• 検索結果がありません。

ロイコトリエン受容体拮抗薬と抗ヒスタミン薬が著効した好酸球性胃腸炎の1例

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ロイコトリエン受容体拮抗薬と抗ヒスタミン薬が著効した好酸球性胃腸炎の1例"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

仙台医療センター医学雑誌 Vol. 11, 2021. 1 はじめに 好酸球性胃腸炎は、好酸球が消化管壁へ浸潤する. ことにより消化器症状を呈するが、原因不明の疾患. であり未だ治療法は確立していない。今回われわれ. は、好酸球性胃腸炎に対して抗アレルギー薬により. 治療が奏功した 1 例を経験したので報告する。. 2 症例 症 例:47 歳 女性 主 訴:心窩部痛. 家族歴:両親膵臓癌 既往歴:アレルギー性鼻炎・結膜炎、季節性の喘息 様発作あり. 生活歴:飲酒歴なし、喫煙歴 20-30 歳まで 30 本 / 日. 現病歴:当院受診 2 週間前より食後の心窩部痛を 認めたため前医を受診した。上部消化管内視鏡検査. では軽度のびらん性胃炎を認めるのみであり、プロ. トンポンプ阻害薬(PPI)を処方され経過を観察す ることとなった。その後も症状が改善しないため、. 好酸球性胃腸炎. 症例. ロイコトリエン受容体拮抗薬と抗ヒスタミン薬が 著効した好酸球性胃腸炎の 1例. 荒木沙月 1)、高橋広喜 1)、中川孝 1)、石沢興太 2). 1)国立病院機構仙台医療センター 総合診療科 2)東北大学病院総合地域医療教育支援部. 抄録. 症例は 47 歳、女性。当院受診 2 週間前より食後の心窩部痛を認めたため前医を受診した。上部消化管内視 鏡検査では軽度のびらん性胃炎を認めるのみであり、プロトンポンプ阻害剤を処方された。その後も症状が. 改善しないため、近医へ入院となり血液検査や CT 検査を施行するも特に異常は指摘されなかった。近医退院 後、心窩部痛により食事摂取不良、体重減少を認めたため当科へ紹介となった。腹部は平坦かつ軟、腹部正. 中から右側腹部にかけて圧痛を認めた。血液検査では、白血球数は 3,900/μL、好酸球数は軽度上昇 (650/μL、16.8%)していた。炎症反応は正常範囲内であった。総 IgE は 347.0 IU/ml と高値を呈していた。 既往症にアレルギー疾患があり、難治性の腹痛が持続していることなどから、好酸球性胃腸炎を疑った。再. 度上部消化管内視鏡検査を施行し、十二指腸球部前壁の発赤斑から生検を施行した結果、高度な好酸球浸潤. の所見を認めた。下部消化管内視鏡検査では回腸末端~直腸の浮腫状粘膜より生検を施行し、複数個所に好. 酸球浸潤を認めた。以上より好酸球性胃腸炎と診断した。ロイコトリエン受容体拮抗薬および抗ヒスタミン. 薬を開始後症状は速やかに軽快したため第 15 病日に退院した。退院 6 か月が経過したが再燃なく外来にて治 療を継続している。今回、ステロイドと比べ長期的使用による副作用の少ない抗アレルギー薬が奏功した好. 酸球性胃腸炎を経験したので報告する。. キーワード:好酸球性胃腸炎、ロイコトリエン受容体拮抗薬、抗ヒスタミン薬. (2021 年 1 月 29 日受稿、2021 年 3 月 19 日受理、連絡先:高橋広喜・仙台医療センター 総合診療科). 58. 仙台医療センター医学雑誌 Vol. 11, 2021. 近医へ入院となり血液検査や CT 検査を施行するも 特に異常は指摘されなかった。近医退院後、食事摂. 取不良、体重減少を認めたため当科へ紹介となっ. た。. 初診時現症:身長 156cm、体重 58kg、体温 36.8 ℃、 血圧 95/56 mmHg、心拍数 68 回 / 分、SpO2 98%. (room air)であった。眼瞼結膜:貧血なし、眼球 結膜:黄染なし。頚部リンパ節:触知せず。呼吸音:. 清、心音:整、雑音なし。腹部:平坦かつ軟。腹部. 正中から右側腹部にかけて圧痛を認めた。反跳痛や. 筋性防御はなく、グル音は正常であった。. 血液検査所見:白血球数 は 3,900/μL、好酸球数は 軽度上昇(650/μL、16.8%)していた。炎症反応 は正常範囲内であった。総 IgE は 347.0 IU/ml と 高値を呈していた(Table 1)。腹部造影 CT 検査で は胃・腸管壁の肥厚は認めないが少量の腹水を認め. た。また、ヘリコバクターピロリ抗体は陰性であっ. た。. 入院後経過:既往にアレルギー疾患を有し、血液検 査で好酸球増多・総 IgE 高値を認め、PPI 内服に ても改善しない腹痛が持続していることなどから、. 好酸球性胃腸炎を疑った。当院で再度上部消化管内. 視鏡検査を施行した。胃内観察では前庭部後壁側に. 小発赤斑を認めたため生検したところ、約 10-20/ HPF の好酸球浸潤を認めた(Figure 1 a,b)。また、 十二指腸は球部前壁後壁ともに小発赤斑が散在して. おり、前壁の発赤斑から生検を施行した結果、約. 40/HPF の高度な好酸球浸潤の所見を認めた. (Figure 1 c,d)。下部消化管内視鏡検査では、上行 結腸に一部発赤斑を認め、生検では約 20-40/HPF の好酸球浸潤を認めた(Figure 2 e,f)。S 状結腸か ら直腸にかけて粘膜は浮腫状を呈しており、S 状 結腸の発赤斑からの生検では約 20/HPF の好酸 球浸潤を認め、好酸球性胃腸炎と診断した. (Figure 2 g,h)。疾患最盛期の症状スコア(成人. WBC Neu Lym Eos. RBC Hb Plt. PT-INR APTT D dimer. TP Alb . AST ALT LD ALP CK Amylase Lipase BUN Crea Na K Cl CRP. IgE. 3,900 41.0 35.0 16.8. 495×104 14.5. 18.6x104. 1.10 27.9. 0.8. 7.1 4.4. /μl % % % (650 /μl) /μl g/dl /μl. sec μg/ml. g/dl g/dl. 25 22. 204 152 116 40 21. 9 0.49 138 3.6. 100 <0.1. 347.0. IU/l IU/l IU/l IU/l IU/l IU/l IU/l mg/dl mg/dl mEq/dl mEq/dl mEq/dl mg/dl. IU/ml. Table1: 入院時血液検査成績. 好酸球性胃腸炎. b. e f. g h. HE染色. HE染色. Figure 2:入院時下部消化管内視鏡検査と病理組織所見 (e) 上行結腸:粘膜は一部発赤斑を有するも、明らかな. 異常所見は認めなかった。. (f) 上行結腸からの生検:約 20-40/HPF の好酸球浸潤を 認めた。. (g) S 状結腸:粘膜は一部浮腫状並びに発赤斑を有して いた。. (h) S 状結腸からの生検:約 20/HPF の好酸球浸潤を認 めた。. b. a b. c d. HE染色. HE染色. Figure 1: 入院時上部消化管内視鏡検査と病理組織所見 (a)胃幽門部:前庭部後壁側に小発赤斑を認めた。 (b) 胃発赤部からの生検:約 10-20/HPF の好酸球浸潤を. 認めた。. (c)十二指腸球部前壁:小発赤斑が散在していた。 (d) 十二指腸球部前壁発赤域からの生検:約 40/HPF の. 高度な好酸球浸潤の所見を認めた。. 59. 仙台医療センター医学雑誌 Vol. 11, 2021 好酸球性胃腸炎. EGID 重症度評価票)では合計 21 点であり、中等 症に当てはまると考えられた。治療については、副. 腎皮質ステロイド治療に比べ副作用の少ないロイコ. トリエン受容体拮抗薬であるモンテルカストナトリ. ウム 10 ㎎ / 日および抗ヒスタミン薬であるレボセ チリジン塩酸塩 5mg/ 日を開始し経過を見る方針と した。治療開始後症状は速やかに軽快し、好酸球お. よび IgE は正常範囲内となり第 15 病日に退院した (Figure 3)。退院4か月目よりレボセチリジン塩酸 塩を中止し、ロイコトリエン受容体拮抗薬のみの内. 服で 2 か月が経過し外来経過観察中であるが再燃 はない。. 3 考察 消化管を主座とする好酸球性炎症症候群. (Eosinophilic Gastro-Intestinal Disorder:EGID) は、新生児~乳児における食物蛋白誘発胃腸炎、幼. 児~成人における好酸球性食道炎(eosinophilic esophagitis:EoE)、好酸球性胃腸炎(eosinophilic gastroenteritis:EGE)の総称である 1)。. EGE は 1937 年に Kaijser らによって初めて報 告された 2)。好酸球が消化管壁へ高度に浸潤し、. 様々な消化器症状を呈する比較的にまれな疾患であ. り、日本では 2015 年より好酸球性消化管疾患とし て難病指定されている。米国では、EoE が EGE よ り多いが、日本では EGE が EoE より約 5 倍と多 く、報告例も増えてきている 3)。EGE の中でも小 腸は好酸球浸潤が 72%と最も多く、大腸は 42%、 胃は 32% であり、胃への好酸球浸潤は比較的少な い 3)。. EGE の原因は明らかではないが、日本では EGE の 46% にアレルギー疾患の既往があり、そのうち 約 60% が気管支喘息、約 10% がアトピー性皮膚炎 および食物アレルギーである 3)。本症例ではアレル. ギー性鼻炎・結膜炎の既往、および季節性の喘息様. 発作を認めていたが、気管支喘息の診断には至らな. かった。. 診断は、厚生労働省好酸球性消化管疾患研究班. で作成し、2020 年に改訂された幼児・成人好酸 球性消化管疾患診療ガイドラインで行った. (Figure 4)4)。EGE では約 80% で末梢血好酸球増 多を示すとされ 5)、本症例も末梢血中に好酸球増多. を呈していた。上部消化管内視鏡検査では胃や十二. 指腸に小発赤斑が散在したが、びらんや潰瘍は認め. なかった。確定診断には生検で粘膜内に 20/HPF を 超える好酸球浸潤の有無が重要であり、本症例では. 胃の病理組織では約 10/HPF の好酸球浸潤にとど まったが十二指腸では約 40/HPF の高度な好酸球 浸潤の所見を認めた。さらに、下部消化管内視鏡検. 査の生検では、回腸末端、上行結腸、下行結腸、S 状結腸、直腸において、20-40/HPF の好酸球浸潤 を認め EGE と診断した。. 2013 年、Kinoshita らの日本人 144 人を対象と した研究では、ほぼ全例でステロイド治療が行われ. ていたことが報告されている 3)。EGE に対してス テロイド治療は有効であるが、ステロイドの漸減・. 中止により再発し、症状が慢性化する症例も多い 6)。. また、慢性化した症例では長期的にステロイドが使. 用されるため副作用が問題となる可能性がある 6)。 ステロイド以外の治療薬としては、抗ロイコトリエ. 好好酸酸球球性性胃胃腸腸炎炎のの診診断断((22001155年年)). 必須項目. 1. 症状(腹痛、下痢、嘔吐等)を有する。 2. 胃、小腸、大腸の生検で粘膜内に好酸球主体の炎症細胞浸潤が存在して いる(20/HPF以上の好酸球浸潤、生検は数か所以上で行い、また他の炎症性 腸疾患、寄生虫疾患、全身性疾患を除外することを要する。終末回腸、右 側結腸では健常者でも20/HPF以上の好酸球浸潤を見ることがあるため注意 する。) 3. あるいは腹水が存在し腹水中に多数の好酸球が存在. 参考項目. 1. 喘息などのアレルギー疾患の病歴を有する。 2. 末梢血中に好酸球増多を認める。 3. CTスキャンで胃、腸管壁の肥厚を認める。 4. 内視鏡検査で胃、小腸、大腸に浮腫、発赤、びらんを認める。 5. グルココルチコイドが有効である。. Figure 3:入院後経過. LLTTRRAA 1100mmgg//日日. HH11 bblloocckkeerr 55mmgg//日日. Figure 4: 好酸球性胃腸炎の診断基準 必須項目のうち、1 と 2 または 1 と 3 を満たすことが必 要である。参考項目も満たせば可能性は高くなる。. 60. 仙台医療センター医学雑誌 Vol. 11, 2021 好酸球性胃腸炎. ン受容体薬、ヒスタミン H1 拮抗薬、制酸薬等の投 与が行われている 7)8)。また重症度と難治度が必ず. しも一致するとは限らないため治療薬の選択は容易. ではないとの報告もあり 9)、現時点ではエビデンス. のある有効な治療法は確立していない 4)。. 本症例では、全身状態は比較的良好であったこ. と、患者がステロイド治療を希望しなかったことか. ら、ステロイドと比べ長期的使用による副作用の少. ないロイコトリエン受容体拮抗薬を投与した。ま. た、患者が以前アレルギー症状時の治療経験のあっ. た抗ヒスタミン薬の 2 剤を併用したところ著効し た。. どのような症例で抗アレルギー薬の効果があるか. は不明であるが、本症例のように全身状態が比較的. 安定している EGE において、ステロイド治療の選 択前に、抗アレルギー薬による治療が奏功する場合. がある。. 4 結語 ロイコトリエン受容体拮抗薬と抗ヒスタミン薬が. 著効し、ステロイドを使用せずに症状の改善を認め. た EGE の 1 例を経験した。アレルギー疾患の既往 や、末梢血好酸球増多を認める患者が、内視鏡検査. にて浮腫、発赤、びらんなどの所見を呈する場合に. は、EGE を疑い積極的に生検による組織検査を行 うことが重要である。. 本症例の要旨は第 22 回日本病院総合診療医学会 学術総会(2021 年 2 月、高崎)にて報告した。. 本論文の発表に関して開示すべき COI はありま せん。. 5 文献 1) 乳児~成人の好酸球性消化管疾患、良質な医療. の確保を目指す診療提供体制構築のための研究. 班.好酸球性消化管疾患(指定難病 98).. https://www.nanbyou.or.jp/entry/3935:2021 年 1 月 29 日アクセス. 2 ) Kai j se r R:Kennt i s der a l l eg i s chen Affektionen des Verdauungskanals vom Standpunkt des Chirurgen aus. Arch Klin Chir 1937;188;36. 3) Kinoshita Y, Furuta K,Ishimura N:Clinical characteristics of Japanese patients with eosinophilic esophagitis and eosinophilic gastroenteritis. J Gastroenterol 2013;48;333- 339. 4) 厚生労働省好酸球性消化管疾患研究班 . 幼児・ 成人好酸球性消化管疾患診療ガイドライン 2020年9月14日. https://www.ncchd.go.jp/ hospital/sickness/allergy/EGIDs_guideline. pdf:2021 年 1 月 29 日アクセス. 5) Mori A,Enweluzo C,Grier D,et al.: Eosinophilic Gastroenteritis:Review of a R a r e a n d Tr e a t a b l e D i s e a s e o f t h e G a s t r o i n t e s t i n a l Tr a c t.C a s e R e p Gastroenterol,2013;7:293-298. 6) 新谷紀享,赤根祐介,和田励:ステロイドの投 与なく改善した著明な好酸球増加症を伴う好酸. 球性胃腸炎の1例.函医誌 2014;38:12-15 7) 小林愛子,進士明宏,溜田茂仁,他:十二指腸. 潰瘍を形成し,ステロイド減量時の維持療法に. 抗アレルギー薬の多剤併用が有用であった好酸. 球性胃腸炎の 1 例.ENDOS FORUM digest dis,2012;28:109-114. 8) 米山俊之,工藤孝広,藤井徹,他:ロイコトリ エン受容体拮抗薬が奏功した好酸球性胃腸炎の. 14 歳女子例.日本小児栄養消化器肝臓学会雑 誌,2016;30:66-70. 9) 三浦典正,三浦直也,藤瀬雅史,他:胃体上部 に潰瘍性病変を来した好酸球性胃腸炎の 1 例. 日消誌,1994;91:1016-1021. 61

参照

関連したドキュメント

対象と方法 対象 観察 1 年以上を経過した好酸球性中耳炎 41 人 60 耳 方法 中耳貯留液のサイトカイン 27 項目を測定した。 検体 60

(2) 慢性アレルギーにおける好塩基球の役割 重症喘息患者の剖検で,肺への多数の好塩基球の浸潤が

入院時検査所見(Table 1):白血球増多はないが,好 酸球の増加があり実数は 3,600/μl

肺胞洗浄液(BALF)の好酸球が増多する疾患は急性 好酸球性肺炎(AEP),慢性好酸急性肺炎,アレルギー

好酸球性消化管疾患 Eosinophilic Gastro-Intesinal Disorders (EGID)には、食道のみに炎症が限 局している好酸球性食道炎 (Eosinophilic

 HESでは,本症例と同様に心病変の合併がしばしば

乳児における食物蛋白誘発胃腸炎 (ここでは日本における Food-Protein Induced Enterocolitis Syndrome という意味で

消化管を主座とする好酸球性炎症症候群(Eosinophilic Gastro-Intestinal Disorder: EGID)は、新生児- 乳児における食物蛋白誘発胃腸炎