Title
Imaging of Hydroxyl-Radical Generation Using Dynamic Nuclear
Polarization-Magnetic Resonance Imaging and a Spin-Trapping
Agent( 内容と審査の要旨(Summary) )
Author(s)
庄田, 真一
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学) 甲第1155号
Issue Date
2021-03-25
Type
博士論文
Version
none
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/81564
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名 ( 本 籍 ) 庄 田 真 一 (岐阜県) 学 位 の 種 類 博 士(医学)
学 位 授 与 番 号 甲第 1155 号 学 位 授 与 日 付 令和 3 年 3 月 25 日
学 位 授 与 要 件 学位規則第4条第1項該当
学 位 論 文 題 目 Imaging of Hydroxyl-Radical Generation Using Dynamic Nuclear Polarization-Magnetic Resonance Imaging and a Spin-Trapping Agent 審 査 委 員 (主査)教授 任 書晃 (副査)教授 大倉 宏之 教授 清島眞理子 論 文 内 容 の 要 旨 活性酸素種(ROS)は,正常および異常な細胞代謝から生成され,細胞生理学において有益な役割 も果たしているが有害な事象も引き起こす。ROS の有害な影響として,脂質,タンパク質,核酸,糖 などの生体分子への酸化的損傷などがある。この酸化ストレスは,炎症,神経変性疾患(アルツハイ マー病,パーキンソン病),アテローム性動脈硬化症,糖尿病,癌などのさまざまな疾患に関係して いる。ROS の中で,ヒドロキシルラジカル(・OH)は,反応速度定数が高いため,生体系で最も反応 性の高い分子の 1 つとして知られている。したがって,・OH のモニタリングは,酸化還元メカニズム の評価や酸化的疾患の診断に役立つ可能性がある。これまでに・OH の検出については蛍光プローブ 法や化学発光などを使用した高感度な手法が多くの研究で報告されている。ただしこれらの方法は検 出光の透過性(1 mm 程度)による制限があり生体深部の検出に使用することは困難である。一方でス ピントラッピング剤を用いた電子スピン共鳴分光法(EPR)はラジカルスペクトルの検出によって ROS を識別するための有用な手法である。この手法では短寿命の酸素由来ラジカルがスピントラッピング 剤によってトラップされた後に長寿命のラジカルが形成され,その EPR スペクトルを検出する。スピ ントラッピング剤として一般的な 5,5-ジメチル-1-ピロリン N-オキシド(DMPO)は,・OH を捕捉した スピン付加物として DMPO-OH が存在し,固有の EPR スペクトルを生成する。EPR はスペクトルの検出 において優れた手法であるが,画像化を行うには空間解像度が比較的低く,またスピントラップ付加 物寿命による制限のため・OH の視覚化は困難である。今回我々が用いたインビボ動的核分極(DNP) -MRI は,MRI の解剖学的解像度でフリーラジカルに関する時空間情報を取得するための非侵襲的イメ ージング法である。MRI パルスシーケンスを適用する前に対象フリーラジカルの共鳴周波数と一致す る EPR を照射することにより,DNP 効果を誘起し組織内でのフリーラジカルを含むプロトン信号を劇 的に高めることができる。本研究では DNP-MRI と DMPO を使用した・OH の可視化と,DMPO-OH の DNP イメージングによるラジカル消去効果の可視化を検討した。
【対象と方法】
・OH の生成には過酸化水素と硫酸鉄によるフェントン反応(H2O2 + Fe2+ →・OH + OH- + Fe3+)を
用いた。X バンド EPR 装置(日本電子株式会社,東京,日本)を用いて DMPO によるヒドロキシルラジ カルの検出を行った。インビトロフリーラジカルイメージングは Japan Redox Inc.(福岡,日本)の 低磁場 DNP-MRI システム(Keller)を使用した。まず最適な EPR 励起照射周波数の決定のために,EPR 照射周波数を 460 から 483 MHz まで 0.5 MHz または 1 MHz の間隔で変更しながら DNP-MRI によるフ ァントムイメージング行った。続いて H2O2濃度の影響の検討をするために H2O2濃度 1 mM〜400 mM で
の変化を計測した。さらにチオール化合物(ジメチルスルホキシド[DMSO],ジメチルスルホン[DMS], ジメチルスルホニオプロピオネート[DMSP],スプラタストトシル酸塩[ST])による・OH 消去効果のイ メージングを行った。またマウス好中球から産生される・OH を用いることで,細胞から内因的に生成 された DMPO-OH の DNP-MRI イメージングを試みた。
【結果】
フェントン反応によって生成された・OH を DMPO と反応させ,EPR スペクトルとして 4 つのピーク (比率 1:2:2:1)を検出し DMPO-OH が生成されたことを確認した。DMPO-OH が DNP 効果を得るため の適切な EPR 共鳴周波数を決定するために,460〜483 MHz の様々な EPR 周波数で DNP-MRI を撮像し, 471〜478 MHz の周波数においてファントムチューブの信号強化が明確に視覚化された。この時 DMPO-OH を含むチューブ内の DNP 信号は,460〜469 MHz の EPR 照射周波数で増強を示さなかったが,470 MHz を超えると信号が増強した。最大の増強は 474.5MHz で観察され,それより高い周波数では減少 を示した。増強係数(DNP オン/ DNP オフ)は 474.5MHz で 3.07 であった。H2O2濃度を変更して施行
した DNP-MRI 計測により DMPO-OH 信号増強は H2O2濃度と正の相関を認めた。また・OH 生成に対する
阻害効果をもつ DMSO を用いて,DMPO-OH の DNP 増強が抑制されることを示し DNP-MRI による・OH 消 去効果のイメージングに成功した。加えてチオール化合物を複数選択し,DNP-MRI における複数サン プルでのラジカル消去効果を同時に視覚化することを実現した。この時 ST が最も高い・OH 消去能力 を示した。さらにマウス好中球を使用した DMPO-OH イメージングでは,DMPO-OH を含む溶液で 1.25 倍 の信号増加が得られた。 【考察】 DMPO-OH ラジカルが DNP を誘導し DNP-MRI システムを使用することで信号強調画像が生成された。 この DMPO-OH イメージングでは,最適な EPR 共鳴周波数は 474.5 MHz であると考えられた。また DNP-MRI と DMPO によりラジカル消去効果を検出でき,さまざまなサンプルの同時イメージングが可能で あるため,生体組織における集積が異なる薬剤のラジカル消去能力を同時に評価できる可能性が示唆 された。さらに H2O2を主成分とした放射線増感剤とそれを併用した放射線治療法(KORTUC) において, 治療部位内のラジカルの局在を理解するために DMPO-OH の検出を利用することができれば,新しい診 断・治療法へと拡大することが期待される。 【結論】 DNP-MRI と DMPO を使用してヒドロキシルラジカルを視覚化することに成功し,さらにヒドロキシ ルラジカル消去効果を評価できることを示した。 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 申請者庄田真一は,従来法では精度良く可視化できなかったフリーラジカルの動態を,DNP-MRI に より DMPO のスピン付加物 DMPO-OH を検出することで,信号強調画像が得られることを示した。 本研究結果は,DNP-MRI 法が今後の高分解の生体フリーラジカル可視化技術として重要であること を示唆し,新しい診断・治療法の発展に少なからず寄与すると認められる。 [主論文公表誌]
Shinichi Shoda, Fuminori Hyodo, Yoko Tachibana, Mamoru Kiniwa, Tatsuya Naganuma, Hinako Eto, Norikazu Koyasu, Masaharu Murata, Masayuki Matsuo : Imaging of Hydroxyl-Radical Generation Using Dynamic Nuclear Polarization-Magnetic Resonance Imaging and a Spin-Trapping Agent.