者 が 情 報 保 障 と し て 行 っ て い る に も か か わ ら ず,入 力 プ ロ セ ス の 解 明 ,入 力 者 に 必 要 な 技 能 の 特 定, 養 成 方 法 な ど が 確 立 し て い る と は 言 え な い. ・連 係 破 綻 が 発 生 し た ケ ー ス を 調 査 し,状態 遷移 図を用 い て 入 力 プ ロ セ ス を 説 明 し,2 人連 係入 力には「 均等負 荷 分 担 の 2 人 交 互 入 力 」フ ェ ー ズ と 連 係 破 綻 状 態 の「 交 互 入 力 復 帰 」 フ ェ ー ズ の2 つの 異なる 入力 状態 がある こ と を 指 摘 し た.さ ら に ,連 係 破 綻 か ら の 復 帰 プ ロ セ ス で は 「 連 係 破 綻 時 の チ ー ム 対 応 」 が 重 要 で あ る こ と を 指 摘 し た. ・ 初 心 者 入 力 チ ー ム が 交 互 入 力 状 態 を 容 易 に 維 持 し, 破 綻 し た 場 合 は,容 易 に 復 帰 で き る 方 法 と し て ,Q (cue) 方 式 を 考 案 し た. ・ パ ソ コ ン 要 約 筆 記 の 経 験 が な く 入 力 技 能 も 基 準 に 達 し て い な い 入 力 者 に 対 し て 20 時間 とい う短 時間 の Q 方 式 の 講 習 会 を 実 施 し, 実 用 的 な パ ソ コ ン 要 約 筆 記 を 実 施 す る レ ベ ル に 養 成 で き た 事 例 を 紹 介 し た. ・Q 方 式の 導入 事例 から,非 熟練 者の 2 人連 係入 力の困 難 さ に は,「 その場 の情 報の みで 判断で きな いこ とによ る 困 難 さ 」 が あ る こ と を 指 摘 し, 「 均 等 負荷 の 交 互入 力 」 フ ェ ー ズ に お け る 「 前 文 と の 整 合 」 プ ロ セ ス の 指 導 方 法 を 提 案 し た.

謝 辞

Q 方式 の導 入事例 につ いて 掲載を 許可 いた だいた 中 津 要 約 筆 記 「 ま な ざ し 」 の み な さ ん に 感 謝 し ま す.

[1]厚生労 働省,平成 18 年身 体障 害児・者実 態調 査結 果, http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/shintai/06/dl/01_ 0001.pdf, 2008. [2]厚生 労働省, “「 障害 者総 合福祉 法」(仮 称)の 論点 に 関 す る 現 在 の 制 度 の 状 況 等 に つ い て - N o . 2 - ,” 障 が い 者 制 度 改 革 推 進 会 議 総 合 福 祉 部 会 ( 第 6 回 ), http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/sougoufukusi /2010/08/dl/0831-1_10-1.pdf,2010. [3]平成 21 年度障 害者 自立 支援 調査研 究プ ロジ ェクト (厚 生 労 働 省 助 成 事 業 )要約 筆 記 者 養 成 等 調 査 検 討 委 員 会,要 約 筆 記 者 養 成 等 調 査 検 討 事 業 報 告 書 ,社 会 福 祉 法 人 聴 力 障 害 者 情 報 文 化 セ ン タ ー,2010. [4]パ ソ コ ン 文 字 通 訳 シ ン ポ ジ ウ ム 実 行 委 員 会 , 第 1 回 パ ソ コ ン 文 字 通 訳 シ ン ポ ジ ウ ム 『 話 の 全 て を 知 る 権 利 』, http://www.nck.or.jp/katsudou/PCspeech2text_s ympo1101 09.htm,2011. [5]パ ソ コ ン 文 字 通 訳 シ ン ポ ジ ウ ム 実 行 委 員 会 , 第 2 回 パ ソ コ ン 文 字 通 訳 シ ン ポ ジ ウ ム 『 私 が 望 む パ ソ コ ン 文 字 通 訳 』, http://www.nck.or.jp/shiryou/120108sympo/120108sympo _shiryou.htm,2012. [6]白 澤 麻 弓 ,三 好 茂 樹 ,石 野 麻 衣 子 ,吉 川 あ ゆ み ,松 崎 丈 , 中 野 聡 子,岡田 孝 和,太田 晴 康,“パ ソ コン ノ ー トテ イク に お け る 連 係 入 力 の プ ロ セ ス 分 析 ,”日 本 特 殊 教 育 学 会 第48 回大会 発表 論文 集,pp239,2010. [7]白 澤 麻 弓,磯 田 添 子,パ ソコ ン ノ ー ト テ イク 導 入 支援 ガ イ ド:や っ て み よ う ! パ ソ コ ン ノ ー ト テ イ ク,日本聴 覚 障 害 者 学 生 高 等 教 育 支 援 ネ ッ ト ワ ー ク (PEPNet-Japan),2008. [8]栗田 茂明, パソコ ン要 約筆 記の 特性 と厚 生労働 省カ リ キ ュ ラ ム に 準 拠 し た 養 成 講 座 の 検 討 初 心 者 に わ か り や す い 講 習 を め ざ し て 「IPtalk9J シ リー ズの 提案」, http://www.geocities.jp/shigeaki_kurita/largo/largo_report 2006_9j.pdf,2006.

図 6.    通常 の2 人連 係入力 プロ セス と Q 方式の 入 力 プ ロ セ ス の 比 較 図 7.    Q 方 式の状 態遷 移図   3.3    Q 方 式 の改 良「前の入力が表 示に流 れている か?」プロセスの省略 後 述 す る 導 入 事 例 に お い て 要 約 Q 方式 を実 施した 時 , 表 示 に 入 力 文 の 順 番 が 入 れ 替 わ る 例 が 観 察 さ れ, 入 力 者 か ら 「 前 の 入 力 表 示 が 流 れ て い る か ? 」 の プ ロ

参照

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