DOI: http://dx.doi.org/10.14947/psychono.35.4
社会脳からみた意識の仕組み
苧 阪 直 行
京都大学
How consciousness works on the social brain
Naoyuki Osaka
Kyoto University
We showed how conscious mind works on the social brain which controls the multiple intentional mind. Our current model assumed the cognitive and social brain network make the social consciousness working together. Specifically, working-memory-based and default-mode-based brain networks make social mind by contrasting self and other’s mind under cognitive coordination and competition. We discussed this brain mechanism in terms of recursive function of the self awareness.
Keywords: social brain, working memory network, default mode network, resting state network, connectome
この講演概要では,最近の意識研究の動向と社会脳か ら見た意識の仕組みを自己意識をめぐる問題に絞って要 約した。 意 識 と は 古来,意識を心的な存在として考えるか,身体的な存 在として考えるかは,大きな哲学的課題であった。17世紀 にデカルトがその2元論によって,意識への科学的アプ ローチを示して以来,意識の研究は心と脳(身体)のか かわりについて,実在を1元論でとらえるか多元論でと らえるかの論争を繰り返してきた。心理学では,19世 紀中葉にフェヒナーが心と身体は同じ実在を違う見方で 捉えたものであるという2元論を,少し遅れてヴントは 実験的方法によって個人の直接経験を明らかにする並行 論的2元論をとり,同時代のウィリアム・ジェームスは 2元論の根拠となる主客二分図式を廃棄して,主客一体 の認識経験を純粋経験と呼び,意識の目的を明確にする 機能主義的な立場から,常に変化する「意識の流れ」の アイデアを提案した。しかし,この考えの一部は後に意 識を否定する極端な行動主義への橋渡しともなった。20 世紀初頭には,無意識のダイナミックスに注目したフロ イト,抑制性シナプス後電位や遺伝子のラセンモデルで いずれもノーベル医学・生理学賞を受賞したエクルスや クリックなどが意識に取り組んだ。エクルスは晩年に2 元論に回帰したが,クリックは,意識を脳のニューロン の振舞いから解明できるという1元論的な還元論主義か ら捉えた。このように,意識の科学の歴史は短いが, ジェームス以降,実験心理学では,意識は機能主義的1 元論で考えられることが多い(Rose, 2006)。最近では, マルチプルドラフトモデル(Dennett, 1991),グローバ ルワークスペースモデル(Baars, 1988),ファイモデル (Tononi, 2004)などが提案されている。いずれもモデル の背景には濃淡の差はあるものの,脳の広域神経ネット ワークの相互作用を想定している。 社会脳を融合的に研究する さて,脳というわずか1.5リットルの小宇宙には,銀河 系の星の数に匹敵するほど多くのニューロンがネット ワークを形成し,高次な社会的意識や適応的な行動を生 みだしている。現在,このような社会性を担う意識の脳 内メカニズムの研究は,fMRIなど用いた先端的な脳イ メージング技術でとらえることができるようになってきた (苧阪・矢追,2015)。脳の研究は理系の学問というのが 相場であったが,自己や他者を巡る社会・文化的アプ ローチにも関心がもたれるようになり,近年,人文社会 科学からも心と脳のかかわりを再考しようとする融合社 Copyright 2016. The Japanese Psychonomic Society. All rights reserved. Corresponding address: Department of Psychology,
Gradu-ate School of Letters, Kyoto University, Yoshida Honmachi, Sakyo-ku, Kyoto 606–8501, Japan. E-mail: nosaka@bun. kyoto-u.ac.jp
会脳研究の動きが活発になってきた。この新分野は人文 社会科学,脳科学と情報学が協調しあって推進していく 社会脳科学(social brain science)とも呼べる広大な領域に 成長しつつある(苧阪,2012–15参照)。社会脳研究では, 自己や他者が脳内でどのように表現されるか,そして他 者の集合である社会で適応的な社会的意識がどのように 育まれるかを脳のイメージングを通して検討する。社会 脳研究の最前線では,前頭葉や頭頂葉の内外側領域にま たがって広がるデフォールトモードネットワーク(DMN) やワーキングメモリネットワーク(WMN)が,辺縁系脳 における感情や意思のはたらきと相互作用しながら意識 のはたらきの基盤を形成する姿が研究されている。 意識のネットワーク
意識のNCC (neural correlates of consciousness)問題で は,意識生成には脳の特定の領域がかかわるのか,全体 がかかわるのかという論議が続いてきた。しかし現在で は,この問題は部分や全体を超えて,意識にかかわる複 数のネットワークが時空間的にダイナミックに相互作用 することで理解しようとされている。情報の入り口と出 口ではモジュール化された局所的な処理が行われるが, 社会脳では全体としては社会的意識形成を担う複数のハ ブとなるネットワークが相互作用することで生まれると 考えられている。そして,社会脳を形づくるハブとなる ネットワークには認知性ネットワークと社会性ネット ワークの2種があると考えられている。前者と後者の代 表はそれぞれWMNとDMNである。 (a)社会性ネットワークとしてのDMN DMNの発見は社会脳の探究にとって大きな役割を演 じている(苧阪,2016)。デフォールトには初期状態と か初期値の意味があり,DMNのデフォールトもこれに 近いが,覚醒時の脳が何もしない初期状態にあるとは考 えにくい。fMRIなどの実験で,手続き上何もしていな い休憩時などの脳活動をコントロール条件として測定す るのが一般的な実験デザインである。そして,この何も しない脳の状態の定義をめぐって,見いだされたのがデ フォールトの脳活動であった。DMNは内側前頭前野 (MPFC),後部帯状回(PCC)/楔前部(precuneus)や 後部頭頂小葉(IPL)などの主として内側諸領域が連携 してネットワークを形成し,課題解決(多くは WMNが 関与)を求められない休憩時に活動する。休憩時には実 際には,実験参加者は社会性にかかわる空想行動(たと えばマインドワンダリング)などを行っている場合が多 い。引き続き実験で,課題の解決モードに戻るとDMN のはたらきは弱まりWMNがそれにかわる。 DMNがMPFCなど,心の理論課題でも活性化される 領域と重なることから,ほぼ同じネットワークであると 考えられる。この意味でDMNは社会性ネットワークと 名づけることができよう。 (b)認知性ネットワークとしてのWMN 一方,WMNは外側諸領域が連携してネットワークを 形成し,外部環境から情報を得て,課題解決を実行する ネットワークである。情報の更新,注意の焦点化や抑制 をうまく認知的にコントロールするという実行系のはた らきが目標志向的で意図的な意識を創発するといえる。 WMNは背外側前頭前野(DLPFC),前部帯状回(ACC) や後部頭頂葉(SPLやIPL)など,主として脳の外側諸 領域が連携してネットワークを形成し,DMNと異なり, 目的のある課題解決を担う。DMNがやや無意識的で無 意図的であるのに対してWMNは常に意識的で目標志向 的である。 以上のような,社会性ネットワークとしてのDMNと 認知性ネットワークとしてのWMNが相互作用しながら 意識が生まれるのではないだろうか? 両者の関係は相 反的に捉えられることが多いが,協調的に捉えることも できる(Koshino, Minamoto, Yaoi, Osaka, & Osaka, 2014)。 何が両者の調整をしているのかについては,これからの 研究が待たれる。面白い見方として,認知性ネットワー クにおける実行機能の失敗がDMNを生むというアイデ アもある。たとえば,熱心に数学の問題を解いていた生 徒が,ワーキングメモリの容量を超える難しさに遭遇し た時,気分転換と称してソファーに寝転ぶなどという ケースがWMNからDMNへの切り替え例としてあげら れよう。 コネクトーム 上記のような2種のネットワーク以外にもネットワー クがあることを示唆するデータが最近得られた。DMN
やWMN の 神 経 基 盤 の 研 究 を,resting state network (RSN)の機能的結合性から解明するコネクトーム(con-nectome)プロジェクトの試みのデータである。RSNは 安静時の脳のBOLD信号の揺らぎから機能的結合性をス モールワールドネットワーク(SWN)の相互相関をも とに計算する手法で,これにより潜在的ネットワークを 抽出することができる。さて,生物システムのネット ワークには構造的なものから機能的なものに階層構造が 認められるのは普通である。例えば,Figure 1のように 遺伝子やたんぱく質のネットワークを基盤に構成される マイクロ,メソおよびマクロスケールの神経要素群の構 造的階層のトップには,社会脳のネットワークのように
柔軟に変化する機能的結合性をもつネットワークが位置 する。このような結合性を全脳にわたって調べ上げるこ とで,すべての脳領域や神経経路の構造的結合を,そし て究極的には社会ネットワークを明らかにするのがコネ クトームプロジェクトの目的である(Sporns, 2012)。 このプロジェクトによれば,トップにある社会ネット ワークもコネクトームに基づいて解明できると想定され ている。具体的には,機能的結合性などを用いたfMRI のグラフ理論的研究やSWNを用いた意識形成のハブ境 域の推定などを通して,意識をネットワークの相互作用 から解明するのである。 さ て,Figure 2 の よ う に,RSN の 研 究 か ら,WMN, DMNの他,背側注意 (DAN),顕著性(SN),感覚運動, 視覚,聴覚などのネットワークが存在することが改めて 確定された。そして,これらのネットワークが協調(競 合)して社会的意識が形成されることがわかってきた。 WMN は外部との情報のやり取りがあるため,感覚運 動,視覚や聴覚のネットワークと同期して作動し, DMNとはどちらかというと競合的にはたらく。注目す べきは,SNでこれは WMNとDMNとの活動の調整を 行っていると思われることである(Raichle, 2011)。 再帰性からみた意識 RSN からみれば,WMN と DMN が共にはたらくこと で,多重志向的な意識が形成されるといえる。WMNと DMNの2つのネットワークが時間同期しながら意識が 生まれるとしても,この種の意識は動物にもあると推定 される。ヒトに固有の意識を考える場合に,重要なのは WMNのはたらきにおける再帰的(リカーシブ)な機能 である。そして,WMNからDMNへの大域的な再帰性 も検討課題である。加えて,SNのような両者を調整す るネットワークのはたらきも重要になってくる。 再帰性を考えるにあたって,まず自己と他者の再帰的 関係を社会脳(社会性・認知性ネットワークからなる) で考えてみる。というのも,社会脳の意識の仕組みは, 自己と他者を再帰的に対置することで理解が深まるから である。 再帰性の片鱗をデカルトに ってみてみたい。デカル トは心的自己の確実性を探求した結果,「方法序説」の 中で「われ思うゆえにわれあり」という結論に達したと いわれる。これは思う(考える)という心的操作と,あ るという状態の心的保持の再帰的な2重課題を解く過程 になぞらえることができ,一種のワーキングメモリ課題 を解いているようにも思われる。デカルトの自己につい ての意識は,心的自己の存在を一種の入れ子構造の中で 認めようとする意味で再帰的であり,クローズな内部循 環構造を感じさせる。しかしここからは,社会の中の自 己といった問題が見えてこない。そこで,この命題に他 者との社会的インタラクションを入れ込むことで,オー プンな外部循環構造を取り込み,これが自己を生むと考 え,「われ思うゆえに他者あり」あるいは「他者ありゆえ にわれ思う」と言い換えることはできないであろうか? 心的自己という閉鎖系から他者へ,つまり他者の集合で ある社会に橋渡しする開放系を想定するのである。 さて,このデカルトの命題はワーキングメモリが十分 に成熟したヒトについて当てはまるもので,ワーキング メモリが未成熟,つまり前頭前野が未成熟な乳幼児につ いては当てはまらないだろう。自己がどこから来るのか を考えるには発達的視点が欠かせない。たとえば,他者 の心の状態を推定する心の理論が芽生える乳幼児期は前 頭前野が未熟で,自己意識の機能は脆弱である。その後 他者の心を想像できるようになる5歳程度の年齢に達す ると,他者の心や信念が自分とは違うことに気づくよう
になり,いわゆる誤信念課題(False belief task: FBT)な
どにもパスするようになる。そして,自他の境界が徐々 に形成される過程で,自己があらわになってゆく。ここ では,他者は自己に先行して認識されると筆者は考えて いる。自己は他者から芽生えるという考えは「他者来 たってわれを照らす」などと述べた哲学者にもみられる (西田,1948)。一方,身体的自己についても,最近の研 究を眺めてみると,たとえば,ラバーハンド錯視など Figure 1. The nervous system as a hierarchy of
net-works. The multiscale networks of the connectome are interspersed between networks operating at gene/pro-tein and social scale (Sporns, 2012; partially changed).
で,自己の身体意識を担うネットワークが思いのほか脆 弱であることが示されている。身体が自己の意思で動く という運動主体感は,前頭葉の運動野のコマンドの遠心 性コピーが頭頂葉へ送られ,その再帰的情報と視覚や体 性感覚からの情報が頭頂後部に時間的に同期してマッチ ングされることで,運動主体感が形成されるという。し かし,再帰の同期性にずれが生じると主体感は生まれな いことから,心的自己と同様に身体的自己もわれわれが 信じているほど強固な存在ではないようである。重要な のは,情報の再帰的なメカニズムが自己や他者の意識と かかわることである。 自己と他者の境界 心的自己の形成過程を眺めると,2カ月程度の乳児が 自分の手を眼前で動かして見るハンドリガードがある。 これは,自身の身体保持感と運動主体感を手と目で確認 することを学ぶと共に,自己と外界,そして他者を分離 する社会認知の準備をしていると思われる。乳児は2歳 までに鏡に映った自己鏡像を認知できるようになるとい われ,その後3–4歳で自己意識情動が芽生えるといわれ る。自己意識情動の芽生えの時期に,幼児ははずかしさ という情動をもちはじめるという。この羞恥心を感じる 対象は,他者ではなく他者の目に映る自己,つまり他者 の目を通した自己という再帰的な心的自己である。そし Figure 2. Fluctuating patterns of intrinsic activity seen in the human brain with fMRI BOLD imaging, striking patterns of
spatial cohetence within known brain systems can be extracted. A single-subject example of data from which these patterns are derived is shown (A). The patterns of coherence shown on the bottom are obtained by placing a seed region in a single focus within a system (in sesorimotor cortex) and extracting the resulting BOLD time series (B). This time series is then used as a regressor to search the brain for correlated time series. The results are brain network-specific images of spatial co-herence in the ongoing activity of the brain (C). Seven major brain networks analyzed in this way are shown: Executive control- (working memory network), default mode-, salience-, dorsal attention-, visual-, auditory-, and sensorimotor-net-work (Raichle, 2011).
て,自己の姿はまだ見えないものの,他者(社会)を通 して自己を再帰的に評価できるようになる。これは,自 己と他者の境界が,まず他者を通して形成されることを 示唆している。自身の行動や言動が適切であるかどうか を監視する再帰的警報的システムの芽生えであり,社会 的規範やルールを身につけ道徳を身につける契機ともな る。自己の監視システムはその後のWMNにおける実行 系のはたらきの一つである自己モニター機能に発展して 行くと思われる。 さらに,5歳前後になると基本的な心の理論課題をパ スでき,他者の心の想像やひいては他者の信念や意図の 理解が可能となる。この時点で,自己と他者のあいまい な境界にさまよっていた幼児が,明確な自他の心の違い に気づきはじめるのである。冒頭で述べたデカルト的命 題が対象化された自己に対して適用できるのは,この時 期を経て社会の中で自己を位置づけることができた後の 話である。自己は他者との間に,徐々に境界が形作ら れ,同時に,心的・身体的自己はともに前頭葉や頭頂葉 の成熟とともに明確化されるのである。ここでは,認知 性ネットワークは社会性ネットワークに先行すると考え られる。 n次の志向的意識 心的な自他の分離は誤信念課題によって検討できるこ とがわかっており,嘘をつくという行為もこの課題とか かわるといわれる。他者の心を推定する DMN (心の理 論ネットワーク)の水準として,「Xは…と思う」とい う1次の志向性の理解には再帰性は弱くてもよい。しか し,さらに「Xは,Yが……と考えていると思う」といっ た2次の志向性,さらにこれをn次に拡張したn次の志 向的意識については多重的な入れ子構造をもつ再帰性が 必要である。そして,2次以降の志向性には認知性ネッ トワークであるWMNの再帰機能の応援が必要になって くるように思われる。成人の場合,このような再帰的な 情報構造を操作し保持するにはワーキングメモリの制約 があるため,nの次数は4以下であろうと考えられる。 つまり,1次的な心の理論課題はDMNで対応できるが, 2次以上の他者の高次意識を推定する課題では,ワーキ ングメモリのはたらきが必要で,これが社会性ネット ワークとしてのDMNのはたらきを抑制すると考えられ る。これは,認知性と社会性のネットワークの相互作用 に基づく多重志向性理論として捉えることができるだろ う。 認知的ネットワークから社会性ネットワークへ 具体的な実験例をいくつか見てみたい。誤信念課題で 検討すると,1次の志向性ではDMNが,2次の志向性で は,WMNの中核であるDLPFCが関与することがわかっ た。これは社会性から認知性ネットワークへの移行を示 唆している。また,その逆の移行もある。Heider & Simmel (1944)のパラダイムを用いた,社会的意識についての
fMRI実験では,認知性ネットワークから社会性ネット ワークへの移行が示唆されている(Osaka, Ikeda, & Osaka, 2012)。ドアから出たり入ったりする2つの三角形と1つ の円が,互いに争ったり協力したりする社会的関係性を 表現するように見える時,脳も知覚的なイベントの知覚 (視覚皮質)から,再帰性の因果的推論をDMN的ネッ トワークへの視点の入れ替えを行っているのである。さ らに,自他の性格を評価するセルフレファレンス課題を 用いた自己と他者のかかわりについての実験でも,やは り自他の脳内表現は背内側前頭前野(DMPFC)で行わ れていることからDMNが担っているようである(Yaoi,
Osaka, & Osaka, 2009)。
ロボットの他者性をめぐって 最後に,講演の最後で触れたロボットと意識について みてみたい。はじめは機械でありよそよそしく思われた ロボットが,対話を通したヒューマン・ロボット・イン タラクションによって,次第に親しみを覚え,愛着さえ 感じるようになるのは不思議な経験である。好奇心が呼 び覚まされ,興味をもつのは,ロボットが他者性をもつ からに他ならない。ロボットの応答が機械的ではなく, その相手,置かれた状況や背景によって柔軟に変わるこ とで他者性はさらに豊かになる。 社会ロボットは認知症や高齢者の介護,さらに,社会 的適応障害(自閉症スペクトラム児童)の治療用として 米国でセラピーロボット(治療ロボット)としても用い られはじめている。今までは,リハビリなどの援助に使 われていたロボットがセラピーにも利用されはじめてい ることは,われわれがロボットの他者性をヒトの社会脳 のメカニズムを通して再考する必要があることを示唆し ているようにみえる。ロボットは幼児のようなハンドリ ガードを介した身体保持感と運動主体感をもち得るであ ろうか? あるいは自己の鏡像を正しく検出できるであ ろうか? さらに,ロボットはその他者性を一層高める ために,心の理論あるいはDMNをAIとして実装するこ とができるであろうか? これらの問題については別稿 (苧阪,2015)を参考にされたい。いずれにしても,再
帰性と他者性をどう考えるかがポイントになろう。ロ ボットに2次の志向性をもたせるための自律学習型の人 工知能(AI)を開発し,それをDMNと等価な機能とし て織り込む事ができるかが近未来のロボットと人の共生 社会にとって重要となろう。 お わ り に 意識の役割は,まず再帰的な意識をもつことで自分と 同じ意識を他者がもつことを確信させるという点,さら にその確信をもって,他者との協力共感行動に発展させ ることにあるという見方ができよう。2人が協力して行 動すると,時間的にシンクロナイズする領域が前頭葉に あることもハイパースキャニングといわれる革新的手法 を用いてわかってきたことから,複数の人々の間の同期 的行動を検討する研究もこれからの社会脳の意識研究の テーマとして重要になるであろう(Osaka et al., 2015)。 融合的社会脳研究からの社会性の意識の仕組みのさらな る解明が待たれる。 引用文献
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