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1 日本生殖内分泌学会雑誌 Vol. 9 2004

巻頭言

Japanese Journal of Reproductive Endocrinology

 昨年の横浜で開催されました本会の理事会にて理事長を拝命いたし,身に余る光栄であると 同時にその重責を痛感しているしだいです.

 本会は,設立されていまだ 10 年に満たない歴史しかありません.しかし,初代代表理事の 加藤順三先生,そして前任者であられる理事長  青野敏博先生と世代を重ねるに連れ,組織は 拡大し,学術活動も活性化してきております.特に青野前理事長のお骨折りで本誌の如く充実 した機関誌が刊行されるにいたりましたことは,大変喜ばしいことであります.

 現在生命科学,生物医学は日進月歩の変化を遂げております.特に,遺伝子の解析,遺伝子 発現の調節系といった要素還元的な研究は瞠目すべき活況にあります.一方,生物学の究極の 目的である生命体の発生,発達,加齢,行動,恒常性の維持といった生物を特徴付けている諸 現象のしくみの解明は, 分子レベルの解析のみでは極められない事は想像に難くないでしょう.

 しばしばあらゆる生命体の織り成す諸現象は遺伝子により導かれているという事を耳にしま すが,それ自体正しいのでしょうが,これを至言として研究に励んでも,生物学を極めるため の王道には繋がらないでしょう.なぜならば,生命体をばらばらにして得られた最小単位の要 素から個体全体へと遡及すると同時に,全体から要素へと接近するという双方向のアプローチ が不可欠であるからです.

 生殖現象は生物にとって最も本源的な現象であり,しかも時間軸を関数として千変万化する ものであります.とりわけ上述の双方向的戦略を縦横に駆使しつつ,生命現象の多層性に迫る ことが大切でしょう.従って本会は,近時,隆盛を極めている分子生物学を止揚し,現象論的 生殖学と細胞分子生殖学のハイブリッドともいうべき 21 世紀型の生殖学を目指すことになるの でしょう.

 大変重要な課題を帯びた学会でありますが,本会のさらなる躍進のために微力を尽くす決意 を致しております.会員の皆様方には一層の御支援をいただきますよう紙面をお借りしお願い 申し上げます.

理事長

武谷雄二

(東京大学教授)

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