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地球環境モデルと平和と繁栄の関係 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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著者

池田 誠

著者別名

Makoto IKEDA

雑誌名

国際地域学研究

19

ページ

37-56

発行年

2016-03

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00008249/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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 本稿では、筆者の地球環境モデル 2014 をベースに、世界平和度指数、グローバル・リスク報告 書、共有化された社会経済的パス、シュワルツの文化価値類型などの指標を手掛かりに、世界の平 和と繁栄、人権と環境に関する政治・経済・社会・環境の対立的な関係と、全体を概観するための 因果ループ図を作成して、要因の原因や背景要因と影響を分析した。これらのことから、価値観の 対立関係ではなく、社会システムとして全体的な相互関係をもとに、世界の平和と繁栄、人権と環 境の協調的な関係を探ることが重要であることが簡明に理解できる。

 In these pages, applying my own global environment 2014 model, I have analyzed causal and contextual factors and their influences, constructing a causal loop diagram for outlining the totality. This entails the political, economic, social and environmental oppositional relationships among world peace and prosperity, human rights and the environment, taking as clues for this analysis the Global Peace Index, Shared Socio-Economic Pass SSPs, and the Schwartz Cultural Values Model, among other considerations. One can quickly grasp, through this exercise, that the quest for world peace and prosperity, involving cooperative relations for human rights and the environment, are of great importance--not as a matter of oppositional values but based on total mutual relationships.

キーワード: 世界平和度指数、グローバル・リスク、共有化された社会経済的パス、シュワルツの 文化価値類型、システム・ダイナミックス

1.はじめに

 地球環境モデル(参考文献1)の結果から、今後予想される大規模な気候変動とそれによる異常 気象によって深刻な食糧危機が世界中で発生することが推定された。その食料危機を乗り越えるた めには、世界が全体として一つの相互協力体制をとることが最も望ましいことが明らかとなった。 しかし、そのような理想的な世界の状態でなくても、世界が4つ程度のブロックに分かれていて も、それぞれのブロック内で食料の相互協力体制ができれば、気候変動等による食料危機からの影

地球環境モデルと平和と繁栄の関係

池 田   誠*

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響をかなり小さくすることができることが分かった。  以上のような結果をもとに、地球環境モデルをベースに、今後の世界の平和と繁栄、人権と環境 の関係について、モデルを拡張する試みを行った。本研究では、経済平和研究所(IEP)の世界平 和度指数と世界経済フォーラム(WEF)のグローバル・リスク報告書をもとに、それらの要因の 相互関係を地球環境モデルに追加・拡張した。その相互関係モデルを入出力分析した段階で、当面 の研究成果とする。さらなるモデル化は今後の課題としたい。  本研究で得られた成果は、グローバル・リスク報告書 2015 をもとに新たに追加した 28 の要因 が、シュワルツの文化価値類型をもとにすると、政治経済分野と人権・環境分野とに大きく2分さ れ、相互に対立的な分野を形成することが明らかになった点である。そのうえで、相互関係モデル の入出力分析の結果から、対立的な視点ではなく総合的・協調的・協働的視点が重要であることを 明らかにした点である。

2.世界平和度指数 Global Peace Index:GPI

 地球環境モデルでは、全く触れることのできなった世界の平和について、まず、最近の変化をみ てみることとする。“Global Peace Index 2015”をもとに、図1(次ページ)のように 2008 年~ 2015 年までの隔年の世界地図を一覧にまとめた。GPI は、対外戦や内戦、近隣諸国との関係や近 隣諸国の市民の不信感、政治的不安定性、テロや暴力、犯罪、軍事力など 24 項目の指標をもとに 毎年推計されている。 その結果は、図1a 2008 年に示すとおり世界的金融危機(2007 年~2008 年)の期間ということも あり中東やアフリカの一部が低い平和度指数(危険地帯や紛争地域)であった。  しかし、2009 年になると図1bのようにロシアのウクライナ向けの天然ガス供給停止などのよ うに緊張関係が欧米とロシアの間で生じて、図1c のように 2010 年も同様の状態が続いた。この状態 も図1dや図1eのように 2010 年末~2012 年にか けてアラブの春と呼ばれたエジプトや中東などの民 主化の動きで比較的平和な状態に変わった。また、 2013 年には図1fと図1gのようにロシアとウク ライナの紛争から危険度が増して現在に至ってい る。さらに、2015 年には図1hのように中国が中 間レベルからやや危険度を高めている。この世界平 和度指数は、欧米からの世界の見方であることは明 らかである。ロシアや中国からの見方では全く異な る図になることは大いに考えられる点である。  本稿では、世界平和度指数のような数量的な視点 からも世界がいくつかの緊張や対立・紛争を含む状 態で目まぐるしく協調や対立を繰り返していること 図2 積極的平和の8項目

資料: “Global Peace Index 2015”(FIGURE 40 THE PILLARS OF POSITIVE PEACE)から引用

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図1a 2008 年(世界的金融危機 2007 年~2008 年) 図1b 2009 年ウクライナ向けの天然ガス供給停止

図1c  2010 年 図1d 2011 年(2010 年末~2012 年アラブの春)

図1e 2012 年(2010 年末~2012 年アラブの春) 図1f 2013 年(ロシア・ウクライナ)

図1g 2014 年 図1h 2015 年(中国が低下)

図 1 世界平和度指数 Global Peace Index の推移(2008 年~2015 年)

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を確認するにとどめたい。

 また、“Global Peace Index 2015”では、積極的な平和の要素として、次の8項目、①機能的な 政府、②健全なビジネス環境、③低レベルの腐敗、④他者の権利の受容、⑤高レベルの人的資本、 ⑥良好な周辺諸国との関係、⑦無料・低価格の情報、⑧資源の公平な配分を挙げている。  これらは、日本など OECD 諸国でも課題であるが、中国やロシアを見る時に留意すべき点であ る。  また、同書でも、これらの8項目は全て高度に密接な関係にあり、多様で複雑な経路を経て相互 関係にあると指摘している。  本稿の後半で、これらの項目のモデル内への取り込みの可能性についても触れることとしてい る。

3.世界の繁栄(人口と GDP)の動向

 次に地球環境モデルで全く触れることのできなった国別の世界の人口と経済の動向について、み てみることとする。ここでは世銀のデータベースをもとに 1980 年から 2013 年までの推移を見てい くこととする。本節のグラフは、横軸に人口、縦軸に GDP をとして、1980 年または 1990 年から プロットして作成した。縦横の比率や傾きは、一人当たりの GDP の水準や変化を表し、プロット の間隔が開いている部分は変化が大きいことをしている。 図3b 世界の下位の 27 億人と GDP の推移 図3a 世界の人口と GDP の推移(1980~2013 年) 図3c 世界の国の人口と GDP(1990 年~2013 年) 図 3 世界の人口と GDP の推移(1980~2013 年)

World DataBank GDP, PPP (constant 2011 international $) NY.GDP.MKTP.PP.KD  資料:世銀の資料をもとに池田誠作成

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 図aは、1980 年から 2013 年までの世界 214 の国や地域の合計の推移が右上の部分に示されてい る。その直ぐ下には、一人当たり GDP が平均以下の 138 か国・地域が示されている。後半の傾き がほぼ同じなので一人当たりの GDP の伸びが世界計とほぼ同じようになっていたことが分かる。 平均以上の 76 か国・地域は人口の伸びが少なく、傾きが大きいことが特徴となっている。  図bでは、1980 年から 2013 年までの世界の下位の 27 億人と GDP の推移を、インド(図の右 側)とそれ以下の一人当たりの GDP グループが最下位の 10 億人、72 か国・地域(図の左側) と、それよりも上位の5億人、18 か国・地域(図の中央)に分けてみている。中央の 18 か国・地 域が、人口の増加が高く、GDP の伸びが低いことから、国内に様々な問題を抱えていることが推 測される。  図c世界の国の人口と GDP では、中国が図の右側で最近のプロットが離れていることから毎年 の伸びが著しいことが明らかに見て取れる。さらに、左側の米国と比べると追い越すことが時間の 問題であることが明白である。図cにはインドやブラジル、ロシア、日本、ドイツも記載してい る。

3-1 日本の人口と経済(1990 年~2013 年)

 日本の人口と経済の 1990 年からの実績を、図4左のように経済はほぼ横ばいで、人口は 2011 年 をピークに減少へと転換していることが分かる。2000 年から 2013 年の変化を拡大すると図4右の ように 2009 年のリーマンショックによる落ち込み、2011 年の東日本大地震の影響が分かる。いず れにしても大きな転換点にあることが分かる。 図4 日本の人口と GDP(1990 年~2013 年)

World DataBank, Data from database: World Development Indicators 資料:世銀のデータバンクをもとに池田誠作成

3-2 ドイツの人口と経済

 ドイツも日本と同じような横ばいから折り返しているパターンを示しているが、東西ドイツの統 合による影響が 1990 年以降の横ばいの原因である。移民や難民への対応によって人口が大きく変 動することが特徴である。

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図 5 ドイツの人口と GDP(1990 年~2013 年)

World DataBank, Data from database: World Development Indicators 資料:世銀のデータバンクをもとに池田誠作成

3-3 ロシアの人口と経済

 1990 年からの変化という視点からは、ソ連 崩壊に伴うロシアの動きを見ておく必要があ る。図6に示すように、1990 年から 1998 年に かけて GDP はほぼ半減した。その後 2008 年 にかけて経済は回復したが、人口は5%程度減 少した。ロシアもリーマンショックの影響を受 けたが、回復している。ちなみに、GDP が半 減する状況というのは、日本の東南海トラフや 首都直下等の巨大災害にも考えられるが、ロシ アの場合は生産設備や社会資本そのものが無く なった訳ではないので、社会システムが整えば 回復できる点が完全な相違点である。  以上のことから、日本とドイツは人口減少社 会に向かう大きな転換点にあり、ロシアは人口 も経済も増加に転じてかつての勢いを取り戻しつつあり、中国はアメリカに迫る勢いであること や、一人当たりの所得で最下位の 10 億人までの 72 の国や地域ではミレニアム開発目標 MDGs の 成果かもしれないが改善がみられるものの、それよりも上位の5億人の 18 の国や地域では人口の 著しい増加や経済の伸び悩みなど問題が深刻化していることが明らかとなった。次の節では、地球 環境モデルでも取り上げた SSPs(共有化された社会経済的パス)の5つのケースについて、2100 年までの国別・地域別想定をみてみることとする。

4.世界の人口と GDP の将来

4-1 2050 年までの地域別 SSPs の推移

 まず、はじめに、単純に世界の人口と GDP(1990 年~2013 年)のデータをもとに単純な回帰分 図6 ロシアの人口と GDP(1990 年~2013 年) 資料:世銀のデータバンクをもとに池田誠作成 20150328_World DataBank_POP_GDP_ 世界の人口と GDP_ 1990 年 _2013 年 .xlsx

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析による 2050 年までの推計を行うと図7の ようになる。このような単純予測では、2050 年に米国は中国の 1/2 になるという結果とな る。

 OECD の“LONG-TERM GROWTH SCE-NARIOS”2013 をもとに作成した図8世界 の地域別 GDP シェアをみても同様の予測と なっている。この図から、2020 年以降、中 国の経済的なシェアは増大し続け、米国や日 本、 ユ ー ロ 圏 だ け で は な く、 そ の 他 の OECD まで含めて辛うじて中国のシェアに匹敵する状態が続くものと予想されている。  このような単純な推計値と予測結果について、OECD Env-Growth の R32 国・地域別の SSPs (共有化された社会経済的パス)の予測値をもとに 2050 年までの将来を図にすると図9に示すとお りである。米国は単純推計とそれほど大きな差異は見られないが、中国やインドについては人口も GDP もかなり異なった予測となるケースが見られる。そこで、以下では、国別の SSPs をもとに 2100 年までの世界を見てみることとする。 図8 世界の地域別 GDP シェア 2007 PPPs (%) 資料: 1990 年 と 2000 年 は 世 銀 の DB、2010 年 か ら は OECD の実績値と予測を用いて池田誠作成 図 9 世界の人口と GDP(1990 年~2050 年) 注: World DataBank(1990 年~2013 年実績)と 2050 年ま で の ト レ ン ド 予 測 は 青 ◆、2020 年 ~2050 年 ま で の OECD の SSP1~5 は茶■で表示している。 資料:上記の資料をもとに池田誠作成

4-2 2100 年までの地域別 SSPs の推移

 OECD が 2013 年に発表した SSP1~5 の 2000 年から 2100 年までの国や地域別の推移を、X軸に 人口、Y軸に GDP を指標として、10 年ごとの変化を点で示すと図 10 のとおりである。  図 10a の世界は、最も環境重視型の SSP1 では人口 80 億人程度を上限に 2100 年には 70 億人程 度に減少する一方、GDP は 600 兆ドルに達し、SSPs の中で2番目に高い予測となっている。最も エネルギー使用の多い SSp5 は GDP が 1,000 兆ドルと極めて高い予測となっている。人口 130 億人 程度と最も多い SSP3 は従来型の成長を継続するシナリオで GDP は約 300 兆ドルとなっており、 一人当たりの所得は最低となる予測である。図 10b の日本は、全体的に人口減少傾向が目立ち、 約 18 兆ドルと最も GDP が高い SSP5 で人口が1億人以上という予測となっている。現状維持的な 図 7 2050 年の日米中印の人口と GDP 資料:世銀のデータバンクをもとに池田誠作成

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SSP3 では人口は5千万人以下、GDP も3兆ドル程度となっている。図 10c のアメリカでは、 SSP3 で人口がほぼ 2000 年並みになることも予想される一方、SSP5 では7億人、約 120 兆ドルと なっている。環境配慮型の政策をとる SSP1 と比較すると GDP で2倍という結果になっている。 図 10d の EU15 でも、図 10e の OCED 日米欧ほかでも、ほぼ米国と同じような SSPs のグラフの 形となっている。一方、中国は、図 10f のように、2050 年頃から人口減少、GDP の伸び悩みが予 測されている。  経済的なプレゼンスの拡大が予想されている中国ではあるが、図 10g のように米国と中国を比 較すると中国の経済的な存在感や影響力は 2100 年まで続きそうに思われる。他方、図 10h のよう に日米欧の合計と中国を比較すると 2050~2060 年頃までに再び逆転が起こりそうな予測となって いる。 このことの日本や欧米諸国にとっての意味は、様々な観点から検討が必要であろうが、世界の平和 と繁栄や人権、環境という面から重要な示唆を与えてくれるものと言えよう。 図 10a 世界 図 10b 日本 図 10c アメリカ 図 10d EU15

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図 10e OCED 日米欧ほか 図 10f 中国 図 10g R31USA 米国と R05CHN 中国 図 10h R32EUSJA 日米欧と R5CHN 中国 図 10 2100 年までの地域別 SSPs の推移 資料:OECD_SSP_DataBase_2013_SspDb_compare_regions_2013-06-12.xls から池田誠作成

5.グローバル・リスクとグローバル・トレンド

 以上のような、世界の国や地域別の人口と GDP の予測をベースに将来の世界の動向を検討する ために、現在直面している地球規模の危機についてみていくこととする。ここでは、世界経済 フォーラム(WEF:WORLD ECONOMIC FORUM)の「グローバル・リスク報告書」の 2013 年 版と 2015 年版をもとに具体的な危機の項目や危機の発生の可能性とインパクトの大きさについて みてみることとする。(図 11)  グローバル・リスクは、毎年、専門家や経済人、政治家など人数に変化はあるもののアンケート 調査に基づき作成されている。性別・年齢別、分野別などの分析も興味深いので、報告書を参照さ れたい。 その中で、最も大きな影響と高い可能性の項目として「水供給の危機」はそのまま影響も可能性も 増大していることから対応の困難さや問題の深刻さの増大が予想されている。それに加えて「国家

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間の紛争」が新たに登場してきている。 「長期間にわたる財政不均衡」や「温室効果ガス排出量の増大」、「極端な所得格差」の代わりに上 位に浮上してきたのは「気候変動への適応の失敗」や「失業」、「国家統治の失敗」、「極端な異常気 象」の可能性が一段と高まっている。影響が拡大している項目としては「感染症の拡散」や「大量 破壊兵器の拡散」などが予想されている。 これらの危機項目間の相互関係は、どのように考えられているのであろうか。

5-1 グローバル・リスク 2015 の相互関係

 『グローバル・リスク報告書 2015』には、図 12 左のような相互関係図が掲げられている。この 図も専門家等へのアンケート調査をもとに作成されたもので、図 12 の左側の図の相互関係を参考 に、右のような因果関係図を作成した。図 12 は、筆者のイメージをもとに作成した図であるの で、今後検証が必要であるが、一つの仮説的な因果関係図として本稿では理解されたい。 図 11 2013 年と 2015 年のグローバル・リスクの展望の比較

資料: WORLD ECONOMIC FORUM「 第 8 版 グ ロ ー バ ル・ リ ス ク 報 告 書 2013 年 版 」 と WORLD ECONOMIC FORUM “Global Risks 2015 10th Edition”から池田誠作成

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The Global Risks 2015 Interconnections Map 左図の相互関係を主な因果関係に置換した図 データの不正 利用や盗難 金融メカニズム や制度の失敗 技術の 誤用 生物多様性の喪失 と生態系の崩壊 制御不能な インフレ 失業や不 完全雇用 財政危機 重要インフラ の機能停止 エネルギー 価格ショック デフレ 資産 バブル 重大な社会 的不安定性 国家間 の紛争 極端な 異常気象 国家の崩 壊や危機 重要な情報イ ンフラの故障 国家統治 の失敗 気候変動への 適応の失敗 サイバー 攻撃 水危機 伝染病 の拡散 大量破壊 兵器 自然破局カタ ストロフィー 大規模な非 自発的移民 食料危機 都市計画 の失敗 テロ 攻撃 人工的環境 の破局 図 12 グローバル・リスク 2015 の相互関係図

Figure 3: The Risks-Trends 2015 Interconnections Map

資料:WEF_Global_Risks_2015_Report15.pdf をもとに池田誠作成

5-2 グローバル・トレンド

 さらに、『グローバル・リスク報告書』によると、2015 年のグローバル・トレンドのトップ 10 は、次のとおりである。社会経済的なトレンドが①格差、②失業、⑩健康の3つで、政治的なトレ ンドが③リーダーシップ、④民主主義、⑤地政学、⑧ナショナリズムの4つ、環境的なトレンドが ⑥汚染、⑦異常気象、⑨水問題の3つである。中でも、④戦略地政学的な競争と⑧ナショナリズム の先鋭化の2つのトレンドは、『グローバル・リスク報告書』が 2010 年に発刊されて以来はじめて 登場したものであると記されている。このことは、「国際政治の断片化の増大および人々の間にお けるグローバル化に対する反発を示唆するもの」であるという指摘もされている。  以上のような世界のリスクやトレンドを、世界の様々な国や地域、そしてそこに生きる人々に とってどのように位置づけられるものなのか、人々の価値の側面から検討することとする。

①所得格差の深刻化  Deepening income inequality ②失業の増大の継続  Persistent jobless growth ③リーダーシップの欠如 Lack of leadership

④戦略地政学的な競争の激化 Rising geostrategic competition ⑤議会制民主主義の弱体化 Weakening of representative democracy ⑥開発途上国における汚染の拡大 Rising pollution in the developing world

⑦過酷な異常気象の発生数の増加 Increasing occurrence of severe weather events ⑧ナショナリズムの先鋭化 Intensifying nationalism

⑨水問題の拡大 Increasing water stress

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5-3 グローバル・リスクと人々の行動特性と価値類型

 グローバル・リスクに対する人々の反応を 検討するために、ここでは心理学のコスター とマクレーの行動特性 Big5 とシュワルツの 文化価値類型をもとにすることとする。これ らも世界各国の意識調査によって得られた分 類や結果であり、代表的な指標と言えよう。  まず、一人一人の性格や人格(パーソナリ ティ)については、Big 5 と呼ばれる「情 動・活動・遊技・関係・意思」の5つの因子 (NOE-PI-R)が心理学では定説となってい る。  グローバル・リスクに対応させて各因子を 簡単に説明すると次の通りである。①リスク と考える人とそうでない人、②行動で対応し ようとする人と気持ちで対応しようとする 人、③新しい方法で対応しようとする人と従 前の経験的な方法で対応しようとする人、④ 協力して対応しようとする人と利己的・競争 的に対応しようとする人、合理的・効率的に 対応しようとする人と自由にあるがままに対 応しようとする人に分かれる。  図 13 は、シュワルツの文化価値類型を簡 略化した図である。  もともとシュワルツの調査研究は、個人レベルの調査項目で集計したもの(図 14 のベース図) と文化価値類型(図 13 は簡略化した図)がある。これらの図は、2次元解最小空間分析法によ り、10 次元の多面体を2次元の平面の図として表現したものである。隣り合ったもの同士は両立 し、相対する位置関係にあるものは両立し得ないと判断される。さらに、10 次元の項目は Big5 の 5因子のプラスとマイナスに対応していることが、別の追試で確認されている。また、個人が生活 や行動で様々な行為をする時には、それぞれの心理学的な5因子は固定的ではなく、その時々の状 況や周囲の環境に応じて、5因子を柔軟かつ流動的に使い分けて、いわば5因子と状況の相互作用 で、各人が様々な行為を行っていることは心理学の定説となっている。  図 12 の 28 個のグローバル・リスクの要素を、シュワルツの価値類型の図に配置すると、図 14 のように左下と右上の対極に位置する問題群であることが分かる。右上は、社会秩序や公共性、安 全や国家の安全などに関わる政治的な分野と、影響力や冨、社会的権力や序列・地位、階級制・階 層性などに関わる経済的な分野に集中する政治経済分野である。これに対して左下は、自然との一 体性や調和、環境保護、責任感、仁愛などに関わる環境的な分野と、平等、博愛(人助け)、自 由、平和、普遍主義などに関わる人権的・人道的な分野に集中する人権・環境分野と呼ぶことがで 図 13 シュワルツの文化価値類型の略図 資料:三井宏隆著『比較文化の心理学』から池田作成 表1 人間の行動特性(Big5、NEO-PI-R) 資料:宅間武俊外編『性格の理論』等から池田誠作成

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きるような分野である。  図 14 のシュワルツの価値類型におけるグローバル・リスク要素の位置づけで明らかなように、 政治経済分野と人権・環境分野はほぼ正反対の位置関係にあることから相互に対立的な関係にある ことが分かる。軍事費を援助や環境対策へ、経済成長優先よりも貧困や格差対策と環境に配慮した 経済への転換を、などといった人権・環境分野に価値を置き、この分野のリスクを重視する人々か らの意見がある。これに対して、政治・経済分野に価値を置き、この分野のリスクを重視する人々 からは、国の安全や国民の生活が先でそのためには国家の安定や秩序維持が重要である。国内の失 業や格差などを解決しなければ社会的政治的な不安定化を招き、国際協力や環境対策などは更に悪 化する可能性すらあるといった意見が出る。  筆者の専門である社会システム的な視点からは、価値観の上では相互に相容れない深刻な対立 も、協調へと転換することが可能ではないかと考えている。即ち、社会システム的に世界の問題全 体を俯瞰することによって相互の関連性を明らかにすることによって、相互の理解や合意形成が可 能であり、具体的な協力関係や行動が可能であるという考えである。その試みを以下で見ていくこ ととする。 ቟ో 㪪㪜㪚㪬㪩㪠㪫㪰 ᥉ㆉਥ⟵ 㪬㪥㪠㪭㪜㪩㪪㪘㪣㪠㪪㪤 ੳᗲ 㪙㪜㪥㪜㪭㪦㪣㪜㪥㪚㪜 વ⛔ 㪫㪩㪘㪛㪠㪫㪠㪦㪥 ᮭജ 㪧㪦㪮㪜㪩 ᔟᭉ 㪟㪜㪛㪦㪥㪠㪪㪤 ㆐ᚑ 㪘㪚㪟㪠㪭㪜㪤㪜㪥㪫 ೝỗ 㪪㪫㪠㪤㪬㪣㪘㪫㪠㪦㪥 ⥄ਥ⁛ᓔ 㪪㪜㪣㪝㪄 㪛㪠㪩㪜㪚㪫㪠㪦㪥 ࿖ኅ䈱቟ో 㫅㪸㫋㫀㫆㫅㪸㫃㩷㫊㪼㪺㫌㫉㫀㫋㫐 ␠ળ⒎ᐨ 㫊㫆㪺㫀㪸㫃㩷㫆㫉㪻㪼㫉 ᷡẖ 㪺㫃㪼㪸㫅 ኅᣖ䈱቟ో 㪽㪸㫄㫀㫃㫐㩷㫊㪼㪺㫌㫉㫀㫋㫐 ஜᐽ 㪿㪼㪸㫃㫋㪿㫐 ⢻ജ 㪺㪸㫇㪸㪹㫃㪼 ⍮ᕈ 㫀㫅㫋㪼㫃㫃㫀㪾㪼㫅㫋 㫇㫃㪼㪸㫊㫌㫉㪼ᭉ䈚 䉂 ੱ↢䉕ᭉ䈚 䉃 㪼㫅㫁㫆㫐㫀㫅㪾㩷㫃㫀㪽㪼 ⥝ᅗ⊛ੱ↢ 㪼㫏㪺㫀㫋㫀㫅㪾㩷㫃㫀㪽㪼 ᄌൻ䈮ን䉖䈣 ੱ↢㩷㫍㪸㫉㫀㪼㪻㩷㫃㫀㪽㪼 ⁛┙ 㫀㫅㪻㪼㫇㪼㫅㪻㪼㫅㫋 ഃㅧᕈ 㪺㫉㪼㪸㫋㫀㫍㫀㫋㫐 ⥄↱ 㪽㫉㪼㪼㪻㫆㫄 ᐔ╬ 㪼㫈㫌㪸㫃㫀㫋㫐 ⥄ὼ䈫 䈱 ৻૕ᕈ㩷㫌㫅㫀㫋㫐 㫎㫀㫋㪿㩷㫅㪸㫋㫌㫉㪼 ౏౒䉟䊜 䊷䉳 䈱⛽ᜬ 㫇㫉㪼㫊㪼㫉㫍㫀㫅㪾 㫇㫌㪹㫃㫀㪺㩷㫀㫄㪸㪾㪼 ␠ળᮭജ 㫊㫆㪺㫀㪸㫃㩷㫇㫆㫎㪼㫉 ᮭᆭ 㪸㫌㫋㪿㫆㫉㫀㫋㫐 ን 㫎㪼㪸㫃㫋㪿 ㊁ᔃ 㪸㫄㪹㫀㫋㫀㫆㫌㫊 ᓇ㗀ജ 㫀㫅㪽㫃㫌㪼㫅㫋㫀㪸㫃 ᚑഞ 㫊㫌㪺㪺㪼㫊㫊㪽㫌㫃 ᱜ⋥ 㪿㫆㫅㪼㫊㫋 ੱ↢䈱ᗧ๧ 㫄㪼㪸㫅㫀㫅㪾㩷㫀㫅㩷㫃㫀㪽㪼 ᚑᾫ䈚 䈢ᗲᖱ 㫄㪸㫋㫌㫉㪼㩷㫃㫆㫍㪼 ੱഥ䈔 㪿㪼㫃㫇㪽㫌㫃 ⥄Ꮖ㎊㍰ 㫊㪼㫃㪽㩷㪻㫀㫊㪺㫀㫇㫃㫀㫅㪼 ␞௾ᱜ䈚 䈘 㫇㫆㫃㫀㫋㪼㫅㪼㫊㫊 ਔⷫ䈻䈱ᢘᗧ 㪿㫆㫅㫆㫉㩷㫇㪸㫉㪼㫅㫋㫊 ᓥ㗅 㫆㪹㪼㪻㫀㪼㫅㫋 ੱ↢䈱ഀᒰ䈱ฃኈ 㪸㪺㪺㪼㫇㫋㫀㫅㪾㩷㫇㫆㫉㫋㫀㫆㫅 㫀㫅㩷㫃㫀㪽㪼 㫄㫆㪻㪼㫉㪸㫋㪼Ⓩஜ વ⛔䈻䈱ᢘᗧ 㫉㪼㫊㫇㪼㪺㫋㩷㪽㫆㫉 㫋㫉㪸㪻㫀㫋㫀㫆㫅 ାᔃᷓ䈇 㪻㪼㫍㫆㫌㫋 ⻞⯯ 㪿㫌㫄㪹㫃㪼 ⿥ὼ 㪻㪼㫋㪸㪺㪿㫄㪼㫅㫋 ᢜᗧ䊶⥄㐽 ή⻎ ㅺ⣕䊶ᅦᗐ ⅣႺ଻⼔ 㫇㫉㫆㫋㪼㪺㫋㫀㫅㪾 㪼㫅㫍㫀㫉㫆㫅㫄㪼㫅㫋 ⍮ᕺ⍮⼂ 㫎㫀㫊㪻㫆㫄 ᐔ๺䈭਎⇇ 㫎㫆㫉㫃㪻㩷㪸㫋㩷㫇㪼㪸㪺㪼 ␠ળᱜ⟵ 㫊㫆㪺㫀㪸㫃㩷㫁㫌㫊㫋㫀㪺㪼 ౝ㕙⊛⺞๺ 㫀㫅㫅㪼㫉㩷㪿㪸㫉㫄㫆㫅㫐 ⌀䈱෹ᖱ 㫋㫉㫌㪼㩷㪽㫉㫀㪼㫅㪻㫊㪿㫀㫇 ᔘ⺈ 㫃㫆㫐㪸㫃 ♖␹↢ᵴ 㫊㫇㫀㫉㫀㫋㫌㪸㫃㩷㫃㫀㪽㪼 ኡᄢ䈘 㪽㫆㫉㪾㫀㫍㫀㫅㪾 ⽿છ 㫉㪼㫊㫇㫆㫅㫊㫀㪹㫃㪼 ၷታ䈭䊶⚻㛎 ⥄ਥ⁛┙ ᖱ✜቟ቯ Ⓧᭂᕈ ⷫ๺⊛ ㆆ䈶ᔃ䈱䈅䉎 㪙㪊㪄ㆆ䈶䋺⃻ታᕈ 㪙㪉㪄ᵴേ䋺ౝะᕈ 㪙㪋㪂㑐ଥ䋺ᗲ⌕ᕈ 㪙㪌㪂ᗧᔒ䋺⛔೙ᕈ 㪙㪊㪂ㆆ䈶䋺ㆆᚨᕈ 㪙㪉㪂ᵴേ䋺ᄖะᕈ 㪙㪋㪄㑐ଥ䋺ಽ㔌ᕈ 㓸࿅ၒᴚ ઀੐ਛᲥ ␹⚻∝ 㪙㪌㪄ᗧᔒ䋺⥄ὼᕈ 䈅䉎䈏䉁䉁 ⋡⊛วℂ⊛ ⤪∛䊶᳇ᓟ䉏 ೨଀ਥ⟵ 㪙㪈㪂ᖱേ䋺㕖ᖱേᕈ ήὑ䊶ᕃᗍ ᗵᖱ㊰⏴ ប䈋⋡ 㪙㪈㪄ᖱേ䋺ᖱേᕈ ᢅᗵ䈭 ೙ᓮਇ⢻ߥ ࠗࡦࡈ࡟ ᄬᬺ߿ਇቢ ో㓹↪ ⽷᡽ ෂᯏ ㊀ⷐࠗࡦࡈ࡜ ߩᯏ⢻஗ᱛ ࠛࡀ࡞ࠡ࡯ ଔᩰ࡚ࠪ࠶ࠢ ࠺ࡈ ࡟ ⾗↥ ࡃࡉ࡞ ࿖ኅ㑆 ߩ⚗੎ ᭂ┵ߥ ⇣Ᏹ᳇⽎ ㊀ᄢߥ␠ળ ⊛ਇ቟ቯᕈ ㊀ⷐߥᖱႎࠗ ࡦࡈ࡜ߩ᡿㓚 ࿖ኅ⛔ᴦ ߩᄬᢌ ᳇୥ᄌേ߳ߩ ㆡᔕߩᄬᢌ ࠨࠗࡃ ࡯᡹᠄ ᳓ෂ ᯏ વᨴ∛ ߩ᜛ᢔ ᄢ㊂⎕უ ౓ེ ⥄ὼ⎕ዪࠞ࠲ ࠬ࠻ࡠࡈࠖ࡯ ᄢⷙᮨߥ㕖 ⥄⊒⊛⒖᳃ 㘩ᢱෂᯏ ㇺᏒ⸘↹ ߩᄬᢌ ࠹ࡠ ᡹᠄ ࿖ኅߩ፣ უ߿ෂᯏ ࠺࡯࠲ߩਇᱜ ೑↪߿⋑㔍 ㊄Ⲣࡔࠞ࠾࠭ࡓ ߿೙ᐲߩᄬᢌ ᛛⴚߩ ⺋↪ ↢‛ᄙ᭽ᕈߩ ༚ᄬߣ↢ᘒ♽ ߩ፣უ ⥄ዅᔃ UGNH TGURGEV ห⺞ 㪚㪦㪥㪝㪦㪩㪤㪠㪫㪰 ੱᎿ⊛ⅣႺ ߩ⎕ዪ ะ䈖䈉 ⷗䈝 㪻㪸㫉㫀㫅㪾 ᅢᄸᔃ 㪺㫌㫉㫀㫆㫌㫊 ⥄ಽ䈱⋡ᮡㆬᛯ 㪺㪿㫆㫆㫊㫀㫅㪾㩷㫆㫎㫅㩷㪾㫆㪸㫃㫊 図 14 シュワルツの価値類型におけるグローバル・リスク要素の位置づけ 資料:三井宏隆著『比較文化の心理学』と『グローバル・リスク報告書』をもとに池田誠作成 20151114_ グローバル・リスクとシュワルツ .flh

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6.世界の平和と繁栄と人権と環境のシステム

 以上のような世界の平和度指標や世界の人口や GDP の動向と将来、グローバル・リスク、グ ローバル・トレンド、人々の行動特性と価値類型など多面的な観点からの概観をもとに、2014 年 度の紀要で報告した筆者の地球環境モデルの拡張を試みることとする。

6-1 世界の平和と繁栄と人権と環境の因果ループ

 地球環境モデルでも取り上げた人口、経済、エネルギー、温暖化、食料などの分野に加えて、グ ローバル・ピースやグローバル・リスク等に関連する新規分野として、世界の幸せ、環境汚染、国 વᨴ∛䈱 ᜛ᢔᐲ 㪞㪟㪞䈱⚥ Ⓧឃ಴㊂ ᷷ᥦൻ䉧 䉴㪞㪟㪞䈱 ឃ಴㊂ ᱜ ㅜ਄࿖ 䈱⚻ᷣ ⊒ዷ ᚢ⇛࿾᡽ ቇ⊛䈭┹ ੎䈱ỗൻ ᄢቇᢎ⢒ 䉇䉟䊮䉺 䊷䊈䉾 䊃 ࿾ၞ೎ ੱญ వㅴ࿖ ੱญ ㅜ਄࿖ੱญ ᐕዋੱ ญ ᦨ⽺࿖ ੱญ ㇺᏒ ࿖ౝ䈱 ᚲᓧಽ ㈩ᩰᏅ ⾗ᧄ 䊂䊷䉺 䈱 ਇᱜ೑↪ 䉇⋑㔍 ㊀ⷐ䈭ᖱ ႎ䉟䊮䊐 䊤䈱᡿㓚 ⽶ ࿖㓙⊛⛔ ᴦ⢻ജ ᳇୥ᄌേ 䊌䊪䊷䈱 䉲䊐䊃 㩷ᮭ ജ䈱⒖ⴕ ࿖ኅ⛔ ᴦ ᱜ 䉰䉟䊋䊷 ᡹᠄ 㩷᳓ෂ ᯏ ⽶ ᄢ㊂⎕უ ౓ེ ⥄ὼ⎕ ዪᐲ ↢‛ᄙ᭽ᕈ 䈫 ↢ᘒ♽䈱 ፣უᐲ ᄢⷙᮨ䈭㕖 ⥄⊒⊛⒖᳃ ᱜ ⽶ 㘩ᢱ ෂᯏ ⽶ ᣂ⥝⚻ᷣ ⻉࿖䈱ਛ ᵹ㓏ጀ ࿖ኅ䈱፣ უ䉇ෂᯏ ⽶ ᱜ ᄬᬺ䉇ਇ ቢో㓹↪ ⽷᡽ ෂᯏ ⽶ 䉣䊈䊦䉩 䊷ଔᩰ ㊀ᄢ䈭␠ળ ⊛ਇ቟ቯᕈ ᱜ ᱜ ᱜ ⽶ ࿖ኅ㑆 䈱⚗੎ ᱜ ᱜ ⽶ ⽶ ᭂ┵䈭⇣Ᏹ ᳇⽎䈱⊒↢ ಴↢ ⠪ᢙ ੱญ ᱜ ᷷ᥦൻ ৻ᰴ 䉣䊈䊦䉩 䊷㩿ం㪫㪦㪜㪀 ኙᥤ䈮 䉋䉎ᱫ ੢ ౣ↢䉣䊈 ╬䉷䊨䉣 䊚 ␠ળ ⽶ ㅜ਄࿖䈮䈍 䈔䉎ᳪᨴ 䊥 䊷䉻䊷 䉲䉾 䊒 ᱜ 䊅䉲䊢 䊅 䊥 䉵䊛䈱 వ㍈ൻ ⼏ળ೙᳃ ਥਥ⟵䈱 ᒙ૕ൻ ᚲᓧ ⾗↥䊶 ૑ዬ ⽶ ⷐ࿃೎ ᱫ੢₸ ⷐ࿃೎ ಴↢₸ ၮ␆ᢎ⢒ 䊶 ⼂ሼ₸ ⽶ ↢↥ ৻ੱᒰ䈢 䉍 ᚲᓧ ⽶ ⽶ ᚲᓧᩰ Ꮕ ഭ௛ജ ੱญ 㜞㦂ൻ ੱญ ⥄↱ᐔ ╬ඳᗲ ᱜ ၮ␆⊛ 䈭ක≮ ⽶ ⽶ 㓹↪ ⽶ 㘩ᢱ䊶 ᩕ 㙃⁁ᘒ ⽶ ⽶ 䈐䉏䈇䈭ⓨ ᳇䊶 ࿯䊶 ᳓ ⽶ ⽶ વ⛔ ᢥൻ ⽶ 䉳䉢 䊮䉻䊷 ␠ળෳട 䉣䊈䊦䉩 䊷⾗Ḯ㊂ ⽶ ⽶䇭 ෻ ೨ㄭઍ ⊛⠌ᓞ ⽶ ⽶ ࿖ㅪ╬ 㪥㪞㪦䊶 㪥㪧㪦 ⽶ ⽶ ⽶ ᐕ㦂೎ ੱญ ᅚᕈ ᡽╷ ⽶ ⽶ ోⷐ⚛ ↢↥ᕈ ࿾ၞ೎ ᚲᓧ ࿖౷ ⽶ ᱜ ⑼ቇᛛⴚ ᱜ ⅣႺᖡൻ ᐲ ᳇୥ᄌേ䈻 䈱ㆡᔕᐲ ⽶ ⽶ ⽶ ᱫ੢ ⠪ᢙ ⽶ ੱᮭ䉇ᐔ๺䋨 ⚗੎ᚢ੎ᜆ⥌ ╬䈭䈚 䋩 ⽶ ⽶ ᶏ㕙਄᣹ 㪛㪅䊜 䊄 䉡 䉵䈱਎⇇ 䈱ᐘ䈞 ⽶ ᶖ⾌ ᕈ೎ ੱญ ↵ᕈ 䉣䊈䊦䉩䊷 ⚻ᷣ ੱญ ␠ળ ᷷ᥦൻ ⅣႺᳪᨴ ᡽ᴦ ᐘ䈞

図 15 世界の平和と繁栄と人権と環境の因果ループ図(CLD:Causal Loop Diagram)

資料: 世界平和度指標、世界の人口や GDP の動向と将来(SSPs)、グローバル・リスク報告書、グローバル・トレンド、 人々の行動特性、価値類型などをもとに、地球環境モデルを拡張して池田誠作成

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際・国内政治、社会問題などの4分野を加えて、8つに分類からなる因果ループを図 15 のように 作成した。  図 15 のほぼ中央に位置する世界の幸せは、『成長の限界』や『世界がもし 100 人の村だったら』 で有名なドネラ・メドウズが考える世界が幸せになるための6つの条件である。また、国連のミレ ニアム開発目標 (MDGs) などの項目も取り込まれているが、これらに関しては本項では個別の説明 を省略している。  世界の幸せの分野ではm人権や平和(紛争戦争拉致等なし)、伝統文化、きれいな空気・土・ 水、食料・栄養状態、基礎的な医療、基礎教育・識字率などを上げている。  経済・エネルギー分野では、年齢別人口(年少人口、労働力人口、高齢人口)、地域別人口(最 貧国人口、先進国人口、途上国人口)の雇用、生産、消費、科学技術、資本、全要素生産性、途上 国の経済発展、一次エネルギー消費量、エネルギー資源量、エネルギー価格などの項目を上げてい る。  社会分野では経済的な要素も多いが、重大な社会的不安定性、国冨、国内の所得分配格差、所 得、失業や不完全雇用、地域別所得、新興経済諸国の中流階層、所得格差、資産・住居、都市等を 上げている。 政治分野では、リーダーシップ、国際的統治能力、議会制民主主義の弱体化、大規模な非自発的移 民、自由平等博愛、財政危機、国家統治、国連等 NGO・NPO、政策、戦略地政学的な競争の激 化、パワーのシフト 権力の移行、国家の崩壊や危機、ナショナリズムの先鋭化、国家間の紛争、 大量破壊兵器、サイバー攻撃、データの不正利用や盗難、重要な情報インフラの故障などの項目を 上げている。  環境分野では、途上国における汚染、GHG の累積排出量、再生エネ等ゼロエミ社会、環境悪化 度、温暖化、気候変動、海面上昇、寒暑による死亡、温暖化ガス GHG の排出量、生物多様性と生 態系の崩壊度、極端な異常気象の発生、気候変動への適応度、自然破局度、水危機、伝染病の拡散 度などの項目を挙げている。

6-2 世界の平和と繁栄と人権と環境の要因間の関係チェック

 ここでは、筆者の企画で中村邦男氏が開発したシステム思考とシステム・ダイナミックスの簡易 ソフト SimTaKN の入出力機能を使って要因間の関係性を明らかにする。  世界の幸せの入力(原因や背景要因)については、図 16a のように幸せの6つの条件はもとよ り、国連等と NGO・NPO、所得や資産や住居がプラスの要因で、国家間の紛争や国家の崩壊や危 機がマイナスの要因として際立っている。図 16b の世界の幸せの出力(影響)としては、自由・ 平等・博愛を高め、社会的な安定性を高めることによって議会制民主主義や国家統治、国際的統治 能力を高め、気候変動への適応力を高めるなどプラスの要因が際立っている。  図 16c の重大な社会的不安定性の出力(影響)は、国際的統治能力の低下や議会制民主主義の弱 体化、大規模な非自発的移民の発生、国家統治の失敗、自由・平等・博愛の低下、気候変動への適 応の失敗、国連等 NGO・NPO の低下、国内の所得分配格差の拡大、失業や不完全雇用の増大、国 家の崩壊や危機、水危機、国家間の紛争、人権や平和(紛争戦争拉致等)の危機など重大な影響を

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もたらすことが分かる。  図 16d の重大な社会的不安定性の入力(原因背景)は、大規模な非自発的移民や国家間の紛争 によって引き起こされるのはもちろん、生産や雇用の状態、エネルギー価格の高騰などによって失 業や不完全雇用によって引き起こされるので、政治・経済がしっかりしていることは必須の条件と 言えよう。  図 16e の温暖化の出力(影響)は、大規模な非自発的移民、気候変動、海面上昇、寒暑による死 亡、生物多様性と生態系の崩壊度、極端な異常気象の発生、気候変動への適応度、自然破局度、水 危機、伝染病の拡散度、食料危機などに重大な影響を及ぼすことが分かる。  図 16f の国際的統治能力の入力(原因や背景要因)は、温暖化ガス GHG の排出量、一次エネル ギーの消費量、再生エネ等ゼロエミ社会などが要因となると共に、人口そのものや消費、生産が要 因となっている。  以上の図 16 の分析から、人々の幸せと政治・経済・社会・環境は相互に密接に関係しているこ とが、明らかである。このことから、政治・経済(平和と繁栄)と社会・環境(人権と環境)の関 係は、人々の価値観の対立を強調するのではなく、相互に協調して全体として解決策を見つけてい くことが重要であることが分かる。

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図 16 世界の平和と繁栄と人権と環境の入出力チェック図 図 16a 世界の幸せの入力(原因や背景要因) વ ᨴ ∛ 䈱 ᜛ ᢔ ᐲ 㪞㪟 㪞䈱 ⚥ Ⓧ ឃ ಴ ㊂ ᷷ ᥦ ൻ 䉧 䉴 㪞㪟 㪞 䈱 ឃ ಴ ㊂ ᱜ ㅜ ਄ ࿖ 䈱 ⚻ ᷣ ⊒ ዷ ᚢ ⇛ ࿾ ᡽ ቇ ⊛ 䈭 ┹ ੎ 䈱 ỗ ൻ ᄢ ቇ ᢎ ⢒ 䉇 䉟 䊮 䉺 䊷 䊈 䉾 䊃 ࿾ ၞ ೎ ੱ ญ వ ㅴ ࿖ ੱ ญ ㅜ ਄ ࿖ ੱ ญ ᐕ ዋ ੱ ญ ᦨ ⽺ ࿖ ੱ ญ ㇺ Ꮢ ࿖ ౝ 䈱 ᚲ ᓧ ಽ ㈩ ᩰ Ꮕ ⾗ ᧄ 䊂 䊷 䉺 䈱 ਇ ᱜ ೑ ↪ 䉇 ⋑ 㔍 ㊀ ⷐ 䈭 ᖱ ႎ 䉟 䊮 䊐 䊤 䈱 ᡿ 㓚 ⽶ ࿖ 㓙 ⊛ ⛔ ᴦ ⢻ ജ ᳇ ୥ ᄌ േ 䊌 䊪 䊷 䈱 䉲 䊐 䊃 㩷 ᮭ ജ 䈱 ⒖ ⴕ ࿖ ኅ ⛔ ᴦ ᱜ 䉰 䉟 䊋 䊷 ᡹ ᠄ 㩷 ᳓ ෂ ᯏ ⽶ ᄢ ㊂ ⎕ უ ౓ ེ ⥄ ὼ ⎕ ዪ ᐲ ↢ ‛ ᄙ ᭽ ᕈ 䈫 ↢ ᘒ ♽ 䈱 ፣ უ ᐲ ᄢ ⷙ ᮨ 䈭 㕖 ⥄ ⊒ ⊛ ⒖ ᳃ ᱜ ⽶ 㘩 ᢱ ෂ ᯏ ⽶ ᣂ ⥝ ⚻ ᷣ ⻉ ࿖ 䈱 ਛ ᵹ 㓏 ጀ ࿖ ኅ 䈱 ፣ უ 䉇 ෂ ᯏ ⽶ ᱜ ᄬ ᬺ 䉇 ਇ ቢ ో 㓹 ↪ ⽷ ᡽ ෂ ᯏ ⽶ 䉣 䊈 䊦 䉩 䊷 ଔ ᩰ ㊀ ᄢ 䈭 ␠ ળ ⊛ ਇ ቟ ቯ ᕈ ᱜ ᱜ ᱜ ⽶ ࿖ ኅ 㑆 䈱 ⚗ ੎ ᱜ ᱜ ⽶ ⽶ ᭂ ┵ 䈭 ⇣ Ᏹ ᳇ ⽎ 䈱 ⊒ ↢ ಴ ↢ ⠪ ᢙ ੱ ญ ᱜ ᷷ ᥦ ൻ ৻ ᰴ 䉣 䊈 䊦 䉩 䊷 㩿 ం 㪫㪦㪜㪀 ኙ ᥤ 䈮 䉋 䉎 ᱫ ੢ ౣ ↢ 䉣 䊈 ╬ 䉷 䊨 䉣 䊚 ␠ ળ ⽶ ㅜ ਄ ࿖ 䈮 䈍 䈔 䉎 ᳪ ᨴ 䊥 䊷 䉻 䊷 䉲 䉾 䊒 ᱜ 䊅 䉲 䊢 䊅 䊥 䉵 䊛 䈱 వ ㍈ ൻ ⼏ ળ ೙ ᳃ ਥ ਥ ⟵ 䈱 ᒙ ૕ ൻ ᚲ ᓧ ⾗ ↥ 䊶 ૑ ዬ ⽶ ⷐ ࿃ ೎ ᱫ ੢ ₸ ⷐ ࿃ ೎ ಴ ↢ ₸ ၮ ␆ ᢎ ⢒ 䊶 ⼂ ሼ ₸ ⽶ ↢ ↥ ৻ ੱ ᒰ 䈢 䉍 ᚲ ᓧ ⽶ ⽶ ᚲ ᓧ ᩰ Ꮕ ഭ ௛ ജ ੱ ญ 㜞 㦂 ൻ ੱ ญ ⥄ ↱ ᐔ ╬ ඳ ᗲ ᱜ ၮ ␆ ⊛ 䈭 ක ≮ ⽶ ⽶ 㓹 ↪ ⽶ 㘩 ᢱ 䊶 ᩕ 㙃 ⁁ ᘒ ⽶ ⽶ 䈐 䉏 䈇 䈭 ⓨ ᳇ 䊶 ࿯ 䊶 ᳓ ⽶ ⽶ વ ⛔ ᢥ ൻ ⽶ 䉳 䉢 䊮 䉻 䊷 ␠ ળ ෳ ട 䉣 䊈 䊦 䉩 䊷 ⾗ Ḯ ㊂ ⽶ ⽶ 䇭 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7.結論

 これまでの分析から、地球環境モデルをベースに世界の平和と繁 栄、人権と環境について、相互に対立的な価値観による関係ではな く、図 17 のように相互に密接かつ複雑な関係にあり、相互に協調 的な関係を保ちつつ問題解決を図ることが重要である。  そのことを更に簡明に示すために図 17 の因果ループを図 18 の a ~g のように分解して説明してみよう。  図 18a では人口と幸せの関係を示している。人口が増えれば幸せ が増大するという考え方もありうるが、ここでは単純に一人当たり の幸せは人口で割り算になるという発想から負(ネガティブあるい は反:オポジット)の関係 にあると考えている。  同様に幸せが増えれば人 口は増加するという考え方 もありうるが、ここでは減 少すると考えている。その 理由は、統計的にも豊かに なることで出生率が減少 し、21 世紀の世界では少 子高齢化が進むと考えてい るからである。  このような関係にあると考えることによって、21 世紀に人々の幸せが増大すると世界の人口は 増加から減少に転じると想定している。国連等の中位・下位推計を基本パターンとみなす考え方で ある。負と負の関係は相互に打ち消し合って、幸せはますます増加し、人口はますます減少する相 互関係となり、このような関係はシステム思考では拡張ループと呼ばれる。

⑴ 人口・幸せと経済・社会・政治の関係

 図 18b は上の考え方に経済を加えた図である。人口は労働力として経済に正(プラスあるいは 同:セイム)の関係にあり、労働力が増えることで経済は発展すると考えている。さらに経済の発 展は、人々の基本的な衣食住や学医遊(教育・医療・娯楽)などを増進して幸せを増加させると考 えている。経済を加えても正の関係がループに加わるだけなので、人口が増加し、経済が発展する ことで、トータルとしての幸せは増加していく。しかし、人口で割った一人当たりの幸せは経済発 展が人口増加を下回れば減少するため、経済発展が人口増加を上回らないとこの図のように人口は 減少しない。人口が減少する世界では労働力が減少し、経済が低下する循環に陥るが、経済の中の メカニズムで資本や技術などによる一人当たりの生産性が増大することによって経済が発展すれ ば、人口は減少しながら経済は発展していく。このようなメカニズムで図 18b のような因果ルー プが成り立つと考えている。 ␠ળ 䉣䊈䊦 䉩䊷 ੱญ ⚻ᷣ ᐘ䈞 ␠ળ ᷷ᥦൻ ⽶ ᡽ᴦ ⽶ ᐘ䈞 ⽶ ੱญ ⽶ ⚻ᷣ ⚻ᷣ 図 17 世界の平和と繁栄と人 権と環境の CLD の簡略版 資料:図 15 から池田誠作成 ੱญ ᐘ䈞 ᐘ䈞 ੱญ ⽶ ⽶ ੱญ ᐘ䈞 ᐘ䈞 ੱญ ⽶ ⚻ᷣ ⽶ ␠ળ ੱญ ⚻ᷣ ᐘ䈞 ␠ળ ᐘ䈞 ⽶ ੱญ ⽶ ⚻ᷣ ␠ળ ੱญ ⚻ᷣ ᐘ䈞 ␠ળ ᡽ᴦ ᐘ䈞 ⽶ ੱญ ⚻ᷣ ⽶ ⚻ᷣ ⚻ᷣ ⚻ᷣ ⚻ᷣ ⚻ᷣ ⚻ᷣ 図18d+政治 図18a人口と幸せ 図18b+経済 図18c+社会 図 18 世界の平和と繁栄と人権と環境の CLD の簡略版の分解 (1) 資料:図 17 から池田誠作成

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 次の図 18c は、経済が発展すれば雇用や所得格差が解消され社会が安定し、人々の幸せが増大す る。そのことによって、社会的な問題の解決に当たるボランティアなどの人々も増え、社会はます ます安定し、巡り巡って経済を発展させるという循環ループである。  図 18d は、経済の発展が税収の増大や政治的安定性をもたらすとともに、様々な経済政策に よって経済の発展が促されるという好循環や、社会の発展が政治を更により良いものに人々の人権 などを保護・増進するという好循環を生み出すというループである。  図 18 のaからdは、経済・社会・政治が人々の幸せと密接に結びついていて、世界の発展が人 口の減少期を迎えても継続される状態を示している。いわゆる持続可能な発展の基本的な因果ルー プ図である。この図の因果関係を前提に、好ましくない状態がどのように起きるかを考えてみよ う。一人当たりの生産性が人口増加以上に増大しないケースでは、人々の幸せは人口の増大によっ て低下し、人口が増加、失業や所得格差が発生し、社会的に不安定になる。また、税収も落ち込み 政策は縮小されるか財政赤字の深刻化をもたらす。そのことで社会的な不安定が増大し、経済も危 機に瀕する。最終的には国家の崩壊や国家間の紛争、テロなどを発生させ、国際協力どころではな くなる。というような危機的な状況が発生する可能性がある。グローバル・ピース・インデックス やグローバル・リスク報告書が危惧する状態は、このようなことが発生する可能性が高まっている ということである。

⑵ 人口・幸せと環境の関係

 図 18e のように、経済の発展は、エネルギーの消費の基にあり、エネルギーを大量に消費するこ とで経済は成り立っている。このことが、経済とエネルギーの拡張ループで示されている。そし て、エネルギーの大量消費は大気中の温暖化ガス GHG を像出させ、温暖化を引き起こしている。 その結果、極端な異常気象の発生や水や食料の深刻な不足が発生し、人々の幸せにマイナスの影響 を及ぼしている。2015 年 12 月に開催が予定されている COP21 では各国政府が GHG の削減目標を 提出し、地球規模の目標設定に向けて合意形成が図られようとしている。このような動きが有効に 働くためには経済活動への規制や民間の協力などが必要になってくる。図 18f は、政治から経済に ネガティブ・フィードバックがかかっている状態である。なお、代替エネルギーの開発などゼロエ ミッションの動きも政治から経済への支援などが重要であり、必ずしも負(マイナス)の因果関係 だけではないので注意が必要である。  さらに、温暖化に直接政治から負の矢印がひかれているのは、温暖化の被害を緩和する島嶼諸国 など途上国への援助をイメージしたものである。このような温暖化対策の動きは、図 18g のよう な社会の支持や変革が不可欠 となる。  即ち、経済の減速は、失業 や所得格差を生むが、ワーク シェリングや相互扶助的なボ ランティア活動など様々な社 会的な変革で社会の不安定化 を阻止することが、重要とな 図18 世界の平和と繁栄と人権と環境CLの簡略版の分解⑵ 図 18e エネルギー+温暖化 図 18f+政治 図 18g+市民社会 䉣䊈䊦 䉩䊷 ੱญ ⚻ᷣ ᐘ䈞 ᷷ᥦൻ ⽶ ᐘ䈞 ⽶ ੱญ ⽶ ⚻ᷣ 䉣䊈䊦䉩䊷 ੱญ ⚻ᷣ ᐘ䈞 ᷷ᥦൻ ⽶ ᡽ᴦ ⽶ ⽶ ᐘ䈞 ⽶ ੱญ ⽶ ⚻ᷣ ␠ળ 䉣䊈䊦 䉩䊷 ੱญ ⚻ᷣ ᐘ䈞 ␠ળ ᷷ᥦൻ ⽶ ᡽ᴦ ⽶ ᐘ䈞 ⽶ ੱญ ⽶ ⚻ᷣ ⽶ ⚻ᷣ ⚻ᷣ ⚻ᷣ ⚻ᷣ 資料:図 17 から池田誠作成

(21)

る。そのことによって政治も経済も不安定になることを避けなければならないからである。政治や 経済の安定性が損なわれれば、各国間の国際協調など国際的な努力は放棄され、国家間の競争や摩 擦、紛争などが発生し、温暖化対策は放棄されることとなろう。  以上のような、因果ループ図(CLD)レベルの分析で、まだ結論を引き出すには不十分ではあ るが、次のようなとりまとめを本研究の現段階としての暫定的な結論としたい。  本稿では、個人レベルで、また、NGO や NPO などの組織や企業、国家や国際機関などの様々 なレベルで、相互に協調的にこれらの課題を解決していくかという点まで、モデルもデータも至っ てはいない。しかし、国連のミレニアム開発目標(MDGs)が引き続き持続可能な開発目標 (SDGs)として継続されることや、COP21(国連気候変動枠組条約締約国会議)の動向、さらに は国際連帯税と呼ばれる航空券連帯税(フランスや韓国など 13 カ国)や金融取引税(FTT、トー ビン税、2016 年からフランス・ドイツなど 11 カ国が開始予定)などの国際的な取り組みから、持 続可能な地域や社会を実現する 4R から分かち合い(シェア)の取り組みなど様々な行動が実施さ れつつある。このような観点から、改めて図を見ると、文化価値類型上は対立しているように見ら れる左下の政治経済分野と右上の人権・環境分野も、一つの人類共存体としての世界規模・地球規 模の社会システムとして把握することが、今後ますます重要なことと考えられる。そのために、本 稿で示したような簡略されたシステムや今後の開発予定のモデルが、人々の相互理解と相互協力を より容易にする一助になることを期待したい。 [参考文献] ・池田誠著「気候変動と地球環境モデルについて」国際地域学研究第 18 号 2015 年3月、東洋大学国際地域学部 ・Institute for Economics & Peace(経済平和研究所)の“Global Peace Index Report”(世界平和度指数)  http://www.visionofhumanity.org/sites/default/files/Global Peace Index Report 2015_0.pdf 2015 年 10 月8日

参照

・World DataBank, Data from database: World Development Indicators、Last Updated: 03/12/2015  http:// databank.worldbank.org/data/home.aspx  2015 年3月 28 日参照

・“LONG-TERM GROWTH SCENARIOS”, ECONOMICS DEPARTMENT WORKING PAPERS No.1000, OECD 2013 年 1 月 28 日 By Åsa Johansson, Yvan Guillemette, Fabrice Murtin, David Turner, Giuseppe Nicoletti, Christine de la Maisonneuve, Phillip Bagnoli, Guillaume Bousquet and Francesca Spinelli  http:// www.oecd.org/eco/workingpapers  2015 年3月 28 日参照

・三井宏隆著『比較文化の心理学』2005、ナカニシヤ出版

・池田香代子再話、C. ダグラス・ラミス対訳『世界がもし 100 人の村だったら』2001 年 注:本稿の図については、筆者のホームページでカラー版を掲載しているのでご参照ください。   http://simtakn.net/

図 1 世界平和度指数 Global Peace Index の推移(2008 年~2015 年)
図 5 ドイツの人口と GDP(1990 年~2013 年)
図 10d の EU15 でも、図 10e の OCED 日米欧ほかでも、ほぼ米国と同じような SSPs のグラフの 形となっている。一方、中国は、図 10f のように、2050 年頃から人口減少、GDP の伸び悩みが予 測されている。  経済的なプレゼンスの拡大が予想されている中国ではあるが、図 10g のように米国と中国を比 較すると中国の経済的な存在感や影響力は 2100 年まで続きそうに思われる。他方、図 10h のよう に日米欧の合計と中国を比較すると 2050~2060 年頃までに再び逆転が起こ
図 10e OCED 日米欧ほか 図 10f 中国 図 10g R31USA 米国と R05CHN 中国 図 10h R32EUSJA 日米欧と R5CHN 中国 図 10 2100 年までの地域別 SSPs の推移 資料:OECD_SSP_DataBase_2013_SspDb_compare_regions_2013-06-12.xls から池田誠作成 5.グローバル・リスクとグローバル・トレンド  以上のような、世界の国や地域別の人口と GDP の予測をベースに将来の世界の動向を検討する ために、現在
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参照

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