任意の構成関係を有する材料の応力解析に関する 研究
2015 年 12 月
長崎大学大学院工学研究科
伊野 拓一郎
目次
主要記号 3
第1章 緒言 5
1.1 研究背景 . . . 5
1.2 研究目的 . . . 8
1.3 論文の構成 . . . 11
第2章 体積力法による弾性解析68)∼74) 14 2.1 序論 . . . 14
2.2 弾性解析における基礎方程式 . . . 14
2.3 基本解 . . . 16
2.4 直線境界に体積力が分布するときの基本解 . . . 19
2.5 円弧境界に体積力が分布するときの基本解 . . . 23
2.6 剛体変位 . . . 34
2.7 円孔を有する有限板の問題 . . . 36
2.8 結言 . . . 41
第3章 体積力法による傾斜機能材料の解析74) 42 3.1 序論 . . . 42
3.2 介在物における力対埋め込みモデル . . . 42
3.3 解析理論 . . . 47
3.4 結言 . . . 59
第4章 体積力法による弾塑性解析68) 60 4.1 序論 . . . 60
4.2 弾塑性問題における力対埋め込みモデル . . . 60
4.3 領域の離散化 . . . 64
4.4 計算の効率化 . . . 70
4.5 内圧を受ける円孔を有する無限板の弾塑性解析 . . . 74
4.6 円孔を有する無限板および有限板の弾塑性解析 . . . 81
4.7 線形切欠き力学 . . . 84
4.8 結言 . . . 88
第5章 結論·展開 89
付録 91
Goursat の複素応力関数 . . . 91
参考文献 94
謝辞 102
主要記号
各記号の下付き添字,i, j, k, l, m, n, o, p, ξ, η はテンソル記号のダミーインデッ クスであり,x, y, z, r, θ などの成分を表す.
P : 注目点
Q : 着力点
Γ : 境界
ΩP : 塑性領域
ΩI : 介在物領域
σij : 応力
εij : ひずみ
εpij : 塑性ひずみ dεpij : 塑性ひずみ増分
u, v : 変位
Sij : 偏差応力
Γij : 力対の大きさ
σ∞ : 無限遠方から作用する外力 σ0 : 有限板の縁に作用する外力 σij(P) : 注目点P の応力
dσij(P) : 注目点P の応力増分
σ∗ij(P, Qη) : 着力点Qにη方向の単位大きさの集中力が作用 した時に注目点P に生じる応力
σij†(P, Qξη) : 着力点Qにξη方向の単位大きさの集中力対が 作用した時に注目点P に生じる応力
φη(Q) : 着力点Qのη 方向の体積力の密度 Tij(Q) : 着力点Qに作用する体積力対 dTij(Q) : 着力点Qに作用する体積力対増分
Dijkl : 弾性定数テンソル
Cijkl : 弾性コンプライアンステンソル Eijkl : 単位行列
z(=x+iy) : 複素平面上での注目点の座標 z0(=ξ+iη) : 複素平面上での着力点の座標
Ω(z), ω(z) : Goursat の複素応力関数 F(=Fx+iFy) : 集中体積力の複素数表記
ρ(=ρx+iρy) : 体積力の密度の複素数表記
ν : Poisson 比
κ : Kolosov の定数
E : 縦弾性係数,Young 率 G : 横弾性係数
σY : 降伏応力
第 1 章 緒言
1.1 研究背景
有限要素法をはじめとして,現在多くの離散化解析手法が開発されている.離散化 解析手法は大きく分けると、領域型と境界型に分けられる.領域型解法の代表例とし て,有限要素法,有限体積法,有限差分法などがある.これらの解析手法の特徴とし ては,領域全体を離散化し各離散化要素内を近似関数により近似して,支配微分方程 式を解く方法である.特に有限要素法は,1956年にM.J.Turner らが梁の問題に用 いてから,さまざまな改良や発展が行われてきた.1) しかし,領域型解法には本質的 な問題として,領域全体を離散化するため節点番号や節点座標などの入力データを作 成する作業が必要となり計算コストを増大させている.一方,境界型解法は,境界条 件を基に積分方程式を作成し,境界の離散化解析により解を求めるため領域全体の離 散化が必要ないという特徴があり,必然的に領域型解法と比較して計算コストが抑え られる.この境界型解析方法には,境界要素法や体積力法などがある.境界要素法は Betti の相反定理に基づいて積分方程式を構成する.2) 一方,体積力法3)∼26)は重ね 合わせの原理に基づいて積分方程式を構成する.つまり,基本的な応力場の重ね合わ せにより解を得るため,直感的に解を得ることができ,また種々の直感的な工夫が導 入し易いため,高精度の解を得る事が出来る.
この方法は1967年に西谷 弘信が開発した解法である.本章では,本質的な理解の 為に,体積力法の発表の4年前に公開された,だ円孔列を有する無限板の引張りの研 究について注目する.27)∼28) この論文では,Fig.1に示すような円孔列を有する無限 板の問題を取り扱っている.この問題を西谷は,各円孔がそれぞれ,ある大きさの引 張を受ける問題に置き換えて解を得ている.つまり,この問題の境界条件は各円孔の 1点に生じる表面力を境界条件とし,各円孔に作用させる荷重を未知数としている.
Infinite Plate
Unknown
Reference Point
Fig.1 円孔列を有する無限板の引張り
この考え方は体積力法の考え方の基礎になっている.体積力法では,仮想境界を分 割し,適当な大きさの体積力を境界に分布させる事で自由境界を表現している.例え
ば,Fig.2に示すような円孔を有する無限板の問題の場合,円孔仮想境界を分割し,各
境界に体積力を分布させて,各境界の参照点の表面力が境界条件を満たすように仮想 境界に分布させる体積力の大きさを決定する.
Reference Point
Unknown Infinite Plate
Fig.2 円孔を有する無限板の引張り
どちらも,簡単な応力場を重ね合わせる事により目的の解を得ており,解を得るま での過程が非常に直感的である.この問題以外にも,半円切欠きを有する丸棒の引張 りの問題29) でも同様の考え方に基づいて数値解析を行っている.このような考え方 が体積力法の原点になったと,その後,西谷は述懐している.30)∼31)
ここまでは,体積力法における長所を紹介したが,次に,体積力法の短所について 述べる.体積力法に用いる基本解は弾性解であり,各注目点に生じる応力やひずみと 外力は比例関係にある事をうまく利用して目的の解を得ている.そのため,応力-ひ ずみ関係がHooke の法則のみに依らないような問題を体積力法は不得意としている.
方法 43)∼46) がある.力対とは等しい大きさを持ち反対方向の集中力の対で,き裂問
題47)∼48)を解く際などによく用いられてきた.この力対によって微小領域に外力と
は独立した荷重を作用させる事が可能になり,それにより生じるひずみを非弾性ひず みとして取り扱う方法である.これにより取り扱う事が可能となる問題としては,以 下の問題が挙げられる.
• 弾塑性問題
• 熱応力問題
• 粘弾性問題
• 傾斜機能材料の問題
これらの問題は,物理的現象は全く異なるが非弾性ひずみの大きさを決定する構成式 が得られれば,陳らの方法により同じ方法で解を得ることができる.本研究ではこの 事に注目して,上記の問題のうち弾塑性問題と傾斜機能材料の問題に体積力法を適用 し,その高度化を行った.
1.2 研究目的
1.2.1 傾斜機能材料の問題
傾斜機能材料はセラミックから金属へと連続的に組成を変化させる事によって熱応 力を緩和させる事を目的として開発された材料である.開発当初の仕様用途として は,宇宙往還機(スペースプレーン)を想定していたが49),現在では,核融合炉やエ ンジンまた,切削工具50)の材料として用いられている.作成方法としては,ガス51) や放電プラズマ52) による焼結法や,遠心力を利用した方法53) などがある.このよ うに,さまざまな製造方法が提案されており,仕様用途に合わせて自由に材料の組成 設計を行うことが出来るため,傾斜機能材料の設計式を作成する事は不可能である.
そこで,対象の材料組成に合わせて数値解析を行うプログラムの開発が求められる.
先行研究を挙げると,八田 正俊らが介在物の問題として無限板中に一様な材料定数 の介在物がある問題を取り扱っている.54) 彼らは,介在物と母材の間に体積力を分 布させる事により解を得ているため,少ない方程式系で目的の解を得る事が出来る反 面,本研究で取り扱うような材料定数が空間座標の関数として変化するような材料に 関しては同様の解析方法を適用出来ない.そこで,介在物領域の材料定数と母材の材 料定数から力対の大きさを表す式を構成し,陳らの方法を適応させた.本式の検証の 為に,無限板中に円形の介在物がある問題を解くことで検証を行った.この検証の結 果,無限板中の材料定数が任意に変化するような問題についても体積力法を用いて応 力解析を行うことが可能になった.
1.2.2 弾塑性問題
応力集中部に弾性限度内の応力が生じる場合や,応力集中部に生じる塑性域が構造 物の寸法に対して小さい小規模降伏条件にあるときは,弾性解析により,比較的容易 にかつ高精度に現象を予測する事が出来る.そのため,機械構造物の設計を行う際 に,弾性解析を行い,応力集中部の弾性応力状態について検討する事はもちろん重要 であるが,応力集中部の応力が弾性限度を越えた状態についても,構造の強度を検討 する塑性設計を行う事も重要である.その為,弾塑性問題は古くから多くの研究がな されている例えば,山田 嘉昭は日本における有限要素法の第一人者であり,特に非
し有限要素法の拡張を行った.32)∼33) また,粘弾性問題についても有限要素法で取 り扱う事を可能とした.34) そしてこの方法を応用して,塑性領域を有する切欠き底 近傍の応力集中問題を松井が取り扱った.35) 有限要素法以外の解析的手法としては,
弾塑性破壊力学パラメータであるRice のJ積分を用いる方法を久保司郎が研究をし た.36)∼41) 実験的手法では,河田によって皮膜法による光弾塑性解析が提案された.
42) 体積力法においては,陳らが力対の分布により非弾性ひずみを表現する前節の方 法を繰り返し行い,塑性ひずみを表現する.この点が傾斜機能材料の問題との大きく 異なる点である.傾斜機能材料の問題の場合,局所的に材料定数が異なる線形問題で あるが,弾塑性問題の場合,塑性ひずみが荷重履歴に依存するため,応力-ひずみ関係 が非線形である.このことから,弾塑性問題は次に示すような特徴がある.
(i) 塑性領域が降伏条件によって決定される (ii) 塑性ひずみの大きさが荷重履歴に依存する
体積力法では,この特徴を表現するにあたり,塑性領域と思われる領域を離散化し塑 性ひずみに相当する力対を内挿して解析を行う.そのため,解析対象の全領域を離散 化する必要がなく,力対が埋め込まれた弾性問題として解析を行う事が出来る.これ らの長所を有する為,体積力法による弾塑性解析を研究する事は有意義である.そこ で,陳らの示した弾塑性解析の手法と本研究で行った手法の相違点及び改善点を示す.
(i) 塑性ひずみ増分をPrandtl-Reuss の式により決定した.
(ii) 力対を内挿するための離散化をDelaunay 分割により行った.
(iii) 力対を決定する際の解法の効率化を行った.
この (i), (ii), (iii)は一見別々の課題のようであるが,密接に関係している.まず,
“(i) 塑性ひずみ増分をPrandtl-Reuss の式により決定した.”についてだが,陳らは 加工硬化指数H′ に基づいて,塑性マトリックスSijkl を構成し応力増分から塑性ひ ずみ増分を決定し弾塑性解析を行った 59)∼61).それに対して,本手法は塑性ひずみ 増分を塑性構成式と降伏条件に基づいて決定し解析を行った.この塑性構成式は,塑 性ひずみ増分が偏差応力と比例関係にあることを表しており,加工硬化指数に依らず 任意の弾塑性体について解析を行う事が出来る反面,降伏条件が非線形方程式である ため非線形連立方程式により各要素の塑性ひずみの大きさを決定しなければならな い.しかも,“(ii)力対を内挿するための離散化をDelaunay 分割により行った.”に 示すように本研究ではDelaunay 自動分割により予め入力データとして要素データを 用意する事無く多くの要素を生成する事が可能となったため,この非線形連立方程式
の規模は莫大となった.そこで,“(iii) 力対を決定する際の解法の効率化を行った.” の研究に取り組んだ.非線形方程式は各要素の代表点の応力により構成されるため,
各要素に単位大きさの力対が内挿され,また,自由表面の境界条件を満たした各要素 の応力成分を予め計算した.この事により,非線形方程式を構成する代表点の応力を 線形和により構成する事が可能になった.また,この事を様々な形状の応力集中問題 について検証を行った.
1.3 論文の構成
本章では,体積力法の歴史および特徴また,本研究で取り扱う問題についての目的 について述べた.第 2章では弾性解析について取り扱った. 本研究で取り扱う任意 の応力-ひずみ関係を有するような材料でも,すべて力対を埋め込んだ弾性解析に置き 換えて解析を行う為,弾性解析は本研究において非常に重要である.その為,他の章 に比べより詳細に述べた.第3章については,力対の埋め込みによる方法を用いた傾 斜機能材料の問題の解法について述べた.第4章では力対の埋め込みによる方法を繰 り返し用いた弾塑性問題の解法について述べた.第5章は本研究を総括し今後の展開 について述べた.以下に各章各節の構成を箇条書きで示した.
1.3.1 第 1 章
第1節
• 体積力法の位置づけ
• 体積力法が開発される前に考えだされた解析手法と体積力法の類似点の考察
• 非線形問題の数値解析に関する取り組み 第2節
• 傾斜機能材料を数値解析する事の目的と研究方針
• 陳らが定義した弾塑性問題の解法を汎用化させる事の目的と研究方針 第3節
• 論文の構成を記載
1.3.2 第 2 章
第1節
• 第2章の要約 第2節
• 体積力法で用いられる各記号について
• 弾性解析の支配積分方程式 第3節
• Kelvin の解について
• Goursat の複素応力関数について 第4節
• 体積力の密度について
• 座標変換を用いた任意直線境界に分布する体積力による応力場を表す複素応力 関数
• 引張りを受ける正方形矩形板の弾性解析 第5節
• 任意の円弧境界に分布する体積力による応力場を表す複素応力関数
• 引張りを受ける円孔を有する無限板の解析
• 内圧を受ける円孔を有する無限板の解析 第6節
• 有限板の解析を行う際に生じる剛体変位の除去について 第7節
• 引張りを受ける円孔を有する有限板の解析
• 切欠きを有する帯板の3点曲げの解析 第8節
• 第2章のまとめ
1.3.3 第 3 章
第1節
• 第3章の要約 第2節
• 介在物領域内部と介在物領域外部の支配積分方程式
• 引張りを受ける円形介在物を有する無限板の解析
• 引張りを受ける円形介在物と円孔を有する無限板の解析
• 引張りを受ける円形介在物とき裂を有する無限板の解析 第3節
• 第3章のまとめ
1.3.4 第 4 章
第1節
• 第4章の要約 第2節
• 力対埋め込みモデルの概念について
• 力対の定義および,集中力対の基本解
• 弾塑性解析の支配積分方程式 第3節
• Delaunay 分割を援用した塑性領域の離散化について
• 塑性領域の予測について 第4節
• 塑性ひずみの大きさの効率的な決定方法について 第5節
• Nadai の弾塑性解
• 内圧を受ける円孔を有する無限板の弾塑性解析 第6節
• 線形切欠き力学について
• 切欠きを有する帯板の3点曲げ解析 第7節
• 第4節のまとめ
1.3.5 第 5 章
• 本研究により得られた結論
• 今後の本研究の展望
第 2 章 体積力法による弾性解析
68)∼74)2.1 序論
本章では,体積力法による弾性解析3)∼4)の方法を紹介する.まずは, 弾性解析に おける基礎積分方程式を示す.本論文では積分方程式を解く際に解がない場合を除い て数値積分を用いず解析解を用いているので,直線や円境界の微小区間に体積力が一 様に分布した時の解を組み合わせて様々な問題を解いている.そこで,直線境界や円 境界に体積力が分布した時の基本解を示し,その基本解を用いて,厳密解がすでに得 られている問題を解いて解析精度や分割数による影響を議論する.
2.2 弾性解析における基礎方程式
体積力法は重ね合わせの原理に基づいた境界型の弾性応力解析法であるため,注目 点の応力は積分項を含む和で表される.例えば,Fig.3のような円孔を有する無限板 を引張る問題を考える.
Infinite Plate
Imaginaly Boundary
σ
∞σ
∞Γ Q
P
σ
ij(P )
Fig.3 引張を受ける円孔を有する無限板
この時,実際に円孔を有する無限板の解を用いるのではなく,円孔と同じ大きさの 仮想境界に体積力を分布させて解を得る.体積力法では,境界の単位長さに作用する 体積力の大きさを体積力の密度という.この密度関数をφη(Q)と表す.Qは着力点 を表し,円孔を有する無限板の問題では円境界上の点である.η は分布する体積力の 方向である.基本解としては集中力の解を用いる.集中力の解*1はσ∗ij(P, Qη)と表さ れる.着力点Qにη方向の集中力が作用した時に注目点P に作用するij方向の応力 を意味している.そして,外部荷重をσ∞,注目点P のij 方向の応力をσij(P),円 孔となるべき仮想境界をΓと定義する.この時,基礎方程式は次のようになる.
σij(P) =
∫
Γ
σij∗(P, Qη)φη(Q)dΓ +σ∞ (1) 本章で行った弾性解析はこの積分方程式に基づいて解析を行った.
*1集中力の解の詳細については次節にて示す.
2.3 基本解
無限板の一点に集中力が作用する際に生じる応力場の解をKelvin の解3)∼4), 64)∼
78) という.Fig.4は注目点と着力点の関係及び,記号の意味を示している.
Infinite Plate
Reference Point
Source Point
x, ξ y, η
z0 = ξ+iη
z = x+iy
F x F y
Fig.4 着力点と注目点の定義
Fx もしくは,Fy が着力点z0 に作用した時の,注目点 z の変位u, v および応力 σxx, σyy, τxy を以下に示す.
uFx(x, y) = 1 2πG(κ+ 1)
[ κln 1
r1 + A2 A2+m2
]
Fx (2)
vFx(x, y) = 1 2πG(κ+ 1)
[ Am A2+m2
]
Fx (3)
σxxFx(x, y) = A
2π(κ+ 1)y(A2+m2)2
[κ(A2+m2) + (3A2−m2)]
Fx (4) σyyFx(x, y) = −A
2π(κ+ 1)y(A2+m2)2
[κ(A2+m2) + (−A2−5m2)]
Fx (5) τxyFx(x, y) = m
2π(κ+ 1)y(A2+m2)2
[κ(A2+m2) + (3A2−m2)]
Fx (6) uFy(x, y) = 1
2πG(κ+ 1)
[ Am A2+m2
]
Fy (7)
vFy(x, y) = 1 2πG(κ+ 1)
[ κln 1
r1
+ m2 A2+m2
]
Fy (8)
σFxxy(x, y) = −m
2π(κ+ 1)y(A2+m2)2
[κ(A2+m2) + (−5A2−m2)]
Fy (9) σFyyy(x, y) = m
2π(κ+ 1)y(A2+m2)2
[κ(A2+m2) + (−A2+ 3m2)]
Fy (10) τxyFy(x, y) = A
2π(κ+ 1)y(A2+m2)2
[κ(A2+m2) + (−A2+ 3m2)]
Fy (11) 上付き添字がFx のものは着力点にFx が作用した場合,Fy のものは着力点にFy が 作用した場合をあらわしている.また,A, m, r1 は以下のように定義する.
A= ξ−x
y (12)
m= η−y
y (13)
r1 =√
(ξ−x)2+ (η−y)2 (14)
κはKolosov の定数で,各応力状態により以下のように定義する.
κ= 3−ν
1 +ν (平面応力状態) (15) κ= 3−4ν (平面ひずみ状態) (16) ν はポアソン比である.
式 (2)∼式(11) は各変位成分,各応力成分ごとに表しているが,二次元問題では,
Goursat の複素応力関数64)∼78) *2を用いる事で取り扱う式が大幅に少なくなる.
Kelvin の解のGoursat の複素応力関数表示は以下のようになる.
Ω(z) =− F
2π(κ+ 1)ln(z−z0) (17)
ω(z) = κF
2π(κ+ 1)ln(z−z0) + F 2π(κ+ 1)
z0
z−z0
(18) F は体積力の成分を複素数で表記したものでF =Fx+iFy のように定義する.複素 応力関数と各応力成分と変位成分は以下の関係式で示される.
σxx+σyy = 2 (dΩ
dz + dΩ dz
)
(19) σyy−σxx+ 2iσxy = 2
( zd2Ω
dz2 + dω dz
)
(20)
*2Goursatの複素応力関数は付録にて詳細を示す.
2G(u+iv) =κΩ−zdΩ
dz −ω (21)
2.4 直線境界に体積力が分布するときの基本解
体積力法は境界型の数値解析法であるため,境界を離散化し解析を行う.その時,
各境界作用させる体積力の単位長さあたり大きさは一定もしくは重み関数の係数を一 定として解析を行う.この各区間の単位長さあたりの体積力の大きさを体積力の密度 ρという.本論文上では体積力の密度も複素変数として取り扱うため,x方向の体積 力の密度ρx,y方向の体積力の密度ρy としたとき体積力の密度ρは
ρ=ρx+iρy (22)
と表し,微小区間dsに作用する体積力の大きさF(=Fx+iFy)は
F =ρ ds (23)
となる.
本節では,直線境界を表現する際に用いる,直線境界に体積力が一様に分布した時 の解を示す.任意の直線境界を積分するよりも,x軸上に分布する体積力による応力 を計算し,応力の座標変換を行う方が計算が容易であるのでFig.5のようなローカル 座標系(x′, ξ′-y′, η′ 座標)で積分79)を行う.グローバル座標系(x, ξ-y, η座標)での 着力区間を[z01(=ξ1+iη1) :z02(=ξ2+iη2)],着力区間の長さの半長を2a,着力区 間の中心をzc,グローバル座標系とローカル座標系のなす角度をθ とする.
Table.1 座標変換
Before coordinate transformation
After coordinate transformation
Reference point z z′ = (z−zc)e−iθ
Initial point of source section z01 z01′ =−a End point of source section z02 z02′ =a
Body Force F F′ =F e−iθ
∫ a
−a
dΩ =
∫ a
−a
− F′
2π(κ+ 1)ln(z′−z0′)dξ′
=
∫ a
−a− F′
2π(κ+ 1)ln (z′−ξ′)dξ′
Infinite Plate
Global coordinate
Local coordinate
2a a
z01
z02
θ
zc
y, η
x, ξ y′, η′
x′, ξ′ z0(x, y)→z′0(x′, y′)
Fig.5 任意直線上に分布する体積力
= F′
2π(κ+ 1) {
(z′−a) ln (z′−a)−(z′+a) ln (z′+a) + 2a }
(24) d
dz′
∫ a
−a
dΩ = F′ 2π(κ+ 1)ln
(z′−a z′+a
)
(25) d2
dz′2
∫ a
−a
dΩ = F′ 2π(κ+ 1)
2a
z′2−a2 (26)
∫ a
−a
dω =
∫ a
−a
κF′
2π(κ+ 1)ln(z′−z0′)dξ′+
∫ a
−a
F′ 2π(κ+ 1)
z′0 z′−z0′
=
∫ a
−a
κF′
2π(κ+ 1)ln (z′−ξ′)dξ′+
∫ a
−a
F′ 2π(κ+ 1)
ξ′ z′−ξ′
=− κF′ 2π(κ+ 1)
{
(z′−a) ln (z′−a)−(z′+a) ln (z′+a) + 2a }
− F′ 2π(κ+ 1)
{ z′ln
(z′−a z′+a
) + 2a
}
(27) d
dz
∫ a
−a
dω =− κF′ 2π(κ+ 1)ln
(z′−a z′+a
)
− F′ 2π(κ+ 1)
{ 2az′
z′2−a2 + ln
(z′−a z′+a
)}
(28)
目点 zの応力を求める事が出来る.この事を利用して,Fig.6のような単純な正方形 板を引張る問題を体積力法によって解く.境界条件は,要素の中心の表面力で満たす ように体積力の大きさを決定する.また,Poisson 比は0として計算を行った.
Plane plate
parts Reference point
(center of this plate)
Divided into
σ
0σ
0N
Fig.6 一様引張をうける正方形板
注目点は正方形板の中心としy方向応力σy は,当然,荷重σ0と等しくなければな らない.そこで,σy/σ0 と分割数について,Fig.7に示す.Table.2は解析結果を数値 で示している.横軸を1/N としており,横軸が0の時の値にσy/σ0が1に限りなく 近づいているため,直線境界に体積力を分布させる事により正しく有限板を表してい る事を示している.また,Table.2より,32分割(1辺あたり8分割)程度で,解析誤 差は1%未満になる事が分かった.
0.975 0.980 0.985 0.990 0.995 1.000 1.005 1.010 1.015 1.020 1.025
0.000 0.050 0.100 0.150 0.200 0.250 Exact solution
σy/σ0
1/N
Fig.7 正方形板中央のy方向応力と分割数N
Table.2 正方形板中央のy方向応力と分割数N(Fig.7の参照)
N σy/σ0 N σy/σ0 N σy/σ0 N σy/σ0 4 0.976473 32 1.009765 240 1.002839 1600 1.000974 8 1.020028 36 1.009054 280 1.002598 2000 1.000859 12 1.017171 40 1.008461 320 1.002406 2400 1.000776 16 1.014933 80 1.005465 360 1.002250 2800 1.000712 20 1.013124 120 1.004270 400 1.002119 3200 1.000661 24 1.011728 160 1.003598 800 1.001434 3600 1.000619 28 1.010637 200 1.003156 1200 1.001143 4000 1.000583
2.5 円弧境界に体積力が分布するときの基本解
体積力法で切欠きなどを表現する際に,円境界にそって体積力を分布させる事によ り表現する.前節では,要素内に分布する体積力は一定として解析を行ったが,問題 の特徴を取り入れた重み関数を取り入れる事で解析精度を向上させる事が出来る.こ の重み関数を体積力法では基本密度関数φi という.基本密度関数を用いる例として,
円孔を有する無限板の問題である.この問題の場合,体積力の分布が境界の投影長さ に比例するという特徴がある.投影長さとは,Fig.8のdy, −dxに相当し,x方向の 体積力はdyにy方向の体積力には−dxに対応する.
Infinity Plate
Projection length a
σ∞ σ∞
−dx dy
θ
Fig.8 一様引張りを受ける円孔を有する無限板
そこで,体積力と体積力の密度は次のように表される.
dFx =ρxdy (29)
dFy =ρy(−dx) (30)
また,dy, −dxはそれぞれ次のように表される.
x=acosθ ⇒ dx=−asinθdθ (31) y =asinθ ⇒ dy =acosθdθ (32) 式(29), (30)に式(31), (32)を代入すると,
dFx =ρxacosθdθ=aρxφxdθ (33) dFy =ρyasinθdθ=aρyφydθ (34) よって円孔を有する無限板の引張の問題の基本密度関数φiが導かれた.この基本密 度関数を考慮した基本解をGoursaの複素応力関数表示で示す.体積力が分布する範 囲l は,半径r の境界上の角度αからβまでの範囲である.
∫
l
dΩ(z) =
∫
l
− dF
2π(κ+ 1)ln (z−z0)
=
∫ β α
−a(ρxcosθ+iρysinθ)
2π(κ+ 1) ln(z−aeiθ)dθ
=−a(ρx+ρy) 4π(κ+ 1)
[i a
(z−aeiθ) { ln(
z −aeiθ)
−1}]β
α
−a(ρx−ρy) 4π(κ+ 1)
[ iln(
z−aeiθ) eiθ + ia
z {
ln
( eiθ z−aeiθ
)}]β
α
(35) d
dz
∫
l
dΩ(z) =−a(ρx+ρy) 4π(κ+ 1)
[i aln(
z−aeiθ)]β
α
−a(ρx−ρy) 4π(κ+ 1)
[ i
zeiθ − ia z2 ln
( eiθ z−aeiθ
)]β α
(36) d2
dz2
∫
l
dΩ(z) =−a(ρx+ρy) 4π(κ+ 1)
[ i a(z−aeiθ)
]β
α
−a(ρx−ρy) 4π(κ+ 1)
[ i
(a z − 1
eiθ
) 1 (z−aeiθ)2 +2ia
z3 ln eiθ
z−aeiθ
+ 2ia z2(z−aeiθ)
]β
α
(37)
∫
l
dω(z) =
∫
l
κdF
2π(κ+ 1)ln(z−z0) +
∫
l
dF 2π(κ+ 1)
z0
z−z0
=
∫ β α
aκ(ρxcosθ−iρysinθ)
2π(κ+ 1) ln(z−aeiθ)dθ +
∫ β α
a(ρxcosθ+iρysinθ) 2π(κ+ 1)
ae−iθ z−aeiθdθ
= aκ(ρx−ρy) 4π(κ+ 1)
[i a
(z−aeiθ) { ln(
z−aeiθ)
−1}]β
α
+ aκ(ρx+ρy) 4π(κ+ 1)
[ iln(
z −aeiθ) eiθ + a
z ln
( eiθ z−aeiθ
)]β
α
+ a(ρx+ρy) 4π(κ+ 1)
[ia z ln
(z−aeiθ eiθ
)]β α
+ a(ρx−ρy) 4π(κ+ 1)
[ ia
2ze2iθ + ia2
z2eiθ + ia3 z3 ln
(z−aeiθ eiθ
)]β α
(38)
∂
∂z
∫
l
dω(z) = aκ(ρx−ρy) 4π(κ+ 1)
[i a ln(
z−aeiθ)]
+ aκ(ρx+ρy) 4π(κ+ 1)
[ i
zeiθ − ia z2 ln
( eiθ z−aeiθ
)]β α
+ a(ρx+ρy) 4π(κ+ 1)
[ a iz2 ln
(z−aeiθ eiθ
)
− a
iz(z−aeiθ) ]β
α
+ a(ρx−ρy) 4π(κ+ 1)
[ a
2ie2iθz2 + 2a2
ieiθz3 + 3a3 iz4 ln
(z−aeiθ eiθ
)
− a3 iz3(z−aeiθ)
]β α
(39) この基本解を用いて円孔を有する無限板の引張り問題の解析を行った.解析条件は以 下の通りである.
Table.3 解析条件
Load (σ∞) 1.0
Poisson’s ratio (ν) 0.0
Number of division (N) 4
Radius of circular hole (a) 1.0
Reference point (z) (1.0, 0.0), (1.1, 0.0), (1.2, 0.0), · · · ,(2.0, 0.0) (0.0, 1.0), (0.0, 1.1), (0.0, 1.2), · · · ,(0.0, 2.0)
解析結果の検討にはG.Kirsh の解を参照した.80) 半径方向応力 σrr,周方向応力 σθθ,せん断応力τrθは以下の通りである.
σrr = σ∞ 2
( 1− a2
r2 )
− σ∞ 2
(
1 + 3a4
r4 − 4a2 r2
)
cos 2θ (40)
σθθ = σ 2
( 1 + a2
r2 )
+ σ∞ 2
(
1 + 3a4 r4
)
cos 2θ (41)
τrθ =−σ∞ 2
(
1− 3a4
r4 + 2a2 r2
)
sin 2θ (42)
この解と解析結果の比較をしたものを Fig.9∼10に示す.Fig.9は,x 軸上のy 方向 応力を表しており,参照点での応力は厳密解と非常によく一致しており,有効数字6 桁まで一致している.Fig.10は,y軸上のx方向応力を表しており,Fig.9と同様に 厳密解と非常よく一致している.
1.0 1.5 2.0 2.5 3.0
1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0
’s solution G.Kirsh
Analytic solution
Infinite plate
x/a σy/σ∞
σy
y
x
Fig.9 x軸上のy方向応力σy
-1.0 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0.0 0.2
1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0
’s solution G.Kirsh
Analytic solution
Infinite plate
x σx/σ∞
σx
y
y/a
Fig.10 y軸上のx方向応力σx
Table.4 x軸上のy方向応力(Fig.9を参照)
x/a Analytic solution G.Kirsh’s solution
1.0 2.999999 3.000000
1.1 2.437743 2.437743
1.2 2.070601 2.070602
1.3 1.821049 1.821050
1.4 1.645564 1.645564
1.5 1.518518 1.518519
1.6 1.424194 1.424194
1.7 1.352605 1.352606
1.8 1.297210 1.297211
1.9 1.253604 1.253605
2.0 1.218750 1.218750
Table.5 y軸上のx方向応力(Fig.10を参照)
y/a Analytic solution G.Kirsh’s solution
1.0 -1.000000 -1.000000
1.1 -0.611297 -0.611297
1.2 -0.376157 -0.376157
1.3 -0.229333 -0.229334
1.4 -0.135360 -0.135360
1.5 -0.074074 -0.074074
1.6 -0.033569 -0.033569
1.7 -0.006585 -0.006585
1.8 0.011431 0.011431
1.9 0.023403 0.023404
2.0 0.031250 0.031250
External load
Circular boundary
Distributing body force
External load
Fig.11 円境界に作用させる体積力の分布
この時の自由境界を表現するために円境界に分布させる体積力の分布をFig.11に 示す.つまり,無限板中の仮想円境界の内側に Fig.11と同じ大きさ同じ方向の体積 力を作用させることで,円境界外部に生じる応力は円弧がある場合と同じ応力を生じ る.しかし,式(35)∼(39)は基本密度関数を含んでいるため,遠方から引張を受ける ような場合には有効であるが,それ以外の場合には用いる事ができない.そこで,基 本密度関数を含まない場合についても示す.この時,積分範囲等は式(35)∼(39)の場 合と同じである.∫
ldΩ(z)と∫
ldω(z)は積分の性質上解析解を得る事ができない.*3
*3 ∫ β
α
ln(z−z0)dθ=
∫ β
α
ln(z−aeiθ)dθ
しかし,式(19)∼(21)より,応力を計算する際にはΩの1階微分,と2階微分そし て,ω の1階微分しか必要がないため,積分と微分の順序を入れ替えて計算を行う.
変位を計算する場合には,解析解が存在しない項のみを数値積分を行う事により解決 する.
∫
l
dΩ(z) =
∫
l
− dF
2πi(κ+ 1)ln (z−z0)
=
∫ β α
−a(ρx+iρy)
2πi(κ+ 1) ln(z−aeiθ)dθ (43)
d dz
∫
l
dΩ(z) =
∫ β α
−a(ρx+iρy) 2πi(κ+ 1)
1 z−aeiθdθ
= a(ρx+iρy) 2πi(κ+ 1)
1 z
{ ln
(z−aeiβ z−aeiα
)
−i(β−α) }
(44) d2
dz2
∫
l
dΩ(z) = a(ρx+iρy) 2πi(κ+ 1)
1 z2
{ z
z −aeiβ − z
z−aeiα + z(eiβ −eiα) ei(β+α)
−2aln
(z−aeiβ z −aeiα
)
+ 2ia(β−α) }
(45)
∫
l
dω(z) =
∫
l
κdF
2πi(κ+ 1)ln(z−z0) +
∫
l
dF 2πi(κ+ 1)
z0
z−z0
=
∫ β α
aκ(ρx−iρy)
2πi(κ+ 1) ln(z−aeiθ)dθ+
∫ β α
a(ρx+iρy) 2πi(κ+ 1)
ae−iθ z−aeiθdθ
=
∫ β α
aκ(ρx−iρy)
2πi(κ+ 1) ln(z−aeiθ)dθ + a(ρx+iρy)
2πi(κ+ 1) a iz3
[ az
z−aeiθ − z
eiθ −2aln
(z−aeiθ eiθ
)]β α
(46) d
dz
∫
l
dω(z) =−aκ(ρx−ρy) 2πi(κ+ 1)
1 z
{ ln
(z−aeiβ z−aeiα
)
−i(β−α) }
− a2ρ 2πi(κ+ 1)z3
[ a2z(eiβ −eiα)
(z−aeiβ)(z−aeiα) + z(eiβ −eiα) ei(β+α)
−2aln
(z−reiβ z −reiα
)
+ 2ia(β−α) ]
(47)
t=eiθとするとdt/dθ=ieiθとなり置換積分を行うと
∫ β α
ln(z−z0)dθ=
∫ eiβ eiα
ln(z−at)dt it
= 1 i
∫ eiβ eiα
ln(z−at)
t dt
= ln(z−at) ln(−at
) +z−at
+(z−at)2
2 2 +(z−at)3
2 3 · · ·
式(43)∼(47)の基本解を用いる問題は多く考えられるが,最も容易に厳密解の比較が 出来る問題として,Fig.12のような内圧をうける円孔の問題がある.
Inner Pressure Infinite Plate
σr(r), σθ(r), τrθ(r)
r
a p
Fig.12 内圧を受ける円孔を有する無限板
この問題の厳密解は次の円筒問題のAiryの応力関数80)を解く事で得られる.
σrr(r) =C1+ C2
r2 (48)
σθθ(r) =C1− C2
r2 (49)
τrθ(r) = 0 (50)
この時,円孔半径はa,内圧はpであるため,円孔中心からr 離れた点の半径方向応 力σr(r),は境界条件(σr(a) =−p, σr(∞) = 0)から以下のようになる.
σrr(r) =−a2p
r2 (51)
σθθ(r) = a2p
r2 (52)
同様の問題を以下の解析条件に基づいて体積力法で解析をした.
Table.6 解析条件
Poisson’s ratio (ν) 0.0
Number of division 4
Stress state Plane stress
応力境界値問題としてこの問題を解き,表面力を境界条件とした.その時の半径方 向応力 σr と周方向応力σθ をFig.13に示す.そして,Table 7に解析結果と厳密解 の数値の比較を行った.
-1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0
1.0 1.5 2.0 2.5 3.0
Numerical solution
Numerical solution Exact solution
Exact solution
r/a σr/p,σθ/p
σr
σθ
Fig.13 内圧を受ける円孔を有する無限板に生じる半径方向応力σrと周方向応力σθ
Table.7 内圧を受ける円孔を有する無限板に生じる半径方向応力σr と周方向応 力σθ(Fig.13の参照)
r σr/p (Numeri- cal solution)
σr/p (Exact solution)
σθ/p (Numeri- cal solution)
σθ/p (Exact solution) 1.0 -1.000000 -1.000000 1.000000 1.000000 1.1 -0.826446 -0.826446 0.826446 0.826446 1.2 -0.694444 -0.694444 0.694444 0.694444 1.3 -0.591716 -0.591716 0.591716 0.591716 1.4 -0.510204 -0.510204 0.510204 0.510204 1.5 -0.444444 -0.444444 0.444444 0.444444 1.6 -0.390625 -0.390625 0.390625 0.390625 1.7 -0.346020 -0.346021 0.346020 0.346021 1.8 -0.308642 -0.308642 0.308642 0.308642 1.9 -0.277008 -0.277008 0.277008 0.277008 2.0 -0.250000 -0.250000 0.250000 0.250000 2.1 -0.226757 -0.226757 0.226757 0.226757 2.2 -0.206611 -0.206612 0.206611 0.206612 2.3 -0.189035 -0.189036 0.189035 0.189036 2.4 -0.173611 -0.173611 0.173611 0.173611 2.5 -0.160000 -0.160000 0.160000 0.160000 2.6 -0.147929 -0.147929 0.147929 0.147929 2.7 -0.137174 -0.137174 0.137174 0.137174 2.8 -0.127551 -0.127551 0.127551 0.127551 2.9 -0.118906 -0.118906 0.118906 0.118906 3.0 -0.111111 -0.111111 0.111111 0.111111
この場合でも,厳密解と解析解は有効数字5桁まで一致している事が分かる.式 (43)∼(47)を用いて,内圧を受ける円孔を有する無限板の問題を解くことが出来る事 が示された.
2.6 剛体変位
本章では,有限板の問題についての取り扱いについて言及する.有限要素法におい て,解析条件として,拘束条件を正しく設定する事は非常に重要である.正しい拘束 条件を指定していない場合,解析対象を正しく表現することができなくなり,場合に よっては,剛体変位により連立方程式を解く事ができなくなる場合もある.この剛体 変位に関しては,有限板の問題を取り扱う場合のみ,体積力法でも問題となる.境界 条件として,変位を設定する場合は剛体変位を考慮しなくても良いが,応力や表面力 を境界条件として設定する場合は剛体変位を考慮しなくてはならない.つまり,内部 の応力状態が境界条件をみたしているなら,解析対象がどこに剛体移動していても問 題は無いからである.図示すると次のようになる.
Finite
plate Finite
plate
Finite plate Same
shape
Same load Same stress field
Fig.14 同一荷重を受ける同一形状の3つの有限板
3つの同一荷重を受ける同一形状の有限板は内部に生じている応力は同じである が,応力境界条件だけでは剛体変形に関する条件を満たす事ができない.では,なぜ
限遠方の変位が正則でなければならないという条件が含まれているからである.
そこで,本研究では有限板の問題を応力境界条件で解く場合について示す.応力境 界条件には,変位に関する条件がないため,以下の条件を追加する.
(i) 全境界に作用する体積力の釣り合い
(ii) 任意の1点を基準とした時の,全境界に作用する体積力により生じるモーメン トの釣り合い
境界の分割数n,i番目の境界の合力 Fxi, Fyi, 任意の基準点から各境界の中心までの 距離のベクトルを⃗li(lix, liy)とする時,条件式は以下のようになる.
∑n i=1
Fxi = 0 (53)
∑n i=1
Fyi = 0 (54)
∑n i=1
lixFyi−liyFxi = 0 (55) 式(53)∼(54)は条件(i)に相当し,式(55)は条件(ii)に相当する.つまり,体積力の 密度を決定する為に解く行列式の大きさは((総分割数)×2+3)となる.2.4節の正方 形板の問題についても上記の条件を用いて解いた.
2.7 円孔を有する有限板の問題
本節では,さらにこの条件式を用いて円境界の解と直線境界の解の両方を用いて 解く問題を取り扱う.まず,円孔を有する有限板の問題を取り扱う.解析モデルを Fig.15に示す.
Square plate
Circular hole
Load Load
a b
b
s
t
σ
∞σ
∞Fig.15 円孔を有する引張りを受ける有限板
この時,s=2a,t=2a,b=4aとすると,円孔縁に生じる応力集中係数Kt は6.38965) となる.直線境界と円弧境界の基本解は式 (24)∼(28),式 (35)∼(39)を用いた.ま
た,Table.8の解析条件に基づいて解析を行った場合の解析結果を厳密解と境界の分
割数に注目して比較する.