日本小児循環器学会雑誌 9巻6号 841〜842頁(1994年)
第16回群馬小児循環器研究会
時 所 長
日場会
平成5年12月3日前橋マーキュリーホテル 石原 茂樹
1.当院開院以来11年間における先天性心疾患の剖 検例について
群馬県立小児医療センター循環器科 山田 思郎,曽根 克彦,田端 裕之 小須田貴史,篠原 真
同 病理科 平戸 純子 群馬大学医学部小児科
小林 敏宏,小林 富男 群馬県立小児医療センター開設以来11年間の剖検例 について,心奇形を中心に検討した.11年間の当セン ターの全体の総死亡者数は326人,総剖検数は180例(剖 検率55%)であった.1歳以下の剖検例が圧倒的に多 く77%を占めた.剖検例に占める心奇形合併者は75人
(42%)であり,毎年の剖検例の15〜59%を占めた.心 奇形合併例の内,症候群・染色体異常例は35人(46%)
で,主なものは18トリソミー13例,ダウン症7例,無 脾症候群4例,多脾症候群4例,13トリソミー2例そ の他であった.心奇形単発例は40例(54%)で,主な
ものは大動脈縮窄9例,心室中隔欠損6例,左心低形 成症候群4例,大血管転位3例,総肺静脈還流異常3 例,単心室3例,心内膜床欠損症2例であった.単発 例では感染症など心奇形以外の原因による死亡が多
かった.
2.術後遠隔期にみられた高度房室ブロックに対し てペースメーカー治療を行った2症例
群馬県立小児医療センター循環器科 篠原 真,曽根 克彦,田端 裕之 小須田貴史,山田 思郎
群馬大学医学部第2外科
森下 靖雄,高橋 徹,鈴木 政夫 群馬中央病院小児科 田代 雅彦 術後徐脈性不整脈にてペースメーカー植込術を施行
した2例を経験したので報告した.
症例1は4歳の女児.ファロー四徴症の診断で3歳 9ヵ月時に根治手術を施行した,術後13ヵ月にII度房 室ブロックを認め,β刺激剤,利尿剤を開始したが改善
しなかった.その後advanced A−V blockの所見とな
り,His束心電図検査にてH・v blockと診断し, vvI モードペースメーカー植込術を行った.症例2は6歳 の女児で,総肺静脈還流異常症下心臓型の診断にて,
日齢14に根治手術を行い,その約1ヵ月後に肺静脈吻 合部狭窄のため再手術を行った.再手術後よりII度房 室ブロックが出現したがβ刺激剤投与にて経過観察 されていた.6歳時,Adams−Stokes発作をおこした.
III度房室ブロックの所見を呈し,心電図モニターで4
〜 6秒の心停止を数回認めた.His束心電図検査にて His東内ブロックと診断し, VVIモードペースメー カー植込術を施行した.2症例とも経過は良好である.
心臓手術後の房室ブロック症例は遠隔期に房室ブロッ クが進行しペースメーカー治療の適応となる症例があ
り,注意深い経過観察が必要と思われた.
3.当院における小児先天性心疾患184例の外科治 療成績
済生会前橋病院循環器センター外科 杉山 喜崇,石原 茂樹 柏木 潤一,岩田 祐輔 同 小児科 小野 真康,井上 佳也 1988年7月当院循環器セソター開設より1993年10月
までに15歳以下の先天性心疾患患児168例に対しのべ 184回の手術を施行した.疾患内訳としてはASD 38 例,VSD 36(1)例, PDA 20例, TOF 17例, TAPVC ll(3)例, CoA 7(1)例, DORV 7例, IAA 6(3)
例,他26(5)例であった.()内は死亡例で計13(7%)
の手術死亡であった.手術時年齢は99例(54%)が乳 児期の症例で死亡例のうち12例が3ヵ月未満の症例で あった.CoA Complexに対してはsubclavian Flap,
PABを初回手術とする二期的手術を行い,心内膜繊維 弾性症,大動脈狭窄の強い1例を突然死により失った.
IAAに対してもType AにはBlalock−Park, PAB を,Type Bにはグラフトによる再建とPABを初回手 術とする二期的手術を行い,合併奇形の見られた Type Bの2例と術後進行性のアシドーシスの見られ たType Aの1例を失った. TAPVCでは術後の進行 性アシドーシスにより2例を,juxter positionを呈し
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た1例を失った.低体重で術前状態の悪いVSD, ECD の各1例にPABを行い失ったが,これ以外の症例は 根治術を行い死亡例はない.3ヵ月未満の死亡例を少 なくすることが今後の課題と考える.
4.当院におけるBlalock Taussig短絡術症例の検 討
済生会前橋病院小児科
井上 佳也,小野 真康 同 循環器センター外科
石原 茂樹,杉山 喜崇 柏木 潤一,岩田 祐輔 平成元年6月〜平成5年11月に26例,計32回のBT shuntを経験したので報告する.26例の基礎疾患は,
TOF 8イ列, corrected TGA 5例, DORV 4例, SV 4 例,TA 2例, RV hypoplasia 1例, Bilateral ductus
l例,VSD, PA, MAPCA合併例1例であった.手術 目的は動脈管依存性が21例,無酸素発作が3例,
MAPCA依存性が2例であった, BT shuntを施行し た時期は,日齢30〜3歳6ヵ月で平均7ヵ月. modified BT shuntが32回の手術中25回を占め追加手術6例は 全例modified BT shuntであった.術後2〜4週に心 血管造影検査を行った15例のPA indexは,術前207か ら術後291と上昇した.BT shuntを施行した26例の平 均観察期間は1年8ヵ月で,根治手術施行例3例,経 過観察中が20例,死亡例は3例であった.根治手術を 施行した症例は全例TOFで,根治術前のPA index は210,234,218であった.経過観察20例中3例(全例 original BT shunt)でPTAを施行したが2例で無効 であった.有効例はcorrected TGAの1例で,2ヵ月 に施行した1t original BT shuntの肺動脈吻合部狭窄 に対し,4歳10カ、月PTA施行し,吻合部狭窄は2mm から4mmに, Sat.02は75%から80%に上昇した.
5.肺動脈分岐部高度狭窄を伴うチアノーゼ性心疾 患に対し分岐部再建後Rastelli法により根治した2 症例
群馬大学医学部第2外科
鈴木 政夫,石川 進,大滝 章男 坂田 一宏,大谷 嘉巳,川島 修 森下 靖雄
PAを伴う極型TOF及びd・TGAの2例に先に短
絡術を行った後,肺動脈分岐部再建を伴うRastelli法 によって治癒せしめたので報告する.
症例:症例1は5歳男児で,TOF, PA, PDAの診
日小循誌 9(6),1994 断で過去に左Blalock・Taussig(BT)shunt術を受け た.症例2は6歳女児で,d−TGA, PA, PDA, RAA の診断で左右のB−Tshunt術及びcentral shunt術を 受けている.
手術:PDA,左鎖骨下動脈及び左右肺動脈にtaping した後,中等度低体温体外循環を開始した.Blood cardio−plegiaによる心停止下に肺動脈を切開,症例1
では径2mm,症例2では径1mmの大きさの左右肺動
脈間交通孔が見られた.半月状馬心膜で分岐部狭窄を 拡大した後,馬心膜で作成した径20mm弁付き心外導 管を縫着した.次に右室切開で心室中隔欠損をパッチ 閉鎖した.大動脈遮断を解除後,心拍動下に右室切開 部に縫着した人工血管と肺動脈側の心外導管とを端々 吻合した.まとめ:肺動脈分岐部パッチ拡大が狭窄部への心外 導管縫着に有用であった.
6.三心房心の1例(剖検例)
桐生厚生総合病院小児科
藤生 徹,竹内 東光 急激に心不全症状が進行し約1日の経過で死亡した 三心房心の剖検例を経験した,
症例は3ヵ月の男児.生後2ヵ月時に哺乳不良を主 訴に当科を訪れたが心奇型に気づかれていない.現病 歴では,朝から不機嫌・哺乳不良・咳漱を認め,同日 午後にはあえぎ様呼吸・チアノーゼが出現したため入 院となった.著しい代謝性アシドーシス,胸部X・Pに て強い肺うっ血,およびECGにて右心負荷を認め,心 エコーにて三心房心と診断した.気管内挿管し,カテ コラミン・ステPイド・アルカリ製剤等の投与など内 科的治療を行い手術を予定したが,入院から約19時間 後に死亡した.
剖検では真の左房と副室との間に厚さ約3mmの隔
壁とそれを貫く4個の交通孔(φ3mm×1個,φ1
mm×3個)を認めた.剖検所見から,副室一左房間の 交通孔が小さくバブル状を呈しているために,呼吸器 感染症にともなう副室圧上昇によりバブル状の交通孔 の圧排・狭小化が起こり,副室圧のさらなる上昇を招 き,心不全の急激な悪化を来した可能性が示唆された.7.特別講演
『Univentricular Repairの問題点』
東邦大学大森病院胸部心臓血管外科 高梨 吉則
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