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組織 日本整形外科学会学会診療診療ガイドラインガイドライン委員委員会アキレス腱断裂ガイドラインガイドライン委員委員会診療ガイドラインガイドライン策定組織 < 日本整形外科学会 > 理事長越智隆弘行岡病院骨 関節センター長 < 日本整形外科学会学会診療診療ガイドラインガイドライン委員委員会 > 担当理

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アキレス

アキレス

アキレス

アキレス腱

腱断

断裂

診療

診療

診療

診療ガイドライン

ガイドライン

ガイドライン

ガイドライン

編集 編集編集編集 日本整形外科 日本整形外科 日本整形外科 日本整形外科学会学会学会学会診療診療診療診療ガイドラインガイドラインガイドラインガイドライン委員委員委員委員会会会会 アキレス アキレス アキレス アキレス腱腱腱腱断断断断裂裂ガイドライン裂裂ガイドラインガイドラインガイドライン策定委員策定委員策定委員策定委員会会会会 この診療ガイドラインは単行本 「アキレス腱断裂診療ガイドライン」 として出版されています。  

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組織

組織

組織

組織

●●●●日本整形外科日本整形外科日本整形外科日本整形外科学会学会学会学会診療診療ガイドライン診療診療ガイドラインガイドラインガイドライン委員委員委員委員会会会会 アキレスアキレスアキレスアキレス腱腱腱腱断断断断裂裂ガイドライン裂裂ガイドラインガイドラインガイドライン委員委員委員委員会会会会 診療 診療 診療 診療ガイドラインガイドラインガイドラインガイドライン策定組織策定組織策定組織策定組織 <<<<日本整形外科日本整形外科日本整形外科日本整形外科学会学会学会学会>>>>        理事長 越智隆弘 行岡病院骨・関節センター長   <<<<日本整形外科日本整形外科日本整形外科日本整形外科学会学会学会学会診療診療ガイドライン診療診療ガイドラインガイドラインガイドライン委員委員委員委員会会会会>>>>   担当理事 松下 隆 帝京大学医学部 教授   委員長 四宮謙一 東京医科歯科大学大学院 教授   <<<<アキレスアキレスアキレスアキレス断断断断裂裂裂裂ガイドラインガイドラインガイドラインガイドライン策定委員策定委員策定委員策定委員会会会会>>>>   委員長 伊藤博元 日本医科大学整形外科 教授(責任者,総括担当)   委 員 阪本桂造 昭和大学整形外科 教授(予防・予後担当)     高倉義典 奈良県立医科大学整形外科 教授(総括担当)     帖佐悦男 宮崎大学医学部整形外科 教授(診断担当)     成田哲也 日本医科大学武蔵小杉病院整形外科 助教授(病因・病態担当)     南郷明徳 南郷整形外科 院長(疫学担当)     古府照男 東邦大学医療センター佐倉病院整形外科 教授(治療担当)   <<<<文文文文献献献献査査読査査読読読委員委員委員委員会会会会>>>>(五十音順)   疫学・・・・・・・・伊藤博志,窪田 誠,佐藤栄一,竹内良平   病因・病態・・・飯沢典茂,橋口 宏,森 淳   診断・・・・・・・・河原勝博,園田典生,山本恵太郎   治療・・・・・・・・林 光俊   予防・予後・・・石黒 洋,稲垣克記,中村正則,野村将彦,宮澤 洋  

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日本整形外科

日本整形外科

日本整形外科

日本整形外科学会

学会

学会

学会診療

診療

診療

診療ガイドライン

ガイドライン

ガイドライン

ガイドライン出版

出版

出版

出版にあたって

にあたって

にあたって

にあたって

日本整形外科学会理事長

越智隆弘

近年,診療現場で医師に求められることが大きく変わってきた.高いレベルの医療が求められることは言うまでも ない.そして,その前段階として患者に正確な診療情報を伝え,患者が主体となって診療内容を選択することが求め られる.このプロセスを欠かすと医師自身が窮地に陥ることがある.診療の場で「先生にお任せします」「私に任せて おきなさい」という会話は昔のこととなった. 当面する疾患に対する診療法に関して,明確な科学的根拠に沿って分かり易く説明するのは医師の義務となっ た.その内容として,症状改善の確率,合併症発生の確率,治療費などが正確な根拠のもとで表現される必要があ る.診療に関する説明は医師間で共通でなくてはならない.病診連携などの目的で患者を他施設に紹介する時に も,関わった各医師の説明が食い違っていれば,根拠の少ない説明をした医師が責められることもある. 医師が共通して納得する診療情報をいかにして作るか.先端的な科学論文内容で裏打ちされた内容であれば専 門医の間での異論は生じない.しかも国際的評価にも妥当とされる高いレベルの診療内容であるはずだ.そのよう な背景のもと,主要疾患の診療内容に関するエビデンスに基づく診療ガイドライン作成が求められ,日本整形外科 学会(日整会)診療ガイドライン委員会では日常の整形外科診療で頻繁に遭遇する疾患や重要度が高いと思われる 11疾患を選び,診療ガイドラインの作成を平成14年度にスタートさせた. 11疾患のうち「腰椎椎間板ヘルニア」,「頚椎症性脊髄症」,「大腿骨頚部/転子部骨折」,「軟部腫瘍診断」,「頚 椎後縦靱帯骨化症」の5疾患が先行して出版され,引き続き「前十字靱帯(ACL)損傷」,「上腕骨外側上顆炎」,「骨・ 関節術後感染予防」の3つの診療ガイドラインが出版され,この度「アキレス腱断裂」を新たに上梓することになっ た.更に将来,同内容を分かり易くまとめた患者向けガイドラインを出版して診療情報を医師と患者間で広く共有す る手がかりにしたいとの希望もあり,その実現に向けて新たな委員会が設置され,出版への取り組みが鋭意進行し ていることをお伝えしたい.遠からず診療現場で,医師が医師向けガイドラインを,そして患者と家族が同内容の患 者向けガイドラインを手に診療内容の選択をする姿が予想される. そのように重要な意味のある診療ガイドラインであるが,本書出版にあたり各診療領域の代表的な先生方が先端 的な論文的根拠を整理してまとめ,多くの方々の御尽力により完成に到った.多大な時間とエネルギーを注いで下さ った日整会や関連学会の委員,査読委員など,御世話下さった多くの方々に改めて御礼を申し上げたい. 本書が医療現場での医師と患者の相互信頼を深め,高いレベルの整形外科診療が円滑に進められる一助にな ることを確信している. 2007年5月  

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序文

序文

序文

序文

日本整形外科学会 診療ガイドライン委員会 委員長 

四宮謙一

日本整形外科学会は事業の一環として,整形外科疾患の診療ガイドラインの作成を平成14年度から開始し,平 成17年にまず5疾患,続いて平成18年に3疾患の診療ガイドラインが完成し,今回新たに1疾患が仲間に加わること となった.これで,11疾患のうち9疾患の診療ガイドラインを世に送り出すことができた. 一般的に診療ガイドラインとは質の高い新しい情報に基づいて医療を提供するのに役立つ素材であり,患者と主 治医がより良い解決策を探って行こうとするときに,その手引きとして傍らに置いておく資料である.今日,診療ガイ ドラインを出版するにあたり,診療ガイドラインを個々の患者に短絡的に当てはめてはならないことをまず強調した い. 本診療ガイドラインは,広範囲な科学論文の検索から,疾患の専門医たちによる厳密な査読をおこない,信頼性 と有益性を評価したうえで作成された.論文のエビデンスを根拠とする推奨レベルには特に多くの議論を費やした. その結果,当初,推奨度はAの「強く推奨する」からDの「推奨しない」の4段階としていたが,項目によっては科学的 論文数が不十分であったり,結論の一致を見ない項目があるために,その推奨レベルとして(I)レベル「(I):委員会 の審査基準を満たすエビデンスがない,あるいは複数のエビデンスがあるが結論が一様でない」を新たに追加した. このような項目に関しては,整形外科専門家集団としての委員会案をできるだけその項目中に示すように努力した. 近年の医学の進歩に伴い,従来からおこなわれてきた治療法は今後劇的に変化する可能性がある一方で,種々 の治療法が科学的根拠に基づくことなく選択されている.さらにわが国ではさまざまな民間療法が盛んにおこなわれ ており,なかには不適切な取り扱いを受けて大きな障害を残す例も認められている.このように不必要な治療法,公 的に認められていない治療法,特に自然軽快か治療による改善か全く区別のつかないような治療法に多くの医療費 が費やされている現状は,早急に改善されるべきと考えられる. 今回作成された診療ガイドラインは,現在の治療体系を再認識させるとともに,有効で効率的な治療への第一歩 であると考えられる.しかし,科学的な臨床研究により新たな臨床知見が出現する可能性もあり,今後定期的に改 訂を試みなければならない.倫理規定を盛り込んだ前向きな臨床研究をおこなう必要を強く実感する.このように, 科学的根拠に基づいてより良い診療ガイドラインを作成し続けることは,患者の利益,医学発展,医療経済の観点 から日本整形外科学会の責務であると考えている. 2007年5月  

(5)

前文

前文

前文

前文

はじめに

はじめに

はじめに

はじめに

アキレス腱断裂診療ガイドラインを日本整形外科学会の事業の一つとして作成した. 診療ガイドラインとは「特定の臨床状況のもとで,適切な判断や決断を下せるように支援する目的で体系的に作 成された文書」を指す.診療ガイドラインはevidence-based medicine(EBM)の手順に則って作成し,同一時期に誰 がエビデンスを検索しても同じ結果が得られるように,エビデンスの入手方法,エビデンスの質の評価,勧告の決定 法などを明記する必要がある. 現在,この手法は世界的に最も広く用いられている方法であるが,実際上は診療にあたって汎用されている診断 手法等では,未だ十分なエビデンスが得られていない部分も存在するため,専門家の主観的判断を組み入れざるを えない場面が少なくない.このアキレス腱断裂診療ガイドラインにおいても,以前からの診療で一般的に用いられて いる診療方法には,エビデンスの質が高くない文献が認められている.しかし,質の高いエビデンスが集積されるた びに今回作成された診療ガイドラインを改訂することにより,将来に向かってより質の高いガイドラインにすることは 可能であると考える. 一般に,診療ガイドラインはすべての患者を対象とすることはできず,平均的な患者に対応するものであり,理論 的にも60~95%の患者をカバーするものとされている.本ガイドラインでは,スポーツ選手や高齢者のアキレス腱断 裂も取り上げており,少しでも多くのアキレス腱断裂患者をカバーするように配慮したつもりである.本委員会の基本 的姿勢として,このガイドラインに示されていない診療法などを否定するものではないが,本ガイドラインは医療者と 患者をつなぐ重要な情報手段としてとらえることが重要であろうと考えている.  

(6)

前文

前文

前文

前文

アキレス

アキレス

アキレス

アキレス腱

腱断

断裂

裂の

の概

概念

アキレス腱(踵骨腱)は下腿の腓腹筋とヒラメ筋が形成する人体中最大で最強の腱で,踵骨(踵骨隆起)に停止す る.起立・歩行などの運動に際して緊張と弛緩を繰り返し,疾走する場合に大きな張力がかかるといわれている.ス ポーツ中の受傷が多く,急に疾走しようとした際や,踏ん張ろうとした際,跳躍などの際に断裂し,疼痛や断裂感を自 覚することが少なくない.蹴られた,ぶつかったと表現されることも多く,足を接地しても踏み返しのできない特有の 歩容と受傷のエピソードでアキレス腱断裂の存在が推測できる.治療法は保存療法,手術療法のいずれにもかか わらず臨床成績は良好で,早期運動復帰と筋力の早期回復とを目指した治療が行われている. アキレス腱断裂は非常に発症頻度の高いスポーツ外傷で,国民の健康志向に伴う運動機会の増加や,スポーツ 活動への参加,さらに高齢化社会の到来などとも関連して,受傷する機会も増えているものと思われる.診断につい ても画像機器の進歩により詳細が明らかになりつつあり,治療法についても,保存療法か手術療法かなどの選択肢 が多様化してきている.また,情報化社会の到来により多くの情報の氾濫による混乱などを回避し,さまざまな民間 療法や誤解,さらに独善的といえる手技手法などに対して,エビデンスに基づいた正しい方向性を示すための診療 ガイドラインを作成することにより,有効で効率的な診療の助けになると考えた.  

(7)

前文

前文

前文

前文

策定組織

策定組織

策定組織

策定組織

((((1111)委員)委員)委員)委員会会会会 〈日本整形外科学会診療ガイドライン委員会〉 担当理事 松下 隆 委員長 四宮謙一 ((((2222)委員)委員)委員)委員 〈アキレス腱断裂ガイドライン策定委員会〉 委員長 伊藤博元 日本医科大学整形外科 教授(責任者,総括担当) 委 員 阪本桂造 昭和大学整形外科 教授(予防・予後担当) 高倉義典 奈良県立医科大学整形外科 教授(総括担当) 帖佐悦男 宮崎大学医学部整形外科 教授(診断担当) 成田哲也 日本医科大学武蔵小杉病院整形外科 助教授(病因・病態担当) 南郷明徳 南郷整形外科 院長(疫学担当) 古府照男 東邦大学医療センター佐倉病院整形外科 教授(治療担当) ((((3333)文)文)文)文献献献献査査査査読読読読委員(五十音順)委員(五十音順)委員(五十音順)委員(五十音順) 疫学・・・・・・・伊藤博志,窪田 誠,佐藤栄一,竹内良平 病因・病態・・飯沢典茂,橋口 宏,森 淳 診断・・・・・・・河原勝博,園田典生,山本恵太郎 治療・・・・・・・林 光俊 予防・予後・・石黒 洋,稲垣克記,中村正則,野村将彦,宮澤 洋  

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前文

前文

前文

前文

文献検

献検

献検

献検索法

索法

索法

索法

本ガイドラインでは,文献検索に関して対象を英語および日本語として,英語論文はMEDLINE,日本語論文は医 学中央雑誌から,1980年以降2003年2月までの範囲でアキレス腱断裂の論文を選択した.

研究デザインはエビデンススケール(表表表表1111)に沿って,MEDLINEではcase series(evidence level 7:以下,EV levelと 表記)以上,医学中央雑誌では会議録と症例報告を除く条件で検索(検索式,表表表表2222)を行った.原則的にEV level 6 (case-control study)以上を中等度のエビデンスありと規定したが,必要に応じてEV level 7も採択した.それは外傷 性疾患であるアキレス腱断裂は,エビデンスレベルの高い前向きの研究が行いにくいこと,またEV level 7の文献に もガイドラインとして重要な事象が存在している可能性が否定できないと考えたからである. 該当件数は英語論文378件,日本語論文は349件の計727件であった. 英語論文は疫学,病因・病態,診断,治療,予防・予後の章毎に責任者に該当論文を振り分け,疫学55件,病 因・病態131件,診断226件,治療258件,予防・予後88件,その他88件が一次選択された(表表表表3333,各章ごとの重複を 含む).引き続き,各章責任者によりアブストラクトフォームの作成(二次選択文献)に移行した.また,日本語論文 の349件は南郷委員175件,阪本委員174件を担当として,同じくアブストラクトフォームの作成(二次選択文献)を行 った(表表表表4).二次選択文献数は疫学22件(英16/和6),病因・病態24件(英20/和4),診断63件(英43/和20),治療 76件(英38/和38),予防・予後32件(英19/和13),合計217件(英136/和81)となった.さらに委員会での論議を積み 重ねていく過程で,本ガイドラインにおける最終的な収載文献数は疫学10件(英8/和2),病因・病態5件(英5/和0), 診断51件(英35/和16),治療76件(英38/和38),予防・予後34件(英25/和9),合計176件(英111/和65)に絞り込ま れた. これらの採用された文献から,各章のQ&Aごとに科学的記述を含めた推奨度(推奨Grade,表表表表5555)と要約を作成し て,質問に対する回答とその根拠を記述し委員会全体で内容について吟味したうえで記載した. 表表表表1111 エビデンステーブルエビデンステーブルエビデンステーブルエビデンステーブル Level 内容 1 全体で100例以上のRCTのMAまたはSR 2 全体で100例以上のRCT 3 全体で100例未満のRCTのMAまたはSR 4 全体で100例未満のRCT 5 CCTおよびCohort Study 6 Case-Control Study 7 Case Series 8 Case Report 9 分析的横断研究 10 記述的横断研究 11 その他

RCT:randomized-controlled trial, MA:meta-analysis, SR:systematic review, CCT:controlled clinical trial

表表表表2222 検検検検索式索式索式索式 <MEDLINE>

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S1 ACHILLES(2N)(RUPTURE? + INJUR?) S2 ACHILLES TENDON(L)injuries

S3 ACHILLES TENDON/DE AND (RUPTURE/DE + TENDON INJUREIES/DE) S4 S1:S3

<医学中央雑誌>

#1 アキレス腱断裂/AL or アキレス腱損傷/AL

#2 (アキレス/AL or achilles/AL or Achilles/AL) and (断裂/AL or 創傷と損傷/TH or 損傷/AL or 腱損傷/TH or 腱断裂/AL or 破裂/TH or rupture/AL or Rupture/AL)

表表表表3333 該該該該当当当当件件件件数数数数とととと一次選一次選一次選一次選択択択択分分分分担担担担 総件数 727件 海外文献(MEDLINE) 378件 1.疫学 55件 :南郷委員 2.病因・病態 131件 :成田委員 3.診断・分類 226件 :帖佐委員 4.治療 258件 :古府委員 5.予後・予防 88件 :阪本委員 6.その他(上記分野で抽出 されなかった文献) 16件 :南郷委員 国内文献(医学中央雑誌) 349件 :南郷委員(175件) 阪本委員(174件) 海外文献の件数は各章毎の重複あり。 表表表表4444 二次選二次選二次選二次選択択択択文文文文献献献献((((アブストラクトフォームアブストラクトフォームアブストラクトフォームアブストラクトフォーム作成)作成)作成)作成) 総作成数 217件 (英136+和81) 1.疫学 22件 (英16+和6) 2.病因・病態 24件 (英20+和4) 3.診断・分類 63件 (英43+和20) 4.治療 76件 (英38+和38) 5.予後・予防 32件 (英19+和13) ●追加検索(2004/1月、6月)成田委員 テーマ:アキレス腱×コレステロール・血清脂質 アキレス腱×透析・腎疾患 アキレス(腱)×副腎皮質ホルモン(steroid) アキレス腱断裂×アキレス腱炎 • 該当件数:MEDLINE 364件(初回検索との重複を含む) • 表表表表5555 推推推推奨奨奨奨度度度度 Grade 内容 内容補足 A 行うように強く推奨する 強い根拠に基づいている 質の高いエビデンス(level1~4)が複数ある

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B 行うように推奨する 中等度の根拠に基づいている 質の高いエビデンス(level1~4)が1つ,または中程度 の質の高いエビデンス(level5,6)が複数ある C 行うことを考慮してもよい 弱い根拠に基づいている 中程度の質のエビデンス(level5,6)が少なくとも1つあ るか,委員会の設定した基準以下であるが,evidence level 7の論文が複数あり,この事象が臨床的に有用で ある D 推奨しない 否定する根拠がある 肯定できる論文がないか,否定できる中等度までの質の エビデンスが少なくとも1つある I 推奨する基準を満たさない 委員会の審査基準を満たすエビデンスがない,あるいは 複数のエビデンスがあるが結論が一様でない  

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前文

前文

前文

前文

問題

問題

問題

問題点

科学的エビデンスの高いガイドライン作成には,基本となる論文のエビデンスレベルの高さと質およびその論文数 によると考えられる.アキレス腱断裂は外傷であり,質の高いランダム化比較試験(randomized-controlled trial: RCT)を行うことはほとんど不可能に近く,その結果としてエビデンスレベルの高い論文数は少ないと言わざるをえな い.また診断に関しては,臨床的に最も多く用いられて信頼度の高い診断手法は1957年と1962年の論文であり,そ のエビデンスはlevel 9となる.本来はこれらの論文は検索期間外であり,エビデンスレベル以下であるが採択論文と して記載した.このように一般臨床で重要な事象は,委員会で討議したうえで委員会案として必要に応じて採択し, その旨を各章毎の「はじめに」に明確に記載することとした. さらに推奨グレードに関しては,Grade C(行うことを考慮しても良い.弱い根拠に基づいている)の根拠を一部拡 大解釈した.内容補足として,中程度の質のエビデンス(lebel 5,6)が少なくとも1つある以外に,委員会の設定した 基準以下であるがlevel 7の論文が複数あり,この事象が臨床的に有用である場合にGrade Cとして推奨した. 以上のように多少の問題点も存在しているが,現状のアキレス腱断裂診療のガイドラインとして有用な指標となり 得ると考えられる.  

(12)

前文

前文

前文

前文

委員

委員

委員

委員会

会のコメント

のコメント

のコメント

のコメント

本ガイドラインの収載期限外の論文であるが,2005年にエビデンスレベルのきわめて高いアキレス腱断裂の治療 に関するRCTのmeta-analysis(Ev level 1)が発表された.本ガイドラインの内容と方向性は異なるものではないが, 参考としてその結果(要旨)を以下に紹介する.

「800例の分析の結果,切開腱縫合術は非手術例に比して再断裂のリスクはきわめて低いが,感染,癒着,感覚 障害の合併症のリスクは高くなる.経皮的縫合術は,切開縫合術に比して合併症の発生率は低い.術後の装具療 法により早期の可動域訓練を行うことは,キャスト固定法に比して合併症の発生率は低い」

文文文文献献献献

1)AF00682 Khan RJ, Fick D, Keogh A, Crawford J, Brammar T, Parker M. Treatment of acute achilles tendon ruptures. A meta-analysis of randomized, controlled trials. J Bone Joint Surg Am. 2005;87(10):2202-10.

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第1111章

章 疫

疫学

はじめにはじめにはじめにはじめに アキレス腱断裂は30歳以降の男性に多く発生し,スポーツ活動中に受傷することの多い外傷とされている.こうし たアキレス腱断裂の疫学的事柄をエビデンスに基づいて検証し,診療ガイドラインの疫学の章を構築するべく文献を 調査した. リサーチクエスチョンに対する回答は採択文献中に明示された内容で裏付けられなければならない.疫学につい ては当初は7つのリサーチクエスチョンが提案されたが,採択された22件の文献からは十分なエビデンスのある回答 を導き出せないクエスチョンがいくつかあった.対象となる一次選択55文献を再度検討し,最終的に3つのリサーチク エスチョンとなった.それらは (1)アキレス腱断裂の発生数はどのくらいか.発生数に経年的変化があるか. (2)アキレス腱断裂受傷の好発年齢はどのくらいなのか.また性差,左右差,季節性はあるか. (3)アキレス腱断裂はスポーツ活動中の受傷が多いのか.また,どのようなスポーツで多く受傷するのか. である. 当初リサーチクエスチョンとして掲げられた事柄としては,ほかに,「遺伝性の関与があるか否か」,「利き足と受 傷側の関係はどうか」,「肥満との関連があるか」,「両側同時受傷例の頻度はどうか」といった設問があったが,今 回は検討できなかった. アキレス腱断裂についてその治療方法や治療成績を報告した文献は多い.しかし,そうした文献では多くの症例 を調査対象としながら,症例の背景について統計学的処理を加えて疫学的根拠を示したものは少ない.一方,アキ レス腱断裂症例の疫学調査そのものを目的とした研究となると,海外にも少なく,本邦にはなかった.さらに,疫学 的研究方法はほとんど後方視的なものであった. 今回採択された文献は地域あるいは国といった広域の症例を調査した欧州の研究が多かった.こうした状況を踏 まえたうえで,採択文献のなかから得られた本章の結論としての「要約」ではあるが,従来エビデンスが不明瞭であ ったり,詳細な統計学的裏付けが示されないまま教科書的に述べられていた疫学的記述を否定するような事実はほ とんどなかった.しかし,「要約」のGradeには強い根拠に基づくと言えるGrade Aはなく,中等度の根拠に基づくとされ るGrade B以下だけとなり,今後の課題として残った. なお,疫学の章においては取り上げる内容から,リサーチクエスチョンに対する「推奨」としての提示は相応しくな いと考え,すべて「要約」として示した. 本章本章本章本章のまとめのまとめのまとめのまとめ 本邦では大規模な調査によって集計されたアキレス腱断裂受傷者の疫学的研究報告がなく,本章の「要約」は海 外の統計調査研究が主体となって導き出されたものとなった.アキレス腱断裂は人口10万人に対して6~37人程度 の発生があり,国や地域による差異が大きい.発生数は近年増加の傾向にある.年齢は30~40歳代で最も多く受 傷している.従来,性差は男性に多いとされているが,男性に多い傾向は認めるものの断定し得ない.受傷側は左 側にやや多い.受傷の季節的偏りは明確でない.スポ―ツ活動中の受傷が多く,特に若年者にその傾向が顕著で あり,高齢層は日常活動中での受傷が多い.スポーツ種目ではバドミントン,バレーボール,サッカー,テニスなど球 技やラケット使用競技での受傷頻度が高い 今後今後今後今後のののの課題課題課題課題 整形外科医としてその治療の任にあたることの多いアキレス腱断裂は,スポーツ参加人口の急速な増加と社会の 高齢化により,発生が増加していることがわかった.それゆえ,アキレス腱断裂についての診断法,治療法,予後の

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改善を目指すとき,疫学的調査の重要性は高まっている. 現在までの疫学的研究はほとんどが後向き研究で,論文のエビデンスレベルはどうしても低いものが多くなってい る.長期間に渡る前向きな疫学的調査研究は多大の困難を伴うことが推測されるが,本邦でも広域の住民を対象 に実施される調査研究が行われることを期待する.今後,そうした研究結果に裏付けられたアキレス腱断裂診療ガ イドラインへと発展することが望まれる.これにより今回言及し得なかった受傷についての遺伝的要素の関与の有 無,利き足と受傷側の関係,肥満度の関与,両側同時受傷例の頻度なども含めた,より多くの興味深い疫学的疑問 が解明できるであろう.  

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第1111章

章 疫

疫学

Research Question Research QuestionResearch QuestionResearch Question

1111

アキレス アキレスアキレスアキレス腱腱腱腱断断断断裂裂裂裂のののの発発発発生生生生数数数数はどのくらいかはどのくらいかはどのくらいかはどのくらいか....発発発発生生生生数数数数にににに経経年的経経年的年的年的変変変変化化化化があるかがあるかがあるかがあるか 要約 要約 要約要約 Grade

Grade Grade Grade

IIII

欧米の発生数の報告では人口10万人あたり6.3人から37.3人と,国あるいは地域で異なってい

る.

Grade

Grade Grade Grade

B

B

B

B

発生数は変化しており近年増加傾向にある.

本邦では発生数についての報告はない. 背景背景背景背景・・・・目的目的目的目的 頻度の高い外傷と言われるアキレス腱断裂であるが,その裏付けとしての発生数を知ることを目的とした.近 年の発生数の変化についても検討する. 解解解解説説説説 フィンランドのOulu大の報告では,1979~1990年では人口10万人あたりアキレス腱断裂発生が4.2人で あったが,1991~2000年では10万人あたり15.2人と増加した(AF00022, EV level 7EV level 7EV level 7EV level 7).

南東フィンランドでの報告では1986~1996年の発生数は10万人あたり8.6人で,近年にかけて有意に増 加していたが次第に安定化傾向にあるとしている(AF00077, EV level 7EV level 7EV level 7EV level 7).

スコットランドの報告では1981年の発生数が10万人あたり4.7人に対し,1994年では6.3人と有意に増加し ていた(AF00107, EV level 6EV level 6EV level 6EV level 6).

22万人のデンマークの州における集計では1984年の発生数は10万人に18.2人であった.1996年には10 万人あたり37.3人と有意に増加していることが示されている(AF00138, EV level 7EV level 7EV level 7EV level 7).

スウェーデンの人口23万人の都市では1950~1973年の調査と比較して1987~1991年ではアキレス腱断 裂症例数が増加していることを指摘している(AF00168, EV level 6EV level 6EV level 6EV level 6).

文文文文献献献献

1)AF00022 Pajala A, Kangas J, Ohtonen P, Leppilahti J. Rerupture and deep infection following treatment of total Achilles tendon rupture. J Bone Joint Surg Am. 2002;84-A(11):2016-21.

2)AF00077 Nyyssönen T, Lüthje P. Achilles tendon ruptures in South-East Finland between 1986-1996, with special reference to epidemiology, complications of surgery and hospital costs. Ann Chir Gynaecol. 2000;89(1):53-7.

3)AF00107 Maffulli N, Waterston SW, Squair J, Reaper J, Douglas AS. Changing incidence of Achilles tendon rupture in Scotland: a 15-year study. Clin J Sport Med. 1999;9(3):157-60.

4)AF00138 Houshian S, Tscherning T, Riegels-Nielsen P. The epidemiology of Achilles tendon rupture in a Danish county. Injury. 1998;29(9):651-4.

5)AF00168 Möller A, Astron M, Westlin N. Increasing incidence of Achilles tendon rupture. Acta Orthop Scand. 1996;67(5):479-81.

(16)

第1111章

章 疫

疫学

Research Question Research QuestionResearch QuestionResearch Question

2222

アキレス アキレスアキレスアキレス腱腱腱腱断断断断裂受傷裂受傷裂受傷の裂受傷のの好の好好好発発発発年年齢年年齢齢齢はどのくらいなのかはどのくらいなのかはどのくらいなのかはどのくらいなのか....またまたまたまた,性差,左右差,季節性,性差,左右差,季節性,性差,左右差,季節性,性差,左右差,季節性はあるかはあるかはあるかはあるか 要約 要約 要約要約 Grade

Grade Grade Grade

B

B

B

B

受傷好発年齢は30~40歳代であり,50歳以上の年齢層にもう一つ小さなピークがある.若年層

ではスポーツによる受傷が多いが,高齢層にはスポーツ以外の日常活動中の受傷が多い.

Grade

Grade Grade Grade

IIII

男女の発生比率は差がないとするものから,女性1に対し男性6.3までさまざまであり,男性に多

い傾向はあるものの断定し得なかった.また女性は男性より受傷年齢が高い.

Grade

Grade Grade Grade

C

C

C

C

左右差では右41~45%に対し左52~59%とやや左に多い. Grade

Grade Grade Grade

IIII

発生の季節性があるとは言えない.

背景背景背景背景・・・・目的目的目的目的 アキレス腱断裂はスポーツ活動中に自家筋力によって発症することが多いとされているが,その好発年齢,性 差,左右差,季節的偏りを検証する. 解解解解説説説説 人口92,000人の地域で,すべてのアキレス腱断裂症例の手術を担当するフィンランドの都市中核病院で の1986~1996年の集計では,93例の受傷時平均年齢は44歳,中央値42歳であり,40~44歳が最多で あった.スポーツによる受傷は若年者に多かった.65歳~69歳に第2のピークがあった.男女の比率は 3.4:1であり,右47例,左48例と左右差は見られていない.受傷月は1,2,10月に多かった(AF00077, EV level 7EV level 7EV level 7EV level 7).

1980~1995年のスコットランドでのアキレス腱断裂例4,201例の統計からは,男性では受傷時年齢が30 ~39歳で最多であり,60歳以降にもう一つの発生数増加域があった.女性は60歳から増加していた.男 女比は1.7:1とやや男性に多く,統計学的には季節的偏りを認めなかった(AF00107, EV level 6EV level 6EV level 6EV level 6). •

1984~1996年のデンマーク5病院で調査した718例では,受傷時平均年齢が42.1歳であり,このうち30~ 49歳が62%であった.50~59歳にも小さな発生のピークが見られた.若年層の受傷原因はスポーツに よるものが多かった.男女比は3:1と男性に多かった.季節的には春と秋のスポーツシーズンに多かっ た(AF00138, EV level 7EV level 7EV level 7EV level 7).

デンマークで1978~1995年の18年間にアキレス腱断裂を受傷した213例の調査からは,受傷年齢の中 央値が41歳であった.男女比は2.8:1であった.左側が57%と多かった(AF00159, EV level 6EV level 6EV level 6EV level 6). •

スウェーデンMalmöの1987~1991年の153例に対する調査では40歳代に発生の大きなピークがあり,80 歳代に小さなピークがあった.スポーツによる受傷はその平均年齢が37歳と若く,一方,スポーツ以外で の受傷は平均56歳で両者間に有意差を認めた.男女比は6.3:1と男性に多かった.受傷時平均年齢は 男性42歳,女性52歳で有意差を認めている.スポーツによる受傷は男性に多かった(AF00168, EV EV EV EV level 6level 6level 6level 6).

フィンランドOulu市5病院での1979~1994年の16年間の統計からは,110断裂例の平均年齢が40歳であ った.男女比5.5:1と男性が多く,左側が52.6%であった.本報告でも非スポーツ受傷者の年齢が高く, 平均53歳であり,スポーツでの受傷者は38歳であった(AF00169, EV level 7EV level 7EV level 7EV level 7).

ブダペスト国立外傷センターの報告では,1972~1985年に治療した292例の平均受傷年齢は35.2歳で, 男女比は4.8:1であった.また,左右差はスポーツによる受傷例では左側が59%であった.季節性につ いてスポーツによる受傷例の71%,スポーツ以外の原因による受傷例の60%が夏に受傷していた (AF00277, EV level 6EV level 6EV level 6EV level 6).

(17)

本邦の244例の調査報告では,年齢は30~50歳に多く,若年層でスポーツによる受傷が多かった.男女 比が1.1:1で性差がなかった.左側受傷が57.8%であった.季節では春に多かった(AJ00111, EV level EV level EV level EV level 7777).

文文文文献献献献

1)AF00077 Nyyssönen T, Lüthje P. Achilles tendon ruptures in South-East Finland between 1986-1996, with special reference to epidemiology, complications of surgery and hospital costs. Ann Chir Gynaecol. 2000;89(1):53-7.

2)AF00107 Maffulli N, Waterston SW, Squair J, Reaper J, Douglas AS. Changing incidence of Achilles tendon rupture in Scotland: a 15-year study. Clin J Sport Med. 1999;9(3):157-60.

3)AF00138 Houshian S, Tscherning T, Riegels-Nielsen P. The epidemiology of Achilles tendon rupture in a Danish county. Injury. 1998;29(9):651-4.

4)AF00159 Levi N. The incidence of Achilles tendon rupture in Copenhagen. Injury. 1997 ;28(4):311-3.

5)AF00168 Möller A, Astron M, Westlin N. Increasing incidence of Achilles tendon rupture. Acta Orthop Scand. 1996;67(5):479-81.

6)AF00169 Leppilahti J, Puranen J, Orava S. Incidence of Achilles tendon rupture. Acta Orthop Scand. 1996;67 (3):277-9.

7)AF00277 Józsa L, Kvist M, Bálint BJ, Reffy A, Järvinen M, Lehto M, Barzo M. The role of recreational sport activity in Achilles tendon rupture. A clinical, pathoanatomical, and sociological study of 292 cases. Am J Sports Med. 1989;17(3):338-43. 8)AJ00111 中山正一郎,三馬正幸,杉本和也ほか.アキレス腱断裂の年齢別の特徴について.中部日本整形外 科災害外科学会誌.1996;39(6):1461-2. コメントコメントコメントコメント 本邦の報告中,剣道家の43症例について左が41例95%と著しく偏った発生を報告している(AJ00159, EV EV EV EV level 7 level 7 level 7 level 7). 補足文補足文補足文補足文献献献献 1)AJ00159 園畑素樹,忽那龍雄,石井孝子ほか.中高年剣道選手のスポーツ傷害.九州スポーツ医・科学会 誌.1994;6:129-34.

(18)

第1111章

章 疫

疫学

Research Question Research QuestionResearch QuestionResearch Question

3333

アキレス アキレスアキレスアキレス腱腱腱腱断断断断裂裂裂裂はスポーツはスポーツはスポーツ活動中はスポーツ活動中活動中活動中のののの受傷受傷受傷受傷がががが多多いのか多多いのかいのかいのか....またまたまたまた,,,,どのようなスポーツでどのようなスポーツでどのようなスポーツでどのようなスポーツで多多多多くくくく受傷受傷受傷受傷するのかするのかするのかするのか 要約 要約 要約要約 Grade

Grade Grade Grade

B

B

B

B

アキレス腱断裂をスポーツ活動中に受傷したのは60~81%の症例であり,スポーツによる受傷

が多いことが示された.国による競技人口の差異を考慮せずに言えば,球技,ラケット競技での 受傷が多く,種目別にはバドミントン,バレーボール,サッカー,テニスなどの球技およびラケット 使用競技での発生頻度が高い. 背景背景背景背景・・・・目的目的目的目的 スポーツ活動中のアキレス腱断裂受傷が多いとされている.これを検証し,発生頻度の高い種目を明らかに する. 解解解解説説説説 人口92,500人のフィンランドの都市において,この地域のアキレス腱断裂手術がすべて行われる中核病 院での集計では,スポーツによる受傷が95肢中59肢で62%であり,種目ではバレーボールが最多で,サ ッカー,バドミントンが続いていた.球技が95例中49例(52%)であった(AF00077, EV level 7EV level 7EV level 7EV level 7).

デンマークの人口22万の地域にある5病院での調査では,718例中74.2%がスポーツによって発生し,そ の93%は球技およびラケット競技での受傷であった.スポーツによる533例中バドミントンが246例 (46.3%)と最も多かった.次いでサッカー124例(23.3%),ハンドボール83例(15.6%)の順であった (AF00138, EV level 7EV level 7EV level 7EV level 7).

同じくデンマークのFrederiksberg市において18年間に発生した213例の検討では,バドミントンが49.7%, ハンドボール6.8%,サッカー5.2%であった(AF00159, EV level 6EV level 6EV level 6EV level 6).

スウェーデンでの153例の調査では,スポーツによる受傷が全体の2/3であった.競技種目別にはバドミ ントン50例,サッカー19例,テニス12例の順に多かった(AF00168, EV level 6EV level 6EV level 6EV level 6).

フィンランドのOulu市の報告では,アキレス腱断裂110例中,スポーツによるものが90例(81%)であり,さ らにこのうち88%は球技によるもので,バレーボール22例(24%),バドミントン20例(22%),サッカー15 例(17%)であった(AF00169, EV level 7EV level 7EV level 7EV level 7).

ブダペスト外傷センターの報告では,アキレス腱断裂292例中スポーツ活動で断裂したのは173例 (59.2%)であり,他の腱断裂より有意にスポーツによるものが多かった.受傷時のスポーツ種目はフット ボール33.5%,陸上競技16.2%,バスケットボール13.3%の順であった(AF00277, EV level 6EV level 6EV level 6EV level 6).

244例のアキレス腱断裂症例を調べた本邦の報告では,スポーツによる受傷症例が185例(76%)で,最 も症例の多かったスポーツはバレーボールの49例,次いでバドミントン29例,テニス23例であった (AJ00111, EV level 7EV level 7EV level 7EV level 7).

文文文文献献献献

1)AF00077 Nyyssönen T, Lüthje P. Achilles tendon ruptures in South-East Finland between 1986-1996, with special reference to epidemiology, complications of surgery and hospital costs. Ann Chir Gynaecol. 2000;89(1):53-7.

2)AF00138 Houshian S, Tscherning T, Riegels-Nielsen P. The epidemiology of Achilles tendon rupture in a Danish county. Injury. 1998;29(9):651-4.

(19)

3)AF00159 Levi N. The incidence of Achilles tendon rupture in Copenhagen. Injury. 1997;28(4):311-3.

4)AF00168 Möller A, Astron M, Westlin N. Increasing incidence of Achilles tendon rupture. Acta Orthop Scand. 1996;67(5):479-81.

5)AF00169 Leppilahti J, Puranen J, Orava S. Incidence of Achilles tendon rupture. Acta Orthop Scand. 1996;67 (3):277-9.

6)AF00277 Józsa L, Kvist M, Bálint BJ, Reffy A, Järvinen M, Lehto M, Barzo M. The role of recreational sport activity in Achilles tendon rupture. A clinical, pathoanatomical, and sociological study of 292 cases. Am J Sports Med. 1989;17(3):338-43.

7)AJ00111 中山正一郎,三馬正幸,杉本和也ほか.アキレス腱断裂の年齢別の特徴について.中部日本整形外 科災害外科学会雑誌.1996;39(6):1461-2.

(20)

第2222章

章 病因

病因

病因

病因・・・・病態

病態

病態

病態

はじめにはじめにはじめにはじめに アキレス腱断裂発生の病態を調査するにあたって,当初その項目として,臨床的観点から「加齢と腱変性の関 与」,「損傷形態としての完全または不全断裂の比率」,「受傷様式と肢位」,「準備運動の有無と量」,「運動開始か らの時間」,「柔軟性,基礎疾患,石灰沈着との関連」,「再発例の原因」などが挙げられたが,これらの多くにおいて evidence-basedの研究の存在しないことが判明した. 受傷機転と様式に関しては,例えば剣道における後足の受傷のように,特異性を認めるスポーツ種目や動作など 臨床上よく経験するところではあるが,それらはcase reportにとどまり,リサーチクエスチョンとして挙げることができ なかった.また,診療上指導する機会の多いストレッチングを中心とした準備運動の有無と量や,受傷のスポーツ動 作開始からの時間等に関した論文は皆無であった. 文献総件数727件のうち,病因・病態に関する131論文のサマリーを査読し,その後,副腎皮質ホルモン等のキー ワードにより若干の追加査読を行い,24文献を採択した.採択文献のなかから,信頼性の高いリサーチクエスチョン として, (1)アキレス腱の肥厚はアキレス断裂の危険因子となりうるか. (2)アキレス腱断裂の発生には,基盤に必ず腱の変性が存在するか. (3)アキレス腱断裂を誘発する可能性のある薬物はあるか. の3点においてのみリサーチクエスチョンとすることとした. 本章本章本章本章のまとめのまとめのまとめのまとめ アキレス腱断裂の病態に関するリサーチクエスチョンは前述の3項目となった. 一般的にアキレス腱断裂の基盤には腱の変性が存在すると考えられており,これを示唆する1つの臨床所見に腱 の肥厚がある.近年では超音波検査を用いて非断裂側アキレス腱の前後径を計測し対照群と比較する試みがなさ れており(case-control study),アキレス腱断裂群の腱は肥厚していることが判明している.また,肥厚腱には高率 に限局性結節性変化等が存在していたことからも,腱の肥厚は退行性変化を表していると考えられる.断裂腱に組 織学的に腱の変性を示唆する所見があるという報告からも,アキレス腱断裂における腱の変性の存在は明らかで, アキレス腱断裂は腱の退行性変性を基盤に発生すると考えられる. また,副腎皮質ホルモンの局所および全身投与等,薬剤のなかにはアキレス腱断裂を誘発する可能性のある物 質が存在すると考えられている.副腎皮質ホルモンがその誘発因子となった可能性が高いことに言及した報告は主 に症例報告にとどまり,現時点ではエビデンスが低いと考えられ,今回はリサーチクエスチョンとして挙げることがで きなかった.しかしながら,アキレス腱断裂を誘発する可能性の高い薬物としてfluoroquinoloneやciprofloxacin等の 抗菌剤は,報告からは信頼性が高く(case-control study),これらについては誘発物質と断定して良いと考える. 今後今後今後今後のののの課題課題課題課題 日常診療上遭遇する副腎皮質ホルモンの局所・全身投与の影響1),2),3),4),5),6),または腎透析の影響7),血清コレ ステロール値の影響8),9)等の文献は現時点ではそのほとんどが症例報告にとどまってはいるが,アキレス腱損傷発 生の誘因として濃厚と考えられ,今後の組織的な調査を要すると考えられる. 文文文文献献献献

(21)

1983;42(6):652-4.

2)AF00634 Dickey W, Patterson V. Bilateral Achilles tendon rupture simulating peripheral neuropathy: unusual complication of steroid therapy. J R Soc Med. 1987;80(6):386-7.

3)AF00514 Hersh BL, Heath NS. Achilles tendon rupture as a result of oral steroid therapy. J Am Podiatr Med Assoc. 2002;92(6):355-8.

4)AF00261 Newnham DM, Douglas JG, Legge JS, Friend JA. Achilles tendon rupture: an underrated complication of corticosteroid treatment. Thorax. 1991;46(11):853-4.

5)AF00654 Chechick A, Amit Y, Israeli A, Horoszowski H. Recurrent rupture of the achilles tendon induced by corticosteroid injection. Br J Sports Med. 1982;16(2):89-90.

6)AF00646 Baruah DR. Bilateral spontaneous rupture of the Achilles tendons in a patient on long-term systemic steroid therapy. Br J Sports Med. 1984;18(2):128-9.

7)AF00299 Spencer JD. Spontaneous rupture of tendons in dialysis and renal transplant patients. Injury. 1988;19(2):86-8.

8)AF00378 Ozgurtas T, Yildiz C, Serdar M, Atesalp S, Kutluay T. Is high concentration of serum lipids a risk factor for Achilles tendon rupture? Clin Chim Acta. 2003;331(1-2):25-8.

9)AF00103 Mathiak G, Wening JV, Mathiak M, Neville LF, Jungbluth K. Serum cholesterol is elevated in patients with Achilles tendon ruptures. Arch Orthop Trauma Surg. 1999;119(5-6):280-4.

(22)

第2222章

章 病因

病因

病因

病因・・・・病態

病態

病態

病態

Research Question Research QuestionResearch QuestionResearch Question

1111

アキレス アキレスアキレスアキレス腱腱腱腱のののの肥厚肥厚肥厚肥厚はアキレスはアキレスはアキレスはアキレス腱腱腱腱断断断断裂裂裂裂のののの危危危険危険険険因子因子因子因子となりうるかとなりうるかとなりうるかとなりうるか 推 推 推推奨奨奨奨 Grade

Grade Grade Grade

C

C

C

C

アキレス腱の肥厚は腱の退行性変化の存在を示唆し,かつアキレス腱断裂発生の危険因子と

なりうる. 背景背景背景背景・・・・目的目的目的目的 アキレス腱断裂の好発年齢のピークの1つは30歳代と40歳代にあり,その理由はアキレス腱の退行性変性に あると考えられているが,明らかとなってはいない. 一般的に,アキレス腱の肥厚は退行性変性により生じ,肥厚した腱は断裂に至りやすいと考えられている.肥 厚した腱は本当に断裂の危険性があるか否かを検討する. 解解解解説説説説 アキレス腱断裂患者の受傷側および健側の超音波検査を用いて長期的観察(10~120ヵ月,平均63ヵ 月)を行った報告によると,アキレス腱断裂患者(n=70)の健側前後径を,年齢および性別を合わせた対 照群と比較した結果,有意にアキレス腱断裂患者の健側前後径が大きかったことより,アキレス腱の肥 厚はアキレス腱断裂の危険因子であると結論している.また,この患者の受傷側24.3%,健側2.9%に, アキレス腱内に低エコー領域,受傷側14.3%に石灰化を認め,対照群にはこれらを認めなかったことか ら,基盤に腱の退行性変性があることを示唆している(AF00012, EV level 6EV level 6EV level 6EV level 6).

• Nehrerらの報告によると,36名のアキレス腱痛を有する患者の超音波検査による検討(平均経過観察 期間48ヵ月)で,当初臨床症状を有した48アキレス腱のうち,後に断裂に至った7アキレス腱(14.6%)の すべてが超音波検査でアキレス腱の肥厚ありと診断されており,このうちの4腱(57.1%)が高度の肥厚 (前後径10mm以上)と分類された.また5腱(71.4%)に超音波検査で限局性の結節性変化が存在したと 述べ,アキレス腱の肥厚は腱の退行性変性を意味し,断裂の危険因子であると結論している(AF00151, EV level 7EV level 7EV level 7EV level 7).

文文文文献献献献

1)AF00012 Bleakney RR, Tallon C, Wong JK, Lim KP, Maffulli N. Long-term ultrasonographic features of the Achilles tendon after rupture. Clin J Sport Med. 2002;12(5):273-8.

2)AF00151 Nehrer S, Breitenseher M, Brodner W, Kainberger F, Fellinger EJ, Engel A, Imhof F. Clinical and sonographic evaluation of the risk of rupture in the Achilles tendon. Arch Orthop Trauma Surg. 1997;116(1-2):14-8.

(23)

第2222章

章 病因

病因

病因

病因・・・・病態

病態

病態

病態

Research Question Research QuestionResearch QuestionResearch Question

2222

アキレス アキレスアキレスアキレス腱腱腱腱断断断断裂裂裂裂ののの発の発発発生生生生にはにはにはには,基盤,基盤,基盤,基盤にににに必必必必ずずずず腱腱腱腱のののの変変性変変性性性がががが存在存在存在存在するかするかするかするか 推 推 推推奨奨奨奨 Grade

Grade Grade Grade

C

C

C

C

アキレス腱断裂は基盤に腱の変性が存在して発生すると考えられる.

背景背景背景背景・・・・目的目的目的目的 一般的にアキレス腱断裂の発生には,その基盤に腱の変性が存在すると考えられている. 臨床において慢性のアキレス腱炎などの腱の変性が示唆される症例が,後に断裂に至った等を経験すること から,変性した腱は断裂に至りやすいと推測されるが,明確な回答は得られていない.腱断裂には腱変性が必 須か否かを組織学的に検証する. 解解解解説説説説 Kannusらは,397アキレス腱を含む891腱皮下断裂(397アキレス腱,302上腕二頭筋腱,40長母指伸筋 腱,82大腿四頭筋腱,70他)の手術時採取組織(断裂から48時間以内に採取)の病理組織像を,年齢・ 性別を合わせた445腱(生前健康であり,事故で死亡した屍体から採取)と比較検討(case-control study)したところ,対照の2/3に健康組織構造が見られたのに対して,断裂腱のすべてに健康組織構造 が見られず(p<0.001), hypoxic degenerative tendinopathy, mucoid degeneration, tendolipomatosis, calcifying tendinopathyなどの変性性変化を認めたと報告した(AF00256, EV level 6EV level 6EV level 6EV level 6).

• このことから,アキレス腱断裂を含むすべての腱皮下断裂発生には基盤に何らかの腱変性が存在する と考えられる.しかしながら,本報告は腱組織採取を断裂から48時間以内としてはいるものの,腱断裂 発生前の病理組織像ではなく,この部分を含みおいて考える必要性を残している. • 文文文文献献献献

1)AF00256 Kannus P, Józsa L. Histopathological changes preceding spontaneous rupture of a tendon. A controlled study of 891 patients. J Bone Joint Surg Am. 1991;73(10):1507-25.

(24)

第2222章

章 病因

病因

病因

病因・・・・病態

病態

病態

病態

Research Question Research QuestionResearch QuestionResearch Question

3333

アキレス アキレスアキレスアキレス腱腱腱腱断断断断裂裂裂裂をををを誘誘誘誘発発発発するするするする可能性可能性可能性可能性のあるのある薬のあるのある薬薬薬物物物物はあるかはあるかはあるかはあるか 推 推 推推奨奨奨奨 Grade

Grade Grade Grade

B

B

B

B

fluoroquinoloneやciprofloxacinなどの抗菌剤は,アキレス腱断裂を誘発する可能性が考えられ

る. 背景背景背景背景・・・・目的目的目的目的 一般的に,副腎皮質ホルモンなどのある種の薬剤は,アキレス腱断裂を含むアキレス腱障害発生の危険因 子と考えられている. なかでも抗菌剤,特に特殊環境下に投与される抗菌剤はアキレス腱断裂を誘発する可能性があるとする報告 があり,アキレス腱断裂を含むアキレス腱障害発生と統計学的に有意に相関する薬剤を検討する. 解解解解説説説説

van der Lindenらはfluoroquinoloneとアキレス腱障害発生の相関をロジスティック回帰分析により,その 相対リスクを検討した.60歳以上においてfluoroquinolone使用開始後30日以内にアキレス腱障害が発 生し,特にアキレス腱断裂の相対リスク(7.1)が高く,その理由は不明としながらもアキレス腱障害発生 の危険因子であるとしている(AF00009, EV level 6EV level 6EV level 6EV level 6).

また,Chhajedらは肺移植患者におけるciplofloxacinの使用と,アキレス腱断裂を含むアキレス腱障害発 生との相関を検討したところ,101例の肺移植患者の22例(21.8%)がアキレス腱障害(うち6例は断裂) を発生し,このうちの20例(うち5例は断裂)はciplofloxacinを使用しており,様々な因子のなかで唯一 ciplofloxacin使用のみがアキレス腱障害と相関したと報告している(AF00015, EV level 6EV level 6EV level 6EV level 6).

文文文文献献献献

1)AF00009 van der Linden PD, Sturkenboom MC, Herings RM, Leufkens HG, Stricker BH. Fluoroquinolones and risk of Achilles tendon disorders: case-control study. BMJ. 2002;324(7349):1306-7.

2)AF00015 Chhajed PN, Plit ML, Hopkins PM, Malouf MA, Glanville AR. Achilles tendon disease in lung transplant recipients: association with ciprofloxacin. Eur Respir J. 2002;19(3):469-71.

(25)

第3333章

章 診

診断

はじめにはじめにはじめにはじめに 傷害の治療に際しては,診断が重要であることはアキレス腱断裂においても例外ではない.近年,医療技術の発 展と医療機器の発達により超音波やMRIが診断の補助,病態の把握や治療の経過観察用として用いられるようにな ってきた. 実際の臨床の現場では,アキレス腱断裂を疑う際には,特徴的な受傷時のエピソードに加え,局所所見で陥凹の 触知や,Simmonds Thompson squeezing test (Simmonds Thompson test)*などの理学的検査所見が参考にされ, ほとんどの症例において診断可能である.しかし,正確な診断のために必要な医療面接(問診)を含めた自覚症状, 他覚所見および各種の画像検査法について意義や必要性に関し,科学的かつ合理的に考慮され,実際に施行され ているとは言えないのが現状である. 本章においては,アキレス腱断裂診断のために,医療面接での重要なエピソードは何か,特徴的な局所所見は何 か,信頼のおける理学的検査所見は何かなどを科学的に検討した.また,画像検査法の必要性や意義について検 討し,臨床に携わる整形外科医の診断時の参考になることを目的とした. アキレス腱断裂の診断に関するサイエンティフィックステートメントの作成にあたり,計7つのリサーチクエスチョン を設定し,診断に関与すると考えられる全論文約727編のアブストラクトを吟味し,リサーチクエスチョンに答えられる 価値のある論文226編(英文156編,和文70編)を選択した.リサーチクエスチョンに答える形で7つの「推奨」を作成し た.最後に,これら「推奨」をもとに,アキレス腱断裂の診断のために4つのステップを提唱した. アキレス腱断裂の「診断」に関しては,手術などの明らかな介入が得られる「治療」とは異なり,RCT(randomized-controlled trial)などを計画して施行することはきわめて困難であり,RCTなどを有した論文は皆無であった.しかし, 過去の論文的知識や手法は,先人達が患者を詳細に問診(医療面接)し,診察した結果から導き出され,長年にわ たり数多くの臨床家の基盤となり診断に用いられてきた. 診断に関するこれらの論文は今回の検索範囲(1980年~2003年2月以前)にすでに公表されており,しかもその 当時はエビデンスという概念はなかったので,そのエビデンスレベルは必ずしも高くない.しかし,これらの診断的手 法に基づき,アキレス腱断裂の診断および治療などがなされており,多くの追試を受けた結果,現在まで大変貴重な 論文として残っているので選択した.さらに,診断に用いられてきたエピソード,陥凹などの局所所見や理学的検査 所見に関する注意点や改善法の報告はあるが,それらを否定する論文もないことから,その学問的価値は大規模 RCTに比していささかも劣るものではない.したがって,本章における各「推奨」のグレードはそれほど高いものには なっていない.また,診断の場合はオリジナルな所見や検査法が重要となるため,検索範囲を発表年までさかのぼ って検索した.

*Simmonds Thompson testと記載した理由:発表年がSimmondsが1957年,Thompsonが1962年であり,文 献上もSimmonds Thompson testと記載されているため.ただし,Thompsonの文献では1955年の11月に 著者が初めて注目したと述べているためThompson Simmonds testと呼ばれることもある.

本章本章本章本章のまとめのまとめのまとめのまとめ

まず,すべての診断の鍵となりうる問診(医療面接)は重要である.受傷時の特徴的な表現(アキレス腱部を蹴ら れた,ボールをぶつけられた,pop音の聴取など)が挙げられ,これらを聞いただけでアキレス腱断裂と診断可能な ほど特徴的なエピソードといえる.

ついで,受傷時の局所所見で陥凹の触知を認めれば断裂が示唆される.また,断裂により生じた機能の喪失を 診る徒手検査としてSimmonds test, Thompson testなどが挙げられ,補助診断として有用である.

画像検査として,単純X線検査,computed radiography(CR),超音波検査,MRIなどが挙げられる.また,単純X 線写真はアキレス腱断裂の描出としての診断的価値は低いが,骨折や骨棘障害などとの鑑別には重要である.最

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近のCRでは断裂状況のある程度の客観的把握が可能となった.また,これらの検査は補助診断として有益であり, 特にCR,超音波,MRI検査は治療方針や治療成績にも反映されるので,フォローアップの手段としての価値も見い 出される. 診断に際しては,医療面接と理学的所見のみで安易に診断を決めつけると,骨折などを見逃したり,歩行可能と いうことでアキレス腱断裂を見逃す危険性もある.したがって,的確な問診や理学所見でほとんどのアキレス腱断裂 の診断は可能であるが,確定診断ができない場合には,画像所見と併せて総合的な診断が必要である. アキレス腱断裂の診断のための4つのステップを以下に記載する. 【アキレス腱断裂の診断手順―4つのステップ】 ●First step:医療面接(問診) 受傷時の特徴的な表現(アキレス腱部を蹴られた,pop音の聴取など)はあるか. • アキレス腱部痛はあるか. • 階段昇降やつま先歩行は可能か. • 跛行はあるか. • ●Second step:理学所見 断裂部の陥凹を触知するか. • つま先立ちは可能か. •

徒手検査〔Simmonds Thompson test,knee flexion test(Matles test)など〕は陽性か. •

●Third step:画像検査

確定診断がつかない場合や治療方針の決定に有用な検査法は何か. •

first choice:単純X線検査・computed radiography(CR) second choice:超音波検査 third choice:MRI ※治療方針や治療成績にも反映されるのでフォローアップの手段としての価値あり. ●Fourth step:鑑別診断 アキレス腱炎・アキレス腱周囲炎,アキレス腱付着部裂離骨折,アキレス腱付着部障害(踵骨後部滑液包 炎,アキレス腱皮下滑液包炎,アキレス腱付着部炎),腓腹筋挫傷(いわゆる肉離れ)・腓腹筋内側頭筋腱移 行部の断裂(いわゆるtennis leg),脛骨過労性骨膜炎・疲労骨折,腓骨筋腱脱臼,後脛骨筋腱炎・長母趾屈 筋腱炎など 今後今後今後今後のののの課題課題課題課題 アキレス腱断裂の診断には,特徴的な受傷時のエピソードに加え,局所所見で陥凹の触知やSimmonds Thompson testなどの理学的検査所見が有用であり,ほとんどの症例において診断が可能である.今後の課題とし て,誤診する症例の実態や特徴を検討する必要がある.また,診断法を科学的に統計処理するために,受傷時の エピソード,局所所見や理学的検査所見の診断時の敏感度や特異度の評価,画像診断の必要性の有無などに関し ては,多施設共同での研究が必要と考える.  

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第3333章

章 診

診断

Research Question Research QuestionResearch QuestionResearch Question

1111

医 医医医療面接(問診療面接(問診療面接(問診療面接(問診・・・・病病病病歴歴))))だけでアキレス歴歴 だけでアキレスだけでアキレスだけでアキレス腱腱腱腱断断断断裂裂裂裂のののの診診診診断断断は断ははは可能可能可能可能かかかか 推 推 推推奨奨奨奨 Grade

Grade Grade Grade

C

C

C

C

問診や病歴単独で,ある程度アキレス腱断裂を予想することは可能である.よって,問診や病

歴をしっかり聴取することは基本であり重要である. 背景背景背景背景・・・・目的目的目的目的 近年,アキレス腱断裂の診断に単純X線写真,超音波検査,MRIなどの各種画像診断が用いられているが, あくまでも補助診断として用いるべきである.アキレス腱断裂に限らずあらゆる疾病を診断するにあたり,問診や 病歴をしっかり聴取することは基本であるので,医療面接の有用性について検討する. 解解解解説説説説 1111)前)前)前)前駆駆駆駆症症症症状状状状 43例中10例(23.3%)や244例中46例(19%)に受傷前にアキレス腱部に何らかの異常を感じていたとの 報告がある(AJ00068, EV level 7EV level 7EV level 7EV level 7)(AJ00117, EV level 7EV level 7EV level 7EV level 7).

• 前駆症状として歩行時や運動時の鈍痛,つっぱり感,違和感という漠然とした愁訴が多く,断裂前からア キレス腱部に変性や炎症の存在が疑われ,予防の観点からは重要な徴候である. • 2222)受傷時)受傷時)受傷時)受傷時のののの表現(蹴表現(蹴表現(蹴表現(蹴られたられたられたられた,,ボールがあたったなど,,ボールがあたったなどボールがあたったなどボールがあたったなど))))やややや断断断断裂音裂音裂音裂音 受傷時の表現として,「アキレス腱部を後ろから棒でたたかれたと思った」,「後ろから蹴られた,ボール をぶつけられたような衝撃を感じた」,「“ポーン”という音(pop音)を聴取した」「“ブチッ”という切れた音 を自覚した」などが挙げられ,これらを聞いただけでアキレス腱断裂と診断可能なほど特徴的なエピソー ドといえる.また,「足がつった」,「熱い感じがした」,「あまり強い痛みは感じなかった」,という異った表 現をすることもある(AF00564, EV level 9EV level 9EV level 9EV level 9)(AF00666, EV level 9EV level 9)(EV level 9EV level 9 AJ00117, EV level 7EV level 7EV level 7EV level 7)(AJ00231, EV level 7EV level 7EV level 7EV level 7).

3333)疼痛)疼痛)疼痛)疼痛やややや跛行跛行跛行跛行

自覚症状としてはアキレス腱部痛があるが,疼痛は著しい場合と軽度の場合があり,症例によっては独 歩で来院することもありうる.走ること,階段昇降やつま先歩行は不可能になるが,ベタ足歩行は可能で ある.このため,まれに断裂を見逃されることがあるので注意を要する(AF00564, EV level 9EV level 9EV level 9EV level 9)

(AF00666, EV level 9EV level 9EV level 9EV level 9)(AJ00231, EV level 7EV level 7EV level 7EV level 7). •

文文文文献献献献

1)AJ00068 笠次良爾,杉本和也,中山正一郎,高倉義典.バレーボールにおけるアキレス腱断裂について―受 傷機転を中心に―.臨床スポーツ医学.1999;16(3):369-72.

2)AJ00117 中山正一郎.スポーツによる下肢の傷害 アキレス腱の断裂.保健の科学.1996;38(7):451-5. 3)AF00564 Leppilahti J, Orava S. Total Achilles tendon rupture. A review. Sports Med. 1998;25(2):79-100. 4)AF00666 Popovic N, Lemaire R. Diagnosis and treatment of acute ruptures of the Achilles tendon. Current

concepts review. Acta Orthop Belg. 1999;65(4):458-71. 5)AJ00231 萬納寺毅智.アキレス腱断裂.臨外.1990;45:869-73.

表 表 表 表2222     検 検 検 検索式 索式 索式 索式
表 表 表 表3333     該 該 該 該当 当 当 当件 件 件 件数 数 数 数と と と と一次選 一次選 一次選 一次選択 択 択 択分 分 分 分担 担 担 担  総件数 727件 海外文献(MEDLINE) 378件 1.疫学 55件 :南郷委員 2.病因・病態 131件 :成田委員 3.診断・分類 226件 :帖佐委員 4.治療 258件 :古府委員 5.予後・予防 88件 :阪本委員 6.その他(上記分野で抽出 されなかった文献) 16件 :南郷委員 国内文献(医学中央雑誌) 349件

参照

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