早稲田大学審査学位論文 博士(人間科学)
青年期のボランティア活動への参加行動・
不参加行動を規定する要因
Factors Affecting Youth Participation and Non-participation in Volunteer Activities
2017年7月
早稲田大学大学院 人間科学研究科
荒井 俊行 ARAI, Toshiyuki
研究指導教員: 西村 昭治 教授
第1部 序 論
第 1章 本論 文 の背 景 1 第1節 ボ ランティ ア 活動の現代 的役割 ・ 意 義 1 第2節 我 が国の ボ ラ ンティア活 動の状況 5 第3節 若 い世代の ボ ランティア 活動の現 状 7
第 2章 先行 研究の 概 要 9
第1節 ボランテ ィア 行動に関す る 研究 9 第2節 ボ ランティ ア 行動の心理 学的研究 11
1.心理学 的研究の 概 観 11 2.参加動 機に関す る 研究 11 3.イメー ジに関す る 研究 13 4.参加成 果に関す る 研究 15 5.先行研 究の課題 17
第 3章 本論 文 の目 的 と 構 成 19 第1節 本 論文の目 的 と用語の整 理 19
1.本論文 の目的 19
2.本論文 の用語整 理 20 第2節 本 論文の構 成 23
第2部 本 論
第 4章 ボラ ンテ ィア 活動 へ の 参加行 動 ・不参 加行動を規 定す
る内 的要 因 の 検討 26 第1節 参 加志向動 機 ・不参加志 向動機の 構 成要因 [研 究1] 26
第2節 ボ ランティ ア 活動へのイ メージが 参 加志向動機 ・不参加
志向動機に 及ぼす影 響 [ 研究2] 40 第3節 参 加成果 が 参 加志向動機 ・不参加 志 向動機に及 ぼす影響
[研究3] 53
第4節 参 加成果志 向 が参加志向 動機・不 参 加志向動機 に及ぼす
影響[研究 4] 59
第 5章 ボラ ンテ ィア 活動 へ の 参加行 動 ・不参 加行動に及 ぼす
環境 要因・ 相 互 要因の 検 討 73 第1節 身 近な参加 経 験者の有無 が参加志 向 動機・不参 加志向動
機に及ぼす 影響[ 研 究 5] 73 第2節 援 助・被援 助 行動の経験 が参加志 向 動機・不参 加志向動
機に及ぼす 影響[ 研 究 6] 77
第 6章 心理 的欲求 ・ 参加経 験 の質が ボ ランテ ィア行動に 及ぼす 影響 の検 討 8 1 第1節 心 理的欲求 と 参加志向動 機・不参 加 志向動機・ 参加成果
志向との関 係 [研究 7 ] 81 第2節 参 加経験の 主 観的な 質が 今後の参 加 行動に及ぼ す影響
[研究8] 90
第3部 総 括
第 7章 本論 文の まと め 97 第1節 本 論文の結 果 のまとめ 97
第2節 ボ ランティ ア 行動への生 起・促進 モ デルの提案 10 1
第3節 本 論文の意 義 106 第4節 今 後の課題 と 展望 10 8
謝 辞 110
引 用文 献 11 1
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第1部 序 論
第 1章 本論 文 の背 景
第 1節 ボラン テ ィア活 動 の 現 代的役 割 ・意義
阪 神 ・ 淡 路 大 震 災 の 被 災 地 に 多 く の ボ ラ ン テ ィ ア が 駆 け つ け ( 田 中 2011) ,
「ボランテ ィア元年 」 といわれ た 1995 年の 阪神・淡路 大震災か ら 早くも 20 年 以上が経過 し,この 間 ,ボランテ ィア活動 は 日本の社会 に広く浸 透 し,地域コ ミュニティ や環境, 福 祉,国際協 力などさ ま ざまな領域 で不可欠 な 存在と認識 さ れ る よ う に な り , 2011 年 3 月 に 発 生 し た 東 日 本 大 震 災 が , そ う し た 社 会 認 識 に 拍 車 を か け た ( 田 中 ・ 廣 瀬 2013) . 現 在 , ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 は 単 に 「 奉 仕」や「社 会貢献」 と いうことの みならず , 新しい社会 を創る先 駆 的な役割や ボランティ ア自身の 自 己実現の手 段など, 多 様な意味を 含むもの と して理解さ れ る よ う に な っ た ( 田 中 2011) . そ こ で , 「 ボ ラ ン テ ィ ア 」 と い う テ ー マ は , いまや,日 本社会の 将 来を構想し ていくう え で,キース トーンの 位 置を占めて い る ( 小 澤 2001) こ と か ら , 本 論 文 の 背 景 と し て , ま ず , ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 の現代的役 割・意義 に ついて,社 会的役割 と 教育的意義 から 以下 の とおり 整理 した.
ボラ ンテ ィ ア活 動 の社 会的 役割
佐 藤 ( 1988) は , 「 21 世 紀 は , ボ ラ ン テ ィ タ リ ー に 共 通 目 的 の た め に 結 集 する非営利 ・非政府 セ クターが活 躍する時 代 にならざ る を得なく な るだろう」
と述べたが , 今日の ボ ランティア の活躍と 多 くのボラン ティアが 支 える NPO の 発 展 を み る と 「 ボ ラ ン テ ィ ア の 時 代 」 ( 田 中 1998) に な っ た と も 言 え る . そ れ は , 現 在 ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 が 果 た す 社 会 的 役 割 が あ る ( 新 崎 2005) こ と の 証左に他な らない . 例 えば ,阿部 (2008)は ,ボランテ ィア意識 の 成熟が,制 度の発展と 表裏一体 に なっている 社会を「 福 祉社会」と 呼び,ボ ラ ンタリズム を基底とし て「福祉 社 会」の理念 から, ボ ラ ンティアに 期待され る 社会的役割 を要約して ,(1) 地 域社会の福 祉ニーズ に 積極的に応 えようと す る先駆的役 割(2)公 的制度の 不 備を補う補 完的役割 ( 3) 制度や 行政施設 に 対して建設 的批判をす る批判的 役 割 (4)行 政施設と 住 民との 間で 理解・協 力 者として活 動する架橋 的役割 ( 5 ) 地域の福 祉を守り 育 てる相互扶 助的精神 を 普及する啓
2 発的役割の 5つをあ げ ている .
この背景に は ,環境 , 福祉,青少 年育成, コ ミュニティ 形成など 多 くの公共 的 な 領 域 に お い て , 行 政 だ け で は 担 い き れ な い 課 題 が 肥 大 化 し た こ と が あ り
( 田 中 2011) , 既 存 の 社 会 シ ス テ ム だ け で は , 社 会 で 起 き て い る あ ら ゆ る 課 題 に 対 応 し き れ な く な っ て い る と い う 時 代 へ の 危 機 感 が あ る ( 三 谷 2016) . 日本では少 子高齢化 が 進行してお り ,今後 , 他者への依 存を必要 と する人が増 え て い く と 予 想 さ れ る ( 三 谷 2016) . そ こ で , 公 助 ・ 自 助 を 第 一 と し つ つ も , 国 家 や 企 業 , 家 族 に 頼 り 切 る こ と が 難 し い 社 会 情 勢 の も と で ( 三 谷 2016) , 地域住民の 主体的な 活 動や NPO など非営利 の 民間組織の 活躍が期 待 され (田中 2011),他者や組織 の ために自ら の時間や 労 力を提供す る ,多く の ボランティ アが必要と され る( 三 谷 2016)のであ る .
ボラ ンテ ィ ア活 動 の 教 育的 意義
ボランティ ア活動 に は ,社会的役 割に加え , 近年の我が 国の文教 施 策に見ら れるとおり 教育的 意 義 がある .学 習成果を 活 かしたボラ ンティア 活 動の重要性 は , 文 部 科 学 省 の 答 申 な ど で 繰 り 返 し 強 調 さ れ て き た ( 田 中 2011) . 例 え ば , 生涯学習審 議会 (1992)の答申「 今後の社 会 活動の動向 に対応し た 生涯学習の 振興方策に ついて」 で は ,①「ボ ランティ ア 活動そのも のが自己 開 発 , 自己実 現につなが る生涯学 習 となるとい う視点」 ② 「ボランテ ィア活動 を 行うために 必要な知識 ・技術を 習 得するため の学習と し て生涯学習 があり , 学 習の成果を 生かし,深 める実践 と してボラン ティア活 動 があるとい う視点」 ③ 「人々の生 涯学習を支 援するボ ラ ンティア活 動によっ て ,生涯学習 の振興が 一 層図られる という視点 」が示さ れ ,ボランテ ィア活動 に 内在する教 育的意義 や ボランティ ア自身の自 己実現に 向 けた学習と いう側面 が 注目された (原田 2010).
そして,ボ ランティ ア 活動の教育 的効果や 意 義が注目さ れ ,学校 教 育にボラ ンティア活 動を取り 入 れようとい う動きは , 近年日本に おいて顕 著 になってい る ( 池 田 2006) . 我 が 国 に お け る 青 少 年 の ボ ラ ン テ ィ ア に 関 す る 授 業 時 間 内 で の 教 育 活 動 の 動 き と し て は , ま ず 中 央 教 育 審 議 会 ( 1996) の 答 申 「 21 世 紀 を展望した 我が国の 教 育の在り方 について 」 では ,「生 きる力」 が 強調される と 同 時 に , ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 へ の 言 及 が な さ れ た ( 原 田 2010) . そ の 結 果 を 受け,授業 時間内に お けるボラン ティア活 動 は ,「総合 的な学習 の 時間」の創 設 に よ っ て 積 極 的 に 取 り 扱 わ れ る よ う に な っ た ( 新 垣 2009) . 小 学 校 ・ 中 学
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校・高等学 校へ告示 さ れた新しい 学習指導 要 領(文 部科 学省 1998a, 文部科 学省 1998b,文部科 学省 1999)には,( 1) 総合的 な学習の 時 間において ボ ランティア 活動など 体 験的な学習 ,問題解 決 的な学習を 積極的に 導 入すること ,
(2)特別 活動にお い てボランテ ィア活動 な どの体験的 な活動の 機 会をで きる だ け 取 り 入 れ る よ う に す る こ と な ど が 盛 り 込 ま れ , 「 ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 」 や
「奉仕」等 の体験学 習 の導入が図 られ ,学 校 でのボラン ティア学 習 もいっそう の広がりを みせてい る (内海 2014).
また,最近 の議論で 言 えば, アク ティブ・ ラ ーニングの 視点から , 現行の学 習指導要領 の設立に 向 けて,中央 教育審議 会 では, 体験 活動の重 要 性が謳われ , 前学習指導 要領から キ ーワードと なってい た 「生きる力 」はもと よ り,その後 使われた人 間力, キ ー コンピテン シー( OECD)などの影 響 から, 社 会における 実 生 活 と 関 連 付 け た 体 験 活 動 が と り わ け 重 視 さ れ て い る ( 市 川 2016) . 具 体 的な体験学 習として は , 例えば, 職業体験 , 市民体験の ほかに, ボ ランティア 活動の企画 や実施の 体 験(市川 2016)など が挙げられ ている .
そして,大 学教育に 関 しては ,中 央教育審 議 会( 2012)の答申「 新 たな未来 を築くため の大学教 育 の質的転換 について 」 では ,学生 は主体的 な 学修の体験 を重ねてこ そ ,生涯 学 び続ける力 を修得で き ることから ,学生の 主 体的な学修 を促す質の 高い学士 課 程教育を進 めること が 求められて いる.そ の ために学生 の学修への 動機付け を 強め ,社会 的自立や 職 業生活に必 要な能力 の 育成に大き な効果を持 つインタ ー ンシップ , サービス ・ ラーニング ,社会体 験 活動や留学 経験等とい った教室 外 学修プログ ラム等を 提 供する必要 性が提起 さ れた . そこ で,ボラン ティア活 動 を正課教育 に取り込 む ことや 学生 ボランテ ィ アセンター を 設 置 す る な ど の 支 援 が 行 わ れ る よ う に な っ た ( 奥 山 ほ か 2010) . 例 え ば , 日 本 学 生 支 援 機 構 ( 2009 ) の 調 査 で は , ボ ラ ン テ ィ ア 関 係 科 目 の 開 設 校 は 35.4%と な り , 相 談 窓 口 設 置 も 82.4%に な る な ど , 大 学 の ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 に 対する取り 組み体制 は 整備されて きた. ま た ,日本学生 支援機構 ( 2009)の調 査 で は , 「 ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 を 行 う 学 生 を 積 極 的 に 評 価 」 す る 大 学 は 44.6%
と大学の重 点施策に も なってきて いる.
さらに,教 育過程で の アクティブ ・ラーニ ン グの取り組 みの急速 な 増加に伴 い,大学教 育の キー ワ ードとして 「 アクテ ィ ブ・ラーニ ング 」が 挙 げられるよ う に な っ た ( 岩 田 2016) こ と か ら , 大 学 に お い て も ア ク テ ィ ブ ・ ラ ー ニ ン グ のひとつの 実践とし て , ボランテ ィア活動 の 体験 を具体 的に 位置 づ けている 大
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学(例えば ,中央大 学 ,敬和学園 大学,金 城 学院大学, 名古屋商 科 大学,東京 福祉大学, 立命館大 学 など)も多 くなって き ている .し かしなが ら ,大学では 2000 年 代 か ら 体 験 的 な 学 習 機 会 を 用 い た 教 授 法 ・ 学 習 法 が 注 目 を 浴 び , 試 行 錯誤が続け られてい る (石野 2015)のが現 状で ある.
5 第 2節 我が 国の ボラ ンテ ィ ア 活動 の状況
統計データ から ,我 が 国のボラン ティアの 現 状を 観てみ ると,例 え ば ,全国 社会福祉協 議会が把 握 しているボ ランティ ア の人数(ボ ランティ ア 団体に所属 するボラン ティアの 人 数と ,個人 で活動す る ボランティ アの人数 を 合計) では , 1985 年には 280 万人 であったが ,阪神・ 淡 路大震災が 起きた 1995 年には 500 万人,2005 年には 730 万人,2011 年には 860 万人となっ ている (全国社会 福 祉協議会 2015).ま た, 総務省 が実施し た 「平成 23 年社会 生活 基本調査」 に よれば,年 に1回以 上 ,ボランテ ィア活動 を おこなって いる人の 割 合は 26.3%
で あ る ( 総 務 省 2011) . こ の 「 日 本 の ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 参 加 者 は 約 4 人 に 1 人」という 数字から み ると ,実際 のボラン テ ィア人口は 上記の全 国 社会福祉協 議会が把握 する人数 を はるかに超 えると推 察 される. こ れはボラ ン ティア活動 の普及啓発 が進んで き た結果でも あり ,人 々 のなかにボ ランティ ア が定着して きたからと いえる( 渡 邊 2010).
しかしなが ら ,ボラ ン ティア行動 率の変化 を みると ,総 務省の「 社 会生活 基 本 調 査 」 ( 2011) に よ れ ば , 1986 年 ( 25.2%) , 1991 年 ( 30.0%) , 1996 年
(26.9%),2001 年( 28.9%),2006 年(26.2%),2011 年(26.3%)と大きな 変化はなく ,しかも 注 目すべきこ とに ,阪 神 ・淡路大震 災後の 1996 年調査時 点でも,東 日本大震 災 後の 2011 年調査時 点 でも ,行動 者率に大 き な変化はみ ら れ な い の で あ る ( 三 谷 2016) . 三 谷 ( 2016) が 指 摘 す る と お り , ボ ラ ン テ ィア人口は 増加して も ,実際の日 本のボラ ン ティア活動 は ある特 定 層の 人たち にいつも偏 って担わ れ ,成り立っ ているの か もしれない という見 方 もできる.
実際に年齢 層に限っ て みると ,35~39 歳(30.2%),40~44 歳(35.6%),45
~49 歳(33.4%),50~54 歳(30.3%)と 30 年代後半から 50 代前半の 壮年 期 で 活 動 率 が 高 く な っ て い る ( 総 務 省 2011) . こ の 年 齢 層 の 人 は 学 齢 期 の 子 ど もがいるこ とが多く , 学校を通じ たボラン テ ィア活動が なされや す いために見 出された傾 向だと推 察 される(三 谷 2016).
ボランティ ア の活動 分 野は,例え ば,全国 社 会福祉協議 会 (2010) の調査報 告では,ボ ランティ ア 活動を実施 する団体 ・ グループ ( 複数回答 ) では ,「高 齢者の福祉 活動」( 36.3%),「障害者 の福 祉活動」( 31.1%), 「子育て( 乳 幼児)に関 する活動 」 ( 16.0%)と全体的 に 福祉の領域 での活動 が 主流である と は い え , 「 地 域 の 美 化 ・ 環 境 保 全 に 関 す る 活 動 」 ( 21.9%) , 「 ま ち づ く り
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に 関 す る 活 動 」 ( 21.3% ) , 「 青 少 年 ( 児 童 ) の 健 全 育 成 に 関 す る 活 動 」
(19.6%),「教 育・ 文化・ スポ ーツ振興 」 ( 19.1%),「災 害時 のボランテ ィ ア 活 動 」 ( 15.4%) な ど , 多 様 な 分 野 で , 多 様 な 活 動 に 彩 ら れ る よ う に な っ た
(岡本 2005).
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第 3節 若い 世代 のボ ラン テ ィ ア活動 の現 状
我 が 国 の 将 来 を 担 う 若 い 世 代 の ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 に つ い て も , 1995 年 の 阪 神・淡路大 震災を契 機 として ,地 域社会に い る若い世代 のボラン テ ィア意識も 急速な高ま りをみせ て ,近年,国 内外を問 わ ず学生を中 心にボラ ン ティア活動 は様々な展 開をみせ て いる.近年 ,前述の と おり政府の 青少年の 教 育施策の一 環として, 「ボラン テ ィア活動」 が活用さ れ ていること からも , そ の教育を受 けて育った 若い世代 で の「ボラン ティア活 動 への参加」 が着実に 広 がるのでは ないかと期 待された .
しかしなが ら ,前記 の 総務省(2011)が行っ た「平成 23 年社会生 活基本調 査 」 で は , 20 歳 代 の 若 者 に お け る 1 年 間 に 「 ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 」 を 行 っ た 割 合が,他の 世代に比 べ 低く ,調査 対象者全 体 の 2割に満 たなかっ た .また ,大 学生のボラ ンティア 活 動参加経験 は ,教育 課 程での活動 経験も含 め ると 8割程 度 ( 荒 川 ほ か 2008) に も な っ た が , 「 小 ・ 中 ・ 高 等 学 校 の 授 業 の 一 環 と し て 」 のボランテ ィア活動 体 験は ,大学 入学以降 の ボランティ ア活動に 結 びつかない こと(荒川 ほか 2006)が示され た . そし て,諸外国 との活動 状 況の比較で も , 例 え ば , 内 閣 府 ( 2009) が 世 界 の 5 カ 国 の 青 年 ( 18~ 24 歳 ) を 対 象 に 実 施 し た第8回「 世界青年 意 識調査」に よると , 「 現在 ,活動 している 者 」は ,アメ リ カ ( 17.6% ) が 最 も 高 く , 韓 国 ( 8.2% ) , イ ギ リ ス ( 7.0% ) , フ ラ ン ス
(6.3%),日本(5.6%)の順とな っている . また ,同じ く内閣府 ( 2013)が7 カ国の青年 ( 13~29 歳)を対象 に実施し た 平成 25 年度「我 が国 と諸外国の 若 者の意識に 関する調 査 」では ,「 ボランテ ィ ア活動に興 味がある 者 」は ,アメ リ カ ( 61.1% ) が 最 も 高 く , 韓 国 ( 56.9% ) , イ ギ リ ス ( 50.6% ) , ド イ ツ
(50.4%),スウ ェー デン( 42.8%),フラ ンス( 42.6%),日本 (35.1%)の順 となってい るなど , ボ ランティア 活動に対 す る意識も諸 外国に比 べ 低い.この ように,大 学生を中 心 とした若い 世代での 「 ボランティ ア活動」 へ の継続的な 参加行動や ボランテ ィ ア活動に対 する意識 が 定着したと は言い難 い . 現在の大 学 生 は , 「 総 合 的 な 学 習 の 時 間 」 が 本 格 的 に 実 施 さ れ た 世 代 に も 拘 わ ら ず ,
「ボランテ ィア活動 」 への参加が 定着せず 伸 び悩んでい るの だろ う か.
これからの 少子高齢 化 の社会を考 えていく と ,ボランテ ィア活動 が 果たす社 会的役割の 高まりと 共 に ,次世代 を担う大 学 生を 代表と する 若者 の ボランティ ア活動への 参加への 期 待は大きく ,今後の 持 続可能な社 会の実現 に は若者の積
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極的な参加 は不可欠 で あると考え られる. ま た ,「人間 力の向上 」 の国際的通 用 性 と い う 視 点 か ら , OECD で は DeSeCo ( Definition and Selection of Competencies:Theoretical and Conceptual Foundations )により 「キー・コ ンピテンシ ー( Key Competencies)」が提 起 され たが, ボランテ ィ ア学習から 得 ら れ た 能 力 ・ 技 術 は , こ の 「 キ ー ・ コ ン ピ テ ン シ ー 」 の 評 価 基 準 を 十 分 に 満 た し , キ ャ リ ア 教 育 に と っ て も 有 効 な 教 育 で あ る ( 齋 藤 2010) と 捉 え ら れ ている.そ して, 主 体 的なボラン ティア活 動 は ,大学生 を社会に 送 り出す大学 教 育 に お い て ( 工 藤 2012) , 主 体 的 学 習 へ と 学 生 を 転 換 さ せ る ア ク テ ィ ブ ・ ラ ー ニ ン グ の 現 場 ( 中 央 大 学 2017) と し て 捉 え ら れ た こ と か ら も , 大 学 教 育 におけるボ ランティ ア 活動 の果た す役割 へ の 期待は大き く,「ボ ラ ンティアの もつ教育力 」の可能 性 は今後さら に高まる ( 齋藤 2010)と考えら れる .
このように ボランテ ィ ア活動が果 たす役割 の 重要性は , 今後益々 高 まると考 えられる. しかしな が ら,ボラン ティア組 織 や大学等の 教育機関 は ,若者にと って,本質 的に魅力 を 感じるボラ ンティア 活 動とはどの ようなも の なのか,全 体 像 を 把 握 で き ず に 推 進 活 動 が 行 わ れ て い る の が 現 状 で あ る ( 仁 部 2006) . また,「大 学とボラ ン ティア活動 」を結合 し た研究や実 践は,端 緒 についたば か り で あ る ( 齋 藤 2010) . そ こ で , ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 を ど こ に も あ る , だ れ もが携われ る活動と し て ,さらに 推進・普 及 させるため には ,特 に ,次世代を 担う若者の ボランテ ィ ア行動に関 してボラ ン ティア活動 推進の観 点 からの実証 的な研究が 求められ て いるのであ る.
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第2章 先行研究の概要
第 1節 ボラ ンテ ィア 行 動 に 関す る 研究
ボランティ ア活動 に 関 する研究は ,社会学 に 限らず ,心 理学,経 済 学 ,政治 学 , 哲 学 な ど さ ま ざ ま な 学 問 分 野 で の 研 究 対 象 と な っ て い る ( 三 谷 2016) . 我が国でも ,以前は , 社会福祉分 野のもの が 圧倒的に多 かったが , 近年では , 社会学や教 育学はも ち ろんのこと ,経済学 , 経営学や哲 学 ,心理 学 などの分野 においても ,ボラン テ ィアに関す る論文等 が 多数発表さ れるよう に なってきた
( 筒 井 2002) . そ し て , ボ ラ ン テ ィ ア は さ ま ざ ま な 領 域 に ま た が る 活 動 ・ 実 践 で あ り , そ の 研 究 も 複 数 の 領 域 に ま た が り , 学 際 的 に 行 わ れ て き た ( 内 海 2000).このように ボ ランティア が大きな 学 術的関心を 集めるの は ,ひとえに この社会現 象がもつ 多 層的な現代 的意義に あ る(三谷 2016).
実証的な研 究のひと つ の観点とし ては,ボ ラ ンティア行 動も人間 の 行動のひ とつである ことから , その行動を 引き起こ す 心のメカニ ズム を解 明 することが で き れ ば , ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 の 現 場 に 役 立 つ と 考 え ら れ る ( 妻 鹿 2006) . そ して,人間 の様々な 行 動の内的 メ カニズム の 解明は,多 くは心理 学 の分野で研 究されてき た.
心理学での ボランテ ィ ア活動など の研究は , 社会心理学 の領域で 主 に取り扱 われ,ボラ ンティア 行 動のような 「他者を 助 け る」行動 自体は, 向 社会的行動
(prosocial behavior)の一部で ある援助 行 動 (helping behavior)の1つの 形態(青山 ほか 2000, 伊藤 2011)として ,一般的に 位置づけ ら れてきた. そ して,人々 が多くの 労 力を見知ら ぬ人のた め に払うのか というこ と に ,社会心 理学者は興 味をいだ い てきた (大 嶺 2000).
そもそも, ボランテ ィ ア活動をは じめとす る 人助け行動 に関する 研 究 の歴史 は 他 の 研 究 主 題 に 比 べ 新 し く , 1960 代 以 降 か ら ア メ リ カ で 次 第 に 盛 ん に な っ た(高木 1998).援 助行動研究 の開始の 引 き金となる 事件が 1964 年にニュー ヨ ー ク で 起 き た キ テ ィ ・ ジ ェ ノ ビ ー ズ 嬢 殺 害 事 件 で あ る ( 高 木 1998) . 早 朝 , アパートに 帰宅した 女 性が駐車場 で暴漢に 襲 われ,多く の住人が 事 件にきづい た に も か か わ ら ず , 誰 も 彼 女 を 助 け な か っ た 事 件 で あ る ( LATANÉ & DARLEY 1970).この事件が 新 聞に報道さ れると, 心 理学者・社 会学者・ 文 化人類学者 な ど の 社 会 科 学 者 は , そ れ ぞ れ の 専 門 領 域 か ら 独 自 の 考 え を 発 表 し た ( 高 木
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1998).この研究に 代 表されるよ うに,主 た る 援助行動 の 研究テ ー マは,援助 場面に遭遇 した場合 , 「人はなぜ 他者を助 け るのか (逆 に,助け な いのか )」
という疑問 からきて お り,研究者 はそれぞ れ 独自の視点 や目標を 設 定して,そ れ に 答 え る 研 究 努 力 を 続 け て き た ( 妹 尾 2005) . し か し な が ら , 現 実 の わ れ われの生活 において , 他者との関 係は決し て 一過的なも のばかり で はない(西 川 1997) こ と か ら , 次 第 に , 従 来 の 研 究 が 抱 い て い た 疑 問 が , 援 助 の 効 果 を 期 待 し た 計 画 的 ・ 相 互 的 ・ 組 織 的 な 援 助 行 動 に も 向 け ら れ ( 妹 尾 2005) , 今 日のボラン ティア行 動 をテーマと した研究 に 繋がる ので ある .
11 第 2節 ボラ ンテ ィア 行動 の 心 理学的 研 究
1 .心 理 学的 研究 の 概 観
我が国の社 会心理学 で ,ボランテ ィアに注 目 した先駆的 研究は, 広 瀬らの研 究 ( 広 瀬 1993, 杉 浦 ・ 大 沼 ・ 野 波 ・ 広 瀬 1998) で あ ろ う ( 渥 美 2002) . 人々のボラ ンティア 活 動意識の高 まりやボ ラ ンティア自 身への多 様 な内面的影 響が示唆さ れ,また , ボランティ ア体験学 習 が教育的役 割として 期 待されるこ とから,我 が国のボ ラ ンティア活 動に関す る 心理学的研 究も次第 に 増えてきた . しかしなが ら,従来 の 援助行動と 一線を画 し て,ボラン ティ ア行 動 を取り扱っ た研究の歴 史は浅く 研 究蓄積はま だまだ少 な い.研究テ ーマも「 人 はなぜボラ ンティア活 動をする の か」という ボランテ ィ ア活動への 参加動機 の 解明が主体 の段階であ る .
現状の我が 国のボラ ン ティア研究 では,ボ ラ ンティア活 動のさら な る普及・
推進を図る ための知 見 を得るには 十分とは 言 えない.そ もそも, ボ ランティア 研究自体の 研究蓄積 が 少ないこと もあり, ボ ランティア 活動への 参 加行動の生 起・循環過 程を 構造 的 に捉えた研 究はほと ん ど見られず ,現状, ボ ランティア 行動を引き 起こす内 的 メカニズム を解明す る には至って いない. そ して,ボラ ンティア活 動の普及 ・ 推進を図る 観点から の 実証的な研 究は,こ れ までほとん どなかった .
そこで,ボ ランティ ア 行動 を規定 する 要因 の 分析に関わ りの深い , ボランテ ィア活動へ の参加動 機 ・ボランテ ィア活動 イ メージ ・ボ ランティ ア 活動の参加 成果(援助 成果)に つ いて先行研 究を概観 の うえ,ボラ ンティア 活 動のさらな る普及・推 進を図る 観 点から,そ れらの先 行 研究の 全体 的な 課題 を 論じる.
2 .参 加 動機 に関 する 研究
現在,ボラ ンティア 活 動への心理 学的アプ ロ ーチとして は,ボラ ン ティア活 動が古くか ら根付い て いる欧米で は,人々 の 参加動機 (motivation)の解明が重 要なテーマ のひとつ で あった.研 究者( e.g., CNAAN & GOLDBERG-GLEN 1991,
HARRISON 1995,TRUDEAU & DEVLIN 1996,CLARY, SNYDER, RIDGE, COPELAND,
STUKAS,HAUGEN, & MIENE 1998)は,そ れを解き明 かそうと し てきた.例 え
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ば , CLARY ら ( 1998) は , ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 へ の 参 加 動 機 を 「 価 値 」 「 理 解 」
「社会」「 キャリア 」 「防衛」「 強化」と い う 6種類に 理論的に 分 類し,実証 的研究を行 った .こ の 課題は,い わば,「 人 々は,なぜ ボランテ ィ ア活動に参 加したいと 考えるの か 」という参 加動機の 普 遍的な疑問 に迫るこ と である.そ して,これ までの研 究 からボラン ティア活 動 への参加行 動に影響 を 与える様々 な 要 因 が あ る こ と が 示 さ れ て い る . 例 え ば , SMITH( 1994) に よ れ ば , こ れ ま での研究に おいては , 参加決定要 因として 文 脈要因(例 えば,コ ミ ュニティの 大小など) ,社会的 背 景要因(例 えば,学 歴 など),パ ーソナリ テ ィ要因(例 えば,内的 統制者か な ど),状況 的要因( 例 えば,参加 を頼まれ た かなど),
態度要因( 例えば, そ の組織が魅 力的かな ど )が検討さ れている .
ボランティ ア活動へ の 参加動機自 体につい て は,様々な 研究が欧 米 を中心に されている が,桜井 ( 2002)は,ボランテ ィ ア活動への 参加動機 に 関する動機 構造をどの ように捉 え るかによっ て,次の よ うに 3つの 研究群に 分 類した.第 1の研究群 は,例え ば FLASHMAN, & QUICK(1985)などのボ ラ ンティアの 参 加行動は「 利他主義 」 (altruism)の表出し た 行動である とする見 方 (利他的動 機アプロー チ)であ る .第 2の研 究群は, MURNIGHN, KIM, & METZGER(1993)
などのボラ ンティア 活 動への参加 は利己的 ( egoistic)な動機に 基 づいてされ る と 考 え る 見 方 ( 利 己 的 動 機 ア プ ロ ー チ ) で あ る . 第 3 の 研 究 群 は , STORY
( 1992 ) , PUFFER ( 1990 ) な ど の ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 へ の 動 機 は 複 数
(multiple)の因子 に よって構成 されてい る と考える見 方(複数 動 機アプロー チ)である .現在の と ころ複数の 因子で構 成 されている とする「 複 数動機アプ ローチ」が 主流の捉 え 方となって いる (桜井 2002).例えば,STORY ( 1992)
は「利他動 機」「利 己 的動機」の 2因子, PUFFER (1990)は「規 範的動機」
「合理的動 機」「愛 着 的動機」の 3因子を 示 した.
我が国でも 近年にな っ て,ボラン ティア活 動 への参加動 機に関す る 研究は,
この複数因 子を仮定 し た捉え方に 基づいて 行 われる調査 研究が主 な 流れとなっ てきている .例えば , 西浦( 1999)では, 「 自己志向」 「交流志 向 」「社会志 向」の3因 子,青山 ほ か (2000)では,「 自 発的動機」 「共感的 動 機」「報酬 期 待 動 機 」 「 社 会 的 規 範 動 機 」 「 技 術 ・ 知 識 の 活 用 動 機 」 の 5 因 子 , 谷 田
(2001)では,「サ ー クル活動の 一環」「 利 他心」「福 祉ボラン テ ィア活動の 大切さを実 感」「民 主 的社会の理 想の実現 」 「不充足感 」「周囲 の 人々の期待 」 の6因子, 松岡・小 笠 原( 2002)では,「 社 交」「学習 ・経験」 「 個人的興味 」
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「キャリア 」「自己 陶 冶」「組織 的義務」 「 社会的義務 」「スポ ー ツ」の 8因 子が明らか にされて い る など,ボ ランティ ア 活動への参 加動機 に つ いては 様々 な捉え方が ある.
しかしなが ら ,最も 重 要なテーマ のボラン テ ィア活動へ の参加動 機 の解明で は,ボラン ティア活 動 の経験者を 対象とす る ものが主体 であり, ボ ランティア 活動への参 加志向は あ るが,「参 加機会が な い」などの ボランテ ィ アの予備軍 を含めた参 加志向動 機 の構成要因 に関して は あまり検討 されてこ な かった.逆 に,参加機 会はある が ,「参加意 志がない 」 などのボラ ンティア 不 参加者の研 究はほとん どなく, 不 参加志向動 機の構成 要 因に関して は解明さ れ てこなかっ た.ボラン ティア活 動 の未経験者 を含めた 参 加志望者へ の働き掛 け なくしては , ボランティ ア活動の 一 層の広がり は考え ら れ ないことか ら,活動 経 験者に留ま らず経験は ないが, 機 会等があれ ば,活動 に 参加したい と考えて い る参加志望 者を含めて ,ボラン テ ィア活動へ の参加動 機 の解明が必 要である . 一方,参加 経験者のう ち参加非 志 望者が何故 に参加し た いと思わな くなった の か,参加未 経験者のう ち参加非 志 望者が何故 に参加し た いと思わな いのかが 解 らなければ , ボランティ ア活動の 普 及・推進の 具体的方 策 は考えられ ないため , ボランティ ア活動に対 する不参 加 動機の解明 も必要で あ る.ボラン ティア活 動 への参加行 動の促進や 参加行動 の 定着に繋が る知見を 得 るには,ボ ラン ティ ア 活動の経験 者に加え未 経験者を 含 めた検討が 必要であ る .
3 .イ メ ージ に関 する 研究
ボランティ ア活動を 対 象とした研 究では, ボ ランティア 活動への 参 加動機に 関する研究 の他に, イ メージから 人々がボ ラ ンティア活 動をどの よ うに捉えて いるのかが 研究され て きた.行動 とイメー ジ の関係につ いて, BOULDING,K.
E. ( 1956) は , 「 イ メ ー ジ が 変 わ れ ば , そ れ に 応 じ た 行 動 を す る よ う に な る 」 として,人 間の行動 は イメージに 依存し「 あ る人の過去 経験の総 合 的結果とし てイメージ ができあ が る」 ,そし て, 「イ メ ージの一部 はイメー ジ 自身の歴史 である」と 述べてい る .小澤( 2001)も,「 ある対象や 人物に一 旦 付着したイ メージは, われわれ の 行動選択の 場面で, 大 きな影響力 をもつ こ と が明らかに されている (スキー マ 理論)」 , また,「 自 己に対する イメージ は ,われわれ の生き方を 規定して い るとさえ言 うことが で きる」 とし て,人々 の 「ボランテ
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ィア」に対 するイメ ー ジを把握す ることが 肝 要であると した.し た がって,ボ ランティア 活動イメ ー ジに焦点を 当てるこ と は,若者の ボランテ ィ ア活動の推 進を考える うえで意 義 があると言 える.ま た ,学校教育 に おける ボ ランティア 活動には, ボランテ ィ ア活動への 理解を促 し たり,高齢 者や障害 者 に対する理 解を深めた りする効 果 も期待され ,ボラン テ ィア活動の 教育的効 果 を考えるう えでも意義 があると 言 える (岡鼻 2013).
ボランティ ア(活動 ) に対するイ メージに 関 する調査研 究では, 例 えば,新 出ほか(1998)は,長 野オリンピ ックにお け るボランテ ィアを対 象 とする調査 から,ボラ ンティア 活 動に対する イメージ を 捉えること で,特定 の ボランティ ア活動に対 する認識 や 態度などの 特徴を見 出 せることを 明らかに し た.青少年 のボランテ ィアに関 す るイメ ージ の研究で は ,ボランテ ィアとい う 言葉と具体 的な行為を 結びつけ て ,ボランテ ィアに対 す る認識を実 証的・定 量 的に調査し た 荒 川 ほ か ( 2008) に よ る 医 療 福 祉 を 学 ぶ 大 学 生 を 対 象 と し た 研 究 が あ り ,
「ボランテ ィア」に 対 するイメー ジには「 ボ ランティア 活動(あ る いは活動者 ) に求められ る事柄」 が 含まれるこ と,そし て 「ボランテ ィア」に 対 する認識は 多 様 で 曖 昧 で あ る こ と を 明 ら か に し た . ま た ,伊 藤 ( 2002) は , 短 大 生 ・ 大 学 生等を対象 として, ボ ランティア について 抱 くイメージ を中心に , 彼らの経験 や環境,自 己評価等 の 関連を探究 した.こ の 研究では, ボランテ ィ アイメージ が楽しさや 面白さな ど に 快楽化す る一方 , 多 様な構造を 持ってい る 可能性があ ること,学 校教育の 中 でのボラン ティア経 験 と学校教育 後のボラ ン ティア活動 の現状やボ ランティ ア イメージと の関係は 見 出すことが できなか っ たことなど が示された .大束ほ か (2004)は,大学生 を 対象とした ボランテ ィ アイメージ の調査から ,活動当 事 者側とはか なり食い 違 っている点 があるこ と を示した.
大学生は, 「自己実 現 」イメージ を抱 いて い るが ,活動 当事者側 は ,無償・自 発などの「 従来 型」 イ メージを大 学生 が抱 い ていると 捉 えがち で あ り,その食 い違いが両 者の軋轢 を 生んでいる のではな い かと指摘し た.
しかしなが ら,多く の 先行研究で は,調査 対 象者のボラ ンティア 活 動に関す るイメージ を把握す る ことが主眼 となって お り,ボラン ティア研 究 の最も重要 なテーマと しての参 加 動機・不参 加動機と の 関連性が明 確となっ て いない.例 えば,ボラ ンティア 活 動に関する イメージ と 参加意識等 との関連 を 検討した先 行研究(柴 崎 1997,伊藤 2002,倉掛・大 谷 2004)でも, ボラ ンティア活 動 に関して参 加意識と し て参加志望 か参加非 志 望か,ある いは積極 的 か消極的か
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という二律 的検討に と どまってお り,ボラ ン ティア活動 イメージ が ボランティ ア活動への 参 加行動 や 不参加行動 を引き起 こ す心理的要 因として の 参加志向動 機と不参加 志向動機 の 各構成要因 にどのよ う に影響を与 えるのか と いうことに ついては, 構造的な 検 討がされて こなかっ た .そして, 若者のボ ラ ンティア活 動への参加 行動の促 進 や参加行動 の定着に 繋 がる知見を 得るには , 行動とイメ ージとの関 連性の重 要 性を考える と, ボラ ン ティア活動 に対する イ メージの実 証的分析と ともに, ボ ランティア 活動への 参 加志向はあ るが,「 参 加機会がな い」などの ボランテ ィ ア 予備軍を 含めた参 加 志向動機, 逆に,参 加 機会はある が,「参加 意志がな い 」などのボ ランティ ア 不参加者を 含めた不 参 加志向動機 との関連な どの包括 的 な検討も必 要である . また,質問 項目の選 定 手続きが曖 昧であった り,既存 調 査の項目を 用いて実 施 されるなど ,最近の 若 者が抱くボ ランティア 活動イメ ー ジと乖離し ている可 能 性がある. 特に, 2011年の東日本 大震災以降 は,若者 が 抱くボラン ティア活 動 イメージも 大きく変 容 している可 能性がある .
4 .参 加 成果 に関 する 研究
ボランティ ア活動の 援 助成果に関 する研究 は ,高木( 1997)が提起 した援助 行動の生起 過程に関 す るモデルに おいて導 入 された概念 がその端 緒 となってい る.従来の 援助行動 研 究が主とし て着目し て きたのは, 援助提供 に よって被援 助の問題が どれだけ 解 決したかと いう被援 助 者への効果 ・影響で あ った(妹尾 2001).しかし,ボ ラ ンティア元 年と呼ば れ た 1995年以降,例え ば ,ボランテ ィア活動は ,従来あ っ た「他者の ため」と い う一義的な 目的のみ な らず,自己 啓 発 や 自 己 実 現 の 場 と し て , 人 々 に 認 識 さ れ て い る ( 妹 尾 2001) こ と か ら , 高木(1998)は,援 助 を提供する ことが提 供 後の援助者 に及ぼす 肯 定的効果に 注 目 し , こ れ を 「 援 助 成 果 」 と 概 念 化 し て ( 西 川 2000) , 援 助 の 被 援 助 者 へ の 効 果 で あ る 「 援 助 効 果 」 と を 区 別 し て 用 い た ( 妹 尾 2001) . そ し て , 援 助 行動の一形 態として の ボランティ ア活動の 援 助成果に関 する研究 で は,例えば , 高木・玉木 ( 1996)は ,阪神・淡 路大震災 時 に活躍した 若者ボラ ン ティアが,
活動を通じ て認識変 化 や自己変革 をもたら さ れたと報告 している . 妹尾・高木
(2003),妹尾(2008)は,中高 年者と若 者 の調査から ボランテ ィ ア活動の経 験を通じて 援助成果 を 得ており, 援助成果 を 得るほどボ ランティ ア 活動継続が
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動 機 づ け ら れ る こ と を 示 し た . 他 に は , 環 境 ボ ラ ン テ ィ ア の 研 究 ( 安 藤 ほ か 1999) , 介 護 ボ ラ ン テ ィ ア の 研 究 ( 青 山 ほ か 2000) な ど で 継 続 要 因 の 援 助 成 果にも関心 が向けら れ ている.こ れらの研 究 では,ボラ ンティア が ボランティ ア 活 動 を 通 じ て 何 ら か の ポ ジ テ ィ ブ な 成 果 を 得 て い る こ と を 示 し た ( 妹 尾 2005).さらに,妹 尾 ( 2005)は,援助行 動 を経験した 後の援助 者 自身に及ぼ す心理的効 果・影響 に 着目し,そ の生起 メ カ ニズム とそ こにおけ る 経験が果た す機能を明 らかにす る ことを通じ て,援助 行 動に関する モデルを 示 した.この モデルの援 助行動は , ボランティ ア活動を 対 象とした一 連の研究 か ら導かれた ものである ことから , ボランティ ア行動の 生 起過程モデ ルともい え る.このモ デルは援助 者の状況 要 因や参加動 機の規定 因 などを統合 したモデ ル には至って いないが, 従来,社 会 心理学で扱 われてき た 緊急場面等 など一過 性 の援助行動 の生起過程 モデルで は なく,継続 的・組織 的 な援助行動 としてボ ラ ンティア行 動の生起過 程を扱っ た という点で は,ボラ ン ティア行動 の生起過 程 モデルの先 駆けとなる ものであ る .
このように 援助成果 の 研究はまだ 少な く, 活 動経験を通 じて得ら れ た実感と し て の 援 助 成 果 に 関 す る 調 査 研 究 が 主 で あ り , ボ ラ ン テ ィ ア 行 動 へ 向 か う 前 の参加経験 から得た い 成果への期 待につい て は,検討さ れていな い .また,ボ ランティア 活動イメ ー ジに関する 研究と同 様 にボランテ ィア活動 の 経験者を対 象とするも のが主体 で あり,ボラ ンティア 活 動への参加 志向はあ る が,「参加 機会がない 」などの ボ ランティア の予備軍 を 含めたボラ ンティア 活 動の未経験 者がほとん ど検討対 象 となってい ない.そ し て,ボラン ティア活 動 経験を通じ て得たい援 助成果の 期 待と参加行 動 ・不参 加 行動を引き 起こす参 加 志向動機と 不参加志向 動機の各 構 成要因への 影響につ い ては,構造 的な検討 が されてこな か っ た . そ し て , 若 者 が 分 析 対 象 に も 拘 わ ら ず , 妹 尾 ・ 高 木 ( 2003) が 中 高 年を対象と した調査 デ ータから作 成された 援 助成果の測 定尺度に よ って若者を 対象に調査 した研究 が 散見され, 若者が抱 く 援助成果の 構成要因 を 的確に捉え ていない可 能性があ る .
しかしなが ら,若者 の ボランティ ア活動へ の 参加行動の 促進や参 加 行動の定 着に繋がる 知見を得 る には,ボラ ンティア 活 動を動機づ ける要因 と して,そも そも若者は ボランテ ィ ア活動へ の 参加経験 か ら何を得た いと考え て いるのかと いう参加成 果の期待 を 実証的に分 析するこ と が必要であ る.そし て ,ボランテ ィア活動へ の参加志 向 はあるが, 「参加機 会 がない」な どのボラ ン ティア予備
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軍を含めた 参加志向 動 機,逆に, 参加機会 は あるが,「 参加意志 が ない」など のボランテ ィア不参 加 者を含めた 不参加志 向 動機との関 連などの 包 括的な検討 も必要であ る.妹尾 ・ 高木( 2003)が援助 後 の援助成果 は,その 後 の援助行動 を動機づけ る心理的 な 中核要因と なること を 示したが, そもそも ボ ランティア 行動に向か う前に抱 く 参加 成果の 期待を検 討 するこ とは ,ボラン テ ィア行動の 生起・継続 メカニズ ム に迫る有効 な視座で あ り,ボラン ティア活 動 の一層の推 進にとって 必要であ る .
5 .先 行 研究 の課題
ボランティ ア行動に 関 する心理学 的研究に 関 して,ボラ ンティア 活 動推進の 観点から今 後検討す べ き課題を整 理・列挙 す ると, 下記 の課題 が あ ると考えら れる.
(1)ボラ ンティア 活 動の未経験 者を含め て ボランティ ア活動へ の 参加行動・
不参加行動 を規定す る 要因として ,ボラン テ ィア活動へ の参加志 向 動機・不参 加志向動機 およびボ ラ ンティア活 動イメー ジ とボランテ ィア活動 の 参加成果志 向に関する 構成要因 を 解明するこ とが必要 で あること .
(2)ボラ ンティア 活 動への参加 行動・不 参 加行動 を規 定する 中 核 的な 要因と しての参加 志向動機 ・ 不参加志向 動機 と他 の 要因 との関 連性を構 造 的に検討す る必要があ ること .
(3)特定 分野のボ ラ ンティア活 動に対す る 調査研究で はなく, ま た,災害救 済など非日 常的なボ ラ ンティア活 動に対す る 調査研究に 限定せず , ボランティ ア活動の全 般領域に 亘 る普遍的な 検討が必 要 であること .そして , 一過性の援 助行動とボ ランティ ア 行動を区別 した検討 が 必要である こと .
(4)自分 自身のボ ラ ンティア経 験の有無 と は別に,取 り巻く環 境 の差,特に , 身近なボラ ンティア 経 験者の有無 によって , 参加志向動 機・不参 加 志向動機へ の影響の差 異がある 可 能性がある ため,環 境 要因として の身近な ボ ランティア
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経験者の有 無と参加 志 向動機・不 参加志 向 動 機への影響 を検証 し て おく必要が あること.
( 5 ) 日 常 の 対 人 行 動 と し て の 援 助 行 動 は 人 と 人 と の 相 互 関 係 に あ る こ と か ら,日常の 一過的な 援 助行動・被 援助行動 の 経験が,相 互要因と し て継続的な 援助行動の ボランテ ィ ア行動へ影 響を及ぼ す 可能性があ るため, 日 常の援助行 動・被援助 行動の経 験 とボランテ ィア行動 へ の参加志向 動機・不 参 加志向動機 への影響を 検証して お く 必要があ ること .
(6)人は 何らかの 満 たされない 欲求をも っ ているとき に,その 欲 求を満たそ う と 探 究 行 動 を と る ( 妻 鹿 2006) と 考 え ら れ る た め , 若 者 に 潜 在 す る 心 理 的 欲求とボラ ンティア 活 動への参加 志向動機 ・ 不参加志向 動機およ び 参加成果志 向との関係 性を検証 し ておく 必要 があるこ と .
( 7 ) ボ ラ ン テ ィ ア 行 動 を 単 発 的 な 行 動 に 終 わ ら せ ず , 好 循 環 行 動 や 定 着 行 動となるに は,ボラ ン ティア活動 の参加経 験 の主観的な 質(参加 の 満足度等)
が鍵になる と考えら れ るため,参 加 経験の 主 観的な 質が 今後の参 加 行動に及ぼ す影響を検 証してお く 必要がある こと.
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第3章 本論文の目的と構成
第 1節 本論 文 の目 的 と 用語の 整 理
1 .本 論 文の 目的
我が国のボ ランティ ア 活動の現状 と問題点 を 踏まえ先行 研究等か ら 見えた課 題に基づい て,本論 文 は,大学生 を対象と し て青 年期に おけるボ ラ ンティア活 動全般への 参加行動 や 不参加行動 を引き起 こ す 内的メカ ニズム を 明 らかにする ことによっ て,今後 の 若者のボラ ンティア 活 動の推進や 教育過程 で のボランテ ィア教育の あり方に 繋 がる知見を 得ること を 目的とした .
具体的には ,大学生 の ボランティ ア活動の 経 験者および 未経験者 を 対象とし て,ボラン ティア活 動 全般に関し て,以下 の 4点を目的 として検 討 ・検証を探 索的に進め ,ボラン テ ィア活動の 推進の観 点 か ら統合理 論モデル と して, ボラ ンティア行 動への生 起 ・促進モデ ルの提案 を 試みること を本論文 の 最終目標と する.
第1の目的 は,大学 生 のボランテ ィア活動 へ の参加行動 や不参加 行 動を規定 する中核の 要因とし て ,ボランテ ィア活動 の 参加志向動 機および 不 参加志向動 機の構成要 因を明ら か にすること である.
第2の目的 は,大学 生 のボランテ ィ ア活動 へ の参加行動 ・不参加 行 動に対し て,密接な 影響を及 ぼ す 要因がボ ランティ ア 活動に対す るイメー ジ と参加成果 の期待とい う参加成 果 志向である ことを明 ら かにするこ とである . 具体的には , 新たにボラ ンテ ィア 活 動イメージ および参 加 成果志向の 各々の構 成 要因を明ら か に し た う え , ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 イ メ ー ジ お よ び 参 加 成 果 志 向 が 参 加 志 向 動 機・不参加 志向動機 に どのように 影響を与 え るのかを構 造的に検 討 する.
第3の目的 は,大学 生 のボランテ ィア活動 へ の参加行動 ・不参加 行 動に対し て,環境要 因および 相 互要因の影 響を明ら か にすること である. 具 体的には,
参加行動・ 不参加行 動 に及ぼす環 境要因と し て,特に身 近なボラ ン ティア活動 経験者に着 目して, そ の有無によ って参加 志 向動機・不 参加志向 動 機が異なる
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のか否かを 検討する . また,参加 行動・不 参 加行動に影 響を及ぼ す 相互要因と して,日常 の 一過的 な 援助行動・ 被援助行 動 の経験が, ボランテ ィ ア行動 の参 加志向動機 ・不参加 志 向動機にど のように 影 響を与える のかを検 討 する.
第4の目的 は, 大学 生 の満たされ ない欲求 と しての 心理 的要求お よ びボラン ティア活動 の参加経 験 の質の 観点 から, ボ ラ ンティア行 動 に向か う メカニズム を明らかに すること で ある .具体 的には, 若 者に内在す る心理的 欲 求とボラン ティア活動 への参加 志 向動機・不 参加志向 動 機および参 加成果志 向 との関係性 を構造的に 検討する . そし て,ボ ランティ ア 活動の経験 の主観的 な 質として,
ボランティ ア活動経 験 の充足度・ 満足度等 に 着目して, 今後のボ ラ ンティア活 動への参加 行動に及 ぼ す影響を検 討する.
2 .本 論 文の 用語 整理
ボラ ンテ ィ アの 語 源と 定着
ボ ラ ン テ ィ ア ( Volunteer) と い う 言 葉 は , 学 術 用 の 専 門 用 語 と し て 考 案 さ れた造語で はない( 海 野 2014).その 語源 は , 英語の Will に相 当する ラテ ン 語の(Volo:意志す る )から派生 した 「ウ ォ ルタンス( Voluntas: 自由意志 ) 」 に 由 来 す る ( 海 野 2014) . そ し て , 人 名 称 の -er を つ け て で き た 言 葉 が ボ ラ ンティア(volunteer) である( 大嶺 2000).
ボランティ アの概念 と 言葉が日本 に入って き たのは,基 本的には 戦 後のこと と考えられ るが,一 般 的に知られ るように な ったのは 1960 年代以 降と言えよ う ( 森 井 1994) . 従 来 , 日 本 で は , ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 に 該 当 す る よ う な 活 動 をしていた 人は,「 篤 志家」とよ ばれてい た が, 近年, ボランテ ィ ア活動は,
より一般的 な活動に な ってきた結 果, 自発 的 に活動をす る人とい う 意の「ボラ ンティア」 が好まれ て 使われるよ うになっ た .そして, このよう な 「他者への 援助活動を 自発的に す る人」に相 当するこ と ばが日本語 にはない た めに,また , そ の 活 動 の 多 様 性 か ら , 外 来 語 の 「 ボ ラ ン テ ィ ア 」 が 定 着 し て い る の で あ る
(大嶺 2000).
21 ボラ ンテ ィ ア活 動 の特 質
ボランティ ア 活動は , ことばで は なかなか 説 明しにくい 行為であ る が(柴田 2010),様々な学問 領 域で ボラン ティア活 動 とは何かを 論じる 際 に は, ボラン ティア活動 が持つ 特 質 から説明さ れること が 多い. 従来 ,例えば 池 田 ( 2006)
は,ボラン ティア活 動 とは「主体 性・社会 性 ・無償性・ 先駆性に 基 づく活動で ある」と説 明した. ま た, 興梠(2003)は, ボランティ ア活動の 理 念として,
「 主 体 性 ・ 非 営 利 性 ・ 公 共 性 ・ 先 駆 性 」 を あ げ て い る . そ し て , 厚 生 労 働 省
(2007)は,「ボラ ン ティアにつ いて明確 な 定義を行う ことは難 し いが,一般 的には「自 発的な意 志 に基づき他 人や社会 に 貢献する行 為」を指 し てボランテ ィア活動と 言われて お り,活動の 性格とし て ,「自主性 (主体性 ) 」,「 社会 性(連帯性 )」,「 無 償性(無給 性)」 等 が あげられる 」として い る.
これらを要 約すると , 柴田 (2010)が述べ て いるように ,ボラン テ ィア活動 とは,「自 分から進 ん で」 (自発 性・主体 性 などの「動 機」によ り ),「お金 の た め で は な く 相 手 や 世 の 中 の た め に 」 ( 無 給 性 ・ 無 償 性 ・ 非 営 利 性 , 公 益 性・公共性 ・社会性 ・ 連帯性など の「目的 」 をもって ) ,「まだ 国 や地方自治 体が取り組 んでいな い ことに挑戦 する」 ( 先 駆性・開拓 性・創造 性 などの「役 割」を果た す )行為 と ,一般的に は捉えら れ てきた.
し か し な が ら , 1970 年 代 後 半 か ら 学 校 教 育 の 中 に ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 が 盛 ん に導入され るになり , 更に近年で は,教育 再 生などの観 点から, ボ ランティア 活 動 を 若 年 層 に 啓 蒙 ・ 普 及 さ せ よ う と す る 動 き が 活 発 に な り ( 水 野 ほ か 2007),また,現在 で は,実費や 交通費を も らい,さら にはそれ 以 上に金銭を 得るボラン ティア活 動 を「有償ボ ランティ ア 」とよんだ りする ( 大 嶺 2000)な ど,実際の ボランテ ィ ア 活動にお いては, 概 念が指し示 す範囲に つ いてのグレ ーゾーンが 広がって お り,ボラン ティアを 特 徴づけるの に不十分 と なってきて い る ( 桜 井 2003) こ と か ら , ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 に つ い て は , 統 一 さ れ た 定 義 はない(新 崎 2005).
ボラ ンテ ィ ア活 動 の定 義
学齢期にお けるボラ ン ティア活動 は学校教 育 と切り離し て考える こ とができ な い ( 田 中 2011) こ と か ら , 大 学 生 の ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 に 関 す る 研 究 を 進 め るには,教 育課程で の 授業等の一 環として の ボランティ ア活動も 含 めて ボラン ティア活動 を幅広く 捉 える必要が あると考 え る.
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したがって , 本論文 で は, 本論文 の目的に 則 して,中央 教育審議 会 ( 2002)
の答申と同 じく「個 人 が能力や経 験などを 生 かし,個人 や団体が 支 え合う,新 たな公共に 寄与する 活 動,具体的 には,自 分 の時間を提 供し,対 価 を目的とせ ず,自分を 含め他人 や 地域,社会 の ために 役 立つ活動」 を可能な 限 り幅広くと らえ,小・ 中・高等 学 校 と大学な ど教育課 程 での授業等 の一環と し てのボラン ティア活動 も含めて , こうした活 動全体を 幅 広く「ボラ ンティア 活 動」とする .
参加 成果 と 参加 成 果志 向 の 定義
妹尾(2001)は,援 助 者が援助行 動後に得 る 満足感や喜 びといっ た 肯定的感 情や自己満 足観を強 調 して,「援 助成果」 を 「向社会的 行動にお い て,他者と の相互作用 を通じて , 援助者自身 が認知す る 心理・社会 的な内的 報 酬」と定義 した.しか しながら , 向社会的行 動の一環 と してのボラ ンティア 活 動は障害の ある人への 支援・お 年 寄りへの支 援などの 直 接的な対人 活動に限 ら ず,自然や 環境を守る 活動など の 非対 人活動 を含む様 々 な活動領域 にも及び , また,ボラ ンティア活 動は, 一 過 的な援助行 動ではな く 継続的な援 助行動で あ ることから , ボランティ ア活動か ら 得る「援助 成果」の 語 義を明確に するため , 本 論文 では ,
「ボランテ ィア活動 を 通じて,ボ ランティ ア 自身が認知 する心理 ・ 社会的報酬 」 をボランテ ィア活動 の 「参加成果 」と呼び , ボランティ ア活動経 験 から得たい 参加成果の 期待を「 参 加成果志向 」とする .
ボラ ンテ ィ ア学 習 ・ボ ラン ティ ア 教育 の 定義
ボランティ ア学習の 定 義には,一 般のボラ ン ティア活動 で起こる 学 びとして 捉えたもの (無意識 的 なものを含 む)と, ボ ランティア 活動の学 習 性に着目し て 意 図 的 な 学 び と し て 構 成 し た も の が あ る ( 長 沼 2014) . 本 論 文 で は , 教 育 過程でのボ ランティ ア 教育のあり 方を探る 意 図もあるこ とから, そ の語義を明 確 に す る た め , 後 者 の 意 味 で ボ ラ ン テ ィ ア 学 習 を 用 い る . 具 体 的 に は , 長 沼
(2010)の定義を援 用 して「ボラ ンティア 活 動の学習性 に着目し て 社会体験学 習として構 成したも の 」とする . また, ボ ラ ンティア教 育 とは, 本 論文では,
長沼豊が「 新しいボ ラ ンティア学 習の創造 」 ( 2008)において概 念 整理した用 法を援用し て「ボラ ン ティア学習 を推進す る ためのシス テムの総 称 」とする.
23 第 2節 本論 文の 構成
本論文は, 序論,本 論 ,総括の3 部構成か ら 成り立つ . 序論の第 1 章では , 本論文の背 景として , ボランティ ア 活動の 現 代的役割・ 意義 を整 理 すると共に , 我が国のボ ランティ ア 活動の 状況 および若 い 世代のボラ ンティア 活 動の現状 に ついて概観 する. 第 2 章では,本 論文の 主 な 研究領域で ある心理 学 的研究を概 観し,その 課題点を 論 じる .第3 章では, 本 論文の目的 と構成を 提 示する.
続く本論で は,大学 生 のボランテ ィア活動 へ の参加行動 および不 参 加行動を 引き起こす 内的メカ ニ ズム を明ら かにする た めに実施し た 8つの 実 証的研究の 検討結果を 報告 する . 第4章では ,まず, 大 学生 のボラ ンティア 活 動への参加 行動・不参 加行動を 規 定する 中核 の要因と し て参加志向 動機およ び 不参加志向 動機の構成 要因を検 討 する (研究 1).続 い て ,ボラン ティア活 動 への参加行 動・不参加 行動 を規 定 する 先行要 因 として 大 学生が抱く ボランテ ィ ア活動に対 するイメー ジ の構成 要 因を検討し , 参加志 向 動機・不参 加志向動 機 に及ぼす影 響を検討す る(研究 2 ).加えて , 先行要 因 として参加 成果 がボ ラ ンティア 参 加志向動機 ・不参加 志 向動機に及 ぼす影響 を 検討する( 研究3) . さらに ,研 究3から明 らかとな っ た課題に基 づいて , 参 加成果の期 待を参加 成 果志向とし て概念化し ,大学生 の 抱く 参加成 果志向の 構 成要因を明 らかにし た うえ ,参加 志向動機・ 不参加志 向 動機に及ぼ す影響を 改 めて検討す る(研究 4 ). 第5章 では,大学 生を取り 巻 く環境要因 のひとつ と して身近な 経験者の 有 無が 参加志 向動機・不 参加志向 動 機に及ぼす 影響を検 討 する (研究 5).さ ら に , 相互要 因として日 常の 一過 的 な 援助行動 ・ 被援助 行 動 経験が参 加志向動 機 ・ 不参加志 向動機に及 ぼす 影響 を 検討する ( 研究6) . 第6章では ,大学生 の 抱く心理的 欲求と参加 志向動機 ・ 不参加志向 動 機なら び に 参加成果 志向との 関 係 を検討す る(研究7 ).そし て ,ボランテ ィア活動 の 参加 経験の 主観的な 質 として ,参 加経験の満 足度等が , 今後のボラ ンティア 活 動への参加 行動 に及 ぼ す影響を検 討する(研 究8).
最後の総括 として , 第 7章では , 本論の実 証 的検討を通 じて明ら か となった 研究結果の 概要をま と め ,一連の 研究の統 合 理論の枠組 みとして , 若者 のボラ
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ンティア行 動 への生 起 ・促進モデ ルを提案 す る. そして ,本論文 の 意義をまと める.最後 に,今後 の 課題 と展望 を示す .
[本論 文の 概 念図 ]
本論文の分 析枠組み と して図示し たものが , Figure3-1 である. こ の 概念図 では,外側 の枠内に は 社会環境が 配置され , 内側の枠内 にはボラ ン ティア 行動 を規定する 要因が表 現 されている .本論文 の 分析枠組み として, こ の概念図の 点線で示さ れた関係 性 を 8つの研 究によっ て 実証してい く.
社会(含む家庭・学校・地域)
[動因] [行動]
[動因] [行動]
<欲求充足/期待> 今後の参加意欲 参加成果志向
身近な経験者 [環境要因]
[先行要因] [事後要因]
参加成果志向
(期待) 参加志向動機 参加経験の質
(実感)
[相互要因]
援助・被援助
行動経験 不参加志向動機 不参加行動
参加行動
<生起・循環>
[満たされない欲求]
Figure 3-1 研究の概念図
(実感) <欲求充足/実感>
イメージ 心理的欲求
[先行要因] [潜在要因]
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[本 論文 の 構成 ]
本論文の構 成を以下 の とおり 提示 する (Figure3-2).
本論
第7章 本論文のまとめ 総括
Figure 3-2 本論文の構成
第1章 本論文の背景
序論 第2章 先行研究の概観
第3章 本論文の目的と構成
第4章 ボランティア活動への参 加行動・不参加行動を規定する 内的要因の検討
[研究1・研究2・研究3・研究4]
第5章 ボランティア活動への参 加行動・不参加行動に及ぼす環 境要因・相互要因の検討
[研究5・研究6]
第6章 心理的欲求・参加経験の 質がボランティア行動に及ぼす影 響の検討
[研究7・研究8]
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第2部 本 論
第 4章 ボラ ンテ ィア 活動 へ の 参加行 動 ・不参 加行動を規 定する 内的要 因の 検討
第 1節 参加 志向 動機 ・不 参 加 志向動 機 の構成 要因[研究 1]
1. 目的
本研究では ,青年期 の ボランティ ア活動 へ の 参加 志向動 機および 不 参加 志向 動機の構成 要因 を明 ら かにし ,若 者のボラ ン ティア活動 推進のた め の 知見を得 ることを目 的とした .
2. 予備 調査 2.1. 方法
調 査 協 力 者 : 本 研 究 の 予 備 調 査 に お け る 協 力 者 は ,首 都 圏 の 4 年 制 大 学 に 通 う 大学生 171 名(男 子 82 名,女子 89 名) で あった .
調 査 方 法 : 2010 年 6 月 に , 青 年 期 に お け る ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 へ の 参 加 志 向 動 機および不 参加志向 動 機を測定す るための 項 目を作成す ることを 目 的に予備調 査 を 実 施 し た .青 年 期 の ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 へ の 「 参 加 志 向 動 機 」 お よ び 「 不 参 加志向動機 」の記述 を 収集するた め,調査 協 力者に,「 ボランテ ィ ア活動の経 験および今 後の活動 希 望」 につい て,① 「 ボ ランティア 活動の経 験 があり,今 後も経験し たい 」② 「 ボランティ ア活動経 験 はあるが, 今後は活 動 に参加する 意志はない 」③「ボ ラ ンティア活 動の経験 は ないが,今 後は活動 に 参加したい 」
④「ボラン ティア活 動 の経験はな く,今後 も 活動に 参加 する意志 は ない」のい ずれかを選 択し,そ の 回答に応じ て次のと お り,ボラン ティア活 動 への参加動 機,ボラン ティア活 動 への不参加 動機を自 由 に記述して もらった . 手続きは,
無記名・個 別記入形 式 の質問紙を 講義時間 中 に配布し, その場で 回 収した.
質問紙には ,上記① と ③のいずれ かを選択 し た協力者に は,「ボ ラ ンティア 活動への参 加動機( 参 加した理由 又は参加 し たい理由) 」を自由 に 記述しても らった.ま た ,上記 ② と④ のいず れかを選 択 した協力者 には,「 ボ ランティア 活動へ参加 しなかっ た 理由又は今 後も参加 し たくない理 由(含む 活 動をやめた