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中高一貫教育における教育環境の整備と効果

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中高一貫教育における教育環境の整備と効果

―G中学校教科教室型校舎の事例分析―

       

平成 15 年 3 月 

国立教育政策研究所  教育政策・評価研究部 屋  敷  和  佳

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は し が き

本報告書は、中高一貫教育校の併設型中学校に当たるG中学校を対象に、新築・開校に 伴い教科教室制が導入され定着してゆく過程を、4年間にわたる生徒アンケート調査に基 づき分析したものである。 

教科担任制である中学校や高等学校において、各教室をそれぞれの教科専用の教室とし て整備し、毎時間、生徒が教室移動を行いながら授業を受ける仕組みが教科教室制であり、

この形式の校舎は教科教室型校舎と呼ばれる。近年、このような仕組みと校舎を持った学 校は、全国の中学校や高等学校からすれば微々たる数に過ぎないが、校舎新築や改築を契 機として少しずつ増えている。昨年、複数の新聞で中学校の教科教室制の様子が紹介され たことは記憶に新しい。生徒自らが学ぶ教育環境を備えた、まさに教育改革の方向に沿っ た学校として関係者の注目を集めているのである。 

しかし、『中学校・高等学校における教育多様化のための施設・設備の改革と課題に関 する研究』(研究代表:屋敷和佳、平成9年6月)で明らかにしたように、過去には教科  教室型校舎を建設しながらも実際には教科教室制を実施しなかったり、途中で取りやめて

しまった学校も少なからず存在する。このような中で、教科教室制を円滑に進めたり、教 科教室制の効果を上げるための条件や課題を探ることは、学校施設整備上、そして教育改 革を進めるためにも重要な課題であると考えられる。 

幸いにも、本調査研究で分析対象とするG中学校および同校を設置する市教育委員会の 全面的な協力が得られ、この課題に迫ることが可能になった。本報告書を読んでいただく と分かるように、G中学校は見事な船出を果たした。開校当初、生徒の教科教室制に対す る好意的な評価は5割台にとどまったが、平成14年度には実に8割にまで達している。G  中学校の教科教室制の優れた実践と成果は、全国の教科教室型校舎を持つ学校の運営に参 考になるであろうし、教科教室制のみならずG中学校の様々な取り組みは、教育改革をめ ざす学校にとって基礎資料としても貴重である。 

ところで、調査研究の進め方については、共同研究的な性格を持っていることを特に記 しておきたい。学校の希望もあり、調査の結果を学校運営に役立てることを強く意識して いた。調査票の作成は毎年度、中学校、設計者と協議しながら進め、調査結果はすみやか に学校に戻した。調査結果の一部は同校の研究発表会や研究報告書にも活用されている。

また、学校の取り組みを保護者に説明し、理解していただく資料としても有用であったと 聞いている。 

本報告書の刊行に当たり、調査研究にご協力いただいたG中学校、市教育委員会、市建 設部建築課の関係各位に、改めて厚く御礼申し上げる。 

なお、本調査研究は、武蔵工業大学講師山口勝巳氏と共同で行った。また、平成14年  度の調査研究作業および本報告書の刊行は、国立教育政策研究所の基盤研究経費によるも のである。 

平成15年3月 

屋 敷 和 佳  

(3)

目  次

はしがき

第1章 分離独立による校舎新築と教科教室制の導入(1年目)…………・1 1−1 併設型中高一貫教育校における教科教室型校舎の整備

1−2 教科教室制の効果と課題

第2章 増築と教科教室制の本格的実施(2年目)      …………・9 2−1校舎増築と生徒調査の概要

2−2 調査結果の概要と考察 2−3 平成12年度調査の集計結果

第3章 校舎の特徴を生かした授業展開(3年目)      …………・29 3−1 授業展開と教育環境の評価

3−2 平成13年度調査の集計結果 3−3 学校教育環境に関する意見の詳細

第4章 学級数の増加と教科教室制をめぐる新段階(4年目) …………・47 4−1 新たな態勢と教育環境の評価

4−2 平成14年度調査の結果概要 4−3 平成14年度調査の集計結果 4−4 学校教育環境に関する意見の詳細

第5章 教育環境整備と効果(4年間のまとめ)      ・・‥‥・‥‥‥ 69 5−1 教科教室制に対する生徒の評価

5−2 教科教室制の条件と構造

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第1章 分離独立による校舎新築と教科教室制の導入(1年目)

1−1 併設型中高一貫教育校における教科数室型校舎の整備

(1)中高一貫教育校の構想

中央教育審議会が中高一貫教育の導入を盛り込んだ答申を提出したのは、平成9年 6月であるが、G中学校を設置する市では、すでにその年の4月に教育委員会内に中 高一貫教育研究委員会を発足させていた。同研究委員会は、平成9年12月に中高一貫 教育校の設置の必要性等について報告し、翌年4月には中高一貫校設立準備室が設け られた。準備室による原案作成、地元の学識経験者、教育関係者、行政関係者からな る中高一貫校設置準備委員会、また学識経験者3名からなる特別委員会の数回の審議 を経て、平成10年11月に中高一貫教育校の具体的な骨格や内容を示した「中高一貫校 設立構想」がとりまとめられた。

以下、設置形態と教育課程に関わる構想の要点を述べておく。

まず設置形態は、既存の中学校に新設高校を接続させる併設型中高一貫教育校であ る。地元の中学校を基礎に一貫校をつくることで、地域・保護者・学校の密な連携を 図ることを意図している。地元中学校の開校は平成11年度、高校の開校の12年度から 中高一貫教育が始まる。中学校の入学者は、中高一貫教育開始の12年度の新1年生か らは、全市小学校からの入学者(40名)と地元小学校からの入学者によって構成され る。

次に教育課程は、「個性の伸長と愛郷心の高揚」という教育目標のもと、大きく3 つの特徴を持つ。第1は選択学習であり、中高合同の選択学習として「表現科」、中 学校2〜3年段階の科目選択、課題別・習熟度別といった中高全学年の教科内選択で

ある。第2は、「郷土総合学習」の導入である。幾つかのテーマを設定し、体験的に 学ぶ横断的・総合的学習であって、ほば学年毎に行う。そこでは、地域の人材等の社 会人講師も活用する。なお、高校では「郷土学」という名称で実施される。第3は、

学習指導の質的転換である。その方法として、教科教室制の導入、情報教育の充実、

2期制の導入、65分授業を中心とした教育課程の弾力的運営などがあがっている。

(2)教科教室型校舎の建設

上記のアカデミック・プランに対して、中高一貫教育を展開する場としての学校施 設の計画・整備は次のように進んでいる。中学校については、平成9年10月に中学校 の基本設計が完了し、翌年5月に増築の2期工事分を除いて工事着工した。そして、

平成11年4月の開校に合わせて、3月に竣工している。その後、高校と中学校の増築

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部分が着工となり、翌年3月に全ての完成を見た。

この過程に関しては、幾つかの特筆すべき点がある。第1は、中学校の基本設計が 中高一貫教育研究委員会報告書の提出以前に終わっていることである。つまり、教科 教室型校舎として整備を進める方針は、研究委員会の検討結果を待つことなく決定さ れたということを意味する。したがって、教科教室制については施設先行で導入され たことになる。第2は、基本設計を市の建築課が担当していることである。全国の自 治体では、公立学校の整備に際して、基本設計を民間設計事務所に委託するのが一般 的であるが、自前の設計となっている。第3は、建設監理を同じく市の建築課が担当 していることである。

現在、開校して4年目が終わろうとしているが、今振り返ってみてG中学校に幸い であったのは、とりわけ第2点と第3点である。中学校増築の際に、学校現場の意見 を反映させた設計変更が可能となったからである。

(3)教科教室制の立ち上げ

平成11年4月、G中学校は母体校から移ってきた2〜3年生、および地元小学校か らの新1年生、合わせて約150名の学校としてスタートした。ただし、先の構想のア カデミック・プラン全てを当初から実施に移したわけではない。特に、周辺市町村の 中学校も含めて全く経験のない教科教室制に対しては不安視されたこともあって、教 室移動、教科教室に慣れることから始めた。そのため、前期の間はすべて50分授業を 行い休憩時間10分としていた。そして、後期になって午前中を60分授業にし、15分の 休憩時間を取ることとしたのである。構想に掲げられた65分授業は、2年目の12年度

からの導入である。

校舎は、教科教室型である他、オープン形式の教室およびオープン形式のコンピュ ータ室(メディアセンター)を持つこと、さらには職員室前に吹き抜けの図書室兼用

の多目的スペース(ふれあいコーナー)が置かれていることに特徴がある。

1年目は、「総合的な学習の時間」の活動を中心テーマとし文部省(現文部科学省)

の研究開発の指定を受けたが、メディアセンターやふれあいコーナーなどの活用にも 注目すべき成果は少なくない。1年目のG中学校の取り組みは、1年間という短期間

ながらも時系列分析に値すると考え、7月、12月、3月と3回に渡る生徒アンケート 調査を行った。また、7月には教師に対する調査も実施した。平成11年度1年間のこ れらの調査結果は、『少子時代の学校教育環境整備に関する研究』(研究代表:屋敷和 佳、文部省科学研究費補助金報告書、平成12年6月)にとりまとめているので、詳し くは同報告書を参照いただきたい。以下、本章では1年目の調査概要と教科教室制に 関わる箇所を中心に考察部分を再録しておく。

なお、1年目の校舎平面図を図1−1に掲げる。

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図 1 − 1  G中学校校舎平面図(1 年目)

3 −

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1−2 教科教室制の効果と課題

(1)調査の概要

3時点の調査には共通する調査項目を数多く設けているが、それぞれの調査のねら いの重点は異なる。まず、1回目の7月調査「新しいタイプの学校施設に関する調査」

では、新築校舎に対する生徒の意見・感想を幅広く捉えることに努めた。次に、2回 目の12月調査「60分授業の効果に関する調査」では、午前中の授業時間が長くなった ことや時間割など、授業に関する設問が中心である。新たに各教科の授業評価に関す る質問を設けた。さらに、3回目の3月調査「教科教室制の効果に関する調査」では 教科教室制の成否など、1年間の成果の総括をめざした。

回答者は、各回とも、調査当日欠席した生徒を除く全ての生徒である。

(2)調査結果のまとめ

以下では項目別に年度末3月調査の結果の要点をまとめるが、7月調査等との比較 が可能なものについては合わせて示す。

①教科教室制の導入に伴う教室移動の負担感は、7月時点では7割弱の生徒が持って いたが、3月時点では4割弱にまで減少している。各学年とも負担を感じる生徒の 数は減ったものの、それでも3月時点では1年生の半数弱、2年生の約4分の1、

3年生の3分の1が負担を感じている。

②教室移動が気分転換になったかについては、全校の4割がそのように回答している。

この他、4割強が「どちらでもない」という回答であり、気分転換にならないとす るのは、2割弱である。気分転換になるという割合は、学年進行に伴い高くなって おり、3年生では半数弱が気分転換になったとしている。また、教室移動が生徒同 士のよい交流機会になるかについては、4割台の生徒がそう答え、1割台の生徒は そうではないとしている。

③教科教室としての特別な学習環境の成否が問われる国語、社会、数学、英語の4教 科について、全校生徒のうち社会8割、国語7割、英語6割をそれぞれ超える生徒 が、その教科の授業を行うにふさわしい充実した学習環境であると答えている。し かし、オープン形式の教室である数学については5割に満たない。

④上記4教科における、普通教室で行われた以前の学校における授業との比較(2・

3年生のみ)では、教科によって6割から7割台半ばの生徒が現在の授業が充実し ているとしており(逆に充実していないとする割合は1割強から2割強)、全体に 充実していると評価されている。

⑤オープン形式の数学教室と共通教室(1年生のホームルーム教室兼用)については、

全校の半数弱が壁がある方を支持し、4分の1強はない方を支持しており、7月時 点に比べ壁がある方がよいとする生徒が増加している。学年別には、オープン形式

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の数学教室の並びにある同じ形式の共通教室をホームルーム教室とする1年生は壁 のあるなしについて賛否は半々であるのに対して、3年生は壁がある方を支持する 生徒が4分の3を占め、学年により大きく異なる。

⑥教科教室制については、6割強の生徒が肯定的な評価をし、2割強の生徒は否定的 な評価をしている。7月時点と比較すると明らかに肯定的な評価が増えている。学 年別には、2年生が最も評価が高く8割弱の生徒が肯定的に回答している。これに 対して、1年生では評価が低く、肯定的な評価は半数弱にとどまる。

⑦全校の7割の生徒は学校の勉強(授業)が「楽しい」と受け止めている。7月、12 月調査と比較すると明らかにこの割合は増えている。学年別にみれば、2年生は「楽 しい」が9割であり(他方で「楽しくない」は皆無)、その割合が5割台の1年生 と対照的である。1年生では、「楽しい」の割合は後退ないし停滞の傾向にある。

取り組み方について、積極的であるとするのは4割台、消極的であるとするのは2 割台となっており、上級学年ほど積極的である。3時点の変化では、1年生は7月 から12月の間にやや消極的になり、3年生は12月から3月の間に積極的になるとい

う動きが見られた。

⑧授業以外の学校生括については9割の生徒が「楽しい」としている。学年別には1 年生ではこれより若干低く、2年生で若干高い。7月時点に比べると、3年生にお

いて「楽しい」とする程度が強まっている。

⑨生徒の様態(授業の受け止め方と取り組み方、学校生活の受け止め方と取り組み 方)に基づき類型を設定し、類型別の教科教室制とオープン形式の教室の評価状況 を見ると、学校の勉強(授業)への取り組み方(積極的か消極的か)よりも受け止 め方(楽しいか楽しくないか)の方の影響が大きいことが分かる。学校生活に関し ても同様である。

(3)教科教室制の効果

一般的に教科教室(制)の効果は、ア教科の目的に即した効果的な学習ができるこ と、および、イ自主性や社会性が養えるところにある(大串不二雄『学校施設』第一 法規、1967、70貢、165貢)。また、筆者が平成8年に教科教室型校舎を有する全国の 国公立中学校に対して行った「教科教室制の実施状況に関する調査」では、a教科経 営面での利点(学習環境の整備と活用、学習意欲の向上など)やb教室移動の利点(気 分転換になり学習意欲が増す、学年・異学年交流が活発になるなど)などが指摘され ている(屋敷『中学校・高等学校における教育多様化のための施設・設備の改革と課 題に関する研究』科研報告書、1997、57・63頁)。その内容に多少のズレはあるもの の、アとaは教科学習、イとbは教室移動の成果と捉えることができる。そこで次に、

教科学習と教室移動の2点に分けて、調査から導かれる効果を改めて整理してみよう。

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1)教科学習の効果

国語、社会、数学、英語の4教科における教科教室および授業の評価はすでに述べ たとおりである。ともに評価する割合は高い。図1−2は、この2つの設問に対して 肯定的に回答している割合を学年別、教科別に示したものである。

この図から分かるように、教科教室の充実の程度と授業の充実の程度は、正比例の 関係にある。すなわち、教科教室が充実している教科ほど授業も充実していると生徒 は見ているということがいえる。また、2年生と3年生における数学→英語→国語→

社会という順もほとんど変わらない。授業の評価は、教科教室の整備に加えて教師の 指導力つまり授業の創意工夫等も加味されるはずであるから、この結果は、各教科と も教科教室の評価に対応する形で教師による創意工夫等が行われているということと 解釈できる。

次に、学習意欲は向上したであろうか。これに関しては、まとめの⑦に示した授業 への取り組みを見ることにする。7月と3月の間に全校ではありまり大きな変化はな い。そして、学年別には1年生において低下し、3年生においては向上するという傾 向が現れている。したがって、教科教室制は単純に学習意欲の向上に結びつくとはい えないが、条件次第では可能であることをこの結果は示唆していると考えられる。

2)教室移動の効果

マイナス面として教室移動の負担感に対して、プラス面としては気分転換や交流機 会があげられる。まとめ②のように、気分転換を評価する生徒は全校の4割、交流機 会についてはそれを上回っていることから、確かにそれらの効果は認められる。しか

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し、気分転換について3年生の半数近くがなるとしているのに対して、1年生は3割 強にとどまり学年により評価に幅がある。1年生の場合には教室移動に負担を感じる 割合が高く、教室移動の負担感と気分転換の2つの項目には表裏の関係が窺える。

(4)教科教室制をめぐる課題 1)学校運営の課題

教科教室制の支持は確かに大勢を占めるが、他方で支持していない生徒も2割強ほ ど存在することは、学校運営上留意すべきことと考えられる。支持しない割合が3割 近くに達する1年生には、とりわけ注意深く今後を見守ることが重要である。もっと も調査結果からみれば、教室移動の負担が心身の発達・成長とともに消失し、学年進 行に伴い教科教室制の評価が改善されてゆくこともあると考えられる。

また生徒類型において、該当生徒の数は極めて少ないが、授業への取り組みは積極 的であるが楽しくないというタイプ、および学校生活への取り組みは積極的であるが 楽しくないというタイプでは、教科教室制への評価はいずれも「全くよくない」と厳 しい。今後、教科教室制になじめない生徒にどのように対応してゆくかについても検 討しておく必要があるものと考えられる。

しかしそれとは別に、教科教室を生かした授業の創意工夫は引き続き進められる必 要がある。以前の普通教室における授業よりも現在の授業が充実していると回答する 生徒の割合が、教科教室として充実しているとする生徒の割合よりも下回る教科(お よび学年)も散見されるからである。つまりそれは、授業の充実が教科教室という物 的環境の整備に追いついていないと判断する生徒の存在を示唆しているのである。

2)教科教室制を円滑に実施するための条件

G中学校を対象としたこれまでの一連の調査から、教科教室制を円滑に実施するた めの条件、いい換えれば教科教室制が十分に機能するための条件として、特に次の2 点が指摘できる。

一つは、前述の授業の創意工夫である。生徒調査からは、G中学校の授業の充実ぶ りが確認された。当然のことながら、物的な学習環境の整備だけでは教科教室制は機 能せず、評価は得られない。教科教室をうまく活用できる教師の教科指導力が重要で あるといえる。

もう一つは、安定した学級の形成(存在)である。1年間の定点調査を通じて、教 科教室制に対する評価に特に大きな動きが見られたのは3年生である。7月時点にお いて教科教室制を肯定的に捉えている3年生は半数に満たなかったが、3月時点では 肯定的に捉えている3年生は3分の2にまで伸びた。さらに、授業の受け止め方と取

り組み方、学校生活の受け止め方と取り組み方のすべてに改善が見られた。3年は1 学級である。したがって、3年生は学級として極めて良好な状態に変化したことを意 味すると考えられる。この結果に関わって、校長に対して行った聞き取りでは、この

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1年間で3年の学級指導を担当する教師(複数)と3年生との間の関係が非常に良好

(信頼関係ができる)となり、生徒も落ち着きを見せ、そして学級としてまとまって きたことが強調された。そこには学級としての良好な状態が、教科学習、ひいては教 科教室制の評価に結びついていることを読みとることができる。教科学習は生徒個々 人による学習が基本となるため、教科教室制と生活集団である学級は一見無関係であ ると思われるが、実は深層で密接につながっていたのである。教科学習や教科教室制 の前提ないし基盤として、教師との関係性をも含め安定した学級が不可欠であること

を調査結果は示していると考えられる。

3)研究の課題

これまでの分析・考察を踏まえ、最後に今後の研究課題を幾つか指摘しておきたい。

繰り返すまでもなく、G中学校の教科教室制は順調な立ち上がりを見せた。先述の 筆者の全国調査では、現在教科教室制を実施している中学校の多くが小規模校である

ということが分かっているが、G中学校がその中に新たに加わったということになる。

「生きる力」の形成、特色ある学校づくりなどを目標に教育改革が進む中、今後さら に教科教室制や教科教室型校舎に注目が集まることも予想できる。しかしながら、教 科教室制を円滑に行うための条件の検討が十分進んでいるとはいえない。本調査研究 もごく限られた範囲、状況の下で検討したにすぎない。研究課題としての第1は、教 科教室制を円滑に進めるための条件の検討をさらに一層進めることにあると考えられ る。特に、学校規模の違いによって条件が異なるのかどうかを探ることは重要ではな いだろうか。G中学校は平成12年度には1年生が4学級となり全校で8学級となるが、

さらに学級が増えることも予想されている。一般的には、教室移動に伴う負担等は学 校規模が大きくなるにつれて拡大するとみられ、G中学校は次の課題に立ち向かうこ

とになる。学校規模の拡大に伴って教科教室制をめぐりどのような変化が生じたかは 重要な研究テーマとなりうる。

第2に、教科教室としての教室環境整備の内容の検討である。G中学校の教科教室 は、この1年間に徐々に整備されてきたとはいえる。しかし掲示等の違いはともかく、

普通教室との決定的な違いを見いだせない教室も存在した。具体的にどの程度まで教 材や機器を整備すればよいのか、教科教室としての基本的な要件は教科別にそれぞれ 何かについての検討が欠かせないのではないだろうか。

第3は、第2点に関わって整備経費の検討である。学校の学習環境が向上すること は誰しもが望むことであるが、厳しい財政状況にある今日の自治体にとって整備経費 は無視できない。しかし、学習環境の充実や教育効果などに比べて教科教室や教科教 室型校舎の整備経費は高いものではないとの結論になれば、教科教室型校舎の整備に 向けた検討は今以上に広がるであろう。教科教室制の効果分析とともに整備経費の分 析は、今後の中学校施設整備の在り方を検討するための基礎資料として重要である。

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第2章 増築と教科教室制の本格的実施(2年目)

2−1 校舎増築と生徒調査の概要

(1)校舎の増築と活用

開校2年目の平成12年度には、高等学校校舎が新築されるとともに中学校校舎も増築され、

併設型中高一貫教育が始まった。11年度に5学級であった学校規模は、12年度には地元小学校 出身者の他に40名を市全域の小学校から受け入れ、1年生4学級、2年生2学級、3年生2学 級の計8学級となった。体育館を除く中学校棟の平面図を図2−1に掲げるが、ホームベース から南側の教室、多目的スペース、階段の部分が増築箇所である。

①T字型の校舎平面の中央部に生徒ロッカーが配置され(ホームベースと呼んでいる)、移 動に便利であること、②職員室前の「ふれあいコーナー」(1階、図書室兼用の多目的スペー ス)は大きな天窓を持った吹き抜けとなっており、校舎全体が明るいこと、③メディアセンタ ー(コンピュータ室)および3連の数学教室は廊下との間に壁がないオープン形式の教室とな っていることが校舎の大きな特色であったが、さらに増築により、④各階の教室3室が面した 多目的スペース(学年ふれあいコーナー)が加わることになった。学年ふれあいコーナーは、

学年集会の場所、学年や学級の掲示・展示スペース、学年別に行う「総合的学習の時間」の活 動場所、そして時には教科の掲示・展示スペースともなっている。

(2)調査の概要

平成12年度の生徒調査は、前年度調査と同様に全面的な中学校の協力を得て、1年生から3 年生まで生徒全員を対象(無記名)として9月に実施した。調査当日、欠席した生徒を除くす べての生徒から回答を得られた。

調査項目は、前年度実施した生徒アンケート調査に改良を加えた内容である。具体的な設問 は、集計結果と合わせて2−3の通りであるが、領域別には次の7つ(Ⅰ〜Ⅶ)に分けられる。

なお、一連の本研究では、教育環境を単に施設・設備などの物的要素だけでなく、人的あるい は運営的な要素も含めて幅広く捉えているため、設問も多岐にわたっている。

Ⅰ.校舎について

Ⅱ.教室移動と休み時間について

Ⅲ.65分授業について

Ⅳ.教室環境と授業について

Ⅴ.総合的学習の時間について

Ⅵ.学校生活について

Ⅶ.学校教育環境に関する意見

教育環境の評価は、評価する者の過去の経験が大きく影響してくると考えられる。G中学校 の3年生は、1年次に母体校(教科教室型校舎ではない)での学校生活を1年経験している。

2年生は3年生と同じように増築前の校舎での生活経験がある。これに対して1年生は、現在 の校舎で初めての中学校生活を開始した。また、1年生は、公募による全市からの入学者を含 む点でも上級生とは異なる。そこで2−2では、特に学年別の違いに着目する。

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図 2 - 1  G中学校校舎各階平面図(2 年目)

「出典:A 市建設部建築課資料」 

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2−2 調査結果の概要と考察 1.調査結果の概要

(1)校舎における場所の選好 1)好きな場所[問1]

好きな場所としてあげられているのは、全学年では「メディアセンター」、「ふれあい コーナー」、「ベランダ」が多い。設計で特に意識して設けられたこれらの空間は、生徒 には好ましい空間として受け入れられている。

学年別では、2年生の好きな場所の第1位(2割の該当)に「ホームベース」があげら れていること、3年生は約4割が「ふれあいコーナー」をあげていること、さらに3年生 の数人は「トイレ」を好きな場所としてあげていることに特徴が見られる。「ホームベー ス」や「トイレ」は、自分の机や教室を持たない教科教室制にあって、生徒が気持ちの上 で落ち着く場所として意識していると見ることができる。また、3年生が好きな場所とし て「ふれあいコーナー」があがっている理由には、3年のホームベースに近いことや使い 慣れていることが考えられる。

2)嫌いな場所[問2]

好きな場所に比べて件数は極めて少なく、幾つかの教科教室、「ホームベース」、「トイ レ」などがあがっている。「ホームベース」は、特に1年生が嫌いな場所としてあげてい るが、その理由として考えられるのは広さである。4学級の1年生は、2学級の他学年に 比べ混雑が生じているためであろう。1年生は中学校生活がまだ短く、ロッカーを使うこ とに慣れていないことも考えられる。

(2)教室移動と休み時間

教科教室制の基本要素の一つである毎時間の教室移動は、生徒にとって1日の学校生活 の軸となる。これに対して、教室移動の現状等は次の通りである。

1)休み時間の居場所[問3]

資料では上位3箇所を示す。授業の間の休み時間は、各学年とも、「次の授業が行われ る教科教室」、「ホームベース」あるいはこれら2箇所の周辺のコーナーやスペースであ る。つまり、ホームベースを経由して次の授業のために待機するという行動が読みとれる。

昼食後の休み時間には、さらに、各学年のふれあいコーナーがあがってくる。生徒は「自 分のホームルーム教室」で給食をとるが、「自分のホームルーム教室」は上位3箇所に入

ることはなく、各学年とも上位4番目から5番目に位置する。

放課後は、全校では「ホームベース」、「各学年のふれあいコーナー」、「ふれあいコー ナー(1階)」、「メディアセンター」の順であり、その次に「自分のホームルーム教室」

があがる。学年別には、1年生の「自分のホームルーム」(29.6%)は「ふれあいコーナ ー」に次いで第4位と高い。しかし、学年が進行するにつれて、該当割合は下がり、3年 生では「自分のホームルーム」をあげる生徒は僅か2人(4.4%)に過ぎない。

2)教室移動の負担[問4]

教室移動を大変に思う割合(「少し大変に思う」と「かなり大変に思う」の計)は、全

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校で3割である。学年別には3年生において若干この割合が高い。しかし、「かなり大変 に思う」割合は、全校でも10人(4.3%)にとどまる。

3)教室移動による気分転換[問5]

教科教室制の効果として、教室移動による気分転換が指摘されているが、これに対して は、全校で7割がそう答えている(「気分転換になる」と「どちらかといえばなる」の計)。

しかし、「(いい意味での)気分転換にならない」とする割合は、全校で1割弱(9.1%)

に達する。「気分転換にならない」とする割合は、2年生が多少高い。

4)休み時間(15分)の長さ[問6]

65分授業の導入に伴い、平成12年度から休み時間を15分間(午前中)としているが、休 み時間は「15分がよい」に支持が集まっている(全校約8割)。しかし、学年別には、3 年生では「10分」支持が1割、「どちらでもよい」を入れると4割を超えている。逆に1 年生は、9割を超える生徒が「15分」を支持している。このように低学年ほど「15分」支 持の割合が高くなっている。

(3)65分授業について 1)授業時間[問7]

G中学校では、前年度の後期には、前期の50分授業から60分授業に改めたが、さらに、

平成12年度からは、①教室移動の負担を減らす(移動の回数を減らす)、②教科教室を生 かした授業を推進する、③授業時間を確保するなどを理由に65分授業を開始した。授業時 間への支持は、全校では「65分がよい」が最も高い(28.3%)。これに対して、「50分が よい」は2割である。「65分がよい」と「60分か65分がよい」を合わせると48.3%となり、

現状に対してほぼ半数が支持をしているといえる。学年別には、高学年ほど現状を支持す る割合が高くなっており、3年生では、「65分がよい」と「60分か65分がよい」を合わせ ると7割弱となる。逆に「50分」支持は、3年生が1割であるのに対して、1年生と2年 生は2割台となっている。

2)授業中の集中力[問8]

全校では、「集中力が落ちる」が3割強、「いちがいにはいえない」が5割台、「集中力 が増す」が1割強である。「集中力が増す」というのは、十分授業時間があって時間を気 にせず取り組める、という意味である。学年別には、「集中力は落ちる」という割合は、

1年生・2年生が3割台であるのに対して、3年生は2割台に下がっている。

3)授業内容や方法の充実[問9]

授業が充実していないことには、教室移動の意味は薄くなる。そこで、授業が充実して いるかどうか、また充実しているとした場合の理由を尋ねている。

9教科のうち、全校において、最も「充実している」とする割合が高いの社会であり、

生徒の7割に達する。次いで、保健体育、技術家庭、数学、理科の順であり、これらの教 科に関しては約半数の生徒が「充実している」と回答している。

各教科において、充実しているとする生徒のうちの過半があげる理由には、社会の「考 察・まとめの時間がある」、数学の「授業がゆっくり丁寧である」および「自分の理解に 合っている」、美術および保健体育の「十分な活動時間がある」がある。数学が充実して いるとする第1の理由である「授業がゆっくり丁寧である」にしても、65分という時間の

− 12 −

(16)

長さが生かされた結果と見ることもできる。また数学において、「自分の理解に合ってい る」という割合が高いのは、チームティーチングの成果であると考えられる。教科教室の 特徴の一つは、教科教室としての機器や教材等の物的環境が整備されていることにある。

「機器や教材の利用が効果的である」という理由は、理科、美術、技術家庭においても4 割前後であり、特に国語、社会、数学では該当割合は低いといえる。

(4)教室環境と授業等について 1)教科教室の充実[問10]

教科教室型校舎が通常の校舎と異なる最大のポイントは、国語、社会、数学、理科の4 教科の教科教室にある。では、G中学校の教科教室はその教科の授業にふさわしい充実し た環境になっていると生徒は感じているのであろうか。これに対して、肯定的な回答(「ま

ったくそう思う」と「そう思う」の計)は、全校では、国語:74.3%・社会:68.0%、数 学:61.4%、英語:65.1%となっており、否定的な回答(「どちらかといえばそう思わな い」と「そう思わない」の計、それぞれ9.1%、13.3%、17.4%、14.9%)を大きく上回 っており、総じて、各教科の授業を行う教室としてふさわしい教室として認めていること が分かる。学年別では、2年生の肯定的割合が4教科とも他学年に比べ10ポイント程度低

く、厳しい見方をしている。

2)学級掲示物の学年ふれあいコーナーへの掲示[問11]

教科教室はホームルーム教室としても使用されるが、この場合、各学級の掲示を全校の 生徒が使用する教科教室に置くかどうかが問題となる。G中学校では、教科教室としての 機能を純化させるために学級の掲示物は教科教室に置かず、より多くの生徒の行き交う学 年ふれあいコーナーに置くこととしている。これに対する肯定的意見(「大変よい」と「ま あよい」の計)は全校で85.8%であり、大半の支持を受けているといえる。学年別には3 年生が他の学年に比べ多少低い。

3)前年度との比較による授業の充実[問12]

増築が行われて教科教室の数が増え、また教科教室の位置も変わり、さらに「学年ふれ あいコーナー」も設けられた。このような教室の変化に対して、授業自体は変わったので あろうか。授業が昨年度よりも充実しているかの設問について、そのように思う生徒(「ま ったくそう思う」と「どちらかといえばそう思う」の計)の割合は、2年生と3年生を合 わせてみれば、国語:44.2%、社会:62.5%、数学:50.0%、英語:42.5%となっている。

昨年度より充実していると思わない(「まったくそう思わない」と「どちらかといえばそ う思わない」の計)とする割合は、それぞれ30.9%、12.5%、19.2%、21.6%であって、

いずれの教科も、充実しているという割合がかなり上回っている。ただし、学年別には、

例外的に国語の3年生で逆転している。

4)学級のまとまり[問13]

教科教室制に対しては、頻繁な教室移動によって学級としてのまとまりの気持ちが薄く なるのではないかとの懸念が出てくる。しかし、そのような影響がある(「非常に影響が ある」と「多少影響がある」の計)とする生徒は、全校の6分の1(16.8%)にとどまっ ている。学年別には、1年生は2割強が影響があるとしているが、高学年になるほどこの 割合は低くなる。

− 13 −

(17)

5)教科教室制の評価[問14]

G中学校の最大の特色は、教科教室制という授業展開の仕組みである。他校との教育環 境の違いの大部分は、この教科教室制に起因すると考えられる。教科教室制を評価する生 徒(「大変よい」と「まあよい」の計)は、全校で7割を超えている(72.2%)。逆に評 価しない生徒(「全くよくない」と「よくない」の計)は、1割強(12.6%)である。学 年別の違いも余りない。

(5)総合的学習の時間(総合学習)と時間割について 1)総合学習[問15〜17]

新しい学習指導要領に先駆けて実施している総合学習について、満足しているという生 徒(「非常に満足」と「まあ満足」の計)は、8割近くに及んでいる。これを学年別にみ ると、1年生は9割近くが満足しているが、学年進行に伴い下がり3年生は6割にとどま る。次に、総合学習に対して意欲的に取り組んでいる生徒(「非常に意欲的」と「まあ意 欲的」の計)は、全校では8割に達する。学年別には、満足度と同様に高学年ほど下がる。

また、総合学習における資料整理やまとめの場所として、最も多くあがっているのは、

1年生は「自分のホームルーム教室」であるが、2年生と3年生は「メディアセンター」

である。次いで、各学年とも「ふれあいコーナー」となっている。

2)時間割編成[問18]

G中学校の1日の生活時程は短学活(SHR)に始まり、教科教室制で行われる各授業

(午前中3時間、午後1時間)が行われ、そして学級単位の「ゆとり語らいの時間」で終 了するのが基本的な一日の生活時程である(部活はその後行われる)。時間割の内容の濃 さと負担に関連して、「a充実した時間割である」と「bついてゆくのが大変な時間割で ある」に対する意見を求めた。

前者については、そのように思う生徒(「まったくそう思う」と「どちらかといえばそ う思うの計)は全校で6割であり、そう思わないとする生徒(「まったくそう思わない」

と「どちらかといえばそう思わない」の計)の2割台を大きく引き離している。学年別に みれば2年生において、その開きは縮まっている(10ポイント台の差)。後者については、

ついてゆくのが大変である(「まったくそう思う」と「どちらかといえばそう思う」の計)

とするのは、全校で2割台の前半となっており、学年別の差もほとんどない。

(6)学校生活について

では現在生徒は、学校生活をどのように受け止めているのであろうか。学校の勉強(授 業)、部活、その他の学校生活に関して尋ねた(問19〜21)。

まず、授業が楽しいとする生徒(「楽しい」と「どちらかといえば楽しい」の計)は、

全校の4分の3を上回っている。学年別には、2年生が6割台にとどまり相対的に低い。

次に、部活が楽しいとする生徒(「楽しい」と「どちらかといえば楽しい」の計)は、

全校で8割を超える。これに対して、楽しくないとする生徒(「楽しくない」と「どちら かといえば楽しくない」の計)は1割を下回る(7.5%)。ただし、学年別には、楽しく ないとする生徒の割合は2年生で1割を多少上回っている。

さらに、授業や部活動以外の学校生活については、全校では9割を超える生徒が楽しい

− 14 −

(18)

(「楽しい」と「どちらかといえば楽しい」の計)としている。2年生では、楽しくない とする生徒(「楽しくない」と「どちらかといえば楽しくない」の計)の割合は他の学年 に比べて多少高く、1割を超えている。

(7)学校教育環境に関する意見等

これに関しては、自由記述方式で回答を求めた(問22)。全校243人のうち110人(45.3

%)から回答があった。その内容は、大きく「Ⅰ.学校(生活)全般」、「Ⅱ.物的環境」、

「Ⅲ.教科教室制」、「Ⅳ.授業運営(教科教室制を除く)」の4つの領域に分類できるが、

詳細は2−3に譲る。

2.学校教育環境に関する考察

(1)学校生活と教科教室制

前項(6)では、学校生活(授業、部活、それ以外の学校生活)の受け止め方を明らか にした。生徒が学校生活を肯定的に受け止めるような状態が望ましいことは言うまでもな い。そこでまず、学校生活の受け止め方と教科教室制の関係から若干の考察を行いたい。

表2−1 学校生活の受け止め方と教科教室制の評価の関係

表2−1は、問19のうち「学校の勉強(授業)」(以下、授業)と「授業および部活以 外の学校生活(行事や友達づきあいなど)」(以下、生活)について、肯定的に捉えてい る生徒(「楽しい」と「どちらかといえば楽しい」)とそうではない生徒(「楽しくない」

と「どちらかといえば楽しくない」)に分けて4分類し、類型別の教科教室制への評価(問 14)状況を整理したものである。この結果からは、次の3点が指摘できる。

第1に、授業を肯定的に受け止めている生徒群(aおよびb)は、そうでない生徒群(c およびd)に比べて教科教室制を評価する割合が高い。つまり、授業の受け止め方と教科 教室制の評価には強い関連が見られ、教科教室制の成否にとって授業の充実度が重要な鍵

を握るということが確認できる。

第2に、しかし、授業および生活ともに肯定的に捉えている生徒の中にも、その1割に 満たないが、教科教室制を支持しない(「あまりよくない」および「よくない」)生徒が

−15−

(19)

存在する。これらの生徒が教科教室制を支持しないほぼ共通した理由は、教室移動の大変 さにある。個表に遡ると、教室移動について(問4)は、該当する14人中12人までが「少 し大変である」あるいは「かなり大変である」としており、極めて高い割合で教室移動の 負担を指摘している。このことは、教室移動の負担は、教科教室制の根本課題として押さ

えておく必要を示している。

第3に、授業を肯定的に捉えていないが生活を肯定的に受け止めている生徒群(c)で は、教科教室制を評価する割合は評価しない割合よりも高い。第1点と一見矛盾するが、

次のように解釈できる。すなわち、従来の普通教室制では、大半の授業を行う普通教室(ホ ームルーム教室)という場を介して生徒は多くの面で学級という枠を意識せざるを得ない が、教科教室制のもとでは学級という枠をあまり意識しないですむと考えられる。このよ うな特性を好む生徒が、授業はともかく生活を肯定的に受け止めており、その数はある程 度まとまったものになっているということである。もし、そうであるならば、本調査結果 は、学級という生活集団の在り方を見直す貴重な示唆を提供していることになる。

(2)教室環境と授業 1)教室環境と授業の関係

教科教室制導入の中心的なねらいは、教科教室の学習環境の充実によって教科学習を充 実させることにある。そこで次に、授業の充実度(問9)と教科教室としての充実度(問 10)との関係を考察する。図2−2は、国語、数学、社会、英語について、学級別に布置

したものである。数字は学年、記号は教科を表す。

図2−2 学級別にみた教室環境と授業の関係

全体の分布は、教室環境が充実している(「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」

の計)とする割合が、ほぼ5割から9割に収まっているのに対し、授業が充実している(「充 実している」)とする割合は、1割台から8割台まで幅広い。この図からは、教室環境の 充実がそのまま授業の充実に結びついているとは考えられない。全体的には、授業の充実 度は教室環境の充実とは独立した関係にあるといえる。ただし、1年生の「◆lの教科に

−16−

(20)

おける4つの学級の分布は、教室環境が充実しているという割合が高いほど、授業が充実 しているという結果を示しており、部分的には教室環境の充実が授業の充実に結びついて いるのではないかということをうかがわせる。教室環境の充実と授業の充実の関連につい ては、データの分析にとどまらず理論的な検討も含めて今後の検討課題である。

2)学年別の分布にみる評価意識の形成

学年別には1年生の教科別の分布の範囲に比べ、2年生や3年生のそれは広がりが大き い。特に3年生は、2つの教科において授業の充実度がかなり高いが、他の2教科におい ては、逆にかなり低い(この傾向は2年生にも見られる)。さらに、学級によって教室環 境の充実度にも差が見られる。このことは、上級生になれば教室環境や授業に対する評価 意識(批判の目)が育ったり、強くなるという可能性を示唆している。また、3年生の結 果には、2年前の母体校における従来型の普通教室とそこでの授業経験の影響も考えられ る。なお、それらの検証のためには、継続的な調査が必要である。

3)学級の違いにみる教師との親近性の反映

G中学校では、同学年は一人の教師が同じ教科の授業を担当している。したがって、授 業の充実度は同学年であれば学級による差はあまりないはずである。しかし、2学級ある 2年生において、それぞれホームルーム担任が授業を行う教科(2つの教科)は、もう一 つの学級より授業の充実度が高いという結果となっている。ここからは、担任であること、

つまり教師と生徒との親近性が授業の充実度に反映しているのではないかと考えられる。

3.今後の研究課題

以上、本章では、新設に合わせて教科教室制を導入した中学校の教育環境に関する生徒 アンケート調査結果を分析し、多少の考察を行った。そもそもこの調査は、教科教室制と いう新しい授業の仕組みが生徒にどのように受け入れられるか、教科教室制がうまく機能 するにはどのような条件が必要であるかを探るために始まった。と同時に、中学校に調査 結果を直ちに戻し、学校経営に役立てることを意図していた。

今回の調査結果は、概して生徒は、教科教室制を肯定的に評価していることを示してい る。「学年ふれあいコーナー」や教科教室といった新たに増築された部分も含め、全体と してG中学校の施設・設備は、生徒に好意的に受け入れられている。

調査結果全体からは、2年目へ順調に移行していることをうかがわせるが、この間の学 校の取り組みにも特筆すべきことが少なくない。例えば、前期後期の2期制、奇数週と偶 数週の2種類の時間割設定、空いている隣の教科教室をも使った授業展開、チームティー チング、高校棟での授業などである。手探りの中で始まったG中学校の教科教室制が、こ れらの取り組みとの関わりの中でどのように成立し機能しているのかについての細かな分 析・検討は、今後の研究課題として残っている。そして、それは教科教室制を採用する中 学校に必要なノウハウの開発や蓄積を進めるためにも不可欠と考えている。

−17−

(21)

2−3 平成12年度調査の集計結果

(括弧内は構成割合:%)

回答者について

問0.まず、あなた自身について答えてください。当てはまるものに○をつけて下さい。

1)何年生ですか。(n=243)

1.1年生123(50.6) 2.2年生 70(28.8) 3.3年生 50(20.6)

2)何組ですか。(n=243)

1年生 1.1組30(24.4) 2.2組31(25.2) 3.3組32(26.0) 4.4組30(24.4)

2年生 1.1組35(50.0) 2.2組35(50.0)

3年生 1.1組25(50.0) 2.2組25(50.0)

3)男子ですか、女子ですか。(n=242)

I.校舎について

ホームベース(ロッカー)から高校側の部分は4月に完成しましたが、学校のその他の 部分も1年前に建設されたばかりです。本校の校舎は、廊下にそって教室が単純に並んだ 従来型の校舎とはいろいろな点で違いがあります。

問1.校舎の内部であなたが好きな場所はどこですか。(各学年上位3カ所)

問2.校舎の内部で嫌いな場所はどこですか。(各学年上位3カ所)

− 18 −

(22)

II.教室移動と休み時間等について

問3.休み時間等の居場所についてお尋ねします。あなたは、abcのそれぞれの時間帯 で、どこにいることが多いですか。よく行く場所の番号に○をつけて下さい。

a授業の間の休み時間(各学年上位3カ所)

1年(n=122)

3.次の授業が行われる教科教室     94(77.0)

5.ホームベース(ロッカースペース)  69(56.6)

4.3の前のふれあいコーナーやオープンスペ−ス   41(33.6)

2年(n=68)

3.次の授業が行われる教科教室     55(80.9)

5.ホームベース(ロッカースペース)  35(51.5)

9.2年ふれあいコーナー      29(42.6)

3年(n=50)

3.次の授業が行われる教科教室     38(76.0)

4.3の前のふれあいコーナーやオープンスペース  22(44.0)

5.ホームベース(ロッカースペース)  21(42.0)

b昼食後の休憩時間(各学年上位3カ所)

1年(n=120)

3.次の授業が行われる教科教室     83(69.2)

5.ホームベース(ロッカースペース)  55(45.8)

8.1年ふれあいコーナー        46(38.3)

2年(n=69)

5.ホームベース(ロッカースペース)  40(58.0)

3.次の授業が行われる教科教室     39(56.5)

9.2年ふれあいコーナー         28(40.6)

3年(n=49)

3.次の授業が行われる教科教室     29(59.2)

5.ホームベース(ロッカースペース) 18(36.7)

4.3の前のふれあいコーナーやオ−プンスペース  13(26.5)

c放課後(部活は除く)(各学年上位3カ所)

1年(n=115)

8.1年ふれあいコーナー         72(62.6)

5.ホームベース(ロッカースペース)  67(58.3)

11.ふれあいコーナー       38(33.0)

2年(n=52)

5.ホームベース(ロッカースペース)  36(69.2)

9.2年ふれあいコーナー        32(61.6)

14.メディアセンター      22(42.3)

3年(n=45)

11.ふれあいコーナー       30(66.7)

5.ホームベース(ロッカースペース)  25(55.6)

10.3年ふれあいコーナー        24(53.3)

− 19 −

(23)

問4.授業ごとの教室移動は大変ですか。

n=120 1年生     32(26.7)  53(44.2) 31(25.8)  4(3.3)

n=66  2年生     22(33.3)  26(39.4) 13(19.7)  5(7.6)

n=48  3年生      9(18.8)  22(45.8) 16(33.3) 1(2.1)

n=234 計        63(26.9) 101(43.2) 60(25.6) 10(4.3)

問5.教室移動は気分転換になりますか。

n=123 1年生      9(7.3)  79(64.2) 28(22.8)  7(5.7)

n=70  2年生      7(10.0)  36(51.4) 16(22.9) 11(15.7)

n=49  3年生      7(14.3)  31(63.3)  7(14.3)  4(8.2)

n=242 計        23(9.5) 146(60.3) 51(21.1) 22(9.1)

問6.授業の間の15分休みの時間(午前中)について、どのように思いますか。

n=121 1年生      2(1.7)   7(5.8)112(92.6)

n=70  2年生      5(7.1) 11(15.7) 54(77.1)

n=50  3年生      5(10.0) 16(32.0) 29(58.0)

n=241 計       12(5.0)  34(14.1)195(80.9)

− 20 −

(24)

Ⅲ.65分授業について 問7.授業時間の比較

昨年度50分授業(前期)と60分授業(後期)を行い、今年度からは授業時間は65分と なりました(学活等を除く)。授業時間としては50分授業、60分授業、65分授業のうち

どれがよいと考えますか。あてはまるもの1つに○をつけてください。また、その理 由は何ですか。理由を□内に記入してください。

n=122 1年生    27(22.1)  21(17.2) 24(19.7) 24(19.7) 26(21.3)

n=69  2年生   16(23.2)  6(8.7) 15(21.7) 7(10.1) 25(36.2)

n=49  3年生     5(10.2)  3(6.1)  7(14.3)17(34.7)17(34.7)

n=240 計      48(20.0)  30(12.5) 46(19.2) 48(20.0) 68(28.3)

問8.授業中の集中力

あなたの65分授業における集中力についてお尋ねします。もっともよく当てはまると 思うもの1つに○をつけてください。

n=123 1年生     44(35.8)  64(52.0) 15(12.2)

n=70  2年生     25(35.7)  37(52.9)  8(11.4)

n=50  3年生     10(20.0)  34(68.0)  6(12.0)

n=243 計        79(32.5) 135(55.6) 29(11.9)

− 21−

(25)

間9.授業内容や方法の充実

あなたは、各教科の授業が充実していると思いますか。教科ごとに、「a.充実していな い」「b.どちらともいえない」「C.充実している」のいずれかに○をつけてください。なお

「c.充実している」とした場合には、その理由を選び、○をつけてください(3つまで)。

− 22 −

(26)

Ⅳ.教室環境と授業等について

わが国の大多数の中学校ではホームルーム教室となる普通教室があり、そこで国語・

社会・数学・英語の授業を受けます。これに対して本校では、それらの教科についても 教科専用の教科教室が設けられ、毎時間、教室を移動して授業を受ける仕組みになって います。この仕組みを「教科教室制」といいますが、このことに関して次の質問に答え てください。

問10.国語、社会、数学、英語の各教科教室は、掲示・展示、教材・機器の装備、教室のつく り方などを総合して判断すると、各教科の授業を行うのにふさわしい充実した環境にな っていると思いますか。

① 国 語

n=122 1年生   32(26.2)  67(54.9)  6(4.9)  3(2.5) 14(11.5)

n=69 2年生   8(11.6)  33(47.8) 10(14.5) 1(1.5) 17(24.6)

n=50 3年生   7(14.0)  32(64.0)  0(0.0)  2(4.0)  9(18.0)

n=241計     47(19.5) 132(54.8) 16(6.6)  6(2.5) 40(16.6)

② 社 会

n=122 1年生   44(36.1)  50(41.0)  8(6.6)  4(3.3) 16(13.1)

n=69 2年生  10(14.5)  30(43.5)  9(13.0)  2(2.9) 18(26.1)

n=50 3年生   7(14.0)  23(46.0)  8(16.0)  1(2.0) 11(22.0)

n=241計     61(25.3) 103(42.7) 25(10.4)  7(2.9) 45(18.7)

③ 数 学

n=121 1年生   25(20.7)  49(40.5) 20(16.5)  7(5.8) 20(16.5)

n=70 2年生   5(7.1)  32(45.7)  9(12.9)  3(4.3) 21(30.0)

n=50 3年生   6(12.0)  31(62.0)  3(6.0)  0(0.0) 10(20.0)

n=241計    36(14.9) 112(46.5) 32(13.3) 10(4.1) 51(21.2)

④ 英 語

n=121 1年生   24(19.8)  62(51.2) 12(9.9)  6(5.0) 17(14.0)

n=70 2年生   7(10.0)  29(41.4)  9(12.9)  4(5.7) 21(30.0)

n=50 3年生   9(18.0)  26(52.0)  2(4.0)  3(6.0) 10(20.0)

n=241計     40(16.6) 117(48.5) 23(9.5) 13(5.4) 48(19.9)

問11.学級(クラス)の掲示物は、各学年のふれあいコーナーに掲示されています。この ことについて、あなたはどう思いますか。

n=122 1年生     40(32.8)  66(54.1) 15(12.3) 1(0.8)

n=68 2年生    14(20.6)  46(67.6)  7(10.3) 1(1.5)

n=50 3年生    13(26.0)  27(54.0) 10(20.0)  0(0.0)

n=240 計       67(27.9) 139(57.9) 32(13.3)  2(0.8)

− 23 −

(27)

問12.<2年生と3年生にお尋ねします(1年生は回答の必要はありません)>

今年度は各学年のふれあいコーナーが完成し、教科教室の配置も変わりました。以下 の各教科の授業は、昨年度の授業よりも充実していると思いますか。教科別に、1〜5 のうち当てはまるものに○をつけてください。

① 国 語

n=70 2年生    9(12.9)  29(41.4) 14(20.0)  2(2.9) 16(22.9)

n=50 3年生    3(6.0) 12(24.0) 12(24.0)  9(18.0) 14(28.0)

n=120計     12(10.0)  41(34.2)  26(21.7) 11(9.2)  30(25.0)

② 社 会

n=70 2年生  12(17.1)  32(45.7)  9(12.9)  0(0.0) 17(24.3)

n=50 3年生    5(10.0)  26(52.0)  5(10.0)  1(2.0) 13(26.0)

n=120計     17(14.2)  58(48.3) 14(11.7)  1(0.8) 30(25.0)

③ 数 学

n=70 2年生  12(17.1)  22(31.4) 11(15.7)   5(7.1) 20(28.6)

nニ50 3年生    5(10.0)  21(42.0)  7(14.0)   0(0.0) 17(34.0)

n=120計     17(14.2)  43(35.8) 18(15.0)  5(4ⅠⅠ2)  37(30.8)

④ 英 語

n=70 2年生    8(11.4)  24(34.3) 11(15.7)   5(7.1) 22(31.4)

n=50 3年生    3(6.0) 16(32.0)  8(16.0)  2(4.0) 21(42.0)

n=120計     11(9.2)  40(33.3) 19(15.8)  7(5.8) 43(35.8)

問13.<ここから最後までの質問は、1年生も含めてすべての生徒にお尋ねします。>

「教科教室制」によって、学級(クラス)の一員であるというまとまりの気持ちが薄 くなるというような影響があると思いますか。

n=117 1年生      2(1.7)  23(19.7) 55(47.0) 37(31.6)

n=66  2年生      0(0.0) 10(15.2) 30(45.5) 26(39.4)

n=49  3年生      0(0.0)   4(8.2) 22(44.9) 23(46.9)

n=232 計        2(0.9)  37(15.9)107(46.1) 86(37.1)

− 24 −

図 1 − 1  G中学校校舎平面図(1 年目)
図 2 - 1  G中学校校舎各階平面図(2 年目)
図 4-2  平成 14 年度教室配置図 図 4-1  平成 13 年度教室配置図 

参照

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