膜結合型転写因子SREBP
小胞体一
核間情報伝達と脂質代謝調節
.
佐藤隆一郎
コレステロール代謝関連遺伝子の転写調節因子として発見されたSREBPは ,予想もしな
かったことに小胞体膜上に膜蛋白質として局在した.この前駆体は,細胞内のコレステロ
ール量が減少すると2段 階のプロセシングを受け,N末 端側が細胞質へと遊離ざれ,この
活性型がこれまで報告のない新たな機構で核輸送され,応答遺伝子の転写を調節する.応
答遺伝子探索の結果,SREBPは コレステロール代謝のみならず,脂肪酸代謝,糖代謝,脂
肪細胞分化などの広範な代謝領域の調節因子として機能することが明らかになった.
【コ レ ス テ ロ ー ル 】 【SREBP】 【膜 結 合 型 転 写 因 子 】 は じめ に 生 化 学 の 教 科 書 を ひ も解 い て 脂 質 分 類 の コ レ ス テ ロ ー ル の 項 目 を覗 く と, コ レ ス テ ロ ー ル は動 物 の 形 質 膜 , オ ル ガ ネ ラ膜 の構 成 成 分 と し て , また 種 々 の 生 体 機 能 を調 節 す る ス テ ロ イ ドホ ル モ ン の 前 駆 体 と して 機 能 す る と記 載 され て い る.1990年 代 の後 半 に 入 り, コ レ ス テ ロ ー ル は発 生 の 過 程 に お い て 新 た な 機 能 を 有 して い る こ とが 明 らか に さ れ た . 脊 椎 動 物 の 形 態 形 成 の 過 程 で 機 能 す る分 泌 蛋 白 質 ソ ニ ッ ク ヘ ッ ジ ホ ッ グ は, 自己 消 化 に よ りN末 端 側 を切 断 ・分 泌 す る が , この ペ プ チ ドのC末 端 に コ レ ス テ ロー ル が エ ス テ ル 結 合 し, 形 態 形 成 能 の 発 現 に不 可 欠 な役 割 を 果 た す の で あ る. この よ う な 広 範 な 生 理 機 能 を もつ コ レ ス テ ロ ー ル は, 細 胞 内 で の 存 在 量 を精 密 に 制 御 す る こ とが 求 め られ る. す べ て の 細 胞 は ア セ チ ルCoAを 出 発 物 質 と し て30段 階 近 くの 酵 素 反 応 を介 して コ レス テ ロー ル を 合 成 す る こ とが で き る . これ と同 時 に, 細 胞 は細 胞 膜 表 面 にLDL( 低 密 度 リボ 蛋 白 質 )受 容 体 を発 現 し, 血 液 中 のLDLを 取 り込 み , そ こ に含 まれ る コ レス テ ロ ー ル を 細 胞 外 か ら獲 得 す る こ と も で き る . 取 込 み 経 路 に よ り十 分 に コ レ ス テ ロ ー ル が 細 胞 に供 給 さ れ る と, い わ ゆ る フ ィ ー ドバ ッ ク 機 構 に よ り, 合 成 ・取 込 み 両 経 路 は抑 制 され , 細 胞 内 コ レ ス テ ロ ー ル 量 を減 少 さ せ る努 力 が 払 わ れ る. 生 活 習 慣 病 の 一 因 と な る高 脂 血 症 で は, 血 中LDLが 高 値 に な り, 生 体 を形 成 す る細 胞 は コ レ ス テ ロ ー ル 供 給 過 多 の 状 況 に 陥 り, 細 胞 表 面 の LDL受 容 体 数 を減 ら し, そ の 結 果 と してLDLは ま す ま す 上 昇 す る とい う悪 循 環 を き た す . こ の フ ィ ー ドバ ック コ ン トロ ー ル は 主 と して転 写 レベ ル で行 な われ , コ レ ス テ ロー ル 合 成 の初 期 を触 媒 す る ヒ ドロ キ シ メ チ ル グ ル タ リルCoA(HMG CoA) 合 成 酵 素 , 還 元 酵 素 , さ ら にLDL受 容 体 のmRNA量 は 細 胞 内 コ レ ス テ ロ ー ル 量 と見 事 な 連 動 を 示 す . こ の 機 構 を 明 らか に す る 目 的 で こ れ ら遺 伝 子 の5’ 上 流 域 に存 在 す る コ レス テ ロ ー ル に よ る転 写 制 御 に 応 答 す る シ ス エ レ メ ン ト (sterol regulatory element;SRE) の 同 定 , そ れ に 結 合 す る 転 写 因 子 の 精 製 が 進 め ら れ た . 数 年 の 歳 月 を 費 や し たRyuichiro Sato, 東 京 大 学 大 学 院 農 学 生 命 科 学 研 究 科 応 用 生 命 化 学 専 攻 (〒113-8657東 京 都 文 京 区 弥 生1−1−1) [Department of Applied Biological Chemistry,Graduate School of Agricultural and Life Sciences,The University of Tokyo,Yayoi,Bunkyo-ku,Tokyo 113-8657,Japan]E-mail:aroysato@mail.ecc.u-tokyo.ac.jp
SREBPs,Membrane-bound Transcription Factors
図ISREBP-laとSREBP−2の 構 造 と そ の 比 較 cDNAよ り推 定 したア ミノ酸 配 列 を示 した. そ れ ぞれ の ア ミノ酸 が リ ッチ な領 域 に そ の ア ミノ酸 を 記 し た. 各 部 位 の ア ミノ酸 相 同 性 を% で 表 示 した . の ち ,1992年 に よ うや くDNA結 合 蛋 白 質 の精 製 が 終 了 し, ペ プ チ ド断 片 の ア ミノ酸 配 列 を基 にcDNAク ロ ー ニ ン グが 行 な わ れ , この フ ィー ドバ ック コン トロー ル を 支 配 す る転 写 因 子 の 本 体 が 明 らか に され ,SREBP (SRE-binding protein) と命 名 さ れ た1・2). 本 稿 で は, 筆 者 がSREBPの ク ロ ー ニ ン グ , 機 能 解 析 の研 究 を 行 な った テ キサ ス大 学 のGoldstein,Brown 両 教 授 (1985年 ノ ーベ ル 医 学 ・生 理 学賞 受 賞 者 ) 研 究 グ ル ー プ か らの こ こ数 年 のお びた だ しい数 の研 究 報 告 , な ら び に筆 者 の グル ー プ が行 な った研 究 結 果 を 中 心 に, 膜 結 合 型 転 写 因 子SREBPに よ る応 答 遺 伝 子 の 転 写 調 節 機 構 の 全 体 像 を わ か りや す く紹 介 した い . I.SREBPの 構 造 HeLa細 胞 の核 抽 出 画 分 か ら精 製 された 蛋 白 質 の 部 分 ア ミ ノ酸 配 列 を基 に,2種 類 のcDNAが ク ロー ニ ン グ され , そ れ ぞ れSREBP-1,2と 名 づ け られ た .2種 類 の 蛋 白 質 は い ず れ も約1,100ア ミ ノ酸 か らな り,N末 端 に酸 性 ア ミ ノ酸 リ ッチ な 転 写 活 性 化 領 域 , そ の 後 方 に 多 くの転 写 因 子 に み られ るbHLH-Zip(basic helix-loop−helix leucine−Zip) 領 域 を もつ 酷 似 し た構 造 を も ち , 互 い に47% の ア ミノ酸 相 同 性 を もっ て いた (図1). 核 か ら抽 出 さ れた 精 製 蛋 白質 が70K程 度 の分 子 量 で あ っ た の に対 し, 予 想 さ れ た 分 子 量 は120Kを こ え る も の で あ り矛 盾 が 生 じ た . この 分 子 量 の 差 異 は , まっ た く予 想 し な か っ た こ とに , い ず れ の 分 子 に もそ の 中 央 部 に2カ 所 の 膜 貫 通 部 位 が 存 在 し , 合 成 直 後 は これ ら を 介 してSREBPは 小 胞 体 膜 , 核 膜 に高 分 子 量 の膜 蛋 膜結合型転写因子SREBP 47 白 質 と し て 局 在 し, そ の 後 一 連 の プ ロ セ シ ン グ を 受 け, N末 端 側 が 切 断 され ,70K程 度 の活 性 型 が核 へ と移 行 して 転 写 因 子 と し て 機 能 す る こ とに よ る . そ れ で は ど の よ う に して 活 性 型 へ の 変 換 が 起 こ る か と い う疑 問 に 答 え る べ く詳 細 な検 討 が な さ れ た 結 果 , 細 胞 内 の コ レ ス テ ロ ー ル 量 が 低 下 す る と核 内 の 活 性 型 が 増 加 し, 応 答 遺 伝 子 の 転 写 を促 進 し, 一 方 コ レ ス テ ロー ル 量 が 過 剰 に な る と活 性 型 は 核 内 か ら消 失 し, プ ロセ シ ン グ が 細 胞 内 コ レ ス テ ロ ー ル 量 に よ り制 御 され る こ とが 明 ら か に な っ た3∼5). SREBPフ ァ ミ リー と して2種 類 の遺 伝 子 に コー ドさ れ たSREBP-1( 染 色 体17p11.2) とSREBP-2( 染 色 体22q13) が 存 在 す る こ とを 述 べ た が ,SREBP−1に は 開 始 コ ドン を含 む エ キ ソ ン1aと ,そ こか ら14kb下 流 の 同 じ く開 始 コ ド ン を含 む エ キ ソ ン1cか ら, ス プ ラ イ シ ン グ の 違 い (alternative splicing) に よ り生 じ る2種 類 の ス プ ラ イ シ ン グ ア イ ソ フ ォ ー ム が 存 在 す る. そ の 結 果 , 活 性 型SREBP-laと1cはN末 端 側 が 異 な り, 1aに 比 べ て1cで は24ア ミノ酸 残 基 が 欠 落 してい る. 転 写 活 性 化 領 域 が 短 い ぶ ん だ け1cは 転 写 因 子 活 性 が 弱 い 特 徴 を もつ .SREBP−1とSREBP−2mRNAの 各 組 織 にお け る発 現 パ ター ンは,SREBP-1が 脂 質 代 謝 の 活 発 な 肝 臓 , 副 腎 な どで 発 現 が 高 いの に対 し,SREBP−2は 各 組 織 で 一 様 に発 現 され て い る. こ の事 実 は , 後 述 す る よ う にSREBP−2が コ レ ス テ ロ ー ル 代 謝 を 制 御 す る た め に各 組 織 でー様 に発 現 し,SREBP−1が 脂 肪 酸 合 成 な ど を制 御 す る た め に 脂 質 代 謝 が 活 発 な 臓 器 で 高 発 現 さ れ て い る と考 え る こ とが で き る . SREBP−1aと1cの 発 現 パ タ ー ン は組 織 に よ り若 干 異 な るが , 肝 臓 , 副 腎 で は 活 性 の 弱 い1cが 圧 倒 的 に多 く 発 現 され , そ の 他 の 組 織 で も1cが 主 た る発 現 ア イ ソ フ ォー ム で あ る6). 一 方 , これ ま で 調 べ られ た培 養 細 胞 で は い ず れ もSREBP−1aが 主 た るア イ ソ フ ォーム で あ り, マ ウス の 脾 臓 , 胸 腺 , 腸 管 で1a発 現 が 高 い こ と とあわ せ て考 え る と, 分 裂 , 増 殖 の盛 ん な細 胞 でSREBP-la の 発 現 が 高 い よ う で あ るが , ス プ ラ イ シ ン グ パ タ ー ン が 培 養 細 胞 で1aに シ フ トす る 機 構 な ど に つ い て は不 明 で あ る.
48 蛋 白質 核 酸 酵 素 Vol.45 No.16 (2000) 表1活 性 型SREBPを 過 剰 発 現 し た トラ ン ス ジ ェ ニ ッ ク マ ウ ス の 特 徴 a) 正 常 マ ウ ス の値 に 対 し て何 倍 に上 昇 した か に つ い て 示 し た.
Ⅱ
. 転写調節機構
1.SREBP−1と2の 役 割 分 担 SREBPが ク ロー ニ ング され た 当 初 か ら, コ レ ステ ロ ー ル 代 謝 を制 御 す る の に ど う し て 生 体 は構 造 の酷 似 し た2種 類 の転 写 因 子 を必 要 とす るか に つ い て 興 味 が も た れ た . そ の 後 , コ レ ス テ ロ ー ル 代 謝 関 連 遺 伝 子 の み な らず , 脂 肪 酸 合 成 酵 素 遺 伝 子 の 転 写 を もSREBPが 制 御 す る こ とか ら, 個 々 の 応 答 遺 伝 子 に よ り2種 類 の 転 写 因 子 へ の 感 受 性 が 異 な る こ とが 予 想 さ れ た . テ キ サ ス 大 学 で 開 発 さ れ た 数 種 の トラ ン ス ジ ェ ニ ッ ク マ ウ ス は7∼9), この よ うな 疑 問 に対 して 明 確 な 答 え を提 示 し て くれ た (表1) . 最 も顕 著 な 表 現 型 が 現 わ れ た の は ヒ トSREBP−1a活 性 型 を過 剰 発 現 させ た トラ ンス ジ ェニ ッ ク マ ウ ス (Tg−SREBPla) で , 肝 臓 の 肥 大 化 を 伴 う 脂 肪 肝 が 認 め られ た . ヒ トSREBP−2活 性 型 を過 剰 発 現 させ た トラ ン ス ジ ェ ニ ック マ ウ ス (Tg−SREBP2) で は こ の よ う な表 現 型 は 現 わ れ ず , この 差 異 はSREBP− 1aが 脂 肪 酸 合 成 関 連 酵 素 遺 伝 子 の 転 写 を著 し く上 昇 さ せ る の に比 べ ,SREBP−2は む しろ コ レス テ ロール 合 成 関 連 酵 素 遺 伝 子 の 転 写 を促 進 す る こ とに 起 因 して いた . 実 際 ,3Hで ラ ベ ル さ れ た 水 か ら脂 肪 酸 も し くは コ レ ス テ ロ ー ル へ の 変 換 を 調 べ る と,Tg−SREBPlaで は前 者 を著 し く上 昇 させ ,Tg-SREBP2で は 後 者 を よ り強 く 促 進 し た . 弱 い 転 写 活 性 能 しか もた な い もの の , 多 く の組 織 で 主 要 ア イ ソ フ ォ ー ム と し て 合 成 さ れ る ヒ ト SREBP−1c活 性 型 を 発 現 さ せ たTg−SREBPlcで は , Tg−SREBPlaに 比 較 す る と弱 い なが ら も脂 肪 酸 合 成 を 促 進 す る傾 向 が み られ た . 筆 者 ら は,SREBP機 能 の 分 子 細 胞 生 物 学 的 な 解 析 を行 な う過 程 で ,SREBP−2が コ レス テ ロール 代 謝 に よ 図2ヒ トSREBP−2遺 伝 子 の5'上 流 域 を 挿 入 し た レ ポ ー タ ー 遺 伝 子 を 用 い た ス テ ロ ー ル 応 答 性 実 験 HEK293細 胞 に , そ れ ぞ れ の長 さの ヒ トSREBP−2遺 伝 子 の5'上 流 域 を挿 入 し た レ ポ ー ター 遺 イ云子 を導 入 し, コ レステ ロ ール を過 剰 に添 加 した培 地 (S)も し くはHMGCoA還 元 酵 素 阻 害 剤 を添 加 した コ レ ス テ ロ ー ル 枯 渇 培 地 (1)で2日 間培 養 後 , ル シ フ ェ ラー ゼ 活 性 を 測 定 した .り 深 く関 与 す る 事 実 を 認 め た10). 前 述 し た よ う に , SREBPは 細 胞 内 の コ レ ス テ ロ ール 量 に 呼 応 した プ ロセ シ ング 機 構 に よ り, 活 性 型 へ の 変 換 が 行 な われ るが , こ の よ うな 転 写 後 の 調 節 機 構 の ほ か に, 転 写 レベ ル で制 御 さ れ る可 能 性 に つ い て 詳 細 な検 討 を 行 な っ た . そ の 結 果 ,SREBP−2mRNA量 は細 胞 内 の コ レ ス テ ロ ー ル 量 に応 じて 変 動 す る こ と を認 め, ヒ トSREBP−2遺 伝 子 の 転 写 開 始 点 上 流 域 を ク ロ ー ニ ン グ し, そ の塩 基 配 列 を 決 定 した . そ の結 果 , 転 写 開 始 点 か ら約120bp上 流 部 位 に ヒ トLDL受 容 体 遺 伝 子 プ ロ モ ー ター 中 に認 め ら れ たSREと100% 一 致 す る ,5'一TCACCCCAC-3’ な る 配 列 が 見 い だ さ れ た (図2) . この 領 域 をル シ フ ェ ラ ー ゼ 遺 伝 子 の 上 流 に 挿 入 し た レ ポ ー タ ー 遺 伝 子 を 構 築 し, レ ポ ー タ ー ア ッ セ イ を 行 な う と , 細 胞 内 コ レ ス テ ロ ー ル 量 に応 じて ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 は変 動 し (p1400-Luc,p624−Luc,p140−Luc) ,SREを 含 む 領 域 を 欠 落 も し く は そ の 部 位 に変 異 を 入 れ る とそ の よ う な 変 動 は消 失 した (p91-Luc) . し た が っ て , 細 胞 内 の コ レス テ ロー ル 量 が 減 少 した 際 に は,SREBPが 活 性 型 へ と変 換 さ れ , こ の 活 性 型 がSREBP−2遺 伝 子 の 転 写 を 自 己 促 進 し,SREBP-2蛋 白質 合 成 を 増 加 さ せ , 再 び こ のSREBP−2蛋 白質 が 活 性 型 へ と変 換 さ れ , 応 答 遺 伝 子 の 転 写 調 節 活 性 を増 大 さ せ る役 割 を担 っ て い る. 以 上 の事 実 は , 細 胞 内 コ レ ス テ ロ ー ル の 変 動 に 呼 応 し て 自 ら の 転 写 を も 制 御 す る の はSREBP−2で あ り, SREBP−2が よ り深 く コ レス テ ロー ル代 謝 調 節 に関 与 し て い る こ とを 間 接 的 に 物 語 っ て い る. また , 最 近 数 カ 所 の 研 究 グ ル ー プ か ら,SREBP−1c の 転 写 が イ ン ス リ ン も し く は グ ル コ ー ス に よ り促 進 さ れ , 一 方 魚 油 成 分 の 多 価 不 飽 和 脂 肪 酸 が 転 写 を抑 制 す る こ とが 明 ら か に さ れ た11∼’5). この事 実 は , 摂 食 後 イ ン ス リ ンの 働 き に よ り肝 臓 な ど に お い て 種 々 の 脂 肪 合 成 系 の 酵 素 が 転 写 レベ ル で 上 昇 す る機 構 は,SREBP-1cが そ の 一 部 を担 い , イ ン ス リ ン も し くは グル コ ー ス 濃 度 上 昇 →SREBP-lc転 写 充 進 → 標 的 遺 伝 子 ス イ ッチ オ ン, とい う機 構 が 存 在 す る と考 え る こ とが で き る. 現 時 点 で , イ ンス リン , グ ル コー ス に よ るSREBP−1c転 写 調 節 の 詳 細 は 不 明 で あ る . 2. 協 調 因 子 SRE配 列 発 見 の 際 に ,LDL受 容 体 遺 伝 子 の プ ロモー タ ー 領 域 の 解 析 が 入 念 に 行 な わ れ ,LDL受 容 体 の コ レ 膜 結合型転写因子SREBP 49 図3SREとNF−Y結 合 部 位 を も つSREBP応 答 遺 伝 子 の プ ロ モ ー タ ー 領 域 の 模 式 図 転 写 開 始 点 か らの 塩 基 数 を マ イ ナ スbpで 示 した. 参 考 にSREと Sp1結 合 部 位 を も つLDL受 容 体 の プ ロモ ー タ ー 領 域 を 示 した . ? :Sp1結 合 部 位 , ■ :SRE,□ :NF−Y結 合 部 位 . ス テ ロ ー ル に よ る転 写 調 節 に は,TATAボ ツク ス の上 流100bp内 に 存 在 す る2カ 所 のSp1結 合 部 位 とそ の 間 に位 置 す るSREが 必 要 で あ る こ とが 明 ら か に さ れ た . レ ポ ー タ ー 遺 伝 子 を 用 い た レ ポ ー タ ー ア ッセ イ に お い て,Sp1結 合 部 位 に 変 異 を 入 れ た レ ポ ー タ ー で は SREBPを 発 現 さ せ て も活 性 は上 昇 せ ず ,Sp1( 多 くの 組 織 で 発 現 して い るZnフ ィ ンガ ー構 造 を もつ転 写 因 子 ) とSREBPが 協 調 的 に作 用 す る こ とを物 語 って い る. さ ら に 種 々 の 転 写 因 子 の コ フ ァ ク タ ー と し て 働 くCBP (CREB binding protein) 分 子 の ア ミノ 酸548∼682の
領 域 とSREBPが 直 接 結 合 す る こ と16),SREBPとSp1 も 直 接 結 合 す る こ と が 確 認 さ れ17), こ れ ら の 因 子 が DNA上 で 多 分 子 複 合 体 を形 成 しな が らRNAポ リメ ラ ー ゼ を活 性 化 し,転 写 を促 進 す る こ とが予想 され て い る. 一 方, 筆 者 らを 含 む2つ の グル ー プ は,SREBP応 答 遺 伝 子 の プ ロ モ ー タ ー にはSRE配 列 の近 傍 にSp1で な く,同 じ く多 くの 組 織 に 発 現 の 認 め られ る転 写 因
子NF-Yの 結 合 部 位 (CCAATボ ッ ク ス )が 存 在 し,SREBP
とNF-Yと い う組 合 せ で も同 様 な転 写 調 節 が 行 な わ れ る こ と を 明 らか に し た10,18,19). こ の よ う な 例 と し て , HMG CoA合 成 酵 素 , フ ァル ネ シ ル ピ ロ リン酸 合 成 酵 素 , ス クア レン合 成 酵 素 ,SREBP−2遺 伝 子 な どが あ げ られ る (図3) . 筆 者 ら は , さ ら にSREとCCAATボ ッ クス との 距 離 がSREBPとNF−Yを 介 した 転 写 活 性 化 に どの よ う な影 響 が あ るか に つ い て , そ れ ぞ れ の 距 離 を8∼32bpま で 順 次 変 化 させ た レ ポ ー タ ー遺 伝 子 を
50 蛋 白質 核 酸 酵 素 Vol.45 No.16 (2000) 構 築 し て検 討 を行 な った . そ の結 果 ,2カ 所 の結 合 部 位 が15∼22bp程 度 の距 離 でDNA上 に存 在 す ると最 も鋭 敏 に転 写 応 答 を受 け る こ とを認 め た18). ζの事 実 は, 前 述 した4種 類 の遺 伝 子 に お い て,2カ 所 の結 合 部 位 が15 ∼21bpの 距 離 を 置 い て 存 在 す る こ と と よ く一 致 した. 前 述 し たSp1も し くはNF-Yを 協 調 因 子 と した 調 節 はい ず れ も,SREBPに よ り転 写 が 正 に制 御 され る例 で あ るが , 最 近 筆 者 らは これ とは異 な る機 構 でSREBPが 転 写 を 負 に 制 御 す る 遺 伝 子 を 見 い だ し た20).MTP (microsomal triglyceride transfer protein) は, 小 腸 と肝 臓 で の み 合 成 さ れ , ア ポB蛋 白 質 と脂 質 を小 胞 体 内 で ア セ ンブ ル させ る リ ボ 蛋 白 質 合 成 に 必 須 な 蛋 白質 で あ る.MTPmRNAは , 培 養 肝 細 胞 内 の コ レス テ ロ ー ル 含 量 が 高 くな る と リ ボ 蛋 白 質 合 成 ・分 泌 を促 進 す べ く上 昇 し, 一 方 コ レ ス テ ロ ー ル 含 量 が 低 下 す る と mRNA量 も減 少 した . す な わ ち , これ まで 報 告 の あ る SREBPの 標 的 遺 伝 子 の 転 写 が コ レ ス テ ロー ル量 が 多 く な る と抑 制 さ れ る の と ま っ た く逆 の現 象 が 観 察 され た . ヒ トMTP遺 伝 子 の プ ロモ ー タ ー領 域 を解 析 した 結 果 , こ の領 域 にSREBPが 直 接 結 合 す るSRE配 列 を見 いだ し (表2参 照 ), この 結 合 を介 し て転 写 が 負 に制 御 さ れ る こ と を 認 め た .SRE配 列 は, プ ロモ ー タ ー領 域 に存 在 す る イ ン ス リ ン で 負 に制 御 さ れ る イ ン ス リ ン応 答 エ レ メ ン トに 重 な っ て お り, イ ン ス リ ン刺 激 に よ る未 知 の 転 写 因 子 も し くはSREBPが こ の 部 位 に 結 合 す る こ と に よ り転 写 が 抑 制 され る. 以 上 の結 果 は ,SREBPは 正 ・負 の 両 方 向 に標 的 遺 伝 子 の転 写 を制 御 す る機 能 を も ち う る こ と を 意 味 し て い る. 3.SREとEボ ッ ク ス LDL受 容 体 遺 伝 子 の プ ロ モー タ ー に 位 置 す る10塩 基 か ら な る5’一ATCACCCCAC−3'配 列 がSREと 命 名 さ れ , そ の 後 の 研 究 か ら数 々 の 標 的 遺 伝 子 が 明 らか に さ れ , そ の5'上 流 域 に 存 在 す るSREが 同 定 さ れ た . SREBP結 合 部 位 と し て 機 能 す る か , も し く は 直 接 DNA一 蛋 白 質 複 合 体 を形 成 す る こ とが 確 か め られたSRE を表2に 列 挙 した . 当初10塩 基 か らな る と考 え られ て いたSREは ,9塩 基 か らな る 配 列 が その コア で あ り, 表 2に は9塩 基 配 列 が 示 して あ る. これ らは 大 まか に4つ の グ ル ー プ に 分 け る こ と が で き る . グ ル ー プ1の よ う に1塩 基 を挟 ん で (T/C)CAC様 配 列 を く り返 す 配 列 が 最 も高 い親 和 性 を も っ てSREBPを 認 識 し, グ ル ー プ 表2SREBP応 答 遺 伝 子 の プ ロ モ ー タ ー 領 域 に 認 め ら れ る SRE配 列 h: ヒ ト,ham: ハ ム ス タ ー ,r: ラ ッ ト,m: マ ウ ス ,LDLR: LDL受 容 体 ,Syn:HMGCoA合 成 酵 素 ,FAS: 脂 肪 酸 合 成 酵 素 , FPPsyn: フ ァ ル ネ シ ル ピ ロ リ ン 酸 合 成 酵 素 ,SQS: ス ク ア レ ン 合 成 酵 素 ,ACC: ア セ チ ルCoAカ ル ボ キ シ ラ ー ゼ ,Red:HMGCoA
還 元 酵 素 ,CEH: コ レ ス テ ロ ー ル エ ス テ ル 加 水 分 解 酵 素 ,GPAT: グ リ セ ロ ー ル3一 リ ン 酸 ア シ ル トラ ン ス フ ェ ラ ー ゼ ,ACL: ク エ ン 酸 一リ ア ー ゼ ,DBI/ACBP: ジ ア ゼ ピ ン 結 合 イ ン ヒ ビ タ ー /AcylcoA 結 合 蛋 白 質 ,SCD2: ス テ ア ロ イ ルCoAデ サ チ ュ ラ ー ゼ ,MTP: microsomal triglyceride transfer protein. す べ て の 配 列 を4つ の
グ ル ー プ に 分 け た . Ⅱの よ う に そ の い ず れ か 一 方 を保 持 し て い る もの , グ ル ー プⅢ の よ う に わ ず か な が ら基 本 構 造 を保 持 し て い る もの とい う順 序 で 親 和 性 は 減 弱 す る こ とが 予 想 さ れ る. こ れ ら の 基 本 構 造 を 逸 脱 した グ ル ー プⅣ に 関 し て は結 合 そ の もの が 十 分 な もの で あ る か 疑 問 が 残 る . SREBP−1を 用 い たPCR増 幅 結 合 解 析 の 結 果 ,
SREBPはSREの ほ か にEボ ッ ク ス
(5'-GANNTC-3')を も認 識 す る こ とが 確 認 さ れ て い る21).SREBPは
膜結合型転写因子SREBP 51 bHLH−Zip構 造 を もち , この フ ァ ミ リー に 属 す 転 写 因 子 の 多 くがEボ ッ ク ス を認 識 す る こ とか ら, こ の 結 果 は 妥 当 な もの とい え る. 非 常 に興 味 深 い こ と に,bHLHも し く は bHLH-Zip造 を もつ転 写 因 子 の 多 くはDNA結 合 部 位 で あ るbasic-rich領 域 に保 存 さ れ た ア ミノ酸 配 列 を も ち , そ の う ち最 も ヘ リ ッ ク ス 部 位 近 くに 存 在 す る ア ル ギ ニ ン 残 基 がSREBPで は チ ロ シ ン残 基 に置 換 さ れ て お り, これ を ア ル ギ ニ ン へ と変 異 さ せ た 変 異 型SREBPはSREを 認 識 し な くな りEボ ッ ク ス の み を 認 識 す る よ う に な る . 脂 肪 酸 合 成 酵 素 遺 伝 子 の プ ロ モ ー タ ー 領 域 に は,Eボ ックス を介 して SREBPに 応 答 してい る と考 え られ る領 域 が あ り, そ の よ う な転 写 調 節 に はSREBP−1が よ り深 く関 与 して い る こ と が 考 え ら れ て い る . 4. 標 的 遺 伝 子 群 コ レ ス テ ロ ー ル 代 謝 関 連 遺 伝 子 の 転 写 を 制 御 す る 転 写 因 子 と して 発 見 さ れ たSREBP は , 上 述 し た よ う に コ レ ス テ 図4SREBP応 答 遺 伝 子 産 物 の 相 互 関 係 SREBPが 直 接 転 写 を制 御 す る こ とが 確 認 され て い る応 答 遺 伝 子 を 四 角 で 囲 ん だ . ロ ー ル 代 謝 以 外 の 代 謝 関 連 遺 伝 子 の 制 御 も行 な う. こ れ ま で 報 告 の あ る 応 答 遺 伝 子 に つ い て そ の 相 互 関 係 を 図4に 列 挙 し た . 脂 肪 酸 合 成 に 関 与 す るATPク エ ン 酸 リア ーゼ22),脂 肪 酸 合 成 酵 素 ,ア セチ ルCoAカ ル ボキ シ ラ ー ゼ 遺 伝 子 ,不 飽 和 脂 肪 酸 合 成 にか かわ るス テ ア ロ イルCoAデ サ チ ュ ラー ゼ 遺 伝 子 , トリグ リセ リ ド合 成 に 関 与 す る グ リ セ ロ ー ル3-リ ン酸 ア シ ル トラ ンス フ ェ ラ ー ゼ 遺 伝 子, リボ 蛋 白質 代 謝 に 関 与 す る小 胞 体 ト リ グ リセ リ ド転 送 蛋 白 質 (MTP) ,LDL受 容 体 遺 伝 子 , コ レ ス テ ロ ー ル 合 成 経 路 の 種 々 の 合 成 酵 素 遺 伝 子 , 転 写 因 子 と し てSREBP-2. 糖 代 謝 に 関 与 す る グル コキナ ー ゼ , さ ら に 脂 肪 細 胞 分 化 に 関 与 す る核 内 レ セ プ タ ー PPARγ , 肥 満 に関 与 す る レプ チ ン遺 伝 子 な ど, 制 御 は 多 岐 に わ た る . 脂 肪 細 胞 分 化 に 関 し て は , 脂 肪 細 胞 分 化 に伴 い発 現 が亢 進 す るEボ ッ クス 結 合 蛋 白 質23)と し
て 同 定 さ れ たADD1(adipocyte determination and
differentiation-dependent factor-1) が そ の 後 , SREBP-1cと 同 一 で あ る とい う こ とが 判 明 して以 来 , マ ス タ ー レ ギ ュ レ ー タ ー と し て働 くPPARγ の 内 因 性 リ ガ ン ド産 生 を増 進 して 脂 肪 細 胞 分 化 を促 進 す る可 能 性 な どが 論 じ られ て きた24).SREBP-1は 直 接PPARγ , レ プ チ ン の転 写 を制 御 す る と と も に , レ プ チ ン に よ る
52 蛋 白 質 核 酸 酵 素 Vol.45 No.16 (2000) 図5小 胞 体 も し く は ゴ ル ジ 膜 上 で のSREBP,SCAP,SIP, S2Pの 想 定 存 在 様 式 とSIP,S2Pに よ るSREBP切 断 部 位 SREBPのC末 端 側 とSCAPのC末 端 領 域 (WD反 復 配 列 を含 む) が 結 合 し, 複 合 体 を形 成 す る.SIPはC末 端 を細 胞 質 側 に突 き出 し,1回 膜 貫 通 領 域 を もつ 膜 蛋 白 質 で,RXXL配 列の 直 後 でSREBP を切 断 す る. この切 断 は , コ レス テ ロ ール 量 に よ り調 節 を受 け, こ の調 節 にSCAPが 関 与 す る .S2Pは 膜 を4回 貫 通 し,SREBPの 第 1膜 貫 通 領 域 のN末 端 側 か ら3番 目 と4番 目 の ア ミノ酸 の 間 で切 断 を行 な う.R: ア ル ギ ニ ン,L:ロ イ シ ン,C: シ ス テ イ ン. 転 写 抑 制 を 介 した フ ィ ー ドバ ッ ク コ ン トロ ー ル を 受 け る こ とが 認 め られ て い る25).
Ⅲ
. 小胞体か らの情報発信
1. プ ロ セ シ ン グ 機 構 細 胞 内 の コ レ ス テ ロ ー ル 量 に応 じ たSREBPの 活 性 化 は 当初 ,N末 端 側 を切 断 す る1段 階 で 行 な わ れ る も の と予 想 さ れ て い た が , 融 合 蛋 白 質 を培 養 細 胞 に発 現 させ て切 断 を 追 跡 す る とい う入 念 な手 法 に よ り,2段 階 で 行 な わ れ る こ と が 明 ら か に さ れ た26). 合 成 直 後 の SREBPは そ のN末 端 ,C末 端 側 を細 胞 質 に,2カ 所 の 膜 貫 通 部 位 と そ の 間 の ル ー プ部 位 を小 胞 体 内 腔 に突 き 出 す 形 で 膜 上 に局 在 す る が , 第1段 階 目 の 切 断 は小 胞 体 内 腔 側 の ル ー プ部 位 の ア ミノ酸 配 列RSVLの 直 後 で 生 じ る. こ の切 断 に はRSVL配 列 中 のR( アル ギ ニ ン) とL( ロ イ シ ン) が 必 須 で あ る (図5) . こ の 切 断 に深 くか か わ る 因 子 と し て , 同 じ く小 胞 体 膜 上 に膜 蛋 白 質と して 存 在 す るSCAP(SREBP cleavage activating
protein.)が 同 定 され た27). ヒ トSCAPは1,277ア ミノ 酸 か らな り,8回 の膜 貫 通 領 域 を もち ,C末 端 側 約500ア ミノ 酸 を細 胞 質 に 突 き 出 す 形 で 膜 蛋 白質 と し て, お も に小 胞 体 膜 上 に局 在 す る. このC末 端 側 約500ア ミノ 酸 の領 域 に は,種 々 の 蛋 白質 で蛋 白 質 一蛋 白 質 結 合 に関 与 す るWDく り返 し配 列 (GH-X23-41-WDか ら な る ア ミ ノ 酸 配 列 の く り返 し) が 存 在 し, こ の 領 域 を 介 し て SREBPのC末 端 領 域 と結 合 す る. したが って , 小 胞 体 膜 上 で は一 部 のSREBPとSCAPは 互 い のC末 端 側 領 域 ど う し で 結 合 し あ い, 複 合 体 を形 成 しな が ら存 在 す る.SCAPの 抗 体 を用 い た免 疫 共 沈 殿 実 験 :の 結 果 か ら, 膜 に存 在 す るSREBP-ユ の約20% ,SREBP−2の 約40 % がSCAPと 複 合 体 を形 成 して お り, 量 的 に はSREBP に比 べ てSCAPの ほ うが 少 な い もの と推 測 され てい る28). ハ ム ス タ ーSCAPに お い て は ,298番 目の チ ロ シ ンが シス テ イ ン に ,443番 目 の ア ス パ ラ ギ ン酸 が ア スパ ラ ギ ン に 変 異 す る と, 細 胞 内 の コ レ ス テ ロ ー ル が 過 剰 の 条 件 下 で もSREBPは プ ロ セ シ ン グ を受 け て , 活 性 型 へ と変 換 す る こ とが 認 め られ て い る . さ ら に細 胞 生 物 学 的 な解 析 か ら,SREBPの プ ロ セ シ ン グ に はSCAPと の 結 合 が 必 須 で あ り, こ の 結 合 を 介 した 第1段 階 切 断 が 行 な わ れ な い 限 り は 第2段 の 切 断 は行 な わ れ ず , 活 性 型 は 生 じな い こ とが 証 明 さ れ て い る. SCAPの 構 造 で 興 味 深 い 点 は , 第2∼ 第6膜 貫 通 部 位 の5回 膜 貫 通 領 域 が , コ レ ス テ ロー ル 合 成 の 律 速 酵 素 で あ り, や は り8回 膜 貫 通 す る小 胞 体 膜 蛋 白質 で あ るHMGCoA還 元 酵 素 の 第2∼ 第6膜 貫 通 領 域 と相 同 性 が 高 い こ とで あ る .HMGCoA還 元 酵 素 は細 胞 内 の コ レ ス テ ロ ー ル 量 が 多 く な る と, 急 速 に分 解 され , そ の結 果 と して コ レ ス テ ロー ル 合 成 を抑 制 す る29). この コ レ ス テ ロ ー ル に よ り調 節 さ れ る 分 解 に は, 膜 貫 通 領 域 が 必 須 で あ り30),SCAPの 膜 貫 通 領 域 と も ど も膜 内 の コ レ ス テ ロ ー ル も し くは そ の 誘 導 体 を感 知 す る“ ス テ ロ ール セ ンサ ー ” と し て働 くこ とが 予 測 され て い る. 上 述 した ハ ム ス タ ーSCAPで 検 出 され た 変 異 も この 膜 貫 通 領 域 に 存 在 し て い る こ と か ら, 変 異 の た め に セ ン サ ー 機 能 が 破 綻 し て コ レ ス テ ロ ー ル 過 剰 条 件 下 で も SREBPを 活 性 化 す る方 向 へ と導 い て しま う と考 え る こ とは で き る. さ ら に そ の 後 , この ス テ ロ ー ル セ ンサ ー 領 域 を もつ 膜 蛋 白 質 と して,C型 ニ ー マ ン ピ ック病 原 因 遺 伝 子 産 物NPC1, コ レ ス テ ロ ー ル を 共 有 結 合 す る発 生 ・分 化 の シ グ ナ ル 伝 達 物 質 で あ る ヘ ッ ジ ホ ッ グ の 受 容 体 で あ るPatchedが ク ロ ー ニ ン グ さ れ て きた .C型 ニ ー マ ン ピ ッ ク病 に お い て は,NPC1に 変 異 が 生 じ, LDL受 容 体 に よ り取 り込 ま れ たLDL中 の コ レ ス テ ロ ー ル が リ ソ ソ ー ム か ら小 胞 体 な どへ 細 胞 内 転 送 さ れ ず に リ ソ ソ ー ム 内 に 滞 留 す る . し た が っ て , い ず れ の 蛋
表3膜 貫 通 領 域 で切 断 を受 け る膜 蛋 白 質 (文 献34よ り改 変 ) 白質 も コ レ ス テ ロ ー ル を感 知 す る機 能 を も ち 合 わ せ て お り, ス テ ロ ー ル セ ンサ ー領 域 が これ を 担 う も の と想 定 さ れ て い る が , そ の 詳 細 は まだ 不 明 で あ る . これ ま で の 実 験 結 果 か ら,SCAPに 関 して は , 直 接 コ レ ス テ ロー ル を 結 合 す る こ と も,SREBPと の 複 合 体 形 成 そ の も の が コ レ ス テ ロ ー ル に よ り調 節 を 受 け る こ と も な い こ とが 示 され て い る. 2. プ ロ セ シ ン グ 酵 素 (S1P,S2P) そ の 後 ,1段 階 目 の 切 断 を 行 な う酵 素 (S1P;site−1 protease) の ク ロー ニ ン グ が 行 なわ れ ,1,052ア ミノ酸 か らな り,1カ 所 の膜 貫 通 領 域 を もつ ズ ブ チ リシ ン様 セ リ ン プ ロ テ ア ー ゼ に 属 す る プ ロ テ ア ー ゼ で あ る こ とが 判 明 した31).S1Pは 合 成 後 , 小 胞 体 に お い て シ グ ナ ル ペ プ チ ドの 切 断 , さ ら に 自己 切 断 に よ りS1P−B( ア ミ ノ 酸138-1,052) ,S1P−C( ア ミノ 酸187−1,052)へ と変 換 す る.B,C型 が 活 性 型 で あ るが,C型 が 最 終 産 物 で 最 も存 在 量 が 多 く, ゴ ル ジ体 に 局 在 す る こ とか ら,S1P に よ るSREBPの 切 断 は ゴ ル ジ体 で 起 こ る も の と推 察 さ れ る32). 第2切 断 酵 素 (S2P;site-2protease) は ,519ア ミ ノ酸 か ら な る疎 水 性 の 高 い膜 蛋 白質 で あ る33). これ まで の 報 告 か ら, 膜 を4回 貫 通 す る と と もに,3回 程 度 膜 に 一 部 組 み 込 まれ た構 造 を と る こ とが予 想 さ れ て い る (図 5). メ タ ロ プ ロ テ ア ー ゼ に 見 られ る, 亜 鉛 結 合 部 位 を 有 す る特 徴 を も つ .S2Pに よ る 切 断 は ,SREBP-1,2 の 第1膜 貫 通 部 位 のN末 端 か ら3番 目 ア ミ ノ酸 の ロイ シ ン と4番 目 の シ ス テ イ ン の 問 で 起 こ る . こ の よ うな 膜 貫 通 領 域 の 途 中 で 酵 素 に よ る 切 断 を受 け る蛋 白 質34) とし て,SREBP以 外 に, ア ル ツハ イマ ー 病 発 症 と深 い 関 係 の あ る ア ミロ イ ド前 駆 体 蛋 白 質APP, 発 生 ・分 化 に関 与 す る膜 蛋 白 質Notch, 変 異 蛋 白 質 の 小 胞 体 内 滞 留 に よ る ス トレ ス を核 へ 情 報 伝 達 す る小 胞 体 膜 蛋 白 質 Ire1,ATF6な ど が あ げ ら れ る (表3) .Notchは 細 胞 膜結合型転写 因子SREBP 53
表 面 に膜 蛋 白質 として存在 し,
リガ ン ドで あ るデル タの結 合
に よ り膜 貫通 領域 での切 断が
生 じ,細 胞質 側 の部位 が核 へ
と移 行 し,転 写 因子 として機
能 す る. また,ATF6はbZip
領 域 を含 むN末 端 側 を細胞 質
に突 き出す形 で小胞 体膜 上 に
局 在 し, 小 胞 体 ス トレ ス に よ り膜 貫 通 領 域 で の切 断 が 生 じ,N末 端 側 が 核 へ と移 行 し, 応 答 遺 伝 子 の 転 写 を 促 進 す る35). 切 断 後 にそ の一 部 が 核 へ 到 達 し, 転 写 因 子 と し て 機 能 す る と い う 点 か ら はNotch,ATF6は SREBPと 共 通 点 が 多 い. 列 挙 した膜 蛋 白 質 の 多 くは , そ の切 断 に 何 らか の 形 で 早 期 発 症 型 ア ル ツ ハ イ マ ー 病 の 原 因 遺 伝 子 産 物 と し て 見 い だ され たPresenilinが 関 与 す る の に対 し,SREBPの 切 断 に関 し て は それ とは ま った く異 な る独 自 の機 構 で 行 な わ れ る. 3. プ ロ セ シ ン グ の 調 節 SIP℃ が ゴ ル ジ で 活 性 型 と して 局 在 す る こ とを 前 述 した が ,SCAPの 細 胞 内 移 行 な ど を調 べ た 細 胞 生 物 学 的 解 析 か ら, 次 の よ う な 調 節 系 が 存 在 す る もの と提 唱 され て い る36). す な わ ち ,SCAP-SREBP複 合 体 は コ レステ ロール 過 剰 条 件 下 で は小 胞 体 膜 上 に局 在 し,SlP に よ る切 断 を受 け る こ とな く, 核 へ 応 答 遺 伝 子 の転 写 促 進 の情 報 を 伝 達 し え な い (図6) . い っ た ん コ レ ス テ ロ ー ル 量 が 枯 渇 す る と, 複 合 体 は ゴ ル ジ体 へ と輸 送 さ れ , こ こでS1P-Cに よ る切 断 を受 け, ひ き続 きS2Pに よ る切 断 を受 け る も の と考 え ら れ る.S2Pの 作 用 部 位 は ゴ ル ジ体 か , も し くは第1膜 貫 通 領 域 を含 むSREBP のN末 端 側 が も う一 度 小 胞 体 へ と戻 り, そ こで 切 断 を 受 け る の か 詳 細 は 不 明 で あ る.SCAP-SREBPの 細 胞 内 移 行 にSCAP分 子 内 の 膜 貫 通 領 域 に存 在 す る ス テ ロ ー ル セ ンサ ー が 働 い て い る も の と予 想 さ れ る が , どの よ う な機 構 で そ れ が 機 能 し て 複 合 体 の 細 胞 内 移 行 が 制 御 され て い る か に つ い て は , 今 後 の 解 析 を 待 つ しか な い . 実 際 , コ レ ス テ ロ ー ル 本 体 か あ る い は そ の誘 導 体 の い ず れ が この プ ロ セ シ ン グ 調 節 の 真 の レギ ュ レー タ ー な の か に つ い て も不 明 な 点 は 多 い. 興 味 深 い こ とに , 培 養 細 胞 を ス フ ィ ン ゴ ミエ リ ナ ー ゼ で 処 理 し, 細 胞 膜 中 の ス フ ィ ン ゴ ミエ リ ン量 を減 少 さ せ る と, 細 胞 膜 内 の コ レ ス テ ロ ー ル は 小 胞 体 へ と移 行 す るが , これ に伴54 蛋 白質 核 酸 酵素 Vol.45 No.16 (2000) 図6コ レ ス テ ロ ー ル に よ るSREBPプ ロ セ シ ン グ 調 節 機 構 の 模 式 図 SREBP−SCAP複 合 体 は 小 胞 体 膜 上 に存 在 し, コ レス テ ロ ー ル が枯 渇 条 件 下 で ゴル ジ 体 へ と輸 送 され , そ こ に存 在 す る 活 性 型SIPに よ る 切 断 を 受 け, ひ き続 きS2Pに よる切 断 を受 け, 活 性 型 SREBPが 細 胞 質 へ と遊 離 され , 核 へ と輸 送 さ れ, 応 答 遺 伝 子 の転 写 を調 節 す る. 一 方 , コ レス テ ロ ー ルが 過 剰 条 件 下 で は ,SREBP-SCAP複 合 体 は小 胞 体 膜 上 か ら輸 送 さ れ る こ とな く, プ ロ セ シ ン グ は進 行 しない . そ の結 果 , 活 性 型SREBPは 生 成 され ず , 核 内 で の応 答 遺 伝 子 の調 節 は 行 なわ れ な くな る. (文 献3よ り改 変 ) い, 細 胞 内 の総 コ レ ス テ ロ ー ル 量 は 変 化 し な い も の の 小 胞 体 膜 中 の コ レ ス テ ロ ー ル が 上 昇 し た こ と に よ り, SREBPの プ ロ セ シ ン グ は 阻 害 さ れ る37). また , コ レス テ ロ ー ル よ りそ の代 謝 物 で あ る 酸 化 ス テ ロ ー ル に よ り 強 い 転 写 抑 制 活 性 の あ る こ と は古 くか ら知 られ て お り, 最 近 ク ロ ー ニ ン グ さ れ た コ レ ス テ ロ ー ル の25位 を水 酸 化 す る酵 素 , コ レス テ ロ ー ル25一 ヒ ドロ キ シ ラー ゼ を過 剰 発 現 さ せ , 細 胞 内 の コ レ ス テ ロ ー ル を積 極 的 に 酸 化 ス テ ロ ー ル へ と変 換 させ る と, や は りSREBPの プ ロ セ シ ン グは抑 制 され る38). 以 上 の 知 見 は , 小 胞 体 膜 内 の 酸 化 ス テ ロ ー ル 量 がSCAPの ス テ ロ ー ル セ ンサ ー に感 知 さ れ る こ と を 予 測 させ るが , そ の 実 体 は 明 ら か で な い .
Ⅳ
. 核への情報伝達機構
SREBP−1も し くは2の 活 性 型 を直 接 培 養 細 胞 に発 現 さ せ 細 胞 内 の 局 在 を観 察 す る と, 核 へ の 集 積 が 認 め ら れ る. しか し な が ら, こ れ ら分 子 内 に は核 移 行 シ グ ナ ル に 類 似 し た ア ミ ノ酸 配 列 は認 め られ ず , ど の よ うな 機 構 で核 へ 輸 送 さ れ る か は 不 明 で あ っ た . そ こで 筆 者 ら の グ ル ー プ は, 組 換 えSREBP-2( 活 性 型 )を 調 製 し, ジ ギ トニ ン処 理 を し たHeLa細 胞 を 用 い て核 輸 送 実 験 を 行 な っ た .SREBP−2は 細 胞 質 を加 え た 条 件 下 で , 温 度 依 存 的 に 核 へ輸 送 さ れ , ま た この 輸 送 はATPを 必 要 と し,WGA(wheat germ
agglu-tinin) 処 理 に よ り 核 へ の 輸 送 は 阻 害 され た . 以 上 の 結 果 は,SREBPが 能 動 的 な 核 膜 孔 通 過 機 構 に よ り輸 送 さ れ る こ と を 示 唆 し て い る. こ の SREBPの 核 輸 送 が ,SV40 ラー ジT抗 原 の 核 移 行 シ グ ナ
ノレ (nuclear localization sig一
nal;NLS) を 介 した輸 送 機 構 と同 一 か 否 か を 明 ら か に す る 目的 で , 核 移 行 シ グ ナ ル を 付 加 し た ア ル ブ ミ ン を過 剰 に加 え, 阻 害 効 果 を観 察 した . 核 移 行 シ グ ナ ル を付 加 した 蛍 光 蛋 白 質 の核 輸 送 は 過 剰 量 の 核 移 行 シ グ ナ ル 付 加 ア ル ブ ミン に よ り阻 害 さ れ た が ,SREBP-2の それ は阻 害 を 受 け なか った . さ らに , 結 合 実 験 か ら,SREBP−2は 核 移 行 シ グ ナ ル と結 合 す るimportinα とは結 合 し な い こ と が 明 らか に な り,importinα /β との 複 合 体 を 形 成 して 核 輸 送 さ れ る核 移 行 シ グ ナ ル 含 有 蛋 白 質 と は異 な る機 序 で核 輸 送 さ れ る こ と が 推 察 され た . そ こで 組 換 えSREBP−2と 結 合 す る 因 子 を細 胞 質 画 分 か ら探 索 し た結 果 ,importinβ が 見 い だ され て きた. この結 合 は,Ran−GTPに よ り解 離 し,Ran−GDPに よ り影 響 を受 けな か った . この 知 見 に 基 づ い て,importin β,Ran,NTF2(p10) を添 加 し, 核 輸 送 を 観 察 す る と, この 三 者 共 存 下 でSREBP-2は 核 へ 輸 送 され た39》. した が ってSREBPはimportinβ と複 合 体 を 形 成 して 核 へ 輸 送 さ れ る新 規 な核 蛋 白 質 とみ な す こ とが で き る. この 筆 者 らの 発 見 と時 を 同 じ く,importinβ が 直 接 結 合 し核 輸 送 さ れ る蛋 白質 と し て , ヒ トT細 胞 白 血 病 ウ イ ル ス1の 調 節 遺 伝 子 産 物 で あ るRexが 報 告 された40). Rexの 場 合 , アル ギ ニ ン残 基 に 富 む領 域 がimportinβ に認 識 され る が ,SREBPに は それ に相 当 す る配 列 は見 あ た らな い . そ こでSREBP−2のimportinβ 結 合 部 位 を 明 ら か に す るた め に,importinβ 組 換 え体 , 部 分 欠
損SREBP−2組 換 え体 を作 製 し,in vivo結 合 実 験 を行
膜結合型転写因子SREBP 55 図7GFPとsREBP-2 HLH-Zip領 域 (ア ミ ノ 酸343-460) と の 融 合 蛋 白 質 の 模 式 図 とimportinβ を 介 した 核 輸 送 ジ ギ トニ ン処 理 に よ り細 胞 膜 に穴 を 開 け たHeLa細 胞 を用 い て, GFP-HLH-Zip蛋 白 質の 核 輸 送 を観 察 した ,importinβ のみで は核 膜 へ の 結 合 が 見 られ , 他 の因 子 を加 え る と核 内 へ の 集 積 が認 め ら れ た . な っ た. そ の結 果 ,basic-rich領 域 を欠 い たHLH−Zip 領 域 がimportinβ と結 合 す る こ とが 明 らか に な っ た.
こ の領 域 をGFP(green fluorescent protein) と連 結
した 融 合 蛋 白質 を調 製 し ,importinβ ,Ran,NTF2 (p10)共 存 下 で核 輸 送 実 験 を行 な う と, 融 合 蛋 白 質 は 核 へ と輸 送 され , この 部 位 がimportinβ 依 存 的 な核 輸 送 に必 須 で あ る こ とが 示 され た (図7) . お そ ら くはZip 配 列 を 介 した2量 体 形 成 後 ,importinβ に よ り認 識 さ れ る もの と推 測 し て い る.SREBPと 同 様 の構 造 を もつ Eボ ック ス 認 識 転 写 因 子 で あ るc−Myc,USF2な どは, NLS様 の 配 列 を介 してimportinα /β依 存 的 な輸 送 機 構 に よ り輸 送 され る事 実 よ り,SREBPのHLH−Zip領 域 の 機 能 特 異 性 の 原 因 を さ ら に 詳 細 に調 べ て い く必 要 が あ る . また ,SREBP−1の 核 輸 送 に つ い て も約70% ア ミノ酸 相 同 性 を保 持 したHLH−Zip領 域 を介 して 同 様 の機 構 で 行 な わ れ る もの と予 想 され る. 小 胞 体 か ら核 へ情 報 を 伝 達 す るSREBPの プ ロ セ シ ン グ, 核 輸 送 機 構 を図8に ま とめ た . お わ り に 膜 結 合 型 転 写 因 子 で あ るSREBPは , そ の 局 在 , 活 性 化 様 式 , プ ロ セ シ ン グ 機 構 , 核 輸 送 機 構 の い ず れ も き わ め て 特 異 性 が 高 く, 生 物 は進 化 の 過 程 で 多 大 な労 力 を 費 や し そ の 特 異 性 を 獲 得 し た もの と予 想 され る. この 事 実 は,SREBPが コ レス テ ロール 代 謝 に 留 ま ら ず , 脂 肪 酸 代 謝 , 糖 代 謝 まで を も含 む広 範 な 生 理 現 象 の 制 御 に か か わ って い る こ と とよ く一 致 す る. す 図8小 胞 体 膜 上 のSREBPか ら核 へ の 情 報 伝 達 機 構 の 模 式 図 小胞 体膜 上 でSREBP-SCAP複 合 体 と して存 在 す るSREBPは , 細 胞 内 の コ レス テ ロ ー ル が 減 少 した こ と を察 知 し, ゴル ジ体 へ と移 行 し, こ こで プ ロセ シ ン グ を受 け ,N末 端 側 が細 胞 質 へ と遊 離 さ れ る .HLH一Zip領 域 を介 した2量 体 形成 を したSREBPをimpor-tinpが 認 識 し, 核 へ と輸 送 す る . 核 内 で は応 答 遺 伝 子 の プ ロモ ー タ ー上 に 存 在 す るSRE配 列 に結 合 し, 多 くの遺 伝 子 の 転 写 を促 進 す る .MTP遺 伝 子 に関 して は そ の 転 写 を抑 制 す る . な わ ち , そ こ まで して 厳 密 に 活 性 を制 御 す る必 要 の あ る , 代 謝 調 節 因 子 と し て 中 心 的 な 役 割 をSREBPは 担 っ て い る こ とを 意 味 し て い るの で は な か ろ うか . 細 胞 生 物 学 的 な 観 点 か ら, また 高 脂 血 症 , 肥 満 症 と い っ た 生 活 習 慣 病 の 予 防 ・治 癒 とい う観 点 か ら も,SREBPの 機 能 特 性 , 活 性 化 機 構 の 詳 細 を明 らか に し て い く試 み は , 今 後 ま す ます 多 くの 知 見 をわ れ わ れ に与 え て くれ る も の と期 待 した い . 最 後 に, 本 稿 で 紹 介 したGoldstein,Brown両 博 士 の研 究 グル ー プ か らの 多 くの研 究 成 果 に , 筆 者 を 含 む 数 人 の 日本 人 研 究 者 が 参 画 して い た 事 実 を 申 し述 べ た い. こ こ6,7年 で 急 激 な進 展 を見 せ た この研 究 分 野 に お い て , 今 後 は 日本 か ら も情 報 を発 信 して い く こ とが 必 要 で あ る と同 時 に, そ れ は両 博 士 の も とで 研 究 修 業 を して きた 者 の 責 務 の よ う に も感 じて い る. 本稿で紹介 した筆者 らの研究 は, 東京大学先端 研 児 玉龍彦教 授,川邊良樹博 士 (現 中外製薬),大阪大学大学院医学系研究科 米田悦啓教授, 今本尚子助手 (現 国立遺伝学研 究所 助教授 ),名
56 蛋 白 質 核 酸 酵 素 Vol.45 No.16 (2000) 越絵 美博士 との共同研究であ り,大阪大学大学院 薬学研究科 にお いて前田正知教授,井上順博士 (現 新潟大学 医学部 助 手), 宮本 亘,岡本章裕諸兄 ら とともに行 なわれた研究 であることを明記 し, ここに感謝申 し上 げます.
文
献
1)
Yokoyama, C., Wang, X., Briggs, M. R., Admon,
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C., Wu, J., Briggs, M. R.,
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3) Wang, X., Sato, R., Brown, M. S., Hua, X., Gold
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