陸上競技部にみる組織づくり
いいチームとはどんなチームなのか?
2013/01/31
駒澤大学 経営学部 経営学科
中川ゼミナール
4 期生
4 年 金田 佑加
1 目次 I. 序章 P2 1. テーマ設定の理由 2. 仮説 II. 組織とは、チームとは何か P2 III. 人が動く=モティベーションについて P3 IV. 調査概要 P3 V. 各大学へのインタビュー内容 P3 1. 駒澤大学 2. 東京女子体育大学 3. 拓殖大学 4. 国士舘大学 5. 明治大学 VI. 夏休みまでの結論と、考え方の変化 P5 1. 夏休みまでの結論 2. 「いいチーム」の捉え方の変化 VII. 組織づくりをより深く考えたい P5 1. 東京情報大学 瀧川コーチ 2. 関東学生陸上競技連盟 日隈総務委員長 VIII. 2 度目のインタビューを終えて P6 IX. 最終結論 P7 X. 卒論研究をしてどんな見方ができるようになったのか? また、これからの将来、私は組織に対して何ができるのか P7 XI. 引用情報一覧 P8
2 I. 序章 私が卒業論文で明らかにしたいものは、「どのように組織づくりが行われているのか」 「“いいチーム”とはどんなチームなのか」ということです。特に陸上競技部に所属す る学生が、組織づくりにおいて何を課題とし、具体的に何をしているのかに注目して、 私なりの組織づくりの研究をしました。 1. テーマ設定の背景 私は高校生の頃から「どうすれば、人は自分に付いてきてくれるのか」「組織におい て何が人のモティベーションとなるのか」「いい組織とは何なのか」など、「組織づく り」について日々考えていました。人のモティベーションに関する文献や、組織論や リーダー論などの文献も多く読みました。ですが、何ともしっくりくる答えが出ずに いました。なぜなら、理論や一般的なことしか書かれていないので、現実味がないの です。 そこで!!卒業論文を執筆するにあたって、自分で現場に行き、調査をして、「組織 づくり」に対する答えを出そうと思いました! そうです。答えが出ないなら、自分で考えて打ち出せばいいのです!! 私は大学の体育会陸上競技部に所属し、なお且つ関東学生陸上競技連盟へ出向して おり、関東に大学の拠点を置く陸上競技部との接点があることから、「大学の陸上競技 部ではどんな組織づくりが行われているのか」という興味で、テーマ設定をしました。 部のマネジメントを仕事とする、マネージャーに対象をしぼり、その中でも、まとめ 役である主務という立場にいる知り合いに話を聞き、現場の生の声をかき集め、分析 して、文献などには載っていない「リアルな組織づくり」の答えを出そうと思いま す!! 2. 仮説 各大学へ調査インタビューをする前は、「同じ目標を共有するチームが結果を出すこ とができ、且、同じベクトルを向いたまとまりのある、いいチームと言える」と考え ていました。 つまり、「目標の共有」と「目標達成のための意識の共有化」を念頭に実践をしてい る陸上競技部が組織づくりに成功し、“いいチーム”と言えるのではないかと考えまし た。 II. 組織とは、チームとはなにか 組織を取り上げるにあたり、普段何気なく聞く、組織やチームとは具体的になにか をここで定めておきましょう。 「チームとは、共通の目的、達成すべき目標、そのためのアプローチを共有し、連 帯責任を果たせる補完的なスキルを備えた少人数の集合体である。」※1 つまり、チームや組織とは、一人ではできない事を集団を成すことにより、可能に
3 していくために必要であると言えます。 一人ではできない事を可能にするための組織、それは組織の良い面であり、悪い面、 つまり集団を成すことによる弊害もあります。例えば、目的達成への意欲が一致せず に、一人ひとりの個性が上手く組織で発揮されないことや、「長い物には巻かれろ」の 精神により、個人の意思を抑えているなどが挙げられます。 こういった組織の弊害をいかにして無くし、全員の力をどう組織に活かすことがで きるかが組織づくりの永遠の課題であり、醍醐味でもあると考えます。 III. 人が動く動機付け=モティベーションについて 組織は人の集団であり、組織づくりをする上で重要な要となる人についてもここで 触れておきましょう。組織が動くには、まず人を動かす、人に働きかける必要があり ます。そのきっかけが動機付けであり、モティベーションとなるのです。 「動機づけ(どうきづけ、motivation/モティベーション、モティベーション)とは 行動を始発させ、目標に向かって維持・調整する過程・機能である。」※2 組織において人を動かすには、このモティベーションに外部から上手く働きかけて、 個人の持つ力を発揮させることが重要になるのです。 IV. 調査概要 <対象> 関東地方に大学の拠点を置く陸上競技部の主務、マネージャー、その卒業生 <形式> インタビュー形式 <対象の理由> 主務やマネージャーは、広い視野と客観的な考え方で部(組織)全体をみているの ではないかと考えたからです。 主将(キャプテン)はその部(組織)全体の直接的なリーダーであり、現役選手で すが、主務やマネージャーは競技をしていなくても、部全体に深く関わりつつ、他大 学(外部)との窓口的役割を担うならば、部(組織)全体に対して広い視野を持ちな がら活動しているのではないかと考えたからです。 V. 各大学へのインタビュー内容 夏休みを利用して以下5 名の方にインタビューを実施しました。その内容を掲載し ます。 1. 駒澤大学 皆川マネージャー(女性)
4 同じ目標をもっている人が揃っていれば、同じ方向を向き、まとまりのある いいチームだと言える。仲は良くなくていい。 2. 東京女子体育大学 鈴木主務(女性) チームにいる目的が同じチーム。つまり同じベクトルを向いているというこ と。勝つため?競技をするため?部活に所属する動機の違いで、意識の違い が生じることが問題点。 同じ大学にも関わらず、種目のブロックごとに分かれてしまっているのが気 がかり。 3. 拓殖大学 厚美主務(男性) 同じ方向を向いているチームがいいチーム。 自分は選手ではないため、モティベーションや、部の雰囲気に対してあまり 強くは言えない状況もある。 4. 国士舘大学 大具主務(女性) 目標に向かう姿勢や意識が強いチームがいいチーム。 部としての目標を持たせた。自己新を目指すような選手は同好会でいい。部 として、関東インカレ出場や、その他の競技会で他大学と競い合う選手が必 要。 モティベーションを上げるために、関東インカレの入賞記録を貼り出し、目 標設定をさせた。 5. 明治大学 元主務 酒井さん(男性) 選手の自主性を尊重して、選手の思うように生活させていた。 二日酔いになろうが、練習に支障がなければ問題ない。それをする事によっ て、選手同士がより多くのコミュニケーションが取れるならばいい。 監督の指示を忠実に聞くチームが一概にいいチームだとは判断しにくい。 あまり組織づくりという観点を持っていなかった。 いいチームとは、結論は感情論になる。定義付けが難しい。 「一つの目標に向かうチーム?」 「指導者に従うチーム?」 「みんな和気あいあいとしているチーム?」 「『先輩の言う事は絶対』のチーム?」 捉え方によって、様々な「いいチーム」が存在する。
5 VI. 夏休みまでの結論と、考え方の変化 夏休み中にインタビューをした5 名の話から得られた情報を元に、途中経過であり ますが結論を出してみました。また、インタビューから得られた捉え方の変化も述べ たいと思います。 1. 夏休みまでの結論 組織づくりにおいて重要なポイントは以下の通りです。インタビューを通して大き く分けて2 通りの考え方がありました。 A) 「目標を共有し、それを組織(部)全体で達成しようとする雰囲気づくりが大切 である」 これはどの大学の方も言っておられた事であり、仮説通り、組織づくりにおける 基礎なのだと実感しました。 B) 「必ずしも、組織全体の意識を同じ方向に向ける必要はない」 明治大学にあるように、統率こそが組織づくりという考え方からは離れ、ある意 味で選手を信じ、個々の能力が集まれば自ずと組織としての力を発揮するという 考え方のチームもあった。 この2 つの正反対な結論から、「その時の組織の状況により、組織づくりの手法が 異なる」という組織づくりの1 つの結論が得られました。 2. 「いいチーム」の捉え方の変化 インタビューをするまで、私の中の「いいチーム」さえ定義できずにいました。 私の中でも、多くのいいチームと呼べるようなチームが存在し、どう定義してい いのか分からずに、曖昧なままでいました。 しかし、明治大学の方の「いいチームとは、結局は人それぞれ」という考え方 で、しっくりきたように思いました。いままで、私の中にある、「目標を共有して いるチーム」や、「一体感のあるチーム」は、いいチームでした。これが、人によ って感じ方が違うという観点で、「いいチーム」とは、定義付けできるものではな いのだと考えました。 「いいチームとはどんなチームなのか?」をサブテーマに置きましたが、私の 中の、「いいチーム」=「組織づくりに成功している」という曖昧な考え方が、こ のインタビューを通して整理されたように思いました。 VII. 組織づくりをより深く考えたい 夏休みの各大学へのインタビュー調査を終え、一旦結論が出たところで、より深く 組織づくりについて考えるために、既卒ですが、以下の2 名にインタビューをしま した。
6 1. 東京情報大学 瀧川コーチ(男性) 2010 年度に松蔭大学の主務を務めておられ、箱根駅伝で通用するような陸上競 技部をいかにしてつくるかに着目して活動されていた方です。 有名チームではなく、創設間もないチームをいかに成長させるかを念頭にし ている。 ミーティングを開くなどのモティベーション管理を意識している。 「馴れ合い」のチームではなく、悪いものはハッキリと発言できる環境が大 事であり、結果を求める組織に「仲良し集団」は必要ない。 コーチとしての立場から指導する時に心掛けていることは、選手と同じ目線 に立ち、話すことである。 2. 関東学生陸上競技連盟(以下、関東学連) 日隈総務委員長(男性) 関東学連にて総務委員長を務めておられる方です。大学生の時には幹事長(組 織のトップ)をされ、現在は総務委員長として現役の学生に対し、関東学連にお ける活動について指導をいただいています。毎年のように入れ替わる学生組織に おいて、どのように組織づくりをみているのか、また、現役の学生だった頃にど のように組織をまとめようとしていたのかなどを伺いました。 組織は人の集まり。まとめる立場の者は人とどう向き合うかが大事。裏表な く、本気で向き合い、伝え、指導し、叱る。しかし、怒った後のフォローは 必ずする。 チームとして動くにはコミュニケーションが大事。 学生や人に対して、観察する事を大切にしている 学生を見守るような今の立場になってからは、人は変われると信じ、「待つ」 という指導方法をしている。指導し過ぎも良くない。 VIII. 2 度目のインタビューを終えて 2 度目のインタビューを終え、新たな視点で組織づくりを考えられるようになりま した。2 名の方の話を伺い、以下の 2 点が共通していました。 A) 「モティベーションに働きかけるということ」 B) 「学生を観察し、その子が今どんな状況にあるのか、何に悩んでいそうなのか、 そういった事を感じてあげられるよう、意識すること」 つまり、学生を指導する=人を動かすには、やはりモティベーションに働きかける ことが大事であり、そうするためには「組織や人をよく観察する」ということが何よ り重要になるのです。
7 IX. 最終結論 夏休みの現役学生へのインタビューと、2 度目のコーチや指導者の方へのインタビ ューを通して、得られた結論をまとめたいと思います。 私がこの研究で得た「リアルな組織づくりの答え」は、以下の通りです。
組織づくりには、
「観察力」が何よりも大事であり、基礎である!
まず、現役学生へのインタビューで、「目標を共有し、それを組織(部)全体で達成 しようとする雰囲気づくりが大切である」と、「必ずしも、組織全体の意識を同じ方向 に向ける必要はない」という正反対の考え方が出た事に対しては、結果的に、組織の 状況により、組織づくりの手法が異なるという結論に至りました。組織は人の集団で あることから、組織づくりにおける手法は一様でない事を学びました。 次に、2 度目のインタビューです。コーチや指導者という、現役の学生とは異なる 視点で組織づくりを考えた時に、「育てる」という観点が出てきました。集団を指導し、 育てるにあたり、現役学生へのインタビューで得た通り、手法は一様ではなく、選手・ 学生一人ひとりをよく観察し、組織(選手・学生)に合わせた形で指導を行う必要が あるのだと思いました。 つまり、モティベーションに働きかける事が大事であったり、目標の共有をし、そ れを組織全体で達成しようとしたりする雰囲気づくりなどが大事ではあるが、その根 本に共通するものは、「観察力」であると結論付けます。 仮説で立てたような「目標の共有」と「目標達成のための意識の共有化」を念頭に 実践をしている組織づくり、モティベーションに働きかけることや、雰囲気づくりな どは、観察力が無ければできることではないと考えます。また、それらを適宜、その 組織の状況に合わせて使い分けるのは、まさに観察力が無ければ不可能であるという 考えに至りました。 よって、組織づくりにおいて「観察力」が何よりも大事であり、基礎になるのです。 X. 卒論研究をしてどんな見方ができるようになったのか? また、これからの将来、私は組織に対して何ができるのか? この卒業研究をして、当初の目的であった「リアルな組織づくり答え」を導くこと ができました。高校生の頃から考えていた組織づくりは、根本である「観察力」に辿 りつくことができずに、「目標の共有」や「雰囲気づくり」というような小手先の手法 ばかりを追いかけていたように思います。 しかし、時間をかけて様々な面から組織づくりを考え、様々な方から組織づくりの 考え方や意見を頂き、私の中でしっかりとした結論を出せたように思います。関東学 連での4 年間と、大学生活 4 年間、ゼミナールで学んだ 3 年間の全てがこの卒業研究 の結論に表れていると感じます。稚拙ではありますが、納得のいく卒業論文になった ことを嬉しく思います。8 ここまで、この卒業論文のためにご協力いただいた方に感謝すると共に、ゼミナー ルで切磋琢磨した4 期の同期達、そして中川先生には本当に感謝の気持ちでいっぱい です。ゼミナールで学んだ3 年間は、いつも刺激的で、授業に出れば必ず良い方向に 感化されていました。部活動で忙しくても、理解していただいた事に感謝です。同期 の皆さまは、いつまでもライバルです!!なんちゃって。これからもよろしくお願い いたします。 そして、そんな多くの方に支えられて完成した卒業論文の結論から、ぜひ「観察力」 をポイントにして、これからの社会人生活を突き進んでいこうと思います。また、こ れは夢ではありますが、「人」や「組織」の充実に関して興味があるので、人事部や、 それに関わる仕事をしていけたらと思っています。ずっと抱いている興味なので、生 涯に渡って考えていきたいです。 XI. 引用情報一覧 ※1 2012 年 11 月 26 日取得 一般社団法人日本経営協会より http://www.noma.or.jp/3-ship/column/vol_w008.html ※2 2012 年 11 月 26 日取得 weblio 辞書より http://www.weblio.jp/content/%E5%8B%95%E6%A9%9F%E3%81%A5%E3%81%91