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令和 2 年度の学会賞受賞者について

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Academic year: 2021

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自然災害科学 J. JSNDS 39-4 375 -376(2021)

375

■ 令和 2 年度の学会賞受賞者について

 日本自然災害学会の学会賞として,功績賞,学術賞,学術奨励賞,Hazards2000国際賞が設けら れている。10月 2 日(金)に開かれた総会後,学会賞の授賞式が行われ,古川愛子氏(京都大学)に 学術賞が授与された。

授賞理由

 2016年の熊本地震により被災した通潤橋につい て,橋全体とその基礎地盤部分までをも含んだ精 緻な数値解析モデルを構成し,その被害発生のメ カニズムを解明している。地震記録を継続的に得 ている近傍の観測点と,通潤橋地点での地震の微 動計測により,両者の卓越振動数が大きく異なる ことを見出し,通潤橋地点における地震解析モデ ルを構築した。フーリエスペクトル解析により,

橋のアーチ構造のどの部分において被災するかを 明らかにした。その際,改良型個別要素法による 数値解析を用い,実際に起こった被害メカニズム を明らかにしている。石材間の破壊や滑り,盛土 の亀裂を再現する工夫を取り入れており,新規性・

独創性において優れている。論文自体は,緻密に 構成され,論述が極めて詳細に展開しており,完 成度も高い。また,文化遺産防災という観点から も優れた論文であると言え,学術賞にふさわしい と判断される。なお,研究のアイデア,プログラ ム開発,構成,現地調査・観測等全て第一著者の 古川氏が中心で実施した。

(学会賞審査委員会)

受賞コメント

 令和 2 年度の日本自然災害学会学術賞を受賞す ることができましたこと,大変光栄に存じます。

本論文の査読者の方々,学術賞に推薦して下さっ た先生方,並びに選考して頂いた審査員の方々を はじめ,学会の皆様に心より感謝を申し上げます。

 受賞の対象となりました論文「Investigation of the Tsujun Bridge damage mechanism during the 2016 Kumamoto earthquake」は,2016年熊本地震 により被災した通潤橋の微動計測・数値解析を行 い,被災メカニズムを議論したものであります。

通潤橋は,1854年に架けられた石造アーチ橋で,

橋の上部には 3 本の石管が通っており,水不足に 悩む白糸台地に通水する水路橋として建設されま した。肥後の石工の優れた建造技術を示す歴史的 建造物として,国の重要文化財に指定されていま す。熊本地震では通潤橋をはじめ複数の石橋が被 災しましたが,被災理由や被災メカニズムを解明 し対策に生かすことは,文化財を地震から守るた めに重要であると考えます。

 熊本地震によって,通潤橋には壁石の孕みだし,

盛土の亀裂,通水用石管からの漏水などの被害が 発生しました。その被害発生位置は,アーチ中央 部ではなく,アーチ端部と橋端部の間でした。な ぜその位置に被害が発生したのかに疑問を持ち,

被害発生位置を説明するための一連の研究を行い ました。微動計測により,通潤橋と周辺地盤を含

学術賞

受 賞 者:京都大学 古川 愛子 氏

研究題目:Investigation of the Tsujun Bridge damage mechanism during the 2016 Kumamoto earthquake

掲 載 誌:自然災害科学,Vol.38,特別号,pp.1-23,2019

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んだ数値解析モデルを構築し,地震応答解析を行 いました。数値解析には,学生時代から開発して きた,石材間の滑りや漆喰の破壊など,組積造 の破壊現象を再現することが可能な改良版個別要 素法を用いました。これにより,なぜアーチ中央 部ではなく,アーチ端部と橋端部の間で破壊が生 じたのか,通潤橋の被災メカニズムを解明しまし た。本論文は,共著者の清野先生から貴重なご助 言を頂きながら,好川氏との多くの議論によって 完成したものであり,著者を代表して頂いた賞だ と思っております。共著者の皆様には,改めて感 謝を申し上げます。

 本研究テーマに出会ったきっかけは,立命館大 学の伊津野先生から通潤橋の被害状況を教えて頂 いたことです。現地調査に同行させていただいた り,貴重な資料をご提供くださったり,多くのご 支援を頂きました。熊本県上益城郡山都町役場の

関係の皆様には,現地調査や補修現場の見学等に おいて大変お世話になりました。ここに深く感謝 を申し上げます。

 本研究を通して,歴史的建造物に関する興味が 深まりました。通潤橋の補修工事では,文化財と しての価値を損ねない伝統的な工法が採用されて おり,材料や配合,施工方法に至るまで細かく定 められています。最先端の補強方法に比べると強 度は劣るかもしれませんが,理にかなっている面 もあり,幾度の地震にも耐え現代も残存している ことが証拠ではないかと思います。先人の知恵と 技術力の高さに敬意を表します。

 最後になりましたが,これまで支えてくださっ

た全ての皆様に改めてお礼を申し上げ,ご挨拶と

させていただきます。この受賞を一つの契機とし

て,良い研究ができるように精進して参りたいと

思います。

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