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戦前 戦時中に活躍した複動ディーゼル機関について和文表題 388 品が無く, 極めて単純であることが判る. 本図では排気孔と掃気孔で構成されているが, 排気孔の代わりにピストン上 下部にそれぞれ排気弁や排気ピストンをアレンジした機関もある. 図 1 蒸気機関車のピストンインターネットより れに対して

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Academic year: 2021

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(1)

1.

はじめに

現在外航船のほとんどは推進機関としてディーゼル機関 を採用している.そのうちの約80%程度は低速直結の 2 ストローク機関である.その最大の理由は単体で50%を超 す熱効率の良さである.加えて燃料として粗悪油を使用し ているにもかかわらず,信頼性が比較的高いと言うことも あろう.しかしながら,ディーゼル機関が使用され始めた 初期においては,単動機関,複動機関,空気噴射機関,無 気噴射機関,2 サイクル機関,4 サイクル機関など様々な 機関が存在し競争していた.(表1)

2.

複動機関が活躍した時代

1897 年にディーゼル博士の初号機が完成されてから まだ日も浅い1912 年に初めて外洋航行船セランディア号 に採用されたディーゼル機関は,その後着実に発展し,前 述のごとく,現在は外航船のほぼ100%(一部 LNG 船を 除く), がディーゼル機関で推進されている. 複動機関はディーゼルエンジンンの黎明期に存在した機 関で,その活躍も第二次世界大戦終了までであった.戦後 は,その構造の複雑さや機関の信頼性などの問題から,2 サイクル機関,4 サイクル機関共に単動機関に変わられて きた.

3.

複動機関の作動原理と種類

古くから活躍している蒸気機関車のピストンは,図1 に示したように,ピストンの左右どちらの行程にも蒸気が 供給され,ピストンを通じて駆動輪に力が伝達されている. いわば蒸気複動機関である. 現在一般的に使用されているディーゼル機関は,ピスト ンが上死点に到達する直前に燃料が噴射され,次の行程で 燃焼が行われピストンを下方に押して仕事をしている.こ

戦 前 ・ 戦 時 中 に 活 躍 し た 複 動 デ ィ ー ゼ ル 機 関 に つ い て

田 山 経 二 郎

機関形式 建造年 造船所 船名 機 関 仕 様 シリンダ数x 口径(mm) x 行程(mm) 出力(kW) x 回転数(min-1) 機関メーカ 特記事項 Vickers 大正12 三菱神戸 音戸丸 4 単空 6 x 464 x 685 440 x 150 Vickers 日本最初のディーゼル船 Sulzer 大正13 播磨造船 復興丸 2 単空 4 x 470 x 470 1,180 x 150 Sulzer 最初の輸入機関 大正15 三菱長崎 もんてびでお丸 2 単空 6 x 600 x 1,060 1,690 x 112 三菱長崎 最初の製作機関 昭和02 播磨造船 長安丸 2 単空 6 x 600 x 1,060 1,690 x 112 神戸製鋼 最初の製作機関 昭和06 三菱長崎 河南丸 2 単無 4 x 600 x 1,060 1,100 x 125 Sulzer 最初の無気噴射機関 昭和08 播磨造船 小牧丸 2 複無 7x 760 x 1,200 5,590 x 113 神戸製鋼 最初の複動機関 B&W 大正13 三井玉 赤城山丸 4 単空 6 x 740 x 1,500 1,320 x 78 B&W 最初のディーゼル船 昭和03 三井玉 高見山丸 4 単空 6 x 500 x 900 700 x 166 三井玉 最初の製作機関 昭和04 三井玉 崑山丸 4 単無 6 x 550 x 1,000 1,030 x 140 三井玉 最初の無気噴油機関 昭和08 三井玉 吾妻山丸 2 複無 6 x 620 x 1,400 5,150 x 110 三井玉 最初の複動機関 MAN 昭和04 浦賀船渠 恵昭丸 2 複空 6 x 600 x 900 2,360 x 107 MAN 日本最初の複動機関 昭和06 横浜船渠 帝洋丸 2 複無 6 x 600 x 900 2,650 x 125 横浜船渠 最初の複動機関 三菱MS 昭和 08 三菱長崎 北海丸 2 単無 6 x 720 x 1,250 5,300 x 120 三菱長崎 MS 機関初号機 昭和11 三菱長崎 赤城丸 2 複無 8 x 720 x 1,250 5,890 x 110 三菱長崎 MS 機関複動初号機 備考 [機種仕様] 2:2 サイクル 4:4 サイクル 単:単動 複:複動 空:空気噴射 無:無気噴油 山海堂理工学論叢「チ゛―ゼル機関の発達」より 表 1 昭 和 初 期 の 船 舶 と 主 機 関

田 山 経二郎

(2)

Journal of the JIME Vol.00,No.00(2005)-2- 日本マリンエンジニアリング学会誌 第 00 巻 第 00 号 (2005) れに対して複動機関では,前記の蒸気機関と同様に,ピス トンを抱き合わせで構成させ,上昇行程でも燃焼を行わさ せる方式となっている.図2 に示すように,上部燃焼室と 下部燃焼室より構成される.このため機関の高さは若干伸 びるが,出力は,原理的にほぼ2 倍近くまで向上させるこ とが可能になる.複動機関にも,2 サイクル機関,4 サイ クル機関がある. 4 サイクル複動機関は,上部燃焼室用の排気弁,吸気弁, 燃料噴射弁駆動装置に加え,下部燃焼室用の排気弁,吸気 弁,燃料噴射弁駆動装置が必要であり,構造的にきわめて 複雑になる.したがって比較的構造が簡単な2 サイクル複 動機関の方が広く採用されている. 図3に,2サイクル複動機関の場合の機関構成を示した. 4 サイクル機関に比較して,排気弁,吸気弁などの運動部 品が無く,極めて単純であることが判る.本図では排気孔 と掃気孔で構成されているが,排気孔の代わりにピストン 上・下部にそれぞれ排気弁や排気ピストンをアレンジした 機関もある. 後述する,B&W 社製の複動機関は,排気ピストンを採 用した例である.また,図4 には実際の Sulzer 複動機関 図1 蒸気機関車のピストン インターネットより 図2 4 サイクル複動機関作動原理図 図3 2 サイクル複動機関構成図

(3)

のピストンの断面図を示した.上部ピストンと下部ピスト ンを冷却する冷却液の流れを示している.

4. 第二次世界大戦で活躍した複動機関

4.1 ドイツ 歴史上有名なポケット戦艦アドミラル・グラフ・シュペ ー(図5)の主機関には,複動 2 サイクルの MAN MZ42/58 ディーゼル機関(図6)が採用されている.機関室構成は, 図7 に示したようなフルカン継手を使用したディーゼル 8 機2 軸という当時としては画期的な方式を採用している. 本艦は,第二次世界大戦開戦後通商破壊作戦に従事し多 くの商船を沈めた.しかしながら連合国側に発見され,戦 闘の末,中立国南米ウルグアイのモンテビデオ港に逃げ込 んだが,その後モンテビデオ港外へ出して自沈させた(乗 組員は全員タグボートで退避).この様子は世界に向けラジ オ放送で実況された. 自沈を余儀なくされた原因は,燃料加熱用の蒸気配管が 非装甲で上甲板に露出しており,そこへ6 インチ砲弾一発 が命中して燃料処理システムを破壊してしまったことであ る.その結果,豊富な燃料の大部 分は加熱できず使用不能となり, 中間タンクに残っていた処理済み 燃料は16 時間分にすぎず,脱出 を断念したとされている. 重油燃料採用のディーゼル機関 の初期で,まだこれらの弱点が良 く認識されていなかったのであろ う. 4.2 日本 日本でも,潜水艦用に複動機関が開発された.潜水艦で は狭いスペースで高出力が要求されるので,複動機関は原 理的にはこの要求に応えられる機関形式であった.艦政本 図4 Sulzer 機関ピストン断面図 図6 MAN MZ 42/58 機関断面図 図 7 アドミラル・グラフ・シュペー機関室配置 図5 アドミラル・グラフ・シュペー 図7 アドミラル・グラフ・シュペー 機関室配置図

(4)

Journal of the JIME Vol.00,No.00(2005)-4- 日本マリンエンジニアリング学会誌 第 00 巻 第 00 号 (2005) 部が開発した艦本2 号機関がこれにあたる.本機関の開発 経緯については資料も乏しく明らかではない.機関形式は, 2 サイクル複動無気噴射方式で,機関要目はピストン直径 470 ㎜,ピストン行程530 ㎜,10 シリンダ機関出力6400PS, 回転数350rpm となっている.図8 にその断面図を示した. 図9 にはシリンダライナ図面,図 10 には本機関を搭載し ている伊9 潜水艦を示した. しかしながら,本機関の信頼性は十分でなく,乗組員の 回想録などを見ると,戦闘に携わった時間と,機関の整備 に要した時間はあまり変わらなかったと言う位であった. このため,1940 年以後の建造潜水艦では,主推進機関は 4 サイクル単動機関に変わられている. しかしながらこの時代のディーゼル機関としては,2 サ イクル複動機関は,きわめて技術的に大きなチャレンジで あったことは間違いなく,実用まで持ち込んだ努力は素晴 らしい技術者魂である. 4.3 米国 米国でも初期には複動のディーゼル機関が採用されてい た.1,535 HP at 700 rpm の

H-O-R

99-DA

型で約10 艦に採用されている.図11 に機関断面図と写真を示した. 9 艦本 2 号機関シリンダライナ 10 艦本 2 号機関を搭載した 伊 9 潜水艦 図11 H.O.R 99-DA 機関

(5)

5.

現存する複動機関

5.1 氷川丸 氷川丸は昭和5 年(1930)に現在の三菱重工業(横浜) で建造された貨客船で,同型船には“鎌倉丸“,“日枝丸”,“平 安丸”の 3 隻がある.図 12 に,本船のイラストを示した. 推進プラントには低速機関直結の22軸を採用している. 主推進機関は,デンマークから輸入したB&W8680DS 機 関が使われている.本機関は,4 ストローク複動・空気噴 射方式で,その要目は,8 シリンダ,ピストン直径 680 ㎜, ストローク1600 ㎜,回転数 110rpm ,出力 5500PS とな っている.図13 に,本船に採用された複動機関の断面図 を示した. 下部燃焼室の排気弁,吸気弁,燃料弁,排気管などの配 置がよく判る.本船は,就航後シアトル航路の花形貨客船 として活躍したが,その後も,戦時中は病院船,戦後は復 員船などとして長期にわたり活躍した.現在は,日本郵船 歴史博物館の一つの展示として横浜の山下公園に係留され ており多くの見学者でにぎわっている. 実際に本船機関部でこのエンジンの運転に携わった方々 の印象では,機関の構造の複雑さにもかかわらず,本機関 の信頼性は比較的高かったようであった. このような貴重な技術的遺産が残っていることは,誠に 喜ばしいことであるが,欲を言えば,この歴史的な機関を 動く状態に整備して保存したいものである. 5.2 Diesel House

MAN Diesel & Turbo 社はコペンハーゲンの元のディ ーゼル発電所を買い取りそのまま博物館として保存してい る.この発電用ディーゼル機関は,1933 年製の口径 840mm,8cyl 15MW の排気ピストン型 2 サイクル複動 機関で,動態で保存され,現在も定期的に保守用に運転さ れている. 図14 に本機関の立体断面図を示したが,丁度下部燃焼 室で燃焼が行われている状態を示しており,複動機関の特 徴がよく判る. 本機関では排気は,排気孔や排気弁では なく,排気ピストンを採用している.図15 に,筆者が同 所を訪問したときに撮影した実物のピストンの写真を示し た. 本機関の主要目を表2 に示した.当時の燃焼技術のレベ ルが推察される. シリンダ数 8 口 径 840 mm 行 程 1500 mm 回転数 115 rpm 出 力 22,500 PS 圧縮圧力 35 atm 最大爆発圧力 50 atm 正味平均有効圧力 7 atm 燃料消費率 (12,000 kW 時) ~240 g/kWh 機関全長 24.5 m 全 長 12.5 m 重 量 1,400 ton 12 日本郵船 貨客船 氷川丸 図13 B&W 8680DS 機関断面図 表2 B&W 8840 機関主要目

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Journal of the JIME Vol.00,No.00(2005)-6- 日本マリンエンジニアリング学会誌 第 00 巻 第 00 号 (2005)

あとがき

本解説は,去る11 月 14 日(木)に JIME シニア会主催の 講演会において,筆者が講演した内容をまとめたものであ る.このような機会を提供いただいたJIME シニア会の皆 さんに厚くお礼を申し上げます.特に関係資料の収集など にご協力いただいた東京海洋大学岡田博先生にお礼を申し 上げます.

参考文献

1) Lyle Cummins, Diesels First Stealth Weapon: Submarine Power 1902-1945 Carnot Press

2) 鈴木 孝“名作・迷作エンジン図鑑:その誕生と発展を たどる”グランプリ出版 2013 3) 田山 経二郎“舶用大型 2 サイクル低速ディーゼル機関 の技術系統化”技術の系統化調査報告書 第 8 集,国 立科学博物館 2007 非売品 4) 小菅 昭一郎ほか,“ドイツ海軍艦艇における舶用ディー ゼル機関の発展”内燃機関 33 巻 11 号 1994 5) 近藤市郎,“吾輩ハ複動四七ノ内火機械デアル” ヤンマー百周年記念出版 非売品

著者紹介

姓 名 田山 経二郎  日本マリンエンジニアリング学会 正会員  1938 年生.  所属.日本内燃機関連合会 ・最終学歴 東北大学 工学部 精密工学科 図15 複動機関のピストン 図14 B&W 8840 機関イラスト(下部燃焼室で燃焼が行われている) 東京商船大学 岡田 博氏 提供

参照

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