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0 大学病院集中治療部における事故報告書を用いた注射事故の分析

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0 大学病院集中治療部における事故報告書 を用 いた 注射事故の分析

尾 形 美 代 子 , 佐 々 木 克 枝 , 足 利 久 美 子 , 森 本 紗 代 , 渡 追 久 美1)

要 約

本研究 は,集中治療部 (以下ICU とす る)で発 生 しやすい注射事故の現状 を把握 し, 今後の改善点 を検討す ることを目的 とした。0大学病院のICU において1998年か ら2001 年に捉揖された看護師の事故報告書 を基礎資料 とし,その うち注射薬 に関す る事故報告103 件 を分析対象 とした。報告書の内容か ら,①事故発生時の背景,②事故が患者へ与えた影 響,③薬剤投与過程の どの段 階における事故発生であったかについて分類,集計 を行 った。

また,事故が患者へ与えた影響 と,事故発生時の背景お よび薬剤投与過程 との関連性 につ いて分析 した。その結果,総事故件数の うち注射事故が56.3%を占め,月別では, 5月, 4月, 2月の順 に多 く,経験年数別では,ICU経験年数4年未満の看護師で事故発生率 が高かった。患者影響 レベルの高い事故は,人事異動月にICU経験年数4年未満で多かっ た。エ ラーマ ップでは,看護婦 (時に医師)の実施,薬剤の投与量,指示速度に関す るエ

ラーが集中 して多かった。

キーワー ド :集中治療部,注射事故,事故報告書

緒 言

集中治療部では,取 り扱 う機器や薬剤の種類が数 多 く,看護師には様 々な知識 と技術 を必要 とされる。

特 に与薬業務 においては,複雑 な要因が重 な り,時 には生命 に危険を及ぼす ような事故を発生 しやすい 状況にある。注射 は,医師の指示か ら実施 まで,複 数の人間 と,薬剤 ・注射器 ・ライ ンや輸液ポ ンプな ど多種 の物品,指示の情報伝達や業務 におけるルー ル,業務体制や勤務体制,注射業務環境 など, きわ めて複雑 な業務 システムの うえで行 われている1)。 特 にICU の与薬業務 は,時間の指定や持続注入す る薬剤が多 く,使用す る薬剤 は同 じであって も患者 により,投与濃度,投与量,投与速度,投与方法な どが異 なる場合が多 い。 この ようにICU での 与薬 業務は,複雑 な要因が重 な り,時には生命に危険を 及ぼす ような事故が発生 しやすい状況にあるといえ

このためICU で は,事故防止対 策の一環 として, 事故発生時には,事故の種類や患者‑の影響度に関 わらず,全ての事故を事故報告書 に記載 している。

岡山大学医学部附属病院集中治療部 1)岡山大学医学部保健学科

これには,事故発生の状況 と対処方法,患者 の状況 や今後の再発 防止策の記載 を求めている。 また,辛 故報告書以外 に もICU が独 自に作 成 している情報 共有 ノー トを活用 し,ス タッフ間で事故の情報 を共 有 している。 しか しなが ら,報告書 に記載 された詳 細 な内容の共有化や,蓄積 した情報の分析 に基づ く 事故傾 向の把握,お よび問題点の明確化 には至 って お らず,報告書での個人 レベルの反省が組織 として の事故防止対策に十分活か しきれていないのが現状 である。川村 は,事故か ら何 を学 び,何 を改善す る かが重要である2)と述べ ているように, まず事故の 現状 を把握す ることが必要であると考える。 また, 原野 は,注射行動の どこにエ ラーがあるのか, また なぜ防げたか を明 らかにす ると,その職場の危険要 因を知 ることがで きる3)と報告 している。そ こで, 今回事故報告書の中か ら,事故発生時に重大事故に つ なが りやす い注射事故 に焦点 をあて, ICU で発 生 しやすい注射事故の現状 を把握 し,今後の改善点 を検討することを目的 として本研究 に取 り離 んだ。

‑ 47‑

(2)

尾形 美代子他

方 法

1.調査期間および対象

1998年4月〜2001年 3月 まで の過 去3年 間 の

I C

U の事故報告書 を基礎資料 として,事故件数の 把握お よびその内容 を分類 し,事故内容で最 も多か った注射の事故報告書103件 を対象 とした。

2.分析方法

1)事故の起 きた背景 として①月,②曜 日,③病態,

④ 勤 務帯 ,⑤ 事 故 の 当事者 とな った看 護 師 の

I C

U経験年数の項 目別 に事故件数 を集計 した。

経験年数別では,事故件数 を

I C

U経験年数4年 未満 と4年以上の2群に分け, t検定 を行 った。

なお,以下に述べ る2)お よび3)の分類 にあた り,研究者間で解釈のばらつ きが生 じた場合は, 合意が得 られるまで討議 した。

2)個 々の事故が患者に及ぼした影響 を把握するた めに,亀田メディカルセ ンター看護部による患者 影響 レベル4) (以下,影響 レベル とする) を用 い て事故内容 を7段階の影響 レベルに分類 した。影 響 レベルは,実害のなかった レベル 0に次 いで, レベルハイリスクを挿入 し,影響の強 さに従って レベルを1か ら5の段階に分けた。 この影響 レベ ルを資料に示す。

3)注射の事故の発生要因を分析するために,川村 治子与薬エ ラー発生要因マ ップ :注射編5) (以下, エラーマ ップとする) を用いて事故内容 を分類 し た。

エ ラーマ ップは縦軸 に 「注射業務プロセス」 と して,A :医師の指示,ち :看護婦の指示受け, 申し送 り

, C:

看護婦の注射準備,D :看護婦 (時 に医師)の実施 (施注),E :実施 (施注) され

る患者,F:看護婦の観察,その他の観察の6プ ロセスを,横軸 に 「エラー内容」 として, 1:対 象 (患者)に関するエラー, 2 :指示薬剤名 (内 容) に関するエラー, 3:指示薬剤の量に関する エラー, 4 :投与方法 日時順番 に関するエ ラー, 5:投与速度に関するエ ラー, 6:その他 に関す るエ ラー,の6分類 を想定 した合計36カラムか ら なる分類基準であ り,事故の主たる発生要因が業 務の どこで生 じたかによって36カラムのいずれか

に分類 されるものである。

4)事故の起 きた背景の集計結果をもとに,事故の 起 きた背景 と影響 レベルの関連性,分類 したエ

ラーマ ップと影響 レベルの関連性 を分析 した。

結 果

1.過去3年間の全体の傾向

過去3年間の

I C

U入室者総数 は,のベ11,597人 であ り,事故報告書数は183件であった。その うち 注射の事故は103件 (56.3%),機械操作 (輸液ポン プ,シリンジポンプ以外)に関する事故20件(10.9%), 内服薬の事故13件 (7.1%),その他47件 (25.7%) であった。

2.事故の起 きた背景別の事故件数

月別の事故件数は,多い順 に5月が17件, 4月が 16件,2月が14件であった。月別の事故件数 を表1 に示す。曜 日別では,月曜12件,火曜8件,水曜15 件,木曜18件,金曜19件,土曜15件, 日曜16件 と大 差がなかった。病態別では,年間

I C

U入室者数の 多い病態が事故件数 も多 く,消化器系39件,心臓血 管系24件,脳神経系11件の順であった。勤務帯別 に みると, 日勤53件,深夜勤33件,準夜勤17件であ り,

資料 患者影響 レベルの分類4)

レベレ0 間違 ったことが発生 したが,患者 には実施 され なかった○

レベル ハ イ リス

レベル0の状況だが,実施 されれ ば「レベル4‑5」が予測 され るo レベノ1 事故 によ り患者‑の実害はなかつたが,何 らかの影響 を与 えた可能性 が

あるo

レベレ2 事故 によ り患者 のバイ タルサイ ンに変化 が生 じ,検査 の必要性 が出た場口′ レベル3 事故のための治療の必要性が生 じた場合o

レベ′レ4 事故による障害が一生続 く場合o

1 月別の注射事故件数

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 ll 12 合計

(3)

日勤が全体の51.4%を占めていた。

経験年数別 にみた事故件数は

,I C

U経験 年数

4

年末満の人数が39人であ り,事故件数は83件, 4年 以上の人数が78人であ り,事故件数は20件であ り, 4年未満の群が有意に件数が多かった。(p<0.001)

3.影響 レベル別の事故件数

103件の注射事故件数 を,患者‑の影響 レベルで 分類 した結果,「レベル0」が6件,「ハイリスク」

が1件,「レベル1」が81件,「レベル2」が11件,「レ ベル3」が4件であった。

4.エラーマ ップの分類 による事故件数

エラーマ ップによる分類の際,一つの事故報告書 に複数の事故が含 まれている場合があ り,総事故件 数は227件 となった。エ ラーマ ップによ り分類 した 事故件数を表2に示す。

「注射業務 プロセス」では

,[ D.

看護婦 (時 に 医師)の実施 (施注)]が82件 と最 も多 く,エ ラー 内容では,[5.投与速度に関するエラー]64件 と[3.

指示薬剤の量に関するエ ラー]51件の脂 に多かった。

5.事故の起 きた背景別の影響 レベルの事故件数 事故件数の多かった月の影響 レベルの内訳 は,4

月は,「レベル0」が2件,「ハイリスク」が1件,「レ ベル1」が9件,「レベル2」が3件,「レベル3」

が1件であった。 5月は,「レベル0」が1件,「レ ベル1」が12件,「レベル2」が2件,「レベル3」

が2件であった。 2月は,「レベルユ」が13件,「レ ベル2」が1件であった。月ごとの影響 レベル別事 故件数 を図 1に示す。 4月, 5月の順に影響 レベル の高低 に関わらず事故件数の多い傾向にあった。

事故件数の多かった病態別の影響 レベルの内訳は, 消化器系では,「レベル0」が3件,「ハイリスク」

が1件,「レベル1」が31件,「レベル2」が2件,「レ ベル3」が2件であ り,心臓血管系では,「レベル0」

が1作,「レベル1」が19件,「レベル2」が3件,「レ ベル3」が1件であった。脳神経系では,「レベル0」

が1件,「レベル1」が8件,「レベル2」が2件で あった。

各勤務帯の事故件数を影響 レベル別 にみると, 日 勤では,「レベル0」が4件,「ハイリスク」が1件,

「レベル1」が41件,「レベル2」が6件,「レベル 3」が1件であった。準夜勤では,「レベル0」が 1件,「レベル1」が16件であった。深夜勤では,「レ ベル0」が1件,「レベル1」が24件,「レベル2」

が5件,「レベル3」が3件であ り, 日勤 と探夜勤 にレベルの高い事故が起 きていた。

2 エ ラーマ ップの分類 に よる事 故件 数 エラーの内容

1:対象 2:指 示 薬 剤 3:指示薬剤量 4:投与方法等 5:投与速度 6:その他 合 計

A:医師の指示 3 7 14

B:け、申し送 り看 護 婦 の 指 示 受 1 8 8 7 43

C:看護婦 の注射準備 1 9 9 5 44

D:看護婦 の実施

E:実施 され る患者 3 3

F:看護婦の観察 3 ∴ 車 14 41

4 5 6 7 8 9 101112 1 2 31 月別の影響 レベル

‑ 49‑

冒レベル3 田レベル2 日レベル1 Ejレベル0 ロハイリスク

(4)

尾形 美代子他

各経験年数での事故件数を影響 レベル別 にみると, 4年未満では,「レベル0」が5件,「ハイリスク」

が1件,「レベル1」が62件,「レベル2」が11件,「レ ベル3」が4件であった。4年以上では,「レベル0」

が 1件,「レベル1」が19件であ り,影響 レベルの 高いものは,全て4年未満で起 きていた。経験年数 別の影響 レベルを図2に示す。

(件) 70 60 50 40 30 20 10 0

経験年数4年未満 経 験年数4年以上 2 経験年数別 の影響 レベ ル

6.エ ラーマ ップと影響 レベルの関連性

エ ラーマ ップで分類 された総事故227件 について 影響 レベル別にみると,「レベル0」が6件,「ハイ リスク」が1件,「レベル1」が194件,「レベル2」

が19件,「レベル3」が5件であった。中で も事故 件数の多かったエラー内容は,投与速度および指示 薬剤の量に関するエラーであったが,この2項 目に 着 目して影響 レベルの高い 「レベル2」,「レベル3」

をみると,[5.投与速度に関するエラー]で,「レ ベル2」が14件,「レベル3」が3件,[3.指示薬 剤の量 に関す るエ ラー]で,「レベル2」が3件で あった。事故件数の多かったエラー内容に影響 レベ ルの高い事故が集中して起 きていた。エラー内容に おける影響 レベル 2以上の事故件数を図 3に示す。

(件)

642086420 6その他

5

4

3

2

‑対象

3 エ ラー内容 にお ける影響 レベ ル2以上 の事故件 数

考 察

1.事故の起 きた背景 と影響 レベルの関連性 事故の起 きた背景の うち,月別にみて多かった4 月, 5月,2月の事故件数は合計で,注射事故全体 の45.5%と約半数を占めていた。 これは, 4月, 5 月は新人が入 り, 2月は異動者が入って くる時期 と 重なっているためと考えられる。 また,これ らの人 事異動月に事故を起 こした看護師の中で,82.9%が ICU経験年数4年未満であ り,その うち異動者 は 36.1%であった。 ICU経験年数4年未満の看護師 は知識や経験が不足 してお り,異動者 は,前勤務病 棟 と看護手)FIRの異 なる点が多 く, ICU の環境 に不 慣れなため,事故を起 こしやすいと考えられた。

また,今 回の分析 の結果,事故が多発 した月に ICU経験年数4年未満 の看護師が,影響 レベ ルの 高 い事故 を起 こ していた ことがあげ られ る。 ICU 経験年数4年未満の看護師は,多 くの薬剤や機器類 の扱いに対する経験が乏 しく,特 に些細 なミスで も 患者に影響 を及ぼしやすい薬剤 などの知識が十分で

はない。間違った薬剤が危険性のあるものであれば, 患者 の重篤 な障害や死亡 に結 びつ く6)ことは周知の 事実であるが,現実問題 として考えると,現場で十 分 に対 策 が な されて い る とは言 い難 い。現在 の ICU の取 り組み として行 っていることは,情戟 を 共有 して事故をな くし,看護の質を上げる目的で, 情報共有ノー トを作成 し,気付 いたこと,新 しいこ と,変更事項等があればス タッフ全員がわかるよう に記載 し,事故防止に努めていることである。 しか しなが ら,情報共有ノー トは,情報の提供 と共有 と いう点か らは有効性 を評価で きるが,それを受ける 看護師一人一人の受け取 り方が違 うため,オ リエ ン テーシ ョン時には個 々の理解度 を確認する必要があ る。そ して,報告書の目的は,個人の ミスを指摘す るためではな く,誤 りか ら学ぶためであること,戟 告書 は再発予防のための貴重 な資料 となる7)と述べ ているように,今後 もこの ような事故防止に対する 意識が根付 く活動 を積極的に行 うことが必要である

薬剤 を取 り扱 う際の具体的対策 としては,新人看護 師が注射事故を起 こさないために,薬品棚か ら取 り 出す際の取 り違え事故を起 こさないよう,似た よう な薬剤 は離 した位置 に配列す る8)とい う報告がある。

ICU で は,薬剤 の量,単位 を間違 いやす い もの は, 赤字で量,単位 を記入 した張 り紙 をした り,単独で 投与 しなければ混濁する薬剤には,赤字で単独投与

と張 り紙をするなどの配慮 をしている。

次に,曜 日別での事故件数については,平 日と休

(5)

日の差はみ られず,病態別にみて も事故発生率に差 はなかった。勤務帯別でみると, 日勤で事故が約半 数起 きていた。 この背景の一つ に

,I C

U では, 日 勤で前 日と当日の指示簿の変更があ り,担当看護師 が一人で指示内容 を確認,準備,実施する。リーダー 看護師 も,指示簿の変更後,一人一人の指示内容 を 確認 し,ダブルチェック機能が働 くよう努めている。

しか し,指示簿の変更後か らリーダー看護師の確認 までに時間を要することが多 く,確認後,指示の見 落 としや与薬量 ・速度の誤 りに気付 き, 日勤で事故 を発見 しやすい状況にあると考える。 さらに, 日勤 での事故が多いことに関 して,業務内容の多 さが事 故を起 こりやす くさせている要因の一つ となってい ると考える。次に深夜勤の事故が多いことに対 して は, 7時に輸液ポンプの積算 リセ ッ トを行 うため, 開始忘れなどの輸液ポンプの操作 に関す る事故が起 こりやすいと考える。

2.エラーマ ップと影響 レベルの関連性

エ ラーマ ップの分類の中で, [D.看護婦 (時 に 医師)の実施 (施注)]が82件 と最 も多かったが, その理 由 として

,I C

Uでは緊急時の薬や,動脈注 射以外の注射は全て看護師が行 うため と考える。中 で も指示薬剤の量 と投与速度に関するエラーが多い のは,指示量,速度の変更が多 く,変更に気づ くの が遅れたため と考える。 さらに,医師の指示経路 と

して,口頭で受けざるをえない場合 も多 く,前 日ま での指示内容や,輸液の指示量を変更後 も指示簿に 訂正がで きていない状態 もあ り,事故が起 こ りやす い要因 と考える。 この対策 として,担当看護師には, 前 日と当 日分の指示簿の照合 をするように指導 して いる。 しか し,経験年数の若い看護師は,担当 した その日の指示簿のみを見ていることが多 く,前 日ま での指示であった薬剤が当 日分の指示簿か ら削除さ れていないことに気付かず授与 していることがある。

そ して,担当勤務内で輸液量の変更に気付かず,汰 の勤務の申し送 りで気付 くとい う事例 もあった。 こ れらのことか ら,指示量,速度に関するエラーの実 施で事故が起 こ りやすい と考える。川村が,「医師 は指示 を出す際に重要かつ変化 している指示の箇所 が,受け手に正確 に伝達 されるような配慮 も必要で ある

。 」

9)と述べているように,不明瞭な指示記載 を 避け,誰が見てもわか りやすい内容で記載 を依頼す る必要がある。

また, 日中検査データが出ると,抗生剤 を変更す ることも多 く,指示簿内容 を常 に照 らし合わせてい

く必要がある

。I C

Uでは,勤務交代時のダブルチェ ックと日勤 リーダーの指示簿確認以外 は,担当看護 師が指示受けか ら実施,観察まで一人で行 うため, 変更時のダブルチェック機能が働 きに くく,事故の 発見が遅れて しまうと考える。 また,指示変更は, 次の勤務か ら変更 されることも多 く,指示受けした 担当看護師は,責任 をもって申し送 りをしなければ ならない。特 に,抗生剤の指示変更に伴 って必要な 皮内テス トは,新人看護師に必要性や危険性 を認識 させ指導することが大切である。そ して,変更の指 示 を出す医師 との協力が必要不可欠であると考える。

[3.指示薬剤の量に関するエラー] と [5.投 与速度に関するエラー]に集中 して事故が起 きてい るが, この中には,影響 レベルが低 いものだけでな く, レベルの高いもの も含 まれている。指示薬剤の 量の事故では,薬剤 を溶解する生理食塩水の量が多 かった ものや,定期 に使用する薬剤 の量がいつ もよ

り多いにも関わらず,定期の量 を作成,投与 し,必 要量の投与がで きなかった事例があった。 これは, 患者 には影響がほ とん どなかったが

,I C

U経験年 数4年以上にも多 くみ られた事故であった。慣れに よる思い込みが事故をおこしやす くしていると考え られる。いつ もの薬 と認識するのではな く,常に指 示簿 と照 らし合わせて思い込みによる事故を防 ぐ必 要がある。

[5.投与速度に関するエラー]では,輸液,シ リンジポンプの扱い方が不充分であったことか ら事 故につながった事例が多 かった

。I C

U経験年数4 年以上の中で も輸液ポンプ,シリンジポンプで持続 注入中の薬剤の交換時,輸液速度を変更 していた事 故事例があるが,投与薬剤が患者 に与える影響がほ

とんどなかったため,重大 な事故には至 らなかった。

しか しなが ら

,I C

U経験年数4年未満では,輸液 ポンプ,シリンジポンプについて同じような事故内 容で も授与する薬剤が患者 に与える影響が高いもの で事故・を起 こしていることが多かった。中で も,昇 圧剤の輸液ポンプのポンプセ ッ ト付 け替え時の事故

は8件 と多 く起 きていた。 これは全て影響 レベル2, 3の事故であ り,機器の取 り扱いが未熟なことと, 薬剤 に関する知識不足 のために起 きた と考えられる。

特 に心臓血管系では,昇圧剤 を使用する頻度が多い。

他科で も利尿 目的で昇圧剤 (カテコラミン) を使用 することが度々あるが,輸液ポンプの扱いが適切 に 行わなければ,危険な状況 を引 き起 こす可能性が高 くなる。 このため,輸液ポ ンプやシリンジポ ンプの 取 り扱いについては,経験 を重ね熟知する必要があ

‑ 51‑

(6)

尾形 美代子他

る。そ して,基本的な機器の操作技術 を身に付 ける ことは もちろんであるが,危険な薬剤 を使用 してい るとい う認識 をもっ ことは,輸液,シリンジポ ンプ の設定後の確認 を意識付 け し,事故防止になると考 える。

3.今後の改善策

I C

U 経験 年数 4年未満 の看護 師 は,薬剤 に関す る知識が少ないことか ら事故 をお こしやすい と考 え られ る。特 に新 人 には

,I C

U で使用 す る主要 な薬 品のオ リエ ンテーシ ョンは実施 しているが,実際 に は役立 っていない。 また,薬剤 について, 自己学習 での薬効,薬理の習得 を求めているが,個人の努力 に よるため,限界がある。特 に

I C

U で よ く使用 さ れる昇圧剤や抗不整脈薬の危険の高い薬 については 認識 をもって取 り扱いがで きるように指導す る必要 がある。そ して,危険な薬剤 を取 り扱 う時には一人 で行わず,最初 は必ず経験者 とともに施行す ること を徹底す る必要がある

また

,I C

U経験年数4年未満 の看護師に影響 レ ベルの高い事故が多 く,中で も,投与薬剤の量 と指 示速度 に関す るエ ラーに集中 して起 きていた ことか ら

,I C

U で よ く使用す る薬剤 の知識 を増 や し,機 器の扱 いを徹底 し,で きるようになるまでは監督す

ることが事故防止につなが ると考える

結 論

I C

U におけ る注射事故の分析 か ら以下の結論 を 得 た。

1.人事異動月に

I C

U経験年数4年未満の看護師が, レベルの高い事故 を起 こしていた。

2.薬剤 の投与量,指示速度に関す るエ ラーが,辛 故影響 レベルの高い もの も低 い もの も集中 して多 かった。

3.事故の防止 には,具体 的な情報の共有 とそれが 理解 ,実施 されているかの確認が必要である。

文 献

1)川村 治子 :輸液管理 における医療事故 防止.看護技術, 46:7883,2000.

2)川村 治子 :リス クマネジメ ン トが求め られ る医療 を取 り巻 く状況.看護学雑誌,62:1127‑1131,1998.

3)原野 アツ子 :注射事故 に対 す る組織的事故防止対策.

31回日本看護学会論文集 一看護管理,219221, 日本 看護協会出版,2000.

4)原 洋子 :「リスクマネージメン ト」の体制づ くりを考 える.看護展望,24:41‑50,1999.

5)川村 治子 :業務 プロセスか ら見た注射 エ ラーの発生要 因.厚生科学研究研 究費補助金平成11年度医療技術 評 価総合研 究事業総括報告書 「医療 の リス クマ ネジメ ン

トシステム構築 に関する研 究」,1331,2000.

6)川村 治子 :輸液管理 にお ける医療事故防止.看護技術, 46:7883,2000.

7)原野 アツ子 :事故報告書 の分析 による注射事故防止対 策.看護実践の科学,19:3237,2001.

8)重松秀子 :ICU・CCUのある病棟 での新 人の夜勤.看 護実践の科学,27:24‑30,2002.

9)前掲5),22.

(7)

Analysis of the accidents related to injection in the leu at 0 university hospital

Miyoko OGATA, Katsue SASAKI, Kumiko ASHIKAGA, Sayo MORIMOTO and Kumi

W

ATANABEl)

Abstract

In comparison with general award, intensive care unit (ICU) requires various ack- nowledge and skillful techniques for nurses. On these circumstances, especially, the drug administration or injection to patients would be a trigger of the serious trou- ble. In this study, we investigated the risk factors of the medical accidents related to drug administration in the ICU at 0 university hospital for last three years re- trospectively, Conclusively, it was implicated that the nurses who work at the ICU for less than 4 years have been more involved in them and the troubles hap- pened frequently when the new members joined. Furthermore the serious troubles occurred in terms of the dosage and the infusion rate.

Key Words:Intensive care unit, Injection accident, Accident report

Division of Nursing, Okayama University Hospital

1) Faculty of Health Sciences, Okayama University Medical School

- 53-

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