新学習指導要領の理念を踏まえた学校づくり
著者 鹿児島大学教育学部附属小学校
ファイル(説明) 研究同人 複式教育 特別活動
総合的な学習の時間 外国語活動
道徳 体育科 家庭科 図画工作科 音楽科 生活科 理科 算数科 社会科 国語科
研究の成果と課題
−学校づくりの構想
−子どもの育成 研究主題設定の立場 ...
URL http://hdl.handle.net/10232/14945
E 夢や目標をもち,共にみがき高め合う子どもの育成 [ 1
夢や目標をもち,共にみがき高め合う子どもわたしたちが学校教育目標として設定した目指す子どもの姿は,具体的には次のような 姿であるD
目指す子どもの姿
夢や目標をもち,共にみがき高め合う子ども 夢や目標をもっ姿とは
憧れやよりよい自分の姿を夢や目標として思い描き,そこへ近づこうと自ら努力す る姿であるO
共にみがき高め合う姿とは
同学年や異学年の友達と温かい人間関係を築き,目的を共有しながら知恵を出し合 ったり,励まし合ったりするなど,互いに協力しながらよりよい自分を目指して高ま
り合う姿であるO これを,知 ・徳 ・体の面から具体化すると,
I
学び合う子j,I
ひび き合う子j,I
きたえ合う子j であると考えた。つまり,図4のように,子どもの抱く夢 や目標は,自己の実現への原動力となるも のであり,仲間との磨き高め合いがそれを より一層推進する働きを果たすものであるO
このように磨き高め合う多くの仲間がいる 場所が学校であり,仲間と共に目的や喜び
を共有しながら磨き高め合うことによ って こそ, 一人一人の 「生きる力」は豊かには
ぐくまれていくものであると考えるO
そこで,
I
共にみがき高め合う子ども」の姿を実現するために,確かな学力,豊か 【図4 夢や目標をもち,共にみがき高め合う子ども】
な心,健やかな体の育成の面から,次のよ
うな「学び合う子j
I
ひびき合う子jI
きたえ合う子j を目指すことにした。千品 び主」九
「互いの考えに学び合う子ども」
A Eヨ 課題を共有し,意見を述べ合ったり,相互に評価し合ったりしながら協同的に
つ
学習を進める中で,互いの考えをさらに深めていくことのできる子どもO子
ひ 「心と心がひびき合う子どもj び
き 他者の喜びゃ心の痛みを感じ共有し合ったり,生命の尊さや自然の偉大さなど
A Eコ に感動したりするなど,身の回りの人,もの,こととの豊かなかかわり合いを通
つ
して,自分の心との対話を深めていくことのできる子どもO子 き
た 「心と体をきたえ合う子ども
J
え 健康に生きていくための体力や生活習慣を身につけ, 夢や目標に向かつて励ま
A Eコ
し合いながら粘り強く努力することのできる心身共にたくましい子ども O 子
つ
そして,学校教育目標を発達の段階に応じて具体化するために,各学年で目指す子ども の姿を道徳性に関する発達の特性や各教科の学年目標の系統を踏まえて,次のように設定
した。各学年においては年度当初に学年経営目標を設定するが,その際はこれを基準とし て当該学年の実態等を考慮しながら設定していくことにするD
なお,子どもがもっ夢や目標は,様々な経験の中で膨らんだり,変化したりするもので あるO また, 学年が進むにつれて,より社会的,自立的なものとなったり,思い描く姿が 具体化されたりするものと考えるO よって,教師は,発達の段階に応じて「どんな
00
に なりたいのかなJ r
どうして,そうなりたいのJ r
そのために,まずはどんなことに取り組 もうかな」などと語りかけながら,子どもが自分の目標とする姿やその理由,具体目標な どを意識化できるように働きかけていくことを大切にしたい。学 校 教 育 目 標
夢や目標をもち共にみがき高め合う子どもの育成
[ 校司1 1 ]まことの子 ・ ちからの子 ・ のぞみの子
(夢や目標をもっ子 )
【図5 発達の段階に応じた目指す子どもの姿】
( 2
夢や目標をもち,共にみがき高め合う子どもの育成に当たって (1) 目指す学校,学級,教師の姿「夢や目標をもち,共にみがき高め合う子ども
J
を育 成する学校や学級,教師とは具体的にはどのようにある べきなのか。学校教育目標の具現化を図る上で,まずは,学校や学級,教師の在り方について全職員で話し合い,
その具体的な方向性について共有し合うことが大切であ
ると考えた。そこで,わたしたちは次のような学校,学級,教師の姿を目指すことに した。
子どもにとって魅力ある学校とは,
r
温かい学級J
と「大好きな先生jが存在する,「楽しい学校」であるO 子どもが温かさを感じることのできる学級とは,互いの夢や 目標を語り合える受容的な雰囲気と,互いに磨き高め合うことのできる信頼関係のあ る学級であるO そのためには,一人一人の個性を大切にし合いながら,思いやり,助 け合える仲間づくりを大切にしていきたい。また,教師は,子どもの夢や目標を共感 的に受け止めながら,日々の授業を通して個々の限りない可能性を引き出すことので きる存在でありたし h このような学級と教師の存在する「楽しい学校」とは,一人一 人が連帯感や所属感を感じることのできる雰囲気があり,学ぶことに喜びゃ楽しさを 感じることのできる教育活動や教育環境が整った学校であるO 連帯感や所属感は,ま ずは日常的にあいさつを交わしたり,声を揃えて歌を歌ったりするところから生まれ るものであり,それが多様な体験や触れ合いを通して互いに磨き高め合える信頼関係 へと深まっていくものと考えるO そして,このような学校は,保護者や地域の協力の 上に成り立っているものであり,その信頼に応える学校づくりに取り組んでいきたい。
このようなわたしたちの指針をまとめたものが,図 6であるO
目指す学校の姿(楽しい学校) .あいさつと歌声がひびき渡る学校 .学ぶ喜びゃ楽しさを味わえる学校
‑多様な体験や触れ合いができる学校
‑花と緑がいっぱいで,環境の整った学校
・ルールやマナーを大切にする信頼される学校
夢や目標をもち,共にみがき高め合う子どもの育成
保護者・地 域との連携
.協力
目指す学級の姿(温かい学級)
・明るく,和やかな雰囲気のある学級 .一人一人のよさを発揮し合える学級
・目的を共有し, 一致団結できる学級
・助け合い,励まし合える学級
目指す教師の姿(大好きな先生)
. r
分かる・できる」授業を展開する教師・よさを認め,可能性を引き出す教師
・生き物や学習用具が大切にされる学級
‑子どもとの触れ合いを大切にする教師
・和を大切にし,共に磨き高め合う教師
‑研究的で,使命感・職責感の確かな教師
【図6 目指す学校, 学級,教師の姿】
(2) 教育課程の創造に当たって
「夢や目標をもち,共にみがき高め合う子ども」を育成するためには,前項までに 述べたような本校の教育課題を踏まえ,あるべき学校や学級,教師の姿を目指して,
教育内容の充実を図っていくことが必要であるO 加えて 新学習指導要領において示 された理念や趣旨を踏まえ 下記のような視点で新しい教育課程の創造に取り組むこ とにした。
O目指す学校,
本 学 級,教師 校 。授業充実の姿
の o
触れ合い教育 O論理的な思
3 果
考題 0伝え合う方法の習得
0学び合うよ
新 さの実感
し
品ザし同ー、
o
人間関係 (他者意識)校 O自己の発揮 の仕方 整同
o
多様な体験目 I ~基礎体力 標
O生活習慣0健康・安全
新しい教育課程創造の視点
学校のライフスタイルの見直し
理 数 教 育 の充実
新学習指導要領の理念
道 徳 教 育 の充実
教育の充実
の充実
‑ 教 育 内 容
各教科・領域における授業充実
【図7 新しい教育課程創造の視点】
ア 学校のライフスタイルの見直し │詳細は, 12, 13ページ参照
>
教育課程の編成に当たっては まず その枠組みとなる年間授業時数の確保や校 時表の工夫が必要となるが新学習指導要領では授業時数の増加へも対応していく 必要があるO また,教師と子どもが向き合う時間的 心的なゆとりや,言語活動や 体験活動の充実を図るための時間的なゆとりを生み出していく必要があるO
そこで,これらの課題を解決する一方策として二学期制の導入について検討する 外,これまでも校時表に位置付けてきた朝の活動についてより充実を図るために内 容の見直しを図るなど,学校生活のライフスタイルを見直すことにしたO
イ 言語活動の充実 │詳細は, 14, 15ページ参照
>
国語をはじめとする言語は,論理的思考やコミュニケーション,感性 ・情緒の基 盤であることから 国語科を中核としながらすべての教科等において言語活動を充 実させ,言 語に関する能力を高めていくことが求められているO そこで,国語科や 各教科等における言 語活動の具体的な展開の仕方について研究を進めた。
ウ 体験活動の充実 │詳細は, 16, 17ページ参照
>
豊かな心をはぐくむためには多様な体験活動が重要であるが 社会の変化に伴い 体験の場が減少していることを踏まえ その機会を確保 ・充実することが求められ ているO そこで,その意義や各学年の発達の段階,保護者の願いを考慮した教育課
程への効果的な位置付け方について研究を進めた。 工 道徳教育の充実 │詳細は,18, 19ページ参照
>
生命尊重の心や自尊感情の欠乏,規範意識の低下などの背景から,道徳教育の要 としての道徳の時間の充実や推進体制の充実等が求められているO そこで,指導内 容の重点化や各教科等の指導内容との関連を踏まえた指導計画の作成の仕方,道徳 教育推進教師を中心とした推進体制の在り方について研究を進めた。
オ 伝統や文化に関する教育の充実 │詳細は, 20, 21ページ参照
>
グローパル化が進む中で,自分とは異なる文化や歴史に立脚する人々との共存の ために,自らの国や地域の伝統や文化についての理解を深め,尊重する態度を身に 付けることが求められているO そこで,このような観点から各教科等における学習
内容の見直しゃ教科等間の関連の図り方 特別活動の充実等について研究を進めた。 力 理数教育の充実 │詳細は,22, 23ページ参照
>
グローパルな競争aと技術革新が絶え間なく生まれる「知識基盤社会j と呼ばれる 時代にあって,科学技術創造立国の土台となる理数教育の充実が求められているO
そこで,特に数学的な思考力 ‑表現力や科学的な思考力・表現力を育成するための 授業改善の方向や 理数への関心を高める方策について研究を進めた。
キ 外国語教育の充実 │詳細は,24, 25ページ参照
>
グローパル化の急速な進展により,外国の言葉や文化に対する理解や外国語を用 いて積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度が重視されているD そこで,
高学年を中心に「外国語活動jの授業研究を進めるとともに 各教科・領域や他の 教育活動との有機的な関連を図る方策について研究を進めた。
( 3 )
授業の創造に当たって「夢や目標をもち,共にみがき高め合う子ども」は,日々の授業でこそはぐくまれ なければならない。そこで,ここでは学校教育目標に迫る授業の在り方について,新 学習指導要領を踏まえながらその基本的な考え方を述べたい。
ア 授業における「夢や目標をもち,共にみがき高め合う子ども
J
とは子どもは本来,
I
もっと知りたいJ I
もっとできるようになりたい」といった知的 好奇心が旺盛であり,分かつたりできるようになったりすることに楽しさを感じる ことのできる存在であると考えるO そのように考えると,学ぶことに夢中になって いる場面での子どもの目的は,I
憧れの職業に就くためJ I
良い成績をあげるためJ
といったことより,
I
なぜなのか知りたい,自分もできるようになりたいJ
といっ た学習対象への問題意識や興味から沸き起こる知的好奇心を自己の納得によって満 足させることにあるのではないかと考えるO そして,自己の納得を求めるに当たっては,友達と知恵を出し合う,助け合うといった学び合いに価値があることも子ど もは感じているのではないかと考えるO
つまり,授業における「夢や目標をもち,共にみがき高め合う子ども」とは,
「もっと知りたい
J I
もっとできる ようになりたいJ
という思いや願いをもち,共 に学び合う子どもであると考えるO このような子どもは,分かるようになったりで きるようになったりする喜びゃ楽しさを味わい,確かな学力を身につけることがで きると考えるOイ 学習指導要領改訂の趣旨から
それでは,前述のような子どもの姿を生み出す学習活動はどのようにあればよい のか,学習指導要領改訂の趣旨を踏まえながら考えてみたい。
今回の改訂においては,知識 ・技能の習得と思考力・表現力 ・判断力等の育成の バランスを重視する観点から,習得,活用,探究といった学習活動の充実と言語に 関する能力の育成が求められているが私たちはこれらのねらいと関係を図
8
のように整理した。
│確 か な 学 力 │
各教科等において基礎 1A ~ 1 各教科等において知識 1A ~ 1 総合的な学習の時間を 的・基本的な知識・技能を 1¥ )1・投能の活用を図る学習 1¥ )1中心として行われる探究 習得する学習活動の重視 l' '1活動の重視 │可
,
1活動の質的な充実¥ 〈
学習の基盤 :言語に関する能力〉
ノ【図8 新 学 習 指導要領において重視されている学習活動のねらいと関係】
特に,各教科等の指導に当たっては 思考力 ・判断力・表現力等をはぐくむ観点 から,基礎的 ・基本的な知識‑技能の活用を図る学習活動を各教科等における習得 と総合的な学習の時間を中心として行われる探究活動の両者の聞に位置付け,重視 することが求められているO また 言語はすべての学習の基盤となることから,ど の教科等においても言語に関する能力の育成が求められているO
ウ 「習得,活用,探究」の充実に当たって
本校ではこれまで,
I
1 ‑1 (2)研究の歩みJ
(P. 1)で述べたとおり ,確かな学 力を「関心‑意欲 ‑態度J I
思考力 ・判断力 ・表現力J I
知識 ・理解・技能jの三観 点からとらえ,これらを関連付けながらよりよく発揮させるための学習内容や指導 方法の研究に取り組んできた。なぜなら 確かな学力は その要素がそれぞれ単独 で育成されるものではなく 子どもが自己の思いや願いを基に友達と学び合いなが ら問題の解決を図ろうとする過程において 関連し合いながら発揮され高ま ってい くものであると考えたからであるOこのような過程を通して子どもに培いたい力は 次のとおりであるO
【表2 本校がとらえた三つの培いたい力】
観点 培いたい力の考え方
関心・ 意欲 ・ 対象や事象への関心や学習意欲,結果として形成された態度等のことO
態度 方向目標としての要素があるO
思考力 ・判断 既有の情報や得た知識・技能を駆使して 自分の考えをつくり出しな 力 ・表現力 がら自らの力で課題を解決していく力のことO 比較 ‑関連付けや数量化,
モデル化等。
知識 ・理解 ・ 学習等を通し,得た事実に関する認識やそれらを構造的に把握するこ 技能 とO 事象や対象を意識的に操作する力としての技能も含む。
それでは,このような力が関連し合いながら高まっていく学習場面について,習 得,活用,探究という視点から考えてみたい。
5
年理科「植物の発芽と成長j において,植物の発芽の条件や種子の中に養分が植物が枯れないよ う に 結 果 が分かっ たからこの実験はす
ぐやめようね。
る。このような状態が三つの培いたい力
w ω
仏 語i ソ JFの 度 の
がバランスよく高まっている状態であるO 【図9 培いたい力が発揮される様子の例】
この場面で見られるように これまで培ってきた力を状況に応じて駆使する様相が
「活用」であり,それぞれの力を活用可能な状態へと高め 身に付けていく様相が
「習得jであると考えるO したがって,本校では,子どもが習得したり活用したり する力を学び方やものの見方や考え方も含めてとらえ これらを一体としてはぐく むことを目指した学習活動を展開していきたい。
そこで,そのような学習活動を充実させるために,次に「探究
J
について考えた い。探究的な学習とは 課題の設定→情報の収集→整理‑分析→まとめ・表現とい った問題解決的な活動が発展的に繰り返されていく一連の学習活動のことであるO このような活動の質的な充実は総合的な学習の時間を中心として,各教科等で図っ ていく必要があるO そこで,各教科等においては,子どもの,思考の流れに沿って,問題意識が連続 ‑発展していくような単元の構成を行うことが大切であるO また,
特に総合的な学習の時間において子どもが見いだす課題は,
I
答えが多様で正答の 定まらない問い」といった性質のものであることが多いことを踏まえると,各教科 等においては問題解決的な活動を通して,学び方やものの見方や考え方を身に付けておくことを大切にしたい。
工 言語に関する能力の育成に当たって
図
9
のように三つの培いたい力がよりよく発揮されるためには,学び合いの充実 が不可欠であるO その際,主として媒介となるものは言語であるので, 言語を用い てよりよく考えを深めたり 伝え合ったりする活動をどの教科等においても重視し たい。そのためには まずは一人一人の考えの表出をどのように促すかが大切であ るO その際は,発達の段階や単元 ・題材の特質等に応じて,イメージ図やジェスチ ャーなどによる表現や具体物等を用いた操作や説明などを効果的に取り入れていく ことが大切であるO また,教師は子どもが夢中になって活動できるような場面を設 定したり,子どもの見方や考え方を引き出すような発問を行ったりして,教師と子ど も,あるいは子ども同士の対話などの活性 化を図ることを大切にしたい。このような 活動を通して子どもから発せられた話し言 葉を, 書き言葉や各教科の用語に適切に変 換させ,子どもが使えるようにしていく教 師の丁寧な働きかけが必要であるO
あることを学習した子どもが,植物の成 長条件について予想を基に実験の計画を 立てる場面を例に挙げると,図
9
のような思考の展開が見られるO この時,子ど もは,互いに「知識 ・理解・技能」だけ でなく,
I
思考力・判断力・表現力J
や「関心・ 意欲 ・態度」も関連させながら 発揮し,よりよく問題解決を図ろうとす
種子の中の養分は 発芽に使われたから, 成長には肥料が必要 だと思うよ。
(本単元で習得した 活用)
トライアングルの
音色は?
音が高くてよく響く ね。
強い音や弱い音.
いろいろな強さが出 せるね。
[図10活性化された子ども同士の対話 (2年音楽の例)】