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No. 1999
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分権経営の進展下におけるグループ・マネジメント
小松原 聡 伊藤 彰一 水田 裕二
要 約 現在グループ経営の再構築に対する関心が高まっている。連結決算によるディスクロージャーの制度化や、 純粋持ち株会社の解禁、連結納税制度及び株式交換制度の導入等、企業経営における制度面の改正が大きな 要因となっている。各種制度面における改正の動向は企業経営手法の選択肢の拡大を意味するが、より本質 的な問題として企業グループ全体の価値を極大化することを求めるものである。 グループ経営が目指すべき方向性は、事業連結による自律分権型の経営の徹底であり、個々の分権経営組 織の競争力を最大限引き上げることにより事業価値の向上を目指そうとするものである。分権組織への権限 委譲や業績評価方法等、そのためのマネジメント・システムの再構築が進められようとしている。一方で、 このような方向性での分権化を進めるのと同時に、グループ本社機能を充実させ企業グループとしての求心 力を保ちつづけなければならないという認識も高まりつつある。むしろ、分権経営のための技法が確立され つつある現在では、グループ本社機能の充実の方がより重要な課題であるともいえる。 これからのグループ・マネジメントは、単に事業連結された分権組織の自律的活力によるパフォーマンス 向上を期待しているだけではなく、グループ本社機能の主導によるグループ事業構造改革を積極的に進め、 グループ全体としての資本効率性を高く維持した上で、将来の成長機会についても巧みに取り込んでいくと いう経営スタイルが必要とされている。 目 次 1.グループ経営にかかわる最近の動向 1.1 グループ経営の見直しを迫る内外環境動向 1.2 グループ経営革新へ向けた最近の取組み動向 2.わが国における分権経営の動向 2.1 企業類型別に見た分権経営への取組み 2.2 分権経営を推進する経営形態分析 3.グループ・マネジメントの動向と論点 3.1 分権組織の設定のあり方(事業連結のあり方) 3.2 分権組織のコントロール 3.3 グループ統轄機能のあり方 4.総括 4.1 分権経営進展下におけるグループ・マネジメントの特徴 4.2 今後の課題・論点 研究論文 三菱総合研究所 所報第35号(1999年9月)Group Management in the Development of
Decentralized Management
Satoshi Komatsubara, Shoichi Ito, Yuji Mizuta
Summary
Interest in the reconstruction of group management has been growing recently as a result of the introduction of the disclosure system by consolidated settlement, and reform of the corporate management system, such as the lifting of the ban on holding companies, and the introduction of a consolidated tax system and share exchange system. The trend toward change in the various systems signifies a growing choice of styles of company management, but the essential problem is the need to maximize the value of the entire group.
The aim of group management should be autonomous, decentralized management by consolidation of operations, and the increased value of business by raising the competitiveness of each decentralized organization to the highest level possible. Attempts are being made to reconstruct the management system, such as transferring authority to the decentralized organization and introducing a method for evaluating business performance. Amid the progress being made in decentralization, however, there is growing awareness of the need to improve the function of group headquarters and maintain the centripetal force of the group. At a time when techniques for decentralized management are being established, the improvement of the function of the group headquarters could be said to be the more important issue.
Group management in future is not only expected to lead to improved performance due to the autonomous vitality of the decentralized organization, but to the pursuit of structural reform of group operations through the leadership of the group headquarters, maintenance of the capital efficiency of the entire group, and a management style that incorporates the opportunity for future growth.
Contents
1. Recent trends in group management
1.1 Internal and external environment surrounding the review of group management 1.2 Recent trends towards reform of group management
2. Trends in decentralized management in Japan
2.1 Implementation of decentralized management by company type 2.2 Analysis of types of management promoting decentralization 3. Trends and issues in group management
3.1 Setting of decentralized organizations (consolidation of business) 3.2 Control of decentralized organizations
3.3 Consolidation of group 4. Conclusion
4.1 Features of group management in the development of decentralized management
Research Paper
1.グループ経営にかかわる最近の動向
1.1 グループ経営の見直しを迫る内外環境動向 企業経営の現場において、グループ経営のあり方が改めて重要な経営テーマとなりつつある。その背 景には、企業制度の大幅な見直しを始めとした企業の内外環境の変化がある。 (1)外部環境要因 ①企業法制の改正による影響 外部環境変化のうち最も重要なものが、各種の企業法制の改正である。具体的には、連結及びキャッ シュフロー会計制度への変更、連結基準の見直し、株式交換・移転制度の導入、時価会計への変更、連 結納税制度の導入、会社分割法の導入などが実施及び予定されており、財務プロセス等マネジメント・ システムの抜本的見直しや、連結ベースでの経営意思決定への転換が求められることになる。 ②世界規模で激化する市場競争環境 制度改正と並ぶ大きな外部環境変化として、世界規模で進む市場競争の激化がある。国内市場が成熟 化するとともに、競争のフィールドが完全に地球規模にまで拡大したため、世界規模での価格競争力や、 次世代技術の開発負担力の確保が至上命題となっている。 (2)内部環境要因 ①グループとしてのパフォーマンス低下 多くの企業で、収益力の悪化と低水準化が年々進展しつつある。さらに全般的な傾向として、単体よ りも連結での業績パフォーマンスが悪化している。一方、どの事業分野が本当に競争力があるか、ある いは収益が上がっているかさえ把握できていない問題を抱える企業もあり、抜本的なマネジメント・シ ステムの見直しが必要になっている企業も少なくない。 ②従来型の関係会社管理の弊害 従来多くの日本企業グループでは、親会社単体中心の経営原則が支配的であった。そこでは、市場価 格と直接的には連動しない取引価格の設定や、本体要員やその他のコストの押しつけ、押し込み販売等、 親会社の都合を優先させた運営が行われてきた経緯が存在する。しかし、連結会計制度の強化によって、 関係会社の効率性の追求、甘えの構造の排除といった問題が至上命題になってきている。 1.2 グループ経営革新へ向けた最近の取組み動向 以上までの環境要因をもとに、ここでは経営の現場におけるグループ経営への取組みについて最近の 動向を整理する。 (1)グループ会社の再編 ①グループ会社の統廃合 海外を含め多くの関係会社を抱える企業グループでは、会社数を減らしできるだけスリムなグループ構造に改めていくことが、優先課題として認識されている。実際の統廃合は、事業(業務)上の重複、 あるいは地域間における重複を解消する形で進められるケースが多い。 ②分社化(事業分社と機能分社) グループ会社の統廃合を進める一方で、新たに本体から分離・独立させる「分社化」の動きも活発化 している。この場合、大きく「事業の分社」と「機能の分社」の2種類に分類することができる。 ③完全子会社化 一般に新しく会社を設立した際、「株式公開・上場」を経営目標の1つに掲げる場合が多い。しかし、 現在、グループ経営を再強化していく意味から、資本支配力を強める動きが出始めている。上場子会社 の100%完全子会社化、過去に分離した事業子会社の本体への再合併などの動きが見られる。 (2)グループ・マネジメントの再構築 連結の時代を迎えるに際し、グループ・マネジメントのあり方も連結経営に合わせた形で作り替えて いく必要性が出てきている。例えば、事業区分を明確にするとともに、管理単位を単体から連結に拡大 した「連結事業管理」を徹底させ、1つの連結事業ごとに計画から管理、評価及び最終責任までを完結 させていく体制づくりに着手し始めている。 あわせて、業績評価システムの見直しも連結重視の方向へ動きつつある。多くの場合、各事業分野の 損益把握について連結の範囲で正確に捉え直すことが前提となる。但し業績管理という範囲で捉えるな らば、まだ収益(性)を明確にする段階にある企業がほとんどで、その使い方すなわち業績評価の結果 活用(例えば従業員への報償に反映させる)については試行の域を出ていない。 (3)持ち株会社への移行に向けた取組み 97年の商法改正によって「純粋持ち株会社」がグループ統治形態の1つの選択肢として新たに加わっ た。まだ周辺制度が未整備の状態にあるものの、すでに産業界では現実問題として検討を始める企業が 増えている。 検討段階から現状を捉えると、大きく3段階に分けることができる。 ¡)すでに移行時期も含め持ち株会社制の導入を決定している企業 (大和証券、ソフトバンク、NTTなど) ™)持ち株会社へ移行する方針を決定している企業 (トヨタ、富士ゼロックス、伊藤忠商事など) £)持ち株会社への移行を視野に入れたグループ内再編に取組む企業 (東芝、日立、味の素など)
2.わが国における分権経営の動向
2.1 企業類型別に見た分権経営への取組み 分権経営の推進は、一定規模以上に発展した企業にとって、いまや共通の経営テーマになっている。 ただこうした企業のなかには、本業比率が8∼9割に達する企業もあれば、1つの事業に偏ることなく 複数の独立した事業を抱える企業もあり、具体的な取組みについてはそれぞれ異なる点が少なくない。 (1)本業中心型企業における分権経営 本業中心型の企業では、機能別組織体制(職能部門別体制)をとるケースが多い。逆に事業部制(的) 組織体制は、新規事業や周辺事業に限定的に採用されるにとどまっている。本業が他事業分野に比べて 巨大な規模を持つために、他の事業と同列の事業部体制は選択しにくい事情がある。稀に事業部長を置 く場合があるが、結果的に重要事項はすべて経営トップに委ねざるを得ない状況に陥っている。このタ イプに属する企業としてはトヨタ、新日鉄、キリンなどが想定される。 ここでの問題は、単純に事業を分解できない状況で、厳しい経営環境を乗り切るだけの機動力をどの ようにつけていくのかにある。例えばトヨタでは、開発組織を設計機能別(シャシー、トランスミッシ ョン、ボディー等)の編成から車種カテゴリー(FR、FF、商用車)別に変更したが、このような括りで 全ての機能を分割し、製品事業部的な組織運営へ移行することは現実的ではないと判断している。むし ろ、地域本社機能を中心とした分権経営の可能性を検討中である。 また新日鉄では、巨大な製造部門を中心とした機能別体制を前提に、敢えて品種別損益に重点を置い たマトリクス管理に挑戦している。将来的には、可能な限り最終製品カテゴリー別(板材、線・棒材、 管材等)の製販一体体制を構築し、来る業界再編に備える格好をとっている。 (2)多角化型企業における分権経営 多角化型の企業では、事業分野ごとに事業部制を導入している場合が多い。各事業部はプロフィット センターとして位置付けられ、一定の損益責任がすでに課せられている。つまり事業としての切り分け と、事業部をベースとした分権的運営に関しては、ある程度の経験を有している。該当する企業として、 ソニー、松下電器、横河電機、神戸製鋼所などをあげることができる。 このタイプの企業が抱える問題意識は、従来の事業部管理を一層徹底させ、事業一貫体制の構築によ る分権化の推進にある。比較的細分化の進んだ製品事業部制の企業では、事業に不可欠な機能のうち、 全社機能組織部門(生産技術、物流、資材・購買等)や関連会社(生産子会社や販売子会社)に依存す る割合が高いなど、事業運営は事業部だけでは完結しない場合が多い。したがって、事業部長に与えら れた責任範囲も限定的な範囲にとどまっている。 一方これからの事業統括責任者に課せられるミッションは、担当する事業の事業価値の最大化になっ てきている。したがって現在進められつつある分権経営における責任範囲の考え方は、主管する事業領 域については関連する地域や組織を含め、トータルな事業責任を持つべきとの見方が一般的といえる。 従来型事業部制との比較でいうと、業績結果責任の範囲及び収益改善責任の範囲の両方が大きく拡大す ることになる。 業績結果責任については、単にP/L項目からB/S項目を加えた資本収益性までが追及されることにな り、プロフィットセンターに加えインベストメントセンターとしての色彩が強くなる。収益改善責任については、海外や子会社まで含めた連結事業単位での収益性向上策への対応が対象になる。以上を概括 的に表現するならば、事業部計画から事業戦略計画へ、事業部業績管理から事業業績管理へのマネジメ ント転換ということができる。 そうした改革手段として、カンパニー制が注目を集めるとともに、多くの企業ではすでに実践段階を 迎えている。しかもこうした本体内部における分権経営に向けた体制固めは、グループ経営の見直しと 並行して進められる場合が多く、相互に密接に関係した格好になっている。 2.2 分権経営を推進する経営形態分析 分権経営を推進する組織形態として、伝統的には「事業部制」と「分社/持ち株会社」の2つの考え方 がある。これに最近では「カンパニー制」が加わることにより、分権経営を推進する大きなトリガーと しての機能を果たしている。以下では、それぞれの考え方を概括するとともに、相互の関係性について 検討を行う。 (1)事業部制 事業部制は1つの法人内部に事業を単位とした独立採算組織を形成し、そこへ事業運営に必要な機能 や権限を下ろしていくことにより、分権経営を実現する形態である。 日本企業の事業部制に特徴的なのは、製造事業部や販売事業部、物流事業部など本来は事業を構成す る1つの機能を独立させた機能別事業部制を採用する企業が多い点である。また、製品別ではあるが事 業全体からすれば部分的機能しかもたない事業部制も多く取り入れられている。いずれも、事業という 概念が狭い範囲で捉えられている、あるいは事業が完結していないという意味で、不完全事業部制とい える。その背景には、事業部制組織のデメリットを可能な限り回避する目的があったと考えられる。 事業価値の最大化に向けた分権経営体制の徹底 責任範囲の原則:主管する事業領域について、関連する地域や組織を含め、トータルな事業責任を持つ 従来の事業部体制における責任・義務との主な相違 ・グローバル連結事業に対する責任の発生 (事業全体にわたる包括的な責任体制への拡大) ・事業計画策定における強力なイニシアチブの必要性 ・関係会社コントロールに関する責任範囲の拡大 ・プロフィットセンターとしての位置付けに加え、 インベストメントセンターの責任要素が付加 ・資本収益性に対する責任の発生 (P/L項目からB/S項目への業績責任の拡大) 収益改善責任範囲の拡大 業績結果責任範囲の拡大 図1.分権経営推進の方向性
ところが、最近では一転して、より米国流の完全事業部制組織に近づこうとする試みが多く見られる。 その最大の理由は、個別事業単位での自律性を高めそれぞれの組織における業績責任体制を強化するこ とである。さらに、事業構造改革への取組みが本格化しようとしている現在、事業領域別に明確に分離 された組織体制の整備が不可欠となっている。このように分権経営への取組みは、デメリットの回避か らメリットに重点を置いたものへと変化しつつあるといえる。 (2)分社/持ち株会社 分社化は法人格を明確に分離するという意味で、最も分権化が徹底された経営形態と捉えられる。ま た事業部制があくまで1つの企業内部での分権化であるのに対し、分社化は結果的にグループとしての 分権化を進めることになる。 マネジメント上の手続きは、基本的に別法人であるため、理論的には事業部制の場合に比べてシンプ ルになる。具体的にいえば、内部取引価格の設定や共通費用の配賦などに見られる細かな調整業務が軽 減される、あるいは事業評価における経済価値以外の要素に関する測定項目と方法が複雑になり過ぎる のを防ぐことができる。一方で、事業部制と同じやり方では、中央のコントロールが利きにくくなると いう面もある。 こうした考え方は特に新しいものではないが、わが国では純粋持ち株会社が解禁になったことから、 これと組み合わせることで新たな可能性を秘めた経営手法として、にわかに注目を集めるようになって いる。 特に経営者の立場から見ると、分権化手法というよりも、むしろグループ内の事業再編手法として分 社化対応が捉えられる。マネジメント基準を分離することにより、それぞれの競争市場に最適なコスト 構造を確立することが可能になる。あるいは分社を単位にグループ外との事業の組み替え(売買)も容 易に進めることもできる。 会社分割法の整備も急速に進められるなかで、分社化への取組みはますます盛んになることが予想さ れる。 事業部制組織のメリット(採用目的) ①市場やライバルを明確に意識した戦略対応力・環境適応力が向上する ②経営トップの負担軽減、意思決定の迅速化が図られる ③責任・権限・義務の三位一体化による業績向上への取組が徹底される ④事業構造改革に対する取組の容易化と加速化が期待できる ⑤マネジメント・スキルの高度化、次世代経営者の育成に有効である 事業部制組織のデメリット(阻害要因) ①企業の総合力や事業間でのシナジーの発揮が困難になる ②機能の重複や部門間調整のための管理部門肥大化等非効率性が増幅される ③人事の硬直化やセクショナリズムといった弊害が多くなる ④短期の業績指向が強まり将来の成長に対する先行投資が困難となる ⑤分権化された組織部門の運営を任せられるだけの人材が存在しなかった 図2.事業部制組織のメリット・デメリット
(3)カンパニー制 近年、分権経営形態の代名詞とされるのがカンパニー制であろう。他にも社内分社制や擬似分社制な ど、これに類する名称が使われているが、いずれも同様の枠組みを持つものと理解できる。 1994年にソニーが、それまでの19の事業本部と8つの営業本部を8つのカンパニーへ再編したのが最 初といわれる。その後、事業部制を採用している企業の分権化手法として、急速な拡がりを見せている。 組織構成で捉えると、大きくカンパニー(群)とコーポレートに分けられる。カンパニーは複数の事 業部を母体とし、関連する機能部門を取り込み、大括りに再編した組織である。コーポレートは、いわ ゆるグループ本社と位置付けられる場合が多く、カンパニーをまたがる経営資源配分を中心とした戦略 機能が期待される組織となっている。 組織運営上、事業の執行に係わる責任・権限は原則としてカンパニーへ委譲される。多くの場合、関 連する子会社もカンパニーごとの統制下に置かれ、結果的に連結事業にわたる収益責任を負うことにな る。カンパニーごとにB/Sが作成され、内部留保も認められることから、インベストメントセンターと しての要素が強められる。 但しマネジメントの仕組みに関しては、どこまでカンパニー別に改める必要があるのか、または改め ることが可能なのかについて議論の余地が大きい。人事面に関していえば、採用の別、処遇の別もある 程度許容されるべきものと考えられるが、現実には組合問題も絡み対応が難しいテーマといわれる。 (4)分権経営形態間の相互関連 以上までの個別経営形態の整理を踏まえて、カンパニー制を中心とした相互関係について検討を行う。 まずカンパニー制の持つ他の2つの分権形態から見た相対的位置関係を概括的に捉えると、「事業部制 の徹底形態」「擬似的持ち株会社形態」ということができるだろう。前者の捉え方は、従来の事業部制に 見られる不完全な事業運営体制から、完成度の高い事業自律型への転換を意味する。いわば事業運営サ イドに焦点を当てた分権的対応策である。一方後者は、将来の持ち株会社構想を念頭に、それに向けた 移行ステップとしての取組みである。前者の捉え方との最も大きな違いは、すでにグループ規模の改革 を視野に入れている点といえる。 次にそれぞれの形態を構成するマネジメント要素に着目した比較分析を行ってみよう。概要は図3に 示したとおりである。全般的にいえることは、事業の運営管理という面では分社/持ち株会社の場合と共 通する部分が多いが、経営システム基盤という面からは事業部制とほぼ共通した特徴を持っている。こ の点から、カンパニー制は両形態の折衷的要素が強いことが理解できる。 また図のように3つの経営形態を左から右に沿って眺めてみると、分権化の発展段階論として捉える ことも可能である。すなわち、事業部制からカンパニー制への移行は主に事業運営面で大きな改革を必 要とし、持ち株会社への移行に際しては経営システム基盤の見直しや本社再編を伴うと見ることができ る。 それでは、カンパニー制それ自体が1つの分権経営形態として、固有の意味なり意義を持つものとい えるのだろうか。1つ考えられるのは、従来の日本型不完全事業部制の是正形態としての見方である。 現体制を打開するための処方箋としては良くまとまったパッケージだといえる。ただ具体的な中身(マ ネジメント要素)については、本来の、もしくは米国型の事業部制と大差がないことから、日本的手法 ではあるが日本初世界標準型といえるものではないのである。
3.グループ・マネジメントの動向と論点
3.1 分権組織の設定のあり方(事業連結のあり方) 単一の事業しか営んでいない企業であれば問題にはならないが、複数の事業を営んでいる企業は、そ れら保有事業を効果的に管理する上で最適な管理組織単位を模索していかなければならない。 分権経営とは、単純に最小単位となる事業(事業部門や子会社)へ権限委譲すればよいわけではなく、 通常、完全な中央集権と最小事業単位の中間レベルに位置付けられる組織単位に対して行われる。競争 力の構築のために事業間シナジー効果を求める必要がある一方で、管理上の効果・効率性を求めなけれ ばならないためである。従って、グループ・マネジメントを展開する上では、複数の事業を括り管理単 位とする事業連結のあり方が問われる。 (1)分権組織の設定における論点 ①事業の括り方 第一に、権限と責任を委譲する分権組織を設定する際、事業をどのような視点や単位で括っていくか が論点となる。 個別事業部を分権組織単位とすることも考えられるし、複数の事業部を横断的に括ることもできる。 その動向を捉えることによって、企業が今何を問題として捉え、どういう方向に向かっているかが理解 できる。 また、事業を括る視点もポイントとなる。そこでは、製品別に括るのか、顧客別に括るのかなどが論 点となってくる。 責任の範囲 主要業績指標 資本金 内部留保 配 当 投資権限 事業構造改革への取組 人材の帰属 マネジメントの仕組み 企業の範囲内で本社が主導 内部留保せず 配当概念なし 本社決済が原則 本社採用 全社統一基準 限定的、部分的責任範囲 配布せず P/L項目 従来型事業部制 カンパニー制 事業に関する包括的な責任 (子会社も統制下に入れる) +B/S項目 社内資本金制度の採用 内部留保あり 配当や社内金利制度 一部利益を再投資 本社採用 全社統一基準が原則 分権組織の役割が高まるが原則 として本社がグループ内で主導 事業に関する包括的な責任 親会社による「出資」 内部留保あり 配当責任 独立法人格としての投資権限 個別採用+グループ人材 企業別の仕組み グループを超えた 企業間結合の可能性が高まる 分社/持ち株会社 大きな変革を伴う 緩やかな変革 +事業価値 図3.分権経営形態別のマネジメント要素比較②関係会社(子会社等)統括のあり方 第二に、関係会社をどう位置付けるかという論点がある。特に連結対象となる子会社は、今回の連結 決算型への会計制度の変更により、別会社というより、1つの事業部門に過ぎなくなる。 分権組織単位を設定するということは責任と権限の範囲を規定するプロセスに他ならないが、そのな かで、関係会社をどう位置付けていくかが論点とならざるをえない。 ③グローバル統括のあり方 グローバルな事業展開を行っている企業は、海外の現地法人をどのように管理していくかが大きな問 題となる。 地域に自主性を持たせる形で管理体系を構築する考え方もあれば、グローバルを事業別に管理してい く考え方もある。海外現地法人をどのような形で統括していく傾向にあるかも、1つの大きな論点とな ってくる。 (2)近年の分権組織の設定事例 ここでは、カンパニー制等の議論が盛んになってきた97年以降の組織変更事例のなかで、社会的な論 調において特徴的かつインパクトのあったものを取り上げる。 ①ソニー ソニーではカンパニー制を導入し、10の事業(カンパニー)を単位として分権経営を進めてきた。し かし、99年3月、それら10のカンパニーを4つのコアとする事業ユニットをベースにした組織体系に再 編したうえで、分権経営を進める意向を示した。 同時に、新設される株式交換制度を利用して、ソニー・コンピュータ・エンターテーメント等の上場 子会社3社を完全子会社化することを表明した。完全子会社化した暁には、ソニー・コンピュータ・エ ンターテーメントを1つのコア事業ユニットとして位置付けることが予定されている。 ディスプレー ホームAV インフォメーション・テクノロジー パーソナルAV パーソナル&モービルコミュニケーション ブロードキャスト イメージ&サウンドコミュニケーション セミコンダクダー コンピュータベリフェラル&コンポ レコーディングメディア&エナジ コーポレートラボ マーケティング 支援・その他部門 バーチャルカンパニー 本社 ラボ デジタル・ネット ワーク・ソリューション ホームネットワーク パーソナルITネットワーク (株)SCE コアテクノロジー&ネットワーク ブロードキャスト&プロシステム コア事業ユニット 資料:SONYプレス資料等よりMRI作成(99年4月現在)
②旭硝子 旭硝子では、94年に、事業部(硝子建材、化学品)を軸に国内外の関係会社を含めて管理を行う連結 事業部制を導入した。例えば、板ガラスの生産及び販売に関連する事業部、支店、関係会社、海外現地 法人の業績は、すべて連結して捉えられ硝子建材事業本部の責任となる。 しかし、99年の組織変更では、例外的に、米国と欧州の硝子事業子会社を連結対象から外し、別個の 分権経営の単位とすることに改めた。両海外子会社は、そもそもM&Aによって取得した事業であり、そ の企業規模も大きい。日本の硝子建材事業責任者の管理可能な範囲を超えているとの判断により、別事 業ユニット化されている。 これにより、従来は1つの事業ユニットとして捉えられてきた旭硝子の硝子建材事業は、日・米・欧 の3つの事業ユニット(分権単位)に分けて、業績、関係会社管理が行われることになる。 ③東芝 東芝は、99年4月、新たなるグループ経営を前提とする組織改革を行った。従来、15に細分化されて いた事業単位を8つのカンパニーに再編しカンパニー制を導入すると共に、すべての関係会社を「カン パニー関連会社」「分社会社」「連携会社」「一般会社」の4つに分類した。 「カンパニー関連会社」は、関連するカンパニーと一体となって事業展開すべき関係会社で、カンパ ニー統括の基に連結して管理される。「分社会社」は、東芝の事業ドメインの1つを担うべき関係会社 で、カンパニーと同格の事業ユニットとして本社で管理される。 「連携会社」は、事業ドメインを担うものの、撤退、売却等の整理対象とすべき部分を残している関 係会社。「一般会社」は、東芝の今後対象とする事業ドメインから外れたノンコアの関係会社と定義され ている。 この考え方は、これまで、親会社と子会社は対等であり、関係会社は自主独立経営を志向すべきとし てきた同社の経営方針と180度異なる考え方となる。同時に、事業ドメインを担う関係会社については出 資比率を高め、本社の支配力を高めていく意向を示している。 ④ABB(アセア・ブラウンボベリ) スウェーデン・スイスを拠点とするグローバル重電メーカーのABBは、93年10月より「事業と地域の マトリクス体制」をベースにして分権経営を推進してきた。 具体的には「発電機器事業」「送変電・配電機器事業」「産業機器・ビルシステム事業」「輸送用機器事 業」「金融サービス事業」の5つの事業セグメントと、「欧州」「米州」「アジア・太洋州」の3つの地域 セグメントを設定して、各々責任と権限を持つ副社長を配して収益の極大化を推し進めてきた。 しかし、98年8月、地域セグメントの役割は終わったと結論づけ、地域セグメント制を廃止し、事業 を軸にしたグローバル事業連結型の組織に移行させた。同時に、従来、5つに括っていた事業セグメン トを8つに細分化している。 こうした組織変更を行った背景には、10年間、地域セグメント制に基づいて経営を行ってきたことに より、地域への密着的事業展開の土台が完了したとの認識がある。今後の効果追求は、事業別にグロー バルな事業連携を強化することにより、コスト競争力、商品開発力を高めていくことが必要だという認 識を持っている。
(3)分権組織の設定に関する動向 現在の分権経営の進展下において、分権組織単位の設定について、次のような動向が分析できる。 ①顧客別の括り方による事業間シナジーの追求 事業の括り方は、ソニー、東芝のように、より大括りにするところもあれば、ABBのように、従来の 事業ユニットを分割して細分化する動きもある。結局のところ、今後の戦略に対応する現状の課題に基 づいて、大括りにするか細分化するかの判断がなされているといえる。 但し、日本企業においては、これまで細分化された事業組織単位が採用されてきた傾向が強い。その ため、情報機器と家電の融合した情報家電に代表されるような、事業部の枠を超えた業際的でかつ将来 性の見込めるイノベーションが希薄になったという反省が見受けられる。 概して、組織単位の枠を超えたシナジー効果は期待しづらい。組織単位は、通常、売上目標、開発目 標等の各々の目標を設定しているため、日々その目標達成に集中してくるため、余計な動きを追求しな くなるためだ。 そうした閉息感の打破も1つの狙いとして、近年では、より大括りに分権組織を設定する傾向がある と捉えられる。また、従来は製品別の括り方が一般的であったが、それではシナジー効果が得難いとの 反省から、顧客別の括り方が重視されつつある。 ②関係会社の管理における事業連結性の重視 伝統的な日本企業では、関係会社は、本体事業とは別に管理される傾向があった。もちろん各事業の 運営上では、関連する本体事業部門との連携は取られているものの、事業部門は、関係会社の管理を全 面的に委譲され、業績責任まで負わされてきたわけではない。 しかし、連結制度への移行が予定されているなかで、本体と関係会社を別々に管理する枠組みから、 関連する関係会社を可能な限り本体の事業部門毎に連結的に管理していこうとする動きが活発化してい る。 その場合、関係会社の運営責任及び業績は、連結事業部門長の責任とされる。関係会社は、このよう グローバル 3地域統括 欧州 米州 アジア 太洋州 発電機器 電力送変電 電力配電機器 オートメーション 石油・化学 製品・請負 輸送用機器 金融サービス 発電機器 送変電・配電機器 産業機器・ビルシステム 輸送用機器 金融サービス 5 事 業 統 括 資料:ABBプレス資料等よりMRI作成(98年8月現在) 図5.ABB(アセア・ブラウンボベリ)のグローバル組織変更
門として捉えられつつある。 ③関係会社の位置付けの質的な再構築の推進 子会社、関連会社等の関係会社の管理は、一般的に従来、関連事業部門において一元的に管理されて きた。あえて指摘すれば、各社の質的側面というより、出資比率等の観点から機械的にも近い分類管理 がなされていたといえる。 しかし、近年では、グループ全体の観点から、関係会社各社の質的な位置付けを捉え直し、その分類 によって管理の強弱をつけようとする動きが強まっている。例えば、東芝では、事業ドメインの観点を ベースに、関係会社を4つに分類して管理しようとしている。一方、ソニーは、ソニー・コンピュー タ・エンターテーメントを完全子会社化し、本体事業部門と同格となる戦略事業ユニットに位置付けた。 こうした動きは、従来はあまり取られてこなかった考え方で、近年に特徴的だといえる。その背景に は、あらゆる企業にとって、連結ベースでの収益を極大化することが最大の目的となり始めている点が 指摘できよう。親会社と子会社・関連会社といった考え方は形骸化しつつある。 ④事業別のグローバル連結への模索 海外現地法人の統括も、関係会社同様、事業別に連結して管理する考え方が広まっているといえる。 旭硝子は、93年よりその考え方を採用し、ABBでも、98年に地域別の管理体系を廃止した。 しかし、一方で、旭硝子は硝子建材事業に限り、日・米・欧の3つの地域別に分権組織を設定し直し た。そうした意味では、地域統括会社(地域持ち株会社等)を設置して地域統括性を強めるか、事業ベ ースでグローバル・コントロール体制を強めるかは、一定の結論は得られてない。しかし、事業重視か 地域重視かは、発展論的に捉えることも可能である。 例えば、初期段階は、輸出中心の事業スタイルになるため、事業重視の管理にならざるをえない。し かし、徐々に地域に浸透し始める第二段階では、地域競争力の強化を目的に地域重視の分権組織の設定 がなされる。さらに地域浸透が一定レベルに達する第三段階になると、一層の商品・コスト競争力を求 め、事業を軸にしたグローバルな管理体制が志向されるという考え方である。 いずれにせよ、その判断は、現状における課題と今後の戦略に規定されてくると考えられるが、最終 的には、事業別のグローバル連結体制下において、事業別のグローバルな収益の極大化が志向されてく ると考えられる*1 。
3.2
分権組織のコントロール
(1)分権組織とマネジメント・コントロールの考え方 ①分権事業組織のミッション 既に述べたように、分権事業組織のミッションは主管する事業領域に関する事業価値の最大化であり、 そのためのインベストメント・センターとしての役割の発揮である。そのための具体的な機能期待とし ては次のようなものが挙げられる。 ◆企業グループの全体目標を達成するための事業目標の設定 ◆事業目標を実現するための戦略策定 ◆戦略を実現するための各種機能整備◆戦略実施段階における各組織・機能のコントロール ◆分権組織内における最適な資源配分の実現、等 分権事業組織は多くの場合単年度のP/Lベースでの独立採算単位としてスタートしたが、やがて事業 別B/Sに対する意識も高まりを見せ、現在では事業の生み出す価値と資産効率性の向上に対する要請が 高まっている。 現在カンパニー制を指向している企業グループは、事業部制組織の発展段階の第3ステップにあるも のとして捉えることができる。さらに、カンパニー制への移行を実践した企業の多くは、将来分社・持 ち株会社化構想を視野に入れていることが知られている。このように、分権事業組織に対してはますま す独立した事業体としてのミッションが強く要求される傾向にあることが指摘できる。 ②マネジメント・コントロールの考え方 マネジメント・コントロールとは、いわゆる「Plan―Do―Check−Action」の管理サイクルを適切に 構築することであるが、主たる目的は3つある。 ¡)分権組織の活動目標と全体目標との整合性が確保されること ™)活動目標の達成度合いを評価すること Step1:独立採算単位としての事業部組織の導入 *事業部組織の管理は単年度P/Lベース Step2:事業別B/Sの作成 *管理会計制度上P/Lに加え、B/Sを作成するが、 業績評価上は活用しない Step4:分社・持ち株会社体制 *事業単位での競争力強化を目指したマネジメント 体制(給与体系等)の独立性追求 *事業ユニット単位でのリストラ加速 Step3:事業別B/SやC/F管理による分権経営の徹底 (いわゆるカンパニー制) *資産効率等に対する業績責任の明確化 *分権組織の投資権限の拡大 *分権組織の連結業績責任 *事業ユニット内リストラの加速 図6.分権事業組織の発展段階
これらの目的から考えると、マネジメント・コントロール手段として大事なのは、戦略目標体系の構 築を意味する経営計画体系のあり方、活動目標と活動実態の乖離を把握する業績評価制度のあり方、戦 略目標設定と軌道修正をダイナミックに行えるための意思決定体制であると考えられる。 特に、連結経営時代においては、グループ全体の目標設定能力と、連結事業体制における分権組織運 営のためのマネジメント・コントロールが重要となる。 (2)意思決定体制のあり方 ①トップ・マネジメントの機能変革 今後トップ・マネジメントはこれまで以上にグループ全体の統治と戦略構築能力が求められる。個々 の事業領域におけるパフォーマンス向上策は分権組織の責任者の活動に任せ、トップ・マネジメントは グループ事業構造のあり方を最適化すること等によるグループ・パフォーマンスの向上に特化する必要 がある。 従来日本企業のトップ・マネジメントは、各事業部門や機能部門の最高責任者的な役割が比較的高い 傾向にあったが、今後はトップ・マネジメント機能の質的な変革が求められるようになる。執行役員制 の導入など、取締役と業務執行担当者の明確な分離を目指す取組みも最近では増えてきている。 但し、このような変革を実践する上では、個々の事業領域における自律的な運営能力が確保されてい ることが前提となり、分権化の強化との両輪として進められる必要がある。カンパニー制の導入と執行 役員制の導入がワンセットで検討される傾向があるが、それはこのような事情を裏付けるものである。 ②経営計画体系 経営計画は、事業領域単位でグローバル連結されたものが策定されることが原則的な考え方となる。 従来関連会社の経営計画は関連事業部が取りまとめることが多かったが、今後は主管組織が事業連結で 策定することが基本となる。 経営計画策定プロセスとしては、本社が事業領域別の基本的な業績目標や重要戦略目標を設定し、そ れを事業主管組織であるカンパニー等の分権組織に提示する。各カンパニー等個々の組織は、その事業 目標を達成するための具体的方策と事業運営に関する戦略計画を策定し、それを統轄している組織部門 に対してブレークダウンする。従来の事業部制組織の運営においては、戦略計画のブレークダウンが関 連会社をも含めた範囲で行われていることは比較的少なかった。 またグローバル事業連結で経営計画を策定するに当たっては、地域統括組織との関係が問題になるこ とが多かった。地域には地域独自の計画策定の裁量権が与えられるべきとの考え方が強いためである。 但し現在は事業という括りを優先する考え方が強まる傾向にあるといえる。 ③投資権限 自律的な分権経営を推進するに当たっては、分権組織の投資権限のあり方が重要な要素となる。分権 組織がグローバル連結での事業責任を負うのであれば、当然のこととして分権組織はその責任を果たす ために必要な経営資源の配分権を持たなければならない。 ただ現実には、分権組織が自らの責任において投資を決定できる仕組みを持つ企業は皆無に近い。分 権組織はインベストメント・センター的性格を強め、事業が生み出した過去の収益の蓄積(内部留保) と将来の収益期待を考慮した最適な資源配分を実践する責任があるにもかかわらず、投資に関しては一 定の制限が加えられているのが一般的である。
一定金額以上の投資案件に関しては依然として本社の承認を得ることが必要とされている。但し、承 認を必要とする投資金額の範囲は引き上げられる方向にある。また、分権組織に帰属する投資ファンド に関しても、従来よりも分権組織の業績をより強く反映したものになっていく傾向が見られる。多くの 場合、分権組織が生み出す収益やキャッシュ・フローの一定割合を分権組織の留保分として認めるケー スが増えている。 (3)マネジメント・コントロールと業績評価 ①業績評価目的 業績評価が必要とされる場面は複数あり、従って業績評価目的もそれぞれの場面に応じて異なる。業 績評価を行うことの目的が異なれば、業績の評価方法も当然のこととして異なったものになる。それぞ れの場面における業績評価ニーズの内容は次の通りである。 ¡)ステークホルダー(株主・債権者)による企業評価: 投資の安全性、収益獲得能力、債務支払能 力、信用を判断するための事業価値の総和としての企業価値情報 ™)経営トップによる分権事業責任者の評価: 分権化した事業のパフォーマンス情報、マネジメン ト・コントロール情報 £)経営トップまたは分権事業責任者による分権地域責任者の評価: 分権化した地域における事業の パフォーマンス情報、マネジメント・コントロール情報 ¢)経営トップまたは分権事業責任者による分権機能責任者の評価: 機能のパフォーマンス情報、マ ネジメント・コントロール情報 ∞)分権地域と分権機能の上位組織の責任者による下位組織の責任者の評価: 機能のパフォーマンス 情報、マネジメント・コントロール情報 §)経営トップまたは分権経営組織責任者による関連会社の評価: 関連会社の性格により事業または 機能のパフォーマンス情報、マネジメント・コントロール情報 ¶)分権経営組織の責任者による従業員の人事考課: 処遇を決定する上で必要とされる要素に関する 情報 以上を総括すると、業績評価を行うために必要とされる情報概念の種類は、「事業の価値・パフォーマ ンス情報」「機能のパフォーマンス情報」「マネジメント・コントロール情報」「人事考課関連情報」とに 分類することが可能である。これらはあくまでも概念上の区分でありそれぞれが全く独立して存在する ものではなく、その内容に関してはかなりオーバーラップする部分があると考えられる。
②分権組織の業績評価 最近経営トップや本社は、それが認識している最も大きな事業という単位での業績のみを捉え、それ 以下の組織や機能の業績に関してはカンパニー等主管する組織部門に任せてしまうという傾向が強まっ ている。 業績評価指標としては、B/S項目に関する重視度が高まるとともに、キャッシュ・フローや経済的付 加価値等の企業評価のために用いられる指標が採用されるケースが増えている。従来の業績評価では定 性的な業績と定量的な業績の総合評価システムが構築されてきたが、最近ではむしろ少数の重要な経営 指標にフォーカスする傾向も見られる。 分権組織の責任範囲が拡大され独立事業体としての性格が強められていることに対応して、業績評価 も財務的指標が重視されるようになってきている。従来の事業部制組織の運営においては、分権化度合 いがそれほど高くなかったために、かえって業績評価指標が複雑化していったという経緯があると考え られる。 ステークホルダー 分権地域の責任者 分権機能の責任者 従 業 員 関係会社 分権事業の責任者 (事業部長、カンパニープレジデント) トップマネジメント 株 主 債権者
…
分 権 経 営 組 織 企 業 ① ② ⑤ ⑥ ⑦ ④ ③ 図7.業績評価の局面(4)関連会社マネジメントのあり方 ①関連会社の類型化と対応の方向性 関連会社のマネジメントを考えるに当たっては、その類型化を行っておく必要がある。全ての関連会 社に対する同一スタンスでの管理は弊害が多いためである。 関連会社の類型化基準としては、①関連会社の事業特性、②関連会社事業とグループ会社の依存関係、 今後の動向 集権的 分権的 分権化の度合い 単純 複雑 業 績 評 価 の 複 雑 性 現在の位置 図8.分権化度合いと業績評価体系の複雑性 依存度大 独立事業 Ⅰ.外販強化事業会社群 周辺事業 補完事業 支援事業 依存度小 独立事業 周辺事業 補完事業 支援事業 戦 略 重 要 度 大 戦 略 重 要 度 小 Ⅵ.選択的強化事業会社群 Ⅶ.徹底効率化・機能統廃合対象会社群 Ⅱ.戦略再構築会社群 Ⅴ.機能再定義会社群 Ⅲ.積極強化・拡大 事業会社群 Ⅳ.グループ内貢献度強化会社群 図9.関連会社の類型化と対応の方向性
立事業、周辺事業、補完事業、支援機能に分類される。独立事業とは、新規事業分野等既存のグループ 内事業とは直接的な関連を持たずに展開できる事業を指す。 関連会社はその類型化された位置付けによって、将来の対応方向性も異なる。基本的な方向性として は、事業性の強い関連会社群は外販を積極的に拡大させる方向で、補完機能や支援機能を担う関連会社 群に関してはグループ貢献度を高める方向が目指されるべきである。全ての関連会社に対して同一基準 での収益性を求めることは避けなければならない。 ②関係会社管理の体制 従来関連会社は関連会社管理部等のセクションが一括管理する傾向が強かった。関連会社管理部等に よる管理は依然として続いているものの、近年は関連会社の類型によって管理の主体が変わっているケ ースも見られる。 独立事業関連会社に関しては企画等戦略ビジョン策定部署が、周辺事業及び補完機能関連会社に関し ては主管事業部門が、支援機能関連会社に関しては本社対応部門が主管する傾向にある。特に連結経営 時代を迎えるに当たって、主管事業部門との連結業績が重視されるようになってきており、関連会社を 含めた事業ユニット単位で完結した経営を実践することが求められている。 また最近の傾向としては、本社経営企画部門が関連会社管理機能を取り込むケースが増えていること が挙げられる。関連会社を含めた戦略的な一体性を重視した本社体制が必要との判断からである。 現実には複数の事業部門が同一の関連会社を活用している場合の主管問題が発生する。そのような場 合には、財務諸表をそれぞれの事業部門別に分割することが行われているが、主管部署問題の解決には ならないケースが多い。複数の主管部署を設置して運用する方法と、主管部門を一本化し、あとはグル ープ内取引として処理することによる業績調整で処理する方法とが考えられる。後者の方法が主管部門 の明確化という観点からは望ましい。 ③関係会社業績管理のあり方 関連会社の業績評価も事業の特性に応じて実施されるべきである。大別すると事業分社である独立事 業関連会社群と周辺事業関連会社群、それに機能分社である補完事業関連会社群と支援機能関連会社群 とが考えられる。事業分社の関連会社群に関しては、原則事業業績管理に準じた評価が行われることと なる。周辺事業はそれに加えてグループ貢献度が考慮されることが多い。 機能分社の関連会社群は損益や資産・負債が計算されるものの、業績の評価においてはグループ貢献 度で評価することが基本となる。 関連会社の評価は、通常の財務諸表(主としてP/L)を中心としている企業と貢献度等を総合得点化 している企業とがある。上記観点に立つのであれば、全ての関連会社をその事業特性を考慮することな く損益的観点からだけで評価することには問題があるといえる。
3.3 グループ統轄機能のあり方 (1)本社部門のミッション 分権経営の強化に当っては、分権組織の自律的活動能力を高めることと同時に、それに対応したグル ープとしての求心力を保持することが必要となる。分権経営組織の自律性が高まれば高まるほど、その 一方ではグループを統轄する本社部門の機能的な高度化が要求される。 グループを統轄する本社の機能はグループの戦略的な要としてのヘッドクォーター機能と、グループ 横断機能とに大別される。 グループ・ヘッドクォーター機能としては、次のものが挙げられる。 ◆分権組織間の最適な資源配分を実現すること ◆そのことにより企業グループとしての現在の収益力を確保しつつ将来の成長機会の取り込みを実現す ること ◆経営資源の活用における効率性を実現するための事業分野の統廃合を進めること ◆グループ・マネジメントのためのインフラを整備すること ◆分権組織の活動をモニタリングすること また、グループ横断機能としては、地域戦略や機能戦略を展開するための機能があると考えられる。 関係会社 事業分社 機能分社 独立事業会社 事業業績 による評価 グループ貢献度 による評価 周辺事業会社 補完事業 支援事業 図10.関連会社の業績管理
(2)事業構造変革機能 グループ本社の最も基本的な機能は、グループ事業構造再構築へ向けた取組みである。個別事業ユニ ットレベルでの収益性改善と周辺事業領域の取り込みだけではなく、将来のグループ・ビジョンを策定 しその実現に向けた事業再構築に取組むことが求められている。 ①事業間での資源配分 事業構造を再構築するためには、事業間での資源配分を調整することが第一に求められる。経営資源 がそれぞれの分権組織内に固定化されていたのでは、分権組織を超えたダイナミックな事業構造変革は 実現できない。 分権組織の自律性が強調されているにもかかわらず、投資権限に関しては一定部分本社の関与が認め られるのは、このような事業構造変革のための機能をグループ本社として持ち続けるためである。 経営資源の源泉は各分権組織にあるが、その分配先は既存の分権組織のこともあれば、本社部門であ ったり新たな組織であることもあり得る。 ②成長機会確保のための新規事業分野創出 グループ事業構造改革は、将来の成長機会を確保するという視点が重要である。グループ本社は将来 の成長機会を取り込むための仕組みと、そのための経営資源を確保することが要求される。 将来の成長機会の確保という観点からは、コーポレートR&D機能を持つことが考えられる。次世代事 業の立上げに必要なR&Dは本社管轄の体制下で進められるケースが多い。メーカーでは中央研究所機能 がこれに相当する。但し、コーポレートR&D機能に関しては、事業化のための手段としては有効性が乏 しいという認識から敢えて機能を縮小し、分権組織体制下に組み込もうとする動きがあることも認識し ておくことが必要である。重要なのは、どちらが実質的な意味で事業構造変革のための新規事業創出能 力を持ち得るかである。 最近では、事業環境の変化速度が速くまた複雑化しているため、事業の立上げに必要とされる機能を 全て自前で揃えることが困難になってきている。そのような場合、M&Aが有効な手段として浮かび上が ってくる。これからの事業機会獲得のためには、グループ外に存在する有望な資源の取り込み能力が大 きく影響するようになり、グループ本社機能の大きな役割となる。 グループ 本社機能 グループ戦略 ヘッドクオーター グループ横断機能 ◆事業構造改革 ◆マネジメントインフラ整備 ◆分権組織のモニタリング 図11.グループ統轄機能
③事業分野の統廃合 現実の問題として経営資源は有限であり、その活用に当たっては選択と集中を強化することが今後ま すます重要になると認識されている。 本社は新規の事業機会創出も含めて資源の配分を適正化する機能を持たなければならないが、その為 には既存の事業領域において相対的に効率性が劣る事業領域における経営資源の集約化や撤収を実践し なければならない。 多くの企業にとっては、成長機会の取り込みに取り掛かる前に、まず既存事業領域における効率性・ 収益性を高める必要があるといえる。集中すべき事業領域の選択を行わないまま、資源配分の適正化を 行うことは無意味である。これからのグループ本社は既存の事業領域の効率性を判断し、より有効な事 業構造へと転換するための撤退領域を適確に見極めるという能力が求められており、そのような能力が 発揮されることによって初めて資本効率の向上が望めるようになる。 (3)マネジメント・インフラの整備 分権組織を運営する基本的な枠組みを決めることがグループとしてのマネジメント・インフラ整備に 当たる。具体的には、組織構造の設計、組織運営原則(責任権限体系)の設計、各種管理制度の設計等 である。 ただすべての環境や企業において通用する完璧なマネジメント・システムが存在するわけではない。ど のようなマネジメント体制にも必ずメリット・デメリットが混在するので、どのようなメリットを優先 すべきかを明らかにした上でマネジメント・インフラを整備するという視点が重要となる。また、構築 されたマネジメント・インフラは完璧なものではないため、その改廃をフレキシブルに行えることもこ れからの経営においては重要な要件となる。 現状では分権組織活動の自律性を強化するという大きな流れが存在するが、経営環境の変化によって は、再び集権化の流れが強調される可能性もある。過度の分権化や経営環境の変化に対応したゆり戻し が起きる可能性は極めて高いと考えられ、その転換点を見極める能力をマネジメントとして持つことが 重要である。 (4)分権組織活動のモニタリング 分権経営組織がどのような方向に進もうとしているのか、それがグループ全体にとってどのような意 味を持つのかを本社はモニターしておく必要があり、それをコントロールするための承認を与える権利 を持ち続けることは必要である。本来独立した会社が株主や監査役からのチェックを受けるのと同様に、 分権組織もその自律性が尊重される一方で本社のチェックと、場合によってはコントロールが必要であ る。 モニタリングのための制度としては、本社部門から監査スタッフ的位置付けの人材を派遣するという 方法が今後普及すると見られる。分権経営先進企業でこのような試みが見られるようになっている。こ のような制度は、分権組織をあたかも独立の会社として扱うという考え方の延長線上にあるものである。 分権組織の自律的な活動を促進する一方では、各分権組織のマネジメント標準を確立し、それに適合 した情報技術の活用によりモニタリングの機能向上を図ろうという試みもある。グループ共有のデータ ベース構築とその自由な活用である。このような目的でのデータベース構築や情報活用を推進するため には、マネジメントとしての情報活用ニーズを整理した上で標準化しておくことが求められる。
4.総括
4.1 分権経営進展下におけるグループ・マネジメントの特徴 連結決算制度の導入や市場型金融システムへの移行といった環境変化があるなか、現象的には、カン パニー制や持ち株会社制を導入する企業が増加している。 そうしたなかで、以上までの検討をもとに、グループ・マネジメントという視点から企業の動向を整 理すると、次のような特徴を分析することができる。 (1)事業のカセット化の推進 カンパニー制の導入や、持ち株会社制を前提とした分社化の推進は、事業のカセット化の手法として 捉えることができる。 従来、日本企業では、事業は全社の1つの構成要素として捉えられていた感がある。そのため、本来 なら事業部門に委譲可能な戦略策定(決定)や広告といった一部の機能は、全社調整の必要性という観 点から、本社が統括する図式が取られている。 しかし、近年では、そうした権限は可能な限り委譲し、各事業を1つの完成された経営体に近づけて いこうとする動きが活発化している。事業のカセット化が進められているといえる。 (2)親子概念の崩壊(グループ・トータルでのカセット化) そうした事業のカセット化は、まさに、グループ・トータルの観点から進められるようになりつつあ る。その動向は、関係会社を含め事業連結で管理しようとする動きに代表される。 そうした考え方では、子会社が事業のカセットとして戦略事業ユニットに位置付けられることもある。 従って、場合によっては、本体事業が子会社事業に取り込まれるということも容認される。 そうした意味では、従来、わが国のグループ・マネジメントに一般的であった親子関係という概念は 崩壊しつつあるとも捉えられる。 (3)カセット化をベースにした雇用問題への対応 事業のカセット化が進められる以前の企業では、新事業への取組みは企業の第二の収益の柱に育て上 げ、本業の余剰人員を吸収するという位置付けがあった。しかし、事業のカセット化を進めることで、 その安易な労働移転の退路を閉ざしつつある。 事業で真に勝ち残るためには、事業競争力に関する相応の知見とノウハウが不可欠となる。その点を 考慮すると、容易な労働移転は困難だとする見方が強まりつつある。従来、関係会社には雇用の受け皿 的役割があったが、事業連結の考え方を取ると、その考え方は通用しなくなる。 一方、事業のカセット化は、事業の売却単位を明確化するという意味も持つ。余剰人員を事業ごと売 却することで、レイオフではなく、グループ全体での人員削減を可能にする動きが捉えられる。 4.2 今後の課題・論点 すでに見たとおり、現在進展しているグループ・マネジメントの見直しは、事業毎の世界連結体制を 徹底するため、事業別分権経営をめざす方向に動いている。そこでは、事業の自律的運営に必要となる新たな責任・権限体制や連結業績管理システムなどについて、いまだ完成されたものはないものの、方 向性だけは明確になりつつある。今後は、その延長線上にTry & Errorを繰り返しながら最適解に近づ けることが、現実の取組みテーマとなる。 一方これから新たな課題の出現も予想される。最も重要なテーマとして、グループとしてのマネジメ ント機能の再統合をあげることができるだろう。分権化・自律化を推進する一方で、分権体制とのバラ ンスをとる意味で、グループ共通機能の再構築が次の論点となってくる。 (1)横断的機能の統合 現在のグループ・マネジメントは、事業のカセット化が特徴的である点は前述した。従って、本社の 調整機能さえ一部事業部門へ移管が進んでいる。 しかし、資金調達、物流といった機能に代表されるように、事業部門へ移管するよりも、全社的な受 け皿を一本化して、各事業のコスト削減等の効率化の見込める機能も存在する。 例えば、横河電機では、連結決算(経理)の円滑な実施と、グループ・トータルでの資金圧縮を狙い として、グループ・ファイナンス会社を設立した。また、現在の国際物流のルールでは、異なる荷主の コンテナ混載が行えない点を克服するため、グループ全体の国際物流を請け負う物流子会社を設立した。 現在のところ、そうした横断的な機能統合に積極的な企業は一部に過ぎず、また、どの機能統合の効 果が見込めるか方向性が明らかになっているわけではない。しかし近い将来、分権型のグループ・マネ ジメントを維持しつつも、グループ・トータルで効果・効率を見込むための横断的機能統合の動きが大 きな課題になってくるとみられる。 (2)よりリアルタイムな経営情報の把握 カセット型のグループ事業が整備され、そのカセットをベースに事業別あるいは地域別の連結分権管 理が進展すると、それらカセット連結を前提とした、よりリアルタイムな経営情報の把握が求められて くる。 例えば、事業別のグローバル連結を展開している企業では、月次遅れで連結事業別の収支情報が把握 できるのが平均的な姿であろう。 ソニーは、それを8営業日までに短縮する計画を示しているが、グローバルなレベルでかつ一層研ぎ 澄まされた競合を強いられるようになってきている以上、可能な限りリアルタイムに近い状況で経営情 報を把握し、より俊敏な対応を図ることが事業責任者には求められている。 情報は、効果的な対応を図るうえで必要にして不可欠である。効果的なグループ・マネジメントを発 揮させるためには、カセット間を柔軟に連結して情報を把握できるシステムの構築が、今後の課題の1 つになってくるとみられる。 (3)グループ本社の再構築 純粋持ち株会社への移行が現実的取組みとなるなかで、グループ本社(コーポレート)のあるべき機 能については、ある程度議論が進められつつある。しかしながら具体的な再編に向けた方法論に関して は、人材面も含めて不透明な部分が多く今後の課題になってくる。 グループ本社の担うべき主たる役割としては、これまでの事業の企画・推進に関連の深いマネジメン ト機能がカセット化された分権単位への委譲が進むなかで、カセット化された事業間での資源配分、新
オ・マネジメントに関連する業務が中心になってくるとみられる。 しかし、事業部門は全社の一部に過ぎないという認識が持たれてきた日本企業では、事業を1つの企 業として捉えたうえでポートフォリオ管理していくという考え方に慣れているとはいえない。従って、 当然、いずれかの事業部門の長として上り詰めてきた経営者にとって、事業ポートフォリオ的な考え方 に長けた人材は少ないし、また、スタッフ人材も不足しているとみられる。 そうしたなかで、事業ポートフォリオ管理型のグループ本社を具体的にどのような手順を踏んで構築 していくかが、今後の課題にならざるを得ない。
注
*1 Yip, George S. は、グローバル戦略の4つに類型化して、最終的に企業は統合されたビジネス・グローバル戦 略を目指すべきとする。Yip, George S.,“Total Global Strategy”1992, Prentice Hall, Inc.pp.240-255.
参考文献 1)今西伸二:『事業部制の解明』,マネジメント社(1988年). 2)今西伸二編著:『事業部制の実際』,マネジメント社(1991年). 3)木村幾也,小松原聡,松尾貴巳:『変革する経営組織と管理会計の課題』「企業会計」Vol.48 No.6(1996). 4)坂本和一,下谷政弘編:『現代日本の企業グループ』,東洋経済新報社(1987年). 5)坂本恒夫:『企業集団経営論』,同文舘(1993年). 6)谷武幸:『事業部業績管理会計の基礎』,国元書房(1983年). 7)西澤脩:『分社経営の管理会計』,中央経済社(1997年).
8)Yip, George S:“Total Global Strategy”, Prentice Hall, Inc(1992)(浅野徹訳『グローバルマネジメント』ジャ パンタイムズ,1995年).