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DEIM Forum 2015 D6-1

乗換案内での経路選択のためのファセットナビゲーション

清水 祐弥

小林 亜樹

††

工学院大学工学部情報通信工学科

〒 163–8677 東京都新宿区西新宿 1-24-2

††

工学院大学工学部情報通信工学科准教授 〒 163–8677 東京都新宿区西新宿 1-24-2

E-mail:

c511056@ns.kogakuin.ac.jp,

††

aki@cc.kogakuin.ac.jp

あらまし

日本における多くの乗換案内は,発着駅,日時,料金順等条件を入力とし,結果経路を複数個のみ提示す

るため,単純な要求にしか対応できず,時間と料金のバランス,路線,列車,乗換時間など複数の利用者要求を満た

す経路を検索することが困難である.本研究で提案するインタフェースでは,候補経路の一部を変更することによる

経路変更についてもその概要を示すことで,利用者が経路変更を比較検討することを容易とし,利用者に現地の経路

知識がない場合においても所望経路の発見を容易とする.画面上において候補経路から変更経路への直観的動作によ

る変更操作も提供する.これにより,利用者がより快適に所望経路に辿りつくことを目的とする.

キーワード

乗換案内,インタフェース,乗り換え案内

1.

は じ め に

東京や大阪といった日本の都市部において,鉄道を始めとす る公共交通機関は移動手段として必要不可欠なものとなってい るが,都心部の網の目とも言える複雑な路線網はスムーズな移 動の障害となっている.この状況下で,公共交通の乗り継ぎを ナビゲートする“ 乗換案内 ”と称されるサービスが利用されて いる.かつてはウェブページ上で乗換経路を調べるのみのサー ビスであったが,近年では携帯電話のアプリケーションとして 提供されたり,駅周辺の施設の案内等をしたりと高機能化,多 サービス化が進んでいる.株式会社駅探の提供しているスマー トフォン向けサイト“ 駅探★乗換案内 ”[1]の無料ユーザ数は 232万人(注 1)となり,都市部における複雑な交通網を効率よく 利用する上で必要不可欠なサービスとして定着している. 既存の乗換案内は,発着駅,日時,また速達順や料金順といっ た評価軸を入力とし,検索結果の表示画面では制約から典型的 な状況要求に応える経路の候補を数経路のみ提示する.しかし この表示形式は,システム側で用意された評価軸に基づく単純 な要求にしか対応できず,時間と料金のバランス,路線,列車, 乗換時間など複数評価軸による利用者要求を満たす経路を,経 路を比較することにより発見するのが困難である. 乗換案内サービスの改善方針としては,経路探索アルゴリズ ムにおける改善と,表示インタフェース面での改善が挙げられ る.前者は,1999年の近畿日本鉄道による特急座席予約シス テムASKAにおける経路探索アルゴリズム[2] [3]や,駅探の 乗換案内システムにおける経路探索アルゴリズム[4] [5]などの 論文が存在し,実際の乗換案内で使用されている.一方で,表 示インタフェース面での改善についての研究はほとんど存在せ ず,十分な検討がなされていない. そこで本研究では表示インタフェース面での改善をその方針 とし,候補経路の一部を変更することによる経路変更と,候補 (注1):2011/12 現在 経路から変更経路への直観的動作による変更操作の提供を目的 とする.候補経路の一部を変更する経路変更では,選択肢の分 岐箇所を利用者が選択することで検索条件を絞り込むファセッ トナビゲーションの要素を取り入れる.変更後の経路の概要を 示すことで,システム側の評価軸にとらわれることなく利用者 が経路の比較を行い,所望経路を発見することを容易とする. また,経路変更操作では,検索結果画面上において視覚での直 観的動作による経路変更を提供することにより,利用者がより 快適に所望経路に辿りつくことを容易とする.

2.

乗 換 案 内

2. 1 一般的なサービス 既存の乗換案内のインタフェース画面は,一般に検索条件を 入力する画面(以下,検索画面)と検索結果を表示する画面 (以下,結果画面)に分けられる.検索画面において入力され た条件を元に検索を行い,結果を結果画面に表示する. 乗換案内を利用する上で,利用者は所望する経路を持ってい る.これは利用者によって所望経路が全て説明出来る程度まで 認識されている場合と,始点や終点,出発時刻といった検索行 為に最低限必要な条件は説明できるが,それより細かな条件 (例えば,早い列車を利用するか,など)は言葉では説明でき ない状態にあり,検索行為を行った結果を比較して決定したい, という場合がある.後者をここでは“ 潜在的な所望経路 ”と呼 ぶ.いずれの場合においても,利用者はこの所望経路について 自身が持ち合わせている情報をもとに,検索画面にて検索条件 の入力を行う. 図 1 駅探の検索画面

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図 2 駅探の結果画面 株式会社駅探の提供する大手乗換案内サイト“ 駅探 ”[6]を 例に説明する.まず駅探の検索画面を図1に示す.まず利用者 は乗車駅,下車駅,経由駅をテキストボックスに直接入力また は路線一覧から入力する.利用する日付,時刻をプルダウンメ ニューから,またこの時刻が出発時刻なのか到着時刻なのかを チェックボックスで選択する.全ての条件を入力し終えたら,検 索ボタンを押すことで検索を行う. このほかの検索条件を指定したい場合は,検索ボタン横の 「検索条件を指定」ボタンをクリックすることにより追加の検 索条件を指定するダイアログボックスを表示する.ここでは, 乗換時間の長さ,経由駅で乗り換えるか否か,飛行機や新幹線 といった特別に料金の必要な公共交通を使用するか否か,座席 料金に指定席料金を用いるか否か,航空会社を指定するか,結 果の評価軸(時間順,料金順,乗換回数順)などを指定できる. いずれもチェックボックスまたはプルダウンメニューによる指 定方式となっている. この入力を元にして乗換案内は経路の探索を行い,表示のた めの処理をした上で結果画面が画面上に表示される.結果画面 では,表示される経路の一覧から利用者が所望経路を発見する. 駅探の結果画面を図2に示す.結果画面は全経路の情報を簡 略化して表示する上部の領域と,選択した1経路の詳細を表示 する下部の領域に分けられる.上部では時間順,料金順といっ た表示順を選択するタブが並び,その下に条件に基づいた経路 候補の集合を並べて表示している.各経路の発着時刻と表示順 序に基づいたアイコン,所要時間,料金,乗換数,利用する交 通機関が表示され,比較できるようになっている. 下部では上部のタブで選択した評価軸に基づいて表示された 各経路の詳細を縦方向の表形式で表示している.まずタブで経 路を選択し,その下に所要時間や料金,乗換回数,乗換時間や 乗車時間を併せて表示する.タブを用いて第二候補,第三候補 と切り替えることが可能である.同経路で前後時間帯を検索し たい場合,経路情報上部の前出発,後出発ボタンを用いること により,出発地点での前の列車,後の列車に乗車した場合の乗 換案内を表示する.また,経路表示欄には経由駅の賃貸情報や ホテル情報,グルメ等が検索できる外部リンクボタンが併せて 配置されている. 2014年12月18日現在,インターネット上で運用されてい るウェブブラウザベースの主な乗換案内の機能一覧を表1に示 す.いずれも基本的な機能な同一であるが,検索要素にどのよ うなものを選べるか,検索結果の経路一覧をどのように羅列し て表示するか,などに差がある. 2. 2 既存の乗換案内の問題点 これまで述べてきたような既存の乗換案内インタフェースは, 比較的単純な要求へは機能しているが,全ての需要に対応でき るインタフェースとは言えない. 次のような問題がある.ひとつは,表示画面上の制約による 表示経路数の制限という問題である.既存システムでは,各経 路を各評価軸において上位から順に表形式で表示している.こ の表示形式は,提案する経路数に比例してページの長さあるい はタブの数が増加してしまう.例えば経路数が100件を超える ような量であった場合,経路を比較する際に経路数に比例して 縦方向のスクロールが増加し,利用者の負担となってしまう. このため,各次元に対して上位1∼数件程度しか提示すること ができない.所望経路が各評価軸において表示数の上限より下 位順位である場合,所望経路は表示されず,利用者は所望経路 に辿りつくことができない.また上限数を増やした場合,所望 経路と同時に比較対象となる所望でない経路が上限数だけ表示 されるため,利用者が経路比較により所望経路を発見すること が難しくなってしまう. 次に,再検索操作における手戻りの増加の問題である.乗換 案内では利用者が所望経路の条件をシステムに合った形で入力 することが難しいため,所望経路が表示されない際には検索画 面に戻り,条件を変更した上で検索をし直すことになる.この 操作を“ 再検索 ”と呼ぶ.再検索操作では,これによる結果画 面が表示されるまで,再検索後の提案経路の概要を見ることが できない.再検索を行った結果が利用者の所望経路からさらに 離れてしまった際には,再び以前の条件で検索を行った検索結 果画面に戻らなければならない.これは利用者にとって負担で あり,この操作を繰り返すことにより,手戻りをさらに増やし てしまう.場合によっては,所望経路に辿りつく前に利用者が 検索行為を諦め,終了してしまう. これらの問題を解決するための直観的手法は,利用者により 利用する経路を直接変更することである.この操作を“ 経路編 集 ”と呼ぶ。一般に既存の乗換案内では,結果画面において提 案された経路を基準に経路編集を行うことはできない.前後発 着ボタンや列車選択ボタンが実装されているものもあるが,行 える操作は前後の列車への変更や発着時刻の変更といった比較 的単純なもので,利用する路線等の変更には再検索操作が必要 である. 2. 3 既 存 研 究 このような現行のインタフェースを改善するため,さまざま なインタフェースが提案あるいは実装されている. 駅探では,2経路を比較したい利用者のために“ 比較モード ” (図3)が実装されている.これは異なる表示順に並べた経路の 候補を左右に並べて表示するという機能で,例えば左画面に時 間順,右画面に料金順を選択すると,左右にそれぞれの表示順 に並べられた経路の候補集合をタブ形式で表示する.これによ り,異なる条件の2経路を並べて表示することが可能となり, 今までのような条件の異なる複数経路の比較をする際の手戻り

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表 1 既存乗換案内の機能 サービス名 発着地入力 オプション 結果画面 結果画面で 経路変更 Yahoo! 直接入力 経由駅,日時,運賃種別,交通手段,表示順序, 表形式(上→下) 不可 乗換案内 [7] 席指定,歩く速度 google 直接入力,地図 日時 マップまたは 不可 乗換案内 [8] 二次元平面図 NAVITIME 直接入力 経由駅,日時,表示順序,徒歩速度,使用路線 表形式(上→下) 前後列車, 乗換案内 [9] 列車指定 ジョルダン 直接入力,路線図, 経由駅,日時,運賃,条件 表形式(上→下) 発着時刻 乗換案内 [10] 列車名など 駅探 直接入力 日時,経由駅,乗換時間,経由駅乗換,交通手段, 表形式(上→下) 前後列車 座席指定,航空会社指定,表示順序,表示件数 並列表示可能 図 3 駅探の“ 比較モード ” 操作を行わずとも比較を可能としている.なお,片方の経路を 選択して戻るボタンを押すことにより,通常の乗換案内の結果 画面に戻り細かい検索をすることも可能である. また,同じ株式会社駅探の提供するiPhoneアプリ“ 駅探 乗換案内 ”では,経路の選択を支援する機能として“ タイム ビュー ”と“ おまかせアドバイス ”(図4)を提供している.“ タ イムビュー ”は縦に時間軸を取った平面上に複数の経路を表示 し,各経路の乗車時間の長短や乗換回数を比較しやすくした表 示方式であり,「カレンダーのように視覚的に比較」を可能とし ている.“ おまかせアドバイス ”は有料サービスにて提供され ている機能で,乗換を急げば早く目的地に到着する場合や,経 路の途中で1本遅い電車に乗りついでも次に同じ電車へ接続す る場合などに,「乗換を急げばこの時間に着けますよ」という案 内により,結果画面上には表示されていない経路を新たに提案 する機能である.この機能は利用者が入力した条件には合致し ないが類似しているという経路を候補として提案することにな る.これは,特にプルダウンメニューにおける選択では利用者 が何気なくデフォルトの状態で検索を行うことがあり,検索条 件には合わないが利用者が潜在的に所望していると思われる経 路を発見できるという特徴がある. JR西日本が提供するネット予約サービスe5489 [11]におけ る検索機能では,2015年1月29日からの新サービスとして予 約申込時の乗車列車検索画面において乗継列車を変更できるイ ンタフェースが実装された[12].これは,列車を乗り継ぐ駅で 買い物をしたいなどの理由でスムーズに乗継できる列車でない 列車を指定したい場合,結果画面上で「この列車を変更」ボタ ンを選択することにより(図5)乗継列車の一覧表(図6)から 図 4 駅探の“ タイムビュー ”と“ おまかせアドバイス ” 乗車列車を指定できるインタフェースである.これにより,経 路上で乗車する列車を任意に変更できるようになり,また評価 軸にとらわれない乗車列車を指定することが可能となった.し かし,表示方法は既存手法と同様な表形式であり,表示画面上 の制約がある他,経路を任意に変更する操作は提供していない. 乗換案内の結果画面をより見やすくするような研究として, 牛窪らによるダイヤグラム式乗換案内[13]が提案されている. これは,鉄道事業者が列車の運行計画を立てる際に使用するダ イヤグラムと呼ばれる記法をベースとした表示手法である.縦 軸を時間,横軸を距離とした二次元平面上に,一次関数に似た 方式で各経路を同一平面上に表示(図7)することで,多様な要 求に対し所望経路を探索しやすくする手法である.これにより, 多数の経路を省略することなく一画面上に表示することができ, 所望経路を確実に表示することが可能となる.しかし牛窪らは, 表示方式が一次関数の連続という特殊な方式であるが故に利用 者の慣れによって利便性が大きく変動し,本質的に学習の難し い要素が存在する可能性があり,また表示する経路数が増える と一平面上に線が乱立する表示となってしまうため,見易さを 考慮した上での経路表示数には限界がある,と述べている.

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図 5 e5489 の結果画面 図 6 e5489 における乗継列車変更画面 提案された経路を比較,検討しやすくする研究として,近藤 らによる乗換案内結果の集約化インターフェース[14]がある. これは縦軸,横軸,色といった要素に各経路の情報を載せた二 次元空間図と,各経路を簡潔にまとめた簡易リスト(図8)を 縦に並べて表示することで,複数要素を考慮した複数経路の比 較を容易にするという手法である.先に述べた駅探の“ タイム ビュー ”に似ているが,こちらは時間軸を横軸に取っているほ か,経路表示の色や図形といった要素にも情報を載せることに より一画面上に表示可能な情報の数を増やしている.しかし近 藤らは,習熟度による利便性の変動がある他,各軸における最 小値からの最大値の差が増加すると,要素の数値が集中してい る箇所が圧縮されてしまい表示出来る経路数が大きく減ってし まう,あるいは著しく見づらくなってしまう点が問題である, と述べている. これらの提案手法はいずれも結果を表示,比較する場面での 研究であり,既に所望経路が表示対象となっていることが前提 となっているため,経路編集には対応できない.

3.

提 案 手 法

3. 1 方 針 本研究では,別経路選択という直感的操作を導入し,変更経 路の動的概要表示と視覚直観的動作による結果画面上での経路 変更を提供することにより,利用者の要求に最も合致すると思 図 7 ダイヤグラム式乗換案内 図 8 集約化インターフェースの簡易リスト われる経路を提示するインタフェースを提案する.この際手戻 り軽減のため,利用者欲求の選択支援を経路の概要表示による ファセットナビゲーション形式により提供する. このインタフェースは既存のような検索画面における経路変 更ではなく,結果として表示された画面上で経路を直接変更す る操作としているため,検索画面における表示方法および操作 は既存の乗換案内と変わりないものとする. 3. 2 操 作 既存手法と提案手法のインタフェース上における操作の流れ を図9に示す.既存の乗換案内は,検索を実行し,比較した結 果所望経路を発見できなかった場合,再検索操作を行っていた. 既存手法は,検索結果を比較しやすくし経路の決定を容易とす るものであった.提案手法では,所望経路を発見できなかった 際に検索画面へ戻らず,編集画面を用い画面上で直接操作する ことにより経路を変更,決定する. まず始終着点と入力した条件を元に,提案された経路の中で 比較的所望経路に近いと思われる経路(以下,基準経路)を決 定する.これをこれから行う経路変更の基準となる経路として 経路編集を行う画面(以下,編集画面)上に表示する.編集画

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図 9 既存手法と提案手法の操作の流れ 面上では,基準経路中の乗換可能な駅を乗換ノードとして選択 可能にする.この乗換ノードをクリック操作で選択することで, 選択した駅を乗換駅として分岐する別の経路(以下,変更経路) を基準経路の下に表示する. 編集画面ではファセット検索[15]の考え方による,ファセッ トナビゲーションの要素を用いる.ファセット検索とは,システ ム側で予め用意した要素を利用者が選択していくことにより対 象を絞り込む検索手法であり,XMLデータの効率的な検索手 法としてファセットを導入した天笠ら[16]によるインタフェー スや,数あるモバイルアプリケーションから目的のものを探し 出す片岡ら[17]による検索手法など,効率的な検索手法の一つ として用いられている.また,通販サイトのAmazon [18]にお けるカテゴリや商品の条件から欲しい商品を絞り込む操作や, 飲食店レビューサイトの食べログ[19]における料理の分類や予 算から店を絞り込む操作などに導入され,注目を集めている. 本研究においてファセットナビゲーションの要素とは,乗換 ノードを選択した時点で,変更経路における目的地の到着時分 や金額といった概要を表示することを指す.これにより,経路 に関する知識がない利用者においても経路比較を行うことが可 能となる. 利用者は編集画面上で経路比較を行い,変更経路を決定する. 決定後はこれを基準経路とし,所望経路に辿り着くまで引き続 き同様の比較操作を行う. 利用者がより所望経路に辿りつきやすくするため,編集画面 上における基準経路から変更経路への変更操作は既存のボタン 式やタブ式でのクリック動作ではなく,各乗換ノードや希望路 線への直接的なクリックやドラッグ&ドロップによる直観的動 作により提供する. 既存インタフェースでは,表示画面上の制約から表示する経 路数を増やした際にスクロール量が増え利用者にとって比較の 際に負担となっているという問題があった.これに対し提案手 法では,編集画面上での動的な並列表示とすることで,表示す る経路数を動的に変更可能とし,見易さを確保した上で基準経 路と複数の変更経路を同一画面上で比較することが可能となる. また,既存手法では再検索において再検索後まで経路の概要 が表示されないため,所望経路から離れてしまった際は再検索 前の画面へ戻る操作が必要であった.これに対し提案手法では, 変更する乗換ノードをクリック操作で選択した時点で変更した 経路の概要を表示するため,所望経路から離れてしまう際は別 の乗換ノードでの変更を検討すればよく,手戻り操作が軽減さ れ,利用者が所望経路に辿りつくまでの手数を減らしている. これにより,乗換案内との対話的動作によるスムーズな所望 経路へのアプローチを実現し,利用者は既存手法よりも快適か つ直観的に所望経路に辿りつくことが可能となる.また,利用 者に経路知識がある場合に限らず,現地の経路知識のない利用 者においても,経路比較を通じて潜在的な所望経路の発見が可 能である.

4.

試作システム

4. 1 システム構成 提案手法の方針に基づき試作システムの制作を行った.一般 に乗換案内は,経路条件の入力に対してサーバ側で経路探索処 理を行い,この結果に応じてインタフェースによる表示を行う. しかし本研究では経路探索処理に関する部分は対象としていな いため,本システムでは予め表示されている経路を変更する機 能に限って制作を行っている. 図10に本システムの画面を示す.上部には既存のインタ フェースと同様な経路候補集合の一覧と,このうち選択した1 経路の詳細情報が表示される.下部には編集画面が表示され, ここで経路の編集を行う. 本システムの編集画面を用いた経路変更を図11に示す.基 準経路は編集画面上部に表示されており,駅を示す位置には操 作可能なノードが配置されている.各ノードは経路の始点と終 点を黒の矩形で,乗換駅を青の矩形で表示しており,その他の 途中駅は灰の円で表示している.利用者がで別の経路を使用し たいと考えた場合,経路を変更したい駅ノードをクリックする ことにより(図11(1)),基準経路の路線を使わないような変更 経路を基準経路の下部に表示する(図11(2)).利用者はこれを 基準経路と比較し,基準経路より変更経路の方が自身の所望す る経路に近いと考えた場合,その経路をクリックすることで, これを基準経路とした経路を表示する(図11(3)). このインタフェースでは,これまでの乗換案内のようにある 要素について長けているという条件で経路を表示しないため, 様々な条件入力により縛られることのない操作が可能である. 例えば,新宿から高崎へ向かう際に大宮の乗換時間を利用し, 駅構内の商業施設で買い物をしようと考えると,利用者は始点 “ 新宿 ”,経由地“ 大宮 ”,目的地“ 高崎 ”と入力する.しかし, この経路で既存システムで用いられている3次元の評価軸を用 いた場合,最速経路では大宮からJR上越新幹線を利用する経 路を,乗換回数最少経路では新宿から高崎へ直通する特急列車 を使用する経路を推薦される.また,最安経路では新宿から赤 羽までJR埼京線を,赤羽から高崎までJR高崎線を利用する 経路を推薦する.これは所望経路と値段は同一だが,一般に乗 換案内では同一値段の経路においてはより所要時間の短い経路, ここでは新宿駅をより遅く出発することができる経路を推薦す るためである.よって,所望経路は既存のシステムでは表示で きない経路である.このような経路においても,提案手法では

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図 10 試作システムの画面 図 11 編集画面での経路変更 駅ノードから乗車する経路を複数比較し選択することで,検索 画面への手戻りなしに経路の表示が可能である. 4. 2 利 用 手 順 ここでは例として,4.1節で用いた利用者が始点“ 新宿 ”,経 由地“ 大宮 ”,目的地“ 高崎 ”と入力した場合を想定し,新宿 から大宮までJR埼京線を利用し,大宮駅での乗換時に駅構内 の商業施設を利用,大宮から高崎までJR高崎線を利用したい 場合のシステムの利用の流れを示す. これを,既存の乗換案内で同様の操作を行う場合, (1) 入力に基づいた経路が,最速,最安,乗換回数の3評 価軸に基づき表形式でそれぞれ表示される.ここでは4.1節の 通り,ここでは各軸に最も合致する経路が推薦されているが, 最速経路は大宮駅から東北新幹線利用,最安経路は赤羽駅から 高崎線を利用する経路,乗換回数最少経路は新宿駅から特急利 用であり,所望経路は各軸いずれにも存在していない. (2) 利用者は各軸をタブで切り替えながら,経路を比較 する. (3) 所望経路はこのなかに存在しないので,再検索をする ため検索画面へ戻る. (4) 検索条件の“ 有料列車を利用しない ”のチェックボッ クスからチェックを外す. (5) 再検索を行う.検索結果が表示される. (6) 結果画面に,再検索前に経路3で表示されていた経路 が最速かつ最安かつ乗換回数の少ない経路として表示される. (7) 所望経路が表示されなかったので,検索画面へ戻る. (8) 検索条件の経由駅に“ 大宮 ”を追加する. (9) 再検索を行う.検索結果が表示される. (10) 経路3は既に大宮を経由しており検索結果に影響を与 えなかったため,結果画面では前回の再検索と同様の画面が表 示される. (11) 所望経路が表示されなかったので,検索画面へ戻る. (12) 検索条件の経由駅“ 大宮 ”において“ 必ず乗換を行う ” のチェックボックスにチェックを入れる. (13) 再検索を行う.結果画面が表示される. (14) 乗換回数最少経路として所望経路が表示される. (15) 利用者が所望の経路を発見し,検索終了. という流れとなり,再検索操作を繰り返し所望経路を発見す る.これを試作システムを用い検索を行う. (1) 入力に基づいた経路が表示される(図12).ここでは 各軸に最も合致する経路が推薦されているが,経路1は新宿駅 から特急利用,経路2は大宮駅から東北新幹線利用,経路3は 赤羽駅から高崎線を利用する経路であり,所望経路はこのなか に存在しない. (2) 基準経路を選択する.ここでは大宮までの経路が所望 経路と同様な経路2を選択する.選択した経路の詳細と共に, 編集画面に基準経路が表示される(図13). (3) 大宮駅から先の経路を変更するため,大宮駅を示す青 色の駅ノードをクリックする. (4) 大宮駅で乗り換え,基準経路で使用した路線を使わず に高崎駅へ至る変更経路の概要が下に表示される(図14). (5) 利用者は並んで表示された各経路の概要を比較する. (6) 大宮駅からJR高崎線を利用する変更経路を発見し, この変更経路をクリックする.

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図 12 試作システムの利用 (1) 図 13 試作システムの利用 (2) (7) 基準経路がJR高崎線経由に変更される(図15). (8) 利用者が所望の経路を発見し,検索終了. という流れとなる.既存手法と比較すると,既存手法では再 検索後に提案される経路集合が結果画面が表示されるまで分か らないため,再検索操作を繰り返しているが,提案手法では変 更経路を選択する時点で経路の概要が表示されており,再検索 操作による手戻りが発生していない.また,既存手法では利用 する経路の変更に経由駅のテキストボックスに駅名を直接入力 しているが,提案手法では編集画面に表示されている駅ノード へのクリック操作という視覚での直観的操作となっているため, 利用者は直観的に所望経路に辿りつくことができる. 経路比較の観点では,既存手法はそれぞれの評価軸をタブで 切り替えながら比較していたのに対し,提案手法では評価軸に とらわれることなく全ての提案された経路を同一画面上に表示 しており,経路比較を容易としている.また静的な表形式では なく選択した駅ノード毎に動的に表示する方式のため,既存手 法の問題点であった表示領域による経路数の制限にとらわれる ことなく,所望経路を確実に表示することが可能である. 同様に,例えば始点“ 小田原 ”,経由地“ 品川 ”,目的地“ 籠 原 ”と入力した場合で,小田原から品川までJR東海道線,品 川駅で友人と合流し,品川から上野までJR京浜東北線,上野 から籠原までJR高崎線を利用したい場合を考える.既存の乗 換案内では,最安経路および乗換回数最少経路では小田原から 湘南新宿ライン高崎線直通列車を利用する経路が,最速経路で は小田原からJR東海道新幹線を利用する経路が表示されるた め,所望経路は表示されない.ここで,編集画面において小田 原駅の乗換ノードを選択し,JR東海道線を利用する経路を選 択,再び表示された編集画面において品川駅の乗換ノードを選 択し,JR京浜東北線を選択,同様に上野駅でJR高崎線を選 択することにより,利用者が所望経路を発見することが可能で ある.

5.

お わ り に

本研究では,現行の乗換案内で表示できないような複数の評 価軸による利用者要求を満たす経路を提示するため,ファセッ トナビゲーションの要素を用いた検索結果画面上での変更経路 案の動的概要表示と,視覚での直観的動作による経路変更を行 うインタフェースを提案し,試作システムの制作を行った.今 後は既存システムと比較し,提案手法を用いたシステムを導入 することによる所望経路へ到達するまでの操作における有用性

(8)

図 14 試作システムの利用 (3) 図 15 試作システムの利用 (4) の検証を行っていく. 文 献 [1] 駅探★乗換案内, 駅探 2014, http://transfer.ekitan.com/, 2014-12-24. [2] 奥村滋樹, 三好徳平, 「列車乗継案内システム」, 近鉄技報, vol.29, pp.17-24, 1998. [3] 奥村滋樹, 三好徳平, 「列車乗継案内システム (第 2 報)」, 近鉄 技報, vol.30, pp.16-20, 1999. [4] 唐崎幸弘, 半田恵一, 鈴木孝弘, 「乗り換え案内サービスエンジ ン」, 東芝レビュー, 56(12), pp.6-9, 2001-12. [5] 半田恵一, 田中俊明, 「乗換え案内サービスにおける経路探索手 法」, 信学論, D-1, Vol.J88-D-1, No.10, pp.1525-1533, 2005. [6] 駅探 - 乗り換え案内・時刻表・運行情報, 駅探 2014, http://ekitan.com/, 2014-12-18. [7] Yahoo!路線情報, yahoo, http://transit.loco.yahoo.co.jp/ ,2014-12-18. [8] Google マップ, google, https://www.google.co.jp/maps/dir/ , 2014-12-18. [9] 乗換案内 - NAVITIME, NAVITIME JAPAN,

http://www.navitime.co.jp/transfer/ , 2014-12-18. [10] 乗換案内|ジョルダン, ジョルダン株式会社, http://www.jorudan.co.jp/norikae/ ,2014-12-18. [11] e5489 列車 予約・空席照会, 西日本旅客鉄道株式会社, https://e5489.jr-odekake.net/e5489/cspc/CBTopMenuPC, 2015-02-09. [12] 「e5489 が 2 つの新機能でもっと便利に!」, 西日本旅客鉄道株式会 社, https://www.jr-odekake.net/goyoyaku/e5489/oshirase/ pdf/oshirase service150207.pdf, 2015-01-26. [13] 牛窪智大, 小林亜樹, 「ユーザにおける多様な選択を支援するダ イヤグラム式乗換案内」, 信総大 2010 年 情報・システム (1), D-4-11, p.33, 2010-03-02. [14] 近藤聡士, 小林亜樹, 「乗り換え案内結果の集約化インターフェー スの提案」, 情処大 2012(1), 3P-4, pp.709-710, 2012-03-06. [15] Yee, P., Swearingen, K., Li, K. and Hearst, M., Faceted

Metadata for Image Serch and Browsing, Proc. ACM CHI 2003, pp.401-408, 2003. [16] 天笠俊之, 石井理修, 吉江友照, 建部修見, 佐藤三久, 「XML デー タを対象としたファセット検索インタフェースの生成」, 情処会 報 DD, 2008(53), pp.7-13, 2008-05-30. [17] 片岡泰之, 渡部智樹, 田中清, 東野豪, 「モバイルアプリのファ セット検索を実現するインデクシング手法」, 情処会報 UBI, 2013-UBI-37(5), pp.1-6, 2013-03-07.

[18] Amazon.co.jp, Amazon.com, Inc., http://www.amazon.co.jp , 2014-02-09. [19] 食べログ, Kakaku.com, Inc.,

図 2 駅探の結果画面 株式会社駅探の提供する大手乗換案内サイト“ 駅探 ” [6] を 例に説明する.まず駅探の検索画面を図 1 に示す.まず利用者 は乗車駅,下車駅,経由駅をテキストボックスに直接入力また は路線一覧から入力する.利用する日付,時刻をプルダウンメ ニューから,またこの時刻が出発時刻なのか到着時刻なのかを チェックボックスで選択する.全ての条件を入力し終えたら,検 索ボタンを押すことで検索を行う. このほかの検索条件を指定したい場合は,検索ボタン横の 「検索条件を指定」ボタンをクリックする
表 1 既存乗換案内の機能 サービス名 発着地入力 オプション 結果画面 結果画面で 経路変更 Yahoo! 直接入力 経由駅,日時,運賃種別,交通手段,表示順序, 表形式(上→下) 不可 乗換案内 [7] 席指定,歩く速度 google 直接入力,地図 日時 マップまたは 不可 乗換案内 [8] 二次元平面図 NAVITIME 直接入力 経由駅,日時,表示順序,徒歩速度,使用路線 表形式(上→下) 前後列車, 乗換案内 [9] 列車指定 ジョルダン 直接入力,路線図, 経由駅,日時,運賃,条件 表形式(上
図 5 e5489 の結果画面 図 6 e5489 における乗継列車変更画面 提案された経路を比較,検討しやすくする研究として,近藤 らによる乗換案内結果の集約化インターフェース [14] がある. これは縦軸,横軸,色といった要素に各経路の情報を載せた二 次元空間図と,各経路を簡潔にまとめた簡易リスト ( 図 8) を 縦に並べて表示することで,複数要素を考慮した複数経路の比 較を容易にするという手法である.先に述べた駅探の“ タイム ビュー ”に似ているが,こちらは時間軸を横軸に取っているほ か,経路表
図 9 既存手法と提案手法の操作の流れ 面上では,基準経路中の乗換可能な駅を乗換ノードとして選択 可能にする.この乗換ノードをクリック操作で選択することで, 選択した駅を乗換駅として分岐する別の経路(以下,変更経路) を基準経路の下に表示する. 編集画面ではファセット検索 [15] の考え方による,ファセッ トナビゲーションの要素を用いる.ファセット検索とは,システ ム側で予め用意した要素を利用者が選択していくことにより対 象を絞り込む検索手法であり, XML データの効率的な検索手 法としてファセットを導
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