第 2 章
特別な教育的支援を必要とする児童生徒とは
学習障害(LD ,注意欠陥/多動性障害(ADHD ,高機能自閉症等,通常の) ) 学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に対する指導の充実の必要性 が 「21世紀の特殊教育の在り方について」の報告の中でも述べられている。,
ここでは,その定義や特徴等について概要を述べる。
1 学習障害(LD)とは
学習障害(LD)とは,基本的には全般的な知的発達に遅れはないが,聞く,話 す,読む,書く,計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著し い困難を示す様々な状態を指すものである。
学習障害は,中枢神経系の機能障害のために認知(情報処理)過程の機能不全が 引き起こされ,学習上の困難を示すことが多いとされている。
2 注意欠陥/多動性障害(ADHD)とは
注意欠陥/多動性障害(ADHD)とは,年齢あるいは発達に不釣り合いな注意 力,衝動性,多動性を特徴とする行動の障害で,社会的な活動や学業の機能に支障 をきたすものである。
その直接的な原因は不明であるが,何らかの中枢神経(脳)系の機能障害が背景 にあると推定されており 「不注意, 」,「多動性」,「衝動性」という三つを特徴とす る症候群である。
3 高機能自閉症とは
高機能自閉症とは,3歳位までに現れ,①他人との社会的関係の形成の困難さ,
②言葉の発達の遅れ,③興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする 行動の障害である自閉症のうち,知的発達の遅れを伴わないものをいう。また,中 枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。
, , 。 ,
このように 自閉症のうちで知的 認知的機能の高い群をいう 高機能の基準は 境界線上から平均以上の知的能力のある自閉症の意味で使われている。
第1章で述べたように 「特別な教育的支援を必要とする児童生徒」とは,これまでの障害の, ある児童生徒に加えて 「通常の教育だけではその教育的ニーズが満たせない児童生徒すべて」, をいう。中でも,学習障害(LD)児(以後LD児 ,注意欠陥 多動性障害(ADHD)児(以)
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後ADHD児 ,高機能自閉症児等,通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童) 生徒に対する指導の充実の必要性が 「21世紀の特殊教育の在り方について」の報告の中でも述, べられている。ここでは,LD児,ADHD児,高機能自閉症児の定義や特徴等について,その概要を述べ る。ただ,それぞれの用語及び定義等については,教育的,あるいは医学的な分野で定着して いなかったり,混同して使用されていたりする現状がある。教育定義と医学定義については表 3が参考になるが,私たちなりに対象となる児童生徒のとらえ方を整理しておく必要があると 考え,特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議の「今後の特別支援教育の在り方に ついて(中間まとめ 」も参考にしながらまとめた。)
表3 教育定義と医学定義に見る用語の比較
教 育 定 義 医 学 定 義
文部省(1999) DSM-Ⅳ(1994) ICD-10(1992)
学習障害 学習障害 学力(学習能力)の特異的発達障害
Learning Disabilities Learning Disorders Specific Developmental
( ) ( ) (
Disorders of ScholasticSkills)
読む 読字障害 特異的読字障害
書く 書字表出障害 特異的綴字(書字)障害
算数 算数障害 特異的算数障害(算数能力の
(計算・推論) 特異的障害)
コミュニケーション障害 会話および言語の特異的発達障害 Communication Disorders Specific Developmental Disorders
( ) (
of Speechand Language)
聞く 受容−表出性言語障害 受容性言語障害
話す 表出性言語障害 表出性言語障害
行動の自己調整の困難 注意欠陥 多動性障害/ 多動性障害
(Attention-Deficit/ (Hyperkinetic Disorders) Hyperactivity Disorder)
混合型 活動性および注意の障害
不注意優勢型
多動性−衝動性優勢型 多動性行為障害
自 閉 症 広汎性発達障害 広汎性発達障害
Pervasive Developmental Pervasive Developmental
( (
) )
Disorders Disorders
自閉性障害 小児自閉症[自閉症]
アスペルガー障害他 アスペルガー障害他
(上野一彦ほか編著 「LDの教育」から引用)
1 学習障害(LD)とは
(1) 定義等我が国では 「学習障害及びこれに類似する学習上の困難を有する児童生徒の指導方法に, 関する調査研究協力者会議」において以下のような定義がなされている。
学習障害(LD)とは,基本的には全般的な知的発達に遅れはないが,聞く,話す,
読む,書く,計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を 示す様々な状態を指すものである。
学習障害は,その原因として,中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが 視覚障害,聴覚障害,知的障害,情緒障害などの障害や,環境的な要因が直接の原因と なるものではない。
この定義の解釈では,①知能検査の結果から,基本的には知的障害のような全般的な知 的発達の遅れはみられないこと。②学業成績,行動観察,詳細な心理検査等により,学習 上の基礎的能力である,聞く,話す,読む,書く,計算する又は推論する能力を習得し,
, 。
使用することについて 一つないし複数の著しい困難があるとみられることが要件になる
「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態 なお,
」 ,「 」「 」「 」「 」「 」「 」 調査 (文部科学省 2002)によれば 聞く 話す 読む 書く 計算する 推論する に著しい困難を示す児童生徒の割合は4.5%となっている。
(2) 特徴
学習障害には全般的な知的発達の遅れはないが,中枢神経系の機能障害のために認知 情( 報処理)過程の機能不全が引き起こされ,以下のような学習上の困難を示すことが多い。
○ 言語能力の困難(聞こえていても,言葉の意味を理解することが困難,自分の言いた いことを表現することが困難等)
○ 読字・書字の困難(鏡文字になる,形の整った文字を書くことが苦手,単語は正しく 書けるが,文章の表記では混乱等)
○ 算数・計算の困難(繰り上がりや繰り下がりの計算でのつまずき等)
○ 推論の困難(計算はできるが,図形や文章題での混乱等)
( , )
○ 社会性の困難 他人とのかかわりの中で ソーシャルスキルを身に付けることが困難
( , )
○ 運動能力の困難 身体知覚の困難から 体全体の動きや指を使った細かい動きが苦手
( , )
○ 注意集中困難・多動性 周囲の刺激に反応しやすく 一つのことに集中するのが困難 また,このような学習上の困難,つまずきと併せて,以下のような情緒・行動の不適応 がみられる場合がある。
○ 行動面での自己コントロールの弱さ,対人・社会的認知能力の発達の遅れや偏りから 生じる不適応(校外学習等みんなと一緒に移動したり見学したりするとき集団から離れ てしまう,話合いで自分の考えが通らないと感情的になり大声で話す等)
○ 特異な学習困難から自信や意欲をなくしたり,自己評価が低くなったりして生じる二 次的な障害(発表のときに自信なさそうに口ごもり声が聞き取りにくい,友達の遊びに 参加したそうだが,距離をおいて見ているだけである等)
2 注意欠陥/多動性障害(ADHD)とは
(1) 定義等特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議は「今後の特別支援教育の在り方につ いて(中間まとめ 」で,ADHDを次のように定義(試案)している。)
注意欠陥/多動性障害(ADHD)とは,年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力,衝 動性,多動性を特徴とする行動の障害で,社会的な活動や学業の機能に支障をきたすもの である。
また,7歳以前に現れ,その状態が継続し,中枢神経系に何らかの要因による機能不全 があると推定される。
注意欠陥/多動性障害の出現率は,DSM−Ⅳ〔1994年(平成6年)〕によると3〜5%
と言われている。また 「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に,
」 ,「 」 「 」
関する全国実態調査 (文部科学省 平成14年)によれば 不注意 又は 多動性・衝動性 の問題を著しく示す児童生徒の割合は,2.5%という結果が出ている。
ADHDは,何らかの中枢神経(脳)の機能障害が背景にあると推定されており 「不注, 意」,「多動性」,「衝動性」の三つを特徴とする症候群である。
知的能力に関しては境界線(IQ70)以上の知能指数を示すことが多いが,認知能力の アンバランスを認めるものが多い。また,二次障害として発達の面の問題や行動・精神面 の問題を合併するものも少なくない。
ADHDの,DSM−Ⅳにおける診断基準の概要は以下のとおりである。
① 「不注意」,「多動性」,「衝動性」の三つが基本的な特徴である。
② 7歳以前に「不注意」,「多動性」,「衝動性」の状態があった。
③ 場所の異なる2か所以上で「不注意」,「多動性 「衝動性」がある。」,
④ 年齢や発達段階からみて,明らかに不適応行動がある。
(2) 特徴
○ 不注意−注意の集中時間が短いことや注意の方向がすぐに変わることから,学業など注 意の集中が必要なときに集中できない。
・ 計画したことを最後まで進めることができない。 ・不注意による過ちが多い。
・ 宿題をやらない,というよりは宿題の存在を忘れてしまう。 など
○ 多動性−落ち着きがなく,状況的にも不適切に動き回ったり,座っていてもじっとして いられなかったりする。
・ 落ち着きがなく,すぐに席を離れてしまう。
・ 手足をそわそわ動かしたり,いすの上でもじもじしたりする。
・ おしゃべりを我慢できず,絶え間なく大声で早口で話す。 など
○ 衝動性−外部からの刺激や思い付いたことに対して抑制がきかないために,即座に衝動 的に反応してしまう。
・ 結果を考えずに行動してしまう。 ・ 順番を待つことができない。
・ 質問が終わる前に出し抜けに答えてしまう。 など
3 高機能自閉症とは
(1) 定義等特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議は「今後の特別支援教育の在り方につ いて(中間まとめ 」で,高機能自閉症を次のように定義(試案)している。)
高機能自閉症とは,3歳位までに現れ,①他人との社会的関係の形成の困難さ,②言 葉の遅れ,③興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害であ る自閉症のうち,知的発達の遅れを伴わないものをいう。
また,中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。
, 。
高機能の基準は 境界線上から平均以上の知的能力のある自閉症の意味で使われている なお 「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調, 査」(文部科学省 2002)によれば 「対人関係やこだわり等」の問題を著しく示す児童生徒, の割合は,0.8%となっている。
高機能自閉症と近接した障害に,言語性知能の高いアスペルガー症候群があるが,これ を高機能自閉症の一群とみなす考え方から,あくまで一つの人格障害とみなす考え方まで あって,いまだ意見の一致をみていない。
(2) 特徴
○ 社会性
・ 自分の空間(パーソナルスペース)を守り,急に近づかれるとびっくりする。
・ 人に近づくときに相手を見なかったり,不適切な合図を送ったりする。
・ 形式ばり大人っぽく振る舞い,相手によって振る舞いを変えない。
○ コミュニケーション
・ 基本的な語彙や文法は習得しているが,形式ばった話し方になりやすい。い
・ 単調な会話の仕方で,声の大きさやイントネーションの調節が苦手である。
・ 話をしていると自分の好きな話題に戻り,冗談,比喩,皮肉などで混乱する。ゆ
・ 表情や身振りが乏しい。また,相手の表情や身振りの理解も困難である。
○ 認知・思考
。 。
・ 想像的な遊びが限られている ごっこ遊びの発達が遅れがちで反復的になりやすい
・ コレクション(物集め ,分解・組立てなどを好む。)
・ 同じ状態を好み,変化を嫌う。 ・ 具体的で予測可能なことを好む。
○ その他の問題
・ 感覚過敏であることが多い。 ・ 体全体の動き・指先の動きが不器用である。
○ 長所
・ 長期記憶力が優れている。 ・ 狭い範囲での優れた知識をもっている。
・ 数学や科学に強いことが多い。 ・ 合理的な思考をする。