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信託法理の応用による文化遺産と自然環境の保護 利用統計を見る

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信託法理の応用による文化遺産と自然環境の保護

著者名(日)

浅野 裕司

雑誌名

東洋法学

47

1

ページ

67-120

発行年

2003-09-30

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00000175/

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信託法理の応用による文化遺産と自然環境の保護

 六五四三二一

お        は

じめに

信託法理の応用とイギリスのナショナル・トラスト創設の背景 ナショナル・トラストの素地と8日ヨ○拐 イギリスのナショナル・トラスト法 イギリスのナショナル・トラストに対する批判と他のトラストの活動 イギリスのシヴィック・トラスト スコットランド・ナショナル・トラストの概要

わりに

東洋法学

じめ

に  二一世紀になり人類のこれまで遺してきた文化的遺産の保護と自然環境保全が重要課題となった。ユネスコに よる活動は、世界遺産条約により、国際協力が得られるようになってきている。しかし、地球規模で考えた場合、

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信託法理の応用による文化遺産と自然環境の保護 貴重な文化遺産や自然環境であるとわかっていても、国により財政上、その保護は困難と判断されることもある。 また、財政上、間題はなくても、宗教的、民族的な価値判断基準の異なりから保護が不十分な場合もある。そう したなかで従来から存在するイギリスで始まったナショナル・トラストの見直しと批判を検討する必要がある。 国による保全が困難と思われる場合、信託法理の応用による民間団体の保全活動も考慮される。その理論と実際 を考察し、問題点の若干を指摘して大方の御叱正と御批判を仰ぐことにしたい。この小稿は、平成一四年度国内 特別研究の報告の一部である。    一 信託法理の応用とイギリスのナショナル・トラスト創設の背景       ︵−︶  イギリスのナショナル・トラスト︵Z畳9巴↓毎8創設の背景と経緯については、諸説あり、わが国で通説        ︵2V となっているのは一八九五年に弁護士のロバート・ハンター︵罰コニ筥R︶、社会事業家のオクタヴィア・ヒル女史    ︵3V       ︵4︶ ︵○出∈︶、牧師のハドウィック・ローンスリー︵ρ寓口巳≦一畠Φ菊蝉≦拐一塁︶の三人による努力が起源とされてい ︵5︶ る。  このナショナル・トラスト創設の背景は、直接的には入会地保全協会︵↓箒○○ヨ日9ω即窃R<簿一9ω09①蔓︶ の限界の認識から始まった。イギリスの古くからあるコモンズ︵8ヨ目○富・入会権︶の多くは、入会地の公有地 化として発達し、このコモンズのアクセス︵碧8霧︶によるオープンスペース化︵8窪ωB8・開放地化︶に基 づいて、国および自治体による土地の信託的保有が、ナショナル・トラストの起源ないし契機ではなかろうかと

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いう説が最近、有力説となっている。  一八六五年に入会地保存協会が生まれ、強力に保存運動を展開してきたが、土地を入手する能力をもたなかっ たために、それは受け身の間接的な運動にとどまっていた。守るべき土地の購入は勿論のこと、寄贈の申し入れ があっても有効な形で受け取ることもできなかった。一八六〇年代の農村部における囲い込みによる入会地 ︵8目ヨ○拐︶の消失は、急速なイギリスの経済成長と人口増大に影響され、都市から遠く離れた景勝地も開発の 危機にさらされつつあったことにも関係する。入会地保全協会創設以前にも、各地に環境保護のための団体がで きていた。それに対し、協会はロンドンを中心にして、いくつかの支部をもつ全国組織となった。これは、農民 のためというよりも、都市圏に居住する一般の人々にとってのオープンスペースの確保が主眼であった。協会に よる入会権の擁護は、オープンスペースの保存を目的とする手段であった。ロバート・ハンターは、オープンス ペースを民衆のために保護する目的で土地を保有する組織の必要性を唱え始めたのは一八八四年である。入会地 保全協会の顧間弁護士をしていたハンターは、一連のこみいった訴訟を見事に勝訴に導いた。なかでも、ロンド ンの北東、エセックス州の行楽地で、元来、王室の所有地であったエピングの森林約六〇〇〇エーカーをエンク ロージャー︵囲い込み︶から開放するという業績をあげている。  こうした数々の重要なオープンスペースの確保に貢献していたハンターの提言を支持したひとりがヒルであっ た。ヒル女史は、イギリスの産業革命などによる急速な経済成長による都市部への人口集中による環境悪化と労 働者の劣悪な居住環境の拡大について、住宅の改良運動の先駆者として知られている。当時、農村から都市への

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信託法理の応用による文化遺産と自然環境の保護 人口移動が始まり、そのためロンドンやマンチェスター、グラスゴーなど各地の都市では、富める者と劣悪な生 活環境に苦しむ人々との間の分化が進んでおり、ヒルは貧しい人々の住宅の居間にきれいな大気をもたらそうと、 主張した。そして、中産階級以上が住む郊外でも生活環境が悪化していたので、オープンスペースの保存を訴え ていた。この点でも、ハンターの入会地保全運動に協力していた。  入会地を保護するために、囲い込み︵ぼ色○霊8︶運動に反対してきたハンターが、相手が囲い込むならば、こ ちらも逆の意味での囲い込みをして環境を守ろうという、相手の論理を逆手にとり、ナショナル・トラストの構 想を立てたのは一八八四年のことであったとされる。伝えられているところでは、一八八四年九月、バーミンガ ムで開催されたイギリス社会科学振興協会の集会で、ハンターは﹁入会地保全協会の運動にはもはや限界がある。 それは協会に土地を獲得する力がないからである。いまやイギリス国民の利益のために土地と建物を買い取り所 有する組織が必要なことを痛感している﹂と述べている。  一八八五年、ヒルは、新しい組織のために、慈善的性格を前面に出した﹁トラスト﹂という名称をハンターに 示唆している。ナショナル・トラストという名称は、この頃、浮上していたとされ、その構想自体はさらに数年 間これらの運動家によって内面的に保持されていた。このヒル女史の環境問題に取り組む原点には、ラスキンの 存在がある。ヒルは、ラスキンの示唆により一八六四年に住宅改善運動を開始し、ラスキンの援助でロンドンの 貧民地区に家屋を購入して望ましい状態に改修しつつ賃貸していった。管理の徹底により一応の成果をあげ、次 に取り組んだのが公園など都市のオープンスペースの間題であった。ヒルの活動の対象は郊外へ、さらに、遠隔

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の地へと拡大していった。この点をみても、三人だけでナショナル・トラストが創設できたわけではなく、ヒル の活動の背景にも、ラスキンの存在と援助があった。  ナショナル・トラストの結成に至るまでには、ウェストミンスター公爵︵U爵①9≦①曾巨営雪9一。 協力もあり、一八九四年七月に、ロンドンのグローブナーハウスに関係者が集まって設立総会が開かれている。 この総会では、﹁土地所有者やその他の人々が国民に歴史的名勝あるいは自然的景勝地を献呈することが可能な手 段を講ずることは望ましいということ、および、この目的のために土地を所有することができ、そして国民的な 制度と利益を代表するような法人団体を組織することは得策であるということ﹂をヒルが提案した。そこに至る 間に、いくつかの間題があった。一八八四年に、デトファド︵U8庶o巳︶の一七世紀のセイズ・コートのマナー・ ハウスの所有者が、ヒルに対し、民衆の楽しみのためにその邸宅と周囲の土地を贈与したいとほのめかした。そ してヒルがハンターに報告書を準備するように依頼した。仮に自治体がその邸宅を受け入れるにしても、その邸 宅を維持するための公金を使用する法的な力を自治体は有していないであろうとハンターは結論した。他にとる べき道があるとすれば、それは信託制度︵↓霊ω88巨℃︶の手間のかかる手続をとることであった。そしてこの信 託制度は、もし寄贈者がその年のうちに死亡すれば無効になることをハンターは実感していた。そこで、ハンタ ーはヒルに対し、民衆のために土地を所有するための土地会社を創設することを示唆した。しかし、この考えは、 当該物件のセイズ・コートを獲得するには遅すぎた。その後、ハンターは、﹁オープンスペースのより効果的保全 のための提言﹂と題する論文を、バーミンガムで開かれた前記、社会科学振興協会へ送った。そのなかで、ハン

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信託法理の応用による文化遺産と自然環境の保護 ターは私的な土地と入会地からなる荘園が、より頻繁に市場に出されていることを指摘した。それらの地所の価 額を引き上げようとして、地主たちが率先して合法的な囲い込みを押し進めようとする危険があったからである。 ﹁任意団体が土地を購入し、入会権者となることはできないのであるから﹂有効な方法はただ一つしかなかった。 論文は、次のような目的のために、株式会社法のもとに法人会社を設立すること、としており、①入会権を有す る土地を獲得すること、②民衆のために獲得されたすべてのオープンスペースを管理すること、③公園のレイ・ アウトのために地方自治体と協力すること、④オープンスペースの保護のために購入された地所に付随する入会 権を行使すること。このような会社が設立されれば、獲得された土地から相当な収入を得ることは可能であろう。 そして、その運営は、全国的なものでも、地方的なものでも可能であろう。この中心的な考え方は、土地会社の 設立であり、この会社はオープンスペースにおける民衆の利益を守るという目的で、その有している土地を管理 することである、と述べられている。これまで、ナショナル・トラストの創立までの経緯が、詳細に書かれてお らず、単に会社法に基づく団体ないし法人としてなされたように、わが国で伝えられてきた。しかし、そこに至 るまで法的にどのように準備され承認されたかが問題である。前述のように、ハンターとヒルの間で名称につい ても、どのようにするかが討議され、新しい会社のための短くて表現に富む名前を見つけるのも困難であったと される。たとえば、入会地およびガーデン・トラスト︵毎Φ○○目目○富きα○舘α窪↓霊旦、町や地方の人々の ためのオープンスペースを受け入れ所有し購買するために、というのはどうか、それがトラストと呼ばれていい ものかどうか、もしそう呼ばれれば会社と呼ばれるよりもよいのではないだろうか、そして営利を目的とするよ

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うな性格よりも慈善的な性格を打ち出すようにうまく取り計らってもらいたい、といったことが両者の間で意見 交換され、ハンターがナショナル・トラストと手紙に鉛筆書きしたことが名称の始まりとされている。これらに ついて入会地保全協会の代表者たちが会合を開いて、この提案を考慮した。しかし、新しい保護団体は、従来の アメニティの協会から支持を奪ってしまうのではないか、ということから議論からなにも得るところはなかった。 また、入会地保全協会の存在がうすくなるという予想までされた。当時、ハンターが、議会に地方自治体による 土地の購買を認可させるための権能賦与法案を起草していた。これは、イースト・パークとパーラメント・ヒル・ フィールズの私有地を、ハムステッド・ヒースのほうへ広げるために保存しようという計画が、地方自治体へ提 案されたことによる。  ハンターの提案は、やがて、歴史的名勝および自然的景勝地のためのナショナル・トラストの創設を議論する ため、ヒルおよびローンズリィを含めて招集された。入会地保全協会の本部において、新しい団体がコ般国民 の利用と楽しみのために意図されたあらゆる財産に対する一般的な管理者として行動するために生まれた。その 機能は、財産の私的所有者から名勝地あるいは景勝地の贈与を受けることである。そして、それらの贈与は永久 的な保管者が見い出されうる限りにおいてのみなされうるものである﹂と報じられた。  新しい組織となるトラストは、会社法のもとに組織されることになっていた。また、その非営利的な身分のた め、その名称の中にリミテッド︵口巨8α︶の語の使用を免除するライセンスを有することになっていた。この組 織は、最終的には勅許状あるいは議会の特別立法を必要とすることが予想されていた。

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信託法理の応用による文化遺産と自然環境の保護  設立総会は、ウェストミンスタi公爵が議長となり、結成には生物学者で評論家のトーマス・ハックスレイや 画家のホールマン・ハンドなどの著名な人々が協力した。組織の名称は、正式に﹁ナショナル・トラスト﹂と決 定した。国民のために土地と建造物を買い取り保管することのできる法人組織にすることも決まり、一八九五年 一月一二日に会社法︵○○ヨ冨艮窃>εに基づく非営利法人として、定款は商務省の承認を得て、ここに﹁歴史 的名勝および自然的景勝地のためのナショナル・トラスト﹂︵↓冨Z蝉江目巴↓霊馨胤9国碧窃9国幹98        ︵6︶ 目8お馨畦Z簿自巴ω窪q蔓︶が登記され、正式に発足した。  このように、わが国で通説になっているナショナル・トラストの起源は、ハンター、ヒル、ローンズリィの三 人の努力により始められたとなっているのは正確とはいえない。その背景と経緯は、一八六五年のコモンズ保全 協会からの活動の蓄積やウェストミンスター公爵をはじめとする当時の権力者、有識者の援助があってこそ結成       ︵7︶ できたことを認識する必要がある。 ︵1︶ O惹げ蝉B一≦ξ℃びざ閃○蝿pαRωo胤跨Φ口簿一〇p巴什毎ωρロΦ名Φ島二〇PNO8● ︵2︶O竃貫9ざ80控薯。。 。一−“刈● ︵3︶○ζ貫9ざOPo一計薯・お自。 ︵4︶○家ξ9ざ・PoF署。お−。・ 。’ ︵5︶ 木原啓吉﹁ナショナル・トラスト[新版]︵三省堂・二〇〇〇年︶三六頁以下、同﹁歴史的環境﹂︵岩波新書一二六・   二〇〇一年︶六一頁、同﹁わが国と英国におけるナショナル・トラスト運動の系譜と現状﹂︵有斐閣、日本土地法学   会﹁ナショナル・トラスト、転機に立つ借地・借家﹂所収、昭和五九年︶六頁、永井道雄﹁英国のナショナル・トラ

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︵6︶ ︵7︶ スト﹂︵有斐閣、日本土地法学会﹁ナショナル・トラスト、転機に立つ借地・借家﹂所収、昭和五九年︶一六頁以下、 木原啓吉監修﹁↓箒乞Q鉱9巴↓歪ωけ市民が守る英国の環境と文化﹂︵駿々堂出版二九九一年︶一五九−一六一頁、 藤田治彦﹁閃Φ巴筥9浮ΦZ簿δ轟一↓歪ω什ナショナル・トラストの国ーイギリスの自然と文化﹂︵淡交社・一九九 四年︶一三〇1一三一頁。  ロビン・フェディン著︵四元忠博訳︶﹁ナショナル・トラストーその歴史と現状﹂︵時潮社、一九八四年。勾oσ営 閃8号P↓箒乞簿δβ巴↓三ωけも霧け鋤巳即Φ8耳’這濯︶、グレアム・マーフィ著︵四元忠博訳︶﹁ナショナル・トラ ストの誕生﹂︵緑風出版、一九九二年︶︵O轟匿ヨ匡⊆壱げざ閃2民Rω9跨ΦZ讐一〇昌巴↓霊貫お・ ショナル・トラストについて﹂信託二二四号二〇頁以下、同、﹁公益法人と公益信託﹂一二五頁以下、海原文雄﹁イ ギリスのナショナル・トラスト法﹂ジュリスト一九八三・九・一、八五頁以下、永井道雄﹁イギリスのナショナル・ トラストーその構造と役割1﹂自然と文化・一九七六年春季号一二頁以下、Z豊8巴円益9↓ぽ2畳自巴 ↓歪ω什>9ω這ミ8這目−蔑跨国図霞8富酔o日OR富営勺仁げ膏>9ω−︵↓ぽ2跨一9巴↓歪貫お自︶、その他ナシ ョナル・トラスト関係の資料として次のものがある。木原啓吉﹁海外にみる歴史的環境保存の動向﹂ジュリスト増刊 総合特集輪四、一九七九・七、同﹁歴史的環境﹂、﹁ひろがるナショナル・トラスト運動ーわが国と英国にみる歴史 と現状﹂公害研究一二巻二号二七頁以下、永井道雄﹁イギリスにおける自然環境、歴史的環境保護の動向﹂日本ナシ ョナル・トラスト報六四号、一九七四・一一・一、同﹁英国ナショナル・トラストの財政運営﹂同誌一九七七・四・ 一、続・自然保護を考える︵信州大学教養部・自然保護講座編︶第三章﹁イギリスの自然保護運動からーナショナ ル・トラストー﹂、児玉政介﹁ナショナル・トラスト制度解題﹂自然保護関係文集四四、一∼四四、五、八○∼八 四号。  一九二一年に、チャールズ・ロスチャイルドは、イギリスの環境保護を目的としてトラストを立ち上げ、重要な地 域を買い上げている。彼は、当時、一八二の地域を重要としてリストを作成した。ロスチャイルド家の末喬であるメ リアム・ロスチャイルドが、一九九七年にそれらの地域を再訪した報告書を出している。結果は遺憾ながら壊滅に近 い状態にあったとされている︵養老孟司﹁万物流転﹂︵考える人・創刊号・二〇〇二年︶三二頁︶。  拙稿﹁ナショナル・トラストとシヴィック・トラストについて﹂︵比較法二一号、一九七四年︶五五頁以下、ナショ ナル・トラスト創設の背景には、当時の社会情勢と貧民救済を主目的とした﹁ピーポディ・トラスト﹂の存在があっ

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信託法理の応用による文化遺産と自然環境の保護 た。米国の事業家で福祉家としても知られていた大富豪ジョージ・ピーポディは、一八三七年に英国に渡りロンドン に移り住んだ。そして、一八六三年に貧困者のためにと、五〇万ポンドをロンドン市に寄附した。このとき、篤志家 のシャフッベリー男爵は、この基金を高齢者や恵まれない人々のための住宅建設に使うことを提案した。この提案は 受け入れられ、ピーポディ・トラストが設立された。同トラストが慈善的住宅供給をしていたころ、衛生改良運動に 貢献した医師トーマス・サウスウッド・スミスの孫娘にあたるオクタビア・ヒルは、最も貧困な階層の住宅問題への 挑戦を志し、住む人の意識改革とハウジングヘの婦人の参加を構想していた。一八六五年、二六才のヒルは、ラスキ ンから資金を借り、活動を開始した。彼女は後に、ナショナル・トラスト創始の中心人物となった。 一一 ナショナル・トラストの素地と8ヨヨOコω        ︵−V  イギリスのナショナル・トラストに触れるとき、その背景の素地として、コモンズ︵入会権・8BBo房︶やパ        ︵2︶ ブリック・フットパス︵燭号一8閃8ε蝉跨︶の間題が出てくる。  イギリス古来のコモンズの多くは、入会地の公有地化として発達したとされるが、このコモンズは土地、空気、 水などの地球上の主たる資源について、人々が共同してエクイタブルにアクセスもしくは使用でき、だれもがそ       ︵3︶ れらを破壊することのできない社会制度とされている。そして基本的に、他人の所有権に属する地盤を対象とす る収益権︵即o捧ωぎ呂窪oωoδ︶の一類型としてのギ○律鋤胃Φ巳段であり、﹁他人の土地に対する権利﹂と        ︵4︶ ﹁自然産出物の一部の採取﹂の二要素がそれを構成する。  コモンズのアクセス︵88ωω︶によるオープンスペース化︵8窪ωB8・開放地化︶にもとづいて、国および 自治体による土地の信託的保有が早くから行われていたとされる。オープンスペースとは、一般的にはアウトド

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アのレクリエーションやアメニティの場として親しまれ、公衆によってアクセスできる空間をいう。この空間は、 荒地、非囲込地を含むあらゆる土地を対象とし、私的、公的、あるいは信託的な土地所有がいずれにしても存在       ︵5V することを留意しなければならないとする。オープンスペースは、その土地所有権の存在を前提に、コモンズの        ︵6︶ 基本的な法理による地表の使用権に限定されたレクリエーションやアメニティの場である。アメニティの意味は 必ずしも確立しているわけではなく、一九六七年﹁市民アメニティ法﹂︵Ω証o︾B窪庄8︾9一8刈︶では、アメ ニティを昌の﹃蒔辟跨営ひQぎ9Φ﹃蒔9巳碧①︵しかるべきものがしかるべき場所にあることだ︶と定義されてい ︵7︶ る。イギリスにおけるアメニティ概念が、生活概念、地域概念であり、地域固有財であることにさして異論はな い。オープンスペースという観点からすれば、アメニティはレクリエーションのための、オープンスペースの保 全とそれへの公衆のアクセスを要素とする。オープンスペースは、コモンズとしての入会地、フォレスト、緑地、 世代別のプレイグランド、街角の小広場︵ωρ轟お︶、大型遊歩道、小グリーンベルト、河川堤防、美しい公園、農       ︵8︶ 地、森林、植物観賞ガーデンなとを含むものである。  これまで触れたコモンズの概念は、共有、共有地ではない。また、日本的な入会権とも違うことの認識が必要 である。イギリスのそれは、不動産権ではなく、入会地での自然産物を取得する収益権︵窟o津鋤蜜①巳お︶とし ての世襲的な放牧、採取権であるといえる。  オープンスペース協会は、一八六五年に﹁コモンズ保全協会﹂︵↓訂Ooヨ目○諺汐8R<簿一9ω09Φ蔓︶として 創設され、一八九九年に﹁入会地・畦道保全協会﹂︵↓訂Ooヨヨo諺碧α男8ε讐房ギ8R<呂2ωoq①昌︶、

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信託法理の応用による文化遺産と自然環境の保護 一九四九年に﹁入会地・オープンスペース・畦道保全協会﹂︵Oo日日9ρ○も窪9碧8蝉⇒α閃889募即窃R<魯9       ︵9V ω09①昌︶、一九八二年に﹁オープンスペース協会﹂︵↓箒○づ窪ωB8ω09Φ蔓︶と名称変更を行っている。基本 的趣旨は変ることなく、﹁入会地、緑地、オープンスペース、公道、そしてそれらを享受する国民の権利を保全す ることをキャンペーンする。われわれは、地方自治体や公衆に助言し、われわれが贈与や買取りによって取得し        ︵−o︶ たオープンスペースを管理保全する﹂としている。扱ってきた対象が土地自体というよりそこで享受される権利 に重心を置いてきたことから、﹁入会権﹂︵﹃蒔耳98Bヨ○富︶の保全を主体としてきたとする。また、オープン スペースもわが国で用語として使われるものとは異なる。協会の一貫した基本的関心は、狭義のコモンズとして       ︵11︶ の入会権、そして広義のコモンズのオープンスペースとしてのアクセス権の保全にある。現代におけるコモンズ のオープンスペース化の重心は、普遍的な公衆のアクセス権の設定の方法であり、一九〇六年のオープンスペー ス法や諸法がオープンスペースの公有地化︵8島8賦9︶を促し、一九二〇年代にアクセスによる自然保護への弊 害の疑念から土地公有化が国家政策としても積極的にとられ、現在でもなおこの間題についての選択議論がされ   ︵12︶ ている。  一九二五年の財産法︵霊壌9即8R蔓>oけ︶によって、普遍的な公衆アクセス権による方法が法的に確立し てきた。同法一九三条は、首都圏および︵一九七四年地方自治再編成前の︶自治都市、都市地区︵畦げ碧&ω巳8 に存在する入会地での公衆の﹁空気と運動﹂のためのアクセス権を認め、当条項は、マナの領主ないし土地所有 者の証書による契約によって田園地域の入会地にも適用された。そして同法一九四条は、すべてのコモンズでの

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公衆のアクセスを妨害する禁止行為として、建物のほか、駐車場、スポーツ施設などの建築や囲い込み︵ぼ90霊8︶ などの行為を規定し、それらの行為は、国務大臣の同意なしには行えないことにした。そして、そういった公衆 のアクセスを妨害する行為の許可にあたって、国務大臣はその申請の公告を義務付けられ、また、当地盤の所有        ︵13︶ 者、入会権者、そして隣人住民の利益を考慮しなければならないとされる。  一九世紀後半に展開したロンドン首都圏におけるコモンズの公園化の間題がある。一八六六年首都圏コモンズ 法によって、イギリス全土におけるコモンズが﹁オープンスペース﹂すなわち公衆に開かれた緑の空間になって いった。これは、従来の地主の所有権と農民の放牧・採取権、という土地所有における認識を根底から否定する ことになりかねない。一八世紀初頭からの土地囲い込みにより、土地所有者たちは、主として農業経営の拡大を 求めて、コモンズや荒れ地を囲い込み、そこでの農民の利用と権利を排除しようとした。コモンズでの権利者の 四分の三の賛同があれば開発できるとした一七七三年の法律により、コモンズの解体が一気に進行した。一八六 六年の首都圏コモンズ法は、首都圏におけるコモンズの囲い込みを全面的に禁止し、民衆のレクリエーションと スポーツの場としてのコモンズをオープンスペースとして管理することを定め、一八七八年の首都圏コモンズ法 は、コモンズの買収権限をロンドン市に与えた。一八七八年のロンドン自治オープンスペース法は、ロンドン中 心から約四〇キロメートル以内のコモンズの取得権と管理権をロンドン市に与えた。これらは、現在の自然公園        ︵1 4︶ の形成につながりを有している。  コモンズのオープンスペース化は、その背景として権利関係についてのイギリス特有の考え方もあったとされ

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信託法理の応用による文化遺産と自然環境の保護 る。イギリス社会の近代化の過程でコモンズの権利である収益権の内容を、農業上のそれから公衆の遊びに変え、 産業革命がこの変化を決定的にした。放牧や伐採の必要性が薄れ、権利の根拠を失っていく農民、そしてそこに レクリエーションの場を求める公衆は、収益権を公益権に変えていくことになり、やがて、コモンズをオープン スペースとして保全することが図られ、開発問題を抱える大都市共通のコモンズを保護していこうとする契機に なった。  コモンズ保全協会は、オープンスペース協会と発展したが、ナショナル・トラストの基礎をつくり上げ、今日 なお環境団体として活躍していることを忘れてはならない。  イギリスでは、閏88餌跨≦巴鉦畠が重視されている。遊歩道に勺昌膏菊貫算9≦電という標識を目にする       ︵巧︶ ことが多い。それは、個人の土地であれ、公共の土地であれ、歩く権利が保証されている道がある。元来、パブ リック・フットパスは人間の歩く権利というものを保証したもので、ローマ時代から始まっている。現状は農家 が羊を飼うために棚を作ってはいるが、過去にはそこに道があり、人々はそこを使って生活をしていた。便利で 頻繁に使われた道は、整備されハイウェイ︵匡ひQげ≦塁・公道︶や地方道として自動車の交通の用に供しているが、 農村の農道はそのまま残され、それが現在のフットパスとなっている。したがって、他人の土地であろうと、初 めに道があったのであるから、その道を廃止する権利はだれにもなく、歩く権利︵匪の勾蒔洋亀奢塁︶という考 え方が生まれた。フットパスには、人が歩くだけの道、パブリック・フットパスのほかに、馬や、自転車に乗っ ても通れるパブリック・ブライドルウェイ︵勺5汀卑巨①≦身︶、ごくまれに人と馬に乗った人が通れるバイ

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ウェイ︵団図≦塁︶の三種がある。これらのフットパスは、一九三五年に、歩く人と歩く権利を守るために設立さ れたランプラーズ・アソシエーション︵勾蝉日巨Rω︾ωω09毘9︶があるものの権限や性格は不明確である。  二〇〇〇年一一月、カントリーサイド・歩く権利法が制定され、オープンカントリー︵山岳、湿地、ヒース荒 野、丘原、砂丘︶、および一九六五年入会地登記法によって登記された入会地と緑地を対象に、同法二条は﹁いか なる者も、以下の条件で、野外レクリエーションのために、そのアクセス地に立ち入り、留まる︵お目践づ︶権利 を有する﹂と規定している。ここにいう条件とは、生け垣、木戸、踏み段などを破壊しないこと、自動車を持ち        ︵16︶ 込んだり火を炊いたりしないことである。  これらの間題のなかで、コモンズのアクセス権としての法的権利︵霧曽同蒔辟︶は、信託的なものとして解する ことが当を得ているかということがある。また、コモンズの信託的性格に関して、アクセス権によるコモンズの 開放という点からナショナル・トラストの先駆的形態と果していえるかという説もある。収益権ないし地役権の       ︵17︶ 一種としてとらえるという考え方もされている。ただし、ナショナル・トラスト創設までの経緯から考察すると 素地があったと考えられる。コモンズ保全協会、後のオープンスペース協会は、ナショナル・トラストにとって 変わったわけではなく依然として、その存在と活動がある。コモンズ保全協会は、土地取得の権限を有しなかっ たため、土地の買取りによる新しい方式が立案され、その組織を永続化し、また、権利関係を明確にするため受 託者として機能する特殊法人が設立された。ナショナル・トラストは、一九〇七年に制定されたZ簿一9巴↓毎無 ︾oけをもって法的に確認されることになった。以後、景観保存のための土地取得は、ナショナル・トラストに委ね

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信託法理の応用による文化遺産と自然環境の保護 ながら、他方、オープンスペース協会は入会地につき公衆によるアクセス権の確立を主たる目的として、 互いの役割を認めながら現在もなお自然保護のために活動しているとされていることには意義がある。 パ パ      パ パ    パ          

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654 

3  2 

1

) )    ) ) )    )     )     パ  パ   

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両者は 8  平松紘﹁イギリス環境法の基礎研究ーコモンズの史的変容とオープンスペースの展開1﹂︵敬文堂・一九九五 年︶、菊oσぽ閃a号P↓冨Z象一g巴↓霊曾1℃霧叶磐αギ①器昇M這謹。  平松紘﹁イギリス緑の庶民物語1もうひとつの自然環境保全史1﹂︵明石書店・二〇〇一年と三四頁以下、げo置 国<Φお一ΦざOoミミo虜肉ミ鳴。っ尉“§駄肉8慰聴詳鳩一〇一〇。  平松紘﹁イギリス環境法の基礎研究﹂五頁、竃8富色≧一暮ざΦ負↓げΦOo8一器○答○巳9&o轟昌9図8一畠ざ 一〇逡  平松・前掲書、七頁。  平松・前掲書、一二頁、宮本憲一﹁環境経済学﹂︵岩波書店・一九八九年︶一二二−三頁。  平松・前掲書、一二頁、ミ’○=○ω冠冨きαいU鼠一身ω富BPS壽9ミミ§⇔卜§駐黛肉§曳§鈍黛ミ駄 壽隷勲一8ω。  平松・前掲書、一二頁。  これらに関連する文献としては、O。国薫げ旨δヨS壽気嚢◎建勲ヒo鳴誌ぎ§§織9ミ§§”一〇ωρ固町9 ωRぎρ&←Ooヨ琶8汐ooR昌国①ωo貫8ρ国8一〇閃賓四民OoBBq巳早︼W蝉ωaω仁ω鼠轟亘oUΦ<o一8日o耳H。。 O一①き○。ω8<窪ωOPOOヨ旨○旨即8Rq国88巨。ρ>αQ﹃Φ器声一9①○昌”且σ且仁ω。8葛8江8ω﹂8ど ωo目一①い冨oO︾K9且冒BΦω琴︾魯ΦωoPa‘↓げΦOq①ω江o昌○︷甚ΦOoヨヨ○霧博↓び09一εお§α国8一− oひq鴇o眺OO日ヨ巨巴寄ωo霞8ω口8S  平松・前掲書、三一七頁、O轟富ヨ冨ξ9ざ閃o巨号お9Z簿一8四一↓歪貫這o 。刈  ○冨pωも餌8<○一﹄介旨obD一8卜  平松・前掲書、九頁−二一頁。

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︵12︶ ︵13︶ ︵14︶ ︵15︶ パ  パ 1716 )  )  ΩU’Oaω号P↓訂U四≦900日B8ρおOo 護法制﹂、渡辺洋三・稲本洋之助編﹁現代土地法の研究﹂︵岩波書店・一九八三年︶三七五頁以下。  い勾○㊤旨R節︼W●い冒器ρO霊艮曙ω一号一鋤多一8ザp嵩一●平松・前掲書、三六三頁以下、磯野弥生﹁自然保 。◎Fポロック・平松ほか訳﹁イギリス土地法1その法理と歴史﹂ ︵日本評論社・一九八五年︶。  平松紘﹁イギリス緑の庶民物語﹂五〇頁以下。U函器邑ざ9ヨ目89男o目8富きα男88雪冨↓ぽω8曙9跨Φ 田注Φ身ユ轟魯Φ一器什男○﹃蔓−ゆく①嘱8お眺○﹃汐ぴ一一〇殉一讐房o<ROO日日9ωきα男oo8m浮ωo眺国お一鋤&四且 ゑ巴①ρ一。H9り国ω。歪簿OpOo奪日o冨蝉民Oo旨B・ロ固①一αω﹂。 。。 。ざO・∪.○毘。 。αΦp↓箒冨類900導旨99 一〇〇。○ 。鴇︸08ゑρ円びΦ℃蝉詩ω㊤pα白oo色鋤pαω○︷いo昌αoP一〇〇 。8男oq二げ国ω9什ρ切。℃ご目ヨ段四昌αU。 留の薫四pΩ姶O鋤巳窪ρ>昌○需βω冨8ωω貫く身冒什げΦΩ蔓o︷8且Op一8N﹂WΦ一富<8即Φω碧閃。08需さ 勺080R田&ψU盆蔓”〇四巳Φおo眺国轟一彗9一8ど︾卸O︼W一曽o打O●鴫o目騨名巴匹昌閃U・且9、ω評詩ω 曽且〇四三Φ昂一8・ 。”ZΦ≦国o一一き辞︼W’OまR計↓冨9Φ8一〇呂8ミ曽ざ一8ど冨名お昌8m且毛一ω富憎け  平松紘﹁イギリス緑の庶民物語﹂三四頁以下、中川祐二﹁英国式自然の楽しみ方﹂︵求龍堂二九九六年︶、旨困鼠巴一 碧α旨炉①<①一旨p空讐畠・流≦2口。βO・Bヨopω”Oo窪ω冨8ω餌且勾Ooε四夢ギのωR奉江自ω09Φけく蝉且 因曽]Bぴ一Φ目、ω︾ωωOO一讐一〇P  平松紘﹁イギリス緑の庶民物語﹂二四〇、二四一頁。  海原文雄﹁ナショナル・トラスト﹂1信託こぼれ話2 1︵信託二〇四号・二〇〇〇年一一月︶、なお、五四頁以下 海原先生は﹁仮にその実体を信託として把握するならば、コモンズ保全協会の活動はきわめて積極的であり、ナショ ナル・トラストが景観や遺跡の保存のための単なる受動信託︵窓ωω貯Φq拐け︶に過ぎないのに対して、コモンズのア クセスによる環境の保全の方は能動信託︵8試お什歪8に属するといえるかもしれない。⋮﹂とされている。 三 イギリスのナショナル・トラスト法 イギリスのナショナル・トラストは、信託か、あるいは信託性あるものか意見もわかれるが、純粋な信託では

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信託法理の応用による文化遺産と自然環境の保護 なく、実体は法人的なものといえる。しかし、今日まで、自然と史跡の保存などを当初の目的として運動が展開 され、世界にその広がりをみせている。その活動は、ナショナル・トラスト法により法的に認められ、開始され たものである。わが国の自然、歴史的環境保全のあり方と市民運動に大きな影響を与えているが、日本にはナショ ナル・トラスト法のような立法がなされておらず、信託法上の裏付けのないまま、民法上の法人としてナショナ ル・トラストという名称を用いて、古民家や自然原野などの買い取りの活動ないし運動をしている団体には間題 がある。イギリスのナショナル・トラストは、住民や自治体が中心になって、広く国民から寄付金を集めるよう な運動は一切行っていない。  イギリスのナショナル・トラストに関する特別の立法は、一九〇七年の︾⇒︾98ぎ8∈o轟8碧α8味R 8≦Rω后9跨①Z餌江自巴↓笙馨︷巽匹碧89=馨霞8目8お曾9Z鉾q﹃巴ω8仁蔓︵﹁史蹟および景勝地 のためのナショナル・トラストの設立および権限付与に関する法律﹂︶とタイトルが付けられているナショナル・ トラスト法︵Z簿一9巴↓凄簿︾8をもって始まる。この法律は、汐貯緯Φ︾9で三九力条からなっている。ま た、ナショナル・トラスト法の前文︵窪碧賦鑛2雲ω8︶によると、ナショナル・トラストは、一八六二年から 一八九〇年の会社法︵○○ヨ冨巳窃︾8のもとに、非営利の団体︵霧ω8冨江目︶として設立された、とされてい ︵← る。一八九四年に設立されたこの団体が所有管理する土地、建造物などを公衆のために利用することについて、 その規制と監督の権限を団体に付与し、さらに土地、建造物を破壊、損傷から守り、恒久的な保存を促進するた めにナショナル・トラスト法を制定するとされている。

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 ナショナル・トラスト法は、四条でナショナル・トラストの目的を﹁美観もしくは歴史的に価値ある土地およ び建物を、国民の利益のため永久に保存かつ管理すべきこと﹂にあることを明示し、同条︵二︶は、ナショナル・ トラストの保有する資産は、すべて公共の目的のため信託で譲渡されたものであり、ナショナル・トラストは当        ︵2V 該財産に対し、信託または受託者として行為しなければならない、としている。また、三条で、ナショナル・ト ラスト法という特別法上の法人としての性格につき、永久的承継性と社印︵8Bヨ9ω8一︶を有し、しかも死手 許可︵膏窪8壁Bo辞日巴p︶の除外をうけて土地その他の財産の譲渡ができる法人︵げo身8壱o蚕$︶としてい る。五条は、ナショナル・トラストの収益もしくは財産について会員に対し利益の分配を認めない旨を規定して いる。  二一条は、同法の特徴的な規定で、保存の対象となる資産は、国民のために管理すべき信託財産であり、譲渡 不能︵冒巴一①冨匡①︶と宣言する権利をトラストに認めている。この宣言を受けた資産は、売却・担保・供与・執 行などが禁止される。この特権があるために、ナショナル・トラストの保存対象資産は売払うことはもちろん、 抵当に入れることもできないし、国会の同意なしには強制収用されることもない。これは、資産の寄贈者や資産 の取得のために募金に応じた人々に対して、資産が確実に保存されることを示す何よりの保証である。但し、道 路拡張など特別な必要のあるときは、献譲︵8&8江9︶とよばれる手続で例外的に譲渡することが認められてい る。  二七条は、ナショナル・トラストにより受領される金銭の適用方法について、同トラストの理事会が適切と判

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信託法理の応用による文化遺産と自然環境の保護 断する場合、一定の信託資産すなわち金銭を法にしたがって︵ξ訂類︶投資できる旨を規定している。この場合 の法とは、一般信託法上の受託者の権限を指すものとみられる。二九条は、公共地︵8目琶○富︶に対する同トラ ストの権利と義務を列挙している。三二条は、同トラストの保有地につき灯火・看板・鳥類捕護などの規制をし ており、三三条・三四条は、同トラストが保有する建物公開の規則を定め、三六条・三七条は、公共地につき土 砂採取制限などをすることができる旨規定している。  この一九〇七年法は、その後たびたび改正されているが、同トラストに関する基本的な原則はあまり変ってい ない。このナショナル・トラストとO富匡昌︵慈善ないし公益︶という法的概念の問題がある。わが国ではチャリ ティ︵魯巽一昌︶を﹁公益﹂と訳しているので、それにしたがっていくことにするが本質的には﹁慈善﹂というべ        ︵3V きであろう。ナショナル・トラストの公益性が争われたものに一九一六年のヴェアロール事件︵目おく①霞巴一︶ がある。もちろん公益性だけが争点になったのではなく、関連法規との間題も含まれており、指導的判例︵一$&轟 8器︶となっている︵Z簿一9巴↓ε曾男9国四〇8=一ω8ユo置話お雪9乞簿醇巴ω①壁昌く●︾辞○醤亀O①亭 R巴︹一〇一①︺︶。       ︵4V  同事件の概要は、一九一一年九月一六日に死亡した○出●くR鍔目氏が彼の生前の同年八月四日付の遺言で、所 有地の大部分を一九〇九年九月二一二日からナショナル・トラストに遺贈する旨が約定されていた。同トラストは、 直ちにその移転を受け、一九〇七年のナショナル・トラスト法二一条二項にもとづき、信託財産として譲渡不能 ︵ヲ巴一窪筈一Φ︶の決定をする予定でいたところ何らかの事情で宣言が遅れていた。イギリスの当時の相続法は、被

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相続人の死亡により直ちに遺産が相続人に移転するのではなく、一定の手続によって遺産整理を経た上で相続人        ︵5︶ に移転することになっており、しかも、土地の受遺者が法人の場合には、いわゆる竃o旨ヨ巴⇒︵死手法︶として、 譲受が禁止され、その土地は、遺産整理のため、死後一年以内に売却されるべきものとされている。ただ、その       ︵6︶ 遺贈が公益目的のためである場合に限り、除外例が認められていた。  そこで、ナショナル・トラストは、法務長官︵︾辞○旨亀○窪震巴︶を相手方として、公益性により死手法の適 用が外されるべきことを主張する訴訟を提起した。この訴訟の争点は、ナショナル・トラストが一八八八年と 一八九一年の死手ならびに公益ユース法︵匡○辞日巴β碧α○冨葺呂一Φdω8︾o叶︶に拘束されるか否か、また、 国民の利益のためというナショナル・トラストの目的が公益性を有するかどうか、にあった。公益目的に対する 場合には、所定の期間内に、または、裁判所による公益のための保有命令︵お8昌δpo巳R︶を得ない限り売却 されねばならず、売却なしに同期間が超過すれば、当該土地は公益地公的受託者︵o臣息巴賃諾8Φ90訂同一蔓        ︵7︶ 一碧αω︶、すなわち、単独法人︵8∈o轟江9ω9Φ︶である公益委員長に帰属する。ところが、一九〇七年ナショナ ル・トラスト法一二条︵二︶により、同トラストは、遺言者の死後一年以内に、その理事会の決議にもとづいて、 当該土地の譲渡を不能ならしめることができるため、同トラストが公益目的と仮定される場合、一八九一年の死 手法が一九〇七年のナショナル・トラスト法によって侵害されることになると思われるが、裁断では、この点に 関し、一九〇七年のナショナル・トラスト法による土地の譲渡禁止規定は、一八八八年および一八九一年の両死        ︵8︶ 手法の適用を決して排除するものではないと判示された。

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信託法理の応用による文化遺産と自然環境の保護  また、公益性については、受託者である同トラストは、一九〇七年法四条に明自に規定されるように、国民の 利益のためという特別目的に対してのみ厳格に限定されて設立され、かつ、そのために信託財産を保存ないし運 営するわけであるから、勺霞彗什ぼ88冨∈oω①ω︵博愛目的︶その他、多くの非公益的な公共目的と区別されなけ ればならないとし、したがって、畠震一蔓︵慈善ないし公益︶という法的概念に当然に包含されるとして、同トラ       ︵9︶ ストの公益性が判決により認められた。こうした判決後のナショナル・トラストを支え、かつ、その着実な発展 を可能にした関係法規として、一九一九年に、ナショナル・トラスト・チャリティ計画確認法︵Z呂9巴↓ε誓 ○富二蔓ω9Φ目①09守巨簿一目>9一。お︶があり、この判例の趣旨を明確にするとともに、同トラストをチャ リティ委員会の監督下におくことを指示した。  すなわち、公益委員会︵O冨旨閲OoB巨隆9︶は一八五三年の公益信託法︵○訂旨筈8↓≡雪ω︾9によっ て、その監督権限や所管事項が明確に定められていたものであるが、一九一九年のナショナル・トラスト・チャ リティ計画確認法は、同トラストの公益性およびその適用ないし運用に対する公益委員会の権限を確認し、また、 同法附録において、公益委員会の許可のもとに、保存対象財産の賃貸を認めている。  一九三七年ナショナル・トラスト法は、同トラストの運動を拡大し、弾力化するとともに、その財政面での基 礎を固めることを配慮している。四条および、四条@において、同トラストの目的および権限が強化され、四条 ㈲および九条は、財政的な基礎を確立している。すなわち、三条は、保存の対象となる財産は、建築学的または 芸術的に重要な建物についても拡大され、併せて建物内の家具・絵画などを含めてよいことになった。四条は、

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信託財産の保存のため、あるいは同トラストの一般的目的に役立つ限りにおいて、投資目的で土地・建物・有価 証券を取得・保持できる旨を規定する。六条eは、一八八八年・一八九一年死手法により法人が一般に土地など の遺贈を受けることは禁止されていたのであるが、これらの死手法の規定が同トラストに対する遺贈には適用さ れない旨が明示された。六条口は、一般および公益目的のため土地を譲渡することを生涯不動産権者に授権せる 一九二五年のωΦ琶8い㊤巳︾9五五条のために、同トラストに対する継承地︵ω①注8冨巳︶の譲渡ないし賃貸       ︵−o︶ は、当該土地の一般的利益および公益目的のためなされた竜のと看倣す旨が規定される。七条は、地方行政庁が 保存の対象となりうる土地・建物を同トラストに付与することができるというように地方行政庁と同トラストと の協力体制について規定する。八条は、歴史的遺産保全の補助的手段として、土地・建物の譲渡を受けることな く、所有者が自分の所有地を宅地化しないとか、建物の正面外観を変更しないとかいうような趣旨の誓約をする 形式︵震o$&奉8<Φ冨暮︶のものも採用し規定した。九条は、財政的な基礎を確立するため、一般的目的以外 の金銭や経費は、別途に会計処理されるよう規定された。  一九三九年ナショナル・トラスト法は、全文一七力条であるが、三条以下において、居住者がいるままの土地 および家屋を取得する権限が認められた。占有・居住が継続される反面、農業や日常生活に必要な餌ヨΦ艮蔓︵心       ︵11︶ 地よさ、ないし快適さ︶を保持するとか、相当の賃料を徴収するとか、かなり詳細な条件と手続が規定された。        ︵1 2︶ 同法は、同トラストと一九二五年のωΦ注8U餌巳︾9および冨奢9ギ8R昌︾9との関連を規定する条文が 大部分である。

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信託法理の応用による文化遺産と自然環境の保護  一九五三年ナショナル・トラスト法は、わずか五力条の立法であり、四条において、理事会のメンバーの調整 と付与された投資ないし利殖の権限が規定されたのが特徴的である。  一九七一年ナショナル・トラスト法は、三四力条からなり、同トラストの運営ならびに組織を大きく修正かつ       ︵13︶ 詳細に規定している。この大改正は、ベンソン・リポート︵ω9ω9勾80邑の勧告にもとづくものである。四 条では、八種類の同トラストのメンバーが規定された。当初の会員組織、理事会の構成と権限などを大きく修正 するとともに、運営委員会︵突Φ2江お8B巨辞8︶と地方委員会︵お吼9巴8ヨヨ葺8︶は、このメンバーよ り選出ないし指定されてその者たちが同トラストを実質的に運営すること、また、会員の会費、役職者の報酬、 会計とその検査などを詳細に定めている。二一二条では、同トラストの保有する土地・建物に見学やレクリエーシ ョンのために訪れる公衆の二ーズに応え、各種の便宜供与の施設︵休息所・飲食店・駐車場・トイレなど︶を設 けることができると規定した。二五条では、これらの施設は有料とすることができ、一般的な入場料、ゲーム代、 ボート・魚釣などの料金を定め、これが、同トラストの実質的な収入源の一つを形成するようになった。二六条 は、メンバーによる信託財産の居住あるいは占有を認めている。二七条では、一九二五年のい蝉類9甲8R蔓 ︾9八四条、すなわち、土地に関する不作為約款︵おω鼠&奉8話轟旨ω︶を解除もしくは修正する権限が、一九〇七 年ナショナル・トラスト法二一条または一九三九年同法八条による譲渡禁止財産の保存のために課せられている       ︵14︶ 制限には適用されない旨が規定されている。  これらのナショナル・トラスト法の制定とならんで、同トラストに対する税制上の恩典が財政法︵罰冨目①︾9︶

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によって認められていることも留意しなければならない。この税制上の優遇措置は、一九一〇年財政法七四条お よび一九四七年法五四条による資産譲渡に関する印紙税の免除が認められていた。一九三一年法四〇条などでは、 同トラストに寄贈・遺贈された保存対象財産について、それが譲渡不能である旨の宣言を受けるという条件のも とに遺産税の非課税措置が認められた。一九三七年法三一条では、寄贈者が生涯権を留保した場合にも非課税措 置が認められた。一九四九年法三一条は、寄贈・遺贈されたすべての基本財産についても非課税措置が拡張され、 一九五一年法三三条では、建物内の動産についても認められ、さらに、一九五三年法三〇条、一九五六年法三四 条、一九六三年法五四条、一九六五年法三二条などによる遺産税の非課税措置がなされている。また、一九七五       ︵15︶ 年法により創設された資産移転税︵08評巴↓鍔霧︷R↓與︶の特別免税措置などがある。  また、国税庁は、一九一〇年以来、遺産税の支払にかえて土地・建物を受領する権限を有していたが、一九五 三年以降は、建物付属物や芸術作品をも物納として受領できるようになり、しかも、事情によってはそれらを同        ︵16︶ トラストに移管することが許されていた。なお、同トラストの目的および事業の公益性からみて公益信託として の特質を認めるか、または、特別法上の法人としてのみこれを把握するかの間題がある。信託とすると委託者、 受託者、受益者は、だれであるのかを間題にしなければならない。委託者︵け≡ω叶9︶としては、一般的に考える ならば、同トラストに対する保存資産の寄贈者・遺贈者であるが、会費を拠出するナショナル・トラストの会員 はどうなるかの間題がある。会員は法人たる同トラストの構成メンバーでもあるからである。  同トラストを信託と看倣すためには、このナショナル・トラストという法人たる委託者が同時に受託者を兼ね

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信託法理の応用による文化遺産と自然環境の保護 るとか、あるいは、信託財産の拠出者すなわち寄贈者、遺贈者、会費納入者が委託者として、ナショナル・トラ ストという既存の法人たる委託者兼受託者との間に締結する信託契約︵什霊馨8暮轟8を前提とせざるを得な ︵17︶ い。ナショナル・トラスト法においては、委託者という語句は用いられておらず、ナショナル・トラストなる名 称の既存の法人自体を委託者の地位に想定しているものと考えられる。受託者︵け霊28︶は、特別法上の特殊法        ︵18︶ 人たるナショナル・トラストそのものであるとされるむきもあるが明確ではない。受益者︵劇990壁曙︶は、ナ ショナル・トラスト法上8同9Φ冨器陣99①Z餌け一9と表現されるところから国民一般といえるかもしれな いが、会員はこの国民の一部に属したとしても、とくに利益の分配にあずかるものではない。こうしたことから、 公益信託としての特質を考察していくとしても疑間が多い。  田中実教授は、かつてナショナル・トラストは一定目的の財産管理という信託の要素を加味した特殊法人、つ まり設定信託たる公益信託と公益法人の併用形態と要約され、また、海原文雄教授は、ナショナル・トラストの 信託性を否認し特殊法人と解されている。特殊法人であることはもちろんであるが、イギリスの信託という素地 のなかで育成され、後世に国民的遺産を引き継いでいく目的実現のため、信託的な運営を目指している点に着目 して、さらに、解明をしてみたいと思う。したがって、わが国でこのイギリスのナショナル・トラストを導入す ることは事実上無理といわなければならない。たとえ公益信託の一つとして考慮することが将来あるとしても、 わが国の信託法そのものを改正することや特別法の制定が先決であり、信託についての理解が国民に浸透してか       ︵19︶ らの間題となろう。米国における公共信託︵290q霧け︶を範として検討するにしても、わが国で間題として提

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起されているのは、﹁知床一〇〇平方メートル運動﹂に代表される地方公共団体が行う場合である。ところが受託 者能力の間題がある。それは地方自治法が公益信託の受入れを許容していないということであり、        ︵20︶ ては国内での各法制の整備と調整という大きな当面の間題であろう。

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 死手地と死手法については、水島広雄﹁信託法史論﹂一〇七頁以下に詳細である。ノルマンコンクェスト以来、英  くΦ霞艶O器Φについては、田中実・前掲二三頁および二五頁、海原文雄・前掲八七頁においても引用されている。 一〇〇●  Z簿一g巴↓歪ω叶︷o﹃国蝉8ωo胤国一ωけ○ユoH筥Rのωけo目乞簿ξ巴閃Φき昌<。>暮○旨26窪R巴︹一〇一①︺一〇げ● わゆる信託宣言︵8巳震簿一80︷欝拐け︶を当然の前提としない限り理解し難い条項といえよう、とされている。 法人たるナショナル・トラストが同時に受託者を兼ねる意味で、ナショナル・トラストを信託と解するためには、い 後の第六条およぴ第九条にいう団体ないし受託者︵器ω8壁江99霞拐8Φ︶という用語と同趣であり、したがって のであるが、信託または受託者として︵目四昌霞拐諺軌99霧け歪馨8︶という用語は曖昧な表現である。これは、 海原文雄・前掲八六頁、同教授は、本規定は、ナショナル・トラストの運営が信託で行われるべき原則を樹立するも  乞蝕o旨巴↓歪ω計↓ぎ乞蝕8巴↓毎ωけ︾9ωH。。刈8一。置−惹浮国図霞8叶ω坤o日OΦ辞巴昌℃呂一凶o>9ω口零S 旨①≦Φ象江OPNOOド 悶①ま①p↓げΦZ豊g巴↓歪ω什−評ω什きα即①ωΦ旨”お置旧○轟富B鼠q巷ξ句o仁且Rωo一浮Φ轟鉱o墨=歪ω“ 法﹂ジュリスト一九八三、九二︵酌七九七︶号八六頁。この同教授の論文がこれまでの最も詳細なものである。国○ぴ冒  田中実﹁ナショナル・トラストについて﹂信託一三四号三二頁以下、海原文雄﹁イギリスのナショナル・トラスト

国においては、土地を宗教団体︵8凝δ拐﹃2器︶に寄進する風習は一般に広く行われるようになった。十三世紀以

来こうした宗教団体の如き法人に対し、土地を移譲する傾向が盛んになるにつれ、いわゆる死手地︵一き房冨箆営

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)) ↓箒=一ω8曙9国昌旭一鴇い蝉ヨ這認︶く○一、一もPωωρωo び一八九一年の法律により、なお、さらに緩和せられた。ζ巴亭きρ国ρε9一8ρP曽旧℃色o良きα匡巴菖帥呂” により、公益のためにする土地または土地購入のための資金の移転が一定条件の下に許され、さらに一八八八年およ かから、生じた名称であろう。一七三五年の公益信託法︵O胃一$亘Φ↓霊ω什>9︶︵一般に寓o濤旨巴p>9という︶ 渡の場合、その主たる相手方たる宗教団体が法律上﹁死亡した﹂と考えられる人々によって構成されたことのいずれ ので、その結果、不動産が何らの利益をも生まない﹁死せる手﹂に帰したと考えられたこと、︵2︶次にまた、死手譲 法人は死亡せず、かつ将来とも身分上の変化なきため、封建法上、これらの事実に伴う領主の種々の収益が喪われる ある。法人に対する不動産譲渡は死手譲渡︵巴一窪豊9言旨○誹B巴目︶と称せられるが、それは、︵1︶まず、第一に ある。元来、ヨo濤日巴pは伍8α富巳というZ9旨き写窪魯であり、ラテン語の冒ヨ○旨轟ヨきqを指す名称で 要するに、土地が法人、特に宗教法人︵お一軽○窃8ε○轟江Opω︶の支配や占有に帰することを防ぐための諸法律で こととした。これがマグナ・カルタ︵霞甜惹O碧$︶および一二七九年の死手法︵ω欝9器9寓○旨B巴昌︶である。 取得することを禁止し、もし、これに違背するときは、その譲渡は無効として、直接、領主は当該土地を没収し得る リー二世およびエドワード一世の治世にいたって、ついに法人が国王及び領主の許可︵口88Φ︶なくして、土地を 封建制度にもとづく負担を強制することができなかったからである。ここにおいて、土地譲渡の防止策として、ヘン かくの如く、土地が宗教団体の如き法人に譲渡されると、当該土地は死手地となり、国王や領主はかかる土地に対し、

。昏旧ω一8厨け○⇒ρ○OBBΦ9碧一Φω○貼9ΦU曽薫○︷国漏− 一き9一。 。。 。。。<・一自もP。 。塁G 。NQ 。旧↓R糞↓﹃①OO日ヨ・昌霊ヨ℃、。 。ま  三。吋嘗巴pきαO富旨筈一。dω①ω︾9一。 。。 。。 。︸俸H・ 。。一。肉●中寓①鴉睡綴餌且−。く●浮冨さω器一一、ω零ぎ。巨①ω・断 国含9ミ98︵導。 。︶も巳膜・一。 。。㌔匡6甲℃Φけ葺溜巳蔓四&跨Φゼ署。胤↓歪ωけω﹂夢8︵お§もp ε。山認旧一︾留a号P↓箒霊毛9↓歪馨ω口。9Φ血︵5置γマ一竃一八八八年死手法第一条eで、法人は、一 定の許可がない限り、土地の遺贈を受けることは禁止されていたが、一八九一年死手法第五条により、公益目的のた めに遺贈のなされた場合は、遺言者の死後一年以内もしくは裁判所または公益委員会の決定する延長期間内に、当該 土地を売却すべきことが要求されている。  一八九一年死手法第五条・第六条。  裁判官︵︾ω3¢曙ごによれば、一九〇七年ナショナル・トラスト法第三条は、同トラストをして、土地の保存か

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東洋法学

︵9︶ ハ  パ 1110 )  ) ︵1 2︶ つ処分に関し死手における許可を単に免除せしめる規定としてのみ解されるべきで、同法第四条⇔も、同許可の不必 要性が信託の単なる運営面に限られ、それ以上の権限を本件の遺贈者ならびに受贈者たる同トラストに付与したも のとは解されないとする。これはまた、ナショナル・トラスト法は、死手法とは公益贈与に関しての立法政策を異に するものであるから、甲貯讐Φ︾9たるナショナル・トラスト法は、℃昏一80窪R巴︾9たる死手法を修正ないし 廃止することを意図して制定されたものではないとするのが判旨である。  ナショナル・トラストの目的は、ペムセル事件︵H口8ヨΦ↓貰OO導B一ωωδ器おダ評導8一︹一〇。津︺︾,P器一ふo における累8Z鋤讐窪卿の有名な公益概念の四分類の第四項、すなわち、社会公衆に有益な目的のための信託︵q岳け 断自冒壱oωΦω冨器ゆq巴8浮ΦOoヨヨ仁巳蔓︶に該当するとしている。この点の詳細は、海原文雄﹁英法における 公益信託概念の定立﹂金沢法経論集一〇号四九頁以下。  海原・前掲ジュリスト八八頁。  田中実・前掲信託一三四号二四頁、なおωΦ琶aぴきα>9お謡およびU四≦9ギ8R昌︾9お謡に関する改 正の背景などについては、水島広雄﹁イギリス譲渡抵当の変遷とその内容﹂法律時報第二八巻第一一号三〇頁以下。  =・匡ゑ・旨F霞ω8旨巴算3身&目け09Φ一m&冨妻甲国国。閃弩P9Φω匡8、ω匡・αΦ毎冨類o眺勾Φ巴零8− R蔓︵目貸a︶︵這認ン薯予○ 。”9ρなお、セツルメント︵ω①症o日①旨︶に関して改革を行ったo 一89は、ω①巳ΦBΦ算を設定された土地の諭Φω一ヨ筥①を成年の①ω富80≦昌Rに与え、ωΦ注①ヨΦ導における信託の受 益者の権利をすべて衡平法上のものとし、かつ①ω富冨○嶺昌段が8Φω冒巳①を売却した場合は、これら受益者の衡平 法上の権利はすべて消滅するものである。同法は、ωΦ邑9冨&の占有兼管理者である8墨耳眺9ま父生涯不動産 権者︶に8Φω冒巳①の所有を認め、衡平法上は彼を8臣算眺曾痛Φとし、譲渡目的のためにはΦω富富o毒昌Rであ るとして一Φ鴇一8鉦9を処分することを認め、土地に何らの権利を有しない88一旨Rによる譲渡を有効と認めな い。また、く①ω江鑛号9︵帰属証書︶とけ毎ω江拐け霊ヨΦ再︵信託証書︶という二つの捺印証書作成によるωΦ巨Φ旨Φ耳 の設定という方法を採ることによって、ωΦ莚8冨&の譲渡を簡易・容易にした。↓竃冨毛9ギ8R昌>9一〇謡 は、たとえば、08旨o匡を廃してこれを零8ぎ匡となした。また、一Φ鴇=8ω首巳Φを簡単明瞭なものに整序した。 なかでも、①ω貫8暁9四まΦR鼠8一p富一二限嗣不動産権︶、注εお8鼠冨︵将来不動産権︶は、衡平法上の権利と され、かつ、これらは信託の機構を用いることによって設立することができた。一九二五年の一連のこうした財産関

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信託法理の応用による文化遺産と自然環境の保護 ︵B︶ ︵14︶ ︵15︶ 1716 係の立法により、冨墨旨胤9まΦは、その土地の売却が可能となり、その場合には、その収益は継承財産設定と同じ 限定および同じ信託に服するようになった。その効果は、ただωΦ注Φ目①耳が作用する対象物を変更するだけである。 この売却できる機能は、生涯不動産権者よりもむしろ受託者に与えられる場合があり、その受益者がこの権能を行使 することが義務づけられていれば、この取決めが売却信託︵霞窃け︷9ω巴Φ︶となる。卑一きミ。=震<①ざωΦ琶ΦBΦ導 99且︵這琶も呈。 。−刈一旧顛甲野βO冨ω耳8冨&①醤冨≦9寄巴零8R昌一一浮9︵お§も巳串 一参嵩。−嵩ωる㎝。−ω鴇“U。ω9醤・p冨&U署︵ωΦ8且①α︶︵一。遇も巳一。−一N㎝﹂ω㊤−嵩G 。。  一九六七年に同トラストの理事会は、改革のための調査委員会を設けたが、その報告と改革のための勧告を含む詳 細、周到な報告書が一九六八年二一月に刊行された。これが、委員長の名を冠して国窪ω8因80ほと呼ばれるもの である。田中・前掲二五頁。  一九四六年の土地収用︵権限付与手続︶法︾8巳ω庄89Uきα︵>仁9自冒鋤自8汐08身お︶︾9によれば、行 政庁が、同トラストの保有する土地に対し強制収用の提案をした場合、同トラストには国会の両院合同委員会に異議 を申立てる特別権限が認められている。田中・前掲二四頁、海原・前掲八七頁。  海原・前掲八七頁。男>。一。誤”ω魯。9℃巽僧旨︵一︶。なお詳細は海原文雄﹁英米の改正税法と財産計画e﹂法政研 究四八巻二号二四一頁以下。吉牟田勲﹁環境保護をめぐる税制上の間題点﹂ジュリスト七九〇号一五頁以下。08淳巴 霞き臥R富図︵資産移転税︶は、土地の譲渡が生前贈与、低額譲渡ないし譲渡者の資産の純価値器けく巴¢の減価を もたらすその他の取引、または相続による場合には、資産移転税が課税される︵従前の相続税、贈与税がなく、この 税が課されている︶︵一九七八年﹁財政法﹂固轟昌8>9一S。 。︶。贈与あるいは、低額譲渡についは、9葺琶ひq巴冨 $図と資産移転税の両税の課税がありうる。両税は課税領域を異にするとされて、相互問の調整・救済措置はない。 ただし、譲受人がキャピタル・ゲイン税を実際に納付すると、その納付税額部分については、資産移転上課税標準と なる価額より控除される︵このキャピタル・ゲイン税は、一般に資産の売却・譲渡などの処分によって生ずる利潤に 対して課税される︶︵一九七五年﹁財政法﹂国轟ロ8>9お謡︶。  田中・前掲二四頁。  海原・前掲八八頁、八九頁。海原教授は、こうした解釈は、いわゆる信託宣言を認めるか否かという立法政策と密 接に関係してくるわけで信託宣言を認めないわが国の現行信託法のもとでは、この点でナショナル・トラストを信託

参照

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