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投資と資金調達-香川大学学術情報リポジトリ

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(1)

香 川 大 学 経 済 論 叢 第69巻 第2・3号 1996年11月 333-342

研究ノート

投資と資金調達

はじめに 小稿では,企業の投資行動の背後で行われる資金調達を明示的に組み込んだモデル を考察する。特に,資本市場が不完全な場合の企業の投資行動および財務政策を分析 する。このテーマに関する分析では,資本市場の完全性の仮定を維持し,かつ均斉成 長経路(steadystate path)に焦点を当てることが多いが,小稿では,資本市場の不完 全性を想定し, かつ非均斉成長経路を明示的に考察する。このような状況を分析した 研究としては,Ekman (1982), Loon (1983), Schijndel (1986), Sinn (1987), Kort (1988,

1989), J orgensen and Kort (1993)などがある。 周知のように, ジョルゲンソン型の新古典派投資理論は,有限値の投資水準を導出 することができないという特徴を持っている。これに対して,投資行動に伴う調整費 用を導入することによって,理論的には, この点は克服されたと考えられる。さらに これとは別に,企業の財務面,すなわち投資資金の調達面での制約を導入するのも有 限値の投資率を導出する有力な方法と考えられてきた。上記文献もすべて投資行動の 際の資金制約を導入している。 小稿では,投資に伴う調整費用と資金制約をともに明示的に導入したモデルを考察 する。このような試みとしては,すでに, Jorgensen and Kort (1993)があるが,彼ら のモデルでは,投資資金として内部留保のみが仮定され,負債(社債)の利用が考慮 されていない。小稿では,内部留保と負債の利用可能性を仮定したとき,企業の投資 および財務政策がどのような特徴を有するかを分析する。

(2)

334- 香川大学経済論叢

6

1

6

II モデル 資本Kと労働Lを利用しである 1種類の生産物を生産する企業を想定する。まず, 簿価で表示されたこの企業の資産は資本ストックだけと想定し,負債

B

と自己資本

E

(equity capital)の和で表されるものとする。

K=B+E

(1) ここで,負債は社債だけとし,銀行借り入れはないものとする。また,自己資本は内 部留保

R

(retained earnings)と資本金(株式)から構成されるものとする。なお, 守 、 ー こでは一定の資本金で設立され,かつ後述の許容される最大限の社債を発行して出発 する企業を想定する。その際,簿価で表示された自己資本と社債の発行額に等しい資 本ストックが初期時点ですでに購入され設置されているものと想定する。従って,次 式が成立する。

Ko

=

Bo+

E

o

(

K

o

,Eo

B

o

:

positive constant) ( 2 ) 次に,この企業の売上額Xは,賃金ω

'

L

,投資に伴う調整費用

C

(I), 減価償却

aK

, 負債に対する利子支払

rB

,配当

D

として支払われ,残額が内部留保

R

となる。なお 以下が仮定される。 C(I)

>

0 for all 1

>

0, C(I)

<

0 for all 1ぐ0,C( 0 )

=

0, C"(I)

>

0 for aIl1 以上より次式が得られる。

X =

ω

'L+C

(I

)+aK+rB+D+R

( 3) さらに,売上額から賃金を差し引いた営業利益πは,労働に関して最大化され,資 本ストックKの関数として次のように表されるものとする。

π(K)==m?x(X

ω

L

)

(

4

)

ここで,7r

K

>

0

,ね

K<O

と仮定される。なお本稿では分析を簡単にするため企業に 関する税制を考慮していなし〉。さて, (3)(4)式より次式を得る。

π

(

K

)

=

C

(I

)+aK

rB+D+R

( 5 ) この (5)式は次のように表すこともできる。

π

(K)-C

(I

)-aK-rB

=

D+R

(

6

)

(6)式から明らかなように,営業利益から投資に伴う調整費用,減価償却費および負債

(3)

617 投資と資金調達 -335ー 利子を差し引いた残額は,配当または内部留保となる。なお

(

6

)式は, (1)式を考慮 すると次のように表すこともできる。 π

(K)-C

(

I

)

(

r

十α

)K+rE

=

D+R

(7) さらにここでは新株発行はないものと仮定される。従って,自己資本は内部留保によっ てのみ増加するので,

E=R

( 8 ) である。また(1)(7)

(

8

)

式から次式を得る。

E =

π

(K)-C

(

I

)

(r+

α

)K+rE-D

( 9 ) ところで, この企業に関する現金の流れを考慮すると,次式が成立しなければなら ない。

X+B

=

wL+rB+I+C

(

I

)+D

(10) (10)式は,(4)式を考慮すると次のように表される。

B+E=I-aK=K

(11) すなわち,純投資のための資金は社債の発行と自己資本の増加(内部留保) によって 調達されなければならない。なおここでは社債の発行には次のような制約があると仮 定される。

B

hE(

h

>

0

a

n

d

c

o

n

s

t

a

n

t

)

(12) すなわち,負債一自己資本比率に上限が存在するという仮定である。ここではこれを 「負債一自己資本制約」と呼ぶことにする。なお(12)式は(1)式を考慮すると次のよ うに示すこともできる。

(l+h)E-K

孟O (1

3

)

さらにここでは,企業の外部金融資産等の保有を考えないので, B 孟O (14) と仮定される。ここではこれを「負債の非負制約」と呼ぶことにする。 (14)式は,

K-E

主主

O

(15) と表すこともできる。さらに,配当に関して次の制約 (f配当の非負制約」と呼ぶこと にする) を仮定する。 D 注O (16)

(4)

-336-ー そして資本蓄積方程式として,

K

=

J-aK

K

(

O

)

=品

>0

が仮定される。 香川大学経済論叢 618 (1

7

)

以上を要約すると,企業の直面する最適化問題は以下のような無限期間不等号制約 条件付き最適制御問題として定式化される。

M

a

x

l

∞D(t)e-吋dt S.t

K

=

J-aK

K

(

O

)

=

Ko

>

0

E =π(K)-C(

J

)

(r+α)K+rE-D

K=B+E

(1+

h)E-K

O

K-E

O

D

O

なおここで, iは(株主の)主観的割引率である。 III .. 最適性の必要条件 (18)

(

1

7

)

(

9

)

(1) (13) (15) (16) さて上、記無限期間不等号制約条件付き最適制御問題に対する必要条件は,内点解の 存在を仮定すると以下のように示される。 まずラグランジュ関数を,

W = D +

(

J

-aK)

十λ2[π

(K)-C(

J

)

(r+

α

)K+rE-D]+

μ1

[

(

1

+

h)E -K]

+μz(

K-E)+

μ

:

3

D

(19) とおくとき,以下の条件を満たす関数,A1, A2,μ1,μ2,μ3が存在しなければならない。

K

=

J-aK

K

(

O

)

=

Ko

>

0 (17) E= π(K)-C(J) 一 (r+ α~+Æ-D ~ λ1-A2C'(J)

=

0 (20) 1-A2

+

μ:3=

0

ん =

(

i

+α)A1

+[(r+

α)ー ダ

(

K

)

]

λ2+μ1-fJ.2 A2

=

(

i

-r)A2一

(l+h)

μ1+μz

(

2

1) (22) (23)

(5)

619 μ1孟0,μ1[(l+h)E-K]= 0 μ2主主 0, f1.2(K -E) =

0

μ3孟0

μ

3D

= 0 投資と資金調達 -337-(24) (25) (26) こ こ で ん ん は

c

u

r

r

e

n

tv

a

l

u

e

の補助変数

(

c

o

s

t

a

t

ev

a

r

i

a

b

l

e

)

であり, μ1,μ,2,仰はそ れぞれ制約条件(13)(15) (16)式に対応するラグランジュ乗数である。 さらに以下の横断条件が仮定される。

l

i

m

e

x

p

(

-il)AI(t)孟

0

l

i

m

e

x

p

(

-

it)A

μ

)K(t)

=

0

(27)

l

i

m

e

x

p

(

-

it)ん(t)孟

0

l

i

m

e

x

p

(

-

it)ん(t)E

(

t

)

=

0

(28)

I

V

"

最適解の導出 小稿では株主の持つ主観的割引率iが負債利子率 rより低いケース(i

<

r)につい て検討する。まずラグランジュ乗数の符号に関して以下の 4つのケースが考えられる。 ケース① μ1> 0,μ2 = 0,μ3> 0 ケース② μ1 = 0,μ2> 0,μ3> 0 ケース③ μ1 = 0,μ2> 0,μ3=0 ケース④ μ μ 2 = 0,μ3> 0 なお,μ1とμzがともに正のケースは,最大負債と負債ゼロが共存できないことから笑 行不能であり排除されている。また, μ1>0,μ2=μ:3 = 0,およびμμ2=μ3=0 のケ}スも, λ2= 1, A2く

O

から,んが1以下となり,条件ん=1+μ3孟

l

に反する ので笑行不能となり排除されている。 ① 次にそれぞれのケースの特徴を述べておく。 μ1> 0,μ2 = 0,μ:3> 0 A1-A2

C

'

(

I

)

=

0

λ2=1+μ3 ん =(i

)Aa[(r+

α

)

π

'(K)]A2+μ1 λ2= (i-r)A2一(l+h)μ1

<

0 (l+h)E-K =

0

(29) (30) (31) (32) (33)

(6)

i

l

i

-338- 香川大学経済論叢 620

D

=

0 (34) このケースでは,

3

つの不等号制約条件

(

1

3

)(

1

5

)

(1

6

)

のうち,負債一自己資本制約お よび配当の非負制約が有効で(binding),負債の非負制約だけが非有効(not-binding) である。従って,負債一自己資本比率は上限値をとり,許容される最大限の社債が発 行される。また配当の非負制約が有効であることから,配当はゼロである。またこの とき ,

B =hE

であるから,純投資Kの資金は,社債

h

/

(

l+h)

,自己資本の増加

1

/

(

1

+h)

の割合で調達されることになる。さらにこの場合,.K=[

π(

K

)

-C(

I

)

-rB

-aK]

B

が成立し,従って, π

(K)-rB+E

=

I+C(

I

)

となるから,内部留保分の自己資 本の増加に対して ,

E/K

=

l

/

(

l

+

h

)

を維持するだけの純投資が行われる一方,それに 必要な社債が新規発行される。換言すれば,投資の水準は主として,営業利益,調整 費用,そして許容される最大の負債一自己資本比率に依存することになる。 さらに,別の観点から見ると ,

I+C(

I

)

=

(l+h)E

と表すことができるから,調整 費用を含む投資的支出は,内部留保(自己資本の増加)の

(

1

+h)

倍となることがわか る。 ② μ1 = 0,μ2> 0,μ:3> 0 A1一λ2

C

'

(

I

)

=

0 ん=1十μ3

A

1

=

(i

+

α)λ

l+[(r+

α)ーダ

(

K

)

]

A

2

一μ2

(

3

5

)

(36) (37) A

=

(i-r)λz十μ ( 3 8 )

K-E

=

0 (39)

D

=

0 (40) このケースでは,負債一自己資本制約のみが非有効で,負債の非負制約および配当 の非負制約は有効である。従って,社債の発行額および配当はゼロである。またこの とき ,

K = E

であるから,

π(

K

)

=

1+

C(

I

)

となり,投資的支出は営業利益に等しい。 ③ μ1 = 0, f.l2 > 0,μ3=0 このケースは,もしそれが瞬間的なものではなく,一定期間以上生じるとすれば, 以下が成立する。 A1-

C

'

(

I

)

=

0

(41)

OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ

(7)

6

2

1

A2 = 1 A1 = (i+α)λ1十(i十

a

)

一π

'

(

K

)

投資と資金調達 -339ー (42) (43) λ2 = (i-r)+μ2 = 0 (44)

K-E=O

(

4

5

)

このケースでは,負債の非負制約だけが有効で,負債一自己資本制約および配当の 非負制約は非有効である。従って,社債の発行額はゼロであるが,配当はゼロである 必要はない。 ④ μ1=μ2 = 0,μ3> 0 Al-A2C

(

I

)

=

0

A2 = 1+μ3 ん=(i十叫ん

+[(r+

α)ーダ

(

K

)

]

A

2

(

4

6

)

(

4

7

)

(48)

A

= (i-r)A2

<

0 (49) 1) =

0

(

5

0

)

このケースでは,配当の非負制約だけが有効で,負債一自己資本制約および負債の 非負制約は非有効である。従って,配当はゼロでなければならない。またこのケース は,後述するように最大負債から負債ゼロへの調整過程になると考えられるが,その 際負債の償還は,E

=

I+C(

I

)

一[π

(K)-rB]

,すなわち投資的支出から営業利益マイ ナス社債利子を差し引いた差によって示される。 次にこのシステムの定常解を調べてみると,以下のように示される。

K=O

1

*

=

α

K*

.

E

=

0→

π(K*)-C(aK*)-rB*-

1)*

=

0 A1

=

O

-

-

>

M

=

i~a

[が

(

K

*

)

一 ( 山

)

]

λ

f

一(μ1一向) 一(1十

h

)

μ1一μ2 A2

=

0→A F - t - r

M

=

C(

α

K*)

A

t

=

1 μ1 = 0,μ2> 0,μ3=0 (51) (52) (53) (54)

(

5

5

)

(56) (57)

(8)

l

i

l

i

-i

-340- 香川大学経済論叢 622 そこで上記ケース①一④のいずれのケースがこの定常解になるか調べてみると,ケー ス③を除くとすべてん<0であるから定常解ではないことがわかる。そこでケース ③が定常解であるとすると, μ1= 0, f1.2

>

0,μ3=0であるから .

B*

= 0となり,上記 (51)ー (57)は次のように表される。

1

*

=

aK*

) ) ) ) ) ) O O A Y A U R U F O 吋 I

-5

5

5

6

5

5

5

( ( ( ( ( (

π(K*)-C(aK*)-aK*-D*

= 0 ,11"

=

(

K

*

)

(

1

+α)

z

十G ,11"

=

C'

(

a

K

*

)

,1

t

=

1 μ1 = 0,μ2

>

0,μ:3 = 0 すなわち,純投資はゼロであり,社債もすべて償還してゼロである。従って,負債の 利子支払いはなしまた自己資本を蓄積するための内部留保もしないので営業利益は すべて配当として株主に支払われる。なお,定常点に対応する資本ストックは. (55) (60)から得られる次式によって決定される。

1+

C'(ぽ

)

=

4

2

-

(61) V 最適投資・財務政策 ところでこのシステムはラグランジュ乗数 μ1,μ2,μ3が時聞を通じて変化し,ん = 0 Iocusが時間とともにシフトするので,非自律的 (non-autonomous)である。そこで, 十分に低い資本ストックの水準から出発した場合を想定して,企業の最適成長経路と 財務政策がどのようなパターンをとるかを検討しよう。 定常解であるケース③ではん=1でかつ μ2>0であること,初期時点で許容され る最大限の負債を発行していること,およひ精助変数の連続性を考慮すると,可能な 成長ノfターンとして, ①→④→②→③ が考えられる。すなわち,まず①で許容される最大限の社債発行を継続し,かつ配当 をせず、内部留保を資本蓄積へ向ける。次に④で配当はゼロのまま,社債の発行を停止 し,その償還を進める。続いて②では,社債をすべて償還し終えているが依然配当は

OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ

(9)

623 投資と資金調達 -341-ゼロであり,営業利益だけを投資に振り向ける。そして最終段階③では,投資は置き 換え投資だけを行い,残りの営業利益はすべて配当に回され,この状態が無限の将来 まで続く。 なお通常の無限期間モデルでは,定常点 (Kl*,A

t

)

へは有限時間では到達しないので あるが,このモデルではシステムが非自律的であり,定常点自体が時聞を通じて移動 し、ている。従って,右下がりのん=Olocusが右上方からケース③の定常点,すなわ ちとのモデルの最終的な定常点へ到達するのと最適経路が左方から定常点へ到達する のが同時であると考えられる。

V

L

おわりに 以上,かなり限定された状況ではあるが,企業の投資・財務政策に関する最適経路 の特徴を検討した。特に投資に伴う調整費用と負債発行に対する制約がどのように関 わるのかという点が明らかとなった。すなわち,最適経路を構成する 4つの局面のう ち,正の負債を保有する上記①と④の状況で見ると,まず①最大負債を継続する局面 では,負債一自己資本比率を一定に保ちつつ,負債および自己資本の増加率が投資に 伴う調整費用に影響を受ける。また④負債の償還過程においても,負債の減少率が投 資に伴う調整費用に依存することが明らかとなった。なお,負債を保有しない状況② ③においても,投資に伴う調整費用が各変数の最適値に影響を及ぽしている。 今後の検討課題としては,ややアドホックな負債一自己資本制約を,例えば Oster -berg(1989) のような負債のagencycost という概念を導入するなど,より一般的な 状況の検討などが考えられよう。さらには,新規株式発行を考慮したケースの検討も 依然難問ではあるが課題であろう。 参 考 文 献

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V

a

G仰

n

l

伽汝dが扮0削 and 仁印砂tがt仰al

α

G

'onf的γ均'01仇inEcじωω仰0nω仰ω0m仰押,?n幻匁z4

ω

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参照

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