技術・家庭科(家庭分野)の主張
著者 堀池 美衣
雑誌名 研究紀要 : 共に創りあげる授業
巻 20
ページ 106‑107
発行年 2020‑03
出版者 静岡大学教育学部附属静岡中学校
URL http://doi.org/10.14945/00027160
静岡大学教育学部附属静岡中学校 研究紀要(第20号)
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技術・家庭科(家庭分野)の主張
堀池美衣
1 教科で育みたい人間像
私たちにとって,食べる,着る,住む,買うなどの行動は習慣であり,これらによって生活が形成され ていると言えます。習慣となっていることに対して,私たちは意識せずに行動することがあります。しか し「もっとこうしたい」「変えることができそうだ」「改善する必要がある」などという思いをもち,昔か ら伝わる生活の知恵を活用したり,世の中にあふれている生活に関する情報を積極的に取り入れたりする 場合もあるでしょう。
私たちは,生活経験や生活の状況,立場が変化すると,それに伴って優先したいもの,生活に対する思 いや課題意識が変わります。生活は常に更新され続けるものであり,よりよい生活を追い求めて実践する ことに終わりはないのです。よりよい生活をめざして,他の誰かの実践を参考にしたり,既存の知識や技 能を生かして新しい方策を考えたりして試行錯誤する過程を繰り返すと,それまで知らなかった価値観に ふれて生活に対する視野を広げたり,異なる方策を知ることで生活の質を高めたりすることができます。
それにより,普段から生活を意識的に見直したり,生活に対する思いや課題意識をもったりする場面が増 え,さらによりよい生活をめざして実践していくようになるでしょう。生活を見直し,試行錯誤すること を繰り返すことで,生活に対する思いや課題意識を自然と抱いて実践するようになり,生涯にわたってよ りよい生活を営むことができるようになると考えます。以上のことから,技術・家庭科(家庭分野)では,
生涯にわたって,自然と様々な視点から現在の生活に目を向け,実践することを繰り返す「よりよい生活 を営む人」を育んでいきたいと考えています。
2 教科ならではの文化
技術・家庭科(家庭分野)で扱う内容は,生活そのものだと言えます。しかし,「生活」と言っても,人 によってその形は様々です。生活の中で優先していることや求めているものはもちろん,生活経験も生活 の状況も異なります。自分にとって当たり前のことが他者にとっても当たり前であるとは限らないため,
自分とは異なる考えや生活の様子,自分が知らなかった価値観や方策を知ったときに,ハッとしたり,詳 しく知りたくなったりするのです。他者の考えや生活の様子を知ることで,新たな価値観にふれたり,新 たな視点で自分の生活を見直したりすることができ,生活に対する思いや課題意識をもつきっかけ,さら には生活を変えてみようと思うきっかけとなり,よりよい生活を求めることにつながっていくと考えます。
そして,健康,快適さ,環境への配慮や心の豊かさなどの視点から,理想と現状の生活を照らし合わせて 実践し,手応えを得たり新たな課題を見つけたりしながら,さらに工夫を加えていくという過程を経て,
それぞれのよりよい生活を実現していくでしょう。よりよい生活を実現することができれば,さらにその 先のよりよい生活を求めるようになると考えます。以上のことから,生活を見直したり,新たな価値観に ふれたりして,よりよい生活を追い求めて実践することの繰り返しを「技術・家庭科(家庭分野)ならで はの文化」と考えました。
3 授業づくりで大切にしていること
子どもたちが「技術・家庭科(家庭分野)ならではの文化」を味わうためには,まず,日常生活の中で 何気なく行っていることや当たり前のように存在しているものに焦点を当てて見直し,気づきや疑問を共 有することが重要であると考えました。普段それほど意識していなかった生活を意識して見直していくと,
子どもたちは様々な気づきや疑問を抱くでしょう。それらを仲間と共有することで,健康面や安全面,人 とのかかわり,社会や未来への影響など様々な視点を得て,改めて自分の生活を見直すことができるよう になります。自分の生活に対して思いや課題意識をもった子どもたちは,生活をよりよくするための方策 を知りたくなったり実践したくなったりして,よりよい生活をめざして追求していくはずです。体験的・
実践的活動に取り組むことで,効果を実感したり,想定していなかった問題点に直面したりします。解決
静岡大学教育学部附属静岡中学校 研究紀要(第20号)
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策を検証する機会であると同時に,「前よりは少しよくなった」「他にも自分ができることはありそうだ」
という思いをもつきっかけにもなるでしょう。そして,さらに生活に対する思いや課題意識をもち,また 新たな課題を解決しようと,上記のような過程を繰り返していくと考えます。
このような過程を子どもたちが経験することができるような題材構想の工夫をして,「技術・家庭科(家 庭分野)ならではの文化」を味わう授業づくりをめざしていきます。