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体育学研究 ( 早期公開 ) 成長プロセスとステークホルダー マネジメント 1 事例報告 プロスポーツ組織の成長プロセスとステークホルダー マネジメント : わが国初の女子プロバレーボールチーム ヴィクトリーナ姫路 に着目して 高松 1) 祥平 青山 2) 将己 3) 久保雄一郎 1) 伹尾哲哉 S

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高松 祥平1)  青山 将己2)  久保 雄一郎3)  伹尾 哲哉1)

プロスポーツ組織の成長プロセスとステークホルダー・マネジメント:

わが国初の女子プロバレーボールチーム「ヴィクトリーナ姫路」に着目して

1) 神戸親和女子大学発達教育学部 〒 651-1111 兵庫県神戸市北区鈴蘭台北町 7 丁目 13-1 2) 神戸大学大学院人間発達環境学研究科 〒 657-8501 兵庫県神戸市灘区鶴甲 3-11 3) 神戸大学大学院経済学研究科 〒 657-8501 兵庫県神戸市灘区六甲台町 2-1 連絡先 高松祥平

1. Faculty of Human Development and Education, Kobe Shinwa Women’s University

7-13-1 Suzurandaikitamachi, Kita-ku, Kobe, Hyogo, 651-1111 2. Graduate School of Human Development and Environment,

Kobe University

3-11, Tsurukabuto, Nada-ku, Kobe, Hyogo, 657-8501 3. Graduate School of Economics, Kobe University

2-1, Rokkodaicho, Nada-ku, Kobe, Hyogo, 657-8501 Corresponding author [email protected] Abstract:We examined the process of development of the first professional female volleyball club in Japan,

Victorina Himeji, in relation to its stakeholders. For the purposes of this study, a professional sports club was defined as an organization composed of professional athletes who receive compensations through engagement in sports. We collected qualitative data from websites, papers, books, and archive material. In addition, we conducted a semi-structured interview with Mr. Akira Hashimoto, chief executive of Himeji Victorina. This revealed the involvement of 13 primary stakeholders and 11 secondary stakeholders in Victorina Himeji’s development from its conceptual stage up to the present. Analysis of Victorina Himeji’s organizational development over time revealed 3 phases. Phase 1 was the period from the launch of the club-founding preparatory committee until the establishment of the joint-stock company: Himeji Victorina. During this period, Mr. Masayoshi Manabe, who has been the head Japan women’s volleyball coach until 2016, and interested locals joined together with the idea of creating a professional volleyball team in Himeji city, a period during which Mr. Hashimoto later joined and strengthened the management. Phase 2 was the period following the establishment of Himeji Victorina until its official admission to the V. League. This was the period during which the organization conducted tryouts, scouted and collected players with prospects of strengthening the team, and strengthened the main office staff at the club’s headquarters. In addition, Phase 2 saw the beginning of sponsor recruitment, in addition to strengthening of the top team, along with activities to popularize volleyball and train players through the establishment of the general incorporated association: Victorina Elite Academy. Finally, Phase 3 was the period following the official admission to the V. League until the present. Overall, this study clarified the relationships with stakeholders and engagements as a club, which were both crucial elements in the process of founding this professional sports club and ensuring its growth as an organization.

Key words : professional sport team, stakeholder theory, establishment process キーワード:プロスポーツチーム,ステークホルダー理論,設立過程

Shohei Takamatsu1, Masaki Aoyama2, Yuichiro Kubo3, Tetsuya Tajio1: The development of Victorina Himeji, Japan’s first professional female volleyball club, in relation to stakeholder management. Japan J. Phys. Educ. Hlth. Sport Sci.

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Ⅰ 緒 言 2012 年ロンドン五輪において,日本女子バレ ーボールチームは 1988 年のソウル五輪以来のベ スト 4 進出を果たし,銅メダルを獲得した.諸外 国と比較して身長の高さでは敵わなかったもの の,当時代表監督であった眞鍋政義氏(以下「眞 鍋氏」と略す)は,ボールがコート内の床に落ち なければ得点にはならないという論理のもと,徹 底したレシーブ練習が功を奏したとメディア等で 語っている(神戸新聞,2017).一方,男子バレ ーボールチームは,1977 年のワールドカップで 銀メダルを獲得した後,メダルから遠ざかってい るのが現状である.1964 年東京五輪では女子チ ームが,1972 年ミュンヘン五輪では男子チーム が金メダルを獲得し,かつてバレーボールは日本 のお家芸とまでいわれた時代があった.しかしな がら,高さとパワーに対抗するために日本が考案 した速攻コンビネーションバレーや回転レシーブ 等が世界各国へと普及したこと,ヨーロッパや南 米でバレーボールが発展し始めたこと,強豪国選 手の高身長化等の様々な要因が絡み合い,日本は 世界から遅れを取ることとなった(岡部,2011). 日本における国内リーグに目を向けてみると, 始まりは 1967 年の全日本バレーボール選抜男女 リーグ(日本リーグ)である.1993 年には J リ ーグが開幕し,J リーグブームが日本中で巻き起 こった影響もあって,バレーボール界においても プロ化を視野に入れた新しいリーグ構想が検討さ れ始めた.しかしながら,様々な議論の末,プロ リーグ化は見送られることとなり,1994 年に現 在の V リーグに名称変更をしている(一般社団 法人日本バレーボールリーグ機構,online).そし て,2016 年にも一般社団法人日本バレーボール リーグ機構は,プロ化を推進するために V リー グ未来構想案の中でスーパーリーグを立ち上げ, 2018 / 2019 年シーズンからスタートさせること を発表したものの,男女とも参加を表明するチー ムがなく,再度プロリーグ化の構想は流れること になった. これまで日本においてバレーボールをはじめと する競技スポーツを支えてきたのは企業チームで あり,大半の選手が所属チームの母体となる企業 で社員として雇用されているのが一般的である. 一方,バブル経済崩壊以降は企業スポーツチーム の休廃部が増加し,企業スポーツ自体の在り方が 見直され(笹川スポーツ財団,2017),最近では 堺ブレイザーズや岡山シーガルズに代表されるよ うに,チーム名から企業名を外して独立採算を目 指すチームが出てきた.例えば,堺ブレイザーズ は,新日本製鐵(現・新日鐵住金)を前身とする チームであり,2000 年に子会社として設立した 株式会社ブレイザーズスポーツクラブが運営母体 として活動している.その後,地域やスポーツの 発展に寄与することを理念としながら,スクール 事業やイベント開催等を実施し,バレーボールだ けでなく様々なスポーツの振興にも積極的に力を 注いでいる.このような現状の中,2016 年には 女子プロバレーボールチームであるヴィクトリー ナ姫路が発足した注).日本において女子プロバレ ーボールチームが創設されたのは,日本リーグが 始まってから実に約 50 年後のことである.ゼネ ラルマネジャーには眞鍋氏が就任し,その際に「日 本以外はみんなプロです.またメダルをとるには プロ化以外にない.バレー界のために,このプロ チームを成功させないといけない」と述べている (朝日新聞,2016).プロリーグ化することが見送 られ,企業チームが大多数を占めるバレーボール 界において,どのようにしてプロチームを設立・ 育成してきたのかを明らかにすることは多くの知 見をもたらすと考えられる.特に,成長プロセス に焦点をあてながら多様なステークホルダーとの 関わりを紐解くことで,プロバレーボールチーム の設立・育成を体系的に捉えることが可能となり, 今後の一指針として参考にできると思われる. したがって,本研究では,わが国初の女子プロ バレーボールチームであるヴィクトリーナ姫路に 関連するステークホルダーに着目し,その成長プ ロセスを明らかにすることを目的とする.

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Ⅱ 先行研究の検討 1. プロスポーツ組織のマネジメントに関する研 究 スポーツ組織研究は,スポーツの「組織化」に 関する研究と,スポーツの「組織体」に関する研 究に分類される(金,1997).スポーツの「組織 化」に関する研究においては,主に組織の成長過 程に関する研究が多く行われてきた.一方で,ス ポーツの「組織体」に関する研究は,組織の全体 構造や構成員,組織と組織の関係性に着目してお り(金,1997),構造システムに関する研究(e.g., Slack and Hinings, 1992)や,運営・管理に関する 研究(e.g., Geeraert et al., 2014; 武隈,1995),ガ バナンスに関する研究(e.g., Ferkins and Shilbury, 2015; Richard and Geoff, 2016)などが蓄積されて きた. 他方,スポーツ組織の経営研究は体育管理学が 端緒である(宇土,1983)との指摘もある.1990 年代には組織の成長戦略という観点から,チボー の 4 つの戦略類型(Thibault, 1993)などの研究が 行われてきたものの,わが国におけるスポーツ組 織の経営研究において,組織そのものを直接の研 究対象とする「組織論」的研究が非常に少なかっ た(武隈,1996).しかしながら,近年は少しず つ研究が蓄積されつつあり,武隈(1995)はスポ ーツ組織研究をレビューし,歴史社会的な研究, 経営組織論的研究,地域スポーツの組織に関する 研究に分類している.なかでも経営組織論的研究 は,近年のスポーツ組織研究において重要なトピ ックとなっている.経営組織論的研究と同義であ るスポーツ組織のマネジメント研究は,スポーツ 政策だけでなく,スポーツ経営(スポーツマネ ジメント)の観点を持っており(North American Society for Sport Management, 1987),複数の分野 にまたがった研究が想定されている.

プロスポーツ組織のマネジメントに特化した研 究としては,ブランディングやプロモーション, ファン行動,スタッフ管理,戦略プロセス等があ る(e.g., James and Daniel, 2002; Scholl and Carlson,

2012; Walel et al., 2018).これらの多くは,プロ スポーツチームという組織そのもののマネジメン トについて検証するという経営学的な視点ではあ まり展開されていない(大野,2010).また,大 野(2010)は,部分的には展開されているものの, こうした研究はプロスポーツビジネスの実務従事 者による経験論的・コンサルティング的分析がほ とんどであり,経営学などアカデミックな観点か ら分析されるまでには至っていないと指摘してい る.持続可能なプロスポーツ組織経営に向けた戦 略プロセスを生み出すためには分析枠組みを用い た理論構築も必要とされるため,アカデミックな 視点から分析を行う必要があると考えられる. 2. 組織の成長プロセスに関する研究 組織マネジメントの観点から組織の成長・発展 プロセスを検証するために,組織構造やリーダー シップスタイル,経営管理システムを変革してい くことが求められている(桑田・田尾,2010). このような組織成長の論理は「ライフサイクルモ デル」として提唱され,これまで様々な研究が行 われてきた.組織マネジメント研究の第一人者 である Greiner(1972)は,ライフサイクルとし て 5 段階の組織成長モデルを提示している.この モデルでは,成長段階は線形で成長していくもの ではなく,次の段階に進むためには必ず「Crisis (危機)」が訪れ,そのための変革が求められる ことが特徴として挙げられる.これは,Slack and Hinings(1992)が主張する「Change Factors(変 化要因)」とも一致する.スポーツ分野において「ラ イフサイクルモデル」を援用した研究としては, Crompton and Hensarling(1978)が公共レクリエ ーションや政府・社会サービスにプログラム・ラ イフサイクルモデルを適応している.国内でも高 松ほか(2013)が総合型地域スポーツクラブ育成 事業の現状を,久保・山口(2017)がスポーツの まち形成過程を,それぞれプログラムライフサイ クル分析を用いて明らかにしている. 他方,組織の成長には内部要因だけでなく,外 部要因も考慮すべきであると指摘されているが (Quinn and Cameron, 1983),組織研究の大半は組

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織の外部要因を実際のモデルに組み込むまでには 至っていない.その理由として,組織の外部要因 は偶然性や不確実性が高く,アプリオリではない ことが挙げられる(水野,2013).また,「ライフ サイクルモデル」は発達段階が進化論的モデルで あるため,主意主義の視点を有していないとの指 摘もある(加藤,2011).そのような指摘を受け ながらも,組織のライフサイクル研究が受け入れ られてきた背景には,一般的に組織規模に応じて 類似する組織的課題が確認されており,組織成長 の理論に関する実務家のニーズも少なくなかった ことが挙げられる(水野,2013).さらに,組織 理念の枠組みの中で,外部環境と組織の経営資源 をもとにマネジメント戦略を構築し,個々の事業 活動を策定していくマーケティングが求められて いる(高橋,1999). 以上の指摘から,組織マネジメントの研究にお いては,外部要因の視点を考慮した上で検証を進 める必要がある.本研究では「ライフサイクルモ デル」を援用し,組織内外における外部要因をス テークホルダー・マネジメントの視点から検証す る. 3. ステークホルダー・マネジメントに関する研 究 ステークホルダーについて経営学の分野では資 源依存理論(山倉,1993)や組織エコロジー論 (Carroll, 1984)の視点から論じられてきた.ステ ークホルダーとは,一般的に「顧客,従業員,株主, 投資家,供給企業,競争企業,政府関係,NPO, 地域社会,地域環境など企業を取り巻く内外の利 害関係者」(水尾,2001)と定義され,ステーク ホルダー理論を提唱した Freeman(1984)は,ス テークホルダーを「組織体の目的の遂行に影響す る,あるいは影響を受けるグループまたは個人」 (p.46)と定義している.ステークホルダーに関 する研究では,組織的視点からステークホルダー を理解し,ステークホルダーの立場や利害,影響, 相互関係,ネットワーク,特徴について明らかに し評価を実施している(Brugha and Varvasovszky, 2000). その中で,組織やグループ,個人の機能を理解 し,持続可能なイベントや組織づくりを目指すた めのステークホルダー・マネジメントが注目され ている.ステークホルダー・マネジメントとは「企 業を取り巻く内外の利害関係者との良好な関係性 を構築し,企業の持続的成長を促進し,発展させ るための経営管理」(水尾,2001,p.64)と定義 されている.時代背景や時間の経過,組織の立場 等によって,ステークホルダーの性格や相互の関 係性が変化するため,ステークホルダーの利害関 係を円滑に調整しながら「ヒト」,「モノ」,「カネ」, 「情報」などの資源を管理していくことが重要と されている.つまり,ステークホルダー・マネジ メントでは,組織が組織内外の環境変化に適合す ることにより組織の持続的な発展を目指すという 立場に立つ. 2000 年代からは,スポーツマネジメントなら びにスポーツ産業分野においてステークホルダ ーに着目した研究が行われており(e.g., Friedman et al., 2004; Parent and Deephouse, 2007), 中 で も Parent がステークホルダーの観点から,スポーツ イベントを対象とした実証研究をいくつか実施し ている.Parent(2008)は,ステークホルダー理 論とイシューマネジメントのフレームワークを用 いて組織委員会の発展や組織委員会とステークホ ルダーの対処すべき問題について検証を行ってい るが,ステークホルダー間で利害が異なることか ら,それらを統治することの難しさを指摘してい る.また,Parent et al.(2015)では,ステークホ ルダー・ネットワーク分析を用いて,組織委員会 の機能に加え,イベントを取り巻くステークホル ダーの関係性が組織委員会の活動に与える影響と 同様に,組織委員会がステークホルダーに与える 影響を明らかにすることの必要性を指摘してい る.国内の研究においては,石川ほか(2014)が 地域型のアマチュアクラブから発足した J クラブ を対象に,クラブの発展段階に応じたステークホ ルダーとの提携について,行政の視点から明らか にしている.また,青山ほか(2019)がメガスポ ーツイベントにおける事前合宿の受け入れプロセ スについて,ステークホルダー理論を援用した実

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証的研究を行っているものの,全体的にステーク ホルダー・マネジメント研究の蓄積は少ない傾向 にある.本研究では,外部要因の視点を考慮した 上で組織・チームにおけるステークホルダーの関 係性について検証するため,Parent et al.(2015) のステークホルダー・ネットワーク分析を援用し, 論を進めることとする. Ⅲ 研究方法 1.ヴィクトリーナ姫路の概要 本研究の調査対象であるヴィクトリーナ姫路 は,2016 年に発足した日本初の女子プロバレー ボールチームである.チームの運営は株式会社姫 路ヴィクトリーナが担い,兵庫県姫路市を本拠地 とし,姫路市立体育館であるウインク体育館を練 習拠点としている.活動方針として「1.バレー ボール大国日本の復活に貢献する」,「2.チーム の価値を高め,多くのファンに愛され自立したク ラブ経営を行う」,「3.ジュニア育成を含む地域 活性化に取り組む」の 3 つを掲げており,トップ チームであるヴィクトリーナ姫路の他に,一般社 団法人ヴィクトリーナ・エリートアカデミーが育 成チーム(マックスバリュ・ヴィクトリーナ,関 西福祉大学女子バレーボール部等)の強化を行い, 一般社団法人 CEO スポーツ・ファウンデーショ ンがイベント開催やスポーツ体験キャンプ等を通 してスポーツの普及活動を実施している(図 1). ヴィクトリーナ姫路は,2018 年第 8 回全国 6 人 制バレーボールリーグ総合男女優勝大会で優勝し ており,2018 / 2019 年シーズンから V リーグ・ ディビジョン 2 での参入が決定している. また,育成チームであるマックスバリュ・ヴィ クトリーナは,一般社団法人ヴィクトリーナ・エ リートアカデミーとマックスバリュ西日本株式会 社の 2 社の連携によって運営され,所属選手はア スリート社員制度を活用して正社員として働きな がら活動している(株式会社姫路ヴィクトリーナ, 2017).一般社団法人 CEO スポーツ・ファウンデ ーションは,全国各地で「ツアーオブバレーボー ル」というバレーボール教室を開催している.こ の教室では,ヴィクトリーナ姫路の監督を務める 竹下佳江氏(以下「竹下氏」と略す)を中心に結 成されたヴィクトリーナドリームスというユニッ トが直接指導に携わり,実技指導だけでなく食育 を通した支援等も行っている. 2. 調査方法 本研究でははじめに,ホームページ,新聞,雑 誌,各種資料を対象に内容分析を実施した.次に, 株式会社姫路ヴィクトリーナの代表取締役球団社 長を務める橋本明氏(以下「橋本氏」と略す)に 図 1 ヴィクトリーナ姫路の組織図 株式会社姫路ヴィクトリーナ(2017)に掲載されている組織図をもとに筆者作成

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対する半構造化インタビューを行った.インタビ ュー時間は約 70 分であった.なお,インタビュ ー依頼時には,事前に調査の趣旨と調査内容を送 付した.実際の調査時には,調査背景,調査目的, 選定理由,調査協力の拒否権,守秘義務,データ 管理,結果の公表について説明し,同意を得た上 で IC レコーダーによる録音を実施した.調査内 容は石川ほか(2014)を参考に,「クラブ設立の 経緯」,「クラブの成長プロセス」,「クラブの組織 体制」,「ステークホルダー間の連携」,「今後の課 題と展望」を主な項目とした. 3. 分析方法 図 2 は,分析の枠組みを示している.本研究で は 2 つの枠組みを用いて分析を行った.1 つ目は, ライフサイクルモデルである(①成長プロセスの 段階評価).Greiner(1972)における 5 段階の成 長モデルを援用し,ヴィクトリーナ姫路の組織と しての Phase を評価する.Greiner(1972)は次の 段階に進むためには必ず「Crisis(危機)」が現れ ることを示している.しかしながら,ヴィクトリ ーナ姫路は設立から 2 年ほどしか経っておらず, 「Crisis(危機)」が必ずしも現れるとは限らない. したがって,本研究ではこの「Crisis(危機)」を, より広義な意味を持つ「Change Factors(変化要 因)」(Slack and Hinings, 1992)と置き換えて分析 を行う.その際,ステークホルダーが「変化要因」 にどのような影響を及ぼしているのかを明らかに するため,Parent et al.(2015)のステークホルダ ー・ネットワーク分析(②)を行った.ステーク ホルダーについては,Reid(2011)を参考に,プ ライマリー・ステークホルダーと,セカンダリー・ ステークホルダーに分類する.プライマリー・ス テークホルダーは,従業員,ボランティア,スポ ンサー,サプライヤー,観客,出席者,参加者で あり,セカンダリー・ステークホルダーは,政府, ホストコミュニティ,緊急・救急関連,一般業務者, メディア,旅行関連企業を指す(Reid, 2011).な 図 2 本研究の分析枠組み

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お,組織の成熟度に関しては,本研究の分析枠組 みにもとづく記入シートを予め用意し,調査対象 者である橋本氏に記入を依頼した. インタビューデータの分析については,最初に 録音したデータを忠実に書き起こし逐語録の作成 を行った.次に,筆頭研究者と共同研究者 2 名が 逐語録を熟読し,トライアンギュレーションを用 いた内容分析を実施した.その際,それぞれの研 究者が独自に分析を行い,お互いの結果が一致す るまで修正を繰り返した. Ⅳ 結果と考察 1. ヴィクトリーナ姫路におけるステークホルダ ーと成長プロセス 半構造化インタビューを実施した結果,チーム 設立構想期から現在に至るまで,13 のプライマ リー・ステークホルダーと 11 のセカンダリー・ ステークホルダーが存在することが明らかとなっ た(表 1).次に,成長プロセスの段階レベルに ついて述べる.本研究では Greiner(1972)を参 考に,組織規模を時間軸に沿って分類した結果, 3 つの Phase に分けられることが明らかとなった (図 3).Phase1 はチーム設立準備会発足の 2013 年 9 月から,株式会社姫路ヴィクトリーナが設立 される 2016 年 3 月までを想定している.Phase2 は,2016 年 3 月から V2 リーグ参入決定の 2018 年 3 月まで,Phase3 は,2018 年 3 月から 2018 年 11 月現在までと位置づける.以下,Phase ごとに 組織の成長について述べる. 2. Phase1(2013.9―2016.3) チーム設立の鍵となったのは,2008 年から 2016 年まで全日本女子代表チームの監督を務め た眞鍋氏である.眞鍋氏は,ロンドンオリンピッ ク 2012,リオオリンピック 2016 を経験する中で, 世界と戦っていくためには自国リーグのプロ化が 必要であると認識するようになった.そこで眞鍋 氏の出身地であり,またバレーボールの盛んな街 であった兵庫県・姫路市にプロチームを設立する 意向を示す.姫路市には,ウインク体育館(姫路 市立中央体育館)という代表チームの合宿が可能 な施設が既にあったことから,ホームアリーナと しての利用を検討することが可能であった.これ により 2013 年 9 月に,眞鍋氏を中心とする地元 社長ら有志によって,チーム設立準備会が発足す る.しかしながら,準備会発足以降,資金が集ま らないまま 2 年が過ぎることとなる. 転機となったのは,2015 年末である.現球団 社長である橋本氏が,以前勤めていたスポーツマ ネジメント会社の顧客である眞鍋氏からプロチー ム設立の相談を受ける.偶然にも橋本氏の親友が 表 1 ヴィクトリーナ姫路のステークホルダー プライマリー・ステークホルダー セカンダリー・ステークホルダー 一般社団法人ヴィクトリーナ・エリートアカデミー メディア 一般社団法人 CEO スポーツ・ファウンデーション 地域住民 役員 一般社団法人日本バレーボールリーグ機構 事務局スタッフ 兵庫県体育協会 チームスタッフ 兵庫県バレーボール協会 スポンサー 兵庫県 後援会 姫路市 チーム設立時の後援会 姫路商工会議所 観戦者 姫路市体育協会 ファン・サポーター 姫路市バレーボール協会 連携協定団体(大学) ひめじスポーツコミッション ウインク体育館(姫路市立中央体育館) 姫路市立総合スポーツ会館

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眞鍋氏と親戚であったことから,話が進み,急展 開を迎える.スポーツマネジメントの専門家であ る橋本氏が参画したことによって,チーム設立に むけた運営が円滑に行われるようになる.そして 2016 年 3 月,株式会社姫路ヴィクトリーナが設 立される.当初は地元社長ら有志により会社の立 ち上げを目指していたが,調整の目処が立たなか ったため,橋本氏が会社を買い取ることとなる. また,代表取締役には橋本氏の前職同僚の内田 奈々氏(以下「内田氏」と略す),取締役には橋 本氏が就任する.これらの経緯から,株式会社姫 路ヴィクトリーナの設立には,眞鍋氏と橋本氏の 個人的なネットワークが大きな役割を果たしてい たことが明らかとなった.また,地元社長ら有志 によって,プロバレーボールチーム設立構想の土 台が構築され,スポーツマネジメントの専門家の 加入によりチーム設立に向けた活動が加速したと いえる.次のステップ(Phase2)に進むにあたり, 変化要因【A】は,眞鍋氏・橋本氏・内田氏・地 元社長らのネットワークが構築されたことである (図 4). 3. Phase2(2016.3―2018.3) Phase2 は,チームが設立された 2016 年 3 月か ら V リーグ参入が正式決定する 2018 年 3 月まで である.株式会社姫路ヴィクトリーナが設立され たことによってチーム運営が始まり,多くのステ ークホルダーとの関係性が生まれた.このチーム 運営は大きくチーム活動とフロント活動の 2 つに 大別することができる.以降,チーム活動とフロ ント活動の 2 つに分けて,チームの成長過程を検 証する. はじめに,チーム活動としては,2016 年 6 月 に竹下氏を監督として迎え入れたことを契機に本 格的にチームが始動し,同年 12 月には眞鍋氏が ゼネラルマネジャーに就任する.チームは,トラ イアウトの実施やプロ選手としての業務委託契約 を行うことによって選手を集め,大会への出場, イベントへの参加を行っていった.大会に参加す るにあたっては,兵庫県体育協会や兵庫県バレー ボール協会に所属することで,国体予選や実業団 の大会など様々な大会に出場している.また,イ ベントについては,竹下氏を中心としたトップア スリートで構成された内部組織であるヴィクトリ ーナドリームスが,2016 年 8 月からツアーオブ バレーボールを企画している.この事業は,設立 初年度から森永乳業株式会社の支援のもとで実施 されている.このように,競技団体との提携や企 図 3 ヴィクトリーナ姫路における成長プロセス 橋本氏による記入シートをもとに筆者作成

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業とのコラボレーションによって様々な活動を行 うことが可能になっている. チームとして勝つことを重視していることに加 えて,選手の強化・地元選手の育成や,バレーボ ールの普及活動も視野に入れて活動していること から,ヴィクトリーナ姫路にはピラミッド型のシ ステムが構築されている(図 1).このシステムは, ヴィクトリーナ姫路をピラミッドのトップとして 位置づけ,その下部組織として地元を中心とする アスリートの育成を担う一般社団法人ヴィクトリ ーナ・エリートアカデミー,バレーボールやスポ ーツの普及を推進する一般社団法人 CEO スポー ツ・ファンデーションとの連携協定締結により実 現している.ヴィクトリーナ・エリートアカデミ ーにおいては,競技力強化を目標にヴィクトリー ナ U-16 アカデミーが開催されるなど,U23 以下 の育成に力を注いでいる.2017 年 11 月に地元の 大学機関と連携し,U23 強化育成指定のもと関西 福祉大学に新たにバレーボール部を設立した.さ らに,2017 年の同月には,地元企業との連携に よる育成チームであるマックスバリュ・ヴィクト リーナを発足させた. 次に,2013 年に設立された CEO スポーツ・フ ァウンデーションにおいては,バレーボールを中 心にスポーツの楽しさを伝える活動が行われて いる.具体的には,中学生のバレーボール大会で ある神戸新聞杯や小学生の大会であるグローリー カップなどの大会の開催や,キッズ・スポーツキ ャンプの運営やヴィクトリーナドリームスとの共 同事業としてツアーオブバレーボールに携って いる.ヴィクトリーナ姫路のシステムは,Green (2005)の提唱する「スポーツ参加」,「タレント 育成」,「トップアスリート」の 3 段階のピラミッ ドモデルと同様のステージが設けられている.さ らに,そのステージごとに 1 つの組織(i.e., ヴィ クトリーナ姫路,ヴィクトリーナ・エリートアカ デミー)が一元管理するのではなく,それぞれ各 ステージを組織が分担する仕組みがとられてい る. これらのチーム活動を支えているのが,フロン ト活動である.スポンサーへの営業活動やプロモ ーション活動などを通して,チーム運営が行われ ている.広告露出のあるスポンサー,チームの応 援を目的とする後援会があり,地元企業をはじめ 多くの企業からの支援で成り立っている.スポン サーについては,ヴィクトリーナ姫路のホームタ ウンである姫路市の人口と企業数を考慮した上 で,一口 10 万円からのスポンサー契約が結ばれ ている.スポンサーは,1 業種 1 企業との条件が あるが,後援会は応援が目的であるため,業種に よる条件は設けられていない.これらのスポンサ ーや後援会からの支援によって,チーム運営が成 図 4 変化要因【A】における主なステークホルダーの関わり †灰色はプライマリー・ステークホルダーを表す

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り立っているといえる.また,その他の活動とし て,2016 年 12 月にファンクラブが設立されてお り,ファンとの関係性も重視されている. ステークホルダーとの関係を築き,つなぎとめ る役割としてメディアの存在は重要である.スポ ンサーから広告収入を得るためにはメディア露出 が必要であり,ファンクラブや一般市民に対して もメディアへの露出が大きな影響を与えていると いえる.そのため,チーム側も設立当初から,話 題を切らすことのないようにメディアに対してプ レスリリースを頻繁に出している.橋本氏のスポ ーツマネジメント会社での経験等の専門性がこの ようなメディア戦略に生かされており,ステーク ホルダーとの良好な関係性の維持に欠かせない存 在となっている.その結果,トップリーグに所属 していないチームでありながらも,スポンサー・ 後援会が約 300 社、ファンクラブ会員が約 400 名 (インタビュー当時)と,スポンサーやファン, 地域住民との繋がりを継続できていると考えられ る. プロバレーボールチームとしてトップリーグ である V リーグへの参加は必須課題である.チ ームは,2016 年 12 月に 2017 / 2018 年シーズン に向けて V リーグに加盟申請を行ったものの,V リーグから準加盟チームとして承認されず,V リ ーグへの参戦ができなかった.その後も,2017 年 8 月運営会社の経営難により日本バレーボール リーグ機構から撤退勧告を受けた仙台ベルフィー ユからチーム譲渡によって V リーグへの参戦が 計画されるも,本部組織である日本バレーボール リーグ機構より仙台からのチーム譲渡は無効との 判断を受け,V リーグ参入は取り消される.しか し,2018 / 2019 シーズンに向けて V リーグ参戦 に向けた活動が行われ,2018 年 3 月に,経営状 態や成績が評価され日本バレーボールリーグ機構 の V リーグ 2 部「V2」参入が発表された.これは, チーム活動として「全国 6 人制バレーボールリー グ総合男女優勝大会」での 8 試合全勝優勝を達成 したことやフロント活動として 200 社以上のスポ ンサーを集めることができたことの両輪によって 成し遂げられたといえる. 4. Phase3(2018.3―現在) Phase2 から Phase3 へ移行する際の変化要因【B】 は,V リーグへの参入決定である.V リーグ参戦 が決まって以降,ヴィクトリーナ姫路とステーク ホルダーとの関係に様々な変化が生じた(図 5). 1 つ目は,スポンサー収入の増加である.V リー グへの参戦が決定し,スポンサー企業数の増加は もちろんであるが,既存のスポンサー企業からの 支援額も増加した.これは,トップリーグである V リーグへの参戦によって,今まで以上にヴィク 図 5 変化要因【B】における主なステークホルダーの関わり †灰色はプライマリー・ステークホルダーを表し,白色はセカンダリー・ステークホルダーを表す.

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トリーナ姫路の市場価値が上がったことに起因す ると考えられる.スポンサー収入は,ヴィクトリ ーナ姫路にとって最も大きな収入源である.なぜ なら,バレーボールの場合は,シーズン全 18 試 合のうちホームゲームが 5 試合と少なく,入場料 や物販料はあまり期待できないため,スポンサー 企業からの支援は最も重要な活動資金になると考 えられる.このことから,チーム運営にとっても V リーグへの参戦は大きな意義があったといえ る. 2 つ目は,提携機関の増加である.2018 年 11 月には,グローバル企業である大和工業とトップ スポンサー契約を締結し,ホームタウンである姫 路市と正式に協定が結ばれた.行政からの支援を 受けることによって,社会的信用も増し,地域住 民や地元企業からの支援もより積極的になること が予想される.また,高等教育機関との連携も活 発に行われている.具体的には,神戸市にある神 戸親和女子大学との間に「産学連携協定」が結ば れており,近隣地域のステークホルダーとの提携 に加えて,首都圏にある明海大学との提携が結ば れている.首都圏の選手を育成することも目指さ れており,2019 年春には,下部組織として明海 大学に女子バレーボール部の設立準備が進められ ている. Ⅴ 結 論 本研究の目的は,わが国初の女子プロバレーボ ールチームであるヴィクトリーナ姫路に関連する ステークホルダーに着目し,その成長プロセスを 明らかにすることであった.はじめに,半構造化 インタビューの結果,チーム設立構想期から現在 に至るまで,ヴィクトリーナ姫路の成長には 13 のプライマリー・ステークホルダーと 11 のセカ ンダリー・ステークホルダーが関連していたこと が明らかになった.続いて,Greiner(1972)を 参考に,組織規模を時間軸に沿って分類した結果, 3 つの Phase に分類することができた.Phase1 は チーム設立準備会の発足時から株式会社姫路ヴィ クトリーナが設立されるまでであり,姫路市にプ ロバレーボールチームをつくるという眞鍋氏と地 元有志の人々の思いが合わさり,橋本氏と内田氏 がそこに加わってマネジメントを強化していく時 期である.Phase2 は,ヴィクトリーナ姫路設立 後から V リーグ参入が正式決定するまでであり, トライアウトの実施やスカウティングによって有 望な選手を集めてチーム強化を図り,球団本部の フロントスタッフの基盤を固めた時期である.ま た,Phase2 においては,スポンサーの募集が始 まり,トップチームの強化だけでなく,一般社団 法人ヴィクトリーナ・エリートアカデミーが設立 されて,選手育成やバレーボールの普及活動が見 られ始めた.そして,Phase3 は,V リーグ参入が 正式決定してから現在に至るまでの時期である. スポンサーの強化及び連携機関の増加に加えて, 2018 世界選手権バレー女子神戸大会に出場した トリニダード・トバゴ代表の事前合宿において親 善試合が行われたり,元ブラジル代表のスエレ・ オリヴェイラ選手が新加入したりするなど,チー ム全体が大きく動き始める時期となっている. Phase1 から Phase2 に移行する際の変化要因と して,眞鍋氏・橋本氏・内田氏・地元社長ら有志 のネットワークが構築されたことが明らかとなっ た.この時期は,株式会社姫路ヴィクトリーナを 立ち上げるまでであるため,当然のことではある が,ファン・サポーター・スポンサー企業・後援 会といったステークホルダーとの関わりはほとん どみられない.大野(2010)は,アントレプレナ ーシップ(起業家精神)の観点から,社会を変え たいという意欲と創造に満ち溢れた経営者と,経 営者と同じ志を持つ社員の研鑽が企業の未来やよ り良い社会を作り上げていくと述べている.すな わち,今回のケースのように,価値観や理念を 共有できる人材が集うことが重要なポイントであ り,何よりもキーパーソンがリーダーシップを発 揮することで組織の発展に繋がっていくと思われ る. Phase2 から Phase3 に移行する際の変化要因と しては,V リーグ参入決定が最も大きな要因であ ることが明らかになった.ヴィクトリーナ姫路は 様々なステークホルダーとの関係を築くことで,

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設立から V リーグ参入までをわずか 2 年の月日 で成し遂げた.強化システムでは,ヴィクトリー ナ姫路が 1 つの組織で管理・運営を行わず,下部 組織や他のステークホルダーの協力の下にシステ ム化されている.日本代表の監督やトップレベル での選手経験のあるものがチーム作りに関わるこ とで,より効率的な育成システムを構築すること が可能になると考えられる.なぜなら,彼ら個人 の経験に加え,個人のネットワークからの世界の 現状やシステム等の情報はきわめて重要なものに なるからである.また,メディアを活用すること によって,ファン,地元住民,スポンサーとの関 係性をより充実したものにしていく試みがなされ ている.これは,ゼネラルマネジャーや監督が著 名人であることに加え,スポーツ組織においてス ポーツマネジメント経験を有する専門職員が携っ ていることが大きく関係していると考えられる. また,V リーグにおいてホームアリーナでゲー ムが開催されるのは,シーズンを通じて 5 試合(V2 リーグ)しかないため,残りの 360 日はチームと ステークホルダー間で疎遠な状態が続く.この点 に関して,ヴィクトリーナ姫路は,様々な戦略を 練っているのが特徴的である.例えば,「チーム 活動における露出」としてプレシーズンマッチ, 全国のスポーツ普及活動,イベント・番組出演活 動等を行い,「スポーツチーム独自の露出」とし て公共の建物内掲示,連携・大会・教育の協力活 動,記者会見による積極的な情報発信等を行って いる.また,「一般物における露出」としてチー ムバスにおける露出(チームバスや公用車はヴィ クトリーナ姫路カラーのピンクに塗られ,ロゴマ ークが施されている),ウェブページ・SNS・季 刊誌の発行等を実施している.プロ選手支援型フ ァンクラブを立ち上げ,ファンクラブ会費と還元 対象グッズの利益が,シーズン終了時に個人が選 択したプロ選手・プロスタッフ個人の年俸として 還元される仕組みも特筆すべき点であろう.原 田(2008)も,日常的にチームとステークホルダ ーとの関係性を保つためには,ウェブサイトや CRM 等のクラブからファンへの積極的な情報発 信や,バナーや広告といった露出,カレンダー, 練習グラウンドでの交流,チーム・クラブとのコ ミュニケーションを発生させる「経験価値インタ ーフェース」が重要であると指摘している. そして,ヴィクトリーナ姫路は,近年 J リーグ のクラブに多くみられる「ハイブリッド型スポー ツクラブ」(谷塚,2011,p.193)の形態をとって いる.ハイブリッド型スポーツクラブでは,同じ クラブ内において,トップチームを運営する株式 会社がチケットセールスやスポンサー営業,試合 運営,スカウティング,選手・チーム強化といっ た事業を展開し,NPO 法人や一般社団法人等の 非営利組織が選手育成,各種スクール,地域連携 イベント等を行う.そうすることで,プロスポー ツチームとステークホルダー間のアクセスポイン トが強化・拡大され,さらに地域住民との多様な 関わりを生み出すことにも繋がっていくのである (中西,2016). 次に,分析枠組みについて検証する.本研究 では,ライフサイクルモデルを用いて,Greiner (1972)における「危機」を Slack and Hinings(1992)

が主張する「変化要因」に置き換え,分析を進め た.成長プロセスにおいて,実際に「危機」と位 置づけられるような内容はみられず,次の段階へ と進む「変化要因」が確認された.その理由とし て,ヴィクトリーナ姫路は組織体としての年数が 浅く,停滞や大きな衰退がみられなかったことが 挙げられる.今後,長期的な視点でチームを観察 し,組織体としての停滞や衰退がみられた際に, Greiner(1972)の主張する「危機」が訪れる可 能性がある. 本研究の実践的な意義としては,プロスポーツ チームを立ち上げ,成長していく過程において重 要となるステークホルダーとの関係やチームとし ての取り組みを明らかにした点が挙げられる. Babiak and Wolfe(2009)は,メディア・選手・ 地方自治体・スポンサー・ファン・地域といった ステークホルダーとの良好な関係は,プロスポー ツチームの多様な活動から築かれると指摘してい る.前述したように,ヴィクトリーナ姫路は設立 当初から,話題を切らすことのないように様々な 活動を展開し,メディアに対して頻繁にプレスリ

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リースを出している.また,現在多くのスポンサ ー企業や後援会を抱えているが,これらは自然と 集まってきたわけではない.ヴィクトリーナ姫路 は,スポンサーとなる企業に対して各企業の実情 に沿った提案書を作成し,1 社ずつ交渉すること でスポンサーシップを構築している.例えば,マ ックスバリュがスポンサーとして関与している が,一般的にスーパーマーケットは離職率が高い と言われており,人員募集を積極的に行う必要が ある.しかしながら,スポーツを活用して実業団 チームを持つとなると莫大な費用がかかるため, マックスバリュ・ヴィクトリーナという育成チー ムを下部組織につくり,マックスバリュで働きな がら練習を行える環境を若手選手に提供すること で,ヴィクトリーナ姫路・マックスバリュ・選手 間でウィンウィンの関係を築いている.このよう に,プロスポーツという華やかな世界の裏側で地 道な経営努力を重ねることが,チームの継続的な 発展に繋がっていくのではないだろうか. 本研究においては,わが国初の女子プロバレー ボールチームに焦点をあてて,ステークホルダー との関係を紐解くとともに成長プロセスを明らか にした点は有意義であると考えられるが,研究 の限界と今後の課題として以下の 2 点が挙げら れる.1 点目は,本研究ではヴィクトリーナ姫路 の代表取締役球団社長である橋本氏 1 名に対する インタビュー調査を実施したが,他のステークホ ルダーに対するインタビュー調査を実施するまで に至っていないことである.より詳細なプライマ リー・ステークホルダーとセカンダリー・ステー クホルダーのネットワーク構造を明らかにするた めには,さらなる調査対象の拡大が求められる. 2 点目は,本研究の対象となったヴィクトリーナ 姫路は,2013 年に設立準備会が発足されて以降, 急速に組織化したチームであり,成熟度という観 点からみると発展途上と言わざるを得ないことで ある.今後の成長プロセスを評価するためにも, 縦断的な観察が求められるであろう. 謝辞 本研究の実施に際して,多大なご協力を賜った 株式会社姫路ヴィクトリーナの橋本明様および関 係者の皆様にこの場をお借りして厚く御礼申し上 げます.また,本論文の審査におきまして,有益 なご助言をいただきました査読者の先生方にも感 謝申し上げます. 注 プロスポーツクラブとは,「職業としてスポーツを行 うアスリートによって構成され,スポーツをすることの 対価をもらう団体」(石井,2017,p.122)と定義されて いる.V リーグ参入チームの中には,市民クラブとして 独立採算を目指すチームも存在するが,全選手とプロ契 約を結んでいる女子チームは存在しない.以上の観点か ら本研究では,所属選手とプロ契約を結んでいるヴィク トリーナ姫路は,女子プロバレーボールチームであると 位置づける. 文 献 青山将己・山口志郎・山口泰雄(2019)PMBOK (Project Management Body of Knowledge) を用いた代表チーム 事前合宿におけるステークホルダー・マネジメントプ ロセス:兵庫県・淡路市のケーススタディ.スポーツ 産業学研究,29(1):29-37. 朝日新聞(2016)姫路飛躍へ全日本タッグ:GM に前 代表監督・真鍋氏,竹下監督と会見.http://database. asahi.com/library2/main/top.php,(参照日 2019 年 2 月 7 日).

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Published online 2019/8/30

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