コミュニケーション摩擦場面における通訳者の規範意識
-中国の日系企業を中心に-
朱 藹琳
(神戸大学大学院国際文化学研究科博士後期課程)
Abstract
This paper discusses norms of interpreters’ awareness working for Japanese companies in China, focusing specifically on their responses to communication conflicts. Based on a questionnaire survey and semi-structured interviews, the study analyzes the interpreters’
behaviors when communication conflicts occur, by applying Chesterman’s (1997) theory. The survey and interviews results reveal that interpreters make efforts to avoid conflicts and make the communication smooth under the influence of “the communication norm” (strongly) and
“the accountability norm”. Meanwhile, “the relation norm” has less effect. The study suggests that interpreters’ action is partly governed by norms, though their identity as an interpreter as well as an employee of a company, also influence their interpreting behaviors.
1. 研究の背景・目的
周知の通り、日本は中国にとって重要なビジネスパートナーである。2012年末の調査による と、中国における日系企業の数は23,094社であり、外資企業全体数の 7.9%を占め、一位に なっている1。これらの日系企業においては、日本の本社から日本人従業員を中国に駐在さ せるパターンがほとんどであり、またルーチン業務においても日本人従業員と中国人従業員 のコミュニケーションが多い。両国の従業員のコミュニケーション場面で通訳者を介するケース と介さないケースがあるが、そんな異文化コミュニケーションの中、実際には摩擦が常に発生し ている(西田 2007; 辻 2011)。
中国に長期駐在または短期間派遣の日本人従業員はほとんど中国語が分からないため、
通訳者を介してコミュニケーションすることが必要になる。このような中、企業における翻訳・通 訳、または企業の翻訳者・通訳者を対象にした研究が注目されつつある。1990年代には中国 において「企業翻訳学」2という分野が台頭してきた(劉 1992)。その後、許(2002)の『工商企 業翻訳実務』をはじめ、中国語と英語間の企業翻訳に関する研究が進められている。それに 対して、中国語と日本語間ではまだ企業における翻訳・通訳に関する研究が稀であり、ビジネ ス分野における通訳規範に関する研究はさらに少ない。また韓(2004: 69-70)は、中国におけ
ZHU Ailin, “Norms of interpreters’ awareness in communication conflicts--Focusing on Japanese companies in China,” Invitation to Interpreting and Translation Studies, No. 20, 2019. pages 115-140.
©by the Japan Association for Interpreting and Translation Studies
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る規範3に関する研究は「比較言語学の視点にとどまり」、「記述的な研究は少なく」、「なおか つ翻訳行為が異文化コミュニケーション行為として見なされていない」と批判している。確かに、
中国におけるビジネス分野の通訳規範に関する研究(許 2002; 陳 2008 など)を概観すれ ば、規定的に主張するものが多く、そして、場面に応じて「原文を変える」ことを提唱するものも 見られる。通訳規範の概念を用いて、通訳者の介入行為が確かに存在することを検証した研 究(瀧本 2006; 平塚 2015)もあるが、中国におけるビジネス分野というフィールドに特化して、
通訳者の実際の行動や規範意識を明らかにした研究は少ない。
本研究は以上の問題意識を持ち、中国の日系企業に勤務する通訳者を視野に入れて、チ ェスタマンが提起した翻訳規範に関する理論モデルに基づき、記述的な研究を行う。文化の 狭間にいる企業の通訳者は、いかに行動しているか、またその行動はどのような規範意識に 導かれているのであろうか。本研究は、中国の日系企業における通訳者の実態と規範意識を 明らかにすることを目的とする。とくに、先行研究を踏まえて、通訳行為を異文化コミュニケー ションとして捉え、具体的にはコミュニケーション摩擦場面でどう行動するかをアンケートとイン タビュー調査で明らかにしたいと考える。
2. 分析の枠組み
通訳行為における規範は「翻訳規範」の概念モデルによって既定されている。トゥーリーは 翻訳規範の概念を取り入れ、記述的翻訳研究のキー概念として翻訳規範について論じてき た。「規範」という用語についてトゥーリーは次のように説明している。「あるコミュニティで共有さ れる一般的な価値観及び考え方-何が正しくて何が誤りなのか、何が適切で何が不適切か
-を特定の状況に適応する使用可能な作業指示にしたもの」(Toury 1995: 55)。「規範」は
「運用」の選択肢の中で特定の社会歴史的文脈のもとで翻訳者がよく採用する選択肢の集合 である(Baker 2009)と見なされ、その選択肢は、翻訳指示や公的規制と関連づけられる可能 性 があるが、すべての人 が従わねばならない法 律ではなく、共 通 の標 準 的 慣 行である(ピム 2010: 124)。さらに、Toury(1995: 53-56)は「翻訳者の社会的役割」という考え方を重視し、翻 訳者を「必要な媒介者」、翻訳行為を「規範に支配された行為」であると捉える。
チェスタマンはトゥーリーの理論を援用し、記述的な面から翻訳規範の論説を展開し、トゥー リーよりさらなる分類の精緻化を試みた。トゥーリーと比べて、チェスタマンは社会的・認識論的 側面に注目し、翻訳者とクライアント、テクストユーザーとの関係を視野にいれて分類した(ピム 2010: 125)。Chesterman(1997: 64-69)は、翻訳規範理論には社会的・倫理的・技術的の3つ の内容が必要だと主張する。社会的に規範は「法律」と「慣習」の中間の立場をとるものであり、
倫理に関わる内容はある社会のある時期に存在するものである。また、技術的にはプロダクト 規範とプロセス規範という 2 種類に分けることができ、プロセス規範は方法を明示することに関 連し、プロダクト規範は「正確な」プロダクトがどういうものかを制限するものである。プロダクト規 範について、チェスタマンは「期待規範」と呼び、最終的に目標言語の読者によって形成され、
読者が求めるテクストであると定義した。次にプロセス規範に関してはプロダクト規範に従属す るものであり、「職業規範」と名付ける。さらに「職業規範」は「責任規範」、「コミュニケーション
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規範」と「関係規範」の 3 つに分類される。「責任規範」は倫理に関わるものであり、原文の原 作者、翻訳の依頼人、翻訳者自身、想定読者及びほかに関連する人、換言すれば翻訳行為 の参加者全員に対して翻訳者が「忠誠(loyalty)」の要求に従い、適切に行動する責任を持つ べきだということである。そして、「コミュニケーション規範」は社会的なものであり、コミュニケー ションの専門家と見なされる翻訳者が、状況の要求に従ってすべての参加者の間にコミュニケ ーションを最適化する行動を取ることを指している。「関係規範」は言語的なものに関わり、ST とTT間に言語的に適切な関係性を築くことである。
本稿はプロセスに注目した研究とし、プロセス規範を精緻に分類したチェスタマンの規範モ デルを使用して分析を行う。マンデイは、チェスタマンの分類は「トゥーリーの初期規範と運用 規範の領域を網羅している」と評価した(マンデイ2012: 183)。
また、規範の抽出について、Toury(1995: 65-66)は二つの資料から入手できると述べる。そ れは①翻訳されたテクストと、②テクスト以外に翻訳行為に関わる人たちが述べた規範に関す る宣言(statements)の二つである。そのうちの②の資料についてトゥーリーは慎重に扱うべきだ と強調する。規範に関する宣言は、部分的かつ偏見を含むものになる恐れがあるためだ。しか しながら、トゥーリーはこのような資料は、実際の行為を分析するための有効な分析材料になる とも述べおり、ビジネス上の機密保持で音声データの入手が困難であるため、本稿では②の 方法を用いて通訳規範を明らかにする。また、「翻訳規範」は翻訳者の行為にかかわるものと 捉えられることに対して、本研究では行動を観察する調査を行うのではなく、通訳者自身が通 訳行為を振り返り、その行為の規範を抽出する研究を行う。同じような先行研究(平塚 2015)
では規範意識という用語が使われている。さらに、河原(2015)において規範には意識と無意 識の部分が含まれるという指摘が見られ、②の方法では意識の部分しか汲み取れないため、
本研究は「規範意識」という用語を使用することとする。
3. 先行研究
3.1 翻訳・通訳規範の先行研究
中国では、「信達雅」をはじめ古くから文学作品を翻訳する際の翻訳規範に関する論説が 多く、近年ではビジネス分野においてもいくつかの研究が見られる。許(2002)は『工商企業翻 訳実務』という著書に、中国の外資系企業での翻訳と通訳の「標準」を定めた。「通訳の標準」
について、正確性と速さ以外に、「話者双方の情緒と会話の雰囲気を適切に調整すべき」とい う項目があげられている(ibid.: 275)。この点に関して、陳(2008)も同じ意見を持っている。日 系企業においては、特に文化の違いによって、「言外の意味」を理解し、会話の場面をコント ロールすることが必要だと陳(2008)は述べる。そして、文・唐(2002)はこのグローバル経済の背 景で、情報伝達のスピードを重視し、企業における翻訳・通訳は状況によって必要な情報だ け翻訳・通訳すればいいという「変訳(変えて訳す)」する必要があると述べる。以上の主張は チェスタマンの「職業規範」にかかわり、翻訳者・通訳者の社会的役割を重視するものだと考 えられる。しかし、これらの研究はいずれにしても規定的に、通訳者がどう行動すべきかを主張 する研究であり、現実に基づいた記述的研究ではない。
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中国における翻訳規範に関する記述的な研究について、文学分野では多数の研究が見ら れる(尹 2009, 王 2011 等)。これらの研究は、Toury(1995)が提起した規範の抽出方法①を 採用したものである。通訳規範に関しては、最も新しい研究は王(2013)である。中国における
「両会」4の記者会見の通訳音声データ、および通訳者に対して行われたインタビューから規 範を抽出し、通訳者は訳さなくてもいいと判断した内容を省略したり、重複した内容を圧縮し たり、間違いだと判断した内容を修正したりするような介入行為が見られる(ibid.: 141-143)。こ うした結果に基づいて、「規定性規範」5は職業の真実を反映していないため、現実に沿った 規定の提案をしている(ibid.: 150)。
日本においても、通訳者の規範研究は多数行われているが、本研究の先行研究として、オ ーストラリアビジネス分野の通訳者を対象にした研究である瀧本(2006)、及び日中通訳者を研 究対象とした平塚(2015)を取り上げる。瀧本(2006)はオーストラリアにおけるビジネス分野のダ イアログ通訳者にインタビュー調査をした結果、AUSIT6の倫理規定のうちに「公平性」と「正 確性」において、逸脱行為が見られ、チェスタマンの枠組みで言うと、期待規範と見なされる倫 理規定よりも職業規範の一種であるコミュニケーション規範の方が通訳者への影響が強いとい う可能性を示唆すると論じた。なお、通訳者の行動の中に、「コミュニケーションが円滑に進み、
特に大きな問題がないような状況では、中立性や公平性を保つというのはさほど困難なことで はない」(ibid.: 148)という語りも見られる。換言すれば、コミュニケーション摩擦が起こる際、通 訳者は中立性や公平性を保たずにどちらかに偏る可能性が示唆される。平塚(2015)の研究 は日中通訳者を対象にしたものであり、オーラル・ヒストリーの手法を使って規範意識を明確に した研究である。結果、中国語母語話者の通訳者はチェスタマンが提起した三種の職業規範 を「内在化して咀嚼した上で訳出の内容を決定している」が、「最終的な訳出内容は期待規 範に左右される傾向にある」(ibid.: 138)ことが明らかになった。
上述の先行研究はそれぞれ注目するところが異なるが、いずれも通訳者の語りによって規 範を検証した研究である。そして、結果からみると、通訳者はコミュニケーションの調整を行っ たりして、文化的な媒介者という役割を果たしている点に共通する。瀧本(2006)の研究では、
コミュニケーション摩擦が起こる場面において、通訳者が倫理規定の「中立性」、「公平性」か ら逸脱する可能性が示され、不適切な表現に関してもそのまま通訳しない傾向が見られる。摩 擦のある場面に焦点を当ててみれば、平塚(2015)は、通訳経験を重ねると「摩擦の回避」から
「円滑なコミュニケーションの促進」へと移行する傾向があると述べた。これらの先行研究は数 名にインタビューした質的研究であり、調査協力者の人数が少ない。また、対象者は経験年 数が長い、または通訳訓練を受けた人や認定を受けた通訳者であり、規範意識が倫理規定 に影響された可能性があるという前提としての議論であるため、本稿の研究対象である中国の 日系企業に勤務する通訳者との前提条件が異なる可能性があると推測される。
先行研究との相違点として、本研究はもめ事や暴言の発言などのコミュニケーション摩擦場 面に注目した点である。中国の日系企業において、日中の従業員がコミュニケーションをする 場面で摩擦が起こることは稀ではない。そんな中で通訳者がどのような規範意識を持って対 応するのかを、本研究によって明らかにしたいと考える。平塚(2015)の研究にもコミュニケーシ
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ョン・ギャップに対する通訳者の対応について言及があり、もめ事の場面において、通訳者が 文化の違いを説明したり、または表現を和らげて通訳したりするといった行為が見られた。本 研究はさらに具体的に、コミュニケーション摩擦場面に特化し、通訳者の規範意識について 考察することを目的とする。
3.2 中国の日系企業におけるコミュニケーション摩擦
先述の先行研究から、ビジネス分野における研究で、通訳は単なる言葉の転換のみならず、
場面に応じた調整を主張していることが分かった(許 2002, 陳 2008, 文・唐 2002)。実際の ビジネス分野のダイアログ通訳場面において、オーストラリアの現場では、コミュニケーションが 起こる場面や発話が不適切な場合、通訳者は発話を調整することも分かった(瀧本 2006)。
中国の日系企業においてコミュニケーション摩擦が起こりうる場面に焦点をあててみれば、コミ ュニケーション学の分野では先行研究が見られる。西田(2007)は、日本人及び中国人従業員 に対するアンケート調査を用いて、中国の日系企業でおこる摩擦の実態を調査した。その調 査項目のうち、「日本人上司から中国人部下に対する指示の与え方」(ibid.: 363)及び「日本 人従業員の断り方」(ibid.: 366)の2つの場面は、翻訳者・通訳者を介して行う可能性を含む ものである。
さらに具体的な研究として、辻 (2011)が挙げられる。辻 (2011)は中国進出日系企業にお いて、中国現地でコミュニケーションの摩擦が起こりうる場面および日本語の表現、つまり「好 ましくない」表現、また効果的にそれに代わる「好ましい」表現を調査して日本人駐在員への 日本語コミュニケーション教育を提言する研究である。この研究は中国進出の日系企業での コミュニケーション状況をまずアンケート質問票で調査をしたうえで、具体的にどのような場面 でどのような表現によってコミュニケーション摩擦が生じやすいかをアンケート調査・インタビュ ー調査で明らかにした。表現については主に日本人駐在員を対象とし、それらの表現に対す る意見は現地従業員を対象にして調べている。研究で取り上げた 4 つの場面は、「(1)現地従 業員に注意する場面、(2)現地従業員に指示を与える場面、(3)現地従業員の意見及び要求 を断る場面、(4)現地従業員を褒める場面」であり、それぞれの場面ごとに具体的な表現を提 示している。この部分の研究結果を表1に整理した。
表1:コミュニケーション摩擦が起こりやすい場面及び表現(辻 2011: 69-80)
場面 表現 もたらしうる結果
表現カテゴリー 表現の例 (1)注意 面子にかかわる表現 「 も っ と 頭 を 使 っ て 仕
事をしろ!」
過剰反応してしまう
冗談・皮肉を交えた表 現
「 最 後 は 自 分 の 問 題 だけどな。」
相 手 が何 を伝 えたいのかが 分からない。
曖昧な表現 「 ち ょ っ と だ め だ な 注 意 されているかどうか、ま
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あ。」 た度 合 いが上 手 く把 握 でき ない
(2)指示 報 連 相 に か か わ る 表 現
「随 時 、状 況 を説 明 し てください。」
従業員が勝 手に進めるため 問題を引き起こす
曖昧な表現 「それ、忘れないように ね。」
・「それ」の内容にピンとこな い
・重要な仕事だとは感じない
(3)断り 規則にかかわる表現 「会社の規則だから仕
方がないよ。」
どうすればいいのかが分から ない
曖昧な表現 「気 持 ちはわかるんだ が…」
なにを伝えたいのかがよくわ からない
(4)称賛 面子にかかわる表現 「中 国 人 にしては、仕
事が丁寧だね。」
抵抗感、不満
過剰な表現 「全 部 、君 のおかげだ よ!」
その従 業 員 が周 りから反 感 を 買 っ て し ま う 恐 れ が あ る など
冗談・皮肉を交えた表 現
「この程度なら、できて 当然。」
頑 張 っ て も 評 価 さ れ な い 不 満
曖昧な表現 「すごいね!」 評 価 されたポイントが分 から ない
報酬にかかわる表現 「 よ し 、 給 料 を 上 げ よ う!」
実 際そうはならないから騙さ れた気持ち
(表は筆者による)
しかし、上記の二つの研究(西田 2007; 辻 2011)はいずれも日本人と中国人従業員を 対象にしたものであり、通訳者に対する調査結果ではない。そこで本研究では、この表 1 の 4 場面を用いながら、中国の日系企業に勤務する通訳者を対象にして、コミュニケーション摩擦 場面において通訳者がどのような規範意識を持っているかという点で、アンケート調査及びイ ンタビュー調査を実施する。
4. 調査とその結果 4.1 調査方法
本研究の調査方法は、アンケートと半構造化インタビューの 2種類とする。アンケート調査を 用いて中国の日系企業に勤務している通訳者の実態、および摩擦場面における対応などに 関するデータを量的に収集することを目的とする。半構造化インタビュー調査はアンケート調 査のフォローアップ調査の形式であり、通訳者が経験した摩擦場面の対応、ならびにその理
121 由について調査する。
アンケート調査は大きく 2 つの部分からなる。第一部は、中国の日系企業に勤務している通 訳者の実態であり、学歴・職歴、待遇及び仕事に対する満足度についての内容である。第二 部では「摩擦場面における対応」を調べるために、4 つの代表的な場面を設定して通訳者の 規範意識について調査を行う。場面設定の根拠としては、辻 (2011)調査結果により、4 つの 場面から最も数多く事例が報告される代表的な表現を取り出し、どう通訳するかを選択しても らう。
表2:アンケート調査で取り上げる4つの表現
場面 表現
注意 面子にかかわる表現 「もっと頭を使って仕事をしろ!」
指示 あいまい表現 「それ、忘れないようにね」
断り あいまい表現 「気持ちは分かるんだが…」
称賛 メンツに関わる表現 「中国人にしては、仕事が丁寧だね」
通訳方略の選択肢については、通訳者の可視性の度合いが「低」から「高」になる順に、① 文面通りに訳す、②明示化/省略を行う、③解説的な方法を用いる、④発話者に確認/反論す るという4 つの選択肢を作成し、「その他」を設定して自由記述も可能な形式とする。それぞれ を分かりやすくするために、各選択肢に通訳例を挙げた。質問紙の最後に中国の日系企業 における通訳者の役割に対する考え方に関して設問した。
アンケート調査は2017年7月に行った。前述の方針に基づいて質問紙を設計した後、質問 紙 を「問 巻 星 」というウェブサイトで作 成 し、そのリンクを知 り合 いの日 系 企 業 通 訳 者 宛 に、
Wechat7 にて送り、さらに知り合いや同僚の通訳者に転送するように依頼したところ、3 日間で
115件の回答を得た。そのうち無効回答が6件あり、それを除く109件の回答を分析データと して使用した。結果について、記述統計分析を行った8。調査対象となった通訳者はすべて中 国人であった。
また、半構造化インタビューについては、中国の日系企業に勤務している現役の通訳者に 実際の摩擦場面での経験を中心に語ってもらった。2017年8月に4名の調査協力者に一対 一で半構造化インタビューを行い、音声を録音して文字化したものを分析データとする。イン タビューを実施する前に、各協力者に「調査協力依頼書」を送付し、研究の内容及びインタビ ューの趣旨を伝え、承認を得たうえでインタビューを実施した。インタビュー調査の協力者は、
アンケート調査を協力してくれた 109 名のうち、経験年数を選定基準として、6 名に調査を依 頼したところ、応じてくれた4名である。
表3に調査協力者のプロフィールを示す。
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表3:半構造化インタビュー調査協力者のプロフィール
A氏 B氏 C氏 D氏
性別 女 女 女 女
年齢 30代後半 30代前半 20代前半 20 代後半 通訳歴 13年 9年 3年 1年未満
職歴
社長秘書・通訳
⇒社長室係長⇒
経営管理課課長
(現)
品質管理部通訳・担 当者兼任⇒フリーラ ンス通訳者⇒社長 秘書・通訳者(現)
社長秘書・
通訳者
(現)
B社マーケティング担 当者⇒X社マーケティ ング担当者・通訳者 兼任(現)
分野 自動車 自動車、産業機器 自動車 FMCG9販売
インタビューにおいては、主にもめ事の通訳経験に関するエピソードが語られたが、4 名そ れぞれで対応方法も結果も異なっていた。もめ事以外にも、会話が円滑に進まない、誤解を 招きうる場面などに、通訳者が判断しながら行動をする事例を語ってもらった。
規範意識の抽出方法については、企業における機密保持のために通訳の音声データを入 手することが困難であるが、アンケート調査およびインタビュー調査によってコミュニケーション 摩擦時の通訳者の行動を調べて、規範意識を分析する。
4.2 調査結果
4.2.1 中国の日系企業における通訳者の特徴
アンケート調査の結果によって、現在中国の日系企業における通訳者の特徴をまとめてみ た。
まず、正規社員採用という雇用形態がほとんどである。109 名の調査協力者のうち、104 名
(95.41%)10 の通訳者は正社員として企業で勤務している。また、通訳と翻訳のみならず、調 査協力者全員が社内の他の業務も担当している。仕事の内容は、庶務関連(50.46%)と、品 質管理や営業など実務の担当者(47.71%)が半数以上か半数ほど占めている。この結果から、
通訳者と企業との距離が非常に近く、「通訳者」と何かの実務の「担当者」という 2 重のアイデ ンティティを持っていると考えられる。したがって、本稿における「通訳者」は、専業の通訳者で はなく、企業に社員として雇われて、通訳・翻訳以外の業務も担当しているという定義とする。
そしてもう一つの特徴は、高等教育機関で日本語を学んでおり(91.74%)、そして同機関で 通訳・翻訳の知識を得ていることである(72.48%)。専門的な通訳・翻訳訓練は受けておらず、
通訳・翻訳に関しては高等教育機関での日本語教育の一環とされる授業の形で教わってい る。換言すれば、日本語の習得も、通訳・翻訳のスキルを身に付けることもほとんど高等教育 機関で行ったと言える。また、日本語を学ぶ動機という複数選択可の設問で、「翻訳者・通訳 者になりたかった」と選択した協力者は 14.68%しかおらず、インタビュー調査の協力者も就職 のために現在の仕事に携わったと話したことから、おそらく通訳者や翻訳者になりたいという意
123 志が強くないことが推測できる。
しかし、中国の日系企業で勤務している通訳者たちは、かなり幅広い場面の通訳をしている。
会議や商談などフォーマルな場面と、部内で上司と部下あるいは同僚間のダイアログ、また接 待や食事会などインフォーマルな場面も含まれ、多種多様である。通訳する相手も会社のトッ プクラスから一般従業員まで多様である。
また、アンケート調査で通訳者の待遇を調査した。企業において抱える仕事が多数あり、待 遇的に他の従業員より有利だと答える協力者は 53.21% を占めたものの、「給料が少ない」
(46.79%)や、「昇進がない」(44.04%)、「価値がないと感じる」(26.61%)といった理由で通訳 の仕事に満足していない割合も少なくない 11。インタビュー調査においても、「通訳の機械とい う仕事を成し遂げればいい」と周りに言われたり、周囲からの評価として「『ただの通訳者』とい うラベルが貼られる」(B氏)といった語りから、今回調査した中国の日系企業ではおそらく通訳 者という職位は職場で高く評価されていないという結果が導き出せるであろう。
4.2.2 コミュニケーション摩擦への対応
本節では、コミュニケーション摩擦になりうる表現を3種類に分けて分析を行う。
まず、前述の辻 (2011)が提起したコミュニケーション摩擦場面は、2 種類に分けることが可 能である。1 つ目はあいまい表現の通訳であり、主に日本語から中国語に通訳する場面で摩 擦が起こりうる。辻 (2011)の調査結果の中の指示場面における「それ、忘れないようにね」と いう表現、ならびに断り場面における「気持ちは分かるんだが…」という表現はこの分類に当て はまる。2つ目は暴言・コンフリクトが起こりうる表現である。先行研究(辻 2011)では、注意場 面の「もっと頭を使って仕事をしろ!」という表現と、称賛場面の「中国人にしては、仕事が丁 寧だね」という表現がこの分類に入る。3 つ目は先行研究にはないが、インタビュー調査にお いて協力者が語った内容から導き出した分かりにくい発話の通訳である。2つ目と3つ目の分 類は、日中両方向の通訳に現れうるが、本調査では主に日本語から中国語へという方向を対 象とする。
4.2.2.1 あいまい表現の通訳
アンケート調査から以下の結果を得た。
指示
(それ、忘れないようにね)
断り
(気持ちは分かるんだが…)
文面通りに 10.09% 11.01%
明示化 40.37% 76.15%
解説的な方法 33.03% 8.26%
発話者に確認 15.6% 3.67%
その他 0.92% 0.92%
両場面ともに、「明示化」の選択肢が最も多く選ばれている。断り場面の「明示化」が指示場
124
面より比率が高く、「解説的な方法」の選択は指示場面のほうが高い。おそらく、断り場面にお けるあいまいな表現に関しては日本語の典型表現としての知識を持っていれば明示化が行え るが、指示場面においては仕事の経験に基づいた推測をして明示化する必要があるため、明 示化をしにくいということが理由であろう。
指示場面では「解説的な方法」、例えば「彼は前あなたにお願いしたことを忘れないように 注意している」という訳文を提示したものは 33.03%も占めており、「明示化」と数字的に大きな 差が見られなかった。日系企業において、部署ごとに通訳者が配置される場合なら、通訳者 は部署全体の仕事内容・進行中のプロジェクトや日本人上司(発言者)がそれまで出した指 示に詳しい可能性が考えられ、「それ」を指定するという「明示化」を行うことが可能になる。し かし、通訳者が判断できない場合にしてもあいまいのままにせず、聞き手が分かるような解説 したり、さらに発言者に確認したりするといったより深い介入行為を取る傾向が見られた。
断り場面での明示化は、指示場面より高いパーセンテージを示した。通訳者がその場で速 やかに発言の真意を理解し、省略された部分を明白に通訳するという選択肢である。つまり、
原発話の効力を目標言語で再現し、発話行為の遂行を成功させようとする。
この二つの場面の結果を通じて、通訳者は、指示場面では、仕事を効率的に進めることを 図り、また断り場面では誤解を無くすことを狙い、行動している傾向が分かった。インタビュー 調査の協力者はあいまい表現の通訳事例に関して言及しなかった。
4.2.2.2 暴言・コンフリクトが起こりうる表現
アンケート調査の結果、二つの場面で似通った傾向が見られた。
注意
(もっと頭を使って仕事をしろ!)
称賛
(中国人にしては、仕事が丁寧だね)
文面通りに 9.17% 5.5%
省略 70.64% 76.15%
解説的な方法 8.26% 15.6%
発話者に確認 11.01% 1.83%
その他 0.92% 0.92%
注意場面を尋ねたところ、メンツに関わる表現の通訳方法について、最も多く選択されたの
は 70.64%の「省略」、つまり表現を和らげて訳すことである。これは通訳者が発言者と聞き手
の人間関係を保つという意識に沿って、衝突を回避しようと行動することを示唆する結果であ る。その次に多いのは「日本人駐在員に確かめる」(11.01%)で、原発話にないことを自ら発言 する行動も見られるが、「文面通りに忠実に訳す」(9.17%)と数値的に大きな差がない。
称賛場面においては誤解・論争を招きやすい皮肉な表現であり、中国人を見下す表現を省 略する方法が76.15%も占めている。また、「文面通りに忠実に訳す」方法は他の3問より比率
125
が半分低いことから、通訳者は日中双方の友好関係を保つために努めているか、または通訳 者自身の中国人としてのアイデンティティに影響を受けたという要因が考えられる。
両場面の調査結果から見ると、全体的には、衝突を回避する傾向が見られる。ただし、通訳 者が意思決定する過程が複雑であることは、インタビュー調査によって明らかになった。
まず、A 氏の事例では非常に慎重な行動が見られる。現在課長であるA氏は、係長時代の ある出来事が強く印象に残っていると話した。それは日本人社長と中国人副社長のもめ事で ある。会議の時に口論となり、A 氏が通訳していたが、「一つの意味を間違えば、ひどい結果 になってしまうかもしれない」という意識を常に持ち、A 氏は注意深く双方の気持ちを確かめな がら行動していた。衝突を止めるべきだという意識を持っていても、実際、様々な要因によって 行えないケースが多いという。ただし、A 氏は現在課長になり、会議の場でもめ事が起きると、
中立を保ちながら場面を上手く収める発言を慎重に挟むという行動を採用するようになったと いう。さらに、何か介入行為を行う場合、「確かめる」ことが必要だとA氏は語りの中で何度も強 調した。「確かめる」ことによって、激怒の状態から落ち着く可能性もあると考えられるからであ る。
A 氏と比べて、B氏には自分の判断に沿った介入行為が多く見られる。そのため、未熟だっ た時に摩擦処理の方法を間違って後悔した経験があるとB氏は語った。失敗した後に何回も 反省して、よりよい処理方法を考えたという。B 氏が最初に出合ったコミュニケーション摩擦場 面は、入社 3 ヶ月後の出来事である。当時はプロジェクトが行き詰っていて、本社から短期派 遣された日本人支援者も中国人従業員も大きなストレスが溜まった状態になり、双方の関係 が悪化していた。その後、些細なことで日中双方が言い争いになり、暴言まで使われたという。
まだ新人だったB氏は「茫然」として、「当時私はどう調整すればいいかも分からないし、どう通 訳すべきかも分からない。私は、支援者に『すみません。すみません。すみません』と、『すみま せん』を三回言った」と原文にない発言をし、さらに中国人担当の不満を引き出してしまい責 められることになったという。現在のB氏は振り返って、当時は「間違っていた」と語り、なぜなら、
「だれかひとりの利益のためではなく、プロジェクトや事業が順調に進められる方向に向かって 努めるべき」だからであり、「言い争いになる前にこの状況を上司に言わなければならないと思 う」と補足した。つまり、通訳者という枠から飛び出し、社員としての方法を提案した。
それ以外の摩擦場面に関して、B 氏は「場面」によって、サプライヤーか客先かという「聞き 手」によって処理の手法が異なると語り、例えば「省略」、「確認」、「調整」といった方略を述べ た。「通訳者には立場がないと言われるけれど、あると思う」と考えており、担当者が他社に対 して「問題を悪化させるかもしれない」ことを言った場合、B 氏は「『全部言っていいですか』と 確認する。もしくは『こういう意味を言いたいですか?私はこう言いましょうか?その方がもっと 受け入れられやすいと思う』」と社員という立場になって提言するという。こういった行為につい て、B氏は通訳者の「潤滑剤」の役割にかかわると語った。
経験年数の長いA氏とB氏と異なり、C氏はまだ自分の判断よりも、周りに言われたように行 動している。コミュニケーション摩擦場面への対応も、周りの目を気にしながら慎重に行ったが、
予想外の結果になったという。C 氏の職場は日中合資会社であり、日本側の出資がより多く、
126
日本人社長1名、日本人副社長1名と中国人副社長1名がいる。摩擦の当事者は日本人の 副社長と中国人の副社長であり、双方がお互いの主張に納得できずに、オフィスのサイドテー ブルで打ち合わせしていた最中に、激しい口論になったという。C氏はその打ち合わせの通訳 者だった。C氏の上司や同僚も近くにいて、会議の場に日本語が分かる中国人担当者も同席 しているという状況である。「彼らが言ったことをそのまま通訳した。[…]唯一修正したところは、
悪口を言う時に、すこし和らげた。日本人の副社長が机を敲いて、中国人の副社長に指をさ しながら、『おまえ』何とかと言った時に、…私は『您12』に通訳した」というのがC氏の対応であ った。
しかしながら、C氏はこういった方法を後悔したという。そして「原発話を変えずに通訳するな ら終始一貫すべきだ」と補足した。その要因として、この事件の後に、C 氏が予測もしなかった 事態が起こったからと考えられる。激しい口論を挟んだ打ち合わせが終わった後、社内に「C さんの通訳が悪かったから言い争いになったんじゃないか」という声があがり、C 氏に批判の矛 先が向けられたのである。C 氏は通訳者のプライドを守るべきだと考え、「何か問題があったら 通訳者のせいにするなんて」と反論をしたという。C 氏はこういったうわさについて、実は「場を 収める」ことにつながったと推測した。なぜなら、社員の前で副社長同士が激しい口論になるこ とは、メンツに関わるからである。ふたりの副社長のメンツをつぶさないように、おそらく社内の だれかが「通訳者のせいにする」と言い始めたのかもしれない。このエピソードは、中国の日系 企業における通訳者の地位を反映する一例になるのではないか。
ほかの 3 名より通訳の経験年数が短い D 氏も様々なコミュニケーション摩擦場面に遭遇し てきた。語りから、D 氏は強弱関係によって訳し方を判断している行動が見られた。D 氏がか つて勤めていた B 社は、業界でかなり実力のある会社であり、それに対して、現在勤めている X 社は中国進出歴が浅く、業界ではやや力が弱い。よって、代理店との関係も変わってくる。
例えば、「足し算もできないの」という同じ発言にしても、B社にいる時は迫る口調で通訳してい たが、現在 X 社の社員としては「ここ間違っていませんか」と和らげて通訳するという。「大局を 考えないと」とD氏は強調した。
4.2.2.3 分かりにくい発話
インタビュー調査において、A 氏と B 氏は原発話が分かりにくい場面の通訳経験も語ってく れた。原発話が分かりにくいと、会話が円滑に進められず、仕事の効率が悪くなるため、通訳 者は原発話を編集して通訳するという。ただし、A氏とB氏とはやり方が異なる。A氏は「こうい う状況なら私は『先ほど色々おっしゃいましたが、こういう意味でしょうか』と説明して確認する」
と、一貫して慎重な行動が見られる。一方、B 氏は会議の場合と日常業務の場合で対応が変 わるという。「日常業務の通訳ならそうしなくてもいい。[…]なぜなら、どういう担当者なのかを、
上司に知ってもらう必要があると思う。[…]上司は担当者が物事をこのように処理すると分かる と、何か指導や指示をするかもしれない。真実を反映しなければならない」と語った。
127 5. 考察
以上のアンケート及びインタビューの結果について、本章にて、Chesterman(1997)の理論枠 組みを用いて、コミュニケーション摩擦場面に注目し、中国の日系企業における通訳者の規 範意識を考察する。
まず、1 種目のあいまい表現においては、指示場面では何よりも効率が重視され、効率的に 行動を促す表現が好ましく、また、断る時は自分の意見をはっきりと示して誤解を無くすことが 必要であるが、原発話のあいまい表現ではこういった機能を果たすことができない。したがって、
指示場面では仕事を効率的に進めること、断り場面では誤解を無くすことに努め、効率よく、
誤解なくコミュニケーションができるような行動を取る傾向から、「コミュニケーション規範」が見 られる。同時に、ST と TT の言語表現上の文化差異を埋めて適切な言語上の関係性を維持 している点で、「関係規範」に基づいているとも言えるであろう。こうしたことから、受容者側を重 視した意識が読み取れる。
そして、2 種目の暴言・コンフリクトが起こりうる発言に関しては、アンケート調査に協力してく れた通訳者は摩擦を避けてなめらかなコミュニケーションを狙う傾向があることが確認できた。
また、軽蔑表現の省略から、目標言語の受容者を重視する意識を汲み取ることができる。なお、
インタビューについて、4 名の通訳者は一見異なる行動スタイルを取ってはいるが、共通する 点がないわけではない。A氏の行動はかなり慎重であり、介入を行う前に発言者に確かめてい る。B 氏は「物事」、「プロジェクト」がうまくいく方向、「問題を解決する方向」を何度も強調して、
さらに目的に沿って行動を変える姿勢が見られる。経歴がまだ浅い C氏は周りに言われること に大きな影響を受け、荒い言葉遣いの発言を 1 ヶ所だけ「美化」したが、ほぼ文面通りに訳出 する傾向である。D 氏は代理店と自社との強弱関係を見ながら、発言を調整したりしなかった りしている。一言でいえば、摩擦・コンフリクト場面において、4 名の通訳者ともに大局や人間 関係を重視して責任を持って介入する行動を取るという可能性が示された。それぞれ介入す る程度は異なるが、状況に応じてコミュニケーションの最適化に努める姿が見られる。また、受 容者側を重視した考え方もインタビューの語りから読み取ることができ、アンケートと一致した 結果となった。こうした行動から、チェスタマンが述べる「コミュニケーション規範」が優位に働く ことが推察できる。摩擦を回避する意識について、平塚(2015)は「消極的な姿勢」であると述 べているが、本研究では、通訳者のみならずひとりの社員として摩擦・コンフリクトを回避する 行為を積極的な営みにつながると捉えることとしたい。前章で述べたように、本研究の対象で ある通訳者は正社員という長期雇用の形で勤務しているため、通訳者、そしてひとりの社員と いう二重のアイデンティティを持っているが故に、社員間の友好関係を保つことを常に意識し ているのではないかと考える。
また、A 氏とB氏は、コミュニケーション摩擦場面において、介入する前に通訳行為の参加 者に確かめるという点では共通しており、さらに、B氏とD氏は自分の雇われる側を意識しなが ら行動することから、チェスタマンが言う「責任規範」、つまり通訳行為の参加者に対する「忠誠
(loyalty)」の規範が浮かび上がる。しかし、インタビューの協力者は少数のため、規範レベル とまでは言えないが、中国の日系企業における通訳者の行動に、「責任規範」が影響を与え
128 ている可能性が示唆された。
3 種目の分かりにくい発話も、分かりやすく訳出する行動は、同様にコミュニケーション規範 が示唆された。また、「真実を反映しなければならない」という B 氏の語りには、関係規範が示 唆されるものの、特定のシチュエーションにおける個人の選択なので、規範よりは、社員として の主体性で説明したい。
こうして、中国の日系企業に勤務する通訳者には、チェスタマンが提起した三種の「職業規 範」がコミュニケーション摩擦場面においてともに作用するが、その内、「コミュニケーション規 範」が強く働き、また「責任規範」による影響も示唆された。一方で、言語間の関係を重視する
「関係規範」のほうは、相対的に弱くなると言えるであろう。換言すれば、通訳者は「コミュニケ ーション規範」と「責任規範」に優先権を与えたことが示された。コミュニケーション規範に関し ては先行研究(瀧本 2006; 平塚 2015)にも同じような結果が見られるが、本研究はアンケー ト調査によって、量的に裏付けることができたと言えよう。コミュニケーション摩擦場面において は、テクストより、通訳行為の参加者間の関係といったコンテクストが通訳者の訳出行為に与 える影響が顕著である。また、日本語から中国語に通訳する場面においては、中国人側つま り受容者側を重視した一種の規範を反映していると考えられる。期待規範に関して、インタビ ューの調査結果によって、調査に協力してくれた通訳者は自分が属する職場では「言語を転 換する機械」としての行動が求められていることを意識しているが、コミュニケーション摩擦場面 においては、それを越える行動をしたため、期待規範から逸れる可能性が示唆される。ただし、
通訳者が認識する期待規範は受容者側が実際に期待しているものと一致しているか否かは 確認する必要がある。
なお、チェスタマンの概念モデル以外に、インタビューの結果から、企業間および企業内の 強弱関係といった権力と通訳者の行動との間に何らかの関係があるとの示唆が得られた。A 氏は常にトップクラス間の通訳をしていて氷の上を歩くような緊張感をもった場面に臨むことが 多かったが、課長になった後にやや大胆に介入するようになっていた。D氏は勤め先と他社間 の強弱関係によって介入の度合いをコントロールする事例を語ってくれた。また、B 氏が常に 自分の判断によって介入行為を行える理由は、B 氏の実力が職場で認められ、職場で「強い 立場」にいることがひとつの要因となっている可能性があるのではないか。一方、C 氏は激しい コンフリクト場 面 においても原 発 話 を編 集 することに怯 えることも、新 米 翻 訳 者 として比 較 的
「弱い立場」にいることと関係があるではないかと考える。言い換えれば、通訳者の介入行為 は、企業における強弱関係に影響されている可能性が示された。しかし、こういった企業間の 力関係・企業内のポジションによる権力関係・強弱関係の影響については、「翻訳規範」という 概念では説明しがたいのではないだろうか。
6. おわりに
上記の考察によって、中国の日系企業における通訳者の規範意識に関して、チェスタマン の理論的枠組みからみれば、通訳者は各自が従属する企業における「期待規範」を意識しな がら、コミュニケーション摩擦場面においては、その場にいる通訳行為の参加者、及び勤め先
129
(雇われる側)に「忠誠」を果たす「責任規範」を持ち、「コミュニケーション規範」が優位に働い た規範意識が示唆された。「関係規範」に関しては、あいまい表現を用いたコミュニケーション 場面では見られたが、それ以外の 2 つのコミュニケーション摩擦場面においては「関係規範」
の作用が弱い結果が示された。本稿では通訳の受容側に調査を行っておらず、受容者によ って構築される「期待規範」が確認できないが、通訳者の語りから「期待規範」は企業によって 変化し、その場の通訳行為の参加者によっても変化すると推察できるため、通訳者は常に状 況 に 基 づ い て 判 断 を し な が ら 対 応 を し て い る と 言 え よ う 。 こ の 点 に 関 し て 、 平 塚(2015:
147-148)は通訳者が「通訳翻訳の社会的目的を果たすため」、毎回異なるコミュニケーション の場および参加者に対して、その都度「目標言語と起点言語の言語的文化的な差異を関係 規範に基づき処理すると同時に、その場のコミュニケーションの最大効率を図ろうとの意識が 働く」と述べた。この結果は、先行研究(平塚 2015)の裏付けになると同時に、ビジネス分野に フォーカスした本稿では、中国の日系企業で社員として勤務していて、二重のアイデンティテ ィを持つ通訳者を対象にしたものであるため、規範意識と主体性の関係が先行研究とは異な る形式で現れたものである。規範と主体性の関係について、孫(2003: 8)が述べるように、規範 と主体性は「密接な相互関係であり、翻訳者は主体意識を通して、一定の言語的・社会的・イ デオロギー的な規範に準じて、意味を ST から TT に『到達』するようにしている」。規範に沿っ て通訳者が行動すると同時に、通訳者としての主体性、及び社員としての主体性によって行 動し、成功や失敗の経験によって通訳者自身の規範意識も少しずつ変わっていく過程の中 にいる。鳥飼(2007: 374)は通訳者の規範意識が「社会化の一環として周囲の影響を受けなが ら内在化されていくもの」と論じたが、本研究の対象である通訳者はおそらくまだ規範意識を 形成しているところである。中国の日系企業に勤務する通訳者は規範が規制するのみならず、
通訳者としての主体性及び社員としての主体性にも影響を受けていて、また、どちらかというと、
社員としての主体性のほうがより強く影響を与えているのではないかと考えられる。
しかしながら、注意すべき点として、本研究の調査協力者は、平均年齢は 28.6 才で、平均 通訳年数も4.1年しかなく、経歴がまだそれほど長くない。そうすると、日本文化に対する理解、
さらに中国の文化に対する理解についても自己のステレオタイプに陥る可能性が考えられる。
そうであるなら、異文化理解を促進できず、逆に誤解を招くリスクも存在するため、文化の媒介 者という通訳者の役割を果たせるか否かは言えない。平塚(2012: 75)の調査にも、企業内(イ ンハウス)の通訳者の「非中立」に対するリスクの言及があり、鳥飼(2007: 347)は、ビジネス通 訳者は「コンサルタント的な役割を兼ねるものがあるから、文化に深入りしすぎると落とし穴に はまる」危険性があると述べた。つまり、通訳者は介入行為を行う場合、自分の知識に対する 把握が必要であり、また介入する度合いという「ミクロな倫理的事項」(Chesterman 1997: 170)
に関わることも検討する必要があると考えられる。
なお、今回半構造化インタビューに協力してくれた通訳者から、原文を変えて通訳すること は本当によいのかについて常に悩んでいたり、暴言などどうしても通訳したくない発言が出る 時にどう対応すればいいのかが分からなくて困っているという語りがあった。したがって、専業 のプロ通訳者育成のみならず、本研究の対象である企業内の通訳者に対する教育も研究の
130 視野に入れることが必要であろう。
本論は記述的な研究に位置付けたものであり、こういった介入行為に対して倫理的にいい か悪いかについて論じることを留保し、実際の状況を記述することを目的とした。倫理的な評 価、または研究結果に基づいた教育への応用については今後の課題としたい。
...
【謝辞】
本稿を執筆するに当たり、ご指導をいただいた神戸大学大学院国際文化学研究科の 藤濤文子教授、並びにアンケート調査、インタビュー調査に応じてくださった通訳 者の方々に感謝申し上げます。
【著者紹介】
朱 藹琳(シュアイリン/ZHU Ailin) 神戸大学大学院国際文化学研究科博士後期課程在籍 研究分野はビジネスの通訳・翻訳行為 フリーランス通訳者・翻訳者
連絡先:[email protected] ...
【註】
1.中国日本商会『中国経済と日本企業2016年白書 エグゼクティブサマリー』による。
http://www.cjcci.biz/public_html/whitepaper/white_paper_2016.html 最終閲覧:2017年8月4日
2.ここで「翻訳」は「通訳」も含まれる使い方である。後述の許(2002)も同様。
3.韓(2004)における「規範」は、記述的翻訳研究の意味と、「規則」としての「規範」の意味、両方 が含まれる。
4.「中国人民共和国全国人民代表大会」及び「中国人民政治協商会議」の略称。
5.王(2013)の研究における「規定性規範」は中国及び海外の翻訳・通訳組織における倫理規定
をまとめたものの総称である。
6.AUSITは、「Australian Institute of Interpreters and Translators」の略称であり、オーストラリアに おける翻訳者・通訳の職能団体である。AUSITの倫理規定では、「Professional Conduct,
Confidentiality, Competence, Impartiality, Accuracy, Employment, Professional Development, Professional Solidarity」の8項目からなる。
7.中国で最もユーザーが多いSNSアプリ。
8.実際には設問項目を27問設けたが、本稿では紙面の関係で一部のみを概略的に述べる。詳 しくは添付資料参照。
9.Fast Moving Consumer Goodsの略で飲料、食品、化粧品などの比較的短期間で消費される製 品(日用消費財)のことを指します。
10.本稿に示すパーセンテージの数値は、小数点以下第3位を四捨五入するものである。
11.添付資料の質問紙の第16問参照。
131 12.中国語における第二人称「你」の敬称。
【参考文献】
日本語
平塚ゆかり(2012)「オーラルヒストリー・インタビューから見る日中通訳者の規範形成」『通訳翻訳 研究』 12. pp. 69-82.
平塚ゆかり(2015)「日中通訳者の通訳規範意識とその形成要因」立教大学大学院異文化コミュ ニケーション研究科博士論文 [Online]
https://rikkyo.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=11347&file_id=20&file_no=2 河原清志(2015)「翻訳規範と記述的翻訳研究の批判的検討」 『翻訳研究への招待』 13.
pp.1-28.
マンデイ, J.鳥飼玖美子(監訳)(2012)『翻訳学入門』みすず書房[原著:Munday, J. (2008).
Introducing Translation Studies. Theories and Applications, 2nd ed. Taylor & Francis Group, LLC, New York.]
西田ひろ子(2007)『米国人・中国人が日本人に対して感じていた異文化間コミュニケーション 摩擦 米国、中国進出日系企業における異文化間コミュニケーション摩擦』風間書房 ピム, A. 武田珂代子(訳)(2010)『翻訳理論の探求』みすず書房 [原著:Pym, A. (2010).
Exploring Translation Theories. London/New York: Routledge.]
瀧本真人(2006)「AUSIT 倫理規定と通訳者の行動-ビジネス分野におけるダイアログ通訳の 場合-」 『通訳研究』 6. pp.143-154.
鳥飼玖美子(2007)『通訳者と戦後日米外交』 みすず書房
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尹 永順(2009)「『春琴抄』の二つの中国語訳に見られる翻訳方略と規範について-記述的翻 訳研究のケース・スタディーとして」 『通訳翻訳研究』 9. pp.195-209.
英語
Baker, M. (2009). Norms. In Baker, M. & Saldanha, G. (Eds.) Routledge Encyclopedia of Translation Studies. 2nd ed. (《翻译研究百科全书》). Shanghai: Shanghai Foreign Language Education Press.
Chesterman, A. (1997). Memes of Translation: The Spread of Ideas in Translation. (《翻译模因 论:翻译理论中的思想传播》). Shanghai: Shanghai Foreign Language Education Press.
Toury, G. (1995). Descriptive translation studies and beyond. Amsterdam/ Philadelphia:
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中国語
陳 莉莉(2008)「浅析日語現場口訳的特点及其対翻訳的要求」 『語言・翻訳・翻訳教学』 南
132 方出版社.pp.1-6.
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劉 先剛(1992)「中国呼喚企業翻訳学」 『石油大学学報』 2. pp.87-90.
孫 芸風(2003)「翻訳規範与主体意識」『中国翻訳』24. pp.3-9.
王 斌華(2013)『口訳規範的描写研究-基於現場口訳較大規模語料的分析』 外語教学与 研究出版社
王 少娣(2011)『跨文化視覚的林語堂翻訳研究』 上海外語教育出版社
文 軍・唐 欣玉(2002).「企業翻訳及企業文化:従調査看問題」 『上海翻訳』 1. pp.3-5.
許 建忠(2002)『工商企業翻訳実務』 中国対外翻訳出版社 ...
添付資料-アンケート調査の質問紙および結果
参考資料として、アンケート調査の質問紙および結果をすべて添付する。
一、教育経歴・職業経歴
1.あなたは日本語をどこで学びましたか。(多数の機関で勉強している場合は複数選択可)n=109
選択肢 計 比率
A. 高等教育機関(大学、大専) 100 91.74%
B. 中等教育機関(高校、中専) 1 0.92%
C. 民営教育機関 9 8.26%
D. その他 2 1.83%
その他:独学(n=1)、企業で(n=1) 複数選択:AC(n=2)、CD(n=1)
2.どのような形式で勉強しましたか。(1問目A/Bのみ、n=101)
選択肢 計 比率
A.日本語専攻 97 96.04%
B.第二外国語 4 3.96%
3.教育機関で翻訳・通訳の授業を受けたことがありますか。(n=109)
選択肢 計 比率
A.両方ある 79 72.48%
B.翻訳のみ 15 13.76%
C.通訳のみ 2 1.83%
133
D.両方ない 13 11.93%
4.専門教育機関で翻訳・通訳訓練を受けた経験はありますか。(n=109)
選択肢 計 比率
A.両方ある 17 15.6%
B.翻訳のみ 2 1.83%
C.通訳のみ 1 0.92%
D.両方ない 89 81.65%
5.渡日経験はありますか。(n=109)
選択肢 計 比率
A.ある 74 67.89%
B.ない 35 32.11%
6.渡日の目的は何でしたか(複数選択可)。(第5問Aのみ、n=74)
選択肢 計 比率
A.ビジネス出張 47 63.51%
B.観光 24 32.43%
C.留学 14 18.92%
D.短期研修 19 25.68%
E.その他 0 0%
7.どうして日本語を学び始めましたか(複数選択可)。(n=109)
選択肢 計 比率
A.日本文化(サブカルチャーを含める)に関心を持
っていた 39 35.78%
B.日本語に関心を持っていた 36 33.03%
C.翻訳者・通訳者になりたかった 16 14.68%
D.自分から選んだわけではない 31 21.1%
E.その他 14 23.85%
その他:就職しやすい(n=5)、学びやすそう(n=7)、仕事のニーズ(n=2)
注:「D.自分から選んだわけではない」について、中国における大学入学試験の点数によって入 学できる大学が決められる。学生が各大学の希望専攻シートを記入するが、大学は各科目の成績 に基づいて学生を各専攻に配属する。したがって、日本語専攻を希望していなくても、日本語専 攻に配属されるケースもある。
134 8.あなたの翻訳・通訳歴は何年ですか。(n=109)
平均:4.1年 最小:0.25年 最大:13年 最頻値:1年
9.現在の仕事は、どの分野の翻訳・通訳ですか(複数選択可)。(n=109)
選択肢 計 比率
A.経理関係 13 11.93%
B.営業/調達関係 34 31.19%
C.技術関係 37 33.94%
D.総務関係 27 24.77%
E.その他 29 26.61%
その他:全般(n=2)、工場管理関連(n=14)、人事(n=3)、貿易・物流(n=6)、医療(n=1)、システム
(n=1)、設計(n=1)、PR(n=1)
10.現在の就職先はどんな企業ですか(n=109)。
選択肢 計 比率
A.中日合資企業 44 40.37%
B.中日合作企業 0 0%
C.日本独資企業 52 47.71%
D.分からない 3 2.75%
その他 10 9.17%
その他:民営(n=7)、欧米系(n=3)
注:中日合資企業と中日合作企業の違いは質問紙に記載あり。
11.出資比率について教えてください。(第10問Aのみ、n=44)
選択肢 計 比率
A.日本側が50%より多い 27 61.36%
B.中国側が50%より多い 4 9.09%
C.各50% 12 27.27%
D.分からない 1 2.27%
12.現在の雇用形態は何ですか。(n=109)
135
選択肢 計 比率
A.正規社員 104 95.41%
B.契約社員 3 2.75%
C.派遣社員 2 1.83%
13. 現 在 の 会 社 で 、 翻 訳 ・ 通 訳 以 外 に 、 ど の よ う な 仕 事 を な さ っ て い ま す か ( 複 数 選 択 可 ) 。
(n=109)
選択肢 計 比率
A.管理職(部長、課長、係長など) 17 15.6%
B.実務の担当者 52 47.71%
C.秘書業務 29 26.61%
D.庶務関連 55 50.46%
E.その他 0 0%
二、仕事に対する満足度について
14.あなたの職場では、「翻訳者手当」のような、待遇的に翻訳者にとって有利なものがありますか。
(n=109)
選択肢 計 比率
A.翻訳者手当がある。 49 44.95%
B.翻訳者手当がない。 50 45.87%
C.手 当はないが、その他 に、待 遇 的に翻 訳 者にと
って有利なことがある。 10 9.17%
15.それは、どんなものですか。(第14問Cのみ、n=10)
・基本給が他の社員より高い(n=2)
・翻訳者のみならず、日本語が分かる社員は手当がもらえる(n=7)
・海外研修の機会がある(n=1)
16.あなたは現在の仕事・待遇について満足していますか。(n=109)
選択肢 計 比率
A.満足 8 7.34%
B.やや満足 42 38.53%
C.どちらとも言えない 28 25.69%
D.やや不満 18 16.51%
136
E.不満 13 11.93%
*満足(5点)~不満(1点)で計算:平均3.1点
17.(16‐A 以外を回答した方へ)「満足」を選ばない理由は何ですか(複数選択可)。
(n=101)
選択肢 計 比率
A.残業時間が多い 20 18.35%
B.給料が少ない 51 46.79%
C.昇進がない 48 44.04%
D.価値がないと感じる 29 26.61%
E.その他 9 8.26%
その他:「環境が悪い」、「ストレスが大きい」、「一言で言えない」、「個人が好きではない」 など
18.転職を考えていますか。(n=109)
選択肢 計 比率
A.考えていて、転職活動をしている 9 8.26%
B.考えていて、これから転職活動をするつもり 15 13.76%
C.考えたことがあるが、とりあえず現状維持 66 60.55%
D.考えたことがない 11 10.09%
E.答えたくない 8 7.34%
三、翻訳・通訳活動について
次の19から22は、中国進出日系企業におけるコミュニケーション・ギャップが生じやすい場面を述 べたものです。あなたは、4つの場面について、以下の4つの表現をそれぞれどう翻訳しますか。あ なたの行動に最も一致するものを選択してください。
19.日本人上司が中国人部下の行動について、注意する場面 表現:「もっと頭を使って仕事をしろ!」
(n=109)
選択肢 計 比率
A.文面通りに忠実に訳す(例:带脑子工作!) 10 9.17%
B.表現を和らげて訳す(例:还是多想想吧
日本語:もっと考えてね) 77 70.64%
C.解説的な方法を使う(例:他生气了,在骂你呢 9 8.26%
137
日本語:彼は怒ってあなたを叱っている)
D.日本人駐在員に「これを訳していいですか」と確認する 12 11.01%
E.その他 1 0.92%
その他:
「自分の上司に、はっきりと怒りを表してほしいと言われたことがあるから、Aですが、ほかの人であ れば、Bを選びます」(n=1)
20.日本人上司が中国人部下に指示を出す場面 表現:「それ、忘れないようにね。」
(n=109)
選択肢 計 比率
A.文面通りに忠実に訳す(例:不要忘了那个东西) 11 10.09%
B.「それ」の内容を自分の経験に基づいて考え、明示して説明する (例:不要忘记做报告。
日本語:レポートを忘れないようにね。)
44 40.37%
C. 解説的な方法を使う
(例:他提醒你不要忘了之前让你做的事
日本語:彼は前あなたにお願いしたことを忘れないようにと注意し ている)
36 33.03%
D.「「それ」とは何でしょうか」と日本人上司に確認する 17 15.6%
E.その他 1 0.92%
その他:B または D、決めにくい。
21.中国人従業員の要望に対して、日本人従業員が断る場面 表現:「気持ちは分かるんだが…」
(n=109)
選択肢 計 比率
A.文面通りに忠実に訳すだけで済ませる
(例:你的心情我理解了。) 12 11.01%
B.断りの意味を明示する
(例:虽然理解你的心情,但还是不行。
日本語:気持ちは分かるんだが、だめです。)
83 76.15%
C.文面通りに訳した後、中国人従業員に「断られたかもしれない」と説明
する 9 8.26%
D.「断るということですか」と日本人従業員に尋ねる 4 3.67%
E.その他 1 0.92%
その他:「我能理解,但是…(日本語:分かります。しかし…)」