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奈良県における稲・麦・大豆栽培の現状と課題

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The Society of Crop Science and Breeding in Kinki, Japan

NII-Electronic Library Service The  Sooiety  of  Crop  Soienoe  and  Breeding  in  Kinki

 Japan

作 物研 究 

55

:45

48 2010

総 説

奈 良県

お け

大 豆

栽 培

現状

                土井正彦 奈 良 県 農 業 総合セ ンタ

(〒

634 −0813

奈 良 県橿 原 市四条 町

88

) 要 旨 :の稲

大豆 生産は規 模が 小 さいが

地域の特徴 を生か した様々な 取 組 が進め られ てい る

こ れまで農 業 総合セ ン タ

では

大 豆 栽培の現状と課題 を踏 まえて品種 選 定や技 術開発 を行っ てきた

稲 作では省力

低コス

F

化を 目指 して基 肥

発 施 用 (全 量 基 肥)

べ た が け省 力 育 苗

疎植 栽 培技 術の開発

米粉用多収稲の選定

小麦で は手延べ 素 麺した小 麦 品種の選定 と高 品質 安定 栽培技 術の確立

大 豆 で は 黒 大豆の安 定生産技 術の開発

あざ や かな緑色豆腐の原 料 あやみ どり

の準奨 励 品種 採 用 などである

今 後 も研 究機関 と して

地 産 地 消 や特産 品開発 に 結 びつ け る こ と を据 え た 品 種 選や技 術開発 を 進 めてい ことが重 要である

ド :奈 良県

地産 地消

特 産 品 開発

品種 選 定

技 術 開発

1.

は じめに   本 県 農 業は

農 業 粗生産 額が全 国 第

44

近 畿で

5

位 と規模が小さい

その よう な 中で

都 市 近 郊とい う立地 条 件や奈 良盆 地の気 象 条 件 等 を生か し

園芸 (野菜

果 樹 〉が盛ん で

か き

うめ

荒茶

切 り花キ ク な ど全 国 的 に 上位を占め てい る品目 がある(第

1

表〉

ま た

今回の テ

マである自給率について は

カロ リ

ス で

15

% (

2007

年 )と低い

.一

大豆 につ い て も

生産 規 模は 非 常に小 さいが

地 域の特 徴 を 生 か しな がら様々な取 り組 み が進め ら れ てい る

 こ うし た中で

自給 率 向上の た めの研 究開発 と し て は

収量

品質の

省力

低コ ス ト化といっ た生 産性の 向 上及び 地産地消や特 産品開発とい っ た販売 力の 向上の二 つ の視点で取 り組 む 必 要 が ある と考 え る

  そこ で

こ こ で は本 県の稲

大 豆 栽 培の現 状 と課 題 を述べ

これ ら課 題 を踏 ま え た試 験 研 究の

端 を紹 介 する

第1表 全 国 的に上 位 を 占 めている品 目(2008 年)       奈良 か き収 穫 量 (t >      29

200 うめ収穫量 〔t)      2

200 荒 茶 生 産 量 (t)      2

360 切り花キク出荷量(百万本)   43 いちご収 穫 量 (t)     2

970 水 稲 収      t 全 全 11

全 シェァ (%) 49400  8

815

000  41位 266

600  2位        11

0 121

000   6位         1

8 95

500   5位        2

5  1

792  ア位        2

4 19隻鯉 吐

_

_

_

_

T−一

_

  1

6       06

2

.奈

良県の稲 作  本 県の稲 作は

1戸当たりの作 付 面 積は 49a (2005 年セ ンス)と小 規 模で

かつ大 部 分 が 兼 業 農 家で担 われ てい る

 米 価が低 迷 する中

農 家の収 益が 悪化し て お り

低コス ト

省 力 化が大 きな 課 題となっ てい る

 これ まで研 究 開発 してきた技 術 は 以 下の通 りである

  基肥

発 施 用 (全 量 基 肥 )  奈 良 県に お け る慣 行の施肥体 系は

基 肥 +穂肥 (出 穂

20

日前頃)で あ る

基肥

発施用は

省 力 化を図る た め

被覆尿 素 入 り肥 効 調 節 型 肥 料を用い て全 量 を基 肥 施 用 す る 技 術で ある

総 窒 素 施 用 量 を慣 行の施 肥 体 系 か ら

2

割 減 ら して も慣 行と同程 度の収 量 を 得 られ るこ と を 明 らか に し た

現 在 本 県では

,50

%以 上の 農 家で実 践されてい る

  べ た が け省 力 育 苗   奈良盆 地 は水利 不 便 地 が多 く

貴重 な水を有 効 利用する た め に移植直 後の深 水で も水 没しない苗 丈 が 求め られて き たこ と

人手の確 保で きる 5月上旬 に播 種 し

水 利 慣 行 か ら移 植 盛 期 が

6

月 上 旬に制 限 されることから

育 苗日数が

30〜35

日で草 丈が

15〜20cm

の中苗 移植が特徴となっ て い る

.一

般 的 な育苗方法は

露地平 置き出芽で

苗箱を練 り床 に 並べ 新聞紙 と黒寒 冷 紗で被 覆し たり

発 泡ポリエ チ レ ンシ

ト(育 苗シ

ト)で トンネル被 覆 して い る

最 近 で は不 織 布のべ た が け被 覆に よ る育 苗現 地導 入さ れつ つ あ る

不 織 布よ るた が け被 覆

ンネル被 覆で必 要 な支 柱 資 材 を必 要 とせず

育 苗 期 間 中のあ る時 期に被覆 を 除去 するだ けの省 力 技術である

そこ で

本 県平坦部の 主要 品種である

ヒ ノ ヒカザ につ い て

被覆 資材の除 去 時 期 が 苗の生 育 に 及 ぼす 影 響を調査 し た

その結 果

畠 芽 揃い 13

〜 16

日間べ た がけ 被 覆を行 うと草 丈12

〜15cm

にな り

その後べ た が け 被 覆 を除 去し て播 種 後

30 〜35

ま で育 苗 する と

目標とする草 丈15

20cm の苗となる こ と を明ら か に し た

  疎 植 栽 培   疎 植 栽 培と は

株 間 を広 く して植 付け株 数 を少なくする 2010年3月10日受理 連 絡 責 任 者 :土井 正 彦 doi@ maranougi

jp

Copyright近 畿作 物

育 種研 究会αhe Society ofCrop  Soience and  Breeding in Kinki

 Japan) 45 N工 工

Eleotronio  Library  

(2)

The Society of Crop Science and Breeding in Kinki, Japan

NII-Electronic Library Service The  Sooiety  of  Crop  Soienoe  and  Breeding  in  Kinki

 Japan

作 物研 究 55号 (2010) 栽 培 方 法で

奈 良 県の標 準 株 間18cm に対 し株 間30cm の 疎植栽培につ い て検 討し た

疎植 栽培の メ リッ トとし て は

まず 苗 箱 数の削 減が あげら れ

苗箱数の減は

播種

育 苗

苗 運 搬 等の作 業の省力化 及び培土

種子

農薬 等育苗 資 材 費の低 減につ が る

い もち病や紋枯病が発生 しに くい とい う報 告 も ある

平坦部の

ヒ ノヒカリ

につ い て

2003

年か ら

2005

年に か け て検 討 した結 果

株 間

30cm

の疎 植 栽培 は

株 間

18cm

の慣 行に比べ収 量

品 質 ともに同等である こと を明ら か に し た (第

1

図)

 また

県 内で は国の政策を活 用し な が らJA を中心 と し て新たな取 り組みも始め ら れて いる

その

つ は ホ

ル ク ロ ップサ イレ

ジ用 飼 料 稲である

2008

年に∫A が現 地 実 証 を行い

2009年に は亅A が 収 穫 機 械を装 備し

県 内で栽 培さ れ た ホ

ル クロ ッ プ サイレ

ジ用 飼 料 稲 (品種

ホシ ア オバ

12,

7ha

すべ て の収 穫 作 業 を受 託し てい る

も う

つ は米粉用稲である

2009

年に は

ヒ ノ ヒ カ リ

14.

7ha

分をJAが買い上げ

生協の パ ンに米粉を提 供してい る

異 品種 混 入の問題がある こ と か ら

多収稲等新たな 品 種 を導 入 するの ではな く

主要 品種の

ヒ ノヒカ リ

で取 り組 まれて い る

  米 粉 用 稲につ い ては

将 来の コ ス ト面 等 を考 慮して

農 業 総 合セ ン タ

で多 収 稲の 選 定に取り組ん でい る

2008

年は

ホシア オバ

タ カナ リ

を供試し

ホシア オバ

ヒ ノ ヒカザ に 比 べ

29

%多 収と なっ た (第

2

表)

2009

年は

ホ シアオバ

につ い て農 業 総 合セ ンタ

及び 現 地で試 験 を行っ た結 果

ヒ ノ ヒカザ に 比べ 農 業 総 合 センタ

で は

13

%の多収

現 地で は38%の多収となっ た (第

3

表 )

また 2008年に は

県 内 葛 城 地 域の市 町 村 担 当 者 等で搆 成さ れる葛 城 農 政 連 絡 協 議 会の取 組と し て米 粉 利 用の ロ

ル パ ンが試作さ れ

食 味評価を行っ た結果

ホ シア オバ

ヒ ノヒ カリ

タ カ ナ リ

と ほ ぼ同等の評 価を得た

800

9600

ミ 鬯 嘱

44GO

200 0 第

2

表 多 収 稲 の 生 育 及 び収 量 調 査 結 果 (2008 年)         出 穂 期   成 熟 期       精 玄 米 重 同 左 比 率 千 粒 重 品 種 名  

) 〔

) (kg10a   9 ) タカ ナ リ    8

14  10

06   707    115   20

4 ホ シァ オバ  8

14  10

10   ア93    129  30

6 ヒノカ リ  8

20  10

05   615    100  22

9 第3表 多 収 稲の生 育及 び 収 量 調 査 結 果 (2009 年 ) 試 験 場 所        品種 名

   

出穂期 成 熟期 精玄 米重 同 左 比率 千 粒 重 月

日) (月

日)

 

(kg/10a)

 

(% )

  

(9)       ホ シァオバ       8

18  10

05   644    113   28

6 本 所    ホ シ ァ オバ(多 肥 ) 8

18  10

05   655    115   28

9      ヒ ノ ヒ カ1丿       8

25  10

04   570    10G   22

8       ホシ アオ バ 現 地      ヒ ノ ヒ カリ 8

14   10

07    743    138   26

8

    10

04    537     100    22

5 2003 2004 2005 平均  今後も引き続き多収 稲の選定を行う計 画である が

米 粉 に適し た米粉専用 品 種の育成を期 待 する

3.

奈 良 県の小 麦栽 培   本 県に おける小 麦は

集 落 営 農 組 織や担い手 農 家に より 作 付け さ れてい る

品種は

本 県のみ で栽培 さ れ てい る

き ぬ いろば で あ る

品種 特 性は 極 早 生 で

うど んの加工 適 性に優れ

県内製粉業者や醤 油業 者へ 供 給 されている

作 付 面 積は

123ha

(平 成

21

年 産)と少 な く

生産 量の年 次 変 動 が 大 きいた め

安 定 した供 給 が 課 題である (第

2

図 〉

  県 内で生産 された小 麦 は

県 産 小 麦 を

100

%使 用 した う ど ん 「奈 良 うどん」 と して

県 内製 麺 業 者によ り商 品化さ れ てい る

 

方 県 内で は

三輪 素麺 等 伝統 的 な 素 麺 産 業 が営ま れて い る

桜 井市三地域は

奈 良時代に素 麺の もと となるも のが創ら れ た発 祥の地と言わ れ

手 延べ 素 麺の生 産 量 は

全 国 第

3

位 (

2007

年 米 麦 加工食 品 生 産 動 態 統 計 調 査年報 ) である

 

2005

2

月に は県 産小麦を使用し た手延べ 素 麺を商 品 化 したい とい う素麺業 者の要望 があ り

手 延べ 素 麺に適 し た 小麦品種の選定に取 り組んで きた

近 畿 中 国四国 農 業 研 究センタ

の協 力 を得て品種 選 定に着 手し

奨励 品 種 決 定 調 査

現 地 試 験

素 麺 業 者による製 麺 試 験 を 実 施し

近 畿 中 国 四 国 農 業 研 究セ ンタ

が育 成 し た

ふくは る か

を有 望 視 している

素麺 業 者による試 作の

す ぐにで も利 用 したい とい う要 望が出さ れ てい る

手延べ 麺用にはタ ン パ ク質 含 量の向上 が不可 欠 で あ り

収量及び 品質を安 定 さ せ る た めの肥体 系の検 討も始めて い る

      第1図  栽 植 密 度と収 量 施 肥 窒 素 成 分 量 (kg/10a) 基 肥 :穂 肥1:穂 肥 2

5

0 :2

5:2

5 疎 植 ;株 間30cm

標 準 植 :株 間 18cm 46 N工 工

Eleotronio  Library  

(3)

The Society of Crop Science and Breeding in Kinki, Japan

NII-Electronic Library Service The  Sooiety  of  Crop  Soienoe  and  Breeding  in  Kinki

 Japan

奈 良県における稲

大 豆栽培の現 状と課 題 (ha) 20018016014012010080604020  0 ω 6005004003002001000 S1 828384  85 8687 8889  9D 91 92 93949596  97 98 990DO1  02 030405  G6 01 0809       産 年 第2図 小 麦の作 付 面 積 と生 産 量の推移

4

奈 良 県の大 豆 栽 培   作 付 面 積は

221ha

(平 成

20

年 産 )と少 な く

大 部 分 が 自家 消 費で

出荷 さ れているの は

30

%程 度であ り

集 落 営農組 織や担い 手 農 家に より作 付 け され てい る

  品種は主に

サ チユ タガ で その他 黒 大 豆が栽 培さ れ て い る

サ チユ タガ は 県 内豆腐業 者 に よ り県 産大 豆 を 100%使 用 し た 豆腐 あげ

水 煮

納 豆 な ど が商品化さ れ ている

また

近 年 「黒 大 豆 」の生産 も増 加 しつ つ あ り

県 東 部 山 間の宇 陀 地 域でブラン ド化 を 目指 し た取 組 が 進 め られてい る

生 産 され た黒 大 豆は

正 月用 煮 豆や年 間 需 要 に対 応して内のほ か近府 県へ 出 荷さ れ

し て名古 屋市 場等へ 出荷さ れて い る

規格外 品 を用い た黒 豆味 噌

黒豆茶な ど加工品の開発 や枝豆 まつ り等イベ ン トを 通 じ た PR 活 動 等 特 産 品 化が進め ら れて いる

 こ うい っ た産 地 背 景 を踏 まえて

農 業 総 合セ ンタ

では

2007

 

2009

年にか けて新 た な農 林 水 産 政 策 を推 進 する 実用技 術 開発事業で 「近 畿 地 域輪作体系の た め の黒 大 豆の 安 定生産技術の開発」とい う共 同 研 究 課 題に参画してい る

黒 大豆 は夏 期の乾 燥に より水ス トレ スが結 莢 を悪 化 させ 生 産 が 不 安 定になっ て い る

そこ で

開 花 期 及び莢 伸 長 期に 断水 処 理 し

水ス トレ ス が黒 大豆の着 莢や 生育

収 量

品 質に及ぼす 影 響 を調 査 すると と もに

近 畿 中国 四国 農 業 研 究セ ンタ

が開 発 した 簡易土 壌水 分計 を用いて要潅水点 を 把握する た めの研究を行っ てい る

こ れ ま での成果と し て

開花期 及び莢伸長期の乾燥が 黒大豆の結 莢を悪 化さ せて収 量 が低下すること

要潅水点は簡 易土壌水分 計の示 値が 内 径20mm の場 合

30〜60cm

が 目安で あるこ とを 明 らか にした

今 後 各 共 同 研 究 機 関の結 果 を取 り まと め

マ ニ ュ アル化 す る計 画である

  ま た

地 産 地 消 及 び特 産 化 を 目指し て新 品 種の導 入にも 取 り組ん でい る

県 内の各 地で在 来 青 大 豆が小 面 積で栽培 さ れ ている が

在来 青 大 豆 は 晩 生 で 草 丈 が高い た め 倒伏し やす く

コン バイン収 穫に は 適 さず 大 規模な栽 培がで きな い

しか しな が ら

特 色 あ緑 色 豆 腐の原 料 と しての需 要 が あ り

需 要に対 応 するため にはコ ンバン収 穫が できる 高 品 質の青 大 豆の導入が必 要である

そ こ で

奨励品種 決 定 調 査

現 地試験 豆腐業 者に よ る緑色豆腐の試作 試験を 実施し

長 野県が育成し た

あ や み どり

を 2008 年 7月 に準 奨励 品 種と して採 用し た

試 作し た緑 色豆腐は

あ ざ や か な緑 色で独 特の風 味が あ り

今 後 商 品化が期 待さ れ

現 在 面積 拡 大に取 り組ん でい る

5

ま とめ   本 県の主要 農 作 物 (稲

大豆)の作 付 面 積は少 な く

米におい て も県 内需 要 を まかな えてい ない

し か し

農地 の有 効 活 用の面か らも

県内農業に おい て主要農作 物の生 産は重 要で あ り

地 産地消

特産 品 開発等特徴あ る取 り組 みを進め な が ら

県 内自給率の上 を図る こ と が 必要であ る

 今後 も研 究 機 関と しては

地 産 地 消や特 産 品 開 発に結び つ る ことを見 据 えた品種 選 定や技 術開発 を 進め てい くこ とが重 要であると考 える

47 N工 工

Eleotronio  Library  

(4)

The Society of Crop Science and Breeding in Kinki, Japan

NII-Electronic Library Service The Societyof Crop Science and Breeding in Kinki, Japan

eiitzblx

ss-g・

(2olo)

The

Current

State

and

Problem

on

the

Cultivation

ef

Rice,

Wheat,

and

Soybeanin

Nara

Prefecture

Masahiko Doi

IVLtrnProjlect"ralAgricu{turalResearchCenter

(88

Shijo,kashihara,Nara,634

rm

0813,Japan)

JournalofCrop Research55:45

L

48

(2010)

Correspondence:MasahikoDoi<doi@naraneugijp}

参照

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