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機能性官能基集積型ヘテロ金属錯体の合成・構造お よびその物性

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

機能性官能基集積型ヘテロ金属錯体の合成・構造お よびその物性

池上, 篤志

http://hdl.handle.net/2324/1441193

出版情報:Kyushu University, 2013, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)

(2)

(別紙様式2)

論 文 要 旨 甲・乙 池上 篤志

論文題名 Synthesis, Structure, and Chemical Properties of Heterometallic Complexes Appending Multiple Functional Groups

(和題:機能性官能基集積型ヘテロ金属錯体の合成・構造およびその物性)

多核錯体における架橋配位子の置換反応は、架橋部位を利用した構造体の物性制御や多機能化、さらには構造体の 骨格改変などに利用できるため数多くの研究が行われている。しかし、これらの反応においては多点での結合の解離 と形成を必要とするため、単座配位子の置換反応と比べ反応の制御が難しく、化合物の骨格構造の崩壊や無秩序に配 位子が置換した構造体の生成がしばしば見られる。このような観点から、多核錯体をより精密に設計するための戦略 や汎用性の高い置換反応の確立が求められている。本研究では、多核錯体を構成する金属イオンに置換活性度が大き く異なる複数の金属イオンを用いることで、架橋配位子の置換反応を位置選択的に行う手法を開発した。

第一部では、ヘテロ金属多核錯体における架橋カルボン酸イオンの置換反応について、カルボン酸イオンの汎用性 を調べるために、電子供与性のピバル酸(pKa5.01)および電子吸引性のジクロロ酢酸(pKa1.48)を用いた置換反 応について実験を行った。その結果、2種類のカルボン酸の両方において、多核錯体の4つの架橋カルボン酸イオンが 位置選択的に置換できることを明らかにした。このヘテロ金属多核錯体では、置換反応に用いる架橋配位子に機能性 カルボン酸を用いることで、多核錯体への官能基集積化が可能である。そこで次に、光物性が知られているピレンカ ルボン酸により架橋配位子の置換反応を行い、4つのピレンユニットが修飾された多核錯体の合成を行った。ピレンカ ルボン酸は、先に用いた2種類のカルボン酸に比べ立体的に嵩高い構造であるが同様に位置選択的な置換反応が進行し、

目的とするピレン集積体の合成に成功した。得られたピレン集積体の蛍光スペクトルを測定したところ、ピレンカル ボン酸に比べ98%の発光強度の減少が確認された。この結果よりヘテロ金属多核錯体はピレンカルボン酸の優れたク エンチャーとして働くことが

示された。このピレン集積体は さらなる架橋配位子の置換反 応により、ピレンカルボン酸を 多核錯体の骨格構造から脱離 させピレン部位由来の蛍光を 回復させることができるため、

配位子置換反応をトリガーと した蛍光センサーとしての利 用が期待できる(Figure 1)

Figure 1. 架橋配位子の置換反応によるピレンカルボン酸の蛍光回復挙動の模式図

(3)

第二部では、架橋カルボン酸イオンの置換反 応を利用し、酸化還元活性なフェロセンおよび ルテノセン集積体の合成を行った。分子内に複 数の酸化還元中心を有する化合物には、それら の間で静電的あるいは電子的な相互作用が働 き、混合原子価状態を示すものが知られている。

ヘテロ金属多核錯体は、分子内のRu2Oユニッ トがフェロセニル基と近い酸化還元電位を有 するため、Ru2Oユニットを介したフェロセニ ル基間の電子的相互作用が期待される。さらに、

Ru2Oユニットの酸化還元電位はRuイオンのタ ーミナル配位子(L)によって調節可能なため、

その種類を変えることでフェロセニル基間 の電子的な相互作用が制御できると考えら

れる。Ruイオンのターミナル配位子にはpKaの異なる5つのピリジン誘導体を用いた(Figure 2)。種々のフェロセン集積 体は微分パルスボルタンメトリーの結果、フェロセニル基の酸化ピークがピリジル配位子の種類によってそれぞれシ フトした混合原子価状態を示した。すなわち、ターミナル配位子の種類を変えることで、フェロセニル基間の相互作 用の大きさが変化することが明らかになった。フェロセニル基とRu2Oユニットの酸化還元電位が近い場合、フェロセ ニル基の酸化ピークがより大きく分裂したことから、Ru2Oユニットを介した電子的な相互作用がより強くなっている と考えられる。

Mgイオンのターミナル配位子に水分子を持つフェロセン集積体とルテノセン集積体は、2つのユニット間の水素結 合により二量体構造を形成することが、X線結晶構造解析により明らかになった(Figure 3)。この二量体構造はDOSY 定の結果より、溶液中においてもその構造を維持していることが示唆されている。さらにメタロセン集積体の二量体 は微分パルスボルタンメトリーの結果からも支持されており、Ru2Oユニットの酸化に由来するピークが2つに分裂した 様子が観測された。これは二量体の中の2つのRu2Oユニット間で相互作用が働き、酸化される過程においてRu2Oユニ ットが混合原子価状態を発現しているためだと考えられる。この2つに分裂した酸化ピークは、溶液中にメタノールを 添加しながら測定すると次第に1つのピークに変化していった。この挙動はメタノールの添加に伴い、溶液中の二量体 が単量体へと解離するため、Ru2Oユニット間で混合原子価状態を示さなくなったことを反映していると推察される。

また、ヘテロ金属多核錯体にメタロセンを集積させていない化合物ではRu2Oユニットの酸化ピークが分裂する様子は 見られなかった。多核錯体に13つの

フェロセニル基を集積化させた化合 物では、4つ集積化させた化合物に比 べ、ピークの分裂幅が小さくなったこ とから、メタロセンの存在がRu2O ニット間の相互作用において重要な 役割を果たしていると考えられる。こ のようなメタロセンの集積化により 誘起される混合原子価状態の安定化 は前例のないものであり、その機構の 解明や新たな相互作用の伝達法とし て応用されることが期待される。

Figure 2. 種々のピリジル配位子を有するフェロセン集積体の構造お

よび微分パルスボルタモグラム(DPV)

Figure 3. 多点水素結合により二量化したフェロセン集積体およびルテノセン

集積体のX線結晶構造

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