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全建総連 論文集●/P38~69 作本博昭(優秀賞)

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全文

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「夢が持てる建設職人に」

作本

博昭

論文

文要

要旨

論文の背景と目的 2008年後半から急激に景気が悪くなった。翌年の2009年には更に悪くなったと 誰もが肌身に感じている。その背景には様々な理由があるとされているが、GD P、失業率、建設投資額、建設業従事者数、住宅着工戸数、雇用者報酬など、ど れを見ても極端な落ち込み方をしている。どの産業も下降状態でいまだに明るい 兆しが見えていない。特に建設業種は他の産業が景気回復してもタイムラグがあ るので今までのような景気のよい状態に戻るには時間がかかると予想される。 このような状態になるかも知れないという予想は立てられなかったのだろう か。建設職人は工事を進めるに当たっては段取りが上手で先を読むのが得意だが 5年先、10年先を読むのは苦手だ。論文はこのような逆風の時にこそ問題点を整 理し解決方法を考えることによって将来への備えをしておけば、明るい未来が開 けて来ることを目的としている。 論文の構成 この論文では筆者が大工・工務店として日頃携わっている視点から現状の問題 点といくつかの提案をしたい。 !一口に建設業従事者と言っても様々な職人が存在していることを述べた。 !プレカットという生産方法が急速に普及している。便利な反面、伝統的な技法 が失われていくという危惧の声もあるが、発展的な応用方法も考えられる。 !住宅メーカーと大工・工務店を比較し、住宅をどう捉えているかの対比を考察 した。 !大工・工務店に対するマスコミの視点を考察した。 !在来軸組構法は、果たして地震に弱いのか否か考察した。 !木造住宅建築の安全性(耐震性)を保証する構造計算規準の整備が必要だ。よ り多くの在来軸組構法の住宅へ適用できる現実的な耐震設計の方向性を考察し た。 !現場でよく見かける木造架構における施工上の共通の問題点を挙げた。信用問

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1 夢が持てる建設職人に

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題に発展するので現場での努力が必要だ。 !国際的なレベルで、日本では企業ニーズに合う大学教育が行われていないと言 われている。後進育成について、建設産業では一般企業と比べようがない位遅 れをとっている。後継者育成を怠っている産業は衰退していくことが目に見え ている。 以上の考察をネガティブに捕らえるのではなく、ポジティブに問題を把握し、 解決策を模索してみた。10年先を見据えた建設産業は明るい業種になると確信す る。 木構造の魅力さの発展、時代の流れである個人プレーから組織としての仕事の 進め方、新たなる活躍の場が自ずと開かれてくると思う。

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はじめに

1.建設業界の特殊な構造

2.プレカットの功罪

3.住宅メーカー

4.マスコミ

5.在来軸組構法は地震に弱いのか

6.木造住宅建築の現実的な耐震設計への提言

7.現場でよく見かける木造架構における共通の問題点

8.後進育成の現状

9.将来への展望

むすび

参考文献

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3 夢が持てる建設職人に

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夢が持てる建設職人に

作本

博昭

はじめに

建設職人の展望

建設業に携わる職人(特に大工)には明るい未来がないのか。残念ながら今の ままで行けば悲観的な方向に進んでいると思う。建設産業のうち住宅は成熟産業 となり、質量とも十分になっている。今後、大きく成長することは難しいだろう。 その流れの他にリーマンショックからいまだに立ち直れない深刻な不景気、急速 に進んだ高齢化社会、大工・工務店から住宅メーカーへの顧客の志向の変化など マイナス要因として憂慮されることばかりだ。また、建設職人の後継者不足とい う状況も、この産業の先行きを暗示している。 若い人たちで、希望を持ってこの職種を生業にしようとする強い意志を持った 人は残念ながら私の周囲には殆ど居ない。昔と違って誰もが高学歴になってしま って、大学を出たら殆どが規模の大きな会社に就職する。勉強ができることだけ が人間の尺度ではないが、少なくとも勉強のできる子供は進学してエスカレータ ー式に建設職人以外の職業に就いてしまう。稀に、大工になりたいという大学の 卒業生もいるが、世間から見たら変わり者に映る。大工には頭が必要だ。体も頭 も使える若者が大工を目指さないと将来の大工全体の能力が落ちてくることは目 に見えている。大工に限らず、建設職人の後継者を質量共に、確保しないとこの 業界全体の消滅につながる。 建設職人を取り巻く実情と問題を整理しながら建設職人に明るい未来を持って もらえるような具体的な提言を行いたい。

1.建設業界の特殊な構造

私論を述べる前に建設産業は他の産業と比較してどのような特色があるのか列 挙し、この業界での独特の事情を考察してみたい。

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一般に建設業といえば建物を作る業界であるとひとくくりに考えられている が、いろいろな側面がある。

規模別

個人商店に近い大工・工務店から、ゼネコン!General Contractor(総合請負) とよばれる大企業まで極端な規模の格差がある。ゼネコンとよばれる業者には国 家プロジェクト規模の事業をも手がけるスーパーゼネコン(清水建設、鹿島建設、 大成建設、大林組、竹中工務店)があり各社の年商は2兆円弱、従業員も1万人弱 の規模である。発注者との請負契約を結んだゼネコンは元請として工事に当たっ て、縦の指揮命令系統で専門業者を下請として使う建設生産組織を構成している。 これらを業界用語で野丁場という。元請から下請として入った業者は、さらに下請 に出し、さらにその先に・・・、という風に重層下請になるケースが多い。現場で 実際に働く労働者との間に中間業者に経費を引かれた結果の労務費の先細り、労 働環境の曖昧さ、それに伴う品質低下の懸念が問題視されることも多い。規模は 小さい大工・工務店でも、各専門職を下請として使う。しかしゼネコンと違って 横のつながりで協力しながら工事を仕上げる。これらを業界用語で町場という。

住宅メーカー

住宅を工法の違いで分けると木造の在来軸組構法(いわゆる大工が今まで通り の伝統的なやり方に工夫を加えて施工する住宅)、ツーバイフォー住宅、プレハ ブ住宅その他がある。大工・工務店と対峙する住宅メーカーはプレハブ住宅を扱 うところが多い。プレハブメーカーは住宅建築を請負ではなく商品として認識し ている。徹底的な原価圧縮を経て生み出された商品は営業を通じて販売していく という、組織で分業しながら住宅を供給している。 プレハブメーカーにはスーパーゼネコンの売上、社員数で肩を並べるような経 営規模の企業もある。

下請で働く建設労働者の住み分け

下請けに入る建設職人は零細工務店、ゼネコン、プレハブメーカーの下で活躍 している。しかし、縦横無尽に働く場所を移動しているわけではなく、大概決ま ったところで働いている。いわば、住み分けがある。最近の傾向では零細工務店 の元気がなく、それらに付いて来ている下請業者がそれ以上に苦しい立場に置か れているという報告もある。

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建設労働者の構成比

建設職人の職種はどのような構成比になっているか。全国建設労働組合総連合 (略称全建総連)の組合員(2009年末現在691,155人)の職種別資料によれば、 大工は195,279人で29.3%、ついで電工の47,812人で7.2%、以下空調・給排水配 管工の44,592人で6.7%と続く。圧倒的に大工が多い。また組合に属している大 工のほとんどは、自分自身が個人経営者か零細工務店で働いている職人である。 この大工の減少傾向が大きな問題になってきている。

2.プレカットの功罪

プレカットの普及

日本の伝統的な軸組構法の最大の特徴とは、木材に差し金を用いて墨をつけ、 手道具により継手(梁同士の接合)と仕口(梁と柱の接合部)を加工し、架構を 組み立てていくことであろう。接合金物を用いずに凹凸に加工された木材が現場 で寸分違わずにピタリと組み上げられるのを棟上げと言われ、住宅建築での最大 の山場になっている。子供たちが将来の職業として大工になりたいと心を動かさ れるのはこの瞬間を見てのことだと思う。 のこぎり かんな のみ 手道具といわれる鋸、 鉋、鑿などを用いての加工を手刻みと言われるが1976 年頃からプレカットと呼ばれる精度の高い機械加工(墨付けを含む)が出現した。 1985年に全国木造住宅機械プレカット協会が発足し、その後順調に手刻みを席巻 して行き、2005年にはプレカット率が76%に達し、最近では90%を超えている。 正確でスピードが速い上に大工の手間賃よりも安く済む。即ち建築費そのものが 安くなる。このような有利な条件でこの20年間で木造住宅業界に浸透し切ってし まった。 プレカットが導入され始めた頃は、大工の伝統的な技能が奪われることを危惧 する声が多かった。しかし、現実には大工自身が楽な労働の方になびいてしまい、 スムーズな棟上げを経験すると、今までの手刻みの工法はよほど高級な普請か時 代遅れの工法と見るようになった。 プレカットは大工から墨付け、手刻みという高度な技能を維持し続けなければ ならないプレッシャーから開放したが、同時に古来の伝統技法も断絶してしまっ たという功罪を残した。プレカットは、特にこの10年で飛躍的に浸透した。大工 が一人前と言われるのが30代前後とすれば10年経った今、40歳より若い大工のほ とんどはさしがね術とも言うべき規矩術を知らないと言ってよい。 伝統的な技法の中で規矩術というものがある。さしがねを用いて立体を平面に

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置き換える技術である。この技法、今のレベルが改善と工夫を重ねた結果の最高 のものであるか問うと、疑問を投げかける声もある。「技術者の人間国宝」の宮 大工である松浦昭次さんによれば中世の規矩術にはまだまだ謎が残っていると述 べられている。現存する古建築にはその規矩術を用いて作られているはずだが、 現在の規矩術ではそれを解明しきれていない。たとえば、中世の建築でとりわけ 美しい形とされる扇垂木(写真)の断面は真四角ではなく一本一本が微妙に菱形 の角度が変化している。現在、現場では長年の経験と勘による手書きの原寸図を 作り、それを写し取って木材に墨付けを行っている。プレカットの墨付けは、三 角関数を用いたコンピューターによる2次元と3次元が往復できる計算技術を用 いて行っている。その技術を応用すれば謎といわれる中世の規矩術が解明できる 可能性がある。さらにそれを発展させて今までにないような美しい形が創造でき る可能性がある。 (参考写真:扇垂木) プレカットも伝統工法の後追いから新しい可能性を生み出す技術になりうる

プレカットの懸念

ところでプレカットで最近予期しないことが顕在化してきた。プレカット加工 した箇所に強度不足が出てきたというのである。確かに、従来の手刻みは大工が 墨付けを行う前に自然材である木材のクセ(状態)を見て強度不足にならないよう に方向を変えたり、加工位置を変えたりしていた。しかし、プレカットを行う機械 にはそういった職人の眼がない。コンクリートや鋼材のように均質な材料と見な して加工することに問題があったのであろう。今までの経緯では、そういった不都 合が判明すると技術指針を見直して対処することが慣例であったが、職人の勘に 左右されるような内容の規準はつくれないといってよい。せっかく木造建築の復 活といっても、このような曖昧な点を克服しないと消費者からプレカットででき た木造住宅は安全ではないと懸念され、他の工法の住宅を選択する結果となる。

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7 夢が持てる建設職人に

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定着してしまった便利なプレカットが引き金となって大工という職業がなくな ってしまうという可能性も否定できない。

3.住宅メーカー

筆者が大学を卒業した30年前は、住宅メーカーはまだ黎明期の業界であった。 就職に当たっては成績のいい学生から大規模な建設会社、設計事務所あるいは著 名なアトリエ建築事務所に内定し、成績下位の学生が渋々住宅メーカーに就職し たというのが実態である。ところが30年間ですっかり様相が変わってしまった。 かつて日本経済新聞社が「会社の寿命」というものを出版して、30年で会社は消 えていくと分析したことがあった。大変なベストセラーとなった記憶がある。会 社というものはそんなに簡単には消えはしないが、時代の変化に対応しなけれ ば、消えるに等しい状態になってしまうことを30年を経過して身をもって思い知 った。今や、住宅メーカー、特にプレハブメーカーはスーパーゼネコンを凌駕す る売上高、従業員数、資金力、影響力を兼ね備えており、日本の住宅産業!プレ ハブメーカーと言っても過言ではない。 住宅メーカーはどのように進化したのか。最大の原因は住宅メーカーが組織と して明確な目標を設定し、それを実現するための作戦を立てて精力的に実行して きたことに尽きる。小規模の大工・工務店はその経営者自身が変化を好まず、今 までやってきたやり方がいつまでも続くと錯覚している人が多かった。結果とし て、住宅メーカーは利益を出すための経営戦略を立てて情報分析あるいは組織の 統制を駆使し続けているうちにこのような大差がついたといってよい。

組織の基本としての人材育成

Mホームの社員が持っている手帳の1ページ目に企業の社会的な存在が書かれ ている。そして会社の根幹は人材であるとしている。他にDハウスの手帳には、 「水五訓」として社員は水のように全員で一致団結して問題に当たれとか、状況 に応じて水が氷になったり水蒸気になったりして臨機応変に形を変えて全員で問 題を解決するよう意気の高揚を図っている。 大工・工務店には人材を育てようとする姿勢はあるものの、育成方法がわから ないので行き当たりばったりのところが多い。 たとえば、住宅メーカーでは定期的な研修はしょっちゅう行われているのに、 町屋の工務店では研修は社員自身の裁量(費用の自己負担か否かを含めて)に任 されているというのが実情である。これでは系統的なスキルアップなど成果が出 るわけがない。また、住宅メーカーでは定期的に将来の幹部を見据えた新入社員

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を採用しているのに対して、大工・工務店は縁故または気まぐれに近いような状 態での採用(その殆どが中途採用)であり、人材育成そのものは二の次という事 例が多い。

組織として分業で仕事をこなす

大工・工務店は技術力はさて置き、営業力や企画力に大きな人的な弱点がある といってよい。社長自らが全てを兼務しているところが多い。よく言えばスーパ ースター、反対に言えば何でも屋という中心人物一人に寄りかかっている。真の スーパースターの存在は否定しないがその存在は稀有であろう。中途半端なスー パースターは一昔前ならいざ知らず、今の時代、消費者からは既に敬遠されてい る。その点、個々の能力は別として住宅メーカーはそれぞれの専門を分けて、い かにもその筋のオーソリティ風な対応で消費者の心を掴んでいる。

組織としての営業力

住宅メーカーの強みはここにありといって断言してもいい。かつて、あるプレ ハブメーカーが社長方針として営業社員数を大幅に縮小したところ、経営の屋台 骨が大きく傾いて社長が責任を取って退陣したことがある。後任の新社長が再び 営業を重視したところ、たちまち回復したことは有名な逸話である。極端に言え ば工事をする人間はいくらでも代わりがいるのに対して、優秀な営業マンを長い 時間をかけて育て上げればその成果として、会社に莫大な利益を還元することを 経営者は長年の経験で熟知しているのである。 トップセールスの営業マンに共通するのは顧客の心理をうまく捉えて契約に導 いていることである。プロの営業マンを作り出すために時には、心理学者もブレ ーンに使ってスキルアップしている。また、住宅メーカーは営業マンの後方支援 として広告宣伝費に大きな金額を積み上げている。ある住宅メーカーでは広告宣 伝費に年間200億円以上を投じているとされている。巨額な広告宣伝費は他社に はできない大掛かりなことができる。 たとえばTVのゴールデンタイムに巨額のスポンサー枠を取る。そのコマーシ ャルの内容はギャラの高い一流スターを出演させて、デザイン力の高さや地球環 境にやさしいエコ技術の採用、更には建築基準法をはるかに凌ぐ構造強度を紹介 している。そして、その宣伝によって豪華な住宅展示場に引導され、そこでめで たく契約成立となるわけである。住宅メーカーからすれば競合相手は同種、同規 模のライバル会社であって大工・工務店など眼中にはない。奥様方の会話では身 に付けるブランド商品と同様に、自分の家はどこそこのメーカーで建てたという のがステータスシンボルである。極くまれに大工・工務店に建ててもらったと言

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えば、「親御さんが大工さんですか」と言われるのがオチである。一昔前に『み んなのいえ』(主演:唐沢寿明)という映画がそれを題材にして苦労する話を面 白おかしく描いていたが、当事者にとっては笑えぬ笑い話であったのであろう。 住宅メーカーに対して大工・工務店の営業とはどのようなものだろうか。顧客 からの紹介を待ち続けているのが実態で、自ら積極的な宣伝というものを考えて いない。むしろ、営業は恥じるものと信じている経営者も多い。プロの営業マン もいなければ育てたこともない。広告宣伝費にはどのくらいの費用を計画的に投 じているのだろうか。せめて安価な自社の情報発信としてホームページなどを活 用して世間に知ってもらえないのか。今の世の中は顧客の視線はインターネット による情報収集が当たり前になっている。腕で勝負とか口コミに頼るという営業 方法は今や時代遅れになってしまった。自ら情報発信できなければ、得体の知れ ない大工・工務店という評価に終わってしまう。

常に開発し続ける技術力

住宅メーカーはその殆どは独自の商品力を持っている。いわばメーカー同士の 互換性がない。在来軸組構法を採用しているところもあるが大工・工務店とは一 線を画している。タイムリーな耐震技術、省エネ技術は建築基準法以上の性能を 持たせた商品であり安心感を与える。それに対して昔ながらのやり方しかしてい ない、また建築基準法以上のことはやらない大工・工務店の姿勢とは差が開くば かりである。

企業の情報公開

株を発行してコストの安い資金を集めるために事業報告を公開している。そし て株主に対して次期にどのように利益を上げるかを説明している。当初の見込み 違いで儲からないと判断すればその事業を縮小あるいは廃止し、儲かりそうな事 業には住宅建築からかなり離れた分野にでも積極的に展開している。そのがめつ さは、事業を行うものとして見習うべき姿勢かもしれない。

社会が認める存在

住宅メーカーは以上のように常に時代を先取りし、社会に対して費用対効果も 問題のない満足な住宅(商品)を提供している。その上、利益を上げて税金まで 払っているのだ。 以上のように住宅メーカーに大きく水をあけられた大工・工務店は今後どのよ うにして巻き返しを図るか。これは最終章で提案したい。

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4.マスコミ

大工・工務店を熟知している業界紙は別として一般紙、テレビなどのマスコミ には、ある共通項がある。

作られた職人造

新聞の社会面に容疑者、大工(または大工見習)何某が事件を起こして云々と いう記事がよく出ている。建設業に限り細かに職種が表現される。読者は無意識 に建設業に対する共通のイメージを持つ。一方で子供の頃にあこがれる職業とし て上位に大工を上げている。大工という職業を侮蔑しているのか敬意を表してい るのか理解に苦しむ。

NHKでも受け狙いをする

以前NHKから取材協力の要請があった。建築基準法が見直され、以前に比べ て多種多様な、また数も多い補強金物を挿入する必要があった。新基準法の背景 には、新しい規準(研究)ができるまで暫定的に補強金物を入れることによって、 在来軸組構法を耐震性のある建物として認めようとする意図があった。そんな事 情も知らない大工たちの間からは手間が増えることに対して不満が噴出してい た。NHKのディレクターからはそんな現場の声を聞きたいとの申し出があっ た。消えてしまうかもしれない在来軸組構法を何とかしようという思いで協力し たが、途中で主旨にズレがあることに気がついた。番組の狙いは「建築基準法が 何だって言うんだ。やってられるかってんだ」という大工を探していたのだった。 わざわざ関西までお笑い芸人を探しに来たのでもあるまいし・・・。協力も消 沈していた頃、別のルートで意に沿うような人が現れたとお礼の返事があった。 「・・・あとはその人が直前に気が変わってキャンセルしないかが最大の問題」 と心配していたが、NHKでも受け狙いの報道番組を行っているのである。益々、 大工とはこういうもんだという思い込みを助長する結果となっている。

朝日新聞でも社会的な問題を創出する

1981年以前の在来軸組構法の住宅に住んでいる人は少なからず耐震性について 不安を持っている。国も速やかに耐震診断を行った上で、耐震補強をするように 補助制度などを活用する誘導をしている。2010年1月14日の朝日新聞朝刊に木造 耐震診断についての問題点が一面に掲載された。要旨は、耐震診断には2種類の 方法があって「一般診断」と言われるものと「精密診断」と言われるものがある。

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問題は、「一般診断」での評点が厳しめに出るはずなのに「精密診断」の方が、 場合によって逆に評点が低く出るというのである。在来軸組構法の住宅耐震診断 方法自体に弱 ! 点 ! があるという指摘であった。「一般診断」は電卓を使っての略算 式であるのに対して、「精密診断」では比較的複雑な計算(といってもパソコン での表計算を用いてもできる程度のもの)を経て評点が出る。精密という言葉が 誤解を生んでいるのであろう。両者は計算の仮定と手順が違うのでむしろA方 式、B方式と呼ぶほうがよかったのかもしれない。 『木造住宅の耐震診断と補強方法』(日本建築防災協会)に、評点については 工学的な判断を要することが付記されている。「一般診断」でも「精密診断」で もその入力方法や適用方法などには専門家による高度な判断が加味されないとい けない。便利なソフト!誰でもできるという危険性はあらゆる分野で警鐘が唱え られている。 人間ドックで出た数値を素人判断で自己診断する人はいないのと同じで、算出 された評点について専門家の判断を経て結果が確定するのである。 現在、一般に用いられている『木造住宅の耐震診断と補強方法』に基づいて行 われている診断方法に「弱点」があるかのような報道は混乱を招き、その結果、 在来軸組構法は不確かなものとして敬遠されるのではないかと危惧する。

5.在来軸組構法は地震に弱いのか

日本の建築は地震が起きるたびに大きな被害を受けてきた

台風は毎年来るのに対して大地震は一生涯に遭遇するかしないかという確率で ある。経験したことのない大地震よりも台風を意識してしまい、建物を重くする ことによって抵抗する構造を選んで来た。その結果、大地震時の被害をより大き くしたと言ってよい。 最近の天気予報はよく当たるが、地震の予想も科学の発展で地震のメカニズム も解明されつつある。様々な観測により周期や発生時期を予想するまでに至って いる。地震は近い将来確実に来るものとされている。 約120年前の濃尾地震(1891年)では伝統的な木造住宅に多くの被害が出た。 現場を実見したコンドル先生(東京大学)は筋かいを入れて木造住宅にも耐震性 を高めることを強調された。また、レンガ造の建物(工場など)にも大きな被害 が出て、こちらの方は耐震性を高めることができないとされたのか、その後レン ガ造の建物は廃れてしまった。そしてレンガ職人もほとんどいなくなった。

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関東大震災(1923年)の教訓から、水平力を考慮した設計方法や筋かいを入れ ることを翌年の法律(市街地建築物法)に盛り込まれた。 耐震設計規準はこれで完成したのではなく、その後も地震が起きるたびに被害 が生じて、その都度、耐震設計規準が見直されてきた。十勝沖地震(1968年)で は鉄筋コンクリート造の建物に致命的な被害(柱が脆く破壊され、建物が瞬間的 に壊れることが指摘)が出た。1981年に新耐震基準という抜本的な設計規準改定 により、耐震設計は完成の粋に達したと思われていた。 しかし、1995年に起きた阪神・淡路大震災。この震災で6000人を超える犠牲者の 内、5000人近くが木造住宅の圧死という衝撃的な数字が出た。これを受けて新聞 をはじめとするマスコミは、在来軸組構法による住宅はその全てが危険であるか のような誤解を招くような報道をした。裏を返せばツーバイフォーやプレハブだ けが安全という印象を与えてしまった。しかし、被害の大きかった建物は単に構法 の違いというよりも二つの大きな共通項があった。一つは在来軸組構法による住 宅には老朽化していた建物が多かったという側面があった。それに比してツーバ イフォーやプレハブは精々40年程度の歴史しか経っていない。もう一つは居住性 を重視しすぎた結果、元々あった壁を取ってしまったり、柱を抜いてしまったとい う構造の面での配慮のないリフォームをしていた建物に被害が集中していた。片 や、ツーバイフォーやプレハブはリフォーム自体が難しかったので構造的な手が 入れられなかったという制約があったため、被害を免れたラッキーな面もあった。 報道する側にも事情があって、少なからずウケを無意識に狙っているところが ある。スクープにもって行きたい記者の気持ちとサプライズが好きな読者への誤 解を招きかねない記事は結果的に迎合されやすい。老朽化云々というわかりにく い記事より、木造住宅よりもツーバイフォーやプレハブの方が優れているという 記事は、読者もやはりそうだったのかと納得しやすい。因みに、プレハブを扱っ ている企業は新聞やテレビの有力なスポンサーであることも申し添えたい。 この報道は在来軸組構法!危険な建物というキャッチフレーズになり、今まで 地道にやってきた建設職人をいわば震災の張本人のようにしてしまった。筆者の 経験になるが、阪神大震災で壊れた建物の解体や搬出作業を行っていた時、たま たま近くに住宅展示場があった。そこには引きも切らずに多くの人たちがプレハ ブメーカーの住宅に殺到していたことを思い出す。 この在来軸組構法!危険な建物は、建設省(現・国土交通省)にも飛び火した。 木造住宅の安全性の基準になる法律自体にも欠陥があったのではないかという指 摘であった。 それまでの規定は耐震壁の強度(壁倍率)や延べ長さを求めていて、接合部や 配置計画までは詳細に言及していなかった。規定を守っていた建物にも被害が出

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て、接合方法の不十分さや、耐震壁配置の偏りによる捩れ被害の問題点が露呈し てしまった。 建設省や日本住宅・木材技術センターなどでは直ぐに法改正や在来軸組構法に 関する規準の改正に取り掛かった。そうしないと、かつてレンガ造りに耐震性が ないとして消えていったように在来軸組構法が消えていくか否かの瀬戸際だっ た。 木構造は今迄から研究対象とされてこなかった経緯があり、研究者の不足はも とより規準を決める裏づけ資料に乏しいという難点があった。そのため、短期間 に規準をまとめるために暫定的な措置を行っていることが随所にうかがえる。基 本は、横方向の外力(地震や台風)に対しては壁で抵抗させるという考えで、筋 かいや合板を張った耐震壁というものの仕様によって強度をランク付けし、それ を足し合わせたものが建物の強度とするものである。あわせて、耐震壁に関わる 金物の規定も盛り込んだ。これらは一見分かりやすいものの、熟慮する余地の多 い改正となった。

現在の木造構造設計規準は完成されたものか

耐震壁が有効に働く担保として種々の金物や釘の種類や打つ間隔までの規定が ある。この手間が増えたことに、現場の大工が不満を訴えた。しかし煩わしくて も在来軸組構法が社会に認められて存続することを考えれば、今は素直に従うし かないだろう。近い将来もっと簡素化したり、構法の幅広い選択ができる可能性 が大きい。なぜなら、今の壁量計算と安全性の検証方法はその強度的な根拠は複 雑なものから導かれているが、耐力計算そのものは小学校の四則計算程度ででき るものである。片や、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の構造計算による安全性の検 証方法は木造に比べてはるかに進んでいる。これについては後段の「木造住宅建 築の現実的な耐震設計への提言」で述べたい。

プレハブ住宅は耐震性が優れているのか

さて、在来軸組構法!危険な建物なのかどうかを考えてみたい。2003年5月26 日に宮城県沖の地震があった。秋田県立大学木材高度加工研究所がその被害をま とめた。 この調査報告の特徴は、隣接していた在来軸組構法の木造住宅と鉄骨プレハブ 住宅がそれぞれに被害が生じたということである。 木造住宅は1974年築で、地震での特徴的な被害は部材の歪、柱の不同沈下や傾 倒、柱梁接合部の抜けや割れが指摘されている。架構全体の残留変形はそれほど 大きくはないが、一見して大破の状況とされている。

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鉄骨プレハブ住宅は1990年築で外観の損傷は少ないものの基礎コンクリートの 断裂、鉄骨土台の突き出し、鉄骨梁の座屈があり全壊との判定を受けている。こ の被害は1997年に伊豆半島東方沖の地震(マグニチュード5.2)の時にも同じプ レハブメーカーの類似被害が報告されている。 座屈とは、ある一定の力(圧縮や曲げ)がかかると突然、湾曲した変形などが 起こって瞬時に力を支えなくなる現象である。いわば、ひざガックンの状態を想 像してもらえればいい。こういう壊れ方は、変形することによってエネルギーを 吸収して粘り強くして保つという前提を成立させない危険な損傷と言える。一見 して無被害の印象を受けているようだが全壊という判定には納得する。結論とし て、在来構法の木造住宅にもプレハブ住宅にも実際の耐震性についてはまだまだ 未知の領域があるように思える。

6.木造住宅建築の現実的な耐震設計への提言

耐震構造の基本的な設計方針

耐震設計の基本は、稀に発生する地震動(気象庁震度Ⅴ強)に対しては破損し ないこと、即ちある程度のひびや割れを許容するという前提での許容応力度計算 という方法がある。力と変形は比例する、たとえて言うならバネに力をかけると その分だけ伸びるという現象!フックの法則を基本としている。但し、引っぱり 過ぎてちぎれたり、あるいは伸びきって戻らないような状態まで力をかけないこ とを前提としている。バネで戻る範囲での建物の耐力が力(地震力)を上回るこ とを計算して検証する。これを1次設計という。(欧米では1960年代から終局強 度設計に既に変わっていて日本は少し遅れている) そして極めて稀に発生する地震動(気象庁震度Ⅵ強)では建物のある程度の損 傷を許容するが大破、倒壊をさせないとする保有水平耐力計算で耐震性を検証す るという方法がある。これを2次設計という。 保有水平耐力計算では建物の持つ強度で対抗する方法、または変形で対抗する 方法がある。 強度型は地震力を構造物の持つ終局耐力(バネが伸びきった状態までを考慮) で持たせる考え方で、いわば力対力!建物の強度が地震力を上回ればよいとする 考え方、変形型とは地震力を受けた場合に大きく変形することによって、地震エ ネルギーを吸収して持たせる考え方という2種類になる。 一般に鉄骨造や鉄筋コンクリート造では耐震設計を行う場合、比較的小規模な

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建物では設計者の判断で1次設計のみの検討でもよいが、保有水平耐力計算(強度 型でも変形型でも)まで行うこともできる。保有水平耐力計算を行うメリットは 1次設計に比べて設計の自由度が広がり合理的な部材選択ができるからである。

木造の耐震性の検証には特殊性がある

一方、木造では1次設計の許容応力度計算にあたる規準は、筋かいや構造用合 板による強度型の耐震壁で壁の強さのランク付けをする「許容耐力設計」となっ ている。また2次設計の保有水平耐力計算の構造特性係数Ds値も、壁ごとの完 全弾塑性型モデルから引用された係数で、最初に強度型の耐震壁ありきという前 提である。伝統的に用いられてきた貫(あるいは差し鴨居という横架材)を用い た工法(以下、貫工法と呼ぶ)は明確な強度型耐震壁に比べると、極めて曖昧な 変形型耐震壁として地震動に抵抗すると考えるのが自然だろう。貫工法には強度 型耐震壁でいう壁倍率はそのまま導入できない。 実大実験でもわかるように貫工法は大きな変形を伴いながらも地震力に耐えて いることが分かる。但し、貫工法の構造は地震に対する挙動はとらえどころがな い。なぜなら、貫と柱の接合部の力および変形のやり取りを明確に説明すること が極めて厄介である。貫と貫穴との緊結の状態はどう評価するのか。たとえば施 くさび 工能力の評価方法、あるいは緊結するために用いられる楔の評価方法、さらには 経年による木材のやせによる縮みを考慮しなければならない。これらを適切に評 ゆるゆる 価しないと、大きな変形をもって地震動に耐える仕組みの前提が、貫自体が緩々 の状態で崩壊寸前近くになって本来の力がようやく発揮し始める(あるいは大き な変形になっても力を発揮しない)となれば、とても耐震壁とは認められない。 鉄骨造や鉄筋コンクリート造では実験結果から構造計算に必要な実験式を導く 考え方が定着しているが、木造には今のところ決定打に乏しい。柱や梁の数も多 い上、多様な間取りがネックになっているのだろう。様々なケースを想定して実 大実験を繰り返して画一的な略算可能な実験式を導くことも考えられるが、費用 の面で現実的でない。したがって、貫工法の耐震性の検証は接合部の終局強度と 許容される変形の担保を前提にして、構造体の変形による地震エネルギーを吸収 しながら抵抗するモデルとしてコンピューターを用いた高度な解析計算を行うの が現実的であると思う。

木造の2次設計の具体的解析方法

2次設計(保有水平耐力)といわれる設計手法は「増分解析」、「限界耐力計算」、 「時刻歴応答解析」という手法が確立されている。 「増分解析」とは構造物に漸増する水平力を加えて、部材の危険断面に生じる

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応力が降伏応力に達すると、その場所に降伏ヒンジを挿入し、さらに水平力を加 えて、構造物が最大荷重に達するまで、あるいは部材が変形限界に達するまで解 析を行うという手法である。 「限界耐力計算」とは地震動の要求スペクトルと構造物の耐力スペクトルを比 較して耐震安全性を検討する手法である。 「時刻歴応答解析」とは現在、超高層建築物の構造性能を検証するために用い られているもので模擬地震動波形による各部に生じる力および変形を振動性状を 考慮しながら弾塑性地震応答解析する手法である。 これらの解析方法を木構造、特に貫工法に応用させるとすれば適切なものはど れか。 鉄骨造や鉄筋コンクリート造の構造計算の実務ではこのうち「増分解析」が一 般に用いられている。解析プログラムも豊富である。しかしながら、木造に関し ては「増分解析」では通常の漸増載荷解析での荷重!変形曲線がバイリニア、ト リリニアと勾配を緩めながら連続計算をしていく仕組みがそのまま応用はできな い。特に貫工法では、実大実験で見る限り、貫(あるいは差し鴨居)の耐力が地 震動の変形で突如として現われ、そして降伏していく挙動は不確定要素が高い。 この性状に対しては増分解析の一つである変形増分法の適用は難しい。 「限界耐力計算」は、振動モード形は構造物の損傷によらず変化しないという 仮定が成立しなければ計算根拠を失うとされている。貫工法では地震動における 挙動が不安定なためこの点がネックになる。 「時刻歴応答解析」は実大実験並みの解析結果が出そうである。但し、模擬地 震動波形の入力方法や剛床仮定を成立させるための床の面内変形の評価、ねじれ 振動への考慮、軸方向力の評価方法などに入力上の留意点や演算時間に難点があ る。しかし、この方法は実大実験に一番近いモデル化であるので、将来的にはシ ミュレーションに様々なバリエーションが選択できて大いに期待できる。また、 実大実験よりもはるかにコストの削減ができる。 既に超高層建物の実用化されているこの解析方法を木造に応用するには以下の モデル化が必要である。 時間と共に変化する地動加速度に対する応答は、非線形特性を有する層間変形 と層せん断力の関係、変形振幅と共に剛性が低下しながら履歴エネルギーを消費 する適切なモデル化が前提となる。復元力特性というモデル化は地震力がプラス 方向とマイナス方向に交互に変わることに応じて、建物の力と変形がどのように 変わっていくかをループ状に表現したもので、建物の地震エネルギーの吸収能力 を評価する。木造の場合、繰り返し荷重により貫が剛性低下を起こして載荷、除 荷の度にループ形状が変形していく。このループ形状を適切に仮定すれば地震力

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に対する木造建築の保有水平耐力が算出できる。既に鉄筋コンクリート造では武 田モデルとよばれるループの勾配を緩める係数を用いて規準式が提示されてい る。しかし、木造では今のところそれに相応する明快な式がない。面材で構成さ れる耐震壁、筋かい構造、貫工法は各々、地震に対しての挙動が大きく異なる。 外力と変形のループ形状も、それぞれ独立して考える必要がある。ループ形状を 単純化するために安全率を加味しながらモデル化の工夫を行って、なるべく単純 な複数の実用式を導く必要がある。建物の形状や特性に応じて使い分けをするな どして、実験式に劣らぬ精度での安全検証ができると期待する。

木造の耐震設計を保障するための大工の技量

鉄骨造や鉄筋コンクリート造の構造計算では2次設計(保有水平耐力)を行う 場合、瞬間的な破壊(脆性破壊)を避けるため計算上、様々な規制を設けている。 即ち、粘り強く壊れることを想定している。木造にあっては、このような壊れ方 を担保するためには柱、梁接合部の確実性が基本条件になる。いわゆる大工の腕 が保証されないといけない。現在、大工の技能を測る目安の一つとして技能検定 (厚生労働省)がある。技能検定はどういうところを採点、評価しているのか。 採点基準は原寸図および材料への墨付けの正誤あるいは精度、できあがった課 題作品の寸法精度、直角度、勾配、すきま、そして主観的ではあるが出来栄えを 減点法で採点する。仕様誤りや作業態度も採点の対象となっている。 検定を実施している厚生労働省の立場からすれば、技能検定は大工職の総合的 な評価を意図しているものといえる。 しかし、これらの要件のうち構造材の接合部に関する確実な技能を評価する項 目がない。出来栄えを優先させると接合部の内側をなるべく凹状にすきとる(欠 き取る)テクニックを大工は多用する。せり合って、他の部分にすきまを生じな いようにしたり、角度を調整するためである。これを行うと見栄えはいいが、欠 き取りによるすきま部分での応力伝達に支障が出る。 建築基準法で取り決められた設計法を忠実に反映させるためには、大工の確か な技術で、接合部でも想定した耐力がなければならない。 確実な接合部の応力伝達を担保するには(仮称)「構造大工士」というような 一定の技能と知識の裏づけをもった大工にその部分の施工を担当させなければな らないだろう。 大工という称号はあっても資格はない。昔は、長い修行の後に年季明けした者 を大工として周囲が認めていたものが、現在では大工は自称に等しい。 確実な設計の反映のためにも、信頼できる技能を持った大工による木構造の保 証は社会が求めているものである。

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7.現場でよく見かける木造架構における共通の問題点

以下の点は木造耐震診断あるいは耐震補強工事の際に、仕上げ材を撤去して構 造材が露出した時に出くわす、あたかも申し合わせたかのような問題点である。 尚、これらの要素は耐震診断における評点には反映されていない。このような事 例があれば耐震診断を行う際に耐震事情に精通した技術者の工学的な視点によ り、評点の減点を考慮しないといけない。(減点以前の問題点かも知れないが)

寄棟屋根の隅木が省略されている

寄棟屋根(左下図参照)には隅木(右下図参照)という部材が必要で、配付垂 木と呼ばれる部材を受けるために一回り大きな部材を用いる。 これが隅木で、ここに配付垂木が取付く それを隅木に替えて、一般の垂木で屋根の形状に沿って、あたかも凧の骨のよ うな形状で納めてしまうのである。接合部は殆どが釘留めのみで、経年変化によ り釘に錆が生じて外れてしまっているケースもよくある。暴風時の吹き降ろし、 吹き上げ時に大きな変形が生じて雨漏りを起こす。殆どの場合、その付近に雨漏 りのシミ跡がある。

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寄棟屋根の隅木を省略して垂木(2本)で代用しているよくない例

梁の接合部の不具合

梁と呼ばれる横架材の接合部分(仕口と言います)は図のように木材の一方を 凹状に欠いで、もう一方を凸状に加工して組み上げます。 (悪い例として) この梁が小さい断面の下地材に置き換えられることがある

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本来受けるはずの梁がないため断面欠損を起こし強度が著しく低下 本来、横架材(梁)同士で組上げるのを下地材で代用しているよくない例 凹状の加工は行っているものの、凸状の梁材に変えて下地に用いる材(現場で は割材と呼んでいます)を挿入しているのです。凹状に欠き込んだ梁は断面欠損 で強度が著しく弱くなり、凸状の梁に替わる下地材は元々構造的な強度は期待で きず、力のかかる所が一番の弱点になっているのです。(何故こうなったのかは わかりません)

筋かい端部

筋かいは、普段の屋根や床などの重みを耐えるように考えられた構造材ではあ りません。地震や台風が来た時にのみ有効に働くものです。筋かいの端部の接合 が問題になります。 地震や強風時の横揺れで外れてしまうケースが考えられます。次頁の図に示す ように従来の工法は端部を釘留めとすることが多かった。釘は先述したように経 年変化で、壁内結露などで錆を生じて頭の部分が欠損しているケースが多い。

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一昔前の標準図。ほとんどが釘で留めるように指導している。

壁筋かいの端部接合部分が釘1本で留められているよくない例

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アンカーボルトが効いていない

ナットが緩んでいるケースが多い。ナットそのものがないというケースもたま にある。 アンカーボルトはナットを効かして基礎とすると土台を固定する アンカーボルトにナットがはまっていないよくない例

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リフォーム工事と耐震工事を同時に行うことは合理的といわれる。目に見える 出来栄えは評価しやすいが、構造体に関わる耐震補強工事は、地震に遭遇しては じめて評価されるものである。こういった不具合を発見した場合は、木構造に関 する高度な知識と技能をもって職務を果たすべきである。

8.後進育成の現状

職人の育成(現状の問題点とその解決策)

かつて、大工を育成してきた徒弟制度は既に消滅している。徒弟制度に変わる 後継者の育成方法には大きな課題を抱えている。義務教育を終えた新卒者が大工 になりたいと思っても受け入れるに相応しい機関がない。全国各所に職業訓練校 というものが設けられているが中学校(または高校)を出た卒業生がどの位入学 しているのであろうか。 この背景には、「せめて高卒の学歴でも」という親心で、子供たちにとりあえ ず高校(または大学)に進学させる風潮がある。進学した先で何の目的も持たな い、あるいは目的を知らなくて3年間(または4年間∼それ以上)を無為に過ご す若者たち。彼らを指して有能な人材とは言いがたい。かたや、大学進学を視野 に入れて受験勉強ばかりする若者たち。彼らも一概には有能な人材とは言えな い。体を使っていないからだ。目的意識が確かで、頭も体も動かせる若者を将来 有望な人材というのであれば、今の世の中においてその存在は稀有であろう。ど の分野からも重宝され争奪戦が行われ、結果的に条件の悪い大工にはならないだ ろう。 しかし、多くの若者に早く気づいてもらいたい。手に職(または技)を持つと いう、生きていく上での最低の術を持たずしてどういう将来があるのか。頭を鍛 えるだけが教育ではない。天性に応じた個々の能力を見出して伸ばしてやるのが あらゆる分野での先達の義務であろう。また、資源のない日本には教育と職業訓 練によって人材を育て上げなければならないとされているが、現状はその視点が かなり欠けている。 大工を養成する機関について私論を述べたい。

大阪府立高等職業技術専門校

大阪府には雇用推進室人材育成課という部署があって、安定した雇用のために 技術者の育成も目的の一つとしている。建築大工を育成するコースがあって守口

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市に1校ある。かつて松原市にもあったが、和泉市に移転し南大阪職業訓練校と して再出発した時に、こともあろうに建築大工科を廃止してしまった。建設関係 団体からは何の異議も唱えられないままに今日に至っている。廃科の理由は明ら かではないが、それまでに募集人員が集まらない、訓練効果がはっきりしないな どの声があったのは事実だ。廃科を残念に思うのは私一人だけであろうか。人気 がないのなら欠けている点を洗い直したらいい。先ほど述べた親御さんのせめて 高卒程度の学歴云々の気持ちが子供さんの進学断念に当たっての大きな障害であ れば、縦割り行政(文部科学省と厚生労働省)の難しさもあろうが、訓練校卒業 後は高等学校卒業程度認定試験に、ある一定の学科免除を行うなどのメリットを 付与することも考えられる。 また、かねてより問題視されていた修業内容が現場の実態からかけ離れている こと、教育指導員も個人の能力や力量に任されている実情も改善の余地がある。 そういう基本的な検証を大阪府雇用促進室人材育成課は再度確認する必要がある だろう。また、教育指導員自らも現在の建築現場の実態を把握したり、新しい知 識を身につけなければならない。

住宅メーカー関連

住友林業、積水ハウス、パナホームなどが職業訓練施設を設置しているがそれ らは企業内訓練施設であり一般に広く門戸を開けているとは言いがたい。自社に 関係する技能職の訓練機関という位置づけである。 そのほかに平成建設という異色の企業が大学卒の社員を集めて大きく飛躍して いる。しかし高学歴大工集団と言われる社員の腕を発揮しているのは賃貸物件が 主で、今のところ高度な大工技能を持ち合わせているところまでは至っていな い。社長の言にもあるように将来は京都に展開して京都の伝統技能を吸収したい と述べているが、まだ発展途上の域である。

全建総連関連の職業訓練校

全国には認定訓練校が約1,400校あるとされ、そのうち建設業関係が約550校、 さらに「木造建築科」に絞るとおよそ200校あるとされる。全建総連では92の職 業訓練校を有している。しかし、どの訓練校も生徒が集まらないという共通の問 題を抱えている(全建総連の認定職業訓練校の生徒は1996年の3,254人をピーク として2009年では1,045人)。その結果、補助金カットや休校、挙句の果てには廃 校となっている。 何故、生徒が集まらないのか。ヒアリング調査によるとテキストが古い、ある いは現状にあっていない。昔の仕事のやり方にこだわりすぎるなどとの意見もあ

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る。このような指導現場の意見をどれ位反映して、カリキュラムを改変している のか疑問である。 技能を身につけて就職口の選択肢を拡げたいという気持ちは、失業に面してい るほとんどの人たちが持っていると思う。潜在的に、入ってみようと思う人たち は多いはずだ。となれば、訓練校のシステムに問題があるのだろう。

東京カレッジ

相次ぐ廃校、休校の流れの中で新規開校して成功しているところがある。1996 年に開校した東京建築カレッジである。厚生労働省所管の職業能力開発短期大学 校で毎週末の2日間に学科講義と実技を行っている。成功の理由は14年間での顕 著な実績である。伝統構法を取り入れたカリキュラム、各種の技能競技大会での 受賞、各種国家試験での合格実績などがある。また、公開講座を通じて社会への 参加も積極的で他の職業訓練機関に比して別格の存在と言っていい。さらに資格 取得の面でも有利な点がある。技能士については受検に必要な実務経験の短縮、 学科試験の免除、2級建築士については卒業と同時に受験資格の付与、職業訓練 指導員については卒業後3年の実務経験後、指定の講習を受けることで資格が得 られる。これらの実効性があることで入校志願者も安定している。

大工育成塾

2003年、国土交通省の支援の下で、住宅産業研修財団では将来の大工職人を深 刻に危惧して「大工育成塾」を立ち上げた。伝統工法の技術・技能の継承のみな らず我が国の職人文化・ものづくり文化を担う人材育成を目的としている。3年 後、一軒まるごと建てるまでを目標としている。そのために教室講義と現場修業 を並行して行っている。 教室講義で基礎的な知識・理論、現場修業で技術・技能という風に体系的な育 成を図っている。カリキュラムも大工の歴史、職人学に始まり実践的な大工知識、 しつらい 大工技術から果ては礼儀作法、室礼、華道に至るまで網羅されている。卒塾前の 修了制作では、実際に伝統工法による木組を完成させる。そして、卒塾後は「大 工志」の称号を与えられ同期や先輩、後輩の交流が続けられるような体制が整っ ている。 学費が1年生で50万円、2年生で40万円、3年生で30万かかることも特徴であ る。 筆者は大工育成塾発足の時から微力ながら選考委員や座学講師を仰せつかって いる。その経験からの私論を述べたい。

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選考委員から見た現代の若者

毎年、入塾希望者を面接している。その時に他にどのような教育機関を比較し たかを聞くことにしている。 すると、在校中に進路指導の先生からは決まって、大工になるには職業訓練校 を推薦されるらしい。しかし、自分でインターネットで調べるうちに「大工育成 塾」を知って比較した結果、こちらの方が自分にあっていることを志望動機とす る者が多い。また、その中には工業高校や専門学校の建築科を卒業(あるいは見 込み)という、既に建築知識のある者も多い。 面接する立場で彼らと直接、話をしてみるとこちらの思惑が外れることが多 い。工業高校や専門学校で得た知識と経験を、「大工育成塾」でさらにステップ するために志望したのだと思い込んでいたのだが、実際はそれまでの授業に多く の不満を持っていて「大工育成塾」ならもっと実践的で系統的な修業ができると 期待しているのだ。 これは裏を返せば工業高校や専門学校のカリキュラムに問題があるのだろう。 生徒が期待するものと実際の授業の内容に大きな隔たりがある。たとえば高校の 3年間である程度の技術を持たせるという、ゴールに対してどのように進めて行 けばいいのかという逆算ができていないのだろう。実践を教えることのできる教 員も皆無に近く、この様な状況では成績順で上から振り分けられる偏差値による 学校ランク付けで永久に後背に甘んじる状況になってしまう。

選考の際の基準

選考の際に何を重視するか。多くの志願者は学生時代に不完全燃焼の年月を過 ごしたとの印象を受ける。偏差値によって振り分けられ不承の結果だというのだ ろう。大工の世界には偏差値というものさしは存在しない。まず、そういった認 識が理解できるか否かを質問に混ぜてみる。その認識があれば高い評点をつけ る。人生の目標を定められる見込みがあるからだ。教えて、打てば響く人材にな り得る。実際、面接の時にそう感じた塾生は3年後、期待以上に成長している。 その反対に、遅れを取り戻そうと熱意がありすぎる志願者は期待を裏切られるこ とが多い。偏差値の環境の中で育った弊害というか、競争での挽回を意識してい るようだ。 一発屋的な性格は大工には向かない。地味な積み重ねに辛抱強く耐えられる資 質のあることが望ましい。その資質がなければ、自覚した上で3年間かけて修業 すればいいのだ。それを見るため、面接の質問で表現を工夫して誘導してみる。 志願者に反応がなければ芳しくない評点をつけなければならない。入塾後、元々

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評点の低い塾生が、入塾してもすぐにやめていくケースが多いがある程度は仕方 がない。

講師としての経験

私の講師としての7年間に感じたことは、塾生は画一的ではない(年齢、素養) ということだ。塾生は2種類に分かれる。一つのグループは大学卒業程度の学歴 を有するグループ(大卒グループと称する)で、もう一つは中学卒業あるいは高 校中退(中卒グループと称する)のグループである。その中間に高卒がいるが彼 らはどちらかのグループに分かれる。学力としては当然、大卒グループがはるか に上である。彼らは意中の大学に合格したか否かは別として受験勉強の経験者で ある。受験勉強を経験したか否かは功罪がある。功は説明する必要もないが勉強 の要領を身に付けている。罪は予め答えを想定した問題を解くことばかりを若い 時に効率第一主義で詰め込まれたことである。この結果、答えのない問題は解く ことができない。世の中の殆どは答えのない問題、あるいは昨日までの答えが今 日では違う答えに変わるようにできている。一方、中卒グループはいわゆる学校 型の勉強が苦手である、あるいは恩師に恵まれなかったのかも知れないが概して 教養が大きく欠落している。しかし、答えのない問題に対しては色々な思考錯誤 で、体を動かして解決しようとする。職人育成の立場からすればこのやり方は理 想である。 両者を同時に指導する場合には相反する能力の伸ばし方になるので注意はして いる。受験勉強経験者には体を使った試行錯誤の訓練を、勉強の面白さを経験し ていない塾生には教養に対する興味が湧くような訓練を同時に行っている。最終 的には、毎年行われる3年生の修了制作で墨付け、手刻みによる伝統建築工法の 注文住宅を塾生、指導棟梁、座学講師が三位一体となって完成させ、塾長による 総合評価が行われる。

9.将来への展望(全建総連への期待)

大工・工務店のこれから進むべき道

住宅メーカーが行ってきた、目標設定に向けて組織力で住宅産業を変えた成果 は学ぶべき点が多い。全建総連は住宅メーカー従業員以上の組合員を擁している ので組織として行動するのは最も得意なはずである。ただし、構成員は個人レベ ルに近い大工・工務店であるので個別に住宅メーカーのやり方を真似るには無理

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がある。不得手な分野を全建総連がリードしていくのが理想的な手段だろう。大 工・工務店と住宅メーカーは敵対関係ではない。それぞれの得意な分野を消費者 にアピールし選択してもらうことで共存するものと信じている。また、両者のバ ランスが拮抗することで建設労働者の仕事の選択、賃金の安定も実現するのであ る。 具体的に住宅メーカーと比較すると大工・工務店で足りないものは企画力、宣 伝力、営業力ということになる。ここに目をつけて、これらを代行する会社があ って成果を上げている。 それらの会社が行っていることは営業支援と称して集客企画に始まり、営業商 談支援などを行い、結果が思わしくないと営業マン自体を送り込んで商談に同行 させて契約率を上げる実績もある。また、設計の代行も提案設計から実施設計、 積算支援までフォローしている。 これらは全てその会社の社員が有償で行っている。全建総連においてもこの方 法は成果が出ると予想される。営業、設計、コンサルタントなどの人材を招集し、 それぞれ得意な分野や実績を公示し、組合員の大工・工務店が彼らを選択し有償 で活用できると確信する。いわば町場のやり方で横のつながりでの仕事の完成が 見込める。

宣伝方法

宣伝については記事としてマスコミを利用するのが大きな成果が期待できる。 前章ではマスコミを否定するような見解を示したが、報道機関にあっては大工・ 工務店に対して真の姿を正しく報道しているところもある。また批判的な記事を 書く報道機関内部にもいろいろな人たちがいて大工・工務店を支援してくる人た ちも少なからずいる。批判記事は思い込みで進めた形跡が読み取られるので、彼 らの認識を正しく持ってもらえるような話題を提供すれば好意的な記事にしてく れる可能性が高い。

海外への視点

日本の建設技能者は一昔に比べて技量は落ちていると指摘されているが、外国 人の建設労働者にはないフレキシビリティや器用さがある。全建総連が各国の建 設労働団体を通じて情報収集や受け入れ窓口などの整備を行えば、日本の建設労 働者の現地での活躍の場を実現できる可能性がある。 以下の国には既に顕在化している需要がある。

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(アメリカ)

世界を激震させたサブプライムローンの築年数の浅い戸建住宅(権利関係は別 として)が多く存在している。日本で培ったリフォーム技術(施工精度、工期、 費用)が発揮でき、不動産の価値を高めた結果、担保力が増える効果も期待でき る。

(ヨーロッパ)

歴史的な町並みを重視するヨーロッパでは新築は殆ど無い。リフォームが中心 になる。日々の生活を考えると快適な住環境に変えていく需要は大きい。日本と ヨーロッパを比較するとデザインについてはヨーロッパに一日の長があるが、住 宅設備の、特に機能については日本の方がはるかに勝っている。温水洗浄便座に 代表されるように、ヨーロッパには普及していないものがたくさんある。風呂は シャワーだけという慣習もあって日本のようなバスユニットは普及しにくいかも 知れないが、シャワーユニットは防水機能、シャワーヘッドの吐出機能の多様性 などから大きな需要が期待できる。商品は日本から輸入できても肝心の取付施工 者がいないことが普及を妨げる一因でもある。 ヨーロッパでは何でも器用にこなす多能工が存在しないからこれらの便利な多 機能の住宅設備の取付ができないのかもしれない。日本でこういった商品の取付 に精通している職人を現地に派遣することが考えられる。

(中国)

製造業は世界的に見て、中国が首位の座に着いたというのが実感である。周囲 のモノには、ほとんど「Made in China」という表示が入っている。中国は経済 的に急成長し、貧富の格差弊害があるにしても金持ちの国民が増えた。 ところが、いかに金持ちになっても住まいが国から支給される官舎や社宅のよ うなもので、住む立場からの不満が大きい。最近、私有財産が認められ中国版マ イホームが加熱してきている。都市部での高層共同住宅のリフォームや郊外での 高級一戸建て住宅に日本人の高度な技能が発揮できる場所がある。また、中国人 富裕層の多くは日本文化(伝統建築)に対する眼識が高い。あるいは、京都あた りに観光に来て日本の木造建築に憧れを抱く人も多い。かつて、日本にも輸入住 宅ブームがあった。施主の多くは外国人に自分の家を建ててもらったことに喜ぶ 人が多かった。中国でも同様に日本の大工に建ててもらったことを誇りに思う人 が多いと思う。

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参照

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