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<シンポジウム20―1>神経内科領域における終末期の倫理的問題についてALS終末期ケアに関するアンケート調査結果

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Academic year: 2021

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50:1026

<シンポジウム 20―1>神経内科領域における終末期の倫理的問題について

ALS 終末期ケアに関するアンケート調査結果

荻野美恵子

(臨床神経 2010;50:1026-1028) Key words:筋萎縮性側索硬化症,終末期,緩和ケア,人工呼吸器離脱,モルヒネ 背景および目的 近年,延命治療の停止に関する事件が相次いで報道され,そ のいくつかは起訴され法の場で判断が下されている.また,起 訴されないまでも大きな議論を呼んだ事件や話題があり,社 会的な関心も大きい.神経内科分野には臓器移植における脳 死判定など,延命治療や治療中止にかかわる倫理的問題が多 く存在する. 現在,筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の 30% が侵襲的人 工呼吸器をもちいて療養中であり,新たに人工呼吸器を装着 する ALS 患者は 15∼17% と推測され,装着率は世界で一番 高い1).実際に臨床の場面でも,人工呼吸器の装着に関する問 題に悩む患者も多く,最近では取り外しを訴える患者の具体 例が報道されるなど,われわれ神経内科医は様々な困難な場 面に直面する機会をもつ2).これまでの経緯からは現在の日本 では死に直結する状況での人工呼吸器取り外しの施行は起訴 される可能性が高い.このような背景のなかで,神経内科専門 医がどのような状況で診療をおこなっているかを明らかにす る目的で ALS 終末期医療について意識調査をおこなった. 方法および対象 対象は日本神経学会認定専門医全 4,478 名とし,平成 21 年 3 月に郵送で 30 の質問からなるアンケート調査をおこ なった.無記名で返送をお願いし,集計した.なお,終末期に おける用語を以下のように定義した. 終末期:差し迫った死に向かい会う時期 完全コミュニケーション喪失状態:現在使用可能なすべて のコミュニケーション手段(随意筋以外もふくむ)が失われた 状態(林らの提唱した随意筋機能全廃を意味する閉じ込め症 候群(Totally Locked in State:TLS)3)とは区別)

モルヒネ:医療用麻薬・オピオイドをわかりやすくモルヒ ネとして総称 A.回収率および回答者のバックグラウンド 幅広い世代から合計 1,495 名(33%)の回答をえた.所属す る医療機関は国公立病院 9%,大学病院 23%,自治体病院 12%,病院 300 床以上 12%,病院 300 床以下 17%,診療所 17% など多岐にわたっていた. 診 療 の 現 状 に つ い て は 年 間 の ALS 症 例 数 は 半 数 以 上 (53%)が 3 名以下で,4∼10 名が 35%,11 名以上はわずか 12%(11 名∼20 名 7%,21∼40 名 3%,41 名以上 2%)であっ た.日本では欧米のような数百名の患者を診療する大規模な ALS センターは存在せず一カ所に患者が集中するというよ りも各医療機関が少数ずつの患者の診療に当たっているとい う状況である. B.モルヒネの使用について モルヒネの使用について 25% が使い慣れていると回答し たが,74% はあまり経験や知識はないと回答した.ALS に対 するモルヒネなどのオピオイドの処方は 21% で経験がある と回答し 2 年前の 14%(共同通信調査)よりも増加したが, そのほとんど(77%)が経験数は 5 例以内であった(6∼10 例 19%,11∼20 例 1%,20 例以上 3%)(Fig. 1). 使用開始の状況として複数回答であるが,47% が文献,成 書などでしらべながら独学で使用開始したと回答しており, ALS にモルヒネを使い慣れている専門医に相談しながら使 用開始した(32%),緩和ケアチームや緩和ケア医と連携して 使用開始した(18%)より多かった(Fig. 2). また,使用したことがない理由としては複数回答で該当例 の経験がない(65%),使用経験がない(47%),保険適応がな い(38%)であったが,今後使用するかどうかについては 47% が保険適用の有無にかかわらず必要であれば処方すると回答 しており,保険適用になれば使用するとした 38% を上回って いた. モルヒネの保険適用については ALS や筋ジストロフィー のような疾患でも適用となるべき 26%,すべての疾患の終末 期の苦しみに対して適用となるべき 63% と,現行のがん終末 期のみの適用でよい 5% を大幅に上回っていた. 北里大学医学部神経内科学(北里大学東病院神経内科)〔〒252―0380 相模原市南区麻溝台 2―1―1 北里大学東病院〕 (受付日:2010 年 5 月 22 日)

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ALS 終末期ケアに関するアンケート調査結果 50:1027 Fig. 1 ALS に対するモルヒネ処方経験について. 0% (79%) 10∼20% (6%) 30%< (2%) <10% (13%) Fig. 2 モルヒネ使用開始状況. 160 140 120 100 80 60 40 20 0 5.その他 18% 11% 7% 32% 47% 1.院内の緩和 ケアチーム と連携して 2.モルヒネを 使いなれて いる専門医 に相談 3.もともと自ら 使 い 慣 れ て いた 4.文献・成書で しらべ独学で 開始 5.その他 1.院内の緩和 ケアチーム と連携して 2.モルヒネを 使いなれて いる専門医 に相談 3.もともと自ら 使 い 慣 れ て いた 4.文献・成書で しらべ独学で 開始 C.鎮静について がんではモルヒネの使用に加えてミダゾラムなどによる死 の直前の鎮静はガイドラインも作成され,施行されているが, ALS 患者に対して鎮静をおこなうことについて聞いたとこ ろ,積極的に使用する 23%,やむをえないばあい使用する 51%,使用すべきでない 4%,わからない 17% であった.モ ルヒネの使用や鎮静と安楽死の関係について聞いたところ, 安楽死と同じ 3%,安楽死とことなるが結果的には同じ 24%, 安楽死とはまったくことなる 66% であった.がんに代表され る緩和ケアの領域では WHO の定義にもあるようにモルヒネ の使用や鎮静と安楽死はまったく別のものとされているが4) 神経内科領域では混同されているばあいもあるようである. D.人工呼吸器装着について 「貴施設で非侵襲的人工呼吸器(NPPV)装着を選択する ALS 症例の割合」をきいたところ,80% 以上 15%,50∼80% が 17%,20∼50% が 19%,10∼20% が 10%,10% 未満 26% であった. 一方「貴施設で侵襲的人工呼吸器(TV)装着を選択する ALS 症例の割合」は 80% 以上 8%,50∼80% が 15%,20∼ 50% が 25%,10∼20% が 15%,10% 未満 25% であった. 個々の回答者の方針を聞いた設問ではなく,施設の状況を 聞いたため,所属する医療機関の性質により回答にばらつき がでた可能性もある. 「TV 装着についてどなたの意見が重要視されますか」の問 いでは本人 49%,本人および家族が同等 45%,家族 3% で, 本人のみならず家族の意見も重要と捉えている回答者が多 かった. E.人工呼吸器取り外しについて これまで人工呼吸器の取り外しを患者または家族から頼ま れたことがあると回答したのは 21% であったが,ほとんどの ばあいできないまたはすべきではないと対応していた.取り 外しの権利については何らかの条件をクリアすればみとめて もよいのではないかという意見が 59%(本人の意思が明確か つ家族も同意するばあい 31%,事前に本人の明確な意思があ り家族も同意するばあい 17%,完全閉じ込め症候群で本人の 事前の意思かつ家族の同意があるばあい 11%)で,みとめる べきでないとした 24% と二分された.神経内科専門医として もこの問題に対して統一した見解があるわけではなく,かな り意見がわかれているということが確認できた. F.その他 20% の回答者が何らかのコメントを記載しており,今回の 回答率と共に,この問題に関しての関心の深さを伺わせた.患 者や家族からの回答困難な要望や現在の介護環境などすぐに はどうにもならない現状のなかで最善をつくす難しさを記載 したものが多かった. 今回の調査の高い回収率は神経内科医のこの問題に対する 関心の高さを表していると思われる.モルヒネの使用も徐々

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臨床神経学 50巻11号(2010:11) 50:1028 に増加してきており,これまで以上に ALS の呼吸苦に対する モルヒネの適用拡大や,ホスピスの適用拡大を求めていく必 要がある.また,神経内科医の多くはモルヒネを使い慣れてお らず,使用経験も少ないため,安全な使用方法や適用について の教育・研修が必要である. 欧米諸外国よりも人工呼吸器装着率が高い日本においては 人工呼吸器取り外しの要望に直面する場面もありうるため, 専門医としてどのように対応するか,患者の権利についてど のように捉えるかもオープンディスカッションが必要であ る5) 呼吸器装着についてもふくめ,これら終末期ケア全般に対 しての研修や教育プログラムが必須と考える. 謝辞:ご多忙のなか熱心に回答いただいた神経内科専門医の諸 先生方に深く感謝いたします. 1)荻野美恵子. 日本における ALS 終末期. 臨床神経 2008;48: 973-975. 2)荻野美恵子. ALS における倫理的・社会的問題. 神経治療 学 2005;22:741-745.

3)Hayashi H, Kato S, Kawata A, et al. Amyotrophic lateral sclerosis: oculomotor function in respirators. Neurology 1987;37:1431-1432. 4)日本緩和医療学会 苦痛緩和のための鎮静に関するガイ ドライン http:!!www.jspm.ne.jp!guidelines!sedation!s edation01.pdf 5)荻野美恵子. ALS 患者の呼吸器選択・呼吸器離脱の意思 決定. 日本在宅医学会雑誌 2005;7:23-27. Abstract

The survey report about the end-of-life care with ALS patients of the ALS physicians in Japan Mieko Ogino, M.D., Ph.D., MMA

Kitasato University

In March 2009 we sent out the questionnaire to the 4,478 board certified neurologist to ask about the pallia-tive care in ALS. 1,495 anonymous responses (33%) have been returned.

21% of the respondents prescribe morphine, which shows a drastic increase from the 14% in the 2007 survey. However, 77% of them had only less than 5 patients, 47% of them studied and trained themselves. It illustrates that most of the neurologists are not well experienced with morphine, and that they are isolated in practice. How-ever, 47% of the respondents answer that they would prescribe morphine whether or not the national insurance pays.

As for the withdrawal of the permanent ventilation, 21% of the respondents were asked by their patients to turn off the ventilation. While 24% of the respondents believe that the withdrawal right not should be promoted, 46% believe that such right should be granted if the decision made by the patient and!or his!her family members can explicitly be recognized. The result illustrates that the physicians are also divided.

It may be the time to lay the foundation for the Japanese ALS physicians to discuss openly and candidly to-gether to deal with the wants and wishes of their patients.

(Clin Neurol 2010;50:1026-1028) Key words: Amyotrophic Lateral Sclerosis, end of life, palliative care, withdrawal of permanent ventilation, morphine

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