学生プロジェクトのジョイント発表
~持続可能な未来志向の観光~
観光経営学部 教授藪下 保弘
2019年度の観光経営学部の活動は、新潟県・大学魅力向上支援事業の採択を受けた学部のアクショ ンプラン「GrowCAL戦略 Hand in Hand2019」を中心に展開された。1) このうち、学生が中心となり地域の課題解決に取り組む「経営学実地研究」と、授業の枠にとら われずに学生が自主的に参画する「学生プロジェクト」が新潟経営大学・観光経営学部の学びのス タンダードとして定着しつつある。 総じて、プロジェクトに参画する学生の意識は高く、学外における成果報告などのアウトリーチ 活動においては一定の評価を受けているようである。 2019年度は、本補助事業の対象として、「第2次胎内リゾート活性化プロジェクト」と「糸魚川 観光連携プロジェクト」が動いている。前者は、大光銀行との包括連携協定に加え、同行と胎内リ ゾートと新潟経営大学の三者覚書(MoU)ならびに胎内市のサポートを受けた「産学官金連携」 として活動している。後者は、「新潟経営大学と糸魚川市の観光連携協定」にもとづき、同市と大 学が学生プロジェクトをサポートして実施している。 2019年度アクションプランのキーワード「Hand in Hand」にもとづき、両プロジェクトはとも に独自性を守りつつも、意識してジョイント発表により活動の成果を発表している。 糸魚川観光連携プロジェクトは、事実上の活動のキックオフに位置する2019年8月の連携協定調 印式から、本格的な活動に入る事前調査より得た含意を紹介している。 かたや、活動が2年目となる胎内リゾート活性化プロジェクトは、第1次プロジェクトを紹介し た後に、中等教育における新指導学習要領の改訂において話題となっている「探究学習」をサポー トした活動を紹介している。加えて、第1次プロジェクトで得られた課題の解決に向けた活動とし て、合宿によるグループワークにて体験したチーム・ビルディングの難しさと、そこで立案された 観光プランが商品化にいたるまでの苦悩を紹介している。 また、ジョイント発表に際し、互いの活動内容を紹介したうえで、「SDGs」を共通のテーマとし てディスカッションする形式でプレゼンテーションを設えているところが、本ジョイント発表のユ ニークな点である。 本稿は、両プロジェクトが合同で発表したスライドと原稿を再編集し、本ジャーナル誌に所収し て活動の成果を録するものである。 発表者 観光経営学部 4年安達 友理
観光経営学部 3年田中 李奈
観光経営学部 2年小田島瑠香
観光経営学部 2年小出さゆり
観光経営学部 2年鈴木 美優
---
プロローグ:鈴木美優
--- 6 分の 1。この数字は、信じられないことに貧 困に苦しむ日本の子供の割合です。 世界では約一割の人が貧困に苦しんでいます。 こうした問題に踏み込んで、世界人類が共通の 意識の元で課題の解決を図ろうとする、「持続可 能な開発に向けた目標」、これがサステナブル ディベロップメントゴールズ(SDGs)です。 2015 年 9 月に「持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」が国連総会で加盟国全139 の全会一 致で採択されました。 これまで全加盟国が持続可能な開発を優先課 題にしたことはありませんでした。 SDGs には 17 の目標が盛り込まれています。 今全世界は市民社会や企業、国、その他の主体も SDGs を支援しています。 SDGs は「持続可能な開発」に 17 の基本目標 を挙げています。SDGs はどの項目から始めれば ならないというルールはありません。自分たちに できることから始めればいいのです。 2030 年の達成に向けて、大きな目標が並んでい ます。 この目標達成のためには、企業の持続的な発展 から生み出されるイノベーションの創出が求め られています。 SDGs の市場規模は 12 兆ドルともいわれてい ます。 「飢餓をゼロに。」 世界では8 億人以上の人々が飢餓に苦しんでい ます。 また日本では、食品廃棄の問題がありますが、 飢餓で苦しむ人がいる中まだ食べられるはずの ものを捨てているという事実は見過ごせません。「すべての人に健康と福祉を。」 毎年 500 万人以上の人が 5 歳になる前に亡く なっています。また治療費が払えず手術が受けら れずに亡くなってしまう人がたくさんいます。 「質の高い教育をみんなに。」 一見日本は達成できているように見えますが、 近年に多く報道されている引きこもり、児童虐待 の問題もあり、日本にとっても世界にとっても無 視できない問題です。 「ジェンダー平等を実現しよう。」 世界 49 の国では女性を暴力から守る法律があ りません。 この問題の解決の先進国はアイスランドです。 アイスランドは世界経済フォーラムが発表する ジェンダー・ギャップ指数が低く、10 年連続で世 界一位となっています。 「安全な水とトイレを世界中に。」 世界では10 人に 3 人は安全な水を飲むことが できません。 「エネルギーをみんなにそしてクリーンに。」 世界人口の 13%の人々は未だ電気を使えませ ん。 「働き甲斐も経済成長も。」 世界の5 パーセントの人は定職に就いていませ ん。
「産業と技術革新の基盤を作ろう」 インフラが未整備な国では、その影響で生産性が 40%も損なわれています 「人や国の不平等をなくそう」 全体の資産の約半分を 10%の富裕層が占めてい ます。またこの問題に取り組んでいるものとして スターバックスがあります。スターバックスは発 展途上国で作られた豆を適正な価格で取引する ことによって生産国側の持続的な生活向上を支 える仕組みを作っています。 「住み続けられる街づくりを」 2030 年には都市に住む人口が 50 億人を超える とされています。 「作る責任使う責任」 人間はプラスチックを発明しました。 しかし、使った後の処理をきちんとしないせい で海を漂うゴミになり、海の生物に悪影響を及ぼ しています。 またナイキや GAP といった世界的ブランドの 企業は以前まで、綿製品を大量の枯葉剤を使い生 産していたため土壌や水質汚染がありましたが、 今は100%オーガニックコットンを使い環境に配 慮した経営をしています。 「気候変動に具体的な対策を」 CO2の排出量は1990 年から見ると 50 パーセント 増大しています。 「海の豊かさを守ろう」
海洋資源で生計を立てている人は 30 億人以上 いるといわれています。 今後は、魚たちが絶滅しないようなに工夫し産 業が発達する方法を考えなくてはなりません。 「陸の豊かさも守ろう」 2010~2015 年の間には 330 万ヘクタールの森 が失われました。 「平和と公正をすべての人に」 2010~2014 年の間に 570 件以上の人身取引が 発覚しています。 「パートナーシップで目標達成しよう」 各国が定めた開発の優先課題と成果に見会う開 発協力を行うためには、特に脆弱な国々で、より 一層の取り組みが必要です。 それでは糸魚川プロジェクトと胎内プロジェ クトのSDGs を通した活動を紹介していきましょ う。 これに先立ち、各プロジェクトのこれまでの活動 を簡単に報告していただき、そのあとにディス カッション形式でみんなで一緒にSDGs への取り 組みを考えます。 それではまず糸魚川チームお願いします。 --- 報告:小田島瑠香 --- まずは、プロジェクトを簡単に紹介します。 去る8 月 22 日に糸魚川市と新潟経営大学の間で 「観光連携協定」が締結されました。 ご存じのとおり、本年4 月に新潟県に観光局が 独立して設置されました。 また観光は、現新潟県知事が県政の1 丁目 1 番地 として進める政策の柱です。 観光および観光関連産業は、交流人口の拡大な らびに国際相互理解を促し、県内経済はもとより、 「観光立国」を国策として掲げ、地方創生の推進
役として期待を集めています。 すでに外国人観光誘客の話題は食傷気味です が、インバウンド政策のスタートダッシュに出遅 れた感のある新潟県にとっては、避けてはとおれ ない克服すべき課題です。 こうした社会の流れを汲むように、本年4 月に 糸魚川市さんから本学に対して「観光系の学部を 擁する県内唯一の大学」という理由から、「観光 連携」の提案をいただきました。大学と自治体と の連携が真っ盛りの昨今、連携協定自体は特段話 題性の高いものではありません。 しかし、「観光連携」という形態は、県内では 事例のない連携協定です。今回のコラボレーショ ンは、今後の地域活性化策の一助となりうる可能 性を秘めています。 わたしたちのプロジェクトは、こうした背景か ら、大学と地域がなしうる CSV の試金石として 意義を持ちます。 糸魚川プロジェクトは、2 年生 7 名、1 年生 12 名の総勢19 名が参加する比較的大きいプロジェ クトです。 プロジェクトは、糸魚川市との調印 式をスタートに来年の2 月末日までの約半年あま りの期間を計画しています。 ありがたいことに、昨年の胎内リゾート活性化 プロジェクトの成功体験から、一定のノウハウと 課題が想定されますので、プロジェクトのスター ト・アップはスムーズに運んだと考えています。 この点は、昨年からお世話になっております、 大光銀行さん、胎内リゾートさん、胎内市さんに は心より感謝申し上げます。そして、今年からは JAF さんとも従前にも増してお世話になります。 どうぞよろしくお願いします。 さて、まず私たちは、活動に先立ちメンバー全 員が持つ糸魚川のイメージを出し合いました。 糸魚川といえば、真っ先に思い描くのは新鮮な 海の幸でしょう。 また、夏には自然豊かな山間(やまあい)でキャ ンプを楽しんだり、 海は、海水浴客でにぎわいます。
一方、冬には存分にスキーを満喫できます。 「親不知・子不知海岸」は、アルプスの北端が 日 本海 に落ち 込む ように 形成 される 海岸 で、 フォッサマグナの西の端「糸魚川-静岡構造線」 に位置します。 今では風光明媚な海岸線として日本を代表す る観光名所である海岸線ですが、古くは交通の難 所として人々の往来を妨げました。日清のカップ うどん「どん兵衛」の濃口と薄口の分岐点が糸魚 川だという事実は都市伝説ではないようです。 伝説といえば、大国主の命が遠路はるばるプロ ポーズに訪れたという奴奈川姫の古事記ロマン も忘れてはなりません。歴史は、現代の最先端技 術を駆使しても、どれだけお金を積んでも作れな い、地域資源です。こうした視点からも糸魚川観 光の魅力を改めて感じます。 フォッサマグナミュージアムは「石の博物館」 として、気の遠くなるようなはるか2 億年前から の歴史を満喫できる施設です。 さらに、北陸新幹線の開業により、糸魚川と首 都圏ならびに北陸、長野方面へアクセスの利便性 が格段にアップしました。 このように、食、自然、歴史から交通にいたる まで他にはない恵まれた観光環境にある糸魚川 から、私たち学生がいくら頭をしぼっても活性化 策は簡単には出せません。 プロジェクトの初段階から、そんな現実に直面 しました。 --- 報告:小出さゆり --- そこで、わたしたちなりの工夫から観光振興の ヒントを探るため、ネット通販に着目して糸魚川 に関連する商品が全国ではどのように知られて いるのかを調べました。
難しいことはさておき、簡単にいえば、楽天に 登録された商品情報を楽天のサーバーから取得 して解析します。 具体的には、検索マドから「楽天API」を起動 する簡単なプログラムを作り、検索を開始するだ けです。 今回は、画面表示だけでなく、表示と 同時にExcel ファイルに保存する仕組みにしまし た。 ここでレビュー数に注目しましょう。 レビ ューが ある という こと は、最 低で もレ ビューの数だけ商品が購入されたという意味に なります。 赤い境界線は、ゼロと1 の境です。ということ は、1 の表示がある商品は少なくともひとつは販 売実績があることを意味します。 赤丸の数字に注目してください。(1 行目が見出 しですから316-1 で)315 の商品が少なくとも販 売実績があるという意味です。 さらに大事な数字は、ゼロのレビュー数です。 今回抽出した3000 データのうち 2229、すなわ ち 74.3%がレビューなし、つまり売れていない、 という事実が明らかになっています。 次に、全商品説明をテキストマイニングで品詞 に分解してその数を調べました。大事なのは、名 詞です。 漢字のヒスイが 19495、カタカナのヒスイが 3211 と圧倒的に出現回数の多い語彙になってい ます。ほかには、勾玉や天然石、パワーなど「石」 に関する名詞が多い様子がみてとれます。 つぎに「共起ネットワーク分析」を用いて、こ れらの品詞と品詞のつながりを調べました。 線のつながりが小さい塊にとどまるだけで、ほ かの語との関連がみられない特徴があります。 なによりも、予想外に驚いたのは「ジオパーク」 が出現しないという結果です。そういえば、「ジ オパーク」に関連したお土産をあまり見かけませ ん。
糸魚川市のジオパークは、ユネスコが支援する 「世界ジオパークネットワーク」の審査をパスし 2009 年 8 月に日本で初めて「世界ジオパーク」 に認定されました。いわば、強力な糸魚川観光の 資源であるはずです。ここにも、新たな事実から 問題が提起されそうです。 とりあえず、報告はここまでとして、胎内プロ ジェクトにタスキを渡します。 --- 報告:田中李奈 --- それではさっそく、第2 次胎内リゾート活性化 プロジェクトの活動紹介を始めます。よろしくお 願いいたします。 本プロジェクトは、本学の特色ある学びのスタ イルである「経営学実地研究」の一貫であります。 この授業は、地域に存在する課題を、金融機関や 自治体から本学にいただき、課題解決型授業「経 営学実地研究」で解決を目指し、地域に還元する というものです。 本プロジェクトは、昨年1 月に大光銀行さんと 新潟経営大学の間で締結された包括連携協定に 基づく取り組みとして観光経営学部の7 人の学生 でスタートしました。 プロジェクトの主旨は、名前の通り、ロイヤル 胎内パークホテルさんをハブとする「胎内リゾー ト」の活性化に努めようというプロジェクトです。 胎内市さんからのサポートも受け、事実上の 「産学官金連携」に発展した活動が始まりました。 しかし「胎内リゾートってなに?どこにある
の?」という、胎内リゾートの名前と位置すらわ からない状況から始まり、まずは胎内リゾート・ ロイヤル胎内パークホテル・胎内市の情報収集を 4 月から開始しました。 胎内リゾート内に点在する施設を知り、胎内市 の過去 10 年分の観光ビジョンをインプットし、 ロイヤル胎内パークホテルの客室に常備してあ るお客様アンケートの解析をした結果、現地に 行ったことがないながらも、事前調査としてある 程度の仮説を立てることができました。 そして7 月 28 日に初めて現地に赴き、胎内リ ゾートはどんなところかをじっくり観察しまし た。大学に戻った後、あらかじめ立てていた仮説 を再度考察して、9 月 10~12 日の 2 泊 3 日の現 地調査に向けて準備を行いました。 現地調査では、リゾート内の施設を視察し、ヒ アリング調査を中心として、リゾート内にあるほ ぼ全ての施設を訪問しました。 日中のヒアリングで得た情報は毎晩、夜会ミー ティングで共有しました。 予定時間を1 時間オーバーしていたことをミー ティング終了後に知るくらい、内容の濃い調査が できました。 4 月からの調査と 2 泊 3 日の現地調査で、胎内 リゾートは特に若者からの認知度が低い事と、リ ゾートにある施設資源の洗い出しがまだまだで きる、という事実を発見しました。 この解決に向けての第一アクションとして、10 月 13 日に「にいがた観光講座」と題した地域・ 高校・大学が連携して行う講座を開いて実行しま した。「にいがた観光講座」はこれまで本学部の 学生により3 回の開催実績があり、第 4 回目を本 プロジェクトが主催し、ロイヤル胎内パークホテ ルで開催しました。 にいがた観光講座には、齢の差や性別を問わず にグループを作って学びに入るという特徴があ
ります。講座運営のリーダーを務めた学生のアイ デアで、講座の最初にBBQ でアイスブレイクを して、参加者の雰囲気がよくなったところで勉強 をスタートさせました。 講座では外部講師をお招きし、座談会兼講演会 といったスタイルで学習を行いました。 話を聞いた後は、メイン・コンテンツの、グルー プ・ディスカッションをしました。 ここでは本学で考案した「垂直思考」ならぬ「水 平思考」という思考方法を用いた、「新しい胎内 リゾートの○○」を参加者のみなさんに考えても らいました。 ここまでで紹介させていただいた通り、第1 次 プロジェクトは「調査とアイデアだし」が主な活 動でした。 プロジェクトの後半から終盤にかけては、3 月 末の報告会にむけて報告書作りを行いました。 最終報告会では胎内リゾートに関係のあるス テークホルダーの方々にお集まりいただき、1 年 間の活動報告を、100 ページに渡る報告書を使っ て行いました。 この報告会では、年間活動を通じて発見した大 きな2 つの課題を残し、第 2 次プロジェクトへと バトンつなぎました。 また、第1 次プロジェクトを行う中で、5 回の アウトリーチ活動に参加しました。 左側の写真、全国経営学部長会議では、経営学 実地研究の事例紹介として発表。右側の JAF 優 待施設連絡会では、新潟経営大学 観光経営学部 の活動紹介として発表。
左側、COC+地域活動交流会では、胎内リゾー ト活性化プロジェクトの概要と調査内容を発表。 右側、日本観光研究学会では、本学の特色ある学 びの事例紹介として発表。 COC+インターンシップ・地域活動フォーラム では、地域の課題解決を目指す活動として発表し、 プロジェクトをオーソライズしてきました。度重 なる発表練習により、プロジェクト・メンバー全 員の発表スキルアップにもつながりました。 ここからは、第2 次プロジェクトの紹介に移り ます。今年度からはメンバーが 14 人に増えて、 各々の個性と特技を活用しながら活動していま す。 第2 次プロジェクトでは JAF さんという強力 なパートナーが新たに加わりました。 9 月には包括連携協定を締結し、今後の活動で は大規模なイベント開催を計画しています。 また、今年度から高校教育の新学習指導要領の 改訂が行われ、「探究学習」が必修授業となる旨 が決定しました。新潟県内では4 つのモデル校が 先がけて実施しており、そのうちの1 校「新発田 南高校」の探究学習をお手伝いしています。 加えて、JR 東日本「大宮駅」で開催される「新 潟・庄内産直市」への参加を今月中旬に控えてい ます。ここでは胎内の資源を販売・体験を通じて 会場を訪れた人に紹介します。 これまでの第2 次プロジェクトの流れを簡単に 紹介させていただきます。 まず6 月 14 日に胎内市役所で、第 1 次プロジェ クトでお世話になった方々と、今年度の方針につ いて話し合いました。7 月には第 2 次プロジェク トに関わるメンバー全員が集合し、顔合わせを行 いました。 8 月 11 日には本学のオープンキャンパスで高 校生に向けてプロジェクトを紹介しました。同月 19~22 日には、先程簡単に紹介しました、新発 田南高校との探究学習に取り組みました。
4 日間の探究学習は、約 30 人の高校生を 1,2 年 生混合 5 チームに分け、「高校生と大学生が考え る、若者が訪れたくなる胎内リゾート」をテーマ に、胎内リゾート内にある豊富な資源に様々な視 点・感性をもって触れ、視察をしました。 胎内市から貸切バスをご提供いただき、時間内 での行動が難しいと考えていた視察コースをス ムーズに回ることができました。 フィールドワーク後の3 日間は高校で作業を行 いました。2 日目は SWOT 分析、クロス分析のフ レームワークを。 3 日目はペイオフ・マトリクス、シナリオプラ ンニングを使ったアイデア出しと、翌日の発表に 向けた準備を行ないました。 最終日4 日目には各チーム太洋紙 3 枚の探究の 成果を黒板に張り出し、「若者が訪れたくなる胎 内リゾート」として打ち出したアイデアを発表し ました。 どのチームもトレンドを取り入れた斬新なア イデアが多く、教室いっぱいに笑いが起こるシー ンもあれば、それに対して、若者は何歳から何歳 までをイメージするか?といった質問や議論で 真面目な雰囲気になる場面もあり、教室全体に一 体感が生まれ、授業の質が高く感じられました。 探究学習の成果を3 月までにホテルの方に発表 したい!という高校生の熱い思いがあり、先月に は再び高校にお邪魔し、発表に備えてより探究を 深めるために、新しいアイデアの出し方を伝授し てきました。 そして先週25 日と 26 日に、胎内市の職員さん、 ホテルの従業員さん、胎内リゾート内の施設、ス テークホルダーの方々に協力していただき、合宿 を行ってきました。
合宿の目的はスライドの通りです。 「冬の大人気!宿泊プランを開発せよ!」 「連携不足解消のためのソリューションを開 発せよ!」この2 つを 32 時間以内に考案し、発 表しなさい。 実はこの2 つの課題が、昨年、第 1 次プロジェ クトで最終的に見つかった大きな2 つの課題です。 昨年は調査とアイデア出しが主な活動でしたが、 これをあえて短時間で検証し、机上の空論にせず、 時間内に検証も行い、実現可能性のある課題解決 策を見つけなさい。というものでした。 予想通り、32 時間で実現可能性のある解決策を 考案するのはとても大変でした。時間に追われ、 時にはチーム内で意見が分かれたり、雰囲気が悪 くなったり、事の展開が非常に早く感じました。 なんとか両チーム共、時間ギリギリに案が完成し、 胎内リゾート社長をはじめとする大勢のステー クホルダーの方々を前に、無事発表を終えること ができました。 本発表の 3 日前に胎内市の方から連絡があり、 この合宿で考案した冬の観光プランが商品化さ れます。 --- 進行:安達友理 --- ▶安達 ありがとうございました。 「Growcal カレッジ in 糸魚川プロジェクト」 と、「胎内リゾート活性化プロジェクト」の両チー ムに活動内容を紹介してもらいました。 続いては、本日のテーマであるSDGs 持続可能 な開発目標と学生プロジェクトの繋がりについ てディスカッション形式で進めて参ります。 はじめに胎内のプロジェクトにお聞きします。 田中さん。SDGs と胎内のプロジェクトはどのよ うに関係していますか?? ▶田中 SDGs の考え方を取り入れた第 2 次胎内リゾー ト活性化プロジェクトの活動は、ちょうど今、 私がリーダーとして計画を立てていて、来年に 予定している「リゾートコンベンション」です。 こちらは JAF さんと協力して開催をいたしま す。具体的には、JAF 会員に入会している新潟 県内のリゾートホテルの関係者が集まり、コン ベンションを開催し、その第1 回目を、本プロ ジェクトの拠点である「ロイヤル胎内パークホ
テル」で行うというものです。そこでの協議で、 SDGs を統一論題とする方向で考えています。 冒頭で鈴木が申しました通り、SDGs は誰でも 参画が可能です。 「ホテルのSDGs」というマガジンが出版され ているくらい、その普遍性は広がっていると言え ると私は考えています。 SDGs のメリットの 1 つに、「個人・団体誰で も参加が可能であり、17 個の要素のどの方向から でも「持続可能」に向けたアプローチができる」 という点があると思います。 これにリゾートホテルを当てはめると、「持続 可能」という未来的な目標に向かって、自社のど の部分が、17 個のどこに当てはまるのか。そして 目標に向けてどのようなアクションが出来るの か、比較的容易に考案・実行に移せると推測がで きます。 また、新潟県は縦長で、総面積の大きさは国内 トップクラスであり、各地に点在するリゾートホ テルの経営戦略や運営方針がバラバラであるこ とは間違いありません。 したがって、普段は利害関係にある立場の組織 が集まって情報共有をすることで、県内のリゾー ト施設を1 施設も取り残さずに「害」ではなく「利」 を生み出せるというところにつながると考えて います。 ▶安達 ありがとうございます。 開催が楽しみですね。 続いては、糸魚川プロジェクトにお聞きします。 先ほど糸魚川市をいくつか調査していくと、ジオ パークのイメージが強いかと思いきや、実はヒス イのほうが多くデータとして出てきたという結 果となりました。ということは、ジオパークはあ まり知られていないのでしょうか?? ▶小出 はい、この点に関しては、私たちも疑問を持ち ました。 そこで、糸魚川市が平成23 年から 30 年まで毎 年実施している「糸魚川ジオパーク観光動態調査」 に着目して深堀しました。
この調査から、平成 23 年、平成 26 年、平成 29 年のデータを再編集して、年代と認知度を見る クロス集計表を作成しました。 3 つのクロス集計表をカイ 2 乗検定で集計値の 偏りを確認したしたところ、全て統計的に有意で す。よって、なんらかの偏りすなわち特徴がある ものと考えられます。 クロス集計表だけではわかりにくいので、コレ スポンデンス分析という手法を用いて視覚的に 分かりやすく可視化分析をしました。 この図の見方は、近いところにある変数同士が、 なんらかの関係があるものとして解釈します。 たとえば「聞いたことがある」という項目が、「40 代」と「50 代」の近いところにマッピングされて いるというふうに見ます。わたしたちの年代であ る19 歳以下と 20 代に下線をつけました。 残念ながら、認知度に関連する項目は近くにあ りません。 続いて、平成 26 年度の認知度のマップを確認 します。 「30 代」が「初めて聞いた」という項目と近い ところにあり、「聞いたことがある」という度合 いが19 歳以下と近いところにあります。少しは、 希望をもてます。 さらに、平成29 年度では 30 代、40 代、50 代、 60 代の認知度が上がっており、「19 歳以下」「20 代」は関連する項目と程遠い位置にマッピングさ れています。 この結果から、「19 歳以下」「20 代」にジオパー クはあまり知られていないのではなかろうかと 推測できます。 ▶安達 なるほど。若者にはあまり知られていないとい う結果が表れたんですね。 ジオパークはSDGsと親和性がありそうですが、 糸魚川市として、何か取り組まれていますか? ▶小田島 糸魚川市は、「糸魚川ジオパークだより」で情 報を発信していて、こちらがその一部になります。 「保護・保全」「地域振興」「教育・防災」とい う3 本の柱に基づき、未来へとつながるまちづく
りを目指しています。 これらの活動は、「持続可能」というキーワー ドでSDGs と深いつながりがあります。 ▶安達 糸魚川のプロジェクトは、具体的にSDGs とど のように関係がありますか? ▶小出 縦軸にプロジェクトとしての優先度、横軸に糸 魚川市からみた優先度を設定し、17 の項目を振り 分けました。 この図で重視されるのは、双方的に優先順位が 高いとされる右上の部分です。 この 8 個の項目を、糸魚川のプロジェクトで取 り組みたいと考えました。 ▶安達 糸魚川市とプロジェクトの取り組みを双方の 優先度でマッピングしたのは面白いですね。一方 通行ではないということが分かりました。ありが とうございます。 それでは最後に1 つお聞きします。プロジェク トでは今後どのようにSDGs を取り入れていきま すか? ▶小出 私たちの活動を体系化するために、「持続可能 な糸魚川市」を中心にとり、そこから「創造性」 「自然」「責任」という 3 つの言葉を柱に設定し ました。 「創造性」は、糸魚川の観光資源を学生なりの 視点から考え直し、新たな可能性を広げていこう という試みです。 「自然」は、そのままの通り、貴重な糸魚川の 自然を守りたいという思いから選びました。そし て、私たちには豊かな資源を次世代へとつないで いく「責任」があります。多くの人にどのような 貴重な資源があるのか学んでもらい、今どのよう な行動をしなければならないのか、考えてもらう 必要があると思いました。 「創造性」の部分では、糸魚川観光とSDGs を 掛け合わせ、「ジオサイトキャンプ」という新た な観光プランを考えています。 このツアーは、糸魚川で獲れる食材をグループ 別で集め、獲った食材を使ってキャンプ場でバー ベキューを楽しむというものです。
SDGs の項目は、2、14、15、17 が達成できま す。この他にも、まだまだたくさんの観光プラン を練り上げ中です。 「自然」の主な活動は、「宝探し」です。 具体的には、「四季彩カレンダー」と、観光地 マップを作成しています 四季彩カレンダーは、観光資源を季節ごとに振 り分け、年間をとおして糸魚川の観光をアピール できる仕掛けがあります。名前に糸魚川の方言を 取り入れ、たくさんの人たちに興味を持ってもら えるネーミングにしました。 観光地マップは、観光スポットの特徴をデジタ ルで可視化するために、緯度経度情報をデータ ベースに取り入れました。糸魚川市だけでなく、 ほかの観光都市も調査し、両者を比較して、それ ぞれの地域の特色掘り下げたいと考えています。 また、11 月の 2 日、10 日にはフィールドワー クを通して、より磨きのかかったものを製作でき るように励んでいます。 「責任」では、本プロジェクトの集大成として 「にいがた観光講座㏌糸魚川」の開講を予定して います。 「にいがた観光講座」は、学生が主体となり企 画・運営を行い、外部の専門講師をお招きし、テー マに沿った講演をしていただいて知識を蓄えた 後、グループ・ディスカッションを通してさらに 学びを深める講座です。 これまでに、「食と農」「ブライダル」「世界遺 産」「観光地域おこし」をテーマに 4 回開催して おり、今回の開催で5 回目となります。ただいま 担当スタッフが頭を悩ませながら企画を進めて います。 ▶安達 両チームともにありがとうございました。プロ ジェクトも中盤から後半に差し掛かりましたが ワクワクするようなコンテンツが盛りだくさん ですね。頑張っていきましょう。
--- エピローグ:鈴木美優 --- 1972 年、MIT(マサチューセッツ工科大学)のド ネラ・H・メドウズとデニス・L・メドウズ、ヨ ルゲン・ランダースは「成長の限界」において、 「地球資源をふんだんに使いながら拡大してき た世界の経済成長は、このまま続けるなら100 年 以内に限界をむかえる」という報告はわたしたち に衝撃を与えました。(参考 Web サイト:SDGs 総研 https://www.sdg-s.jp/about/) このことは、産業革命以降から急激に活発化し た人間の活動が、「社会の基盤である地球」の持 続可能性を危ぶむ警鐘にほかなりません。 これから15 年の時を経て、「環境と開発に関する 世界委員会(ブルントラント委員会)」により1987 年に報告されたレポート『我ら共有の未来(Our Common Future)』において「持続可能な開発」 の概念が提唱されました。ここにSDGs の萌芽が みられます。 さらに13 年後の 2000 年に開催された国連ミレ ニアム・サミットにて、SDGs の前身である「ミ レ ニ ア ム 開 発 目 標 (MDGs : Millennium Development Goals)」が採択されました。 MDGs の各々の目標は必ずしも目新しいもの はありません。しかし、先進国と開発途上国を含 む世界中の指導者が、達成期限と具体的な数値目 標を定めて実現を公約し、国家の首脳レベルでそ の 達成 に向け た取 組の強 化に 努めた 事実 はエ ポック・メイキングであったといえましょう。 一方で、持続可能な開発というテーマは従前か ら繰り返し議論され、目標が設定されてきたもの の、その目標は、国やNGO が主体となるものが 多く、一人ひとりに当事者意識を抱くには厚い壁 があるという弱点がありました。 たしかに、15 年間の MDGs の取り組みの結果、 全世界で多くの成果が得られました。その一方で、 国や地域によって目標の達成に差があること、さ らには、国内においても地域や性別、年齢等によ る格差が生じており、MDGs の恩恵を受けられて いない人々の存在が明らかになりました。 この後、MDSs を引き継ぐ形で、2015 年に国 連総会で決議されたSDGs は、国や途上国だけで なく、先進国の課題を網羅的に取り扱い、民間企 業にもこの取り組みを求めたところが大きな前 進です。 グローバルに活動するリーダー企業をはじめ、 多くの企業でSDGsへの取組みがはじまってい ま す 。 昨 今 で は 、 株 式 市 場 で も 環 境 (Environment)と社会(Social)、企業統治 (Governance)に配慮した ESG 投資に注目も 集まっています。 最後に、本日の私たちの発表において、40 分間 で92 枚のスライドをご覧いただきました。 発表の稚拙を補うという理由もありますが、こ の膨大なスライドをつなげたプレゼンテーショ ンは一夜漬けの作業でかなうものではありませ ん。これは、時には厳しく、一方では温かく、私 たちの活動を支えていただいているみなさんか ら賜った財産にほかなりません。改めて、感謝の 意をお伝えして本発表のエピローグとさせてい ただきます。 最後までお聞きくださいまして、ありがとうご ざいました。 指導教員 藪下 保弘 教授(経営情報論) イワン・ツェリッシェフ 教授(世界経済論)
指導教員 藪下 保弘 教授(経営情報論) イワン・ツェリッシェフ 教授(世界経済論) 大宮 誠 教授(農業政策論) 大内 斎之 特任教授(メディア論) 近藤 政幸 教授(観光地経営論) 里村 孝一 教授(農業ビジネス論) 出口 高靖 教授(観光政策論) 渡貫 正治 教授(地域経済論) 滝沢 憲一 准教授(フードビジネス論) ブライアン・サウスウィック准教授(英語教育) 井上 信恵 講師(留学) 落合 純 講師(認知心理学) バロリ・ブレンディ 講師(国際観光) GrowCAL カレッジ in 糸魚川 ・観光経営学部2 年 阿部新太郎 小田島瑠香(プロジェクトマネージャー) 小出さゆり(プロジェクトマネージャー) 小林麻梨子 椎野 僚 谷 瑞生 皆木 諒平 ・観光経営学部1 年 小野寺望来 川島 陽喜 北 美空 木之内 巧 栗原 楓 佐藤 勇真 田村 亮宏 土田 明輝 津村 純聡 内藤 裕資 本間 柊哉 横山 怜央 第 2 次 胎内リゾート活性化プロジェクト ・観光経営学部4 年 安達 友理(プロジェクトマネージャー) ・観光経営学部3 年 田中 李奈(POM マネージャー) 安田 桃子(POM アドミニストレータ) ・観光経営学部2 年 阿部 新太郎 小林 麻梨子 坂井 智広 鈴木 美優(リサーチ・アドミニストレータ) 立澤 海音 田中 洋志 森山 寛子 ・観光経営学部1 年 小野寺望来 北 美空 土田 明輝 ・経営情報学部1 年 橋 杏奈 1) 同アクションプランの内容は複合的かつ多岐にわたるため、本稿においてはそれらの多くを割愛す る。