九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
材質管理システムの確立にむけた木材の基礎的性質 の変動に関する研究
古賀, 信也
https://doi.org/10.11501/3163981
出版情報:Kyushu University, 1999, 博士(農学), 論文博士 バージョン:
権利関係:
第5章 間伐がカラマツ材の基礎的性質と木部形成へおよぼ す影響
5. 1. はじめに
前章では, 実生由来のヒノキ, カラマツ材の基礎的性質について明らかにし たが, 第5章と第6章では, 木材の性質のバラツキに影響をおよぼすと考えら れている森林保育との関連性について検討した. 森林保育との材のバラツキと の関係が明らかになれば, 人為的な材の性質のコントロールも可能になると考 えられる.
本章では, 森林保育技術の一つである間伐に着目し検討した. 一般に間伐と 材の性質との関係は, 林木聞の競争の緩和により, 残された林木の成長は促進 され, そのことにより材の性質は影響をうけるとされ, 多数の研究がおこなわ れてきた. しかしながら, その結果はさまざまである. 例えば, 間伐によって 材の密度や晩材率は低下するCCown,1974) CEricksonら,1958) CEricksonら,
1974) CBarbourら,1994)という報告もあれば,間伐の影響は認められないCBrix ら,1980) CNicholls, 1971) CTaylorら,1982) CC reggら,1988) CMoschl erら,
1989), さらには, 密度や晩材率は増加する CLρwery ら, 1967) CSmith, 1968)
CJozaら, 1989) という報告もある. このように間伐が木材の性質におよぼす 影響は, 樹種, 植栽密度, 地位, 間伐の強度, 樹齢等によって異なり, 結果は 複雑である. カラマツについては, 間伐が木材の性質におよぼす影響に関する 研究は見あたらないのである.
このようなことから, ここでは, 間伐が木材の性質におよぼす影響について
5. 2. 基礎的性質に関する実験
5.
2.
,.試験木
九州大学北海道地方演習林において, 1984年10月に異なる立木密度に調整 された 23年生, 34年生, 38年生のカラマツ林分を対象にした(九州大学農学 部木材理学教室, 1986). 表5.1に試験地の概要を示している. すなわち, ha あたり150本および300本に調整された強度の間伐区からそれぞれl個体づっ,
また, haあたり1000本に調整された軽度の間伐区もしくは 無間伐区からそれ ぞれ1個体づっ, 合計9個体を試験木とした. 伐倒時の試験木の成長状況も表 5.1に併せて示している. 1992年 6月に試験木を伐倒し, 各試験木の地際から 頂端にむかつて 2m間隔に約5cm厚の円板, さらに胸高部位からは 20cm厚の 円板を採取し, 以後の実験に供した.
5.
2. 2. 実験方法
( 1 ) 成長量の測定
各試験木から得られた円板の年輪幅を長径方向と短径方向の4方向につい て測定し, 樹幹解析を行い, 連年 材積成長曲線を得た .
( 2
) 容積密度数, 晩材仮道管長の測定間伐処理の実施年 は1984年10月なので,1992年6月の伐倒までに7年輪が 形成されたことになる. 各円板の無欠点部位から, 処理前3年輪と処理後7年 輪の前後の10 年輪を含む小フ。ロック(軸方向: 30mm, 接線方向: 20mm) を
それぞれ切り出した. 小ブロックをさらに各年輪ごとに分割し, 各年輪の容積 密度数を求めた. 各年輪の晩材部から仮道管長測定用の試料を採り, 晩材仮道
林分A 林分B 林分C
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3 間伐強度(%) 91 83 39 78 89 26 50 50 。 間伐強度区分 強度 強度 弱度 強度 強度 弱度 強度 強度 無処理植栽年 1969 1969 1969 1958 1958 1958 1954 1954 1954
植栽密度 (本/ha) 1,924 1,924 1,924 3,009 3,009 3.009 1,977 1,977 1,977 間伐時林齢 15 15 15 26 26 26 30 30 30
収穫時林齢 23 23 23 34 34 34 38 38 38 処理前胸高断面積 (stems/ha) 1,750 1,750 1,650 1,350 1,350 1,350 300 600 600
。、j、 処理後胸高断面積(stems/ha) 150 300 1,000 300 150 1,000 150 300 600 試験木番号 1HT 2HT 3LT 4HT 5HT 6LT 7HT 8HT 9UT [間伐処理前]
樹高(mm) 14.0 13.0 14.0 13.0 13.0 12.0 23.0 20.0 22.0 枝下高 (mm) 5.6 5.5 7.2 5.9 5.5 6.9 10.0 12.1 11.5 樹冠率(%) 60 58 49 55 58 43 57 40 48 胸高直径(mm) 14.2 15.8 11.5 18.2 14.2 13.0 24.0 21.0 21.0 [間伐処理後]
樹高(mm) 19.0 20.0 19.5 16.0 15.5 16.0 23.0 20.5 23.0 枝下高 (mm) 7.6 9.2 11.3 8.9 8.2 10.4 11.5 12.5 13.0
樹冠率(%) 60 54 42 44 47 35 50 39 43
胸高直径(mm) 19.9 23.7 15.2 19.9 18.5 17.2 26.8 23.1 23.5
管を測定した. なお, ここでは, 1年輪あたり100本の仮道管長を測定し, 平 均値を求めた.
5. 3. 年輪構造に関する実験
5. 3. 1. 試験木
基礎的性質への影響に関する実験で用いた強度の間伐区から得られた試験 木とそれぞれの林分の強度の間伐区からl個体を追加して以後の実験に供し た. また同一林分内で試験区の隣接地から, 各試験区あたり3個体, 計9個体 を対照木として選び, 伐倒し, 以後の実験に供した.
5. 3. 2. 実験方法
各試験木の胸高部位円板から, 処理前に形成された年輪, 処理後に形成され た年輪, さらに処理後2年目に形成された年輪について, 横断面の顕微鏡観察 用プレパラートを作製した. そのプレパラートを対象に, 画像f'ßt.析装置(ソフ トウエア: (株)フォトロン製 FMD4・256)を用い,仮道管の放射径,接線壁厚,
および壁率を, 早材から晩材にかけての年輪内推移として求めた. 年輪幅, 早 材幅, Iぬ材l陪, 晩材率についても測定した. 早材と晩材の区分は, Mork の定 義(Mork, 1928) によった. とくに, この研究では, Denn (1988)によって示 されている公式2, すなわち, 半径方向で相接する細胞の壁の厚さの合計が,
細胞内こう径と等しいか, あるいはそれより大きい場合に晩材細胞とみなした.
さらに, fぬ材部内での細胞形態の変化を詳細な観察を目的として, 晩材部分を フラットな細胞(接線径/放射径三� 2)とノンフラット(接線径/放射径<2)
5. 4. 木部形成に関する実験
5.
4.
1.試験木
1993年3月に九州大学北海道演習林の28年生カラマツ林分から4本の試験 木を選び, それぞれの試験木を中心に半径 5
.6mの円形プロット4 つを設定し
た. プロット内のすべての立木について, 樹高, 枝下高, 胸高直径, 樹冠直径 を測定した後, 試験木だけを残し, 他のすべての立木は伐倒した. すなわち,haあたり約650本から100本Ihaの立木密度に調整された円形プロットが設定 されたことになる. また対照区として, 同一林分のそれぞれの円形プロットの 隣接地からそれぞれl個体づっ, 計4本をコントロールとして選んだ.
5. 4. 2. 実験方法
各試験木の地上高1. 3m部位から, 1993年4月15日から11月9日にかけて,
約2週間ごとに計 16回にわたり形成層と当年の木部を含む試料を採取した.
採取試料は直ちにFAAで固定し, 脱水, パラフィン包埋の後 顕微鏡観察用の 横断面切片を切り出し, 今川ら(1970)の方法に基づき木部形成経過の観察を おこなった.
5. 5. 結果と考察
5. 5. 1. 成長への影響
各試験木の胸高部位における間伐前後の年輪幅の変化を図5.1 に示す. すな わち, 年輪幅への間伐の影響は明らかであり, その影響の強さは, 間伐強度に よる.強度の間伐区からの試験木では,胸高部位における年輪幅は,処理後14%
から43%の増加が認められ, その後数年間は広い年輪幅を維持した. 弱度の間 伐区からの試験木は, ほぼ一定の年輪幅であり, �夜間伐からの個体は, 50%の 年輪幅の低下し, その後ほぼ一定の成長を維持した. また図5. 2に各試験木お ける間伐処理前後の変化を示している. 強度間伐区から得られた試験木の年材 積成長量は, 処理後急激に増加し, その後も高い年材積成長量を維持した. 他 方, A林分とB林分のそれぞれで弱度間伐区から得られた試験木のそれは, 処 理後わずかに増加あるいはほぼ一定であった. また 無処理区からの試験木で はわずかに減少した. このように, 各試験木の成長への間伐の影響は明らかで あり, その影響の大きさは, 間伐強度によって異なった.
5. 5. 2. 容積密度数, 晩材率への影響
各試験木の間伐前後の容積密度数の変化を図5.3に示す. 強度間伐区から得 られた試験木の容積密度数が, 間伐後わずかに増加する傾向が認められるが,
強度の間伐区, 弱度の間伐区, 無処理区, いずれにおいても, 容積密度数には 間伐前後では明らかな差は認められなかった. 一般に, 成長速度と材の密度と の聞には負の相関関係があり, 間伐による成長速度の増加は材の密度の低下を
引き起こすと考えられている(塩倉, 1985) (藤原, 1994). またDouglas-fir
f園、
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6 Stand A
4
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11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
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一一〈ト-4HT
一一企一一
5HT Stand B
4
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2
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21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
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4
2
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Stand C
a・ r、IIT
25 26 27 28 29 30 31 32 33 34
Ring number from pith
図5.1 間伐処理前後の年輪幅の変化
0.03
一ーや一一1HT 一一合一一2HT--3LT
AU e
m --v
hH T
Stand A 0.02
,L,-圃h、
0.01
cö h〉h h。、 σコ
ε 。
14 15 16 17
0.03 Stand B
、-〆 一-0一一4HT
4c ・d
一一企一一5HT
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6LT
ε 0.02 Thinned
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ハ←Q)
0.01
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26 27 28
25
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コc 一一合一一8HT
c
- 9UT
〈 0.02 ハ
0.01
。
29 30 31 32
Tree age (year)
図5.2 間伐処理前後の年材積成長量の変化
800
一-b-ー
2HT Thinned e-3LT ↓
Stand A
600 400 200
ロu nu AU 2 r a 9 s
no 7I
ハO RU
4 ω m ↓
3 M
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1 456 什一十十 ぺJ ハU ハU 1
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∞ 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
800 600
Stand C
400
一-0一一
7HT 200卜
ーかー8HT
01 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34
Ring number from pith
図5.3 間伐処理前後の容積密度数の変化
(Erickson ら, 1974) やradiata pine(Cown, 1973)にも, 間伐後に材の密度 が低下するとことが報告されている.一方, red pine(Zahnerら1962), loblolly pine (Burtonら1974) (Moshcle rら1989) , radiata pine ( Sut tonら, 1973),
mari time pine (Nicholls ら, 1971) において材の密度への間伐の影響は少な いとする報告がある. Zobe 1ら (1989) は, いくつかの針葉樹における間伐と 木材性質との関係に関する研究をレビ、ューし, 間伐は材の密度へ顕著な影響を およぼすとする研究もいくつかあるが, 一般的に材の密度は, 間伐によって顕 著に影響をうけないであろうと結論づけている. この研究の結果は, Zobe 1ら
(1989) の結論と一致している.
カラマツ材の容積密度数は晩材率と密接な関係にあることは前章で示した.
強度の間伐区からの試験木の処理前後の早材I隔と晩材I隔の変動を図5.4 に示す.
間伐後早材|隔も晩材l隔も増加傾向を示した. 特に, 間伐直後に形成層された年 輪において, 晩材幅は増加は顕著であった. ところで, いくつかの針葉樹では は, 間伐は早材細胞量の増加をもたらし, その結果として, 晩材率は低下する という報告が見られる(Smith, 1968) (Larson, 1969) (Ericksonら,1974)(Cregg ら, 1988) (Barbour ら, 1994). 他方, 間伐は晩材幅の増加を引き起こすとす
る報告 (Cown, 1973) (Zahnerら, 1962) (Megrawら, 1972), また, 晩材率は 間伐によって顕著な影響をうけないとする報告(Zahne rら, 1962) (Brixら,
1980) (Taylorら, 1982) (Moschlerら 1989) (Jozaら 1989)もある. この 研究で得られた結果は後者の報告と一致している. すなわち, カラマツでは,
間伐は晩材率に顕著な影響をおよぼさないことが明らかになった.
ところで, 間伐が材の密度や晩材率に影響をおよぼさないとする結果は, 間 伐よって肥大成長が促進されるということを考慮すれば, カラマツの成熟材で は, 成長速度は材の密度に影響をおよぼさないと仮定することもできる. この ことは, 前章で述べたカラマツ個体問3 樹幹内では, 材の密度は, 年輪幅とは
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2
強度の間伐が早材幅, 晩材幅におよぽす影響
図5.4
関係が認められないという結果とも関連し, きわめて興味深い.
5. 5. 3. 仮道管長への影響
各試験木の胸高部位における間伐処理前後の仮道管長変化を図5.5に示す.
弱度の間伐区および無処理区からの試験木では, 処理前後の仮道管長に違いは 認められかったが, 強度間伐区からの試験木では, 処理後の仮道管長は処理前 のそれと比較して,3%から6%減少し, 3年から5年後に元の長さに回復した.
すなわち,間伐によって仮道管長は減少する結果となった. このような結果は,
mari t ime pine (Nicholls, 1971), radiata pine (Cown, 197 3) (Cown, 1974),
loblolly pine (Erickson ら, 1974) に認められている. さらに, mari t ime pine の研究では, 強度の間伐を受けた個体は, 弱度の間伐をうけた個体よりも仮道 管長の減少割合が高いと報告されている. この研究の結果は, これらの報告と
一致し,強度間伐によって仮道管長が短くなることが見いだされた. ところで,
成長速度と仮道管長との聞には負の相関関係があり, 形成層始原細胞における 偽横分裂頻度の点からその現象は説明されている(Bannan, 1970). この研究 では, 全試験木において年輪幅と仮道管長との問に5%水準で有意な負の相関 関係(r=-0.4'"'-'0.7) が認められた. すなわち, 間伐により成長速度が早く なり, そのことによって形成層始原細胞の偽横分裂の頻度が増加するために,
仮道管長は短くなると考えられた.
4.5 4.0 3.5
Stand A
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一-0一一1HT
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Ê �:�r 11 12 13 14 15 16 17 18
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3・ 6LT
ト� :�r 21 22 23 24 25 26 27
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3.5 Thinned
一-0一一7HT
3.0卜
一企ー8HTe--9UT
2.5 25 26 27 28 29 30 31 32- 33 34
Ring number from pith
図5.5 間伐処理前後の仮道管長の変化
5. 5. 4. 年輪構造への影響
間伐によって圧縮あて材が形成されるとする報告(Sm i t h 1 968)
(M
e g r a wら,1972) (Cown, 1974)があるので, まず, 圧縮あて材の形成の有無を確認した.
その結果, この研究で用いた試料にはあて材は観察されなかった.
表5.2に間伐区と無間伐区からの試験木の処理前後の年輪幅, 早材幅, 晩材幅 を示している. 間伐区からの試験木の年輪幅, 早材幅, および晩材幅は, 処理 後に増加したが, 無処理区からの試験木の年輪幅と早材l隠はわずかに減少し,
晩材l幅は変化しなかった.
表5.3に, 晩材率, 晩材部においてノンフラットとフラットな細胞帯の幅の 処理前後における変化を示している. 前述した実験結果同様, r�t材率への間伐 の影響は認められない.ノンフラットとフラットな細胞帯については, 間伐区 では処理後に両細胞帯の幅は増加しているが, ノンフラットな細胞帯のl陪の増 加は特に著しい.一方,無間伐区では,顕著な傾向は認められない. すなわち,
ノンフラットな細胞帯のl隔に間伐は顕著な影響をおよぼすようである.
ところで, 潅水によってノンフラットな細胞帯の|幅が増加したという報告 がい くつかある(Zanherら 1 9 64) (Wh i t m 0 r e ら 1966) (Howe, 1988). 間伐は林 分内の個体問競争を緩和させる行為であり, 個体問の土壌水分の獲得競争も緩 和されることが予測され, この研究において, 間伐後ノンフラットな細胞帯の l慣が増加したのは, 土壌水分の変動と関わっているのかもしれない. この点に 関しては, 今後さらなる研究が必要であろう.
間伐処理前後の仮道管の放射径, 接線壁厚を表5.4に, 壁率を表5.5 に早材 と晩材をわけで示している. 仮道管長の放射径は, 間伐後に早材部,f1Çt材部と もに増加したが, 対照区の試験木それは, 早材部で変化せず, 晩材部で減少し た. また図5. 1に示すように, 間伐によって早材から晩材への移行は緩やかに
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Relative Position (%)
図5.6 間伐処理前後の年輪内における仮道管の 放射径(a) , 壁厚(b) , 壁率(c)の変化
・:処理前, .処理後
CCわ〉
表5.2 間伐処理前後の年輪幅, 早材幅, 晩材幅とその前後比
年輪幅(mm) 早材幅(mm) 晩材幅(mm) 処理 林分試験木数形成層齢処理前処理後前後比 処理前処理後前後比 処理前 処理後前後比
A
4 12-13 2.85 4.27
間伐 B
4 22-24 1.98 2.32
C 4 26-28 1.40 1. 75
平均値12-28 2.08 2.78
A
3 12-13 2.54 2.32
無処理 B
3 23 2.29 2.21
C 3 26-28 1.27 1.24
平均値12-28 2.03 1.92
牢牢 1%有意水準,h5%有意水準1.50 2.18 3.20 1.17 1.50 1. 70 1. 22 1.18 1. 32
1.38 牢牢 1.622.07 0.91 1.90 1. 73 0.97 1.69 1. 63 0.98 0.99 0.95 0.94 1.53 1.43
1.47 0.66 1.13 0.48 1.12 0.36 1.24 牢 0.50 0.91 0.64 0.96 0.60 0.96 0.28 0.93 牢 0.51
1. 04 0.63 0.43 0.70 0.59 0.58 0.29 0.49
1.58
1. 31
1.19
1. 36 牢寧0.92
0.97
1.04
1.01
αコト_.
晩材率(%)
WNFLT (rnm) WFLT (rnm)
処理 林分 処理前処理後前後比 処理前処理後 前後比 処理前処理後前後比
A 23.30 24.70 1. 06 0.21 0.54 2.53 0.44
間伐B
24.4026.70 1. 09 0.20 0.33 1.67 0.28
C 25.30 24.70 0.98 0.10 0.17 1.68 0.25
平均値24.3025.30 1. 05 0.19 0.82 4.25
牢牢0.33
A 25.50 25.90 1.02 0.26 0.20 0.77 0.38
無処理B 26.50 26.40 1.00 0.23 0.20 0.88 0.37
C 20.90 22.90 1.10 0.10 0.10 1.00 0.18
平均値24.3025.10 1. 06 0.19 0.17 0.85 0.31
注) WFLT :ノンフラットの晩材細胞帯の幅; WFLT:フラットな晩材細胞帯の幅牢牢
: 1
%有意水準,本:5%有意水準0.50 0.30 0.26 0.60 0.39 0.38 0.19 0.32
1.13
1.06
1.02
1.81
牢寧1.04
1.02
1.07
1.03
。tサ。
表5.4 間伐処理前後の早材部と晩材部の仮道管の放射径, 壁厚とその前後比
放射径(μm) 壁厚(μm)
早材 晩材 早材 晩材
処理 林分 処理前処理後前後比 処理前処理後前後比 処理前処理後前後比 処理前処理後前後比
A 50.09 54.57 1.09 24.05 25.56
間伐
B 55.55 56.32 1.03 21.68 24.08 C 52.70 54.83 1.04 24.32 24.94
平均値52.7855.57 1.05 23.35 24.93 A 49.25 48.10 0.98 24.67 21.62
無処理B 53.19 51.20 0.96 21.55 20.06 C 58.23 58.10 1.00 26.78 26.20
平均値53.56
52.47 0.98 24.33 22.63
牢牢 1%有意水準,h5%有意水準1.06 2.50 2.76 1. 11 2.62 2.95 1.03 2.39 2.66
1.07 寧 2.502.79 0.77 2.41 2.38 0.93 2.64 2.61 0.98 2.71 2.71 0.93 2.59 2.57
1. 11 7.06 1.14 7.35 1. 11 6.46
1.12 本牢 6.960.99 6.80 0.99 6.05 1.00 5.75
0.99 牢牢 6.206.36 6.60 6.15 6.37 7.12 6.50 6.03 6.55
0.90
0.90
0.95
0.92 寧牢1. 06
1.07
1. 05
1. 06
表5.5 間伐処理前後の早材部, 晩材部および年輪全体の壁率とその前後比
壁率(%)
早材 晩材 年輪全体
処理 林分 処理前処理後 前後比 処理前処理後前後比 処理前処理後前後比
A 23.27 23.58 1. 01 88.14 83.52 0.92 46.13 45.18 1.13
間伐B 22.46 23.54 1. 05 90.33 84.24 0.93 43.20 48.33 1. 06 C 24.42 24.73 1.01 88.93 83.80 0.94 42.80 46.70 1.02
平均値 23.3823.95 1.02 89.13 83.85 0.93
牢牢44.04 46.74 1.06
Uc。A
A 23.66 24.05 1.02 88.74 88.94 1. 00 47.00 48.28 1.03
無処理
B 22.53 22.94 1.02 86.54 89.39 1. 03 43.81 45.44 1.04 C 25.97 23.90 0.92 73.65 78.78 1. 07 42.64 44.17 1. 04
平均値 24.0523.63 0.98 82.98 85.70 1. 03 44.48 45.96 1. 03
牢牢 1%有意水準,h5%有意水準
なった. これらは, Smi th (1968)による loblolly pine の早材部における結 果とは異なるが,Br ixら(1980)やCreggら(1988)のDouglas-firに関する結果 と一致している.
仮道管の壁厚は, 間伐処理後, 早材部では増加し 晩材部では減少したのに 対し, 対照区では, 早材部, 晩材部ともに変化しなかった. また仮道管の放射 径と同様, 間伐によって細胞壁厚の早材から晩材への移行は緩や かになった.
Brix ら(1980)とCregg ら(1988)は,Douglas-fir において早材部で噌加し,
晩材部で変化しないことを報告しており, この研究で得られた成果と早材部で は一致するが, 晩材部では一致しない.
壁率は, 間伐処理後, 早材部では変化しないが, 晩材部では減少したのに対 し,対照区の試験木のそれは,早材,晩材ともに変化しなかった. この結果は,
壁率と材の密度は密接な関係にあることから, 間伐は早材密度に影響をおよぼ さず, 晩材密度に影響をおよぽし, 低下するということを意味し, 間伐によっ て早材密度は影響を受けず, 晩材密度は低下したとする Douglas-fir の報告 (Megrawら,1972)と全く一致する結果になる. ところで, 表5. 5 に示してい るように, 1年輪全体の壁率では, 間伐はほとんど影響をおよぼさない結果と なった. すなわち, 間伐は容積密度数に影響をおよぼさないことを前に述べた が, 年輪構造の観察からも, 間伐は材の密度に影響をおよぼさないということ が実証された.
5. 5. 5. 木部形成への影響
間伐によって年輪幅の増加とともに晩材幅も増加し 晩材率がほとんど変化 しないことを明らかにしたが, ここでは, 木部形成の面から検討を加えた. こ こで用いた試験木は明らかに間伐の影響を受けており, 処理後に年輪幅, 早材
分裂開始時期, 晩材細胞の形成時期, 活動停止時期について示している. 間伐 区では, すべての試験木の胸高部位および地上高8m部位において, 4月 28 日から5月13日の聞に形成層細胞の分裂は始まっている.一方,対照区では,
全試験木の地上高8m部位で同時期に形成層細胞の分裂が始まっているが, 胸 高部位では, 5月13日から5月27日の聞に始まっている. すなわち, この観 察結果と針葉樹の形成層活動は樹幹の上部から下部へ進行するという報告 (Zahner, 1962) (Larson, 1969)から, 間伐によってわずかに形成層細胞の分 裂開始時期がわずかに早めるようである. 晩材細胞の形成時期は試験木, 高さ 部位によって大きな違いは認められなく, 7月8日から 22日の問であった. 形 成層の活動停止時期については, 間伐区では1個体を除くすべての個体は 10 月28日から11月9 日の間であったのに対し 対照区では すべて10月14日
から10月28日の問であった. すなわち, 間伐はわずかに形成層細胞の分裂停 止時期を遅らせるようである. 形成層の休止期は, 1次壁帯は形成層細胞だけ であるが, 分裂後は, 2次壁形成前の分化中の細胞が含まれることになる. そ こで, 1次壁帯中の細胞数を形成層活動の相対的な指標と仮定し, 1次壁帯細 胞数の季節的変化を図5.7に示している. 成長初期の段階では, 1次壁帯数に 間伐区と対照区では著しい違いは認められないが, 成長期後半, すなわち7月 中旬から 9月下旬にかけて大きな差が認められる. すなわち 1次壁帯中の細 胞数を形成層活動の相対的な指標と仮定するならば, 間伐によって, より成長 後期まで形成層活動の活発な時期が維持されるということができる. この時期 は, 表5.6によれば晩材細胞を形成している時期にあたり, 間伐によって多く の晩材細胞が生産されるということになる. したがって 前に述べたような間 伐によって晩材幅が増加すること, とくにノンフラットな細胞帯の幅が増加す
間伐が形成層活動におよぼす影響 表5.6
形成層細胞の分裂停止の有無 晩材細胞生産の有無
形成層細胞の分裂の有無
11月9日
8m部位
0000一0000一0000一0000 10月28日
000一O
。
000
0:有, 一:無
。
10月14日7月22日 0000一0000一0000一0000 7月8日
。
。
。
。
6月24日 5月27日0000一0000一0000一0000 5月13日
0000一O
0000一0000 試験木4月28日
4i
ηL
qU
TA一ρしρしρしρυ-m-mi中iρしρしρしハし一中i巾i中14中i 84一fiη乙41qUA生一nLqUqUAq一4iη/u44
無処理
間伐
無処理 処理
間伐
胸高部位 部位
。。
σ、
一-0一一Treatment
--- Control
1 5
10
5
2一ωυ』O』ωDEコZ
10/28 9130
9/2 7/8 8斤
Date
5/13 6パ0 4/15
。
1次壁帯細胞数の季節変化への間伐の影響
図5.7
ことと形成層活動の停止時期はわずかに遅れるということで説明できると考 えられた.
5.
6. 要 約
間伐程度の異なる林分で生育したカラマツの胸高部位を対象に, 間伐処理が,
成長, 容積密度数, 晩材率, 仮道管長へ, 木部形成過程におよぼす影響につい て検討した. その結果, 以下のことが明らになった.
( 1 )間伐によって年輪幅の増加にともない早材・晩材l協ともに増加する傾 向を示し, 特に, 晩材部では, ノンフラットな晩材細胞の増加が著しかった.
( 2
)仮道管の放射径は早材部と晩材部ともに間伐後増加した. 間伐後, 仮 道管長の壁厚は早材部で増加し, r免材部で減少した. 細胞壁率は早材部では間 伐の影響を受けなかったが, 晩材部では減少した. これらの指標の早材から晩 材への移行は, 間伐後より緩やかになった. 1年輪全体に対する壁率は間伐の 影響を受けなかった.( 3
)間伐が晩材率へおよぼす影響は認められなく それと密接な関係にある 容積密度数への間伐の影響は認められなかった.(4
)強度の間伐によって晩材仮道管長は減少した.( 5
)間伐によって形成層活動は影響を受け, 形成層細胞の分裂開始時期はわ ずかに早まり, 分裂停止時期はわずかに遅くなる. また形成層細胞の分裂活動 の活発な時期は長くなった.第6章 枝打ちがカラマツ材の基礎的性質へおよぼす影響
6. 1. はじめに
枝打ちは, 無節材生産や肥大成長の制御を目的として林業的におこなわれる 保育技術の一つである. 生枝を除去するために, 個体の成長は低下し, それに よって木材の性質は影響を受けるとされている.
このようなことから, 前章に引き続き森林保育技術の一つである枝打ちが木 材の性質におよぼす影響について検討した.
6.
2. 基礎的性質への影響に関する実験
6.
2. 1. 試験木
九州大学北海道演習林の 18年生カラマツ林分において 健全な成長を示し ていた1 2個体を選び試験木とした. 1992年3月に4個体づっ異なる樹冠率 (30%, 50完, コントロール)に調整した. なお, ここでは樹冠率は樹高に対す る樹冠部分の高さをあらわしている. 樹冠率の調整処理から3成長期間を経た 1995年5月に10個体( 樹冠率30%: 4本, 樹冠率 50% : 3本, コントロール:
3本)を伐倒した. 試験木の概要を表6.1に示す. 各試験木の胸高部位および 8m部位から得られた5 cm厚円板を以下の実験に供した.
表6.1 枝打ち処理時の試験木の概要
樹冠率 (%) 校下高 (m) 樹高 胸高直径
一
処理 試験木番号処理前 処理後 処理前処理後
(m) (cm)
L1 72 31 4.0 10.0 14.5 16
30% L2 70 30 4.0 9.5 13.5 14
L3 74 30 4.0 10.8 15.4 16
LA 70 30 4.5 10.5 15.0 15
M1 70 50 5.0 8.3 16.5 19
50% M2 71 50 4.5 7.8 15.5 18
M3 68 50 4.5 6.0 14.0 17
C1 70 70 4.5 4.5 15.0 18
コントロール
C2 69 69 4.5 4.5 14.5 17
C3 70 70 4.7 4.7 15.5 15
各円板の長径方向と短径方向の4方向の年輪l隔を測定した. また処理前2年 輪と処理後3年輪の計5年輪を含む小ブロック(軸方向: 30mm,妓線方向: 20mm) を切り出した. さらにその小フ守ロックを年輪ごとに分割し, 各年輪の容積密度 数を求めた. さらに, 各年輪の晩材部から仮道管長測定用の試料を採り, 前述 の方法で晩材仮道管を測定した. なお, 1年輪あたり50本の仮道管長を測定 し, 平均値を求め, その年輪の仮道管長とした.
6. 3. 結果と考察
6.
3. ,. 成長への影響
樹幹の各地上高部位における樹冠量調整の前後の年輪rp�, 容積密度数および l免材仮道管長の変化を表6. 2に示す. ここでは, 樹冠量調整の肥大成長への影 鍛を年輪l隔を指標とし検討した. 表6. 2に示すように, 樹冠量の減らすことに よってその後の肥大成長は抑制された. とくにこの傾向は, 30%の樹冠率に処 理された個体, さらには樹幹上部よりも胸高部位において顕著であった. これ らの結果は, 低樹冠率の処理された個体, すなわち葉量除去率の高い個体ほど 処理後の肥大成長の減少は大きく, また樹冠から遠い部位ほど肥大成長の減少 は大きいとする一般的な傾向(佐々木ら, 1994)と一致する. 樹冠量調整が肥 大成長へおよぼす期間は, 著しい処理の影響をうけた低樹冠率木の胸高部位に おいて, 処理後1, 2年間であり, 3年後には処理前の年輪幅に回復した. 樹 冠量調整の肥大成長への影響期間は比較的短いようである.
表6.2 間伐前後の年輪幅, 晩材率, 容積密度数とその前後比
年輪幅(mm) 晩材率(%) 容積密度数(kg/m3) 晩材仮道管長(mm)
部位 樹冠率 試験木処理前処理後前後比* 処理前処理後前後比* 処理前処理後前後比* 処理前処理後前後比*
L1 1.87 0.52 0.28 32.3 34.2 1.06 410 361 0.88 3.86 3.69 0.95
胸高部位30% L2 3.40 1.52 0.45 38.5 39.1 1.02 479 424 0.89 3.82 3.58 0.94 L3 3.33 1.86 0.56 47.9 35.1 0.73 499 365 0.73 3.67 3.74 1.02 LA 3.61 1.12 0.31 36.5 15.5 0.42 429 281 0.65 4.02 3.69 0.92 M1 4.96 2.14 0.43 26.7 19.8 0.74 376 348 0.92 3.99 3.93 0.99 50% M2 2.31 2.27 0.99 40.1 30.8 0.77 436 398 0.91 3.68 3.83 1.04 M3 4.47 3.76 0.84 26.3 28.0 1.06 362 357 0.99 3.87 4.08 1.05 C1 4.43 3.82 0.86 32.2 24.8 0.77 410 375 0.91 3.73 3.70 0.99
LトO、2 コントロール
C2 4.23 3.49 0.83 31.0 29.5 0.95 380 377 0.99 3.85 3.85 1.00
C3 2.58 2.90 1.12 25.2 23.4 0.93 369 347 0.94 3.85 3.58 0.93 L1 4.32 1.98 0.46 24.5 30.2 1.23 381 384 1.01 3.42 3.56 1.04
8m部位30% L2 3.38 3.03 0.90 27.1 38.5 1.42 384 419 1.09 3.10 3.41 1.10 L3 4.48 3.24 0.72 20.9 19.1 0.91 393 372 0.95 3.38 3.51 1.04 LA 4.60 3.19 0.69 25.0 24.2 0.97 374 347 0.93 3.82 3.81 1.00 M1 4.93 3.10 0.63 21.0 30.3 1.45 367 404 1.10 3.71 3.85 1.04 50% M2 4.03 3.09 0.99 22.8 20.9 0.92 379 366 0.97 3.54 3.50 0.99 M3 3.79 3.64 0.96 22.0 21.8 0.99 386 386 1.00 3.62 3.72 1.03 C1 3.51 4.16 1.19 28.2 32.6 1.16 402 341 0.85 3.53 3.51 0.99
コントロールC2 6.08 5.42 0.89 14.2 21.4 1.51 325 320 0.98 3.67 3.63 0.99 C3 4.11 4.00 0.97 30.3 17.4 0.58 377 317 0.84 3.69 3.63 0.98
* .前後比=処理後の値/処理前 の値
表6. 2によると, 樹冠率50%およびコントロールの個体の胸高部位では, 樹 冠率調整後の容積密度数の値は処理前に比べ大差ないかあるいはわずかに減 少した.他方,樹冠率30%の個体では,その値は処理前に比べ大きく減少した.
他の針葉樹における研究では, 一般的に樹冠量の減小は容積密度数の増加をも たらす(Cown, 1973) (小田, 1983) が, 極端に樹冠量を減少させた場合, 樹 幹下方部の成長と晩材細胞の生産量は著しく抑制され(久保ら, 1983) (船田 ら, 1984), その結果として, 晩材量と密接な関係にある容積密度数は低下す ると推定されている. この研究においても, 樹冠率30%に調整された個体の胸 高部位で容積密度数の低下した原因は, 年輪幅および晩材幅の極端な減少によ って説明することができる. 一方, 樹幹上部での樹冠率調整前後の容積密度数
には大きな違いは認められなかった.
以上, このように, カラマツ材の容積密度数への樹冠量調整の影響は, 樹冠 率の調整程度すなわち葉量除去率と樹幹内の高さ部位によって異なることが
明らかになった.
6. 3. 3. 仮道管長への影響
樹冠率50%およびコントロールの個体の胸高部位では,樹冠率調整後の晩材 仮道管長は処理前に比べ, ほとんどかわらないかあるいはわずかに短くなった.
一方, 樹冠率 30%の個体では, 仮道管長は処理前に比べ明らかに短くなった.
このような傾向は, 極端に樹冠量を減少させたスギ樹幹胸高部位においても認 められている(久保, 1985). したがって カラマツ樹幹胸高部位においても
ある. 一方, 樹幹上部では, 樹冠率調整後の仮道管長は, 処理前に比べわずか にt首加する傾向が認められるが, 大差はなかった.
以上のことから, 容積密度数の場合と同様に, 晩材仮道管への影響は樹冠率 の調整程度すなわち葉量除去率と樹幹内の高さ部位によって異なると推定さ れた.
6.
4. 要 約
前章に引き続き, 森林保育が木材の性質におよぼす影響を明らかにすること を目的に, ここでは, 枝打ちを想定して, 樹冠量調整がカラマツの肥大成長,
容積密度数および晩材仮道管長へおよぽす影響について検討した. その結果,
以下のことが明らかになった.
( 1
)樹冠量の調整, すなわち枝打ちの影響は, 葉量除去の程度と樹幹内の部位によって異なる. とくに, 樹冠率30%まで葉量を除去するような強度の枝 打ちは, JJ旬高部位において肥大成長, 容積密度数, 晩材仮道管長ともに著しい 影響が認められた.
第7章 総合考察
本研究では, 今後ともわが国の林業・林産業にとってきわめて重要な樹種と 位置づけられるスギ, ヒノキ, カラマツの針葉樹造林木を対象に, 林木の生産 悠理と連携した木材の材質管理システムの確立を目標に, 木材の基礎的性質の バラツキについて研究をおこなった. 本章では, 一連の実験から得られた知見 をもとに, 木材性質のバラツキに関して総合的に考察した.
近年, 林木の生産側においても, 木材の材質に関心がもたれ始めるようにな った. 本研究で得られたスギ品種に関する成果は, 木材利用を重視した品種の 選択や選抜育種をおこなう際に有益な情報となると考えられる. 例えば, スギ 材を構造部材として利用することを考えた場合, 強い材料を期待する場合には 比重(容積密度数 ) あるいは晩材率の高い品種を, 変形しにくい材料を志向す るときには仮道管が長い, あるいはミクロフィブリル傾角が小さい品種を, さ らに破壊までの仕事量が大きくて粘り強い木材を期待するときは, 比重が高く,
仮道管が短い, あるいはミクロフィブリル傾角が大きい品種を選択していけば よいであろう. また, 遺伝的形質の選抜に当たっては, 仮道管が長い仮道管が 長い品種に対しては比重が大きいものを, 比重が大きい品種に 対しては仮道管
が長いものを目指せば, 強くて変形しにくい材料 が生産できょう. いずれにせ よ, より使いやすい木材生産を目指すには, 容積密度数, 晩材率, 仮道管長,
ミクロフィブリル傾角を指標にした育種を推進する必要があろう.
第2章で, 林分が異なってもスギ品種の基礎的な木材性質のバラツキは極端 に大きくならないことを述べた. ここで, ここで, 参考までに, 西日本の各地 域の産地, 施業履歴の異なる林分(各品種13"-'14 林分対象)から得られた試 験木(各品種 42"-'77本 )の胸高部位の容積密度数の頻度分布を図7.1に示す.
"-' 6 7本)の成熟材における仮道管長の頻度分布を図7.2に示す. 第3章の結果 とほぼ同じ結果が得られた. すなわち, 林分が異なっても各品種の木材性質の 違いは明らかであり, しかもそのバラツキは品種を混みにした場合よりも小さ い. スギの材質のバラツキは大きく,取り扱いにくい材料であるといわれるが,
そのことへの対処を考えるうえで, この二つの図は示唆に富む. すなわち, 品 種名による品等区分など, スギ材の材質のバラツキに, 品種の概念を持ち込む ことにより, バラツキを管理することが可能となるであろう. そのためには,
品種名の整理をおこなうとともに, 今後とも品種ごとに木材性質のデータを充 実させ, 品種特性の把握を進める必要があり, また林木の生産する場面, 流通 を経て, 利用する場面まで品種名が保証されるようなシステムを構築すること も必要であろう.
第5章と第6章で, カラマツを対象に, 森林の保育が木材の性質におよぼす 影響について検討し, 間伐は年輪構造や晩材仮道管長に影響をおよぼすが, 容 積密度数や晩材率には影響をおよぼさないこと, 極端な枝打ちは, 容積密度数 や晩材率, 仮道管長の減少をもたらすが, 弱度の枝打ちはほとんど影響をおよ ぼさないことを示した. また, 図7. 1と図7.2は, 栄養繁殖により育成された 林分, すなわち遺伝的に均一な林分から得られた材のバラツキは, 遺伝的に不 均一な林分のバラツキ比べ, 地域, 施業履歴が異なっても小さいことを示して いる. すなわち, 遺伝的な要因による木材の性質のバラツキへの影響は, 森林 保育による影響に比べると, きわめて大きいこといえる. したがって,
林木の生産側が, 木材利用側から強く求められているバラツキの少ない材の供 給に応えるためには, 現在, 実生苗による生産がおこなわれているヒノキ, カ ラマツ材のバラツキを減らす方策として, 栄養繁殖によるヒノキ, カラマツ林 の育成が考えられよう. 栄養繁殖を用いた増殖法の確立が木材利用側からも大 いに期待されるところである. スギでは, 品種ごとに森林保育が木材性質へお
話ぞ
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30
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容積密度数 (kg/m3)
図7.1
胸高成熟材部におけるスギおよびスギ品種の容積密度数のバラツキ
40
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晩材仮道管長
図7.2 胸高成熟材部におけるスギおよびスギ品種の晩材仮道管長のバラツキ
り均一な材の生産が可能になるであろう.
従来, 年輪幅が密度ひいては力学的性質と密接な関係にあるとされ, 木材材 質指標として用いられてきた. しかしこの関係には, 樹種, 品種, 未成熟材と 成熟材, さらには個体聞の影響が考慮されてなく, それらの影響を踏まえたう えで, 両者の関係を再度明らかにするべきであるとされている. 本研究では,
品種内では密度と年輪幅との問に相関を認める品種も存在したものの, 品種が 混在した場合のスギ, ヒノキ, カラマツのいずれの成熟材部において比重や容 積密度数と年輪幅との間には相関関係が認められなかった. すなわち, 密度や 力学的性質のバラツキ管理には年輪1隔を指標として使用することは難しいこ と明らかになった. 今後は肥大成長や年輪l隔を意識しない林木の生産と材の利 用も考えられよう.
謝 辞
本研究の遂行ならびに論文の作成にあたり, 終始変わらぬご指導と激励を賜 った九州大学農学部教授 大熊幹章博士, ならびに同助教授小田一幸博士に対 し, また, 本研究の着手と遂行にあたり, 多くのご教授を賜った元九州大学農 学部教授(現九州大学名誉教授)堤 蕎一博士に対し, 衷心より謝意を表しま す. また, 多くのご助言と激励を賜った元九州大学農学部教授(現九州大学名 誉教授)汰木達郎博士, 同柿原道喜博士, 元鹿児島大学教授 長 正道博士,
九州大学教授堺 正紘博士, 同今回盛夫博士, 同小川 滋博士に深く感謝しま す. 実験および調査の際, 多くのご援助をいただいた九州大学農学部附属演習 林助教授岡野哲郎博士, 同演習林職員中井武司専門職員, 同新妻二郎技官, 同 馬決tJ哲也技官, 同大崎繁技官, 同故椎葉辰男技官はじめ演習林職員の方々, 木 材理学講座平成元年度卒業生生古賀英明氏, 同平成6年度卒業生藤本高明氏お よびその他木材理学講座の皆さんに感謝します. 試験材の収集の際, 特別のご 配慮いただいた愛媛大学, 九州大学, 日田林工, 宮崎大学, 鹿児島大学の各演 習林の方々に深く感謝します.
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