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香川県高松市屋島におけるミサゴPandion haliaetusの繁殖-香川大学学術情報リポジトリ

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馬 場 智 子

〒70ト4271岡山県邑久郡長船町長船216

BreedingoftheospreyPandionhaliaetusatYashima,Takamatsu,

kagawaPrefecture

SatokoBaba,2上ら05αゐ〟〝ち05α血〝e−CJzqO鳥〟−g〟〝,0桓α朋仏和ノー427J,ノ呼α〝 ゴの行動を営巣地とその環境,ペアの形成,求 愛給餌,造巣行動,産卵・抱卵・解化・育雛, 巣立ちに分けて,断片■的に記録したものであ る。 著者は,2002年および2003年に,屋島に営巣 するミサゴのうち1ペアについて−観察を行っ たため,交尾回数・親鳥の巣中時間・餌の持ち 込み回数・巣材の持ち込み回数の季節的変化お よび餌の持ち込み方向について報告する。 調査地・調査方法 調査地は,香川県高松市屋島西町,屋島東町 および屋島中町にわたる丘陵(最高標高292m) 地域である(図1)。香川.県東部の瀬戸㌧内海に画 し(南北340 20−23’,東西13404−8’,5..6× 6.OkIポ),針葉樹では主にアカマツダ加脱ぎd渕血一 ノ払用とクロマツR血〝占erg〟カミ多く,広葉樹では 主にウバメガシe〟e化〟叩ん勒′′・〃e¢んね5,コナラe 躍′・′d払およびクヌギe.αC〟ぬ5吉例〃が多い。平野 部は,住宅地,田畑,およびみかん果樹園に利 用されている。海面は漁場として利用されてい る。 本調査地で川口(印刷中)により発見された

10巣(Yl∼YlO)は,2002年にそのまま確認

され さらに2003年にミサゴが頻繁に出入りす る木が見られ,その上部に新たに2巣を確認し たのでYll・Y12として図1に巣の位置を記し 摘 要 2002年および2003年に,香川県高松市屋島で 繁殖中の1ペアについて巣中における交尾回 数・親鳥の巣中時間・餌の持ち込み回数・巣材 の持ち込み回数の季節的変化および餌の持ち 込み方角について調べた。2003年には,ミサゴ の巣がハシブトガラスCo/γ〟5∽αC′0/毎〃C如ぶに 攻撃され,卵寧化直後のヒナが見られなくなっ た。その後,親鳥は巣を守らなくなり交尾を再 開した。一・方,繁殖に成功した2002年では,親 鳥はヒナが解化した後も巣を守り,劇日の餌の 持ち込み回数は解化後著しく増加した。巣を守 る時間はヒナの成長とともに減少した。また, 2003年における餌の持ち込み時の行きと戻り の方向は,はとんど新川・春日川・詰田川の河 口の方向だった。

は じ め に

ミサゴ劫Jdわ〃ゐαJiαe血5は魚食性のタカであ る。日本では繁殖行動についての詳細な研究は 少なく,1ペアについての交尾から巣立ちまで の観察の1例(川口,2001)と,新潟県のミサ ゴの分布状況,生息状況,および繁殖活動をま とめたもの(宮越・清水,1998)があるのみで ある。特に,後者の繁殖活動の調査は,新潟県 で確認されている巣において観察されたミサ

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図1.調査地とミサゴの巣の分布.●巣の位置(Yl∼Y12),×観察地点(A∼D)

た。Y9について,北嶺東側の遊歩道沿いの展 望台であるBまたは屋島東町の海岸沿いの防

波填であるCより2002年3月16日から8月11

日に,日出から日没までの観察を7回(1日の 観察時間525∼912分;平均時間±標準偏差= 750.7±147.1分),および数分∼数10分の観察 を16回行った(図1)。Y5について,屋島西町

の池埋立跡地であるDより2003年3月4日か

ら8月10日までに,日出から日没までの観察を 36回(1日の観察時間474∼862分;平均時闘士 標準偏差=750..6±76一.5分),および数分∼数10 分の観察を13回行った(図1)。 つぎに,ミサゴが行動を起こした時刻を記録 した。ミサゴが巣にいる時や出入りの時は,巣 が視野に入るようにセットしたフィールド・ス コープ(GEOMA−65−S60倍,ビクセン製)で観 察し,ミサゴが巣から離れて移動する時には双 眼鏡(Action8×408岬20,ニコン製)で追跡し

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を見て観察記録を補った。 雌雄の区別について−は,2002年では観察初期 には明白ではなかったが,主に抱卵を担ってい る個体を雌,もう−・方を雄とみなすと,前者は 茶色が薄め胸帯が漉くて範囲が広く,飛翔時に 右翼の初列風切の端に白い部分があるという 特徴があった。一一方,後者は茶色が漉く鮮やか で茶色と白色の区別がはっきりし胸帯が薄く 小さめで,前者より/ト柄という特徴があった。 2003年では交尾時に上側の個体を雄,下側の個 体を雌と判断し,また主に抱卵を担う個体を雌 とみなした。この雌雄の外見上の特徴は,2003 年の観察の初期には特に確認できなかったが, 4月25日に雄と考えた個体の左翼の次列風切 の端に欠損が確認できたので,飛翔時にはその 欠損によって雌雄を判定した。 交尾については,交尾が行われた時刻,行わ れた場所が巣内かその他かを記し,餌の持ち込 みについては,巣を出た時刻と持ち込み時刻, 雌雄の区別を記し,行きと戻りの経路は,国土 地理院発行25,000分の1の地形図(高松北部) を3い7倍に拡大した地図上に線で記録した。そ して,その線を巣を中心にして分けた8方向 (北一北東,北栄一東,東一両束,南東【南, 南一南西,南西蠣西,西一北西,北西一北)で 分類した。巣材の持ち込みについては,持ち込 み時刻,雌雄の区別,および種類(菓無しの枝・ 乗付きの枝・樹皮・その他)について記した。 親鳥の巣中時間は,観察時間中に親鳥のいずれ かが巣内にいた時間を割合で表した。 カラスの接近については,ハシブトガラス Co′γ〟5仇〃C′・〝句脚戎“またはハシボソガラスC. c(〉Jp〝eが営巣木にとまった場合,その数を時間 経過に沿って記録した。1日のうち最も多くの カラスが同時に営巣木にとまった数を,その日 の「カラス接近最大数」とした。ハシブトガラ スかハシボソガラスかわからない場合は単に カラスと記録した。 ラスの接近最大数,交尾回数,親鳥の巣中時間, 魚の持ち込み回数,巣材の持ち込み回数,およ び観察時間の季節的変化(図2)によると,カ ラスの接近が繁殖期におけるミサゴの行動に 大きな変化を与えている。 交尾は2003年3月26日まで行われ,その後見 られなくなると共に親鳥の巣中時間は100%に なった。一・方で3月26日以降抱卵姿勢が確認さ れるようになった。しかし,ハシブトガラスが

5月9日と5月14日にそれぞれ18羽と20羽,巣

に接近してミサゴの巣を攻撃した。すると,ミ

サゴの抱卵は5月9日を最後に見られなくな

り,その後5月19日から再び交尾が観察される ようになった。また,5月9日以降,親鳥の巣 中時間が減少した。カラスは頻繁に巣に接近 し,巣内にも侵入するようになった。 以上のような観察から,2003年3月10日∼6 月26日を繁殖の段階で次の3期に分けた。初期 の交尾が連続して行われた期間(3月10日∼3 月28日)をⅠ期,18羽のカラスが接近する前の

抱卵期間(4月1日∼5月6日)をⅡ期,18羽

のカラスが接近した日以降(5月9日∼6月26 日)をⅢ期とした。 交尾は繁殖期間Ⅰ・Ⅲ期合わせて48回観察さ れ,その92%(44/48)は巣上で,そのほか4 回は営巣木の枝上で行われた。また,交尾後, 雄は48回申47回雌の上から飛び立った。そして 少し付近を飛び回った後巣材を採って戻った り,魚を採りに行ったりすることが多かった。 つぎに,魚の持ち込みは繁殖期間Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ 期全体にわたって行われ,1日の持ち込み回数 はⅠ・Ⅱ・Ⅲ期で有意な差は見られなかった (Mann−Whitney,sUtest,p>0..05)。特にI期で は魚の持ち込みが20回確認されたうち7回は 雌の食事後に交尾が行われ 2回は雄の食事後 に行われた。また,Ⅲ期の交尾後,抱卵には入 らなかった。 巣材も繁殖期間Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ期全体にわたって

(4)

確)警カラスの接近最大数 」 0 (回)コは 18 5 0 [ 交尾回数

‘,∫\、、J・六1

交尾再闊

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8/鷲6 rlt,−11r■l・r.■−L・ニー一■−1㌻..11..1−− rぎ.,一F−.⊥F L.−.i▼......1﹂ 00 1 ︶ 親鳥の巣中時間 r㌧ヰ/劇 ̄脚 ̄州−■■4 ̄−一旬ヰ愴●1 (%)

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丘/9 (回 魚の持ち込み回数 (回)1らF 基材の持ち込み回数 f 二二二 OL⊥L⊥⊥−⊥−⊥」−⊥

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≡三 Ⅱ 如 Ⅱ 期 ヵラス1¢羽臥ヒが接近

☆☆

200き 3月 魚持ち込み−・∈トー・ 推近に醜‡ (XIま不滞在) 図21・カラスの接近最大数,交尾回数,親鳥の巣中時間,魚の持ち込み回数,巣材の持ち込み回数, および観察時間の季節的変化(2003年)

(5)

は,親鳥は97∼98%(6月6日:780/805,6

月13日:752/762)巣内におり,ヒナの成長と ともに巣中時間は減少していった。以上のこと から2002年の繁殖期では抱卵期(Ⅱ期)が5月 21日∼5月23日,ヒナの贈化後(Ⅳ期)が6月 6日∼7月20日となった。しかし,Ⅳ期は2003 年には出現しなかった。魚の持ち込み回数は,

Ⅱ期では1,2回だったのがⅣ期では6,7回

と増加した。以上2002年の繁殖期の状況を図3 の下部にまとめた。 2003年の魚持ち込み時の行きと戻りの経路 は(図4),行き戻りともに南西一西の方向,つ まり新川・春日川・詰田川の河口の方向(図1) がはかの方向に比べて著しく多かった。 巣材の種類は枝(菓無し),枝(乗付き),およ び樹皮が確認されⅠ・Ⅱ・Ⅲ期とも枝(菓無 し)が多かった。しかし,樹皮と枝(乗付き) はⅢ期ではまったく見られなくなった。また, 巣材持ち込みを行った性別が確認できたのは 29回のみで,雄が23回,雌が6回であり,雄が 有意に多かった(ガ=15.2,d∫=1,p<0.05)。 以上2003年の繁殖期の状況を図2の下部にま とめた。 一・方,2002年における親鳥の巣中時間,魚の 持ち込み回数,および観察時間の季節的変化 (図3)によると,抱卵中(5月21日および5 月23日)における親鳥の巣中時間は2003年と同

様に100%(5月21日:567/567,5月23日:598

親鳥の具申時間 ●●−−叫−−− ●一一・・−■

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____.....L⊥______⊥」−−−− 鍋1摘 肪 Ⅳ13 魚の持ち込み回数 _

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交尾−−−−・…−・一…−−−○−−−・ (X‡ま不和 図3..親鳥の巣中時間,魚の持ち込み,および観察時間の季節的変化(2002年)

(6)

戻りの方向 総数=82(不明42) 給数=86(不明48) 図4..Y5における魚持ち込み時の行き戻りの方向(2003年,3∼6月) って損なわれ,ミサゴが巣を放棄した例がある が,その後同じ年に再度繁殖を試みたという報 告はない。 交尾が行われた場所について,そのはとんど 92%が巣上であったことは,森岡ほか(1995) やGI・een(1974)の報告と同じである。しかし, 2者の報告のように営巣木付近の木の枝上で は行われることはなかった。一・方,今回の調査 では営巣木の枝上で4回行われており,営巣木 の枝上における交尾は川口(2001)によっても 報告されている。 2003年では,交尾が雌の食事後に行われるこ とが度々見られた。これに関連して,宮越・清 水(1998)によると,雌が餌を与えられた後に 交尾行動が度々見られ,交尾は雌が餌を食べ始

めてから2∼3分後と食べ終わった後に行わ

れることが多かった。しかし,今回の調査では 宮越・清水(1998)のように雌が餌を食べる途 中で交尾を行うことはなく,雌が止まり木で餌 を食べ終え巣に戻った後に専ら行われた。ま た,宮越・清水(1988)によると,交尾は雄が餌 や巣材を巣に持ち込んだ後に多く行われたよ うであった。しかし,今回の調査でをま餌を持ち 考 察

今回の調査では2003年3月26日を最後に交

尾が見られなくなり,一・方が抱卵の姿勢をとる ようになった。こ.れに関連して,GI・een(1974) によると,交尾は抱卵のはじめ2,3日までは 観察され Birkhead&Lessells(1988)によると 産卵から7日後にも回数は少ないが確認され ていることから,ペアは3月26日より前に産卵 し抱卵に入ったと判断できる。抱卵開始後34∼ 41日で醇化することから(森岡ほか,1995),解

化は4月29日∼5月6日あたりだと予想され

る。したがって18羽のカラスが接近した5月9 日には,巣内には筋化直後のヒナがいたと考え られる。5月9日を境に親鳥の巣中時間が減少 し巣を守らなくなり,カラスが自由に巣に出入 りするようになったことから,巣中のヒナはカ ラスにより襲われたと考えられる。さらに,そ の後5月19日以降に交尾が行われたのは再度 繁殖を試みたと予想されるが,以降抱卵の姿勢 は見られなかったので産卵にlま至らなかった のだろう。宮越・清水(1998)によると,新潟 県でも繁殖期間中に卵や雛がカラスなどによ

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今回の研究を行うにあたり,ミサゴの情報・ 文献の提供,御指導をいただいた川口敏氏,ま た,研究機材・文献の提供をしてくださった九 州大学大学院比較社会文化研院非常勤研究員 の馬場芳之氏に心から御礼申し上をヂる。最後に, 終始御指導いただいた香川大学教育学部生物 学教室の金子之史教授,また同教室の諸先生方 に感謝の意を表す−る。 引 用 文 献 馬場智子.2004..香川県高松市屋島のミサゴ アα〝dわ〝んαJよ〃e血5の採餌と潮汐の関係.香川 生物(31):23−24. Birkhead,TR&Lessells,C.M.1988,.Copulation

behaviour of the osprey Pandion haliaetus.・

AnimalBehavior36(6):1672−1682. Green,R1974… BTeeding behaviour ofospreys

Pandion haliaetu5in Scotland,.TheIbis l18

(4):475−490い 川口 敏一.2001.香川県におけるミサゴ撤〝− dわ〝ゐαJfαeぬ5の繁殖例..香川生物(28):13− 14一. 川口 敏.印刷中..香川県東部におけるミサゴ 撤〝dわ〝んαJ∫αef〃5の生息場所り日本鳥学誌52. 宮越−り俊・清水保子.1998.新潟県におけるミ サゴの生息状況.7次鳥獣保護次事業計画 鳥獣保護対策調査報告書(新潟県):63−78 頁.. 森岡照明・叶内拓哉・川田隆・山形則男“1995。 図鑑日本のワシタカ類.文一・総合出版,東京, 631頁.. そのまま飛び立って巣材をとりに行くことの ほうが多いようであった。 2003年における巣材持ち込みの季節的変化 に、ついて,持ち込みは繁殖期Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ期を通 して−持ち込まれたが,Ⅲ期ではⅠ・Ⅱ期に比べ て減少した(図2)。これは,GI・een(1974)に よる巣材の持ち込みは繁殖シーズン中,数は少 なくなるが続くという傾向と類似していた。 繁殖に成功した2002年における親鳥の巣中 時間は抱卵中100%で,ヒナ解化後にはヒナの 成長とともに減少していった(図3)。森岡ほか (1995)によると,親鳥はヒナが小さいうちは ヒナを抱きつづけ,雌はその後も巣にとどまっ てヒナを見守る。これも28日齢までで,その後 は巣の近くの止まり場から見守るという。つま り,巣中時間は筋化直後で長く,ヒナの成長に 伴い短くなっていくということであり,今回の 結果と同様であった。 また,2002年の魚の持ち込み回数は,筋化後 著しく増加した(図3)。0陀en(1974)による と1日に巣へ運び込まれる魚の数は卵字化後著 しく増加し,さらにヒナが成長するにつれて増 加する。特に卯寧化後約50日で最大になったとい う。贈化後の持ち込み増加は今回の調査でも同 様であったが,ヒナの成長に伴う増加や魚の持 ち込み数のピークは見られなかった。 2003年,Y5へ魚を持ち込んだ場合の行きと 戻りの経路は南西一西の方向,すなわち新川・ 春日川・詰田川が合流する河口の方向だった (図4)。また,馬場(2004)によると,この河 口付近では2002年に採餌の調査を行ったとこ ろ,採餌のためにダイビングする多数のミサゴ を確認している。以上のことからY5のミサゴ

参照

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