小田原市沿岸域の気温分布と相模湾の海風の冷却効果との関係

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小田原市沿岸域の気温分布と相模湾の海風の冷却効果との関係

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片山 恵梨子

専修大学・環境地理学科(2016 年度卒業生)

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赤坂 郁美

専修大学・環境地理学科

3 要 旨 小田原市に吹走する相模湾海風が気温分布に与える影響について明らかにするため、 2016 年 7 月から 9 月にかけて、市内の 11 の小学校で気温の定点観測を行った。結果として、 晴天海風日は 9 時頃から、曇天海風日は 12 時頃から海風が吹くことがわかった。天候によら ず、海風が吹く日の日中には海岸付近の気温が低くなるものの、晴天日には、海岸付近と内陸 部との日中の気温差がおよそ 1℃であるのに対し、曇天日には 0.5℃以下であった。加えて、 曇天日には低温域が形成される範囲も狭かった。また、同じ海岸付近に位置している地点で も、市街地域に近く交通量が多い地点では、市街地を中心としたヒートアイランド現象によ り、海風の冷却効果が抑制されていると考えられる。

1. はじめに

近年、都市部の気温が周辺部の気温よりも高温となるヒートアイランド現象が顕在化しており、ヒートア イランド現象の緩和が早急な課題となっている。この緩和策として、人工排熱の低減、緑地や親水公園など の空間を都市内部に創出するといった対策に加え、風を利用した対策も有効である。たとえば、冷涼な海風 を都市空間に取り入れることで、ヒートアイランド現象による高温化を緩和することも可能とされる(清田・ 清田,2005)。 海風の持つ冷却効果については、これまでに数多くの研究がなされている。たとえば工藤・加藤(2014) は相模湾から吹く海風の侵入過程を調査した。過去 19 年間の既存の気象統計データと神奈川県県央を流れ る相模川沿いの 3 地点における 2 か月間の定点観測データを用いて、相模湾系の海陸風の時空間的な特徴を 解析した。その結果、海岸から近い地点ほど他の地点と比べて気温の日変化が小さく、内陸でも海風の通過 した地点では気温の上昇が抑えられていることから、海風が大きな冷却効果を持っていることを示した。ま た、大和ほか(2011)は、首都圏の空間的に高密度な気温と風の観測データを用いて、海風が発達しやすい 日の気温と風の空間分布を解析し、海風が気温分布に与える影響を明らかにした。具体的には、高温の中心 は都心周辺から北西へと海風前線の侵入と共に移動し、12 時には練馬からさいたま市南部の地域に、14 時 には川越付近に、16 時以降は熊谷より北西の地域に位置していることを示した。 このように、先行研究から、海風が陸地の高温化を抑制することがわかっている。しかし、海風による気 象場の変化を詳細に捉えるためには、海岸付近を中心に観測地点を密に配置した観測を行う必要がある。こ れにより、海風の冷却効果と地上気温分布との関係や、土地利用が気温や海風に及ぼす影響について調査す

1 Spatial patterns of temperature in coastal area of Odawara city in summer and its relation to cooling effect

by sea-breeze from the Sagami Bay

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