幸風
生慢性疾患 をもつ幼児の集団生活 における支援
一保育園勤務の看護師への質問紙調査 よリー
出野 慶 子 ,大 木 伸 子 ,小 泉 麗 鈴 木 明 由実
〔 論文要旨〕
1曼 性疾患 をもつ幼児の集団生活 における支援 を検討することを目的 として,保 育園に勤務する看護師 42名 を対象に質問紙調査 を行 った。看護師の個別的な対応や配慮は,症 状出現の予防,疾 患 ・症状ヘ の対処,園 児に適 した保育園生活の工夫 ・配慮,保 護者 との情報交換,保 育士 (栄養士)と の情報交換 や知識の共有などであった。 また,看 護師が困難に感 じたことは,保 護者の理解不足や園児への適切な かかわ りがないこと,医 療設備 ・ 体制の問題,他 の園児 との調整 に関す ること,情 報の共有化不足 など であった。慢性疾患 をもつ幼児が集団生活を支障なく送るためには,他 の園児 と同 じような生活ができ るための工夫や配慮,他 の園児 との調整,保 護者 との連携が重要であることが考えられた。
Key words:慢性疾患,幼 児,集 団生活,保 育園,看 護師
I.は じ め に
近年,医 療 の進歩 や社会環境 の変化 に伴 い, 慢性疾患 を もちなが ら家庭 や地域 で生活 してい る子 どもが増加 して きた。一般 の保 育園で も, 慢性疾患 を もつ子 どもが,集 団生活 を送 ってい
る姿が比較的多 くみ られるようになっている1)。
慢性疾患 を もつ子 どもは,療 養行動 を日々の 生活の中に組み入れて実施 してい くことが必要 となる。幼児の場合,自 分 自身で療養行動 を実 施す ることは困難であることが多いので,周 囲 のサポー トが重要 となって くる。 また,疾 患 に 起 因す る身体状態 の変化 な どを,的 確 に訴 える こ とは難 しく,周 囲の者が状態 の観察 を行 った り,状 態変化 に早期 に対処す ることが必要 とな る。
この ような子 どもが保育園で集団生活 を支障
な く送 るため には,保 育 園倶1の疾患 の理解 や, 個別的 な対応 。配慮,ま た,保 護者 との連携が
よ り重要 になって くる と思 われる。
そ こで,保 育園に勤務 している看護 師が,慢 性疾患 を もつ幼児 に対 して どの ような個別的対 応 ・配慮 を行 っているのか,困 難 に感 じている こ とは何 か を明 らか に し,慢 性疾患 を もつ幼児 の集団生活 における支援 を検討す ることを目的 と して研 究 を行 った。
Ⅱ. 研 究 方 法 1 . 対 象
都 内 A 区 の公立保育園で勤務す る看護師4 2 名 ( 4 2 保育 園) を 対 象 と した。 A 区 内 の公立保 育 園は約6 0 園あ り, 0 歳 児保育 を実施 している保 育 園 には看護 師 1 名 が配置 されてい る。
Support for the lnfants with ChrOnic Disease in GrOup
― A Questionnaire Given to the Nurses in Nursery Schools―
Keiko IDENO, Nobuko OHKI, Rei KolzuMI, Ayumi SuzuKI
東邦大学 医学部看護学科 ( 研究職)
別刷 請求先 : 出野慶子 東 邦大学医学部看護学科 〒 1 4 3 0 0 1 5 東 京都大 田区大森西4 ‑ 1 6 ‑ 2 0 Tel:03‑3762‑9881 Fax:03‑3766‑3914
〔 1866〕
受付 06.H.2
採用 06.12.5
2 . 方 法
2006年 2月 に, 自作 の質問紙お よび調査への 協 力依頼 文 を保 育サ ー ビス課経 由で配布 した。
調査 内容 は,慢 性疾患 をもつ園児 の概要,看 護 師の個 別 的 な対応 ・配慮 ,困 難 に感 じた こ と, 保護者 お よび保育士 との連携 の程度 とその内容 な どである。質問紙 は無記名 とし,保 育サー ビ ス課経 由で回収 した。
なお,本 研究 において慢性疾患 をもつ園児 と は,疾 患 に関連 した観察や医療 的ケア,環 境 の 配慮 な どを要す る園児 とし,注 意欠陥多動性 障 害,ダ ウン症 な どの園児 は除いた。
結果 の分析 は,自 由記述 を意味 のあ る文節 で 区切 り,そ の内容 を類似性 に着 日して研究者 4 名で検討 し分類 した。
3.倫 理的配慮
調査 内容 な どについて,保 育サー ビス課の了 解 を得 た後,調 査 を実施 した。対象者 には,研 究の趣 旨お よびプライバ シー を厳守す る ことを 書面 にて説 明 し,質 問紙 の返送 をもって調査協 力 に同意 が得 られ た もの とす る こ とを明記 し た。
Ⅲ.結 果 1.対 象者の概要
42名 の うち,39名の看護師 よ り回答 を得 た (回 収 率92.9%)。 その うち 3名 は,現 在 お よび過 去 に も慢性疾患 を もつ 園児 (以下,園児 とす る) とかかわった経験が な く,3名 は質問紙 の記入 不備が あ つたため,33名 を分析対象 と した。
看 護 師 の平 均 年 齢 は47.1歳 (SD± 7.9),保 育 園 で の勤 務 年 数 の平 均 は14.6年 (SD± 8.3) であ り,現 在 園児 とかかわ りがある者14名,現 在 お よび過去 にかか わ りの経験 が あ る者 8名 , 過去 にかか わった経験があ る者 9名 であった。
2.慢 性疾患をもつ園児の内訳
園児 の疾患 は,気 管支喘息13名,先 天性心疾 患 6名 ,三 分脊椎症 3名 ,小 児が ん 。腎疾患 ・ 食物 ア レルギー ・筋 ジス トロ フ イーが各 2名 , 小児糖尿病 ・ウイル ソン病 ・染色体異常 。ヒル
シュス プル ング病が各 1名 であった。
3.看 護師と保護者 ・保育士との連携の程度 保護者 お よび保育士 との連携 の程度 を 4段 階 尺度 (とて もあ る 。ある 。少 しあ る 。あ ま りな し)で 回答 を求めた ところ,保護者 との連携 は,
「とて もあ る」 8名 (23.5%),「 あ る」 20名 (58.8%),「 少 しあ る」 4名 (11.8%),「 あ ま りな し」 1名 (2.9%)で あ った。保 育士 との 連携 は 「とて もあ る」 19名 (57.6%),「 あ る」
12名 (36.4%),「 少 しあ る」 0名 ,「 あ ま りな し」 1名 (3.0%),無 記入 1名 であ った。
4.看 護師の対応や配慮
看護 師の対応 や配慮 は,<健 康状態 の観察 >,
<症 状 出現 の予 防 >,<疾 患 。 症状へ の対処 >,
<与 薬 >,<園 児 に適 した保育 園生活 の工 夫 ・ 配慮 >,<保 護者 との情報交換 >,<症 状悪化 時の保護者へ の連絡 >,<保 育士 (栄養士)と の情報交換 >,<保 育士 (栄養士)と の知識の 共有 >,<保 育士へ の技術 指導 >,<医 療職 と の連携 >の 11項 目に分類 された (表1)。
このうち,<園 児 に適 した保育園生活の工夫 。
配慮 >の 記述内容 として 「キャン ドルサー ビ
ス,焼 き芋などの行事のとき,親 と相談 して部
分参加 にす るか を検討 した」 (気管支喘息の 5
歳男児),「親は普通の子 どもと同 じように,と
い う思いがあったが運動面などは無理があ り,
他の園児 と同様 にで きることと,で きないこと
を親 にわかって もらうように努めた」 (先天性
心疾患の 5歳 男児),「食事のとき,ス ープはお
湯で うすめて,他 児 と同 じようにおかわ りで き
るように親 に提案 した」 (慢性腎炎の 3歳 男
児),「内服のために事務室に来る園児 を疑間に
思つた他の園児 に対 して,病 気で薬 を飲 まなけ
ればならないこと,飲 んでいれば元気でい られ
ることをきちん と説明 した ら理解 したようで,
暖か く見守 って くれるようになった」 (ウイル
ソン病の 5歳 女児),「プールに入る前,肛 門に
ス トマパ ックを貼 って便失禁 して も大丈夫なよ
うに した」,「ス トマパ ックはコス トが高 く,病
院で相談 してハルンパ ックに変えてみたら,う
ま くいった」 (ヒルシュスプル ング病の 3歳 男
児)な どがあった。
表 1 看 護師の対応や配慮 記述 内容 の概 要
。登園時の健康観察 を丁寧 に行 う
。季節の変 り目には特 に注意 して観察す る
・顔色が観察で きるようにベ ッ ドを使用 マスクを着用 させる
冷暖房の空気の流れを配慮
自律神経 を鍛 えるため, 薄 着や裸足保育をする
・水分補給 ・ 安静を保つ 。 体位の工夫 ・ 排痰 ・ スキンケア ・ 尿量測定
。除去食のメニューを保護者,栄 養士,保 育士,看 護師でチェックする
。除去食を間違えずに食べられるように,食 事用 トレイやネームプレートを工夫する
。食事のおかわりのとき,た んぱく質でないもの,塩 分の少なそうなものを選び,満 腹感 が得られるようにする
・経口薬の与薬 ・ 軟膏塗布 ・ 気管支拡張剤のテープを貼布
・体調のよいときは,で きるだけ戸外遊びをさせるように保育士 と相談 してすすめる
。キャンドルサービス,焼 き芋などの行事のとき,親 と相談して部分参加にするかを検討する
。食事制限のある児がおかわ りする場合,ス ープはお湯でうすめて,他 児 と同じように出 すなど,具 体的に親に提案 した
。プールに入る前,肛 門にス トマパ ックを貼ちて,便 失禁 しても大文夫なようにした
。ス トマパ ックはコス トが高 く,病 院で相談 してハルンパ ックに変えてみたらうまくいった
。内服のため事務室に来る園児 を他児が疑間に思って質問 してきたとき,病 気で薬を服用 しなければいけないこと,服 用 していれば元気でい られることをきちんと説明 したら理 解 したようで,暖 か く見守って くれるようになった
。児が疎外感を感 じないように,保 育士 と相談 しなが ら可能な範囲で他児 と同様な生活が で きるように配慮 した
。保護者 と話 し合いを十分に行い,児 の負担 を少なく,心 理的配慮を心がけて他児 と同様 に過 ごせるようにした
・親は 「普通の子 どもと同 じように」 という思いがあったが,運 動面など他児 と同様なこ とは無理があ り,他 児 と同 じようにできることと,で きないことを保護者にわかって も らうように努めた
保護者 とのコミュニケーションを大切に し, 児 の健康状態を把握するように努める 児の状況, 治 療状況, 受 診結果, 園 での感染症発生状況などの情報交換 を行 う 連絡 ノー トを利用 して家庭での状況を把握する
必要時, 面 談を行って情報交換 をする
いつで も何で も相談 した り,要 望が出せるような母親 との関係作 り 発作 が起 きた ときは早めに連絡 をとり,受 診 をすすめ る
児 の状態 に変化 があ った ときに連絡 して もらう 保育 中の気 になる点 につ いて報告 して もらう
担任 の保育士 とは定期的 に ミーテ ィングを行 い,些 細 なことで も話 し合 う 保護者 か ら受 けた児 の状況 についての報告
疾患 につ いての勉 強会 を行 う
病気 の こ と, 治 療 の こ とな ど必要があれ ば折 に触 れて情報提供す る 疾患 に関す る観察点, 留 意点 を確認す る
バルンカテーテルの取 り扱いについて指導 ハルンパ ックか らの排尿の操作 を指導 緊急時に備 えて心肺蘇生法の訓練 を行 う 1.健 康状態の観察
2.症 状 出現の予防
疾患 ・症状 へ の 対処
4.与 薬
園児 に適 した保 育 園 生 活 の 工 夫 ・配慮
保護者 との情報 交換
症状悪化時の保 護者へ の連絡
保育士 (栄養士) との情報交換
保育士 ( 栄養士) との知識の共有
保育士への技術 指導
11 医 療職 との連携 時 々,保 護者 とともに医療機 関で児へ の配慮 のア ドバ イス を受 ける
5.看 護師が困難に感じたこと
看護 師が 困難 に感 じた こ とは, < 保 護者 の理 解不足 や園児へ の適切 なかかわ りが ない こと>
7 名 ,<医 療設備 ・体制の問題 >7名 ,<疾 患 に よる症状 ・状況 に起 因 したこと> 4 名 ,<園 児 の 身体 的 苦 痛 を軽 減 しに くい こ と> 4 名 ,
< 他 の園児 との調整 に関す ること>3名 ,<情 報の共有化が うまくいかないこと>3名 ,<保 護者へ の連絡 >3名 ,<医 療 との連携 >3名 の 8項 目に分類 された (表2)。33名中,6名
(18.2%)は 「 特にな し」 と回答 した。
この うち,<保 護者の理解不足や園児への適 切 なかかわ りがない こと>の 記述内容 として,
「 親が病気 に対する理解があま りな く,子 ども に無理 をさせる」:「症状が悪化 し,母 親に受診 を勧めるが応 じて くれず,園 児の苦痛が長引い た」,「園で配慮で きることに対 して,母 親はあ ま り関心がな く,具 体的な方法を提案すると同 意する状況であった」などがあった。また,<情 報の共有化が うまくいかないこと>の 記述内容
としては,「入園当初,保 護者 よ り健診結果 を 詳 しく伝 えてもらえず,保 育に支障があった」 ,
保 護者 の理解不足 や園 児へ の適切 なかか わ り が ない こ と (7名 )
「受診結 果 な ど,直 接 保護者 か ら聞 く機 会 が少 な く,必 要 な情 報 を後 か ら知 る こ とが あ った」
な どが あ っ た。
Ⅳ.考 察
1.他 の園児 と同 じような生活 を送 ることができる ための工夫や配慮
看 護 師 は,便 失禁 の可 能性 が あ る園児 に対 し て ,他 の 園児 と一 緒 にプール遊 びが楽 しめ る よ うに工夫 した り,そ のための経済面 も考慮 して い た。 また,食 事制 限が あ る園児 に対 して は, 他 の園児 と同様 におか わ りがで きる ような工 夫 や,環 境 の調整が必要 な園児 に対 して,可 能 な 範 囲で行事 に参加 で きる ように配慮 を行 ってい た。 この ように,慢 性疾患 を もっていて も, 同 年齢 の子 どもが 体験 す るこ とを,健 康状態 を悪 化 させ ない範 囲で体験 で きる ように工夫 ・配慮 す るこ とは,豊 か な集 団生活 となる うえで,重 要 であ る と考 える。
94%の 看護師が保育士 との連携 を 「とて もあ る」あるいは 「ある」 と回答 してお り,園 児 の 体調 や家庭 での状況 な どの情報交換 ,勉 強会 や 表 2 看 護 師が 困難 に感 じた こと
記述 内容 の概 要
・親が病気に対する理解があまりなく子 どもに無理をさせる
。医師からの説明を保護者が十分に理解できていない
。症状が悪化 し,母 親に受診を勧めるが応 じて くれず,園 児の苦痛が長引いた
。園で配慮できることに対 して母親はあまり関心がな く,具 体的な方法 を提案す ると同意する状況であった
医療設備 ・体制の問題 ( 7 名)
疾患 に よる症状 ・状況 に起 因 した こ と(4名 ) 園児の身体的苦痛 を軽 減 しに くいこと( 4 名) 他の園児 との調整に関 すること ( 3 名) 情報の共有化が うま く いかないこと (3名 )
医療設備がないので緊急時にどう対応するか 保護者 より吸入器 を預かつて欲 しい と申 し出があった 医療行為がで きないので保育時間が短 くなる
・喘息発作が増強 し,母 親を待ってvヽる間緊張 した 。 泣いてチアノーゼが出現
・歩行が不安定で配慮を要 した 。 感染症発生時の保育体制 保健室がないので安静が保てない
医療行為がで きないので園児に負担がかかる プールの とき便失禁のおそれがある
園児が事務室に来て内月 及していることについて他児が疑間に感 じて質問 してきた
。入園当初,保 護者 より健診結果を詳 しく伝えてもらえず保育に支障
・受診結果など直接保護者から聞く機会が少なく,必 要な情報を後から知ることあり
4.