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『英語学:現代英語をより深く知るために─世界共通語の諸相と未来─』

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Academic year: 2021

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本書は、『英語学:現代英語をより深く知るために─現代英語の諸相と英語 学術語解説─』(浪漫書房、2008 年)に、章構成の見直し、新たな章の追加、

情報のアップデートといった大幅な加筆・修正を加えたものであり、世界共通 語としての地位を確立しつつある英語という言語について「複合的な視点」か ら学ぶために有益な情報を、難解な用語を多用することなく紹介、解説する入 門書である。しかし、本書はいわゆる「英語学の入門書」とは一線を画すると 言えるだろう。言語学的問題にとどまらず、英語とその背後にある歴史、文化、

文学などを包摂するより広範な意味での「英語学」であり、これらの様々な視 点を通して学ぶことで「現代英語をより深く知る」ことができると本書は説く。

それゆえ、その射程は幅広く、現代英語の重要な特徴のひとつである多様性、

多文化性という観点から、イギリスのユニオンジャックが内包する英語の成り 立ちからその多民族性、現代のポップ・カルチャーに至るまでを網羅的に紹介 する(主に1章から 6 章)。多岐にわたるテーマを概観することで、読者は英 語という言語について一つ、あるいは複数の、これまで当たり前として見過ご していた「何か」を見つけることができるのではないだろうか。本書は、グロー バルな社会を生きていく上で避けて通ることのできない英語という言語につい て、関心を持ち、疑問を抱き、考え、自分なりの発見と答えを見つけるきっか

濱 田 里 美 菊池清明編

『英語学:現代英語をより深く知るために─世界共通語の諸相と未来─』

(春風社、2016 年)

〈書評〉

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けを与えてくれる。

主となる読者対象は、専門課程で英語学、英語史、英米文学を学ぼうとする 学部学生である。各専門領域に踏み出す前に必要となる基礎的知識について、

専門的な用語は英語と日本語の両方で表記し、図や表、写真を交えた理解しや すい文章で説明を加える。本書の核となるのは、イントロダクションの冒頭で 提示される、現代英語を理解する上で重要な特質─三つの長所(豊かな多く の借用語、文法上の性の喪失、格の消失)と二つの短所(つづり字と発音のずれ、

慣用表現の多さ)─である。それに続く三十二の章は、それぞれこれら五つ の特質に関する項目を中心に、また、これらを「複合的な視点」からより深く 理解できるように、幅広いトピックを扱っている。紙幅の関係上、すべての章 について触れることはできないが、主なトピックとしては英語学の基礎的知 識(Analogy(類推作用)を扱った 7 章やGreat Vowel Shift(大母音推移)を 紹介する 8 章、音声学の基本を紹介する 15 章など)、現代英語についての議論

(Politically Correct Termsを扱う 12 章や 14 章、アメリカ英語とイギリス英語 を論じる 16 章や 23 章など)、英語史の基礎知識(19 章、24 章など)、英語の 地名・人名の背景(27 章、28 章、29 章)、さらには、世界最大の辞書と言わ れるThe Oxford English Dictionary(OED)や聖書の変遷に見る英語の諸相(17 章、18 章、20 章、22 章)などがある。各章のトピックは相互に関係し合い、

ひとつのテーマが複数の分野にまたがることも少なくない。ひとつひとつの章 は平易な文章による説明、解説で短く簡潔にまとめられているが、より専門性 の高い情報や詳細は注として提示されており、それらは読者の発展的学習への 足がかりとなるだろう。

なお、巻末に付されている参考書目も、その後の発展的学習や研究に非常に 有益である。本文中でも度々引用され、特に「大学院進学希望者には必携の書」

として紹介されているAlbert C. Baugh and Thomas CableのA History of the

English Languageを始めとして、本書で扱う幅広い領域について、入門書から

より専門性の高いものまで、三十を超える書籍が紹介されている。本書を通し て得た発見、興味の種をより深く掘り下げ、自分だけの学びにつなげていく際 の指針としての活用が期待される。

本書を通して得られる知識は、学ぶことが当たり前となった世界共通語とし ての英語について、読者の意識を「使える」から「理解して使う」へと変化さ せるだろう。英語を使えることが当たり前、という認識が今後さらに広まるこ とが予想される中で、こういった「一歩進んだ理解」こそが求められるのでは

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ないだろうか。そのきっかけを与え、その先へと進むための手助けとなること が本書の最大の狙いである。

参照

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