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スキー実習時の疲労について

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(1)

スキー実習時の疲労について

著者 渡辺 政史, 田村 義男, 五明 公男, 松本 三紀雄

出版者 法政大学体育研究センター

雑誌名 法政大学体育研究センター紀要

巻 6

ページ 137‑146

発行年 1988‑03‑22

URL http://doi.org/10.15002/00009010

(2)

スキー実習時の疲労について

渡辺政史・田村義男 五明公男・松本三紀雄

はじめに

我が国のスキー人口は近年増加をたどり、千数百万人にのぼるといわれている。スキーは日本の冬 季スポーツとして年齢、性Bllをとわず自然と親しみながらレクリエーションとしても、また体育スポ ーツとしても効果の高いものである。しかしながらその活動に際し、安全』性の管理や疲労対策等の面 で問題点は少なくない。この公開講座に際して参加者の心身の状態の変化を疲労の面から調査し、検 討・を加えて今後のスキー指導上の資料とするものである。

方法 方法

期日昭和62年3月7日~12月

場所長野県二化安曇郡白馬村八方、法政大学白馬111荘(宿泊)、八方尾根スキー場(実技講習)

対象法政大学公開講座、第6回スキースクール参】Ⅱ]者で男性20名、女‘性18名。年齢は19才~43才 測定項目

1)血圧

竹井機器制の水銀式血圧計を用い、聴診15kにより坐位で測定をおこなった。

2)フリッカー値

竹井機器制フリッカー値iillI定器I型を用い、一度の測定で5回の測定をおこないその平均値を

フリッカー値とした。

3)唾液pH

東洋濾紙fl;I「東洋pH試験紙B・T.B.(pH6.2~78)」を)|】いI唾液法によりおこなった。

4)日本産業衛生協会産業疲労研究委員会資料に基づいて、「自覚的症状調査表」(図1)と「身

体疲労部位調査表」(図2)の記入をおこなわせた。

-137-

(3)

年齢

氏名 歳’性別男・女

日時:昭和年月に'鞭時分

|唾液pH

次に示すような症状があったら項目の○の中に○印を、ない場合は×印をつけて下さい。

図l自覚的症状調査表

-138-

A B C

1)頭が重い 1)頭がぼんやりする ●●●00O●●● ○ 頭がのぼせる………○

1)目がつかれる ………○

目がちらちらする…………○

目がぼ〉しやりする…………○

2)頭がいたい 2)考えがまとまらない ●●●●●●

考えるのがいやになる ●●●

○ 2)目がしぶい………○

目がかわく………○

3)全身がだるい 3)1人でいたい………○

話をするのがいやになる ●●●

3)動作がぎこちなくなる ●●●●●●

動r酌jiまちがったりする ●●●

4)体のどこかがだるい 体のどこかがいたい 体のどこかのすじがつる

4)いらいらする ●●●●●●●■DC●●●●● ○ 4)足もとが

たよりない………○

ふらつく………○

5)肩がこる 5)ねむくなる………○ 5)あじがかわる ●●●●●●●●□●●●●●●

臭いがはなにつく ●●●●●●●●●

6)いき苦しい むなぐるしい

6)気がちる………○ 6)めまいがする………○

7)足がだるい 7)物事に熱1,になれプコ:い……○ 7)まぶたやその他の筋がびく びくする………○

8)つばが出ない [1がねばる 口がかわく

8)一寸した事が

思い出せない………○

どわすれする………○

8)耳が遠くなる………○

耳なりがする.……・……・○

9)あくびが出る 9)する事に自信力珈I、.・・・・・・・.○ する事にまちがいが多くな

る・…・…………・…………○

9)手足がふるえる…………○

10)ひや汗が出る 10)物事が気にかかる □●●●●●●●● ○ 物事が心配になる………○

10)きちんとしていられない ●●●

その他

(4)

図2身体疲労部位調査表

-139-

氏名 生年月日明・犬・昭年月日生飯 性別男・女

購留前(後)で..・・・つかれ、こり、Mみ、だるさ等のある部位にO印をつけて下さい.

月日 月日 月日

創引

タヮ

月日 月日 月日

寛月

うう

(5)

本公開講座の6日間の講習日程を表1に示した。

表1講習日程 川1(11腿)

3川7Ⅱ(上)

3)1811(H)

3ノ]9Ⅱ(川)

3川1011(火)

3川1111(水)

3ノ]1211体)

これに基づいて3月7日夕刻の現地到着から12日の解散までは次の日課でおこなわれた。

7:00起床 8:00~9:00朝食

10:00~12:00午前実技講習 12:00~13:00昼食

13:00~15:00午後実技講習 16:00~18:00入浴

18:00~19:00夕食 19:00~20:00入浴

20:00~21:00ミーティング 22:00消燈

今回の4項目の測定は実技講習前の朝と講習後の夕刻と1日に2回おこなった。朝の測定は起床か ら朝食までの7時から8時の間でおこない、夕刻の測定は午後の実技講習終了後、帰荘してから夕食 までの16時から18時の間でおこなった。なお夕刻の測定については実技講習による疲労を超える目的 から、帰荘後できるだけ早い時間にかつ入浴前におこなうようにした。

また本公開講座の参加者はスキー技術レベルにおいて初心者から上級者までと広範囲にわたってお り、実技講習もそのレベルによって4クラスに分けておこなった。従ってクラスにより講習内容もま たそれにともなう疲労の出現も異ってくると考えられる。

4クラスへのクラス分けは初めてスキーをおこなおうとする者を除き、スキー経験者は全員、実技 滑走によりおこない、その技術レベルおよび講習内容は以下の通りである。

1班初めてスキーを経験する初心者で、歩行、登行にはじまり、プルークボーゲン、ボーゲン の連続回転、正しい脚部動作の習得に重点がおかれた。

-140-

月日(曜) 午 __⑪グーlE1Ij 午後 3月7日(土)

3月8日(日)

3月9日()])

3月10日(火)

3月11日、<)

法政大学体育館前午前8:30集合(時間厳守)9:00出発

講習(2時間) 講習(2時間)

技能検定 自由滑走

ⅡlⅡ 89 ミーティング

3月12日(木) 朝食後、宿舎で解散

(6)

2班プルーク・ボーゲンからシュテム・シュビンゲンのおこなえる者で、lllllllおよび谷側への シュテム・シュビンゲンの連続ln1llixからパラレル・シュビンゲンの習得。

3班安定したシュテム・シュビンゲンをおこなえる者で、講習内容は山(ⅡI、谷111'1開きのシュテ ム・シュビンゲンの完成とより碓突なパラレル・シュビンゲンの習得。

4班パラレル・シュビンゲンのおこなえる者で、完成したパラレル・シュビンゲンとウェーデ ルンの習得。

また参加者の中には全日程を受講しなかった者も男女各2名づつあったが、結果の整理にあたって はすべての111(11定を受けた者に限っておこなった。その人数柵成は1班が男性1名、女性3名、2班は 男性2名、女性8名、3班は男性5名、女性4名、4班はり)性10名、女性1名で合計男性18名、女性

16名であった。

結果

測定をはじめた7日夕刻から12日の朝までのⅢE、フリッカー(lii、唾液pHの11リ1と夕刻のjIll定結果

の平均値と標準偏差を男女別に各々図3,図4,図5に示した。

血圧j11ll定では最も高い(直を示した者は21才の男性で、9}]夕刻のIi11ll定で最高、l圧140mmHg、最 低血圧で90mmHgを記録したが、全jlll定の平均では最高l(Ⅱ圧130mmHg(±9.9)、最低血圧86 mmHg(士11.1)であった。低い値を示した者は女性に多く、股高血圧がlOOmmHgを割る値を示

した者はり)性5名、女性10名みられた。ただし、一人について6日間で計10回のillll定を行なっている が、平均で100mmHgを割ったのは21才の女性で平均95mmHg(士6.9)の1名で、他は一時的な 記録であり、平均で100mmHgを下まわった者は他にはみられなかった。6川}'1のillll定結果を時系

列でみると、個人個人においては変化はみられるものの、各男女の平均においては有意な変化は認め

(男性) (女性)

-.-←:最高血圧 -゜-←:最低血圧

→-.-:最高血圧 -゜-゜‐:最低血圧 0m

ilil l-H-l+H-I-H

l-I+トH+H-}

}+l-l-H+|+l

}、H+H+}-H

0夕朝夕朝夕朝夕朝夕W18夕馴夕朝夕朝夕朝夕 7日8日9日10日11日12日7日8日9日10日IIB

区13ml 圧

一一一一一

12日

-141-

(7)

(女性)

(リ)性)

501- 50

H+|+|+I-H

H十I-I-I+1-H

イ9 401-

301-

291- 20

0夕馴夕W1夕W1夕馴夕9110夕W1夕W1夕朝夕91夕鮒一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一●------------------ ̄--- ̄-- ̄ ̄ ̄ ̄

7日8日9[110日11日12日7日8日9日10日11日12日

図4フリッカーイ1111

(リ)性) (女性)

lH-HJ'州

。:P《.“6

H-l-トトFl<}-トI

●8P《、05

O夕iI1夕朝夕朝夕W1夕朝8夕W1夕W1夕Wl夕W1夕------------------------------------- ̄-- ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

7日8日.9日10日11日12日7日8日9日10日IIB

図51唾液pH

一日-2 期--

られず、したがって6[lllllの身体hIi動に伴う1,1圧変化にljlJしての一定の傾向はみられなかった。

フリッカー値は精ネIl1的、身体的疲労にともなってその{iiiが変わることから、実技講稗の前後で、ま た'」を追うごとにそこに差がみられるものと予想された。しかし、今|IDIのilIII定では有意な差は認めら れず、スキーの実技識習における疲労はフリッカー値にはみられなかった。

l唾液pHでは、リ)女ともpH1画が11リ]に小さく、夕刻に大きい傾向を示している。有意な差が認めら

れたのは、ソj性では11}]の11リ1と夕刻(-03)、l11ZIの夕刻と12日のjlリ1(0.3)、女性では10}三1の朝と夕 刻(-03)、そjIUこ101三1の夕刻と11日のjlリI(0.3)の'111で、各々危険率5%であった。

また[lを追うごとにド降傾|可がみられる。81=111リ1と121三1朝との差はり)性0.2,女#liO3であった。

検定の結采、女性に危険率5%で有意な差が認められた。

リ)性において有意な差は認められなかったものの、[|を追うごとにおおむね下降傾lrTIを示すのは、

身体活動にともなう疲労の蓄積によるものと思われる。Ⅱ変化ではこれとは逆に朝よりも身体活動後

の夕刻時にpHは大きな値を示している。これは夕刻のiillll定が身体活動後まもないことから、疲労や

発汗といった化体の物Ill1化学的状態の変化によるホメオスターシスの不均衡状態(水素イオンの消失)

-142-

(8)

にともなう一時的な反応ではないかと思われる。

'znB

ilJlMii術1

図611党的症状(リ)性)

==A-具体的症状

go 的症状

的感覚的症状 ZZB-精神

Z二一IC-神 80

70

00 65

40

30

20

00

図71二1覚的症状(女性)

-143-

7日

囲夕 8日

朗夕 g曰

朗夕 10日

囲夕 11曰

12臼

80 70

60

50

40

30

20

10 0

三三A-具体的症状 皿B-精神的症状 [二.c-神経的感覚的症状

7日

朝夕 8日

朗夕 9日

朝夕 10曰

朝夕 11曰

12曰

ZZB-精神 ヒコc-神経

(9)

Jjjj 面面面而背背背背くくくく部肢幹肢頭上躯下霊園圏曰 言頭部(前面)

□上肢(前面)

Jj

Ⅲ下肢(前面 50

40

30

防翻:期・蛆・叩・叩・叩・血・叩・皿・叩・叩・皿・叩・器・叩・皿・叩・叩・器’一一一一§

I I

20 『’’-1‐‐’一二、》(》へ((》而叩ⅢⅢⅢⅢⅢⅢ

三s

ili iii

謙 iii

10

S54321 o0 Un》0000

塵頭部(背面)

図上肢(背面)

□鯛幹(背面)

回下肢(背面)

咽制I(、、

]上肢(前面 囲斡

I (

§

●■●●●●●●●●●●●●●●●●●●●▲ lB■●●●●●●●●●●●●●●●0●●● ●●●●●●●●●●●●■●●●●e●●■二

図9身体的疲労部位(女性)

-144-

■●●■

: :

'。。’

 ̄チゴ0 1゜みろI :、殿

oロクダジグゲグ・一 夕タグ〃

●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●● ■●●●●●●。●●●●●●●c●

7日

朝夕 BB

朝夕 gB

朝夕 10曰

朗夕 11曰

12曰

ロゴクググググググ

.・少ググググググク

■●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●|

|●●●●●●●●●●●■●●●DC●●●●D

P●●●●●●●■●●●●□●●●●□●■●一 》弱認認卒率0率0函・》・函・率・》・叩0函・叩。函・串

●●●●●●●●●●●●■●●●●

。●●00●●●●●●00■●●●●

●●●●●●●●●00●●●●●●

1- ●●●▲

。」沙ゾグ5Pr ョ■ ●●●

●●●・ 〃瀞尊竿野.苧い》・函・》。

因躯幹(前面

、下肢(前面

ザ〉o釦f函

扉銭・か。叡知へ・な”八鍬・》》》》志・蝦

汐額鑓溌鏡》露滝野畷輝密先鐸辮〉叩霞隅畷》〒”0m・叩・叩・”0叩・函・叩・叩・》・”om0函・“。”・叩・”Cl

7臼

朝夕 BB

覇夕 gB

囲夕 10曰

朝夕 11曰

12曰

■■■■

■■■■

蕊守封・・鰯・轟謎・藷・魂、範・窓・零N八擬寿・・鋒蕊驚鳶・藝昨.露・審談〒魂・鋪・認・麓・認・韓・詫允・銘.

心今。》灸尖錦へ〈〈・茎寵瀞透瀦・・・翰診函啄・一

B●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●DC●●●●●●●●●■●●00●0●●●● 巳●●0●■●●●●●●●●●●■□、■■p0p■

鴎豊八銭一心。一等勢〃鐸労窕・で〃曇・も急L一・池・炉

ⅡⅦ

笠・純八・》 ザ●●中●●Cr● ⑥①pdD●▲■■●■ 窕八かくみ

の●

評・の外・慨叩射・TLCで士グー。

尹戸一、●

●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●00●0●● ●●●●●●●■●●●●e●●■

●●

70

60

50

40

2 0

10

図8身体的疲労部位(男'lLli)

Eヨ

=頭部(前面)

□上肢(前面)

因鯛幹(前面)

Ⅲ下肢(前面)

(10)

つぎに「自覚症状調査表」および「身体疲労部位調査表」の結果は各男女別に図6,図7,図8,

図9に示した。これらの図は男性の18名、女性の16名の各々の訴え数の合計を図にしたものである。

「自覚的症状調査表」の結果では、男女とも本講座開始'三1の7日夕刻に大きな値を示している。

これは東京より現地までのバスによる移動の疲労がこのような結果として表われたものと思われる。

6日間を通じてみると男'性とも10日にピークを迎え、111三|には少なくなっている。これは環境に 対する馴れの効果が4日目にして表われたものと推察される。

また、いくつかの性差がみられる。まずはじめには女性の総訴え数が男性の1.5倍強みられる。

精神症状において男性では実技講習後の増加と夜間休養による回復が顕著であるのに対し、女性には そのような傾向はみられない。身体的症状の割合が最も多いのは男女ともに同じであるが、その次に は男性では精神的症状が優位であるのに対して、女性では神経感覚的症状が多く、精神的症状はきわ めて少ない。

次に「身体疲労部位調査表」では、これも同様にバスでの秘動による疲労と思われる訴えが71]夕 刻にみられる。また、総訴え数でも女性は男性の倍以上の値を示している。61三|間の変動ではり)女と も同様に増加傾向にあるが、身体区分ごとにみると性異が表われている。男性の場合、疲労部位は下 肢に劣らぬ上|技の訴え数とり)」性の倍以上の躯幹の訴えがみられる。

以上ふたつの質問紙の結果から、ひとつには時系列における疲労の表われ方、今ひとつには性差と いった生体における精ネlI1的、身体的な質的差異を疲労に対する症状の表われ方の相異として捉えるこ とができた。

考察

長期間におよぶスキー指導においては、より多くの他種目の指導の場合とは異なり、考慮しなけれ ばならないいくつかの事柄があげられる。スキーという種目は、まず第一にスキー滑走の可能な環境

、施設のある場所への長時間の移動がある。つぎにはきびしい自然環境、そして現地滞在の生活等ス キー以外のmにおいて精ネIl1的・身体的に負担の加わる種目である。

今回のiH'1定では、1)現地への移動にともなう疲労、2)実技講習による疲労の表われ方('三|変化 と期間変化)、3)疲労の性差による相異等において、ひとつの傾向を得ることができた。

各技術レベルにおける指導内容の違いによる疲労については、各回は各クラスの性差の構成が異な り検討を加えるには致らなかった。

このことははじめとして、スキー指導における疲労の問題はまだ多いが、それらについては今後の 課題としていきたい。

-145-

(11)

参考文献

大島正光「疲労の研究」同文書院 中西光雄「体育生理学実験」技術書院 体育科教育委員会編「体育学実験・演習概説」

1)

2)

3)

4)

大修館書店

「産業疲労検査の方法」 同文書院 日本産業衛生協会、産業疲労委員会

-146-

参照

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