理 学 療 法 学 第
21
巻 第7 号411 〜415
頁 （1994
年 ）報 告
脳卒 中片麻痺
患
者
に
お
け
る
下肢筋 出力特性
が
歩行
速
度
に
及
ぼ
す
影響
＊阿 部
長
1）丸 山
泉
2）原
直 哉
D
明 吉 康 則
1）渡 部
de
−
1） 要 旨 脳 卒 中 片麻 痺 患 者のうち，
麻痒側ド肢のBrunnstrom
stage IV以上の者43
名を対 象に，
ド肢 筋 出 力 特 性が歩 行 速 度，
およびそ の成分に及ぼす影響を検討し た。 筋 出 力特 性の指 標と して，
両 側 膝 伸 筋 群の急速膝 伸 展 時にお ける最 大トル ク発 生 所 要 時 聞・
最 大 トル ク発 生 率を用い，
最 速 歩 行 速 度・
歩 行 率・
重複 歩 長との関 係を，
片 脚立 ち時 問を加 味し比 較した。 その 結果，
今回 瞬 発力と して捉え た麻痺側の最大トル ク発生所要時間・
最大トル ク発生率は，
支持脚で あ る 非 麻 痺 側 下 肢の 片 脚 立ち時間が20
秒 以上の場合，
歩 行率と関係してお り，
歩行 速度にも影響を与えて い る と考え られ た。 キー
ワー
ド 脳 卒 中 片 麻 痺 患 者，
下 肢 筋 出 力 特 性，
歩 行 速 度 は じ め に 脳卒 中片麻 痺患者 （以下CVA
患者）の 日常生活 自立 社 会 復 帰におい て，
本邦の家屋構造や生活様式， お よ び公共施設等にお け るハー
ド面の充実度等 を考 慮 すると，
歩 行 能 力の優 劣はこれ らに多大の影響を及ぼすもの と考 え ら れ るD。 な かで も歩 行速度は，
社 会生活の 質に も関 連 する重要な因 子の一
つ であ る と我々 は捉えて い る。 歩 行 速 度は重 複 歩 長および歩 行 率により規 定さ れ る。 我々 は過 去の研 究により，CVA
患者の一
部におい て，
下 肢 筋 力 と重 複 歩 長 とには 正の相 関 関係 が あ り2），
積 極 的 な‡
TheInfluence of Lewer Extremities
’
Muscular Contrac−
tiolコChavacteristics on the Walking Speed of Cerebral Apoplectic Hemiplegics1）
豊 泉 会 丸 山病 院 リハ ビ リ テ
ー
ショ ン部 （〒 838−
Ol福 岡 県小 郡 市」」隈273−
lI）Hisashi Abe
，
RPT，
Naoya Hara，
RPT，
YasunoriAkiyoshi
，
RPT，
Yuichi Watabe，
RPT ： RehabilitationService
，
Hosenkai Maruyama Hospital2）
豊 泉 会 丸 山病院内科
Izumi Maruyama
，
MD ：Internal Mcdicine，
Hosenkai Maruyama Hospital （受付日 1993年5月10日ノ受理 日 1994年 9月13日） 下 肢 筋 力 強 化 訓 練の結 果 重 複 歩 長は増 加 し，
これに伴な い歩 行 速 度 も改 善 するという結 論 を得た3）。しか し歩行 率に関 する
一
定の関 係は示 唆されな かっ た。
今 回こ の歩 行 率 と，
遊 脚 期にお ける下 肢 振 出 し速 度に影響を与え て い る の で はないか と推 測された瞬 発 力とし て の下 肢 筋 出 力 特 性 との問に，
何 らかの関 係 が あるので はないか と考 え， 本研究 を行なっ た。 CVA 患 者にお ける下 肢 筋出力特性の指標と して， 急 速膝仲展時の最大 トル ク発生所要時間 （以一
ドTPT ），
お よ び最大トル クをTPT で除した最 大 トル ク発 生率 （以 下RTD
）を用い，
歩行速度お よ び そ の因 子との関 係を 検 討し た。
対 象CVA 患 者の うち
，
麻痺 側 下 肢の Brunnstrom stage エV以上の者で，
10m 以上の無 介 助 歩 行が可 能な43名を対象と し た。 男性
29
名・
女性14
名，
右 片 麻 痺24
例・
左片麻痺 19例， 平均 年齢60
±7．
7
歳，
平 均発症 後 期 間47
．
6
±52．
7
ヵ月で あっ た。 高次 脳機 能障害・
痴呆・
著Japanese Physical Therapy Association
NII-Electronic Library Service Japanese Physioal Therapy Assooiation
412
理 学療 法学 第 21巻 第7号 を有する者は除いた。 方 法測定項目は
，
最 速 歩 行 速度・
この時の歩行率・
重 複 歩 長，
左右各 膝急 速 伸 展 時のTPT ・RTD
で あっ た。 ま た，
一
側 下 肢 振 出しに与え る他 側 ド肢の支持脚と して の影 響 を検 討 する た め，
両 側の片 脚 立 ち時 間（表 中 OLST ） も計測 した
。
最速歩行 速 度
・
歩行 率・
重複 歩長は，
各 被 検者の最大 努 力によ る10
・m 歩行 時 間を3
回計測し， その うちの最 短 時 間とこの 間の歩数に より，
これ ら を算出した。
こ の 時，
各 被 検 者が 日常 使用し ている短 下 肢 装 具・
T 字杖は 原則と して使 用さ せ た。 な お，
検 者の合 図か ら歩行動 作 開姶まで の時 間のずれ を排 除する ため， 計 測 開 始 は 最初 のHeel
off時と し た 。 こ の計 測は，
筋疲労に よ る測 定 数値へ の影 響を考 慮し，
筋 出 力 特 性 測定前に計測 した。
ま たTPT ・RTD
は， 筋力 測 定 装 置に被 検 者を股・
膝 90°
屈 曲の椅坐位に固定し，
最 大 努 カー
．
ドで の膝伸展 を可 能な限り急 速に行な わ せ，
その後約 12秒 間 保 持さ せ た。 こ の12
秒 間の保持に より，
最 大出力を特 定 出来るもの と考え ら れ る。 この試 行 を充 分な休息を おき，
左 右それ ぞ れ6回 行な わ せ た。 この う ちの最 大 張 力 時に出力さ れ た筋 出力 曲 線と膝 関節裂隙か ら圧セ ンサー
まで の距離に よ り，
これ らを算 出し た （TPT ＝
秒，
RTD＝kg ・
cm ／ 秒）。 上 記筋 出力 曲 線の模 式 図を図1
に示す。 縦軸は筋 出力 （kg
），
横軸は経 過 時 間 （秒 ）を表わ し， 筋 出 力の 時 閭 的変化を み る ことが 出 来る。 なお，
本計測の難度お よび筋 疲 労を考 慮に入 れ，
計 測 前目まで に試行 内容を理 筋出
力
RTD
＝Peak
tDrque／
TPT
Peak
force
〆 解 する まで の練習を各被検 者に行な わ せ た。 ま た， 片脚 立ち時 間は開眼で左 右 そ れぞれ3回 計 測 し，
その うちの 各最 長 時 間を麻 痺側・
非麻痺側別の片 脚 立ち時 間と して 用いた。 この計 測に は各 被 検者が 日常使 用して い る短下 肢装具・
靴のみを使 用さ せ た。 な お，
歩行速 度 及 び片 脚 立ち時間の計測に はス トッ プウ ォ ッ チを使用し た。振 出し側 下 肢の 筋 出力 特 性と歩 行能 力との関係を検 討 す るた め
，RTD
お よびTPT と歩 行 速 度・
歩行 率・
重 複歩 長と を比 較 した。 しか し，一
側 下肢を振 出す 行 為は，
その下 肢の能 力のみによ るの では な く，
対側 （立脚 側 ） ド肢に よ る骨盤・
体幹の安 定 化 も関 与して いること は容 易に想 像がっ く 。 安 定 性の低い被 検 者と高い被検 者とを 同一
視 して比較した場合，
振 出し側下 肢の能 力 を，
より 純 粋に比較出来 ない の で はないか と考え られる。 そ こ で 今 回，
比較的 安 定 度の高い と思わ れ る片脚立 ち時 間 20 秒 以 上の群と， そ れ未満の群に分 け比 較 検討し た。 ま た こ の ことにより，
立脚側下 肢の安 定 性が歩 行に与え る影 響 も，
あ る程度 類推す ること が出 来るもの と思 わ れる。 結t’
itP 江「
経
過時
間（
秒 ）
図1
筋 出力 曲 線の模 式 図 果片 脚立ち時間の平均は
，
非 麻 痺 側 ：1
秒未満の不可能 者 4例，
』
可能 者 平 均39
± 30．
7秒，
麻 痺側 ：不可能 者30
例，
可 能 者 平 均8
±14．
1
秒と有意に非 麻 痺 側 片 脚 立ち 時間が長かっ た （p
〈O．
001
）。各 指 標の分 析に移る前に
，
麻痺側 下肢における筋 出 力 特性と歩 行速度お よびその成 分の実 測 値の平 均を表 1に 示 す。 全対 象者・
非麻 痺 側 片 脚 立ち時間20
秒以 ヒ・
同 20秒 未 満の各群に分け示す。 非 麻 痺 側 片 脚 立ち時間20
秒以 上の群に比 し同20
秒未満の群で は， TPT で は有意 差 を 認めず，
RTD におい て，
や や低値を 示 した （p〈0．
05
）。 ま た， 歩行の諸 要 因で は，
いずれ もp＜ 0，
001 と 有 意に低 値を示し た （平 均 値の差の検 定）。次に麻痺 側下肢に お け る筋出 力 特 性と歩 行の諸要 因と の関 係 を検 討 した。 統計処理の結果を表 2に示 す。 先ず
，
全 対 象 者で の比 較を行なっ た。 歩行速 度 との関 係で，
麻 痺 側 RTD との 問に有意の正相 関を示 し た が，
麻 痺 側 TPT との 間で は有意の 関係は認められな か っ た。 次に 歩 行 率との関係を み ると， 麻 痺 側RTD との間に有意の 正相 関を示し た が，
麻 痺 側TPT との聞で は有意の 関係 は認められ な かっ た。 さらに重 複 歩 長との比 較で は， 麻 痺 側 RTD との 間に おいて弱い正 柑 関を示 し た が，
麻痺 側 TPT との間には有意の関係は認められな か っ た。 次 に非 麻 痺 側 片 脚 立ち時間 20 秒以 上の被 検 者を抽 出し，
N工 工一
Eleotronio Library脳 卒中片麻痺 患者における下 肢筋 出 力特 性が歩 行 速 度に及ぼす 影 響 413 表
1
対 象群別各指 標の平均値 （Mean
±SD） 全対象者 n＝
・
43OLST
20秒以卜群 OLST 20秒未満群 n＝
28 n≡
15 麻 痺 側 TPT （秒） 麻 痺 側 RTD （kg・
Cln／秒 ） 歩 行速 度 （m ／分） 歩 行 率 （歩／分 ） 重 複 歩 長 （cm ） 1．
25±0．
53 527．
5±274．
4 51．
8±22．
9 104．
8±26．
594．
ユ±27．
8 1．
31±0．
57 1．
15±0 ．
45581．
4±291．
2 426．
8
±213．
6
63．
3：ヒ16．
9 30．
3±16，
1 116．
6±21．
0 82．
8±21．
1 107．
5二L16，
4 69．
0±27．
5
OLST は非 麻 痺 側．
OLST 20秒 以 上 群と同 米 満 群の比 較におい て，
TPT で は有 意 差 を認めず，
RTD では後者でや や低値を示した （pく0．
05）．
歩行の諸要 困に関 して は，
全て後者で低値を示 し た（p＜0，
001）．
表 2 麻痺側下肢の筋 出力特性と歩行の諸要 因との関 係 全 対 象 者 〔n＝
43） RTDTPT
歩 行速 度 r＝
O．
61＊
NS
歩 行 率 r二
〇，
56＊
NS
重 複 歩 長 r＝
．
44’ NSOLST
20
秒以上群 （n＝
・
28
）RTD
TPT r＝0．
82
” r＝− 0．
67
寧 r＝0，
58
＊ r庸一
〇，
74
＊ r＝O．
68
’NS
OLST 20秒 未 満 群 （n＝
15） RTDTPT
SSNN SSNN SSNNOLST は非 麻痺側
，
統計処 理 は単回 帰 分析，
NS ：Not Significant＊
Pく0．
Ol同様の比較を 行なっ た
。
歩 行 速 度 と麻 痺 側 RTD・
TPT，
歩行 率と麻 痺側 RTD・
TPT ， 重複歩 長と麻 痺側RTD
に有 意の相 関を 認 め た が，
重複歩長と麻 痺側TPT
とで は有 意の関 係は認め ら れ な かっ た。 な か でも，
歩 行 速 度 と麻 痺側 RTD，
重 複 歩 長 と麻痺 側 RTD との関 係に お いては全対 象者で の比 較に比べ，
さ らに高い正 相 関 を 示 し た。 ま た， 全対象者で は相関の認め られ な かっ た歩行 速 度 と麻 痺 側TPT ，
歩 行 率と麻 痺 側TPT
との 間に負 の相 関が認め ら れ た。 し か し，
非 麻 痺 側片脚立ち時間 20秒 未 満の群で の比 較で は，
同様の比 較項目におい て 有 意の関係は認められな か っ た。
次に非 麻 痺 側 下 肢にお ける筋 出 力 特 性 と歩 行 能 力 と を 比 較し た。
歩 行 速 度と非 麻 痺 側 RTD との関 係で弱い111 相関を 認 め た もの の （r＝0．
32
， p＜0．
05
）， その他に関 して は有 意の 関係は 認め ら れ な かっ た。 考 察 本 研 究に おけるTPT・
RTD の計測にっ い て は，
被 検 者に酊能な限り急 速に，
且っ 可 能な限り最 大の力で麻 痺 側 および非 麻 痺 側の膝 仲 展 を行なわせた。
これ は 被 検 者 にとっ て難 度の高い課 題であると予想され，
今 回の よ う に6
回程度の計 測で充分か ど う かの判断が求め られ るこ と は予 想に難くない。 し か し本 研 究の場合，
臨 床 現 場に おい て患 者で もあ る被 検 者へ の肉 体 的・
精 神 的 負 担 およ び計 測 中の筋 疲 労によ る デー
タへ の影響等 を考慮 し， 必 要 最 小 限に計 測 回 数 を 抑え た。 ただし，
本 計測方法の難 度を考慮す る と， 被 検者に対し事 前に習熟のた めの予 行 演 習を実 施す る必要が あ る と考え，
計 測日前日 まで に各 被 検 者に対し充 分な習 熟 訓 練を行なっ た。 ま た今 回，
非 麻 痺 側 下 肢のバ ラ ンス能 力の基準と して，
片 脚 ウ：ち 時 間20
秒 を一
っ の 目安 と した。一
般 的に閉 限 片 脚 立 ち時間は 10秒 以 上で正 常 とさ れ てい る4）。 し か し歩 行は 開眼で行な わ れ る もので あ り，
視 覚に よ る姿勢 の補正も当然行な わ れて い る。 本研 究におい て は視 覚に よ る 影響を考 慮 し，
閉 眼時正常 値の2
倍であ る20
秒を 基準 値と し て用いた。 ま た経験 的に もこの値は，
充分安 定し た片脚立位を保て る もの と思わ れ た。 こ こで麻 痺 側 下 肢に お け る各 指標の平均値 （表1
）を みて も，TPT ・
RTD におい て大 きな差はな い が，
歩行能力と して は非 麻 痺 側 片 脚tr
．
ち 時 間20秒 未 満 群で大 き く低 値 を 示 してJapanese Physical Therapy Association
NII-Electronic Library Service Japanese Physioal Therapy Assooiation
414 理学療法学 第 21巻第 7 号 い る。 この事か ら も
，
立 脚 側 ド肢のバ ランスが，
歩 行へ 何ら かの影響を与えて い る事が う か が える。
な お RTD におい て， 非 麻 痺側片 脚立 ち時 間20
秒 未 満 群で やや低 値を示 し た事は，
歩行能 力の高 低による歩 行 量の差で は ないか と推 測さ れ る。 麻 痺 側 下 肢におい て歩 行 速 度と麻痺側 RTD との比較 で正 相 関 を 示 し，
非 麻 痺 側 片 脚 立 ち時間 20秒 以 上の群 を抽 出し比較し た場合， さ らに高い正相関を示し た。 ま た，
歩行速度とTPT
との関係で は，
非麻 痺側片脚立ち 時 閻20
秒以上の群とで のみ， 有意の負の相関を示し た。 これ らの事よ り，
あ る一
定 レベ ル 以 上の非 麻 痺 側 片 脚 立 ちバ ランス の も と，
麻痺側下肢振 出しに充 分な力をいか に短時 問で出せ る か とい う，
瞬 発 力と して の麻痺側ド肢 筋 出力 特 性が，
歩 行 速 度に重 要な影 響 を与 えて いるの で はない項
・と考えられる 。 さ ら に， 歩行率お よ び重複 歩 長 と麻痺 側 ド肢筋出 力特性との 関係を み る と，
全対 象者に おいて歩行 率と麻痺 側RTD
とに有意の正相関を示 し た。 しか し，
非麻 痺 側片脚立 ち時 間20
秒 未 満の者に限 定 し た比較で は有意の関係は認め ら れ な か っ た。
また，
歩行 率と麻 痺側TPT
との比 較におい て，
非 麻 痺 側 片 脚 立 ち 時間20 秒以h
の群との関 係で のみ，
有 意の負の相 関 を 示 した。 これ らの事よ り，
麻 痺 側 下 肢 筋 出 力特性は，
非 麻 痺 側 片 脚 立ちバ ラン スの間 接 的な影 響を受けっ っ，
歩 行 率に影響 を 与 えてい るので はないか と考え ら れ る。 ま た， 重複 歩長との 関係に おい て も， 全体と して麻 痺 側RTD
との間に弱い正相関を認め，
非麻 痺 側 片 脚 立ち時 間20
秒 以E
の群で，
より高い正 相 関 を示 した。
これは 歩 行 率 同様，
重 複 歩 長 も下 肢 筋 出 力 特 性の影 響 を 受けて いる ように も考え られる が，
麻 痺 側 TPT との比 較に お い て，一
定の関係は認め ら れなかっ た。 この事より重複 歩 長は主に， RTD に含まれる筋力的要素の 影響を受け て いるの では ないか と考え ら れ る。 ま た， 非麻 痺側片脚 立 ち時 間20秒 未 満の 群で有 意の関係が認 めら れ な か っ た事よ り，
非麻痺側下肢の立脚 期に お け る安定性が充分 であ る事が，
や は り前 提と なっ てい る様に思 わ れ る。 ま た今回， 非麻 痺側 ド肢の筋出力特性と歩行の諸 要 因 との 関 係で は，
麻 痺 側と 同様の傾向は 認 め ら れ な かっ
た。 これは，
支持脚である麻痺側下肢の片脚立 ち時間が，
非 麻 痺 側に比 し非 常に短 時 間であっ た ためで は な い かと考 えられる。
つ ま り，
麻 痺 側一
ド肢の立 脚 期に お け る充 分な 安 定 性が得られないた め，
遊 脚 側で あ る非麻痺側下 肢の 持っ筋 出 力 特 性 を，
充 分に発 揮 出来な か っ た もの と考え られる。 加え て，
麻痺 側立脚期に お け る各過程へ の移行 が， 円滑に行え な かっ た た めでは ないか等推測さ れ る。
今回我々 は， CVA
患者の下肢における筋収 縮の質の 面に関し，
歩 行 速 度 およ び その成 分 との関 係 を検 討 した。 実用 的 歩 行 速 度にっ い て の研 究5凶
7）をみ ると，
道 路の横 断 時 間 や 通 勤 時 間，
日常 生 活での移動の困 難度等を基準 に定 義して い る。
これ らは歩行速度と社 会生活の質との 密 接な関 連 を示 唆 してい る。
歩行速度は社 会生活の質を 左右する重要な要素で あ る と考え ら れ る。 本 研 究より 我々は，
CVA
患者の一
部におい て 「支持 脚で ある立 脚 側下肢のバ ラ ン スを改 善さ せ たうえ，
下 肢 筋 出力特性 を 効 率よく改善さ せ得 れ ば，
歩行率の増加によ る歩行速度 改 善が望め るの で は ないか」 とい う示唆 を得た。 しか し 今 鳳 下肢筋 出力特性と下肢振 出し速度との関係は解明 する に至 らな かっ た。 今 後，
方法論等を熟考した上，
検 討 すべ きだ と思わ れ た 。 あ わ せて，
筋 出力 特 性 改 善の た めの 訓 練法お よ び，
その効果 等の検 討 も今 後 実 施 すべ き 課題と して残っ た。 文 献 1）倉M 摂，
阿部 長・
他：高 齢 脳 血 管 障 害 患 者にお け るリハ どリテー
ショ ンの適 応につ いて．
理学療法学18 （学 会特別 号）：19，
199L 2） 阿 部 長，
大 塚 裕美・
他：脳血管障害性 片 麻痺患 者における 下肢筋力の歩行に及ぼす 影 響につ いて．
理 学 療 法 学16 （学 会 特 易il号 ） ：119，
1989．
3）阿部 長，
柴田 元・
他：慢性 期 脳 卒 中 片 麻 痺 患 者に お け る 下 肢 筋 力 強化訓練の歩行 速度に及ぼす 影 響．
理 学 療 法 学 18：529−
533，
1991，
4）田崎 義 昭，
斉 藤 佳雄：「ベ ッ ドサ イ ドの神経の診か たi
第 13版，
南山常，
東 京，
1987，
pp 58−
59．
5） 高 橋精一
．
・
郎，
鳥 井 田llff子・
他 ：歩 行評価 基準の・
考察一
横 断 歩道の実 地調査よ り一．
理学 療 法 学16：261−
266，
1989．
6） 稲 坂 恵，
福 田 光祐・
他 ：片麻 痺 患者の歩行ス ピー
ドにっ い て．
理・
作・
療法16：865−
870，
1982．
7） 阪 本 次 夫，
星 野 禺 伯・
他 ：脳 卒 中 患 者の リハ ビリテー
シ ョ ンに おけ る歩 行 能 力の改 善と 退院後装具の使用にっ い て．
総 合「丿ノ
丶
6 ：203．
206，
1978．
N工 工一
Eleotronio LibraryHX"!9i4gJi7wtMmaUciiseJ6'FeemaLlid)ag'hSirbibt'i'veNliZSZCif#vaew
415<Abstract>
The
Influence
efLower
Extremities'
Muscular
Contraction
Characteristics
on the
Walking
Speed
ofCerebral
Apoplectic
HemiplegicsHisashi
ABE,
RPT,Naoya
HARA, RPT, Yasunori AKIYOSHI,RPT,
Yuichi
WATABE,
RPT
Rehabilitation
Service,
lfosenhaiMaruyama llbspitalIzumi
MARUYAMA,
MD
inteinalMedicine,Hbsenhai
ndaniyama
Hospital
Forty-three
patients(aged
60
years in average) with cerebral apoplectichemiplegia,
atmore than Brunnstrom's stage
IV
fortheaffected side lower extrernity, were examined inorder to elucidate theinfluence
oflower
extremities' muscular contraction charaeteristics on their walking speed andits
components.
Indexes
of muscular contraction characteristicsinvoived
the time tothe peak torque(TPT)
and the rate of torque development(RTD)
atquick
knee extension of bilateralknee extensors. The relationships of these indexes with maximum walking speed(MWS),
walking rate(WR)
and stride
length
(SL)
were compared, as well as with oneleg-standing
time
(OLST).
The
patients(n=-=･28)
showing the unaffected sideOLST
of morethan
20
$ec revealed a positive correlation of affected sideRTD
withMWS,
WR
andSL
(p<O,Ol)
and a negative cor-relation of affected sideTPT
with MWS andWR
(p<O.Ol),
but no definiterelationship with SL. The patients(n==15)
showing theunaffected side OLST of lessthan 20 sec revealed no such significant relationship.The above results suggested that TPT and RTD, which can be considered as indexes of
in-stantaneous, ma'y correlate with walking rate, exerting influence on walking speed among pa-tients with theunaffected side OLST of more than 20 sec,
