学校と地域の関係構築をねらいとする
公立高等学校における広聴・広報活動の構想と実践
学校に対する地域の支援的な態度の形成と教職員における生徒像の認識形成を目指して
高度学校教育実践専攻 学校・学級経営コース 渥 美 真 人
I 実 践 編 1 実 習 の 課 題 (1)置籍校の概要
置 籍 校 は 、 進 学 と 就 職 が ほ ぼ 半 数 ず っ という公立普通科高校(生徒数 555名、 教 職 員 数49名)であるO ま た 、 創 立 し て
3 1年 の 市 内 唯 一 の 高 等 学 校 で あ り 、 在 校 生 の 約 6割が市内 4校 の 中 学 校 か ら 進 学してきているO
(2)置 籍 校 が 直 面 し て い る 問 題
学 校 外 部 者 の 評 価 の 低 さ や 一 面 的 な ネ ガ テ ィ ブ な 情 報 の 流 布 な ど に よ っ て 、 志 願 者 の 確 保 や 地 域 か ら の 学 校 に 対 す る 信 頼 な ど 、 学 校 経 営 に お け る 大 き な 問 題 を 引 き 起 こ し て い る と い う 現 状 が あ るO 同 時 に 、 学 校 の 内 部 に お い て も 、 学 校 生 活 に 関 す る 教 員 の 生 徒 評 価 と 生 徒 の 自 己 評 価 が 大 き く ず れ て い る ( 教 員 の 方 が 生 徒 を ネ ガ テ ィ ブ に 認 識 す る 傾 向 ) な ど 、 生 徒 の 思 い や 学 校 生 活 に 関 す る 意 識 に つ い て、校内でも把握し切れていないという 現状もあるO
(3)置 籍 校 の 課 題
上 記 の よ う な 現 状 に 対 し て 、 置 籍 校 の 広 聴 ・ 広 報 活 動 の 現 状 と 問 題 点 を 明 確 に
実 習 責 任 教 員 佐 古 秀 実 習 指 導 教 員 久 我 直 人
しながら、公立高等学校における広聴・
広 報 活 動 の 在 り 方 を 踏 ま え 、 広 聴 ・ 広 報 活 動 の 具 体 的 な 改 善 を 組 織 的 に 展 開 す る ことを本実習の目的とした。
2 置 籍 校 の 広 聴 ・ 広 報 活 動 の 実 態 分 析 実 習 の 作 業 と し て 、 ま ず 年 聞 を 通 し て の置籍校の広聴・広報活動を洗い出し、
整 理 し た 上 で 、 以 下 の 置 籍 校 の 問 題 点 を 明らかにした。
①組織体制の脆弱さ(個業性)
② 戦 略 性 ( 対 象 者 に 対 し て 何 を ど う 広 報 するかについての方針や計画)の弱さ
③ 広 報 内 容 の 形 式 化 ( 置 籍 校 の 教 育 の 状 況 や 生 徒 の 様 子 を リ ア ル に 伝 え 切 れ て いない)
3 広 聴 ・ 広 報 活 動 改 善 の 基 本 方 針 以上の分析をもとに、実習として取り 組 む 広 聴 ・ 広 報 活 動 の 基 本 方 針 を 以 下 の 3点とした。
① 広 聴 ・ 広 報 活 動 の 組 織 化
② 対 象 者 ご と の 適 切 な 広 報 活 動 の 展 開
③ 特 に 生 徒 を 主 体 と し た 広 報 活 動 の 展 開 (生徒の様子や事実をリアルに広報する
ことで学校をよりよく理解してもらう) ま た 、 先 行 研 究 等 の 検 討 を も と に 、 学
校 広 報 の 在 り 方 と し て 以 下 の2点を実現 するととを想定して、実習をすすめると
ととした。
①宣伝活動ではなく、学校と学校関係者 (置籍校の場合には中学校関係者と市 内住民)に対する学校の実情に関する 積極的な情報提供を行う(学校に関す
る認識形成)。
②さらに、一方的な情報の提示だけでな く、学校に対する評価や期待等を汲み 取り、それをさらに返していくという 応答的なコミュニケーションへの接近
とそれに基づく関係構築(信頼形成) を図るO
4 実習の実施内容
(1)広聴・広報活動の組織化
広聴・広報活動の中心的・支援的役割 を果たす校内組織として「広聴広報室j
を設立し、管理職や各分掌と連動させ、
広聴・広報活動を展開した。
(2)広聴活動の実施
1)学校外部者を対象とする学校認識に関 する情報収集
市内4中学校(中学校教員・中学生・
中学生保護者)を対象に置籍校の情報提 供や情報を得ている機会などを調査し、
置籍校に対する中学校関係者の認識や評 価を全教員で把握・共有した。
2)学校内部者を対象とする学校認識に関 する情報収集
a.在校生
全校生徒を対象に、置籍校に関する入 学前後の印象を調査し、入学前後の印象 の違いと置籍校生徒から見た置籍校に関 する認識を把握した。
b.教員
現状の広報活動や置籍校のよさや特長 についての調査を行い、学校内部から見 た 置 籍 校 の よ さ や 問 題 点 の 把 握 を 行 っ た。
(3)学 校 外 部 に 対 す る 広 報 活 動 の 整 備 と 実施
1)対中学校
a.中学校に対する調査結果等のフィード パックと意見収集
中学校訪問を通して、中学校関係者へ の調査結果等のフィードパックとそれを 基とした今後の置籍校の広報活動の方針 や置籍校生徒への調査結果を基とした生 徒から見た置籍校のよさや特長を生徒の 生の声として発信した。同時に、置籍校 に関する中学校教員の生の声を直接聞く 機会ともした。
b.紙面媒体による広報活動
中学生にターゲットを絞った学校だよ りを発行し、置籍校の情報が届きにくい ために起とる伝聞的・偶発的な情報、ま た は 一 面 的 で 好 ま し く な い 側 面 で は な く、置籍校の活動や生徒自身の活動、ま た生徒の生の声を通して正しい情報(事 実)をできるだけ分かりやすく発信した。
c.生徒による学校説明(中学校別体験発 表会)
教員による高校説明会から置籍校の各 中学校の卒業生による中学別体験発表会 を実施し、高校全般のととや置籍校のよ さなどを生徒を通じて直接伝えた。また、
中学別体験発表会については、各中学校 の評価や発表生徒の感想等を集約し、全 教員で共有した。
1)対市内住民
a.紙面媒体による広報活動
市の広報誌(毎月発行)への掲載や地 元新聞社の活用を通して、置籍校の情報 を積極的かっ定期的に発信し、周囲の評 判(=風評)ではない学校内外の生徒の様 子を伝えた。
b.生徒による地域貢献活動としての広報 活動
ア.生徒による自発的な地域貢献活動 正門や駅前等での生徒による自発的な 挨拶運動・清掃活動を行い、市内住民に 直 接 生 徒 の 姿 を 見 て も ら う こ と に よ っ て、生徒のよさを伝えた。
イ.チャリティカレンダーを活用した地域 貢献活動としての広報活動
関与生徒の拡大や学校内部のカレンダ ーから地域のカレンダーという位置づけ への変換を行い、生徒自身による作成か ら販売までの一連の過程を通して生徒の よさを学校内外へ伝えようとした。
(4)学 校 内 部 ( 教 員 ) に 対 す る 広 報 活 動 の改善と実施
a.学校外部者の学校認識に関するフィー ドパック
学校外部者を対象とした調査結果をフ ィードバックし、それを基とした今後の 広報活動を全教員で把握・共有した。
b.生徒の学校認識に関するフィードバッ ク
生徒を対象とした調査結果をフィード バックし、生徒の置籍校に対する思いや 認識を全教員で把握・共有した。
C.広報活動の経過等に関するフィードパ ック
各実践における過程や学校内外の評価 を校内へ積極的かっ連続的にフィードバ ックし、常に全教員で把握・共有した。
5 実習の成果
(1)広報活動の組織化について
広聴・広報活動に直接携わった広聴広 報室の教員による学校における広聴・広 報活動の重要性の認識やそれに伴った広 聴広報室以外の教員への波及効果が見ら れ、広聴・広報活動を学校の周辺的な位 置づけから中核的な位置づけに多少なり
とも変換することができた。
(2)学 校 認 識 に 関 す る 学 校 内 外 の 情 報 の 収集と分析(リサーチ)
1)中学校関係者を対象とした調査 中学校関係者にとって置籍校に関する 情報は周囲から得た情報がほとんどであ り、特に、中学校教員に関しては、生徒 の学校生活や活動の様子など、本当に知 りたい情報を得ることができていないと いうことが確認された。
2)置籍校生徒を対象とした調査
置籍校への入学前後の印象から、入学 後は生徒自身が置籍校のよさを見出して いることが分かつたが、そのよさや特長 が学校外部に伝わっていないことも入学 前の印象から読み取ることができた。
3)置籍校教員を対象とした調査
教員自身が学校外部に対して学校の正 確な情報(生徒の活動や様子等)が伝わ っ て い な い と 考 え て い る こ と が 分 か っ た。
これらのことから、学校内部(教員) と学校外部者(特に中学校関係者)との 学校に対する認識や評価のズレや教員と
生徒との聞に生徒の活動や学校生活を含 む学校に対する実態認識のズレが生じて いるととが明らかになり、そとから新た な広報活動の方向性を見出した。
(3)生 徒 を 主 体 と す る 広 報 活 動 と そ の 効 果について
生徒の声や姿を紙面媒体や直接目に見 える形で伝え、生徒のよさや特長を前面 に出した広報活動によって、学校外部者 の評価は高く、今までの置籍校に対する 学校外部者の認識を変容させるのに十分 な成果を残した。特に、中学校関係者は 置籍校に対する認識が大きく変容した。
(4)校内広報活動とその効果について 学校外部の認識を校内へ取り込むとと によって、外から見た学校に対する認識 や評価を把握・共有するととができ、学 校 の 課 題 や 問 題 点 を 見 出 す こ と が で き た。また、生徒を主体とした各実践を校 内へ伝えることによって、生徒のよさや 特長のフィードパックと生徒像を共有す
る手立てとした。
6 学校における広聴活動の在り方に対 する示唆(総括的考察)
(1)学校における広聴活動の重要性 学校に対する学校外部者の率直なニー ズや認識を定期的に掘り起とし、それを 校内で把握・共有するととによって、一 人一人の教員が学校のよさや特長を確認 するとともに、学校の課題を見出し、焦 点化して教育活動の活性化を図る必要が あるO
(2)生 徒 を 主 体 と し た 広 報 活 動 の 重 要 性 学校外部者が最も知りたいと考えてい る生徒のよさや特長、また成長について
の情報提供を積極的に行い、学校が情報 源となって行い、生徒の活動や様子の実 態、また生徒の生の声や姿を積極的かっ 直接的に発信するとともに、地域貢献活 動などの生徒の自主的な活動を実施して いくととが必要であるO
(3)広聴・広報活動の組織的な展開 広聴・広報活動を個人の渉外業務とし てではなく、広聴・広報活動の中心的・
支 援 的 役 割 を 果 た す 校 内 組 織 を 立 ち 上 げ、広聴・広報活動を学校の周辺的な位 置づけから中核的な位置づけへと変換す るととが必要で、あるOそのことによって、
より発展的かっ深化した広聴・広報活動 を展開するととができ、また、校内への 広報活動によって、学校における各実践 のフィードパックや生徒像の共有の手立 てとするとともできると考えるO
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自分の視野に収まる一部分の学校だけ ではなく、学校全体から学校組織や教育 活動を考えるととと実践と省察、実践と 理論の一体化の重要性に気づかされた。