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児童図書館員の養成に関する課題(2)~2000年以降を中心に~

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(1)

はじめに

本稿は,日本図書館協会による児童図書館員養成専門講座を手がかりに,児童図書館員の養成,

児童サービスの課題の検討を目的とする。本稿の対象期である

2000

年以降は,子ども,読書,図 書館を取り巻く状況が様変わりしたからといえる。つまり子ども読書年の

2000

11

月にまず杉並 区でブックスタートが始まり,「子どもの読書活動推進に関する法律」,「子ども読書日」(4月

23

日)

が制定された。学校図書館の整備や充実を求める運動の高まり,生涯学習振興法の制定によるボラ ンティアの推進(読み聞かせボランティアの増加)等が続いた。国レベルでの子どもの読書に対す る問題意識の高まりである。こうした変化は本稿の課題に関わって,どのような影響を及ぼしたの だろうか。日本図書館協会による児童図書館員養成講座は

2018

年で

37

年の歴史を持つ。講座の受 講資格として,「司書有資格者で公共図書館職員として

5

年間以上の経験,児童サービス担当を

2

年間以上経験」を掲げている,個人のキャリアアップというよりはむしろ児童サービスそのものの 充実を目指すものである。養成講座のカリキュラムは児童サービスのあるべき姿・中身を表してお り,担当講師の言葉からは受講生や児童サービスに対する想い,受講生の感想からはそれぞれの立 場,課題,問題点等をうかがい知ることが出来る。子どもと本をつなぐことはどのようなことなの か,何が必要なのか。本論の構成は次の通りである,第一にカリキュラム,第二に講座担当者のメッ セージ,第三に受講生の感想をたどりながら,児童図書館員養成や児童サービスの課題について整 理したい。

1.カリキュラム

養成講座のカリキュラム(科目構成)は,児童図書資料論,児童サービスの実際,子ども理解,

児童サービスの実務的側面(関連機関との連携,協力,交流)を軸としている。

まず基本的児童書を読み把握することで選択する眼,評価基準が養われる。次にそれを伝える,

納得させるための書評の書き方を身に付けることが求められる。2000年

11

月に東京都杉並区で

児童図書館員の養成に関する課題(2)

~ 2000 年以降を中心に~

坂内 夏子

(2)

ブックスタートが実験的に開始され,これを契機に乳幼児サービスに関する科目が講座で始まっ た。児童サービスの対象は

0

歳からとなるが,実際にはマタニティの段階からヤングアダルト層ま でと幅広い。子どもと本をつなぐ方法への関心も高まりを見せる中,ストーリーテリングやブック トーク,科学あそび,図書館利用に障害をもつ子どもへのサービス等,実践的課題が豊富である。

21

回(2001年)

前期 児童図書館 子どもの本と著作権 児童図書と出版流通 障害児サービスの現状と課題  乳幼児サービス・ブックスタート 児童図書館の運営・年間計画(千葉市立中央図書館) 

建物設備に見る児童奉仕 条例・規則・規程に見る児童奉仕 子どもの権利条約と図書館 後期 児童図書資料 児童文学 昔話 科学の本 絵本 児童奉仕の実際 書評 レファレンス 

ストーリーテリング 蔵書構成 研修の自己評価とまとめ 第

22

回(2002年)

前期 児童図書館 子どもの本と著作権 児童図書館員にのぞむこと 児童図書と出版流通 乳 幼児サービス・ブックスタート 児童図書館の運営・年間計画(羽村市図書館) 建物設 備に見る児童奉仕 条例・規則・規程に見る児童奉仕 子どもの権利条約と図書館 後期 児童図書資料 日本の児童文学 科学の本(コンピュータ検索)昔話 絵本 児童奉仕の

実際 書評 選書・蔵書構成 レファレンス ストーリーテリング 研修の自己評価とま とめ

23

回(2003年)

前期 児童図書館 子どもの本と著作権 児童図書館員に望むこと 児童図書と出版流通 乳幼 児サービス・ブックスタート 児童図書館の運営・年間計画 建物設備に見る児童奉仕  条例・規則・規程に見る児童奉仕 子どもの権利条約と図書館

後期 児童図書資料 日本の児童文学 絵本 幼い子の文学 児童奉仕の実際 書評 選書・蔵 書構成 ストーリーテリング ブックトーク レファレンス 研修の自己評価とまとめ 第

24

回(2004年)

前期 児童図書館 子どもの本と著作権 児童図書館員に望むこと 本と出版流通 建物設備に 見る児童奉仕 乳幼児サービス・ブックスタート 児童図書館の運営・年間計画 条例・

規則・規程に見る児童奉仕 子どもの権利条約と図書館

後期 児童図書資料 日本の児童文学 外国の児童文学 絵本 児童奉仕の実際 書評 ストー リーテリング 選書・蔵書構成 ブックトーク レファレンス 研修の自己評価とまとめ 第

25

回(2005年)

前期 児童奉仕の運営・年間計画 児童図書館員に望むこと 印刷博物館見学 本と出版流通  建物設備に見る児童奉仕 子どもの本と著作権 乳幼児サービス・ブックスタート 条 例・規則・規程に見る児童奉仕

(3)

後期 児童図書資料 日本の児童文学 外国の児童文学 絵本児童奉仕の実際 書評 選書・蔵 書構成 ブックトーク ストーリーテリング レファレンス 研修の自己評価とまとめ 第

26

回(2006年)

前期 児童図書館員に望むこと 子どもの本と著作権 障害のある子どもたちへのサービス 知 識の本の編集 建物設備に見る児童奉仕 児童奉仕の運営・年間計画 乳幼児と絵本 国 際子ども図書館見学

後期 児童奉仕の実際 本の紹介文を書く ストーリーテリング 選書・蔵書構成 ブックトー ク 児童資料 日本の児童文学 外国の児童文学 絵本 研修の自己評価とまとめ 第

27

回(2007年)

前期 児童図書館員という仕事 知識の本の編集 児童奉仕の運営・年間計画 子どもの本の紹 介の実演 乳幼児と絵本 乳幼児サービスの実際 図書館サービスと著作権 障害のある 子どもたちへのサービス 子どものためのスペース

後期 児童資料 絵本 日本の児童文学 科学の本と科学あそび 外国の児童文学 児童奉仕の 実際 選書・蔵書構成 ストーリーテリング レファレンス 東京都立多摩図書館 子ど もの本を紹介するーブックトークと解題― 研修の自己評価とまとめ

28

回(2008年)

前期 児童奉仕の運営・年間計画 乳幼児サービス 障害のある子どもたちへのサービス 知識 の本の編集 図書館サービスと著作権 図書館の魅せ方 ブックトークの実演 昔話の意 義 おはなしの実演

後期 児童資料 日本の児童文学 外国の児童文学 絵本 科学の本と科学あそび 児童奉仕の 実際 ストーリーテリング 選書・蔵書構成 ブックトーク レファレンス 研修の自己 評価とまとめ

29

回(2009年)

前期 児童奉仕の運営・年間計画 乳幼児サービス 障害のある子どもたちへのサービス 子ど もの文学の基本としての昔話 おはなしの実演 図書館の魅せ方 ブックトークの実演  知識の本の編集 図書館サービスと著作権

後期 児童資料 外国の児童文学 絵本 日本の児童文学 科学の本と科学あそび 児童奉仕の 実際 ストーリーテリング 選書・蔵書構成 ブックトーク レファレンス 研修の自己 評価とまとめ

30

回(2010年)

前期 児童奉仕の運営・年間計画 乳幼児サービス 障害のある子どもたちへのサービス 子ど もの文学の基礎としての昔話 おはなしの実演 図書館の魅せ方 ブックトークの実演  図書館サービスと著作権 児童図書(自然の本)の編集・出版

後期 児童資料 外国の児童文学 絵本 日本の児童文学 科学の本と科学あそび 児童奉仕の

(4)

実際 選書・蔵書構成 ストーリーテリング ブックトーク レファレンス 東京都立多 摩図書館 利用者の立場から児童図書館員に望むこと 研修の自己評価とまとめ

31

回(2011年)

前期 児童奉仕の運営・年間計画 乳幼児サービス 子どもの文学の基本としての昔話 おはな しの実演 図書館の魅せ方 ブックトークの実演 児童図書(自然の本)の編集・出版  メディアと子どもの発達

後期 ブックトーク レファレンス ストーリーテリング 障害のある子どもたちへのサービス  選書・蔵書構成 絵本 日本の児童文学 外国の児童文学 科学の本と科学あそび 研修 の自己評評価とまとめ

32

回(2012年)

前期 児童奉仕の運営・年間計画 乳幼児サービス 東京子ども図書館見学&松岡享子さんとの 懇談 おはなしの実演 図書館の魅せ方 ブックトークの実演 児童図書(自然の本)の 編集・出版 メディアと子どもの発達

後期 科学の本と科学あそび 外国の児童文学 レファレンス ストーリーテリング 日本の児 童文学 ブックトーク 絵本 選書・叢書構成 障害のある子どもたちへのサービス 研 修の自己評価とまとめ

33

回(2013年)

前期 児童奉仕の運営・年間計画 乳幼児サービス 子どもの文学の基本としての昔話 東京子 ども図書館内見学 図書館の魅せ方 ブックトークの実演 児童図書の編集・出版 メ ディアと子どもの発達 科学の本と科学あそび 外国の児童文学 日本の児童文学 ス トーリーテリング レファレンス ブックトーク 絵本 選書・蔵書構成 障害のある子 どもたちへのサービス 研修の自己評価とまとめ

34

回(2014年)

前期 児童奉仕の運営・年間計画 図書館の魅せ方 ブックトークの実演 図書館の魅せ方 児 童図書館員の仕事 東京子ども図書館内見学 おはなしの実演 児童図書の編集・出版  メディアと子どもの発達 乳幼児サービス

後期 絵本 外国の児童文学 日本の児童文学 ストーリテリング レファレンス ブックトー ク 科学の本 科学あそび 選書・蔵書構成 子どもたちへのサービス 研修の自己評価 とまとめ

35

回(2015年)

前期 児童奉仕の運営・年間計画 図書館の魅せ方 ブックトークの実演 児童図書館員の仕事  おはなしの実演 レファレンス 児童図書の編集・出版 マスメディアと子どもの発達 後期 ストーリーテリング 外国の児童文学 日本の児童文学 絵本 選書・蔵書構成 ブック

トーク 科学の本 科学あそび 乳幼児サービス 図書館利用に障害のある子どもたちへ

(5)

のサービス 研修の自己評価とまとめ 第

36

回(2016年)

前期 児童奉仕の運営・年間計画 図書館の魅せ方 児童図書館員の仕事 東京子ども図書館見 学 お話・ブックトークの実演 レファレンス 国際子ども図書館見学 児童図書の編 集・出版 メディアと子どもの発達

後期 ブックトーク 絵本 日本の児童文学 乳幼児サービス ストーリーテリング 外国の児 童文学 科学の本 科学あそび 選書・蔵書構成 図書館利用に障害のある子どもたちへ のサービス 研修の自己評価とまとめ

37

回(2017年)

前期 児童奉仕の運営・年間計画 乳幼児サービス 児童図書館員の仕事 東京子ども図書館見 学 おはなし・ブックトークの実践 図書館の魅せ方 児童図書の編集・出版 脳科学か ら見た子どもの読書の重要性

後期 ブックトーク 絵本 日本の児童文学 外国の児童文学 レファレンス ストーリーテリ ング 科学の本 科学あそび 選書・蔵書構成 図書館利用に障害のある子どもたちへの サービス 研修の自己評価とまとめ

38

回(2018年)

前期 児童奉仕の運営・年間計画 児童図書館の仕事 図書館の魅せ方 児童図書館の編集・出 版 脳科学から見た子どもの読書の重要性

後期 児童資料 科学の本と科学遊び 絵本 日本の児童文学 外国の児童文学

   児童奉仕の実際 乳幼児サービス ブックトーク レファレンス ストーリーテリング  選書・蔵書構成 図書館利用に障害のある子どもたちへのサービス

子どもと本をつなぐためには,「子どもを知り,本を知らなければならない」点がカリキュラム にも反映されている。来館する子どもに加え,地域の潜在的な利用者を掘りおこすこと,幼児の増 加から親にも働きかけること,魅力的なプログラムを実施すること,ボランティアへの対応等の課 題にいかにせまれるかである。

2.児童サービスを支える力 ~講師から受講生へ~

講師は,児童サービスを司書として学び続け,自身の中に核を持つことの大切さを説いている。

講師は基礎を徹底して受講生に伝え,児童図書館員の専門性,力を信じることを願っている。講座 を通して講師のメッセージを読み解き,受講生の学びを跡づけたい。

2004 年

松岡享子「書評」

書評を行う意味は,本を評価し,選書の基礎にすることにある。感想ではなく書評にするために

(6)

は,全体像を伝える,客観的におさえる,評価し感想を述べることが求められる。図書館向けの 書評は蔵書における位置づけ・利用価値・読者対象を考え,利用者向けの書評は本の魅力を予想 される読者に届くものを心掛けることが確認された1

汐崎順子「選書・蔵書構成」

選書の眼を養うには,本と向き合いひたすら読むことが不可欠である。子どもの成長のために豊 かな土壌をつくることを支えるものである。自分の物差しを持ち仲間の声にも積極的に耳を傾け なければならない。除架・廃棄・買い替え等含めた選書であって新しい本を買うだけが選書では ない。類書,同著者の既刊本を参考にし,シリーズものについて個々の本の評価をする。子ども の視点で書かれているか,著者の想いや目的が伝わるかが評価のポイントになる。評価の結果を 次に伝えていくことを学んだ2

東京都立多摩図書館「レファレンス」

子どもと一緒に読み,子どもが自分で探す助けをし,子どもが納得するかたちで本を手渡すこと である。子どもが知りたいという欲求は想定を超える。資料を知り,レファレンスの事例の蓄積 と共有化をはかるよう図書館員も努力を積むべきである。学校図書館は目的を持った読書,公共 図書館は自由な心の窓の読書である。学校の総合的学習において「自ら調べ,学び,発表する」

能力を養うという実態をふまえ,図書館側は誠実に対応することを学んだ32005 年

神宮輝夫「外国の児童文学」

西ヨーロッパのフェアリー・テール,あるいはメールヘンと呼ばれるものを文学として見て,日 本の童話と比較した4

斎藤敦夫「日本の児童文学」

受講生は,瀬田貞二『幼い子の文学』『絵本論』『落穂ひろい 日本の子どもの文化をめぐる人々』

『子どもの文学』を読み,勤務館の 子どもの本の選書の批判 を書いた。瀬田貞二について,

子どもの本を語り,子どもを語り,子どもを取り巻く大人を語り,また子どもの本に戻って考え るという点が素晴らしい人だったと評した。一人の人間の生き方を決める大切な時に,やはり本 の存在があったのではないかとされた5

矢野有「絵本」

①図書館における児童書の貸出しの現状について,図書館員は自分たちの薦めたいものを薦める 努力をおしんではいけないこと,目立たなくても良いものを手にとってもらえるように工夫して いかなければならないことを学んだ。②日本の絵本の歴史について,現物を見ながら,自分の中 で絵本をどのように考え,位置づけているのか問われた6

2006 年

汐崎順子「選書・蔵書構成」

良い選書の基本は,ただ読む・とにかく読む・ひたすら読むことにある。何のために・誰のため

(7)

に本を選ぶのか突きつめて考えることが求められた7。 松岡享子「本の紹介文を書く」

本の紹介文は,基本的にその本を知らない人に対して客観的に書くものである。古典作品を読ん でいない児童図書館員がいるとして,子どもたちは紹介しなければ手に取らない。なぜ古典を読 むのか。人間がテレビだけを見ていたら「人間はどんな悪いことが出来るか」の事例が強まって しまうの点に関わるとされた8

《レファレンス》

小山響子「レファレンスサービス」

レファレンスの目的は,資料と利用者を結びつけ,利用者が自分で調査できるようにその環境を 整備し支援し,図書館の必要性を伝えることにあると学んだ。

杉山きく子「子どものレファレンス」

子どもを一人の利用者として迎え,子どものレファレンスに興味を持ち,そこから学ぶことがあ り,トータルにレファレンスの対応を行うべきだとされた9

2008 年

山内薫「図書館利用に障害のある子どもたちへの図書館サービス」

「障害」は図書館の側の障害であり,それを取り除くことが図書館の課題である。積極的に地域 に出ていく図書館でなければならない。現在ある資料から誰でも利用できる資料にする。豊かな 読書の保障は,本や資料の提供に止まらず,そのための体験や経験の問題も含めて考える必要を 学んだ10

押樋良樹「図書館の魅せ方」

図書館の魅力は図書館員にかかっている。装飾・展示物には賞味期限があると考えるべきだとさ れた11

早川敦子「外国の児童文学」

受講生は,戦争の世紀といわれた

20

世紀を経て,いまだに危機の時代にある私たちは,児童文 学を通してどのように子どもたちに未来を語っていくことができるか問われた。目指すは本を通 しての連帯である。子どもたちが表現者であり,古典は自分たちとは全く違う世界が拡がってい る。無名性の広がりの中でみんなの声に耳を傾ける考え方が示された12

内藤直子「ストーリーテリング」

お話は聞けば聞くほど,好きになり,より楽しめるものである。聞き手(子どもたち)は語り手 を支えてくれるものであることを学んだ13

塚原博「科学の本と科学あそび」

日本の科学の本は世界的に評価が高い。科学の本は見せるだけでも興味を引くことが出来る。結 果にたどり着く過程を大切に調べてみようという気を子どもに起こさせる。図書館で実験を行い 結果がどうなるか,子どもたちとわくわくすることができることを学んだ14

(8)

2009 年

松岡享子「子どもの文学の基本としての昔話」

昔話は決まった枠組みがあり子どもは安心してお話の世界に入ることができる。昔話には繰り返 しや先取がある。昔話は事実だけで進む。昔話の登場人物はタイプがある。昔話の残酷さは内容 ではなく描写である昔話を知らない子どもが増えているため昔話には子どもの心をつかむものが 沢山あると理解することが大切とされた15

矢野有「絵本」

図書館には中核となる基本図書群の充実が必要であり,「選定図書速報」「学校図書館基本図書目 録」「選定図書総目録」等が参考になる。また絵本の重要性が認識されてきた。何でも新刊あり きではない。基本図書は書架に出す姿勢が大切とされた16

汐崎順子「選書・蔵書構成」

児童図書館員の仕事は,書架を良いバランスに保つことである。そこから何を学ぶかは子ども自 身に委ねられている。選書は,購入だけではなく,買い替え,除架,除籍を含む。何を基準にど う選ぶか。公共図書館は読書の楽しみを大切にするのでエンターメントのみの作品の購入もあり 得るが,記憶に残り疑似体験できるような作品へ子どもが手を伸ばすような工夫も必要である。

何を基準にどう選ぶか,図書館の本に対する姿勢が反映されるとされた17。 杉浦弘美「ブックトーク」

ブックトークとは,本を読むきっかけを作り,手にとられにくい本の利用を促す。図書館員の ブックトークには,蔵書というバックヤードがあるとされた18

杉山きく子「レファレンスサービス」

レファレンスは,図書館員がいることで初めて成立する。書誌事項を正確に記録する,利用者に とって知りたい事柄を,知りたいレベルを知りたい量だけ過不足なく伝える。子どもに関わる大 人へのレファレンス:どの文献を掲載したかにより,その価値は変わる。目的によって解題をつ けること。子どもの興味・関心に対するレファレンス:子ども時代に出会える本の数はごくわず かであり,教えすぎるということはない。蔵書を知り,本を知る大切さ,事例を記録し職員間で 共有できるようにするという当たり前のことが再認識された19

2010 年

飯野寿雄「児童図書(自然の本)の編集・出版」

絵で自然を描くことにこだわりをもち,細かい部分を描くことを大切に,インクや色も重要であ ることが示された20

松岡享子「子どもの文学としての昔話」

同じ出来事や人物が繰り返し登場することで,安心と喜びを感じ,覚えていなければならない重 圧から解放され,先取りしたヒントから物語の進展を予想し,結果を期待する。昔話が子どもに わかりやすいものとなる特徴を理解するべきである21

(9)

依田和子「外国の児童文学」

読み継がれている本が推薦されるが,図書館員として新しい児童書を評価する必要性がある。1 冊の本でも立場や年代等によって受け取り方が違うので,有志で読書会や勉強会をもつことが必 要である。様々な意見や視点を知る機会を設け,児童資料を広く深く把握することが重要だ。新 しい本を評価するにあたり悩み迷う事があるが,基本に立ち返る時に紐解くような本をもつとよ い。児童文学の歴史や流れを理解し,古くから読み継がれている本をよく知ることが価値基準を 理解する力になり,新しい本の良し悪しを見抜く力となるとされた22

矢野有「絵本」

資料の選定と基本図書として,図書館の仕事は,新旧すべての蔵書の中からよい本を子どもの手 に届けることであり,各機関のリストを参考に,組織として継続課題であるとされた。絶版の基 本図書は図書館全体で協力して出版社に再販を求めるべきである。絵本史について,蔵書構成は よい本の集合体であるので,絵本史に残る作品の数々から学ぶことは多い。よって基本図書は絵 本史上にあるとされた23

宮川健郎「日本の児童文学」

児童文学はボーダレス化して小学生ぐらいの子どもにあまり読まれなくなっている。小学生読者 に戻すには,描写しすぎず,主人公の行動に文章を戻すことではないかと提起された24。 塚原博「科学の本と科学あそび」

科学の本を評価するには,たくさん読む,読み比べ,子どもや専門家の意見をきく,自然観察や 実験をする,同じ著者の科学読物を読む,科学読み物の研究書を読む,一般書と比べる。その上 で書評である。科学あそびとは,子どもと科学読み物を結びつけ,直接経験から間接経験の読書 に移行するものだと説かれた25

内藤直子「ストーリーテリング」

情景を浮かべながら覚えると忘れづらい。好きなお話は半分の時間で覚えられる。お話から本に 結び付けていくことの大切さが指摘された26

2011 年

押桶良樹「図書館の魅せ方」

児童図書館員は,利用者に,児童室の魅力,児童図書館員の力を伝えていくことが大切である。

利用者の感覚と職員の感覚の差があり,利用者の感覚を意識することが求められる27。 飯野寿雄「児童図書(自然の本)の編集・出版」

編集者ももうひとりの本の産みの親であることが示された28。 谷村雅子「メディアと子どもの発達」

乳幼児期のテレビの視聴を控えるよう提言された。母親が話しかけても,一瞬,母親を振り向く だけで,すぐにテレビに見入ってしまう子どもが増えているからである29

(10)

浅沼さゆ子・秋吉順子「レファレンスサービス」

各職員の能力,意識に係わり,どの職員に聞いても同等のサービスが受けられるべきである。

サービスの質を館として維持することが求められた30。 杉浦弘美「ブックトーク」

誠実であることが求められる。自分に対して自分が納得できる,本に対してしっかり本を読み正 しい内容を伝える,聞き手に対してしっかりとした準備を行うことである31

宮川健郎「日本の児童文学」

現代児童文学は読者層の中心を年上の子どもへ移行させた。緻密化・長編化・人間の本質の問題 化により,乗り越えていくことが出来ない社会があることを子どもに示した。点から子どもの文 学,読書について考えるべきではないか32

2012 年

川上博幸「児童奉仕の運営・年間計画」

子どもと本を結ぶ,子どもと本を結ぶ大人へサービスを行う力,児童奉仕の理念と役割を自分の 言葉で館内,利用者,地域住民,行政に対して発信していく力をつける責任が示された33。 東京子ども図書館見学&松岡享子との懇談

「私たちは,本はよいものであると信じる人々の集団に属しています。私たちの任務は,できる だけ多くの人をこの手段に招き入れること」という点を刻み,図書館を真に必要だと考える人が 増えていかなければならないとされた34

谷村雅子「メディアと子どもの発達」

映像メディアは経過も見られるため模倣しやすい。学びは模倣から始まることを留意するべきで ある。赤ちゃんは笑顔の人が好き,笑顔で働きかける人の模倣をする傾向にあり,笑顔と応える ことの大切さが受講生に伝えられた。また直接来館しない,読書環境が十分ではない子どもたち に図書館が何をできるかを考える必要も示された35

早川敦子「外国の児童文学」

現代の子どもたちは,「ことば」と「こころ」があれば生きられるはずであり,司書は「子ども たちにことばとこころが響きあう本を渡せるよう精進せよ」というメッセージを感じた36。 矢野有「絵本」

日本の古くから絵本に親しんできた文化は世界に誇れるもので,12世紀の絵巻物に始まること,

印刷術の進歩により江戸時代には庶民も楽しめたことがあげられた。現代は情報が多く偏ってい るゆえに,質の高い資料を子どもたちに提供する大切さが改めて認識された37

都立多摩図書館&秋吉順子「レファレンス」

児童図書館員として子どもの質問に答えることと,大人の質問に答えることの違いを知る。知ら ない人に知らないことを聞くことはすごいことだという点で子どもと向き合うべきである。子ど もは図書館や司書を信頼している。利用者とのやり取りについて,利用者がどこまで知りたがっ

(11)

ているのか正確に知ることが大切である。レファレンスの記録を共有・蓄積することから学ぶこ とは大きく,サービスの向上につながることを学んだ38

2013 年

松岡享子「子どもの文学の基礎としての昔話」

昔話を「子どもの文学の基本」と捉え,子どもや子どもに本を届ける大人に自信をもって昔話を 薦めていきたいと受講して考えるようになった。お話を聞く楽しさが実感できた39

押桶良樹「図書館の魅せ方」

児童図書館員をアピールする:図書館員の備えている資質は高く評価すべきである。

図書館をデザインする:司書の立ち居振舞い,環境美化,業務紹介を明確に行う。

図書館を

PR/

広告する:新聞,ケーブルテレビ,ネットなども活用,学校図書館やメディア記 者と連携を図るべきである。図書館を「魅せる」という視点が新鮮だと感じられた40

塚原博「科学の本と科学あそび」

「自分で読んで本当に面白いのか」確認した上で子どもに薦めてほしい。絶えず幅広く質の良い 本を読み,最新の書評に慣れ親しみ,文の構成や言葉使いに進んで興味を持つことの大切さを学 んだ。科学の本と科学あそびを通して科学の楽しさ・面白さを伝えたいと感じた41

宮川健郎「日本の児童文学」

児童文学は黙読,読む文学という時代になったと思えるが,読み聞かせの大切さ,音読の声を取 り戻すことが提起された42

島本まり子「乳幼児サービス」

図書館は,質の良い本を選び,子育て支援につながる情報を提供し,他機関との連携を図り,図 書館司書の専門性を行政にアピールするべきである。乳幼児と保護者が図書館を利用しやすくす るために,自分の館のつくりを見る必要がある。ボランティアとの協働は大切だが,職員は実際 のサービスを行うべきではないか。絵本を見る眼を養い,乳幼児の成長,発達,年齢に応じて選 ぶことを目指すべきである。わらべうたは「人育てのうた」であることが確認された43。 内藤直子「ストーリーテリング」

子どもに「お話を見せる」ように語り,子どもはお話をどのように受け止めるか考え,子どもが どんな反応をするのか予想することが大切だとされた。「声かけ」「わらべうた」「ストーリーテ リング」等お話を通して周りの大人と接することは子どもの成長や幸福にとって重要である。お 話は図書館員と子どもの関係を育てるものだからである44

杉浦弘美「ブックトーク」

ブックトークは,テーマにあった本で読みたいと思わせる紹介をする。本の構成を紹介,話の設 定や登場人物を明確に説明,実演者の知識として実演者の言葉で「話している」のか,本の一部 引用で「読んで」いるのか,わかりやすくするために工夫する際も,元の図書を示して,その参 考であることを示す等,ルールを徹底させることが示された。図書館員のブックトークは,選書,

(12)

書架整理 図書紹介文の執筆を大切にした上で可能である45。 川上博幸「児童室の運営・年間計画」

読書が子どもの発達成長に重要な働きをするという認識のもと「子どもに読書のよろこびを」と いう児童サービスの活動根本理念は変わっていないこと,児童室の運営は個人ではなく,組織に よって担われるとして,流れを振り返った。

1990

年代:年間の計画を立て子どもへのサービス活動や児童室運営をしていた図書館はまだ少 なかった。養成講座における「年間計画」の課題は,図書館全体の,年間の取り組みや予定,子 どもへのサービス活動,それにかかわる講座,講習会,研究会等の学習活動,日常業務,県下の 研修,会合等を確認することである。業務全体を視野に入れて運営するという考えによる。児童 サービスは館全体の運営の一部であり,組織内の連携・協力関係を考慮しているのである。年間 計画の目的は,職員全体が児童サービスの実情と年間の予定を知ること,業務の忙閑時期を知り 人員の体制を組み,業務量を平準化すること,業務の進行,予算や人員の明確化にある。しかし 当時から児童関係の行事や催し物は一般の行事や活動に先行,子どもに働きかける活動の実態が あった。諸活動は水曜日・土曜日を主に定期的に実施する図書館が増え,日常的に子どもと本を つなぐ活動に着手,季節に応じた行事をするパターンである。あまり普段図書館に縁のない子ど もには夏休み等,特別な行事により来館してもらう。また学齢期前と小学生を区分して実施すべ きかという課題が出始めた。「一日図書館員」や職員による人形劇・ペープサート,科学あそび,

自然観察教室等が見られるようになった。「ボランティア養成講座」が実施された館もあった。

プロの劇団やグループを招く人形劇等の公演は少なかった。図書館まつり等,図書館と地域の子 ども文庫活動の連合や読書活動グループとの共同が見られた。

2000

年代:①図書館の予定(地域・自治体・図書館),②児童奉仕(行事,催し物,活動),

③業務・仕事(日常・年間),④研修と区分して年間計画が立てられるようになってきた。子ど もと本をつなぐ活動が一応定着したといえる。実施面では,幼児と小学生を年齢で区分。随時日 常的に費用をかけずにできるもので楽しみながら交流でき来館が楽しみになっていく。夏休みの 工作・観察・科学あそび,宿題調べを意識して専門家を招く等だが,予算減の傾向であった。「子 どもの読書活動推進」の高まりから,サークル活動(こども会活動),出版社や取次会社主体の キャラバン活動に申請,フロアワークや子どもとの対話(子どもと日常的に交流して本との出会 いをめざす),病院の入院児童に働きかける活動が目指された。ともに楽しむ活動(絵本の大型 紙芝居,ミュージカル仕立ての読み聞かせ)が多彩になった,都道府県図書館は,市町村図書館 の援助,民間子ども読書活動の支援,活動する人の研修という役割が見えてきた。

2010

年代:「子どもの読書活動の推進に関する法律」(2001)制定を受けて「子ども読書活動推 進計画」を自治体が策定,地域・行政・図書館の協働活動が増えた。冊子やリストが作成されて いる。市町村図書館は,保育所,幼稚園や学校に出かけ活動,都道府県図書館は,子どもの読書 活動に関わる人々,ボランティアに研修・学習の機会を提供するようになるが,図書館員に対す

(13)

る支援は乏しい。ブックトーク,アニマシオンの活動や講習会が盛んになるが,実際は学校で主 に実施されている。新しい活動(ぬいぐるみお泊り会,英語によるお話会や読み聞かせ,調べ物,

クイズラリー),子ども用の

HP

作成(ヤングや不特定多数に働きかける)が増えているが,こ れまでの活動が確実に定着しているか問うている46

2014 年

川上博幸「児童奉仕の運営・年間計画」

目の前の子ども一人一人にサービスをしていること,子どもと深く関わることを心がけたいとい う感想が見られた47

別府章子「児童図書の編集・出版」

ロングセラーを次世代につなげる,大切にすることが編集者の基本である。海外の作品を日本 へ,日本の作品を海外へ出版に取り組み,本で世界をつなぐことに熱意をもっている。古いから 廃棄ではなく,絵本の史料価値の確認をするべきである。ロングセラーは重版で変わっている本 があるのでチェックして入れてほしい。図書館でおすすめしたい本は選書の理由付きリストにし てほしい。アンケート葉書が出版社・作家にとって大切な存在であり出版に影響するため,絶版 になった本でも諦めず再販を求めてほしいという指摘から,図書館員のしなければならないこと が見えてきたと感想があった48

谷村雅子「メディアと子どもの発達」

TV

により親子の会話が減少し,言語や社会性の遅れが生じるのではないか。TV視聴をやめ親 子遊びをすると改善された例が紹介された。TVに長時間接触するとゲームやインターネットへ の移行が促される。絵本の読み聞かせや語りは,大人が子供の反応を見ながらゆったりとした ペースで語りかけることが可能である。大人とともに楽しむ体験が子どもにとって重要であると して,科学的視点からのメディアの影響が理解された49

矢野有「絵本」

子どもの時間は短く,忘れられないような,今後の糧となる本を手渡すことが図書館員の仕事で ある。利用者には開架がすべてであり,質の高い棚づくりが求められる。古いから捨てるのでは なく,先輩たちが選定し作成した目録や古いものからの発見を大切にしてほしいというメッセー ジから,子どものための図書館のあり方が問われた50

早川敦子・宇野和美「外国の児童文学」

知らない世界を知ることは,自分を支えてくれる。児童文学と大人の文学の違いは,文学の中に 信頼し語る相手が存在することであろう。スペインのアニマシオンについて,独裁政権下の言語 統制に対抗して言葉の大切さを重要視する中で生まれたとされる。中南米では貧困と暴力の連鎖 から逃れるために識字活動がある。子どもが文学に親しむには,子どもに本を手渡す人が必要で あり,司書が子どもに語りかける豊かな言葉を持っているか。自分(司書)の中にある言葉を豊 かにすることや世界文学の普遍性を受講生は考えさせられた51

(14)

浅倉さゆ子・加藤あゆみ「レファレンス」

子どもがインターネットを使って調べ物をしている際には司書が付き添うことが望ましいといわ れた。幅広く柔軟に考える必要に受講者は気づかされた52

杉岡和弘「選書・蔵書構成」

幼児期は耳からの読書のため,大人からの助けを必要とし,徐々に「聞く読書」から「読む読書」

へ移行する。子どもに本を手渡すための蔵書構成の核である基本図書の構築で選書基準が明確に なる。蔵書の維持には書架状況や利用状況の把握が欠かせない。難しいができることから始めよ うとアドバイスを得た53

山内薫「図書館利用に障害のある子どもへのサービス」

障害者サービスとは,「図書館利用に障害のある人へのサービス」であり,「障害」は図書館側の 障害としてとらえなければならない。意識の転換の必要が語られ,「障害」の根本的見直しによ り様々な可能性があることに気づかされている54

2015 年

川上博幸「児童奉仕の運営・年間計画」

現在の児童奉仕や活動が何時から重要視され,日本で盛んになったのかを知ることで地域の子ど もに関わる新たな現象をとらえて考察対処することが可能になると考えている55

加藤節子「ストーリーテリング」

お話の研修の機会があるのは稀であり,個人的に研修の場を求めなければならない。いくつかお 話を語れるようになれば,子どもたちが,お話がどうだったかを教えてくれる。現在お話会は低 年齢化(親子連れ)の傾向にある。母親に子どもの周りの環境や子どもの成長と共に本が大切で あることを伝えたいとされた56

杉岡和弘「選書・蔵書構成」

子どもを知る:興味を持たせ自主性を重んじる。蔵書構築:長期的な視野で選ぶこと。選書会 議:どう評価できるから基本図書になるか眼を養う。選書は苦しくて楽しい仕事で,どのように 日々の仕事を活かせるかにあるという57

島本まり子「乳幼児サービス」

乳幼児サービスは

0−6

歳の乳幼児と保護者と捉える。わらべうた,絵本の読み聞かせに加え,

ブックリスト作成や保育園への出前サービス,保護者向け講座等にも気づいてほしい58。 山内薫「図書館利用に障害のある子どもへのサービス」

様々な障害のために一般の資料をそのままでは読めない子どもに対して,すべての図書館は子ど もが読めるような形の資料を提供する義務を負うことを認識するべきである。資料提供に止まら ず,差別解消につながる具体的な障害者サービスを行うべきである59

(15)

2018 年

島本まり子「乳幼児サービス」

受講者からは,他館の事業や行事の事例が参考になったり,自館の選書基準を作成するのに他館 の基準や方針が参考にできたという声がある60

押桶良樹「図書館の魅せ方」

児童図書館担当であることの専門力を再認識して,誇りと自信をもって図書館を支え,利用者へ 伝え上手になってほしいとされた61

宮川健郎「声」の時代,「声」のわかれ〜日本の児童文学〜

日本の児童文学は,1960年前後,読者層の中心を年上の子どもへ移動させ,黙読させる書きこ とばとして緻密化していく変遷から,幼年文学をどうしたらいいのか問うている62

児童図書館員の専門性は明確である。児童サービスに関する体系的な学びは子どもの成長を支援 する。児童図書館は社会的存在であり,その発展を方向づけた歴史的事実が講座に反映されている。

その専門性とともに,保護者や他機関ともつながる力を児童図書館員は求められている。

3.受講生の感想

受講生は講座に使命感をもって参加したことが窺える。講座で得たことを社会に還元するという 強い意志で日々の活動に従事していた。受講後は学びの成果を館内や地域で共有するよう努めてい る。日常の業務における子どもたちとの関わりは重要なものであると同時に体系的に学ぶことで自 分の中に司書としての核を持つことの重要性を受講生の感想は示している。

2001 年63

自分の感覚以外に頼れるものがない,だからこそ自分の感覚をみがかなくてはいけないのだ。

専門職集団としての組織力を,みんなの理解,共通認識の上に作りあげることができたら,どん なに素晴らしいだろう。

選び抜かれた本(言葉)というものに対する絶対的な信頼感をもたなければ,自分の仕事(図書 館員)に責任をもって行うことができないだろう。

2002 年64

本との出会いを地域に育てていく,その心構えをこの講座から知り得ることができました。

自分で読む,書く,行動することでしか図書館員としての自信は生まれてこない。

児童サービスを,子どもを取り巻く大人たち(親や教師,保育士)に理解してもらうために,説 得力のある理論を自分の中に持つこと。

2003 年65

自分の勉強のためにこれほどまとまった時間を費やしたことがかつてなかった。

(16)

これから仕事をしていく上での大きな指針を得られた。

自分の課題がよく見えてきた。

児童サービスの大切さ,おはなしの楽しさ,図書館員の努力の姿勢など,受け取ることができま した。

2004 年66

学んだことを人に伝えていく努力をする。とても幸せな仕事をしている。

図書館員としてゆずれない所,書誌の大切さなど改めてたたきこまれた。

同じ悩みをもっている図書館員の人と話ができて,その解決について道すじが見えてとても良 かった。児童サービスについて真剣に考える機会をもてた。

2006 年67

児童図書館員のあるべき姿が前よりはっきりした。

何より本を選び手渡すことが重要。

県立図書館の大きな役割として,県内の市町村立の児童サービスの援助・協力がある。

後輩を育てることも大切。

自分自身の認識の甘さも感じた。

2007 年68

事前に取り組んだ提出課題が,とても自らの知識や考え方を広げるのに役立った。

サービスの方向については以前より自信が持てた。

子どものために,ということを忘れずに進んでいきたい。

仕事に対する姿勢,仕事への図分の向きあい方が変わった。

2008 年69

心の持ちようと多くの資料を知ることこそが基本である。

言われたことをどのように読みとり,考え,仕上げるのか。

地元に戻ったら,この講座のことを多くの司書の仲間に伝えていきたい。

研修は,学びの場だけでなく,人脈を広げる素晴らしい機会。

自分が学ぶだけではなく,自分にできる役割をになうこと。

2009 年70

参加することで児童図書館員としてものごとを考えるようになった。

自分は受け継ぎ引き継ぐものである。

2012 年71

講師の図書館や本に対する深い愛情と情熱を感じる,密度の濃い研修だった。

職歴が長くなると日常に流されてしまうことも多いですが。この研修で初心に戻りました。

一人で中途半端におこなうのではなく,もっと味方を増やして,良い物を提供していこう。

(17)

2013 年72

こんなあきらめムードじゃいけない,自分たちがしっかりしなくては。

漠然としていたことが整理され,理論だって考えられるようになりました。

いつか受講できたらと憧れていた講座だった。

福井市「児童図書館員養成講座受講を振り返り」73

1994

年に初めて福井市立図書館員が養成講座を受講。2005年から研修が予算化。個々の知識や 意識が向上。どの館でも同じようなサービスを受けることができるようになってきた。子どもと 直接触れ合う時間は減り,保護者ボランティア等への働きかけが重要である。講座への期待:進 むべき児童サービスの方向性が身につく。全国の図書館員と情報交換ができる。子どもとメディ アの関係についての科目を取り入れてほしい。

2014 年74

わが市からは初めての参加。

(講師は,参加者が)どんな状態にあるのか,どんなことを課題として思い悩んでいるのかなど を把握したうえで一人一人に向き合ってくださったことが印象的でした。

講義内容とエールを,自分だけのものとせず,共に働く仲間や同僚と共有していきたい。

2015 年75

児童サービスを行う上で大切なことは本の知識があるだけではなく,地域性,書架の現状,子ど もについてなど広い視野で考えていかなければならないということを学びました。

とても素晴らしい講座なので,もっと

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してもいいのか。

受講生の感想76

  児童図書館員としてステップアップする。日常行為により高い意識や意義をもって行う。

  受講後の実践と継続的な勉強である。

  自分の中に基本をしっかり持つこと。

2016 年

《受講生》

子どもに本を手渡すということは,人間が人間に大事な精神文化を届けることである

私自身が自然や本を楽しみ感じること,子どもたちと共感することを大切に,信念を持って真摯 に子どもと本に向き合っていきたい

日々の業務を意識的に行い,自ら学ぶことで,これからも理解を深め,成長することができる77

《講師》

坂部豪「児童図書館員養成講座の現在」

児童図書館員個人のキャリアアップを目的としていない。児童サービスの指導者を養成する。

初任者向けは各都道府県で研修を実施されること。都道府県立図書館の職員が養成講座を受講 することでその都道府県の児童サービスのレベルがアップすることが期待。子どもが楽しんで

(18)

本を読むようになること。継続的に公費で受講生を派遣する自治体もあるが,応募者は減少。

長期の研修参加が難しい78。 松岡享子

応募者が講座に期待するもの:児童図書館員の質の向上。養成と研修の機会の絶対的不足が ある。

1970

年代:選書について学びたい。図書館の存在意義とサービスの質を決定するのは蔵書だ から。講座により職業的背景を得たい。1980年代:コンピュータが導入される。子どもの生 活の忙しさやメディア問題。

子どもの読書を子どもの生活に位置づけること。講座には文庫関係者を受け入れてきた。子ど も文庫やお話ボランティアとのかかわり方はどうか。知識と経験の積み重ねが必要なことを理 解しない人事制度が問題である。講座受講者が新人研修を担当,連絡会を組織する。学校図書 館,子ども教育機関との連携,出版社と交流をしていきたい79

 「児童図書館員養成講座の感想

2008

年参加,講師の言葉で記憶に残ること」(講師名)

子どもの本をたくさん読み,記憶するように読み,記録する,評価する日からをつける。

(川上)自分で理解して,自分の言葉で誠実に語る。(杉浦)生涯にわたり図書館利用者として 子どもを尊重する。(杉山)展示・掲示に賞味期限あり。(押桶)おはなしは慰めにも励ましに もなる。(松岡)子どもが本に出会うとき人生に出会っている。(早川)読みっぱなし受けっぱ なしはダメ。(坂部)講座参加後として,学んだことはサービスに活かせた,子どもの読書に 携わる方に真摯な気持ちで向き合った。継続的な学びと交流の必要性を感じる(お昼休みのお 話勉強会,児童図書館研究会入会,県内の児童サービス研修会を実施)80

 「初回からほぼ継続して参加してきた調布市立図書館から」

現在も司書有資格者採用を維持し,公共図書館員として

5

年以上経験,児童サービス担当

2

年 以上の経験という受講資格を持つ職員がいるからこそ,講座受講が継続されている。「この講 座で得たことを図書館に還元しなくてはいけない」という強い気持ちで,それぞれが受講経験 を生かすよう努めている。その一例がブックリストの作成であり,じっくり読んで選ぶ,その 過程で自分の子どもに読み聞かせて記録,市販リストもすべて当たった81

2017 年

目の前の業務を大過なくこなしていくことに追われる毎日の中で,児童サービスについて一心に 考え勉強することができる

2

週間を持てたことはとても救い。

これまで知らなかった本に出会うことになり,大変勉強になりました82

「受講を振り返る」

講座資料は1冊のファイルにまとめて保管,児童サービスの各種研修講師担当時に参考にした。

2010

年「第

1

次子ども読書活動推進計画策定」によりブックスタート開始,学校図書館支援 センターの設置,学校へ団体貸出用搬送システム導入時に役立った。

(19)

図書館員の力量形成により保護者層の利用を広げる。読書や図書館活用を通して子どもの成長 を支援するために他機関,市民との連携等が求められる。具体的には学校図書館を通して教育 活動の支援,読み聞かせ,ブックトーク,読む力を引き出すアニマシオンやリテラチャー・

サークルである83

児童図書館員の継続的な学びは不可欠であり,職場はそれを支えるべきである。児童サービス 全体の向上をめざし,講座参加により受講生が課題を客観視し,課題がより明確化し全体の中 でとらえることができる。

おわりに ~司書制度の問題~

1970

年代に公共図書館には大きな展開が見られた。その背景には子どもの利用の増加と文庫活 動の広がりがあった。子どもの読書に対する意欲とそれを支える大人の存在である。その根本には 児童サービスの充実と児童図書館員の存在が不可欠であり,児童図書館員養成講座の開催(1980)

につながった。公共図書館の柱である児童サービスの研修・養成を組織的・効率的に行うためであ る。すべき・やりたい課題が山積しており,日々精一杯職員は取り組んでいる。その中で,これで いいのだろうかという問いを持ち,日常の取り組みを客観的に捉え直したいという思いから講座に 参加しているケースが多く見られた。事前に課題に必死で取り組み提出,講座期間中は講師・受講 生共々熱心に学びあい,その成果を図書館に還元しようという強い意志が見られた。「司書有資格 者であり公共図書館職員として

5

年以上の経験,児童サービス担当

2

年以上経験」という受講資格 が必要であるが,講座参加のために職員は努力し,館が必死に送り出しているという報告があった。

それは個人のキャリアアップの域を超えるものである。児童サービスに関して,自館だけの問題で はなく,そのものの向上の課題化である。そこに講座の意義がある。2000年以降,国は子どもの 読書に関して積極的に動き出した。しかしその具体性は見出し難い。加えて読書ボランティアや指 定管理者制度の進行がある。子どもの成長に合わせて継続的な読書推進を行う責任はどこがどう担 うのか。子どもの読書環境が法的に守られることになり,子どもの読書支援が動き出して約

20

年,

これらは公平な教育を支える機会の拡充となっているのか。子どもと本をつなぐことに意義を見出 し何らかの形で携わろうとする人々は少なくない。その中で芯となるもの,存在は必要である。加 えて人々の学びあいである。児童サービス,児童図書館員養成の課題を子どもの生活に位置づけて 捉え直していかなければならない。また子どもを取りまく大人の理解が不可欠である。科目や講師 のメッセージ,受講者の感想を掘り下げ考えていくことを今後の課題としたい。

[注]

1 松浦章子「書評」報告・児童図書館研究会「こどもの図書館」200412月・3頁。

2 加藤和英「選書・蔵書構成」報告 同前・4頁。

3 伊藤仁「レファレンス」報告 同前・5頁。

(20)

4 佐藤眞一「報告 外国の児童文学」「こどもの図書館」200512月・3頁。

5 西村ミドリ「報告 日本の児童文学」同前・4頁。

6 西本真由美「報告 絵本」同前・5頁。

7 汐崎順子「選書・蔵書構成」「こどもの図書館」20071月・4頁。

8 鈴木直子「本の紹介文を書く」同前・5-6頁。

9 大崎眞希子「レファレンス」同前・7頁。

10 川越裕子「報告 図書館利用に障害のあるこどもたちへの図書館サービス 山内薫氏」「こどもの図書館」2009 2月・3頁。

11 山元明美「報告 図書館の魅せ方 押桶良樹氏」同前・4頁。

12 海老澤昌子「報告 外国の児童文学 早川敦子氏」同前・5頁。

13 安田宏美「報告 ストーリーテリング 内藤直子氏」同前・6頁。

14 山田肇子「報告 科学の本と科学あそび」同前・7頁。

15 谷口雪子「報告 子どもの文学の基本としての昔話」「こどもの図書館」20102月・3頁。

16 鮫島孝子「絵本 講師 矢野有」同前・4頁。

17 矢野智美「選書・蔵書構成 講師 汐崎順子」同前・5頁。

18 東智子「ブックトーク 講師 杉浦弘美」同前・6頁。

19 新藤里絵「レファレンスサービス 講師 杉山きく子」同前・7頁。

20 小山亜紀子「児童図書(自然の本)の編集・出版 講師 飯野寿雄」「こどもの図書館」20112月・3頁。

21 松山千紘「子どもの文学の基本としての昔話 講師 松岡享子」同前・4頁。

22 山下真希「外国の児童文学 講師 依田和子」同前・5頁。

23 北村明恵「絵本 講師 矢野有」同前・6頁。

24 宮原陽子「日本の児童文学 講師 宮川健郎」同前・7頁。

25 野々川佳代「科学の本と科学あそび 講師 塚原博」同前・8頁。

26 田丸美穂「ストーリーテリング 講師 内藤直子」同前・9頁。

27 河合啓子「図書館の魅せ方 講師 押桶良樹」「子どもの図書館」201112月・3頁。

28 谷藤真理「児童図書(自然の本)の編集・出版」同前・4頁。

29 川島桂子「メディアと子どもの発達 谷村雅子」同前・5頁。

30 池上真理子「レファレンスサービス 講師 浅沼さゆ子 秋吉順子」同前・6頁。

31 赤木覚「ブックトーク 講師 杉浦弘美」同前・7頁。

32 千原真純「日本の児童文学 講師 宮川健郎」同前・8頁。

33 石井芳枝「児童奉仕の運営。年間計画 講師 川上博幸」「こどもの図書館」201212月・3頁。

34 神原陽子「東京子ども図書館見学&松岡享子さんとの懇談 講師 松岡享子」同前・4頁。

35 田中千穂子「メディアと子どもの発達 講師 谷村雅子」同前・5頁。

36 中村美和子「外国の児童文学 講師 早川敦子」同前・6頁。

37 山田郁子「絵本 講師 矢野有」同前・7頁。

38 石垣恵「レファレンス 都立多摩図書館&秋吉順子 同前・8頁。

39 森ゆかり「子どもの文学の基本としての昔話」「こどもの図書館」201312月・3頁。

40 中藤敦子「図書館の魅せ方 講師 押桶良樹」同前・4頁。

41 高柳公香「科学の本と科学あそび 講師 塚原博」同前・5頁。

42 代市友美「日本の児童文学 講師 宮川健郎」同前・6頁。

43 渡邊ひろ子「乳幼児サービス 講師 島本まり子」同前・7-8頁。

44 中野陽子「ストーリーテリング 講師 内藤直子」同前・8-9頁。

45 正井さゆり「ブックトーク 講師 杉浦弘美」同前・9頁。

46 川上博幸「児童サービスの年間計画の変化から見る最近のサービス傾向」日本図書館協会「図書館雑誌」20136 月・348-349頁。

47 佐々木はるみ「児童奉仕の運営・年間計画 講師 川上博幸」「こどもの図書館」201412月・3頁。

48 坂口佐知子「児童図書の編集・出版」同前・4頁。

(21)

49 水野真紀子「メディアと子どもの発達 講師 谷村雅子」同前・5頁。

50 小西知美「絵本 講師 矢野有」同前・6-7頁。

51 芝原沙織「外国の児童文学 講師 早川敦子・宇野和美」同前・7-8頁。

52 前田亮子「レファレンス 講師 浅倉さゆ子 加藤あゆみ」同前・8頁。

53 鈴木智草「選書・蔵書構成 講師 杉岡和弘」同前・9頁。

54 阿部祐子「図書館利用に障害のある子どもへのサービス 講師 山内薫」同前・10-11頁・2015年。

55 川上博幸「児童奉仕の運営・年間計画」を担当して 「子どもの図書館」201512月・2-3頁。

56 加藤節子「ストーリーテリングについて」同前。3-4頁。

57 杉岡和弘「選書・蔵書構成を担当して」同前・4-5頁。

58 島本まり子「乳幼児サービスを担当して」同前・5頁。

59 山内薫「「図書館利用に障害のある子どもへのサービス」同前・6-7頁。

60 島本まり子「乳幼児サービスの実務をご一緒に学びませんか?」「図書館雑誌」20187月・534頁。

61 押樋良樹「図書館の魅せ方」「図書館雑誌」20188月・465頁。

62 宮川健郎「声」の時代,「声」のわかれ「図書館雑誌」20189月・632頁。

63 「図書館雑誌」20022月号 綴り。

64 「図書館雑誌」20032月号 綴り。

65 「図書館雑誌」20042月号 綴り 受講者のアンケートから

66 「図書館雑誌」20052月 綴り 受講者のアンケートから

67 「図書館雑誌」20072月 綴り 受講者のアンケートから

68 「図書館雑誌」20082月 綴り 第27回児童図書館員養成講座受講生の感想から

69 「図書館雑誌」20092月 綴り 第28回児童図書館員養成講座受講生の感想から

70 「図書館雑誌」20102月 綴り 第29回児童図書館員養成講座受講生の感想から

71 「図書館雑誌」20132月 綴り 第32回児童図書館員養成講座受講生の感想から

72 「図書館雑誌」20142月 綴り 第33回児童図書館員養成講座受講生の感想から

73 西本真由美「児童図書館員養成講座」を受講して 福井市図書館の場合「図書館雑誌」20136月・346-347頁。

74 「図書館雑誌」20152月 綴り 第34回児童図書館員養成講座受講生の感想から

75 「図書館雑誌」20162月 綴り 第35回受講生の感想から 76 「受講生の感想」「こどもの図書館」201512月・7-8頁。

77 「図書館雑誌」20172月 綴り 第36回受講生の感想から

78 坂部豪」「児童図書館員養成講座の現在」「図書館雑誌」20166月・351-353頁。

79 松岡享子「児童図書館員養成専門講座の35年」「図書館雑誌」同前・355-357頁。

80 「児童図書館養成講座受講から8年間,児童サービスに携わって 「図書館雑誌」20166月・358-359頁。

81 市川妙「継続して参加してきた図書館から 調布市立図書館の事例より」「図書館雑誌」20166月・360-361頁。

82 「図書館雑誌」20182月 綴り 第37回受講生の感想から

83 子安洋子「児童図書館員養成専門講座」受講を振り返って 2005受講 「図書館雑誌」201810月 702頁。

参照

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