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軽減する取り組み

著者 酒井 晴美

雑誌名 福井大学教育実践研究

巻 32

ページ 167‑178

発行年 2008‑01‑31

URL http://hdl.handle.net/10098/1659

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はじめに

Aさんは,自閉性知的障害の中学3年生である。いろ いろなことに興味・関心が高く,意欲的に活動する生徒 である。反面,やりたい気持ちが抑えられずトラブルに なることもある。また,過去の経験をよく記憶している ため,それと同じ場面や似た場面で記憶と違うことが起 こったときにはパニックになることがある。その一番顕 著なものが外出であり,好きな活動であるがゆえにパニ ックを起こすことも多い。特に徒歩での外出では,自分 の思うとおりに歩きまわろうとし,止めると寝転がって 泣く,頭を打ち付けるなどの自傷行為,支援者をかんだ りひっかいたりするなどの他傷行為が見られる。そのた め,体が大きくなった小学部の高学年の頃から支援者が 複数で対応することも少なくなかった。支援者の体制が 十分でないときには,Aさんの意に反し,校内での活動 を役割として担当することも多かった。

しかし,「個別の教育支援計画」を作成するにあたり,

「社会参加」ということを考えたときに,やはりこの外 出の困難さは,それを妨げる大きな要因になることが容 易に想像できる。また,就労を考える上でもその困難さ を軽減していく必要がある。Aさんの理解力やコミュニ ケーション力の向上が見られるなど,支援していく上で 手がかりとできるものも増えてきたことから,外出の困 難さの軽減の取り組みを実践する機が熟してきたと考え,

平成18年より買い物を通した外出活動の取り組みを始め た。その際に,Aさんと支援者が社会的相互交渉を行う ことで,Aさんが理解し,納得することを支援の第一と 考えた。この実践は,短期での変容は難しいので,2年間 の継続課題として取り組んだ。

「社会参加」のためには,学校だけで行うのではなく,

学校外のいろいろな他機関とも連携をしていく必要もあ

る。Aさんが理解し,納得するためには,どのような支 援が有効か,どのような支援が共有できるかということ も視野に入れてこの実践に取り組んでいく。そして,高 等部卒業までには,外出時でもスケジュールに沿った行 動や,必要な場面では集団行動がとれること,そしてA さんとAさんの支援者双方が,いろいろな活動や余暇で Aさんの大好きな外出を楽しめるようになってほしいと 考えている。

Aさんについて

《認知,社会性,情緒などの実態》

*発声は「あ」「ま」「ば」「ぱ」「ん」の5音で,意味の ある発語は「まま」のみ。理解言語は音声での言葉も,

日常使っている言葉なら2語文程度にして端的に伝え ることにより理解できる。ひらがなは清音は一文字な ら音声と文字が一致する。Aさんの日常生活の中でよ く使っているシンボル・絵については,文字(固まり での理解)・音声・意味が一致して理解している。絵 カード,身振り,手振り,指さし,クレーンなどで要 求や挨拶などを伝えようとする。表情が豊かで,それ によっても自分の感情を相手に伝えられる。

*数字も,「1」=「いち」という音声と一致している。

数字は順序数として理解しており,1〜10までは昇順

・降順の数唱は理解している。

*「仕事・紙刷り」の活動で行ってきたように,タイマ ーを3分にセットすること,その時間分だけ待ったり 作業したりすることができる。

*校門の出入りの仕方,給食時のワゴンが来るタイミン グ,友だちが席を立つタイミングなど,過去に経験し たことと同じ場面や似た場面で,過去の記憶や体験を ルール化し,それと違うことが起こったとき,自傷・

継続的な買い物をとおした

Aさんの外出の困難さを軽減する取り組み

福井大学教育地域科学部附属特別支援学校 酒 井 晴 美 教育実践報告

近年,障害のある人が「社会参加」すること,「地域で暮らす」ことが言われている。その視点に立 って,学校でも個別の教育支援計画が作成されるようになり,「特殊教育」から「特別支援教育」への 転換がはかられている。障害のある人たちは,社会参加をすることに多くの困難を抱えている。しかし,

きちんとした支援と理解があれば,社会の中で自分らしく生きていくことができる。本稿では,外出時 にパニックを起こしやすいAさんの困難さを軽減する取り組みについて述べる。外出時のパニックが多 いということは,すなわち社会参加が困難であるということにつながる。そこで,Aさんの外出の機会 を定期的・継続的に持ち,その中でどのように支援をしていったらこの困難さが軽減できるかを探って いく実践を行った。Aさんの実態から考えて,Aさんが支援者との社会的相互交渉を行いながら,スケ ジュールに対して「見通しが持てる」「納得する」ことを第一とした。

キーワード:社会参加,外出の困難さの軽減,スケジュールの理解と見通し,社会的相互交渉

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他傷などのパニックになることもある。

*「〜したら〜する」程度の予定を理解したり,記憶し たりすることはできる。しかし,校外に出た場合,バ スや信号などの好きな物が目に入ったり,「これがし たい」という強い思いがあったりすると,予定にない 行動をすることもある。

*やりたいと思ったことはなんとしてでもやり遂げよう とするバイタリティがある。やり遂げるために試行錯 誤することもできる。

《外出時の実態》

*外出は大好きである。特にバスや電車など乗り物に乗 っての外出を好む。

*エレベーター・信号など,好きな物を見つけると,そ こに行こうとし,なかなかやめられない。行くのを止 めようとしたり,やめさせようとしたりするとパニッ クになり,他傷・自傷行為をおこす。

*道にこだわりがあり,一度通った道は覚えている。道 順にもこだわりがあり,「ここに行くならこの道」と いう行動を示す。外出を終えることを拒み,特に学校 への帰路にさしかかるとパニックになり,他傷・自傷 行為をおこすため,徒歩での外出の際にはなかなか帰 校できないことも多い。

*支援者のかかわりや対応を覚えている。一度経験した ことを自分のルールとしてしまい,同じ場面や似た場 面で禁止をすると,パニックになることも多い。

*パニックになると支援者が複数必要な場合がある。

《実態からくる問題点》

*支援者が複数必要になったりすることなどから,現在 および将来において,Aさんにとっては大好きな外出 の機会が制限される。ひいては余暇活動など,社会参 加が制限されることにつながる。

*保護者は,外出の困難さの解消に積極的に取り組んで いる。しかし,Aさんの年齢も上がり,体も大きくな ったので,支援も小さいときのようにはいかず,外出 に慎重になっている。

《徒歩での外出に取りめると考えたAさんの成長》

平成18年5月に中学部で行った「ふくい健康の森」で,

教師がエレベーターの位置を把握していなかったため,

止めることができず,最初の活動場所であるプールでは なく,エレベーターの前に行ってしまった。今までなら,

ここでやめさせようとすると,大きなパニックを起こし ていた。しかし,持っていた予定カードの食事の後にエ レベーターの絵を描き込み,それを指さしながら「プー ル入って,ご飯食べてからエレベーター」と伝えると,

すっとエレベーターから離れ,スケジュールに沿った行 動ができた。

プールも好きな活動であるということもあろうが,こ

のことから,家庭や学校で行ってきた「〜してから〜す る」ということが,いちばん抑制のききにくい場面でも 受け入れられるようになってきたことが感じられた。そ こで,予定カードや絵を伴った声かけによる支援を行う ことで,Aさんが見通しをもち,納得して行動すること ができるようになるのではないか,ひいては,外出時の パニックがなくなるのではないかと考えた。そこで,外 出時の困難さの解消に取り組むこととした。

研究の方法

《活動時間》

くらし「ゆうゆうタイム『料理』」の時間に行っている。

平成18年度は毎週月曜日と火曜日の9:30〜10:30。平 成19年度はこの時間をさらに延ばし,毎週月曜日と火曜 日の9:30〜12:10とした。活動メンバーは両年度とも 7人。主に月曜日に買い物に行き,火曜日にその食材を 使って料理をしている。

《支援の方針》

*抑制しがちであった徒歩での外出の機会を定期的・継 続的に持つ。散歩のように目的や始点・終点がはっき りしない外出ではなく,買い物学習と絡めた。学校を 出る→買い物する→学校へ帰るという目的や始点・終 点がはっきりし,Aさんにとってわかりやすいと考え たからである。

*基本的に支援者は1対1で対応する。家庭では母親と Aさんで外出することも多く,できるだけその状態で 支援者もAさんも活動できるようにする。

*集団で歩く際には,安全性の高い農道を使用している。

しかし,Aさんは押しボタンの信号を通るという自分 のルールがとても強いこと,崩そうとするとパニック になること,そうなると人手が複数必要になること,

また,どちらのルートも時間差がほとんどないこと,

現在の活動グループはAさんに担当教師が1対1でつ いても指導体制上それほど支障がないこと,現在の担 任は別ルートを通ることを承認してきたことなどの経 過があり,その関係の中ではAさんは許されるものと の認識を持っているので,他の人がかかわるよりもパ ニックが大きくなるため,別ルートを通ることは許容 する。

*常時用いる支援ツールは,店までの周辺地図(図−1)

と,買い物の予定カード(図−2)で,A5にプリン トし,首かけ式の透明ソフトファイルに入れてAさん が持って出かける。買い物の予定カードには,Aさん の行動を見ながら,必要に応じてやり取りや書き込み をする。その他,携帯・デジタルカメラ・ビデオ・タ イマーなども,必要に応じて使用する。そうした支援 ツールを通じて,Aさんが社会的相互交渉の力をつけ,

「スケジュールを理解し,見通しを持つこと」「納得 して次の行動に移ること」ができるようにする。

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活動記録

《記録の仕方》

Aさんの担当教師が,買い物に出る際の支援者として かかわりながら,その中で記録を取る参与観察を中心と する。Aさんがどのような行動を取るか,問題行動があ ったときの前後の状況や行動はどのようなものであった か,さらに,問題行動に対して担当教師がどのように考 え,どのようにやり取りをしながら支援し,その結果ど うであったかということに留意しながら記録していく。

また,買い物においては,店内にあるカートや自動ドア などに対するこだわりもあるため,行き帰りだけなく店 内での行動も含めて記録していった。

Aさんの外出時の困難が軽減されたことを示すものと して,学校から量販店Aコープまでの所要時間,Aコー プ内での所要時間,Aコープから学校までの所要時間,

買い物にかかった所要時間をグラフにし,この項の末尾 につけた(図−4)。

《平成18年度のねらい》

Aさんのねらい

①予定カードで活動の流れが理解できる。

②教師の声かけや書き込みによって,自分の気持ちを 調節しながら予定に沿って行動できる。

教師の取り組み・ねらい

①外出を重ねる中で,いろいろなアプローチを試み,

結果を記録し,どこでつまずくのか,どう混乱して いるのかを分析し,支援を検討する。

②Aさんがかかわっている療育関係の方と状態を共有 し,アドバイスをいただくなどして次の支援に生かす。

《平成18年度の活動記録》

5月22日

往路:Aコープに向かう信号を渡ろうとせず,違う方向 に行こうとしていた。しかし,何かのきっかけで渡った。

さらにAコープを通り過ぎてもっと先へ行こうとした。

「今日は買い物に来たよ」と,止めると怒っていた。そ こで,携帯のムービーで予定カードを撮って,それを見 せながらもう一度「今日は買い物にきたよ」と言うと,

「そうだった」と気持ちを切り替え店内に入った。

店内:スムーズであった。

復路:Aコープ前の信号をなかなか渡ろうとしなかった が,大好きな自転車が通りかかり,それと一緒に信号を 渡った。続いて学校の帰路とは反対の方向に信号を渡っ てしまい,さらに行こうとしたので,「もう行かない」

と言うと怒っていた。そこで,地図を見せながら「押し ボタンの信号に行こう」と言うと,怒りが長引くことは なくそこまで歩いた(写真−1)。しかし,押しボタン の信号では,ボタンを何回も押すものの,座り込んでな かなか渡らず,「あと一回で終わり」と言われるたびに 図−1 量販店Aコープまでの道のり

図−2 買い物の予定カード

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怒っていた。携帯のムービーを使って次の予定を説明し ても入らなかった。そこで,無理に終わらせるのはやめ て,様子を見た。20分ほどして気持ちが落ち着き始めた ので,「もう行くよ」と強めに背中を押すと走って渡り,

あとはすんなり歩いた。

次回に向けて:買い物に取り組む最初であったが,あち こちに行きたい気持ちがあって,Aさんの中で「ここ」

と一つに定めることができず,いろいろな場所で,もっ と先へ行きたがるものの,ちょっとしたきっかけや促し によって動くことができたように思う。押しボタンの信 号にこだわったのは,それ自体が好きなものであること もあるが,学校が見えてきて外出の終わり受け入れたく ないという気持ちもあるようだ。Aさんの気持ちが高ぶ っているときには,何を言っても入らなくなるので,早 めの声かけができるように,Aさんの行動を予測するこ とが必要である。また,信号をどうやったら終わるかを 伝えることも必要である。

6月19日(買い物場所がハニーに変更)

往路:Aコープが改装のため休業となり,3分ほど遠い 量販店ハニー(図−3参照)へ行く。いつものようにA コープ前の信号を渡ろうとしたので,カードのAコープ に×をつけ,矢印を書き込み,まっすぐ行くこと,ハニー

へ行くことを伝えると,そこは受け入れて直進した。し かし,ハニーの前の信号も渡ろうとした。今日は大通り の交差点を渡っていないので,「一回だけならいいよ」

と言い,渡ったらその信号に×をつけ,「次渡ったら買 い物するよ」と言い,渡り終わるとまた信号に×をつけ ると,一往復で買い物に向かった(写真−2参照)。 店内:カレー粉を買う係だったが関心を示さず,ウィン ナーをかごに入れようとした。あらかじめ用意しておい た×をつけたウィンナーの写真を見せ,「今日は買わな い」と言うとあきらめたが,次にヤクルトを入れようと した。これもダメと言ったが,まだ飲み物をいろいろ触 って入れようとしていた。のどが渇いたのかもしれない と考え,「一つだけならいいよ」と言うと,Aさんは牛 乳をかごに入れ,納得してその場を離れた。

復路:逆方向にならない限りAさんの行きたいルートに 任せると,まっすぐに落ち着いて帰ることができた。

次回に向けて:スムーズに行けたのは,道の選択をAさ んに任せたためか,好きな物を一つ買うことを許容した からか,暑さのせいか,新しいところだからか,いくつ か考えられる。一つ一つ検証をしていきたい。「行かな い」「終わり」の意味を表す×の書き込みは,Aさんの 納得を促すのに有効であった。

写真−1 学校の帰路とは反対方向へ信号 を渡ってしまい、戻るところ

写真−2 行き先が変わったことを伝える

図−3 量販店ハニーまでの道のり

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7月10日

往路:押しボタンの信号を渡り,Aコープの前の信号を 渡ろうとしたので,「ハニーに行くよ」と伝えつつ,信 号を渡った。次の信号でもハニーの方に曲がらずに直進 しようとしたので,ここで予定カードを見せ,「今日も ハニーに行くよ」と伝えた。すると,文句を言いながら も走ってハニーに入った。

店内:まず飲み物の所へ。「一つだけならいいよ」と言 うと,Aさんの好きなリプトン紅茶をかごに入れた。そ の後,今日買う係になっているピーマンを探して買った。

復路:途中まではスムーズだったが,たんぼ道に入って から,連合体育大会のときに走っているマラソンコース の方に走り出した。学校から遠ざかる道なので,「こっ ちの道はだめ。行かない」と止めるとしばらくは怒って 泣いていた。そこで,行くことは止めながら泣きやむの を待った。泣きやんだところで,「学校で紅茶飲もう」

と誘い,強めに手を引くと学校へ向かった。

次回に向けて:買い物場面では,Aさんの目的意識にも つながり,落ち着いて買い物ができるので,保護者の了 解を得て,飲み物を一つ買うことを許容することとした。

また,コース上ならみんなと違うルートを使ってもOK,

コース上から外れたら×というルールはきちんと伝え,

譲らないようにしたい。学校から遠ざかっていくと,気 持ちが高ぶって収拾がつかなくなる場合が多いからであ る。伝えた後は,強引に連れて帰るのではなく,Aさん が気持ちを調整する時間を取ることも必要だと感じた。

7月19日(生活合宿のため,午後の買い物)

往路:平成17年の合宿はバスで出かけた。合宿の流れで 買い物に出かけたので,予定カードは見せたものの,A さんはすっかりバスでの外出だと思い込み,スクールバ スを探していたが,車庫に入っていたので,それなら路 線バスではと考え,走ってバス停に向かった。教師の予 測が甘く,後を追う形になってしまった。そこで,バス 停で予定カードにバスの絵を描き,その絵の上に「バス は乗らない」と言いながら×をつけた。さらに,携帯ムー ビーで予定カードの次にすることを撮って,それを見せ ながら予定を伝えた。しばらく待つと,Aさんが気持ち を調整し,教師が手を引くことなく歩くことができた。

店内:スムーズに買い物した。

復路:同様にバス停で止まってしまった。このときも30 分ほどかかったものの,予定カードでバスは×と見せ続 け,言い続けることで,昨年の記憶を修正し,気持ちを 調整して自分の足で帰ってくることができた。

次回に向けて:バスに乗らないと最初に伝えなかったの で,今日の予定とAさんの記憶とのズレを修正し,納得 するまでに時間がかかってしまった。しかし,バス停に 向かうかもしれないという予測のもとに,バス停の絵を カードにはあらかじめ書き込んでおいたことが良かった。

以前は必要のない情報を見せることでAさんの勘違いを

促してしまうこともあったが,今の状態では,すでにA さんの頭の中にあるものだから×をつけることの方が気 持ちを調整するのに有効であると感じた。

9月4日(買い物場所がAコープに戻る・実習生がかかわる)

往路:前回同様,バスに乗りたいという思いがあり,バ ス停に行ってしまった。そこでしばらく過ごしたが,カー ドと携帯ムービーでの説明と,実際にバスが来なかった こともあって自分で気持ちを切り替えて歩き出した。今 日から買い物場所がAコープに戻った。一度中に入った ものの,ここは違うとばかりにすぐに外に出てどんどん 進んだ。もしかしてハニーに行くつもりかと考え,「ハ ニーに行きたいなら,ハニーでもいいよ」と伝えながら 進んだ。しかし,さらに先へ行こうとしたので,そこは 認めず止めた。ハニーの向かいの解体業者の前で押し問 答しているときに,大きなトラックが入ってきて,それ で気持ちが切り替わり,自分から店に入った。

店内,復路:スムーズであった。

次回に向けて:今回はAさんの経験からもバスに乗ると いうシチュエーションではないと教師が判断したため,

また対応が後手になってしまった。休み明けは,あちこ ちに行きたい気持ちが強いので,その思いの強さがバス 停に向かわせたと思われる。バス停から以後は,行きた い気持ちを尊重し,ある程度Aさんに任せつつ,本人が 納得するようにかかわった。そのためか,復路はスムー ズに動くことができた。また,買い物の場所が変わった ことを十分に伝えきれず,いつもの経験からハニーに行 ってしまったので,さらに支援が必要であると感じた。

9月11日(教育実習生がかかわる)

往路:今回はバスは違うとわかっているようで,みんな と同じ方向に進んだ。押しボタンの信号を渡ったところ で,逆方向へ行こうとしたのを止めると怒った。それで も譲らず強く止めると,その近くにあったコンビニのサ ンクスへ入った。コンビニに入るとリプトン紅茶を買う というパターン化した行動が以前はあったので,「ここ では買わない。買うのはAコープ」と言いならが,店内 を一周するのを見守ると,Aさんは納得し,すっと出て きた。前回入らなかった新しいAコープも,B5判の大 きい写真を持たせ,それを見せながら「今日はここに行 くよ」と声をかけながら歩いた。Aコープが近くなると,

実際の建物と写真とを見比べながらすんなり入った。

店内:ウィンナー売り場で動かなかったので,タイマー を見せ,「鳴ったらタマネギ買おう」と伝えた。すると,

Aさんは3分で気持ちを切り替え,買う係になっている タマネギを探しかごに入れた。次に牛乳を探したが,見 つけられずどうしようという感じで眺めていた。しばら くしてリプトン紅茶を見つけ,これでいいとかごに入れ た。店が新しくなったので探索行動が見られ,一つ一つ の売り場を見てからレジに行った。

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復路:マラソンコースの方に行こうとしたものの,止め るとそれほど怒ることもなく,学校に向かった。

次回に向けて:サンクスへ入ることで気持ちの調整をし たようだ。いつもと違う行動をしたときには,闇雲に止 めるのではなく,リセットしようとする行動かどうか見 極める必要がある。また,タイマーで時間を切ることで その間に気持ちを整えやすいように感じた。新しいとこ ろでは探索行動があるため,Aさんが店内を把握するま ではAさんに任せることとした。

9月25日(教育実習生がかかわる)

往路:途中まで集団と一緒に歩くが,押しボタン式の信 号との分かれ道のところで,やはりグループのみんなと 別れそちらの方へ行く。そこを通るとAコープ前で集団 に合流できる時間に着いた。

店内:かごとカートを自分で取って,店内をぐるぐる回 っていたが,友だちが「にんじん,ここにあるよ」と声 をかけ,一緒に行ってくれたので,担当のにんじんをか ごに入れ会計をすませ,友だちと一緒に出た。

復路:学校から遠ざかる方向に進み,ハニーのところま で行ってしまった。そこで,ただ「だめ」と言うのでは なく,「ハニーの信号まで。信号を渡ったら学校に帰る よ」とAさんの好きな信号を終わりとすると,信号を一 往復して,来た道を戻る形で帰ってきた。

次回に向けて:買い物の場所がAコープに戻ったため,

ハニーの方は,コースから外れるので,行ってしまう前 に止めるようにした方がよい。しかし,行ってしまった 場合,ただ止めるだけでなく,「これしたら帰ろう」と いう提示の仕方が良かったと思われる。

9月27日(教育実習生がかかわる)

往路:校門でグループ全員を送り出した後,門を閉めた。

次に,車が出入りする門を開けようとしたが,教師はこ れがルールになることを避けるため,人が出入りする門 の方から出るように促した。しかし,30分たっても怒っ て動こうとしなかったので,車用の門を開けて出た。こ の日は,実習生の希望もあり,人手もあったことから,

グループと同じルートを通ることにチャレンジした。強 めに手を引き,友だちと同じルートを通った。予想通り Aさんはひどく怒っていたが,直線を終え角を曲がり,

次の信号が見えてくると,ようやく気持ちが落ち着いた。

店内:スムーズに買い物した。

復路:集団と同じルートで帰る。スムーズに帰校した。

次回に向けて:校門の出入りの仕方のこだわりが強くな ってきた。グループ全員が出るのを確認してから門を閉 め,自分は車用の門から出るというルールを作ったよう である。このパターンは,Aさんが出かけるタイミング で車の出入りがあったときに経験した。買い物に支障を きたすことを避けるため,車用の門から出入りすること を許容することとした。

10月3日(学部調理・学部全員で買い物)

往路:今日も押しボタンの信号でなく,みんなと同じル ートで行くことにした。やはり曲がり角では怒っていた が,男性教師も支援に入り両脇から抱えるという方法で 集団と一緒に行った。前回同様,次の信号が見えてきた ところで気持ちが切り替わり,その後はスムーズだった。

店内:スムーズに買い物した。

復路:集団と同じルートで帰る。スムーズに帰校した。

次回に向けて:行きはルートが自分の思いとは違うので 怒っていた。支援者が少なくなったときに,このルート が定着しているか検証したい。集団が好きなAさんにと って,学部全員という大きな集団で動くことが,信号が 見えてから後のスムーズな動きにつながったと考えられ る。集団の持つ作用を生かすために,買い物の場面でも,

できれば集団とともに行動できるとよい。

10月16日

往路:男性教師と一緒に出かける。押しボタンの信号に に行きたいと主張したが,「こっち」と体を向けられる と,それ以上怒ることはなく,友だちと同じルートでA コープへ行った。

店内:買う係になっているタマネギを探し出し,次にリ プトン紅茶を買った。さらにウィンナーを入れようとし たので,「紅茶買ったからもう買わない。一つだけ。」と 言って見守ると,しばらく袋を触っていたが,自分で向 きを変えてレジへ行った。しかし,レジを通る人の流れ が気になって,なかなかレジから離れられなかった。た またま買い物に来ていた校長と会い,「帰ろう」と話し かけられ,それで気持ちが切り替わり店を出た。

復路:店の前の道路を走る車の流れを見て,ここもなか なか動けなかった。帰りは教師と二人だったこともあり,

押しボタンの信号へ。久しぶりなので1回で終われなか ったので,3回押してもいいことにし,「あと3回,2 回,1回。はいおしまい」と言うと,すんなり受け入れ た。その後,マラソンコースの方に行こうとしたので,

それに対し「だめ」と言い続け,その交差点から強引に 離すと,怒りは静まらないものの,走って学校へ向かっ た。少し落ち着くと学校を写真を何度も指さしていた。

次回に向けて:帰路に学校の写真を指さしていることか ら,買い物が終わったら学校に帰るという意識は出てき ていると考えられる。集団から離れてしまったので,や はりルートはもとの道になった。集団と同じルートは,

集団の力と複数の支援者の誘導でできたことで,Aさん が納得していたわけではないようであった。

10月23日

往路:カードを見ながら予定を確認しつつ歩いた(写真

−3)。Aさんの好きな押しボタンの信号を通りつつ,

「Aコープ行くよ」と声をかけると,まっすぐ向かった。

店内:スムーズに買い物できた。

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(8)

復路:駐車場でドアの開いた車を見つけ,一人先に店を 出て乗ろうとしたので止めた。それからカードに車の絵 を描き,さらにそれに×をつけ「乗らない」と伝えた。

同時にタイマーを渡し,気持ちが切り替わる時間を取っ た。10分ほどして自分で歩き始め,押しボタンの信号を 通った。前方に見える友だちの名前を教師が一人一人呼 びながら歩くと,Aさんはカードの学校を指さしてすん なり帰れた。

次回に向けて:駐車場で他の人の車に乗り込もうとする ことに対して,教師の予測が遅れ,Aさんが行動に移し た後の制止だったので気持ちの切り替えに時間がかかっ た。いろいろな状況に対応した予測が大切である。

11月8日(午後の買い物)

往路,店内,復路:いずれもスムーズだった。

次回に向けて:午後の買い物,しかも,午前中は現場実 習先の見学に行って,欲求不満(バスでの外出=楽しい ものとの思いに反したため)になっていたので,あちこ ちに行きたいと主張するのではないかとの予測を持って 出かけた。しかし,大好きなウィンナーを買ったこと,

午前の外出と違い見通しが持てる外出であったことが,

スムーズな買い物の理由として考えられる。また,1日 2回の外出で疲れが残っていたのかもしれない。いずれ にせよ,今までで最もスムーズな買い物となった。

11月27日

往路:スムーズに店に行った。

店内:自販機の点検作業を見て,Aさんはジュースを買 おうと,買い物用のお金を入れようとしていた。そこで,

硬貨投入口を押さえ,「ここではジュースは買いません。

お店で買います」と,そこにある全ての自販機で同じや りとりをすると,納得して気持ちを切り替え,買う係に なっているタマネギを買った。レジはスムーズだったが,

自動ドアを出入りする人の流れを見て動こうとしなかっ た。そこで,人の流れが切れたのを見計らい「誰もいな くなったから行くよ」と背中を押すと店から出た。

復路:Aさんは店の前の道路を走る車の流れに見入って いた。気持ちが高揚していて,「もう行くよ」と言って も耳に入らなかった。そこで,安全を確かめつつ20分ほ ど様子を見て,気持ちが静まってきた頃を見計らい,予

定カードの次の予定である仕事のところにタイマーとミ キサーを書き込み,「帰ったら仕事,タイマーとミキサ ー」と伝えた。すると,Aさんは,タイマーの音を教師 に言うようにサインを出しながら,学校に向かった。

次回に向けて:外出からスムーズな帰校を促すのは,こ の活動だけでなく,学校に帰った後にもAさんがやりた いと思う活動をたくさん増やしていくことも,支援の一 つであると感じた。

12月4日

往路:押しボタンの信号を通り,ほぼみんなと同じに着 いた(写真−4)。

店内:ウィンナーを買うこともありスムーズに動き,精 算も一番に済ませ友だちを待っていた。友だちと一緒に いったん外に出たが,すぐに向きを変え自動ドアの所に 戻ろうとした。そこで,教師が,「もうさよならするよ」

と強めに手を引くと動いた。

復路:やはり道路の車の流れで止まった。気持ちが静ま るのを10分ほど待って,押しボタンの信号の携帯ムー ビーを見せ,「押しボタンの信号に行こうよ」と言うと 走って向かった。信号を渡ると,Aさんは次の予定の仕 事の写真を何度も指さし,携帯ムービーに撮ったタイ マーの映像を見つつ,立ち止まることなく帰校した。

次回に向けて:携帯ムービーは,Aさんがよく注視する ため,「ああ,これだった」と再確認し,納得するのに 有効である。また,次の活動の「仕事」も楽しみにして いるようで,やはり,好きな活動を増やしていくことも,

直接の支援ではないが帰校を促すのに有効である。

12月11日

往路:予定カードを渡すとさっと外へ。校門で最後の一 人が出るまで見送った後に校門を出た。

店内:ジャガイモをさっと買った。友だちを待って,一 緒に外に出た。

復路:店の前に出張販売の焼鳥屋の車が止まっていて,

ドアが開いていたので,その車に乗りたいと思ったよう である。怒ったり,強引に乗ったりすることはないもの の,車を指さし,動こうとしなかった。そこで,予定カー ドに車の絵を描き,さらにその上に×をつけ,「だめ,

乗らない」と言い続けた。車からAさんの目が離れたと 写真−3 予定を確認しながら歩くAさん

写真−4 信号のボタンを押すAさん

― 173 ―

(9)

きに,「次は仕事だよ」と仕事で使うタイマーを渡すと,

動きがスムーズになり止まることなく学校へ向かった。

次回に向けて:焼鳥屋の車の前で止まっているときに,

焼き鳥を食べたいのかと教師が思い違いをし,「今日は 買わない」と見当違いの声かけをするなど,支援が後手 に回ってしまった。そのため,その場に長くとどまるこ ととなってしまった。Aさんが,焼鳥屋の車の入り口を 指さしたことで,勘違いに気がついた。読み取りが違う と,支援が全く伝わらないことを実感した。

12月18日

往路:スムーズに店に向かった。

店内:自分の好きなウィンナーのところに行って5分く らい粘っていた。教師が「買わない」と言い続けると,

あきらめて買う係のジャガイモをかごに入れ,それから リプトン紅茶を買った。しかし,レジを通る人の流れか ら目を離さず動かなかった。そこで,「少し見ようか」

と5分くらい時間を取った後,タイマーを見せて「次は これだよ」と促し,強めに引っ張るとすんなり動いた。

復路:道路の所では押しボタンの信号の携帯ムービーを 見せると,走って信号の所に行った。

次回に向けて:だめと言うだけでなく,Aさんが納得す るまでの時間を持ったことなど,支援も有効に働いて,

スムーズな外出となった。

1月15日(冬休み明け)

往路:スムーズに店に向かった。

店内:会計まではスムーズだった。しかし,レジのとこ ろで人の流れを見ることがやめられず,そこで40分ほど 過ごした。タイマーを見せても,タイマーを鳴らしても 教師の言うことを聞く気持ちになれなかったようである。

教師が何回か「行くよ」と強引に引っ張ったが,そのた びに床に寝転がって怒っていた。そこで,焦らず定期的 に「行くよ」と声をかけ,そのときのAさんの反応を見 た。声をかけても怒らなくなったときに,教師が学校祭 のダンスの曲を歌うことで気持ちを切り替え,店から出 ることができた。

復路:学校と反対方向の武道館に向かう道に行こうとし たので,止めると今度はバス停に向かった。そこでバス を待っていたので,教師は「バスは乗らない」と伝えた。

バスがこない時間帯であったが,なかなか離れられず,

次第に通りを走る車を見ることにはまりこみ,携帯ムー ビーでも,タイマーでも,絵を描いて示しても受け入れ ができず,強めに引くと体をねじったり座り込んだりし て全く動こうとしなかった。その後,来た道を逆走した。

押しボタンの信号を通っていないので,リセットをする つもりかとそこまで一緒に行った。ボタンは何度も押す ものの,信号を渡ろうとせず,さらに学校へ向かう道と は逆の方に行こうとした。学校に向かう道をかたくなに 拒否しているようだった。下校時間の2時半も近くなっ

たので,結局2名の男性教師に迎えにきてもらい,両脇 を抱えられるようにして帰校した。

次回に向けて:休み明けはあちこち行きたいという気持 ちが強くなるのが顕著に表れた外出となった。今回は行 きたいという思いがとても強く,どの支援も有効ではな かった。また,逆走をリセットの行動と教師が思い違い したことも,Aさんの混乱を大きくしたと思う。気持ち が高揚して教師の声かけが入らない場合,終わりをどう 伝えていくかを考えていかなければならない。

1月22日

往路:学校を出る前に,Aさんはウィンナーのカードを 指さし,これを買うと主張したが,教師が「今日は買わ ない」と伝えると,玄関を出る頃にはもう言わなくなっ た。次に予定カードのバス停を指さしながら歩いていた ので,教師がバス停に×をつけると,すんなりAコープ の方向へ歩いた。しかし,Aコープを通り過ぎようとし たので,「買い物してください」と言ってお金を渡すと,

怒っていたものの中へ入った。

店内:買う係になっているマーガリンには目もくれず,

何も買わずレジへ行った。そこで,一緒にマーガリンを 買い,再びレジに行った。今日もレジの流れを見ていた ので,3分にセットしたタイマー2回で終わりというこ とを絵と言葉で伝えると(写真−5),それを受け入れ,

タイマーの2回目が鳴ると店を出た。

復路:今回もバス停に向かおうとしたが,前回のことも あり,男性教師がいつでも補助に入れる体制を取ってい たので,その場で止めた。雨も降っていたので,Aさん が納得しないまま,怒ったまま連れて帰った。

次回に向けて:レジから離れるタイミングをタイマーで 示したことで,「ここまで」がAさんが納得できる形で 伝わった。復路では複数の支援者で対応したことから,

帰校までに時間はかからなかったが,Aさんの納得につ なげることはできなかった。

1月29日

往路:歩きながら鞄についているバスカードをしきりに 指さすので,教師が「バスに乗らない,Aコープだけ行 きます」と地図のバス停に×をつけ,指さす度に同じ言 葉を返すことで,スムーズに動けた。

店内:ウィンナーの所へ真っ先に行ったが,シースルー の×(11月に療育の方からいただいたアイディア)を見 せると「ああ,違うのか」とばかりにすんなり離れた。

その後教師が誘導し,一緒にサランラップを買った。レ 写真−5 タイマー2回分で終わることを伝える

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(10)

ジでやはり人の流れを見ようとするので,携帯のアラー ムを5分後になるようにセットした。それが鳴ると目新 しさも手伝って,納得して店を出た。

復路:今日も男性教師が補助に入れる体制を取っていた。

やはりバス停に行こうとしたが,男性教師に「行かない よ」と戻されたときに「押しボタンの信号行くよ」と言 うと,5メートルほど引っ張られるようにしていたが,

後は自分で歩き出しすんなり戻った。

次回に向けて:行きも帰りもバスは×と言い聞かせたこ ともあり,バスはだめと納得しているようである。復路 は教師が少し引っ張った形にはなったが,怒ったり強引 に行こうとしたりすることはなかったことから伺える。

2月5日

往路:今日も途中で予定カードのバスを指さすが,「バ スは乗らないよ」と繰り返すと,滞りなく行けた。

店内:かごを持ってまずは飲み物の所へ。陳列が変わり リプトン紅茶が見つけられず店内をうろうろ。そのうち ウィンナー売り場に行ったが,小首をかしげて今日は違 うという様子だった。そこで,もう一度買い物カードを 見せて「マヨネーズだよ」と言い,一緒に見つけた。そ の後,再び紅茶を探して歩き回り,やっと見つけてそれ も入れた。今日もレジで止まって人の流れを見ていたの で,タイマーの絵を3つ書いて「終わったら帰るよ」と 伝えた。しかし,それが終わっても離れられなかったの で,「じゃあ,後2回」と追加した。2回終わると納得 し,タイマーの方に気持ちが向いたので,「学校に帰っ て仕事しよう」と言い,強めに手を引くとレジから離れ た。自動ドアも,カウントダウンで5往復した後,「も う終わり」と背中を押すと動いた。

復路:バス停へ行こうとする前に「バスは行かない」と 言うと,Aさんは向きをかえ押しボタンの信号に行き,

スムーズに帰ってきた。

次回に向けて:予定カードで活動の流れの理解はできて いる。まだ時期によってムラがあるものの,教師の声か けなどで気持ちを切り替えることが多く見られた。ま た,1月に入り,行き帰りではなく店内での滞りが増えて きているので,それに対する支援を考える必要がある。

《平成19年度の取り組み》

Aさんのねらい

①コミュニケーションの方法(身振り,手振り,指さ し,発声,絵,写真,シンボル,VOCAなどの機 器など)を増やし,やり取りができる。

②予定を理解し,予定に沿って行動できる。

教師の取り組み・ねらい

①昨年度の取り組みをもとに,外出時のコミュニケー ションをAさんとの間で確立する。

②学校だけでなく,家庭や他の場所でも共有できるよ うに支援を整理する。

《平成19年度の活動記録》

5月1日

往路:行く前の話し合いでは,Aコープの写真を指さし て,「早く行こう」と催促する様子が見られた。校門を 出るあたりまではバス停を指さしていたが,「今日は行 かない」とバス停に×をつけて渡すと納得し,特にどこ に滞るということなく,歩いていった。

店内:会計まではスムーズだったが,レジで動きが止ま った。そこで,タイマーで3分ごとに隣のレジに移るよ うにして出口に近いレジまで行った。その後,ガラガラ 抽選器に興味が移り,そこから離れようとせずじっと見 ていた。10分くらいして,女の人が「1回やればいいよ」

とやらせてくれた。それで納得したようで,そこからは スムーズだった。

復路:雨が降っていたものの,すんなり歩いて帰校した。

次回に向けて:今年度初めての買い物であった。前回よ り間が空いていたが,スムーズな動きであった。保護者 に話を伺うと,ガラガラ抽選は,春休みに経験したので やらなければいけないものとして捉えているのではとの 話であった。そこで,買い物の中ではこれを入れないよ うにし,「だめ」と伝えることとした。

5月7日

往路:調味料の残量を確認に行った友だちを見て,出発 と思い一人で校門まで出てしまった。そこで,「みんな と一緒に行くよ」と手を引くと戻り,「みんなが来るま で待ってて」と言うと約15分間座って待っていた。いざ 出発になると友だちを見送り,動こうとしなかった。ど うするのかとAさんの動きを見守っていると,全員が校 門から出たのを見届けてから走ってきた。途中,田んぼ で作業をしていた耕耘機を見つけ,その動きに見入った り,目的地と反対の道に行こうとしたりしていたが,「買 い物行くよ」と手を引くと怒ることはなかった。

店内:入り口で行きつ戻りつしていたが,カートを見せ ると中に入りリプトン紅茶を買いに行った。しかし,パ ッケージが変わっており,違う物と思ったのか,買わず に,今日買う係になっているタマネギだけをかごに入れ レジへ。会計を終え,また人の流れに見入っていたので,

タイマーが一回鳴るごとに一つずつ隣のレジへ移動した が,最後のガラガラ抽選器で完全に動きが止まった。無 理にやろうとはしないものの,離れもしないので,紙に 抽選器とカードの絵を描いて×をつけ(写真−6),「お 願いカード(5,000円分のレシート)がないからできま せん」と言い,それをさらに携帯のムービーにとって提 示すると,携帯の画像見たさもあり,その場から離れ帰 路に向かった。

復路:学校の近くの田んぼで動いていた耕耘機の動きに 合わせて動くという行動が見られ,しばらくそこで過ご した。その部分では滞りもあったが,「帰ったらお茶飲 むよ」と目的を持たせつつ,引っ張り気味にすると学校

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(11)

に戻ることができた。

次回に向けて:ガラガラ抽選に関しての支援は有効であ ったので,継続していく。

5月14日

往路:「買い物行くよ」と言うと,最初は予定カードを 教師に返し,教室にあるバスの写真を指さしていた。し かし,「今日は買い物だけ」と伝えると,思い直して自 分でカードを首に掛けた。買う物を決める際に,ウィン ナーの写真を探して持ってきたが,「これは買わない。

今日はコーンを買う」と写真を見せると自分で交換して いた。今日は違うルートを行く友だちが自分と平行の位 置に来るまでずっと見て待って,それから動いていた。

店内:ウィンナー売り場には行かず,一緒にコーンを探 しレジへ。レジは「これだけ見たら帰ろう」と提示した タイマー2回(6分)で終わることができた。ガラガラ 抽選器も,前回同様に絵を描いて×をつけると,タイマ ー2回目で「行くよ」と言うと動くことができた。

復路:押しボタンの信号では,ボタンを押すだけ押して 渡らなかった。教師にも身振りで「向こうに行って」と 伝えてきたが,「先生は行かない。押したら渡る」と言 い続けると5回目でようやく渡り,後はすっと帰れた。

次回に向けて:往路でいつもと違う行動があったり,復 路でも信号での滞りがあったりしたが,Aさんの気持ち が切り替わるのを待つと,少しの促しで自分から動けた。

5月21日

往路:Aコープの写真を指さしながら,どこも滞ること なくまっすぐ向かった。

店内:今日もコーンを買った。前回の経験からだいたい の場所がわかり,見つけると教師の顔を見て確認し,そ れをかごへ入れた。次に,まだ行ったことのない通路に 入ってからレジへ。今日はレジを見るのはタイマー2回 で終われなかったので,「もう1回で終わり」と言葉と 絵で追加し,3回分(9分)でガラガラ抽選器へ。今日 は手を出して回そうとしたが,「お願いカードがないか らしない」と言うと,手を引っこめていた。その後,床 に寝転がろうとしたときに,今までのお気に入りの携帯 の動画を見せると,久しぶりに見るということもあって,

気持ちを切り替え,帰校することができた。

復路:スムーズに帰校した。

次回に向けて:往復はとてもスムーズになってきた。「買 い物に行く」ことを理解していると思われる。平成19年

に入り,人の流れにルールを作るようになったため,行 き帰りより店の中で楽しみを見つけおり,店内での所要 時間が増えている。そのため,往復がスムーズになった のかもしれない。タイマーなどで時間を区切り,店内で も終わりを伝える支援を継続して行っていきたい。

6月11日

往路:運動会の徒競走を思い出してか,時々クラウチン グスタートのポーズをし,教師に「よーい,どん」を言 うようお願いして小走りしていた。押しボタンの信号を 渡ると,目的地とは反対の方に曲がって走り出した。予 想外のことで事前に止めたり修正したりできなかった。

そこで,「違う道を行きたい」Aさんの気持ちを認めつ つ,いつもの道に並行している路地を行くことにした。

歩きながら,「Aコープ行くよ」と伝えると,後は寄り 道・回り道をせず行くことができた。

店内:自販機でジュースを買おうとしていたがシースル ーの×で止め,「買うならレジで」と言うと中に入った ものの,今度はガラガラ抽選器で止まってしまった。こ こでも「しない。お願いカードもないよ。」と言い続け ると納得し,買い物を始めた。今日は自分で決めたマヨ ネーズを買うこともあり,自分で見つけてかごに入れた。

その後は店内周りをし,ジュース売り場でしばらく涼み,

ようやくレジへ行った。レジでタイマー2回分からさら に3回追加し,5回分(15分)でようやく動いた後,今度 は自動ドアの人の出入りで止まってしまった。タイマー 2回分と口頭で100のカウントダウンの末,やや強引に 背中を押すと,店を出た。

復路:店から出るとすっと気持ちが切り替わり,さほど 抵抗もなくスムーズに帰ってこられた。

次回に向けて:暑さが増すにつれて,冷凍庫がある涼し い場所で過ごす,レジから離れないなど,店で滞ること が多くなった。店の中でも,Aさんが怒ったり泣いたり といったパニックをおこさないように,納得を促す支援 が必要である。

6月18日

往路:Aコープ前の信号を1周してから店に入った。

店内:暑さのせいもあり,冷凍食品のところで涼んだり,

通路一つ一つを通ったりしていた。レジでの滞在時間は タイマー2回分だったが,自動ドアを出入りする人を見 ることから離れられず座り込こんだので,目を覆って人 の出入りが見えないようにすると立ち上がった。立って から100のカウントダウンを始め,終わると少し強めに 外に出るよと促した。しばらく怒っていたが,ちょうど 買い物に来ていた小学部の帰校と重なり,一緒に出た。

復路:スムーズに帰校した。

次回に向けて:店内についての支援については,前回同 様有効な支援が示せなかった。

写真−6 ガラガラ抽選はできないことを伝える

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(12)

6月26日(生活合宿・午後に学部全員で買い物)

往路:合宿の買い物ということもあり,外出の気分が強 く,Aコープの前を通り過ぎようとしたが,「買い物し ます」とカードを見せると中に入った。

店内:カートを持たせると分担のコーンをさっさと買っ て,友だちより一足先に外へでた。

復路:やはり違うところに行きたい気持ちが強く,カー ドで予定の確認を一緒に行い,「次は学校」と伝えたも のの,反対方向の信号を渡ってしまった。そこで,「1 周したら帰ろう」と渡るたびに信号に×をつけると,1 周で気持ちを切り替え(写真−7)学校に向かった。

次回に向けて:合宿時の買い物はあちこち行きたい気分 になるようである。しかし,信号を1周しただけで帰校 できたのは,気持ちの調整ができるようになってきたか らだと考える。

7月2日

往路:スムーズであった。

店内:今日も涼もうと冷凍庫に腰掛けようとしたので,

それを止めて,買う係になっているおやつの絵を見せて,

「これ買うよ」と言うと,その後はすっと買い物をして レジへ。会計が終わるとレジの様子を見ようと寝転がり かけたので,「これを見よう」とデジタルカメラの映像 を見せると立ち上がった。そこで,レジの様子をデジタ ルカメラのムービーで撮影し,「学校でこれを見よう」

と言うと店を出た。

復路:スムーズであった。

次回に向けて:デジタルカメラの映像という,いつもあ まり使わない機器を使ったこともあり,それに対する反 応は良かった。気持ちを切り替えるには有効である。

7月9日

往路:スムーズであった。

店内:会計まではとてもスムーズ。暑さも手伝って,涼 しい所に行くことはあったが,座りこむことはなく,端 に近いレジを使用したこともあって,タイマー1回でガ ラガラ抽選器の前に行った。そこで2度座り込むことが あった。そのたびに「立って」と言うと,寄りかかりな がらも立った。しかし,3度目には寝転がろうとしたの で,「学校に帰ってビデオを見よう」と言うとその場で 見たがった。そこで,10秒ほど見せて,「後は学校で」

と言うと店を出た。

復路:スムーズであった。

次回に向けて:今回のビデオは,前回同様気持ちを切り 替えるのには有効であった。しかし,状況を理解し納得 する支援をさらに考える必要がある。

写真−7 信号周りに対処する

図−4 買い物にかかる所要時間の変化(06.5.22〜07.7.9)

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(13)

結果と支援の仕方について

買い物における所要時間の変化(図−4)のグラフを 見ると,行き帰りについては,休み明けや周囲の状況に よってまだ波はあるものの,所要時間は全体的に回を重 ねるにつれて漸進的に少なくなってきており,スムーズ に移動ができるようになったことが見てとれる。Aさん が見通しを持ちやすい買い物による外出に定期的・継続 的に取り組むことで,外出は今だけ,今しかできないも のでなく,またできるということを理解すること,視覚 的な予定カードを使用したことで,買い物に出かける活 動の流れ(学校を出る→買い物する→学校に帰る)を理 解し,気持ちを調整して行動することができるようにな ったと考える。学校へ帰る際には,予定カードの学校の 写真を指さしながら帰る様子も何度も見られた。

また,Aさんが予定から外れたときや,なかなかやめ られないときには,やりたいことはすべて×でなく,「1 回だけ」「ここまで」「学校に帰ったら〜しよう」と話を し,Aさんと支援者が絵や写真など言葉以外の手段を用 いてお互いにやり取り(=社会的相互交渉)をしながら,

譲歩し合って買い物学習に取り組んできたこと,その結 果として,Aさんが理解し,納得しながら次の行動がで きるように取り組んできたこと,Aさんが気持ちを整理 したり,リセットしたりする時間を取って待つことが良 かった。「ここまでは認める」をはっきり示すことで,

「これ以上は認めない」「だめ」の姿勢と見せたら絶対 に譲らないということが伝わりやすかったと思われる。

予定カードに絵を描き込んで伝えることも有効であっ た。Aさんは現在,書くこと,しかも活動を示すシンボ ルにとても興味を持っており,理解度も上がってきてい る。今つまずいてる事柄を絵にすることで,Aさんが興 味を持って教師の言うことを受容することができ,「納 得する」ことにつながったと思われる。

しかし,カードなどを使ってのやり取りは,ともする と,Aさんに予定に従うことを強いる方向での教師側か らの一方的な伝達になって,Aさんが何を考えているの かをくみ取ることがないままになってしまうきらいがあ る。Aさんが理解し,納得して自己調整するには,社会 的相互交渉を積み重ねていくことが必要である。それが できたときAさんは成長した姿を見せている。今後も,

外出の支援には,この視点を忘れずにいきたいと思う。

しかし,行き帰りの時間の短縮に反して店内での滞在 時間が長くなった。原因として,レジや自動ドアでの人 の出入りへの興味が強くなったことが挙げられる。人の

流れは支援者にも予想ができず,またその日その日の状 況によって違うので,「いつまで」「どれだけ」というこ とがわかりにくい。また,見ているうちにのめりこんで しまいがちである。そのため,「これで終わり」が受け 入れにくいのではないかと考える。そこで,タイマーで 時間を計ったり,アラームを鳴らしたり,携帯のムービ ーで次の予定を示したりと,視覚と聴覚を用いて提示し ている。現在はまだ,これらが十分に有効ではないが,

今後も引き続き支援の仕方を考え,店内でのスムーズな 動きができるよう,取り組んでいきたい。

この実践の途中で,療育の先生から「シースルーの×

と使用しては」というアドバイスをいただき,行っては いけない道の前や,買わない品物の前に提示することで

「だめ」を伝えることができ,有効であった。

保護者の方から,他の場面でエレベーターがスムーズ に終われたり,買い物で好きな物をどんどん入れず目的 の物だけ買うことができるようになったりという報告を 受けるなど,この活動の場以外での成長も見られるよう になった。

また,携帯ムービーやデジタルカメラ,ビデオカメラ で気持ちを切り替えるという方法も,Aさんがデジタル 機器が好きであり,それが新しい物であったりすると興 味を持って見ることから,うまく使えば有効である。し かし,それらを常時使用すると,興味がなくなり,有効 でなくなる可能性もある。それに変わる新たな機器を用 意するのも容易ではないため,こういう支援はその限界 を自覚しつつポイントのみにとどめていければと考えて いる。

今後も,買い物を通した外出の困難さの軽減に取り組 んでいきたい。その中で,Aさんの行動や発達に沿い,

理解と納得を促しながら,社会参加が広がることにつな がればと考えている。

参考文献

P・Aアルバート,A.Cトールマン(2004)「は じめての応用行動分析 日本語版第2版」二瓶社 無藤隆,やまだようこ,南博文,麻生武,サトウタ ツヤ(2004)「質的心理学 創造的に活用するコ ツ」新曜社

ローナ・ウィング(1998)「自閉症スペクトル 親 と専門家のためのガイドブック」 東京書籍 独立行政法人国立特殊教育研究所,世界保健機構(W

HO)(2005)「ICF活用の試み 障害のある子 どもの支援を中心に」 ジアース教育新社

Approach to alleviate the difficulties of Ms.A’s outing through continuing shopping activity Harumi SAKAI

Key words: Social participation, Alleviation of the difficulties in Ms. A’s outing, Forecast based on the grasp of schedule, So- cially mutual commitment

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参照

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札幌、千歳、 (旭川空港、

月〜土曜(休・祝日を除く) 9:00 9 :00〜 〜17:00

※定期検査 開始のた めのプラ ント停止 操作にお ける原子 炉スクラ ム(自動 停止)事 象の隠ぺ い . 福 島 第

■実 施 日:平成 26 年8月8日~9月 18

○ 発熱や呼吸器症状等により感染が疑われる職員等については、 「「 新型コロナ ウイルス 感染症についての相談・受診の目安」の改訂について」