ろう学校教員の授業力向上に向けた取り組み : 外 部専門家としての関わり
著者 中瀬 浩一
雑誌名 同志社大学教職課程年報
号 9
ページ 51‑64
発行年 2020‑02‑15
権利 同志社大学教職課程年報編集委員会
URL http://doi.org/10.14988/pa.2019.0000000528
Ⅰ はじめに
「特別支援教育を推進するための制度の在り方について(答申)」(中央教 育審議会,2005)において、総合的な体制整備に関する課題として「学校内 外の人材の活用と関係機関との連携協力」が掲げられ、学校内の人材だけで な く 医 師、看 護 師、理 学 療 法 士(physical therapists)、作 業 療 法 士
(occupational
therapists)、言 語 聴 覚 士(speech-language-hearing therapists)等の外部専門家の総合的な活用を図ることや福祉、医療、労働
実践論文
ろう学校教員の授業力向上に向けた取り組み
―外部専門家としての関わり―
中 瀬 浩 一
(同志社大学免許資格課程センター)
A Practice to Improve the Teaching Ability of Deaf School Teachers:
Involvement of an Outside Expert
Koichi Nakase It is necessary to utilize the outside specialist at schools for special needs education. The outside specialist includes doctors, nurses, physical therapists, occupational therapists, and speech- language-hearing therapists. The specialist to conduct the classes is needed at the deaf school to improve students’ academic ability.
Several methods for the after-class study group were tested at the deaf school. It is suggested that the study group focusing on students learning strategies was useful. The outside specialist has to carry the role which introduces other schools’ approaches.
Keywords: school for special needs education, outside specialist, class improvement, reflection after a class
など関係機関等との連携協力を進める必要性が示され(1)、特別支援学校学習 指導要領にも記載されている。文部科学省は、2013(平成25)年度から必要 に応じて外部人材の配置・活用を行い、特別支援学校全体としての専門性を 確保すること等を目的に「特別支援学校機能強化モデル事業」を各教育委員 会等へ委託し、その研究報告も散見されている(2)(3)。これらは主に医療分野 等の外部専門家との協力で、自立活動を中心としたもの(4)(5)や児童生徒の実 態把握に基づいた指導・支援方法を検討するケース会議(6)(7)などが中心であ る。また、教育委員会や教育センターなどにおいても、児童生徒の理解、専 門性の向上などを外部専門家を活用して行うことを進めている(8)(9)(10)。 特別支援学校での外部専門家の活用は、障がい特性の理解や実態把握、自 立活動等が中心になるが、聴覚障がいを対象とする特別支援学校(以下、ろ う学校)のように「準ずる」教育課程を有する特別支援学校においては、同 時に教科指導力の向上に関しての活用が考えられる。小中高等学校において は、教育学などを専門とした大学教員などを外部専門家として活用し教員の 授業力の向上につながる取り組みが積極的に行われている(11)(12)。
文部科学省は2017(平成29)年度の「特別支援教育に関する実践研究充実 事業」において、「次期学習指導要領に向けた実践研究」に関するモデル校 を全国の特別支援学校から募った(13)。筆者は、この事業に選定されたろう学 校A校においてアドバイザーとして関わった。また、同校小学部の研究会へ の授業改善に関する助言を継続して行う機会を得た。特別支援学校の授業改 善に関する外部専門家に関する報告はほとんどないことから、本稿では主に これらの授業改善についての同校の取り組みを概観しながら、全校的な研究 活動に並行して行われた小学部での取り組みを取りあげ、外部専門家として の関わりについて考察する。
Ⅱ A校との関わり
1 対象校について
A校は近畿地区にある公立ろう学校で、在籍児数は71名である(2019年5 月1日現在)。幼稚部・小学部・中学部・高等部が設置され、幼稚部入学前 の乳幼児への支援を行う乳幼児教育相談も行われている。文部科学省の「平
成29年度 特別支援教育に関する実践研究充実事業(次期学習指導要領に向 けた実践研究)」の委託を受けており、校内に学部縦断的なプロジェクトチー ムを発足させ、授業改善に取り組んでいる(同研究事業は13の府県・団体が 委託を受けている)。全校的な研究活動では、「聴覚障害のある幼児児童生徒 にとって、充実した言語活動とよくわかる授業づくり・授業改善を行う」を 研究テーマとして、「日々の授業において、基礎的・基本的な知識及び技能 を活用し、充実した言語活動をすることで、新学習指導要領が求めている思 考力・表現力等が育成されるであろう」という研究仮説のもと、授業改善に 取り組んでいる。
2 A校小学部での関わりの概要
A校小学部での外部専門家としての筆者の関わりは、授業改善に直結する 研究授業への講評と、授業改善に取り組むために必要と思われる知識・情報・
考え方などの講話であった。2017(平成29)年度から2019(令和元)年度に かけて合計4回の研究授業の講評と講演の機会を得た。表1に講演のテーマ を示す。
表1 小学部研究会での講演テーマ
実施年月日 テーマ
2017年4月28日 「きこえない子どもたちに身につけさせたい日本語感覚」
2018年6月1日 「聴覚障害のある児童へのわかりやすい話し方」
2019年3月9日 「『研究授業』をかえてみる」
2019年10月2日 「ろう教育の魅力」
紙面の関係で本稿では2019年3月の「『研究授業』をかえてみる」につい て概要を述べる。
(1)一般的な事後検討会(事後検討会A/図1)
研究授業後の事後検討会で行われがちの進行は次のようなスタイルであろ う。
①授業者から、授業の意図や当日の進行についての説明、授業を行っての反 省などが述べられる。
②参観者から、授業や指導案などに関しての質問や意見。
③質問や意見に対して、授業者が回答を行う。その後、②と③の繰り返し。
④助言者から、授業や指導案についての感想や意見、今後の課題などの助言。
⑤司会者がまとめを行う。
このような事後検討会は、場合によっては授業者の批判や質問攻めに陥り やすく、「授業者の力量形成を図るとともに、参観者が1つの授業から学ぶ」(14)
ことにつながらないことも多いと思われる。
(2)実践研究充実事業での授業研究会で実施している事後検討会(事後検 討会B/図2)。
同校では一般的な事後検討会とは異なるスタイルを試みている。
図1 事後検討会A 指導案
作成 授 業 事後検討会
授業者 助言者 司会
他の教員
1. 授業者から…
・意図/説明/… 2. 参加者から…
・質問/感想/意見/…
・よかったところ 3. 授業者から…
・応答 4. 助言者から…
・感想/意見/…
・課題 5. 司会者から…
・まとめ 授業者は…
「次はさらによくする ぞ!」
参加者は…
「ここを真似してみよう」
「なるほど、そうか!」
①参観者は授業を参観して自分自身が「学んだ点」と授業に対する「疑問点」
の2つの観点別に付箋に記入し、授業後に提出する。
②事後検討会までに、担当者が集めた付箋を観点ごとに集約し印刷し、配布 する。
③事後検討会では、出席教員全員で観点ごとに内容を確認し、意見交換を行 う。
この方法は、授業者の授業をもとに、各教員が何を学んだか、どのように 考えたかなど、教員の学びを交流することに力点が置かれている。
(3)小学部の授業研究会で行われている事後検討会(事後検討会C/図3)。
同校小学部では、少人数の教員組織だからこそ可能な事後検討会を行って いる。
図2 事後検討会B 指導案
作成 授 業 事後検討会
参加者が「学んだ点」・「疑問点」を記入し、一覧にして配布
他の教員 の「学び」
を重視
①事後検討会の冒頭で研究担当(学部主事)から焦点を当てたいテーマを提 示する(例えば、「子どもにわかりやすい提示方法について」など)。
②実施された授業について、テーマに沿って意見交換をする。
③5人程度の小グループに分かれる。
④研究担当者が事前に用意した教材(例えば、ろう学校用国語教科書の特定 のページ)を提示し、グループ毎に、即興授業を考える。グループ内で教 師役、児童役を決め、テーマに留意した授業構成を考え、即興授業の練習 を行う。
⑤グループ毎に即興授業を披露する(5分~10分程度)。
⑥即興授業後に他のグループの教員は、どのようなことに留意されているの かを述べ合う。
⑦即興授業をしたグループからのコメント(何に留意していたのかの説明)。
この事後検討会は、特定の観点から授業をみることによって、より具体的 な授業力の向上につなげようとする姿勢があると思われる。特にろう学校教 育の経験が浅い若手教員にとっては、留意すべきことを確認することができ
図3 事後検討会C 他の教員
授業者 司 会
「課題」
「テーマ」
グループで
話し合い 「即興授業」 コメント
・教材提示
・授業検討
・留意したことは何か?
・留意できていたか?
「教員間の共有化」、
「現場対応力の向上」
るとともに、他の教員の即興授業での指導方法を具体的に見て学ぶことにつ ながっている。
(4)筆者から提案した事後検討会のスタイル(事後検討会D/図4)。
筆者が今回提案した事後検討会である。あえて指導者についての発言は行 わず、子どもの様子について焦点を当てて発言を求めた。
①児童がどう学んでいたか、どう答えを導き出そうとしていたか、に注目し て、授業を参観する。
②観察した内容を全体で出し合う。
図4 事後検討会D 他の教員
指導案
作成 授 業 事後検討会
参加者:「子どもがどう 学んでいたか」を観察・
交換する
授業者:「何が想定外 だったか?」、「面白かっ
たところは何か?」
子どもの学び 方に気づく その授業から
「何を学んだ か?」を話し合う 授業者 司 会
Ⅲ 教員へのアンケート
同校でこれまでに実施している事後検討会(A~C)と新たに提案した事 後検討会(D)に関して、後日、小学部教員(12名)を対象にアンケート調 査(無記名方式)を実施した。
1 今回提案した事後検討会Dについて
今回提案した事後検討会Dについて尋ねた。4段階で尋ね、全員が「とて も良かった」(42%)、「良かった」(58%)の肯定的な意見だった。
回答した理由についての自由記述の一部を下記に示す。
・子どもの実態をより把握しやすくなりそうだから。
・研究授業者のプレッシャーが軽くなり、検討会が真の検討会に近づきそう だから。
・授業時の子どもの見方や見るポイントがわかったことが良かった。
・これまで指導者ばかり見ていたので改めて指導者を無視する勢いで子ども を見たことで、これまで気づかなかった点に気づけたから。
・批判されないから。
・子どもの思考の道筋を考えるという視点。
・子どものアセスメントを正しくとるきっかけになるから。
・PDCAサイクルの「C」は本来子どもの反応からしていくものだと思うの で。
・新たな視点で学ぶことができる。
・教師のモチベーション低下にならない。
・やはり、授業は子どものためにあるものなので、子どもを観察し、子ども から学ぶスタイルは良いと思います。
・子どもの様子を読み取ることもとても大切なことであると思いました。そ れを授業の中で見ていく中で、一人の先生の観点ではなく、複数の先生で 確認することで違う発見が見られたと思います。
・いつも指導者に意識を向けていたが、子どもの動きを見ることで、どう動 いたり、話したり、準備したらよいのかの気づきになったから。
・今までありそうでなかなかなかった視点であり、授業の捉え方もかなり違っ ていると実感できたので。
2 これまでの事後検討会Dと今回提案した事後検討会(A~C)の比較 当日は教員全員で授業を記録した映像を視聴した後、これまでよく行われ ていた事後検討会(事後検討会A)をまず実施した。その後、新たな事後検
討会の方法(事後検討会D)の説明と即興授業での体験を行った。引き続い て、新たな事後検討会(事後検討会D)で最初の授業映像を見直し、意見交 換を行った。事後検討会Aと事後検討会Dで、参加した教員に何らかの変化 があったかを尋ねたところ、全員は「変化があった」と回答した。
どのような変化があったのかをアンケートに記載してもらった。一部を抜 粋する。
・自分の失敗で頭がいっぱいにならなくなった。
・余裕を持てるようになり、子どもをより細かく観察できた。
・後半の方がどのような活動、場面の時に子どもがどう動くのかがわかって 面白かった。
・一つの授業に対し、「いい所探し」「悪い所探し」という見方から離れられ たことで、事後研というものに対して楽しさが増した。
・子どもの動き方をじっくり見ることで、心の動きが感じられた。
・子どもが手を挙げる時の心理や、子どもの動きの理由を考えることできた。
・他の先生の意見を聞いて視野が広がった気がする。
・子どもの反応ありきで教員の指示を見ることができた。
・見る視点が変化した。教師の指導方法、発問、話し方から子どもの仕草や 様子を見るようになった。
・1回目では、学級の児童と指導者に注目していましたが、2回目は、他の 子どもにも目を向けることができました。
・先生を中心に見ていましたが、子どもの反応を見ることで、子どもが理解 している所や、どんなことに興味を持っているのか改めて考えることがで きました。
・全員の子どもの動きが見れて、それによりアセスメントがとれた。
・子どもの細かな動きに気づき、「なぜこう動くのか」「この子はどんなこと が分かったのか」と考えるようになった。
3 事後検討会のスタイルごとのメリット・デメリット
同校で行われてきた3つの事後検討会(ABC)と今回新たに提案したス タイル(D)を含めた4つのスタイルごとについて、そのメリットとデメリッ トを尋ねた。結果を表2に示す。
表2 教師が考えた各事後検討会のメリット・デメリット
メリット デメリット
事 後 検 討 会 A
アドバイスしたがりの人には絶好の場。
反省点や課題を振り返りやすい。
教材研究を一緒にできる。(共有)
慣れているので意見が出やすい。
時間配分がしやすい。
意見が少なくても事後研の形になる。
良い見本として若手が学べる。
話のテーマが明確になり、議論を重ねやすい。
授業者の勉強になる。
他の人も勉強になる。
実際にやった指導者はほかの意見が参考になり、
参観者もよいものは取り入れようとする。
整理されていて、見通しを持ちやすい。
アドバイスしたがりの人がアドバイスのマシン ガンを撃って終わりになりやすい。
授業者のプレッシャーが半端ない。
たくさんの先生の意見を聞くことができる。
授業者の負担が大きく、反省から入る。
改善まで話が進まない。
ダメ出し、ほめあいになりがちである。その学 習で学んだことを生かしにくい。
定型的で発言しにくい雰囲気になることが多い ように感じる。
ダメ出しがでると、次への意欲や自信低下につ ながる。
授業者の反省ばかりに陥りやすい。
授業者のプレッシャーが大きいのと、参加者の 大半が受け身になりがち。
事 後 検 討 会 B
意見を言いやすい。
授業者もプレッシャーがまし。(Aと比べ)
感じたことをすぐに書ける。
改善点と良かった所がわかりやすい。
後から見て振り返りやすい。
思ったことを気軽に言える。
たくさんの意見がでる。
他の先生の視点がわかる。
授業を見るポイントを自分と比べられる。
他の人の指導から新しい気づきができる。客観 的視点を持てる。
意見を出しやすい。
他の先生の気づきを自分の学びに生かしやすい。
集約が大変?じっくり考えてからいえない。
特に何も感じなかったときコメントに困る。
事後検討会を設ける意味が分からなくなる。(配 布資料を見とけばいいとなる)
疑問点への返答がしにくい。
的外れな意見も載る。まとまりがなくなる。
意見のグループ分けが自分の思いと異なる。
意見の出し合いから話が進まないことも…。
ダメ出し、ほめあいになりがちである。その学 習で学んだことを生かしにくい。
自分にあてはめにくい、自分が認識していない 弱点の改善にはつながりにくい。
人によって捉え方が違うので書き方に困る。
ダメ出しがあると自信を失う。
事 後 検 討 会 C
授業者の負担がない。
即興授業なので気軽にできる。
グループ編成によっては検討が深まる。
コメントが受け入れやすい。
即興授業をすることで、その場で授業中での課 題や良い点を見つけやすい。
指導者のダメ出しでなくて、良い点に着目でき る。みんなで楽しんで参加できる。
全員が参加者になる。
毎回内容が異なるので、得るものが多い。
指導者では考えられなかった意見やひらめきが あることがある。
いろんな意見に触れ、話し合う良い機会。
ぶっつけ本番で力量がわかるし、発揮される。
グループなので安心感はある。
自分に置き換えて主体的に考えやすい。
リアルの授業でないので、実践度が下がる。
グループ内に仕切り屋(御意見番)がいたらや りにくい。
経験の長い先生が授業者になったとき、短い人 が意見を言いにくくなる。
テーマをしっかり持ってないとブレる。
本当の児童の反応でないため、授業に返りにく い。
楽しい学びで終わる可能性があり、深い学びに なりにくいことが考えられる。
模擬授業の先生一人に負担がかかる。
意図や目的を最初にオープンにしないため手探 りで暗礁に乗り上げる可能性大。準備ができな い。最初にやるグループは不利。
時間配分が難しい。(話し合いでの共有化に時間 がかかる?)
事 後 検 討 会 D
子どもの反応に対して、どのような働きかけが 必要かを考えやすい。
コミュニケーション能力の向上につながる。
自分の授業を提供しやすい。
子どもの学び方がわかり、どの学習にも生かせ るので、今後に生かしやすい。
授業や研究は全て子どものために行うので、子 どもの視点を考えるのは、有効的である。
やる側としては楽しめました。
視点が違うので、従来にない授業が見られる。
面白そうで、他の意見が聞ける。
授業者も参加者も自身へのプレッシャーが少な く、考えやすい。
実践につなげる時間がないと漠然と終わる可能 性があるかも。
子どもの反応をどこから観察するか。
子どもの学びに気づき、何を学んだのかの次に、
それをどのように改善していくかまでがないと、
子どもの実態把握どまりになることが考えられ る。
気づけなかった場合、意見が言えないため居づ らくなる。
授業者の明らかなミスを指摘しにくくなり、埋 もれる可能性がある。
授業者へのアプローチが少ない。
Ⅳ 考察
授業者に対しての助言ではなく教室の事実を観察して、何を学んだかを話 し合う協同での学び合いや教師の同僚性を築く重要性が指摘されている(15)が、
ろう学校において、このような事後検討会を行っているという報告は見られ ない。アンケート結果からも明らかなように、小学部教員には子どもの学び の姿から教師自身の学びへとつながっていた。授業者の授業力の向上を目指 したの意見交換が、授業者への批判や参観している教員自身の授業方法や指 導観・教材観の「主張」や「押しつけ」に陥りやすいことへの反省から、何 らかの対応を求めながらも具体的な方法が見つからないままこれまでのスタ イルを踏襲していたことを伺わせる意見が多く見られた。事後検討会の進め 方を学ぶ機会がほとんどないことが一因と思われる。
子どもの学びの姿から、子どもをしっかり見つめ、子どもの「学び方の特 徴」を把握することが、個に即した授業の実践につながる。子どもの反応を 事前に予想し、適切な対応を用意することが、子どもの主体的な学びにつな がるであろう。他の児童の発言から、どのような気づきを得て、考えるきっ かけとなり、「わかった!」に導けるかを考えることは、教師の発問や教材 に対する研究の深さが影響するであろう。
アンケート結果は概ね良好で、今回提案した事後検討会は具体的な方法の 一つとして小学部教員に受け入れられたように思える。しかし、それぞれの スタイルには「メリット・デメリット」があり、特定のスタイルが万能では ないと考えていることがアンケート結果からも理解できる。多様な事後検討 会のスタイルがあることを認識し、何に重点を置いての検討会なのかを明ら かにした上で、それぞれの「メリット・デメリット」を考慮して選択してい くことが現場の教員にとって負担なく、かつ充実感を持った事後検討会にな ることを示唆している。
授業研究会での事後検討会のスタイルについては、まだまだ多様な形態が ある(8)。対象とする授業者の教員の経験年数や対象とする子どもの実態や教 科などに応じて適宜選択していくことが現実的だろう。しかし、現場の教員 が多様な事後検討会のスタイルを学び、試していくことには時間的な制約も あり、忙しさの中で慣れた方法で行ってしまわざるを得ない現実もある。多
くの学校の研究授業や事後検討会に参加の機会がある外部専門家から他校で の取り組みを紹介してもらい、目的に応じたスタイルの選択の助言を得るこ とは、教員の授業力の改善に効果をもたらすと思われる。外部専門家はその ような現場の実態があることを理解し、現場の教員の授業力向上のための助 言をすることを認識し、1校の取り組みを他校へ紹介する橋渡しの役も担う 必要があろう。とりわけ、ろう学校のように、特別支援学校の中でも「準ず る教育」が可能である学校の場合、聴覚障がい教育の専門性の向上と授業力 の向上の両方についての深い知識と理解が必要とされる。ろう学校教員の全 国研究組織である全日本聾教育研究大会が毎年1回各地のろう学校持ち回り で開催されているが、その授業研究会の指導助言を行う大学教員などの専門 家はほぼ「固定」的な状況になっている。これは、ろう学校の授業について 専門的な立場で、現場の教員に有益な指導助言できる外部専門家が少ないこ とを意味している。それだけ専門的な関わりにむずかしさがあるためであろ う。そうであれば、ろう学校教員が外部専門家の指導助言を得るだけでなく、
教員間で自律的に成長できるような事後検討会を紹介・実践してもらい、事 例を蓄積していくことも必要であろう。本実践報告がその一助になることを 祈念したい。
文献
中央教育審議会 2005 特別支援教育を推進するための制度の在り方に ついて(答申)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/
05120801.htm
山本洋平・倉光志保・山中智子 2017 特別支援教育における外部専門 家の活用について~子どもたちの可能性をチームで伸ばすために~.平 成28年度高知県教育センター研究紀要.
https://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/310308/files/2017052500202/
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山本洋平・倉光志保・山中智子 2018 特別支援教育における外部専門 家の活用について~コミュニケーションに関する指導事例における教員 の意識・指導の変容~.平成29年度高知県教育センター研究紀要.
https://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/310308/files/2018042000092/
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児玉美津子・篠宮光子・島田蕗・鶴見隆正・小泉亜紀 2013 神奈川県 立特別支援学校における内部、外部専門家導入の取り組み.第49回日本 理学療法学術大会抄録集,Vol.41 Suppl.No.2,1568.
太田五月・髙津育美・小野峰子 2018 視覚支援学校における外部専門 家としての視能訓練士の活動.日本視能訓練士協会誌,47巻,239-247.
渡辺大輪 2012 特別支援学校の自立活動の個別指導における外部専門 家活用の効果―外部専門家活用シートを用いて―.上越教育大学特別支 援教育実践研究センター紀要,18,53-55.
霜田浩信・星野常夫・須田孝・高田豊・阿部和彦 2008 外部専門家に よる特別支援学校との連携の効果.文教大学教育学部紀要,42,103- 113.
京都府総合教育センター 2007 校内研修ハンドブック―授業研究の充 実を目指して―.
広島県立教育センター 2015 特別支援学校における授業改善・校内研 究推進ハンドブック.
兵庫県教育委員会 2019 兵庫県特別支援教育第三次推進計画.
石井英真 2017 教師の資質・能力を高める!アクティブ・ラーニング を超えていく「研究する」教師へ.日本標準.
石井英真 2018 授業改善8つのアクション.東洋館出版.
文部科学省 2017 特別支援教育に関する実践研究充実事業.
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main/006/h29/
1403693.htm
松村英治 2019 仲間と見合い磨き合う「授業研究」の創り方,P30,
東洋館出版.
佐藤学 2014 教師の学びと省察 一人ひとりを学びの主権者に育てる 協同的学びの創造.2014年夏の合宿研究会.
http://japan.school-lc.com/wp-content/uploads/6cd16ca897b9d3e2
b94f267294c0d6c2.pdf
要約
学校内外の人材の活用と関係機関の協力が掲げられている。特別支援学校 においては、主に医師、看護師、PT、OT、ST等の主に医療分野の専門家 との協力で、自立活動を中心として児童生徒の実態把握やケース会議などに 活用されている。「準ずる教育」を行うろう学校においては、教師の授業力 の向上も大きな課題であり、授業改善について外部専門家の活用について筆 者の関わりから考察した。研究授業後の事後検討会の在り方を複数のスタイ ルで実施してもらった。教員はそれぞれのスタイルのメリット・デメリット を感じながらも、子どもの学びに注目した事後検討会の有効性も確認できた。
学部専門家として1校の取り組みを他校へ紹介する橋渡しの役を担ったり、
教員間で自律的に成長できるような事後検討会を紹介・実践・事例の蓄積に つなげる役を担う意味は大きいと思われる。
キーワード:特別支援学校、外部専門家、授業改善、事後検討会