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アルツハイマー病患者におけるcDNAサブトラクション法を用いた脳部位特異的遺伝子発現の解析

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Academic year: 2021

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(1)

アルツハイマー病患者におけるcDNAサブトラクショ

ン法を用いた脳部位特異的遺伝子発現の解析

著者

渡邊 倫子

発行年

2014

学位授与大学

筑波大学 (University of Tsukuba)

学位授与年度

2014

報告番号

12102乙第2693号

URL

http://hdl.handle.net/2241/00124207

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審査様式2-2

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氏 名 ( 本 籍 )

渡邊 倫子(東京都)

学 位 の 種 類

博士(医学)

学 位 記 番 号

博乙第 2693 号

学 位 授 与 年 月

平成26年 5月31日

学位授与の要件

学位規則第4条第2項該当

審 査 研 究 科

人間総合科学研究科

学 位 論 文 題 目

アルツハイマー病患者における

cDNA サブトラクション法を用い

た脳部位特異的遺伝子発現の解析

筑波大学教授 医学博士 玉岡 晃

筑波大学教授 医学博士 有波 忠雄

筑波大学准教授 博士(医学) 新井 哲明

副 査

筑波大学講師 博士(医学) 中井 啓

論文の内容の要旨

(目的) アルツハイマー病(AD)患者の脳では、老人斑、凝集性アミロイドβ蛋白(A)、神経原線維変化が 存在し、神経細胞死に伴う脳の萎縮などの病理学的な特徴的が認められる。本研究では、AD 患者脳組織 を用いて、脳部位に特異的な遺伝子発現の変化を網羅的に比較することにより、AD の発症及び進行の原 因を明らかにすることを試みた。 (対象と方法) AD 発症の初期より病理学的変化のみられる側頭葉皮質、進行した AD においても病理学的変化の少な い後頭葉皮質について、AD 患者脳組織及び生理的老化患者脳組織より RNA を抽出し、cDNA サブトラク ション法によって相対的な遺伝子発現の増減についてサブトラクションを行い、遺伝子発現の相対的な 差が認められるクローンを得た。陽性クローンとして得られたもののうち、ユビキチンプロテアソーム 関連因子、微小管関連蛋白質及び新規因子について、さらなる機能解析を行った。

(結果)

サブトラクション反応にて陽性であった TRIM-32 及び TRIM-37(tripartite motif containing protein-32/37)は、AD/後頭葉皮質— 生理的老化/後頭葉皮質サブトラクション反応にて AD 後頭葉皮 質で発現が上昇し、siRNA による発現抑制では生存細胞数が減少しており、in vivo 及び in vitro にて 一致した結果が得られた。また、独立した複数のサブトラクション反応にて陽性なクローン、MAP1B (microtuble-associated protein 1B)は、AD/後頭葉皮質— 生理的老化/後頭葉皮質のサブトラクシ ョンで AD 後頭葉皮質における発現が減少、AD/側頭葉皮質— AD/後頭葉皮質(同一患者)のサブトラ クションでは AD 後頭葉皮質よりも AD 側頭葉皮質にて発現が相対的に減少しており、免疫組織化学にお

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審査様式2-2

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いても同様の傾向が検出された。培養神経芽腫細胞において MAP1B の発現をノックダウンしたところ、 neurite outgrowth が抑制され、生存細胞数が減少した。一方、MAP ファミリーに属する MAP2 は、MAP1B と相反し、AD/後頭葉皮質— 生理的老化/後頭葉皮質のサブトラクションで AD 後頭葉皮質にて発現が 亢進していた。さらに、AD/側頭葉皮質— AD/後頭葉皮質(同一患者)の反応で陽性であったクローンの うち、機能未知な新規な2クローンについて塩基配列及び推定アミノ酸配列を決定し、DNA データベー ス (DDBJ/EMBL/GenBank)へ登録した。AD 患者側頭葉皮質にて発現が減少した新規なクローン P9TLDR に ついては、Aペプチド処理した培養神経細胞において、経時的に発現が減少し、神経細胞死よりも早い 段階、tau のリン酸化と同程度の時期の変化であった。 (考察) 本研究において、TRIM-32及びTRIM-37は共に、AD後頭葉皮質にて発現が亢進していた。TRIMはユビキ チンプロテアソームシステム(UPS)の中心的役割を有するE2リガーゼ活性を有しており、UPSの異常蛋 白質の除去機構はAD発症に非常に重要と考えられる。AD後頭葉皮質にてTRIM32/37が活性化することに より、脳内の異常蛋白が分解され、神経細胞死に対し抵抗性を示すとも考えられ、異常蛋白質の分解促 進・蓄積抑制によるAD進行の阻止は非常に興味深い。また、MAP1Bは、複数の独立したサブトラクショ ン反応にて陽性であったため、各脳部位における病理学的変化への抵抗性・脆弱性に関与するものと考 えられる。MAP1Bはtauと同様、MAPs(microtuble-associated protein)ファミリーのひとつであり、 GSK3により過剰なリン酸化を受け、神経原線維変化を誘導する。培養細胞においてMAP1Bの発現を抑制 すると生細胞数が減少し、細胞形態の変化が誘導されることから、MAP1Bは神経細胞の生存や細胞骨格 維持に関与していることが示唆された。一方、同MAPsファミリーであるMAP2は、AD後頭葉皮質でその発 現が亢進しており、また、MAP1B KOマウス由来神経細胞に、MAP2を過剰発現すると神経細胞の異常が レスキューされるという報告もある。MAP2は病理学的変化の少ないAD後頭葉皮質にて活性化し、低下し たMAP1Bの機能を補完し、神経保護作用を示すとも考えられる。さらに、新規クローン P9TLDRはは複数 のAD患者脳組織によるRT-PCRにおいて、特に、AD患者側頭葉皮質にて発現の低下が見られ、また、A処 理した培養細胞において、3-6時間後の早い段階から発現が減少し、臨床症状が現れ始めるステージ (Braak III-IV)の患者より単離されたことから、病理学的変化と臨床症状との相関を解析するうえで 役立つ可能性がある。

審査の結果の要旨

(批評) 本研究は、AD 患者における神経の生と死の調節に関連するタンパク質の新しい知見を示している。特 に、TRIM32/37 によるユビキチン・プロテアソームシステムの新たな知見、並びに、MAP1B 及び MAP2 の 側頭葉・後頭葉における機能は、AD 発症のメカニズムやそれに関わる因子の各部位における役割を示唆 する。また、新規に得られた P9TLDR は、Aの毒性に依存したマーカーとなり得るものであり、AD 発症 への関与も興味深い。これら AD 患者脳発現解析結果は、AD 発症及び進行過程を総合的に把握するうえ での鍵となり、臨床学的・病理学的データや他の発現解析データと連関させ、多段階で多因子による疾 患である AD を多面的に解明する一端を担うものである。 平成26年3月27日、学位論文審査委員会において、審査委員全員出席のもと論文について説明を 求め、関連事項について質疑応答を行い、最終試験を行った。その結果、審査委員全員が合格と判定し た。 よって、著者は博士(医学)の学位を受けるのに十分な資格を有するものと認める。

参照

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