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スイス労働契約法改正法案について--スイス債務法の一部改正法案の内容と批評 利用統計を見る

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(1)

スイス労働契約法改正法案について--スイス債務法

の一部改正法案の内容と批評

著者

中村 武

著者別名

T. Nakamura

雑誌名

東洋法学

12

1

ページ

17-73

発行年

1968-09

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00006142/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

八論 説V

スイス労働契約法改正法案について

     ースイス債務法一部の改正法案の内容と批評ー

一、 二、 は し が き 改正法案の要点  ㈲ 事実上の労働関係  ⑧ パートタイム労働  ◎ 患来高給契約  ◎ 労働雛具・材料の補給義務  ③ 労務者の注意義務・忠実義務  ㈲ 収賄禁止  @ 利潤分配請求権  ㈲ 賞与の間題  ω 歩合給の問題  ω 事業主の遅滞等  ㈹ 労務者の一身上の保護・休暇  ω 労働証閥書  α⑳ 使用人発明権  ¢心 労働関係の移転  ◎ 徒弟契約  ⑲ 商事外務員契約  ◎ 家内労働契約  ㈹ 労働協約  ⑧ 基準労働契約  ① 終則・経過法

三、むすび

スイス労働契約法改正法案について 一七

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東 洋 法 学 一八

は し が き

 一九二年三月三〇翼のスイス債務法は.一九三六年に改正.その後数回の小修正を経た。その後も修正のくわだ てが.屡々行われたが.スイス連邦議会は.昨年即ち一九六七年八月二五購に.スイス債務法第二編第一〇章第三一 九条乃至三六二条の雇傭契約の規定を削除し.労働契約法︵ご二九条乃至三六二条︶の規定におぎかえる法案の提出を うけた。  同草案には.連邦議会にたいする改正案の報告書が添付された。殊に改正草案の由来.ならびに専門委員会の理由 書.草案の基本観念.各条文の説明がつけ加えられている。  附属書の重な説明者の顔振れは.チュリヅヒ大学の教授ギ象㌢・毒譲轟であるが.そのほか改正小委員会に属し たものには、㌘象霞①導連邦裁判所判事9募一およびG o魯9竃お象ならびに連邦工業・産業労働省副部長ご ご・浮器鼠 等の人々がある。  連邦共和国では.既に議会が要請した改正法審議のために任命された委員会が、間もなく開催される筈なので、速 かな審議が内外に望まれている。  この改正草案には労働協約、基準労働契約のほか、徒弟契約、商事外商契約︵評&昏鼠鴇&Φ︿Φ轟轟︶、および家内 労働契約︵浮瞬塁き①器羨窪薦︶のような特殊な労働契約法の規定もあるが、労働契約の一形態である出来高給契約、

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歩合給、利潤分配請求権等についても規定し、また使用人発明権・著作権の帰属、労働関係の移転・承継についても 特別な規定をおいた。        ︵1︶  労働時間・有給休暇、労働災害・傷病のような労働保護の規定もまた、私法上の関係として規定されている。  公法たる多くの労働保護法が、私法関係として置替えられた部分もあるが、その大部分は依然として残存すること、     ︵2︶︵3︶ 論をまたない。  本稿では、現行スイス債務法の規定と改正案とを比較対象し、改正案の重要な規定を訳出しながら、法案のもつ新 規な意義を分析し、追跡批評︵O・αQ欝Φ爵三欝。富淳透亀§αq︶してみたいと思う。 ︵1︶  &  b  C  d  e ︵2︶  a  b  C  d 公法たる労働保護法が、これを私法化することによって廃止されるものもある。 一九四〇年一二月二百・家内労働法 一九四一年六月二二日・商事外商雇入法 一九二年六月二二田・災害・傷病保険法一三〇条 一九六四年三月ニニ日・工業・産業及び商事労働法六四条・七二条∬ 一九六二年三月二三日・私保護法四九条 連邦の労働保護の公法として注目すべきものを挙げれば、 一九一四∼二七年六月一八日・工場労働法 一九二二年六月二六摂・給料支払及び賠償金法 一九二二年三旦三日・産業に於ける婦人、少年使用法 一九三八年六月二四日・労働者最低年齢法 スイス労働契約法改正法案について 例えば 一九

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ε墓{e東

も絵 9α鵠落薦のび 鮮 洋法学       二〇 一九四九年六月二二β・農業労働者等家族手当法 一九四八年一〇月八β・一九四三年六月二一二臼・労働協約一般的拘東宣言令 一九一四年六月一八爾・工場法第二条乃至一八条等 本稿作成については.<αQヅ誇餌壌ぎG o象墾¢ぎ㈹貰冨猶U霧跨誉の欝器。ぼ餌段O o畠墾Φ墜卜 。甲︾焦轡お訟’Oる 。。学     ○瓢蒔簿ε欝議。算ひ8●鋳無轡お8宰跡馨≦霞︷①置霧も っoダ奉欝段匿魯窪の霧ご籍欝塁簗︶禽︵欝︾艶誉⑲綜ω毒慧獲αqv 鱒R欝凸酬韓爵噴ぴ魚鏑聯凱鱗驚難︸鐙鎗二︾憎欝戴鳥の︾色P︾噌嘗鐸韓巽欝戦N驚黛!鱒麟購

浩 改正法案の要点

 周知のように.スイス債務法は詳しく言えば一九二年三月三〇羅.一九三六年一二月一八騰.並びに一九六三年 九月二〇日法によるものであるが.その労働契約については、ドイッ民法などと同様雇傭契約 ︵⇔巽蒙①蔓謬鋒謎︶ の名称で.第三一九条乃至三六二条の規定がもられている。改正法案は条文の表示数は同様であるが、条文に枝分を つけたので.実質においては二〇個条の本文と終結及び経過法等十数個をもつ.広汎な法案である。標題も近代式 に労働契約︵O騨勘げ簿繋鶏欝αq︶と改められる。 ㈲ 事実上の労働契約 ㎜ 現代の群衆取引においては.真に意思表示の合致なしに.債権債務の関係が発生すること.稀ではない。 有効

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な契約的合意に基づかない関係にも、十分な契約保護をみとむべぎ、二個の債務関係のあることを先づ考えられる。 その一つは、人の生活配慮のための定型的行為であり、賃率の定められた公衆取引、および公共経済的生活を配慮し た企業に関連する取引行為である。こうした、人間の生活に必要な供給給付行為においては、利用者は意思表示に代 わり賃率によって定まった条件︵公表の賃率の外、給付の一般的提供︶をのみ設備を利用することにより、事実上の契約 関係︵欝ざ零ぎく巽霞お巽①昏讐器邑が発生する。  二 労働法および会社法の範囲においても、労働関係、または会社関係における人的連繋は、その社会的事実のた めに、形式的有効な契約締結の有無に拘らず、これを保護する必要のあることは当然であり、既に種々の学者によっ     ︵4︶ て主張された。  各人はその勤労にたいし、相当の俸給をうけ、健康で文化的な生活を営む権利のあることは、憲法の保障するとこ ろであり、民主国家の基礎的思想である。この観念から演釈すれば、 ﹁何人も事業主の承知の下に労働に従事し、労 働関係あるいは人的連結関係︵霞お一民RきαQω︿①浮農畠邑に入って労働を給付したものは、相当の俸給・相当の労働 条件について請求権を有し、またその法的地位に相当する義務を負担する。同時にこの法的原則から、蝦疵ある労働 契約の場合でも、その初から終了にいたるまで、十分の保護が労務者にあたえられねばならぬ。﹂ 社会政策的および 経済政策的立場からの特別法における事実上の関係の私法的判断に当っては、公正・社会的弱者保護につき有効な契 約上の権利が認めたと同様な考慮がはらわれねばならぬ。人的連結関係は有効な契約関係と同様に、拘束性をもち、        ︵5︶ その法律上の保護があたえられると同様な保護がこれに認められねばならぬ。     スイス労働契約法改正法案について       二一

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   東洋法学      二二

 このような債務関係は、これを法律上の関係とみねばならぬ。が、法律のどの規定をみても、これに適応する規定 は発見されない。だから学説の多くや判例は、この事実上の契約関係を目して、純然たる事実上の行為から発生した 債務関係だと考えた。ある学者はこの法律関係を契約から生ずる債務関係と、法律の規定によって生ずる債務関係以 外の、第三種類の分類に属する関係だとし法律上の効力ある行為.あるいは法的関連ある行為による債務関係を認め ようとした、が必しも正当とは見られていない、事実上の契約関係を債務関係体系に編入するについては.未解決の       ︵銭︶ 間題というべぎであろう.  思 スイス法改正案第三二〇条は.この間題の解決に一つの鍵をあたえた. ﹁労務者が有効な契約なくも善意で. 事業主のために労務を給付したときは.当事者は契約の無効を理由とし.当事者の一方.または相手方においてこれ を終了させるに至るまでは.恰も有効な契約があった場合と同様に.その労働関係から生ずる一切の義務を履行せね ばならぬ。﹂ と定めたことは.学説−−判例の疑義を一掃した、近代的立法といわれよう。但し事実上の契約関係保護 の必要は、労働関係ばかりに止らず.借家関係.公共設備利用関係︵生活配慮︶その他の場合にも及ぶべきである以 上.事実上の契約関係をみとめる立法は.むしろ民法総則あるいは債権総則の規定中に.そのところを見出すべきで   ︵7︶ あろう. ︵4︶くαq轡  ψ器簿 ︵5︶ <αQ轡 め霧Φびω魯巳繕Φ3計きo。︾鉱轡お8■ψ認聖い銭①欝︸い①ぼゴ魯号ωω象鉱象①。び絆8︾紘一’一8トω輿H ω諄①苫穿ざa冨くの慧霊α貸c 。奉誉讐鉱馨︶際盆聲讐ρお㎝。 。も 。●G 。㎝←蜜広ω。rαぴ角鼠aω3①<Φ聴暴αqの<①マ

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 げ鐵欝一ω器’一〇①ω. ︵6︶<σq圃羅窃霧象段︸浮ωω。ぎ一響の。ぼ︸ω巴ぎお臼ω&ωや ︵7︶ 事実上の契約関係に関する理論は、現代の私法理論に重要な間題をなげかけたものである。これに関する学者の説  は、まだ確立されていない。新らしい考え方は、現代の事実関係を法的生活の実相に添うよう解決しようと試みる。事実  上の契約関係を、債務関係体系の第三体系に編入しようとする学説に反して、スイス改正法案は、これを法律の規定から  発生する債務関係として取扱ったものである。契約および法規的債務関係のあいだにはさまる不明確な体系に属するもの  として取扱うよりも、一層明確である︵<αq︸噂鷺ぎ霧魯2簿帥ρ¢親︶。   ⑧ パートタイム労働︵8亀疑憂冨ε  人手不足、余暇利用のために、パートタイム労働契約がおこなわれるのが、現在の労働事情である。時間的に短 く、また機会的な仕事であるが、この労働形態も一般の個々的労働契約と同視して、保護されねばならぬ。 ﹁労務者 がある事業主のため規則的に、時間的な、半日的または一日的な、労働給付をする義務を負担する契約は、個々の労 働契約と看徽す﹂ ︵π二九条∬︶としたことは、実際の労働状況に添う所以である。これによってパートタイム労働者 も、一般労働者並みの保護をうけることになる。臨時工に代わり、。ハートタイム労働者を使用し、労働者保護の責任 を免れようとする事業主の意図は、この規定によって阻まれる。  パートタイム労働契約に関する規定は、スイス労働契約法をもって、噛矢とする。 スイス労働契約法改正法案について 三二

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   東洋法学      二四

  ◎ 出来高給契約  ︸ 従来の多くの労働契約法には.時間給契約の規定だけおかれて.出来高給契約については規定をかいていた。 労働契約における給料を労働の結果によって計算し.そのために費された時間の長さを顧みない出来高給 ︵と.圃.・噌伽、 豊惹辞︶契約制の条件・採否は.個々の労働契約.労働協約.または経費協約によって規則されるが、また一般の慣 行あるいは経営上の慣行によっても行われる。  しかしながら個々の場合に.当然に出来高払仕事を命ずることは.労務者の身体上の理由.あるいは健康上の理由 から.適当ではない。     当然に出来高給付仕事を要求することはでぎない。労務者は.労働契約上の合意協 定等のある場合のほかは.出来高払仕事を引受ける義務はないのだ.  出来高給の額は、労務者の給付の結果に懸るものだから.労務者が僅少な結果だけしか作出し得ない場合の危険 は.労務者が自ら負担する。労務者は.同等の仕事を時間給で仕上げるにはより高額の時間給を得たであろうとして も.そうしたより高額の給料を事業主に請求することはできない。尤も労働者の立証により.事業主が仕事を与え ず.あるいは澱疵ある経営上の措置により︵例えば原材料を十分に供給せず、蝦疵ある材料を供給し.あるいは仕事の指図に 誤りある場合︶、僅少な仕事の結果しか得られなかったことが明らかになれば.労働者は作出した出来高仕事よりも、 高額の賃金の請求ができねばならぬ。  労務者の収入確保のため、労務者には各時間に対する最低所得が保障されねばならぬ︵詩婆窪器浮窪一藷ω浮霧9 が.労働者の労務給付が.所定の結果を得られなかった場合でも、保障賃金は得られねばならぬ。

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 出来高給仕事の結果の不完全︵≧馨穿邑が、労働者の責に帰すことのできない場合には、仕事が完全な場合と同 様な、出来高給が支払われねぼならぬ。労働協約等によって、原資材等の暇疵により、仕事が十分に仕上らない場       ︵8︶ 合、費した時間に応じ、平均的出来高給を支払うよう定めることが望ましい。  二 こうした出来高給契約については、スイス債務法は近代法の姿をもつものとして、既に旧法にも ︵三二九条. ⋮三条︶その規定をおいたが、改正案は ︵笙三九条王・三二六条。三二六条a.三二七条︶ さらに詳細な規定をおい た。  ﹁労務者が契約により一人の事業主にたいしてのみ、出来高払仕事だけを給付すべき場合には、事業主はこれにた いし十分な仕事をあたえねばならぬ︵三二六条王︶。  事業主が自己の責に帰すべき事由によらず、契約上の出来高給仕事を、労務者に与えることができない場合、ある いは経費の事情により暫定的に時間給仕事を与えるに至ったときは、事業主は労務者にたいし、定められた時間給を もって、かかる仕事を与えることができる︵三二六条豆︶。  事業主が出来高給仕事も、時間給仕事も十分に与えることができなかった場合には、事業主は受領遅滞に関する規 定にしたがい、時問給仕事を与えたときに支払うべき賃金と同様な賃金を、支払うべき義務がある﹂︵三二六条斑︶と 定められた。  ﹁労務者が契約により、出来高給仕事を給付すべき義務がある場合には、これに対し事業主は個々の仕事を始める 以前、予め出来高給の割合︵と︽ぎ&螢霧欝︶を、労務者に知らせねばならぬ。    スイス労働契約法改正法案について      二五

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   東洋法学      二六

 事業主がこの通告を怠った場合には、事業主は、同様または類似の仕事につき定められた割合による賃金を、支払 う義務がある﹂︵三二六条a︶。  労働協約によって定められた時聞給の高低が変更しても.その結果.ただちに出来高給の割合に変化をきたさな い。労働協約に.出来高給の割合を確定する定めがない場合には.その変更は.事業主において一方的に行なうこと はできない.労働協約・経営協約.または個庸の労働契約によらねばならない。一方的に行なうとすれば.事業主は 先づ労働契約を解約し、更めて合意する外ないのだ.  議 出来高給契約は、本来同様の製品を作出評価し、費される労働時間を正確に計算評価しない場合と. ︵、届れを 個贔繊来高給寮たは金銭蹴来高給撫 肇蕪鮮6︵響蒙釜騨嚢伽という︶. これにたいして.時間的出来高給︵繋欝鐸議らの場 合とがある。この場合出来高給の計算にあたっては.個々の仕事の結果に実際何時間を要したかを顧みず、予め定め た時間の単位︵ぎ欝訂魯︶が、計算の基礎となり、この時間単位に賃金率を乗じた額が出来高給として算出される。  時間的出来高給における労務者の所得は.時問的要素を考慮に入れた生産高に従う。換言すれば金銭的要素と、生 産個数とが考量される。時間的要素は.通常の労働給付により各個の仕事作出に必要な時間数を計算し︵浮蕉爵糞︶、 且つ各時間につき予め定められた一定金額︵多くの場合時聞給の一割乃至二割の割金の金額︶︵9蔦舞§︶を考量して、個 々の仕事の報酬が定まる。  個品出来高給と、時間的出来高給とのあいだには、本質的な差異は存しない。個品出来高給契約の場合には、時間 的要素は外部には表われない。時聞的出来高給契約の場合にも個品出来高給契約の場合と同様、報酬は一定の労働結

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果の作出にかかっている。  出来高給制度は、どの経営にもこれを受入れる訳には行かない。個々の仕事を出来高給化するためには、仕事の範 囲および作業時間が正確に限界づけられ、また確定されることが可能であることを前提とする。だから例えば、高度 の精神的行動を必要とするような仕事には適当とされない。この制度を移入するか否かは、専ら経営者の決意にま ︵9︶ つ。  四 複数の労務者が、出来高払仕事の集群に組入れられ、共同の労働給付をなし、共同の報酬を得る場合を集団的 出事高給契約︵○把毛窪6α﹂塗。蒙讐鋤葬・&︶という。明らかな合意のないときにも、一定の仕事に協力する労務者の 協力行為により、所得の額を決定する給付結果がより十分に得られる場合には、集団的出来高給労働があるものと推 定すべぎである。  経営における労務者を集団結成に密着させ、集団出来高給作業を行なうか否かは、事業主の決意による。しかしな       ︵鐙︶ がら、これにより集団員の個々の人々に、特別の不利益をきたさないよう。配慮せねばならぬ。  スイス労働契約法草案は、集団的出来高給作業に関する特則をおかない。第三二六条等の規定は、当然に集団出来 高給作業にも適胴される。    ︵8︶<αq一。ご ご。ぼ・壽江冒ω≧ぴ魯ω§ダω◎一ミきZ蓉の。7貯蜜鋒①。ぼ臣リゲω”︾焦二8一ψωおR額塗8・β     留の︾誉働畠冨︸旨ω︾びRαq●<じζ黛諾7ω色薯齢お8.ψ麟︷漆ζき。一屡ぴN①三〇プφ仁&︾鉱6&一〇ぎ︾勺奏邑①鉱○ゲ同ピお零’    ︵9︶ 賃金が、給付した労働の時間数によって計算支払われる場合に、労働のテンポが急がれるとぎ︵例えばベルト・コン    スイス労働契約法改正法案について       二七

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東洋法学      二八

 ベイヤ作業瀬講器導①搾の場合︶であっても、労働者の所得が、高度の給付によって直接増加しない以上、時問給契約  たるに妨げない︵くαq一・2涛警ダ鉾騨9ω・ωミ︶但し出来高給仕事の作業を助けるために.流れ作業を利周する場合に  は、轟来高給契約の性質を変えないと解される。 ︵鎗︶ 集団的嵐来高給労働がおこなわれる場合、仕事の指図集団の組成・賃金の受領・分配︵この点に関する組合の合意に  より︶の事務を代って行う組長︵○嚢題窪略鷺震聲<○獲誉魯嚢︶を定めることが望ましい。   この楊合全体賃金の分配方法について.集合的の舎意が行われてないときは、労働唐闘においで.特別な禽意をせねばな  らぬ、         .労務者の内部関係である賃金分配率には及ばないからだ︵<鷺璽難総欝鈴脚誌︶。   集団的鐡来高給契約はわが國の鉱霞界では行われるもののようだが.スイス園では.こうした労働慣行がみられないた  め.これに関する特則を設けなかったものか、暫らく疑問とする.   ◎ 労働器具・材料の補給義務  労務者が仕事に従事するについて必要な器具︵簿幕謬禽餌◎.材料は.事業主側からこれを供給する義務のあるこ とは.新旧法同様である。が.労務者が事業主の同意を得て.仕事の遂行のために自ら労働器具、あるいは材料を使 用したときは.特別の合意あるいは慣行のない限り.事業主は相当の補償をせねばならぬ︵三二七条︶。  また必要な立替をしたときは、これを賠償する義務があるが︵三二七条a︶.労務考がいわゆるマイカー族としてそ の仕事のために自家用自動車を使用した場合には.企業の経営・維持に必要な限り.仕事のために使用した程度に応 じ、補償される。自動車にたいする公課、責任保険の保険料についても、同様である︵三二七条b︶。  自家用車利用が多くなる現代の実相に添う規定というべきである。

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  ⑧ 労務者の注意義務・忠実義務  [ 労務者は、与えられた仕事を注意深く遂行し、事業主の正当な利益を、忠実に守らねばならぬ。  労働関係の継続中、労務者はこれによりその忠実義務に違反し、殊に事業主と競業する以上、また第三者のため有 償にて、労務給付をしてはならぬ︵三一二条a︶。  労務者が、労働関係の継続中経営上の事案あるいは経営に関連する事項であって、その機密保持が経営の保護・利 益となる事項を、他人に不当に通告することはその忠実義務に違反し、仮令過失により漏洩したとしても、責任があ る。換言すれば労務者が労働関係の結果、信頼をうけ、あるいは知るにいたった営業上の秘密、または経営上の秘密 を不当にも、競業の目的・自己の利益のため、あるいは経営者に損害をあたえる目的をもって、他人に通報する行為 ︵O魯①ぎ募奉轟&は、特別法によっても損害賠償の原因ともなるが、民法でもこれを明規された︵瑞債三五六条︶。  改正法案は︵喜二条b皿︶、 この点につき﹁労務者は秘密とされた事項、例えば生産秘密および営業の秘密にし て、事業主の労務に従事中知り得たものは、労働関係継続中はこれを自己のために利用し、あるいは他人に通告して はならない﹂。と定めた。  こ こうした営業上の秘密︵の。ω魯弾詔。ぽ首募邑は、もっぽら商人の経済上の活動につき存するが、生産上の秘 密︵評ぴ蔦ζぎ誘αq①幕ぎ畠邑は、主として技術的および対社会的活動領域に存する。これらの秘密として考えられる ものは、例えば得意先原簿、仕入先原簿、原価計算書、契約準備書類、締結書、入札申入書類、図型・模型、設計     スイス労働契約法改正法案について      二九

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   東洋法学      三〇

書、発明、著作、機械建設の技術図書類にして、著作権、特許、意匠、実用新案法の保護をうけ、またはこれを受け ないものをも含まれる。  労務者が職務上知り得たものでなくとも.偶然に入手した秘密であっても、これを他人に洩らした場合は.忠実義 務違反となる。労務者に競業目的・自己利得あるいは事業主に損害を与える農的がなくとも、お喋り、法螺ふきにま かせて.秘密を他人に漏洩することもまた.忠実義務に違反することとなるであろう.  いづれの場合においても.これを秘密にしておくことが.事業主の正当な利益にそ整所以であること.ならびにそ の確保が事業主の意思であることを要する。事業主が、既知の手段をその経営で用いていることを他人に秘す利益も また.事業主の保護さるべき正当な利益といわれよう、  三 労働関係終了の後においても.労務者の秘密厳守義務︵謡暑ダ釜鴨器鳳葎簿︶は存続するか否か.疑もあり争 われる。何人も労務者の生活を不公正に拘東することはできない以上.正当な方法で取得した知識を労務者が利用す ることは.許されねばならぬ。  事業主が労働関係終了後も.労務者に秘密厳守義務を課せようとすれば、特に合意にまつべく.かつこれには相当 の報酬が保障されよう。特約されることによって、両者の利益が調整されるであろう。ドイツ法の説明によれば.労 務者が労務に従事中獲得した経験であって、一般にこれが自由利用を許されるものと、経営の特別な事情から取得し た知識であり.労務者が引続き秘密義務が認められるべきものとに区別して、労務者の自由と義務とを調整しようと       ︵獄︶ する。だがこの区別を劃すことの困難のため、この説は採弔され難い。

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 この点の疑問を、法案ははっきり解決して、 ﹁労働関係終了後においても、事業主の正当な利益を保護するに必要 な限り、労務者の秘密保持義務は存続する。﹂︵三一コ条、皿︶とした。報酬の支払を条件としないところに、労務者の        ︵12︶ 利益にたいする考量が足りない憾みがある。 ︵n︶ <αQ一.9のN﹂⇒瀬の3。ぼ5︷彊増鎖a①ヨ黛P這ω○ 。o o”器O■器江の。ゲ簿艦頭●Qψ臨①● ︵⑫︶ 秘密保持義務が、事業主にとり特に重大である場合には、労務者に秘密通告の正当な利益がない限り、厳守されねば  ならぬ点に、両者の利益調整の鍵がある訳である。それにしても、労務者の生活利益を保護する必要を考えるときは、こ  の義務は、労務者に相当の補償をあたえることを条件として認めるのが公平である︵<αq一、家一含9念③︶。  労働関係が終ったのちでも、その残影をみとめ、労働者になおその関係えの顧慮をはらうことをスイス法は要求した訳  である。   ㈲ 収賄禁止の問題  営業上の経営においては、その使用人あるいは受託者が、業務上の取引にあたって、贈与金その他の利益を要求 し、約束させ、あるいは受領し、これによって他人が商品の納入、その他営業上の給付に際し、特別な有利性を他人 に与えることは、忠実義務に違反し信頼を裏切る姿である。労務者側から要求したのではなく、第三者側からこうし       ︵爲︶ た有利を労務者に提供した場合には、これを拒絶し事情によってはその旨を事業主に告げるべきである。 労務者の忠実義務違反によって、事業主に財産上の損害を生じたときは、これを賠償する責任がある。    スイス労働契約法改正法案について       三一

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   東洋法学      

三二  労務者が受領した賄賂は、これを事業主に引渡すべきか否かについては、異説もある。そこで改正草案は事業主に その旨を告げ.かつ受領した金晶等は総て直ちにこれを引渡すべきものと定めた︵三二一条b︶。 ︵欝︶<α磯團。慧臨欝魯”も 毒い麟鴇脅瓢器緯︶欝ぼダゲも ○“継 轟駆ρ③餅欝饗も 。硲々’賄賂の意義は、余りにこれを拡張することはできな  い。社交上.叢たは取引の慣習上行われる無害の闘常の贈答贔.チップ・心付けの如ぎものは.背後に特別の意味をもっ  て受授されるも分ではない.多くの商人は.その取引先または得意先に.ク夢スマス・申元・記念蓼粛鳳の他の機会に.贈  答贔と して少額の金贔を贈ること膜々である、反之.それ以外に.前述のような意思で為された出掲は.慣習上のものと  は認められない、   ⑥ 利潤分配講求権  ㎜ 営業上の利潤に.株式会祉の重役等が.賞与または利益分配︵浮讐一窪や欝蔑蒙ぴの鼠凝§αq︶の形式で参加す る場合は.付従的報酬の一種であり.有利な営業利益をもたらした営業活動の労にたいするものである.したがっ て.営業の結果に直接左右され.また業務上の地位に対応する。通常全企業が獲得した営業年度の純利益の割合に・感 って計算支給される、  企業上の純利益を確定するのは.一般の商業上の原則にしたがい、年次貸借対照表の記載による。  利益分配は労働報酬の一部であるから.労働協約・経営協約.または個々的の労働契約によって合意されねばなら ︵羅︶ ぬ、

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 一般に利益分配の目的は、労働者をして企業の経済的結果に参加させることにより、労働者をして強く経営の発展 に連結させ、その経営の経済的発展は労働者の利益にも通ずることを理解させるにある。労働者が進んで積極的に緊 張した作業に従事することにより、企業に物質上の有利をもたらし、原材料を節約する。かくて経営手段の使用に注 意することは、自己の労働成果は上り、やがてそれが直接慮分にも分配されるという感情は、第一に階級酌・社会的 緊張︵ω。N巨①9器葛お︶を緩和するに役立つ。この制度は労働者の共同決定権9駄菩塗嘗9巷σq器。簿︶とともに、労使 の共同体︵評旨糞ω。訂εの樹立をたすける。尤もそれは、精細な正当賃金︵象お魯罵冒ぎ︶の一種であり、社会正       ︵蛎︶ 義に適う制度ではあるが、賃金関係を変更して、労務者をして共同企業者︵墨9器導魯馨噌︶たらしめる形ではない。  二 株式会社役員にたいする賞与︵欝呂窪霧貰8塁亀蜘、&蝕鋒呂霧窪欝8毯の一乙。誓邑豪鷺①︶の形式で、利潤 分配することについては、株式会社法の最新の立法では、あきらかに条文化されているが ︵フラソス商事会社法第三五        ︵鳩︶ 条、西独株式会社法第八六条︶、一般労務老にたいする利潤分配制を規定した労働契約法の立法は、まだ見られない。多 くの制度のように、それを全く当事者の合意や労働協約、または労働慣行にだけ委ねておくよりも、これが規整を一 応法律の中に設けることは望ましい措置である。  改正法案︵三二二条&︶は、 ﹁労務者が契約により企業の利益または所得、あるいはその他の営業上の結果につき参 加する権利をあたえられたときは、他に特約なき限り利潤参加の計算は、法律の規定ならびに一般にみとめられる商 人的原則による営業年度の結果にしたがう。  事業主は、労務者または合意によりこれに代わる専門家にたいし、または裁判所の指定した専門家にたいし必要な     スイス労働契約法改正法案について       三三

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   東洋法学      三四

説明をあたえ、また検査に必要な限り、営業帳簿の閲覧を許さねばならぬ。  企業上の利潤参加が合意された場合には.事業主は労務者の請求により、営業年次における損益計算書の謄本を交 付する義務がある。﹂と定めた。  利潤分配制.即ち資本と労働との結合を経営上の生産性の犠牲で無理に法律や命令だけで確立することは、無駄な      ︵鐸︶ 骨折蔭である、利潤分配制も当事者の合意を前提とした制度であり.合意なくも強行される程強い制度ではないとい う.中正的態度を改正案が採用した訳である.       多くの次元において両当事者を平等に取扱らことにより調整される.そして両当 事者の平等な体制は.多くの場面で可能であり.また必要でもあるが.利潤分配と労務者の共同決定権とは.両者を 平等の立地におき.階級的困難︵難霧亀邑黛鉱野︶を調整するに有力な手段であることは疑ない、  だとすれば.改正法案の蹴かでは.利益分配制とともに.労務者に共同発需の場所をあたえる.何等かの規定がほ    ︵πa︶ しかった. ︵掻︶ <αq圃ー野嘗9貫ぎO器︾誉魯鐙象簿“も っ﹂犠酢利益分配の経済政策的意義については.<纂審讐零望Φ○強慧?  ぴ簿蝕桐蒔蕪蝿餌鶏艶誉Φ鴎躍鉱︸導簿”N黛陣巳︸お朝9 ︵焉︶ 利潤分配制度については、︸九世紀末から多くの経済学者、法学者によってその導入が幅道された。そして多くの経 営においても採用されたが、その組織は一様ではない。また労働組合の多くは、常に利潤分配制に反対の態度をとってい  る、︵くαQ野︾3鷹タ.①び探ご禽図霧・驚繋三ω魯窪溶巷騨鋤琶瓢︾導①搾ぢ緯’③︾焦一噂ψ器はじ経営上の共同体は、

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 共同作業と共同責任の体制であり、共同に知る権利・共同に発言する権利および共同に決定する権利が活発に作用する制  度である。かように、経営を社会的の組織・細胞と考える経営観念は、各種の型を産みだす。西欧の近代においては、自  国独特の制を、また英米の先例にならった共同体のシステムが複雑に行われる。利潤分配制もこの体制の中で考えられる  べきであるQ ︵○の辞φωゑ&冨び竃搾弩$醤9鷺霞9舞ψ豫。︾Oq箆○雲ω象曾勺象露震ω3織二響浮鼠魯■お㎝伊  <○箸o塁9ψ8じ共同体の思想は、利潤分配と共同決定権に発源する。 ︵絡︶ 西独株式会社法については、東洋法学十巻一二号、九巻二三号拙稿参照。 ︵17︶ <αq轡≦のび段・斜鋤。ρω G o旨’ ︵ηa︶ くαq歴霞&①爵○庶ー○○ぎαq−ζΦωけ簿似。落昌頃霧茜魯Φ惣冠譲色筥駄魯鋭8霧8陣p一〇①刈ψωo o,

  ㈹賞与の間題

 一 賞与︵9魯津&8︶は事業主が労務者にたいし、俸給外に一定の機会︵日本では盆・暮、ヨ!・ッパではクリスマ ス、新年、開業十周年等の記念祭に際して︶に際して、平生の労務にたいする報酬の一部として支払われるものである。 附随的報酬ではあるが、贈与ではない。事業主が労務者の十分な労務給付と営業上の利益に、また事業主と労務者間 の関係の好転に満足しているしるしとして、支給されるものである。  この附随的報酬を労務者に当然に支払うべき、一般的規定はない。この支払請求権は労働協約・経営協約または個 々の労働契約、あるいは経営における不断の慣行によって基礎づけられる。  二 賞与の額・条件等も行われた合意の内容による。が、これを事業主の一方的決定に委ねた場合でも、事業主は     スイス労働契約法改正法案について       三五

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   東洋法学      三六

公正に.また信義則にしたがってこれを定める自由をもつ。経営が困難となり.賞与金の支払を要求することは、経 営に重ぎ負担となり、社会通念上これを予期し難い事情のある場合には.事業主は賞与の条件を変更し.または額を 減額.あるいは全く支給しないことも許される.但し客観的な妥当性を欠ぎ.事業主の恐意に放任されることは不可        ︵揺︶ である.だから.例えば労働組合運動に従事する者を差別待遇するごときは不当である.  ﹁事業主が賃金に附随して.一定の機会例えばグジスマス祭.営業年度末に際し.特別報酬を支払う場禽は.︸・の 合意あるとぎに限り.労務者はこれを講求することができる。﹂︵三釜秦縫︶と改正案は欝心た欝塗毒δ条を補 正。︶。  事業主は.また労務者の勤務振む、勤務年限によゆ差別を設け.賞与給与縫憲で在職する者だけに給与するとか. 解雇申入れをした労務者を除くなど.趨由に決定することもでぎる.  しかし乍ら.賞与が労働給付にたいする報酬である性質に鑑み.法案は部分的講求権あるものとし. ﹁特別報酬給 与の機会の到来する以前に.労働関係が終了しても.特別の合意ある場合に隈参.労務者は賞与の比例部分につき講 求権がある。﹂ ︵三芸柔遭冠︶ものとした、労務者の保護に適う規定である.  これらの賞与金給与義務は.右の特別の協定ある場合は.一方的に撤回することができる、協約等なき場合には.        ハゆレ 合意の方法にレよってのみ、消滅させることができる・ ︵鰺︶ <臓e峯一欝9 驚曾欝︶嘗o講蕪把も ○”露9窯讐窓マ娠 oaも︸暦簿騨薯︵副窪㌧∼益魚窮毒3鉾回8徹

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  最近、霞本生産性本部は、同所の生産性研究所の専門委員会のまとめた、 ﹁生産性・賃金・物価の関係についての理論  的考察﹂を発表した。同委員会がわが国主要六百三十六社︵資本金三億円以上︶の回答をもとめまとめた、生産性を上げ  た労働者えの利益分配状況は次の通りとなっている。  一、生産性成果をなんらかの方法で従業員に分配している企業、または分配方式を採用しようとしている企業が過半数に   のぼる。  二、利益分配方式を採用している企業の実際の分配形態は、ほとんどが賞与である。  三、分配方式の基礎となっているものは、利潤・付加億値、生産額・生産量、またはこれらの組み合せなどであるが、そ   の多いのは利潤と付加価値である。    こうした調査によって明らかなように、労働者えの賞与は、利潤分配の一方法となっていることである。    そして分配方式を採用した目的・動機は、労使協調・労使関係の安定が三九二%、労働意欲の向上一八・六%、生   産性向上一七・五%となっている。 ︵昭四三・六・二〇・日経紙所載︶。 ︵19︶ R.猛露ω魯9ω。虹愈   ① 歩合給の問題  一 歩合金︵汐・︿葱8︶とは、労務者の媒介または締結した個々の取引の価値にたいして、事業主から労務者にあ たえられる歩合給である。多くは、価値の割合をもって計算される。通常は商業使用人︵殊にセールスマン︶がうける 定額の賃金以外に、これに附随して、仕事の成績によって計算給与される賃金である。独立の代理商の行為にたいす る報酬にも、この方式をとるのが常である。  歩合金請求権は、契約関係存続中に締結媒介された取引にたいするものであり、その契約の成立が専ら労務者の努     スイス労働契約法改正法案について      三七

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力による場合に発生する、但し当事者の特約により、労働契約関係終了後にも.その誇求権が存続するよう定められ ることがある。  取引が労働契約関係終了後に締結された場合でも.労務者がこれを媒介し.または専らこれが成立に努力し、準備 し.その成果は労務者の行為に帰すべく.且つ契約終了後間もなく取引が締結されたものである場合には、労務者に        ︵齢︶ 歩合金の講求をみとめるのが相当である.  二 歩合金の誇求は.事業主の契約相手方︵法文はこれを第三者騒戦鶯葺欝と称する︶が.その義務を履行した場合 に.はじめて発生するものと定められるのが常である.歩合金はその本質上結果的報酬であるので.労務考は第三者 の履行についての危険をみずから負担するものだ.  事業主が第三者と取引行為を締結し、その義務たる給付を為した場合には、仮令第三者がその義務を履行しなくと も.歩合請求権は発生する、事業主が.正当の事由なくして自己の義務を履行しなかった為め.第三者が履行を拒絶 した場合には.労務者は自ら危険を負担せず.歩合金の請求権を失わない筈である.  これらの関係にたいする改正法案の立場は次の通りである、  ﹁一定の取引︵欝鉱ぴ塗圃慧緊窪9・ ・魯響窪︶ にたいし.労務者に歩合金が約された場合には、第三者との取引が有 効に締結されたとき.その請求権は発生する。  段階的に履行︵σq婁蝕魯嚢浮窪ζ・臓︶される取引、ならびに保険契約については、一部分毎の歩合金請求権が、そ の各期βの到来あるいは取引上の各給付履行の時に発生するよう、書面をもって定めることができる、

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 取引が事業主により正当の事由により履行されなかった場合、あるいは第三者がその義務を履行しなかった場合に は、歩合金請求権は事後的に消滅する。一部履行の場合には、歩合金はその割合に応じて減額される。﹂︵三二二条b︶  なお事業主の計算書作成義務・説明義務・書類の閲覧許容義務についても規定した。︵三二二条。︶、 ︵20︶ 労務者が商事代理商となる場合、この規定が強く必要になる︵<αq一.ω貰旨冨。〒U鼠窪・類昏留一茜8①臼ゴ魯・§  ︾魯﹂霧9留刈・ψ翫一︶。直後間もない相当の期間という相当の期間は、当事老の取引界の通念によって定まる。  ︵ω。ぼ呂①さ︾妙饗謡鍔吻o 。刈鎖○じ u■︶   第三者が契約を解除し、給付の変更・減額を請求し、その他その給付を故なく拒絶しても、歩合請求権には消長をきた  さない。事業主の立証により、取引の履行が、自己の責に帰すことの出来ない事情により不能となった場合、または社会  通念 上履行が予期できないこと闘らかになったとぎは、歩合金請求権は失われる。  三 歩合金の割合は当事者間の定めによるが、定めなき場合は一般に通用する割合による。結果による価格︵取引 の価格、即ち第三者の支払金︶は、勘定書の記載にしたがう。  歩合金の計算は、個々の取引毎になされず、一定の期間︵例えば一ヵ月、または毎週︶ にとりまとめて行なわれる。 法案には計算期間︵︾ぼ①。ぎ毯αq嵩蝕貫器濤︶の定めがない。当事者の特約によるほかないが、余りに長い期問は殊に労 務者の不利をきたすので、立法の介入が望ましい。  歩合金は、固定給の支払とともにすると否とに拘らず、賃金たる性質に変りはない。歩合金の最低額が保障され、     スイス労働契約法改正法案について       三九

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あるいは歩合金以外に諸手当が約されることがある。  歩合金講求権は、通常取引行為の締結によって発生するが、これを事業主または第三者の履行に条件づける.篇とも できる。  労務者が媒介または締結以外に、取引行為の履行についても責任を負担し、その結果の履行につき特別の報酬講求 権︵簿騨鑑難魯懸滋馨呂︵例・責任集金手当︶をもつ場合がある.注意深く得意先ぎの信用確実性︵鱒戴圃欝欝瓢鉱曝δ を信じ.これを保障したことにたいする.特別の報酬である.労務者が信用性調査義務を怠む.事業主に損害をあた えた場合には.取引行為を為させたことに対する責任︵取引行為に対する消極的利益︶があるが.第三者の義務履行を       鞍▽ 保障する責任︵鞍舞欝灘驚魯罫餐畿︶は.特別にこれを定めねばならぬ︵企業が取引行為に対する積極的利益︶、  歩合金の計算として、改正法案は次のように定めた.  ﹁契約により.労務者にたいし歩合金の計算書作成の義務を課さなかった場合には、事業主は、各歩合金支払時期 毎に、歩合金を支払うべき取引行為を明示した計算書を交付せねばならぬ。﹂  ﹁事業主は.労務者またはこれに代るものとして共同で定めた尊門家、あるいは裁判所により定められた専門家に たいし.必要な説明をあたえ.また調査に必要な限り計算の基礎をなす帳簿、および文書を閲覧することを許さねば ならぬ。﹂︵三二二条c︶、 ︵瓢︶ <鴨欝鶯導ぎ魯−O&2ダ≧き幹繋一、留③び譲の讐 ご“

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  ① 事業主の遅滞等  事業主の責に帰すべき事由により、労働給付が行われず、あるいはその他の理由で、労務給付の受領が遅滞に陥っ たときは、労務者から事後に労働給付がなされなくとも、事業主に賃金の支払義務のあること。並びに労務者が労務 給付を履行せぬことにより節約した金額、または他に労務給付を為したために取得した金銭等は差引ぎ減額計算され ること、及び労務者罹病等の際の賃金支払義務については、旧法︵三三二条・三三五条︶がこれを規定しているが、改 正案も、略同様の規定を設けた︵三二四条.⋮西条a︶。  女性労働者の妊娠・分娩の場合には、病気の場合と同様に取扱われる ︵三二四条a斑︶。但し労働災害の場合、労務 者がスイス災害保険所により強制的に保険され、かつ事業主が保険料の支払を負担したときは、賃金の支払はされな い︵三二四条b王。︶   α○、労務者の一身上の保護および休暇  労務者の一身上の保護については、旧法三三九条および三四四条に規定されているが、法案はこの事業主の義務を 一層明確にし、事業主は労働関係において、労務者の一身を保護尊重し、その健康については、相当の注意を為しか つ風俗上の保護を配慮せねばならぬとした︵三二八条−︶。さらにこれを具体的にし、事業主は労務者の生命・健康保 護のために、経験上必要とされる処置をとらぬばならぬ。その処置は技術上使用しうるものであり、経営上、または 家庭上相当のものであり、また労働関係・労働給付の本質上公正に事業主に期待しうるものであることを要すと明規    スイス労働契約法改正法案について      四一

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した︵三二八条E︶。  家庭を共にする住込みの労務者にたいする事業主の食料、看護義務については、略旧法と同様の保護義務をみとめ た︵三二八条&︶。  旧法には、自由時問の規定があるだけで︵三四一条︶.有給休暇については.従来私法的規定がなかった.が.改正 法案は労務巻にたいし、年二週間乃至三週間の有給休暇をあたうべきこと.休暇の時期は事業主がこれを定めるが. 経営または家庭の利益の許すかぎ吟、労務考の希望を顧慮すべきものとした︵三二九条・三二九条農姦三九条b・三二 九条£・三二九条d︶

  ω労働証明書

 ∼ 獲本法においては.労働証明書︵貯慧露黛讐菖については公法上の規定があるだけで︵労働基準迭三条︶.外 国と異り私法たる民法または商法の規定中には.みあたらない︵独民さ二〇条、瑞西債務塗一西二条︶、  労務者が.その職業地位を求めるためには.従来従事していた仕事についての証明書がなければ、その就職は困難 となる。だから事業主は労働関係終了の際には.労務春の請求により労働証明書を交付せねばならぬ.証明書作成・ 交付義務は、事業主の労務老にたいする一身上の配慮義務から生ずるものであり.証明書作成の時期・種類およびそ の内容は、就職上重要な役欝をもつ。解雇の申入があった場合には、労務者の就職準備のために予め仮証書︵N&・ ・39 養の尊誘︶を発行することが望ましい。

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 労働関係の終了後、何ヵ月以内に証明書の交付を求め得られるか、各場合に応じ、その相当の期間を判定するほか ない。  証明書に記載される事業主の判断は、正当であり、労務者の一身上の事実に添うて正しく表現され、かつ事業主の 判断は労務者の行動の総合の上に行なわれる、個々の出来事または欠点、蝦疵は、労務者の給付または行状に著しく 影響をあたえるものだけが記載される。  証明書は労働者に好意をもって作成されねばならぬが、労務者に不利な事項を記載し得ないというわけではない。 理性ある正当な判断をする一般人に、期待可能の限度で記載されることが必要である。  事業主が、労務者の重大な欠点蝦疵を故意に秘密にし、沈黙した場合は、新雇傭主に対し、賠償責任をもつ。  二 証明書は、必しも事業主自身がこれを作成交付することを要しない。その名において、事業主の代理人たる支 配人工場長等において、作成交付することもできる。かかる履行補助者の行為については、事業主は自己の故意過失         ︵22︶ と同様の責任がある。  証明書に関する改正法案の規定は、比較的簡単であるが、証明書の交付は労働関係終了の時だけに限らず、何時に ても交付請求ができるとした。  ﹁事業主は労務者の請求により、何時にても労働関係の態様・期間、ならびに労務者の労働給付・態度を記載した 証明書を作成交付せねばならぬ。       ︵23︶  労務者の特別講求により、証明書の記載は、労働関係の態様・期間だけに限定される。﹂ ︵三三〇条8︶     スイス労働契約法改正法案について       四三

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東洋法学      照四

︵臆︶ <σq剛響鴬騨ぎダ鯵G 。縄履行補助巻の行為にたいする事業主の責任については、β本民法は独民二七八条のような萌  文はないが、同様に解される。 ︵23︶ ︾慧ぴ鉱鎌器話雛δについては嘱O︷2鮮綻魯◆O o零驚響罵oぼ象戴嘗界鉾ρG つ.鉢 o蕊鵠鱒け巽鮮霧傷象︾き①搾G喚蒜昏鐸  艶糞餅&魯巷餌鷲聲男乱働糞り麟○蓉蓉①馨鶏Nじ 箒○じ ご”密ω9   ㈱ 使用人発明権等の闘題  ∞ ∞ 労務者が.労働関係の範囲で為した発明︵>㌫鼎ぎ欝灘糞講欝瓢§繊︶が何人の権利に属するかは.多くの企業者 および発明的仕事に従事している労務者にとって、重大な意味をもつ.一般的にいえば.経営内で為された労務給付 の結果は.労務給付にたいし報酬をあたえ惹事業主に帰属すべぎ筈である.しかしながらこの原則は.労務者によっ て完成された精神上の創造的仕事であり.経営に全くあたらしい技術的開拓をもたらし.その生産性をいちじるしく 向上させ.あるいは経営に独占的地位を保障させるような労務給付の結果を、常に当然に事業主に移転させる.﹂とを     ︵震︶ 音心味しない、 ︵鍵︶ 労働老発明権の問題については、滝野文三・使用人発明権論・申大患版部刊。拙稿・使用人発明権に関する立法の基  礎聞題・法学新報六三巻八号、 覆江ω3,ら ゆ5閃9黛鳥寄9興り霧評讐餌翰︾誉魯器︸p蓉段段P盈餐αq窪ワG Q。身ら●  お伊Q 。、ぐ島︽蓉禽あ。ご署卑跨&魯器げ響①器欺欝鍵護G cαq①鶏黛麟︵溶○糞3の糞鍵︶お㎝o 。鯵ゼ巽幹霧魯ω︾戦ぴ魯段g一岩・ω・霧   國際競争の激化とともに、外岡企業との技術格差は、そのまま、輸患市場での敗退につながる。自社の技術的優位は、  特に特許権独占のもとに國際競争にうち勝つ絶対的切り札となる。したがって特許管理こそ今後の企業経営の墓盤とな

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る。資本自由化時代を迎え、自主技術の開始が一般と要求されているが、新製品を育てる特許管理は、職務発明規則の整 備・発閥の企業化・社外からの発明の吸収導入など、幅広いものとなり、使用人発明権の問題が最も重要になってくる︵通 産省・特許庁発表﹁あすを開く特許﹂ ︵臓経紙・昭四三・七。二.干所載︶。  二 諸国の立法は二〇世紀の初葉から、労務者発明権に関する規定をもうけ、事業主と労務者双方の利益を調節し ようと試みたが、両者の利害対立は容易に克服することはできない。その困難は、形式的にみればその対象が労務法 と特許法の領域に跨がっている所にある。立法の形式は.これを民法中に規定する国もあり︵スイス債務法三四三条︶、 特許法の規定中に定める国もあるが︵イギリス特許法五六条、オラソダ特許法第一〇条、イタリャ特許法二一二条・二六条︶、 新らしい立法は、これに関する特別法を定め、詳細な規定をもうけた︵例・西独一九五七・七・二五.使用人発明権法︶。  これを特別法で規定するということは、人的および物的の両関係から正当づけられる。人的関係においては、労務 関係にたつ労務者ばかりでなく、公務員兵役者にも及ぶべく、物的関係においては、特許法の対象となる特許権ばか りでなく、実用新案・意匠・商標権、また特別に法の保護をうけない発見・発明・経営または技術上の改良提案、文 芸美術の作品・スpーガン・演芸にも法の保護が及ばねばならぬ。  人的・物的関係の差異、また法文の形式に異るものがあるにせよ、従属的な地位にたちながら、技能的または精神 的領域における創造的仕事に従事する人問を保護し、労務義務履行に際しての正当な利益の調整をするという点に、 統一的法原理が存する。     スイス労働契約法改正法案について      四五

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四六  スイス労働契約法案は.旧来わずかに存した一個条の規定を改め、二個条とし.かつ保護の権利範囲も発明だけに 限らず.文芸・音楽その他の精神上の創作物におよばせたことは、立法上の一進歩ではあるが、独・塊法の詳細な規 定に較べれば人的および物的関係における規整未だしの感なきにしもあらずである、保護を.特許法上の発明だけに        ︵蛎︶ 限定しなかったことの功績はみとめねばならぬ。  ∞ 蝶 購来の学説の説明によれば.労務者の発明を分類して三つとす畷、齢.  裁 経営上の発明︵嚇緯器ぴ霧慕乱驚色 とは.ある発明が.経営の経験・補助手段・刺戟・前研究から強い影響を うけ完成され、したがゆて発明給付につき.特定の人物を確定することのできない場合の発明をいう.こうした発明 の権利は事業主に帰属し.発明に参加した労務巻は.発明者としては認められず.これにたいする特別の報酬請求権 をもち得ない。新らしい立法の保護はここには及ばない.  b 職務発明︵9窪器婆&毯磯︶とは.労働関係存続中になされた発明であり.労務者の義務づけられた行動から 生じ.あるいは経営上の経験労務に基づいて為された発明である.事業主の利益のため拘束され.事業主に報告さ れ・事業主の請求によりこれに帰属する、  職務発明は必しも労働関係にある労務者によって為されるばかりでなく.事業主の嘱託をうけ一般、あるいは一定 の発明に従事する技術者によって行なわれることがある︵委託発甥妻貧謎裟駿&馨αq︶。  c 自由発明︵富奮婆&仁お︶とは、職務発明でない発明である。労務者が原則として自分の自由処分に委ねられ た発明である。但し労働関係存続中為した自由発明については、事業主に速かに申出でねばならぬ、その自由発明が

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拘束さるべき発明であるかを、事業主に判断させるためである。  事業主が発明権を自己に帰属させたときは、労務者に特別の報酬をあたえねばならぬ。両者の対立する利益調整の ためである。  四 改正法案がこれらの問題について定めたところは、次の通りである。  ﹁労務者が労務の遂行にあたり、かつその契約上の義務履行中に発明を為した場合、またはその発明の完成に協力 した場合には、その発明が法的保護をうける能力あると否とを問わず、発明は事業主に帰属する。﹂︵三三二条工︶。  ﹁労務者が契約上の義務履行中ではなく、その労務遂行中になした発明は、事業主はこれを書面による合意によ り、自己に帰属させることがでぎる﹂︵三三二条豆︶。  ﹁右第二項の規定にしたがい発明をした労務者は、書面により事業主にその旨を通告すべく、この場合、事業主は 六週問以内に、右の発明を取得するか、あるいはこれを労務者の自由にするかを、労務者に通知せねばならぬ。﹂︵三 二二条皿︶。  右発明を労務者の自由にまかせなかった場合は、事業主は労務者にたいし、特別に相当の報酬をあたえねばなら ぬ。その額の確定については、総ての事情、殊に発明の経済的価値・事業主の協力、補助者ならびに経営上の施設の 利用、ならびに労務者の経営における地位を顧慮すべきである。﹂︵三三二条W︶。  ﹁労務者が労務の遂行にあたり、かつその契約上の義務履行中に、著作権に関する連邦法の意義における文芸・美 術の作品を創作したときは、特別の合意なき限り、かつ労働関係の目的にそうものである以上その利用権︵Z擦N暮αq。 ・    スイス労働契約法改正法案にっいて       四七

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奉3邑 は事業主に帰属する、  この場合労務者は.事業主の作品使罵権の行使を信義則に反する方法で妨げてはならぬ、  労務者がその労務の遂行にあたり.かつ契約上の義務履行中に製作した標本・雛型については、 あると否とにかかわらず.本条各項の規定が準用される。﹂︵三三二条&︶、 四八 その法的保護能力 ︵瓢︶      わが麟において毒.多♂、採用惑れているが.発麟などと同様に.労務者の精神的創造保護  の必要がこれにもみとめられてよい筈である。労務灘の発明・提案制度については.経営上細かい制度が必要となる。  ︵く畿圃勧諏姦︵貰鱒驚触搬鷺鷹毒灘櫛囎ぎ薦ハ圃慧鱒猟ぎ瓢毒撃法圃紘<Φ講農鷹謁雲捲霧蕊掌畿櫛緯蝕幕藤“鐙欝㈹圃9圃嚇有鶯驚  冠ぐ欝蕪感即瓢難蟄罵汰陣畿嚢◎も 農欝蒜鷺錨羅醗︶ス騨ーガンの保護については.艶蒸風舞廊O窪も δ9糞漣︵釜曇膿窪弊  驚 ご器⑳野睡O歌G ρ臥   ΦΦ 労働関係の移転  ∞   労働関係における当事者の交替が.いかなる条件・利害でおこなわれるかの間題は、事業主側と.労務者側と に分離して考えねばならぬ、  事業主側からみれば.労働関係では.労務者の一身上の事情は重要な要因である、労働関係においては、労務者が あたえられた労務にたいし、忠実有能であるか.企業の組織に入った人間とし、信頼を依するに足るか否かは決定的 な事項である。だから何れの労働関係にあっても、労務者の身上はふかく労働関係の発展に関連する、 ﹁労務は一身

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をもって、労務給付をする義務があること﹂が︵旧法三二七条、改正案三一二条︶、規定される所以である。だから労務 者に交替があった場合には、事業主は後継者とは、前の労務者との労働関係を継続せず、新たに労働関係を結ぶか否 かを考慮するのが当然である。  これに反して、事業主の交替の場合には、事情はまったく異る。事業主の一身の事情は、労働関係においては、労 務者の一身的事清にくらべて、その比重がきわめて薄い。労務者の交替の場合には、旧労働関係は当然に終了し、新 たな関係を設定せねばならぬこととなるに反し、事業主の交替の場合には、通常その必要はみとめられない。  労務者にとって重要なことは、事業主の一身よりも経営そのもの、あるいは経営の状況それ自身のほうが、より重 要である。経営主体の交替は労働者の職場地位に関連をおよぽすこと少い。  経営が他人に譲渡され、あるいは賃貸された場合には、譲受人または賃借人が、従来の経営で働いていた労務者を 引継ぐか否かは、当事者およびすべての労務者の利害に関する。譲受人は通常二、三の労務者幹部を交替・新任はす るが、既存の労働力をその後使用して、経営を継続しようとする。経営上の経験を生かし、新規採用の困難をさける ため当然である。  労務者の殆ど全部は、他に新たに職場をもとめることなく、引続き新事業主のもとで同じ職場に居残り、その経営 で引続き労務に従事することを望むであろう。そこで新事業主が労務者を引続き雇傭する場合には、企業の移転と同        ︵26︶ 時に継続した労働関係に立入ることとなる。これにたいし、その労務者は黙示的に同意をあたえる。  こうした通常の場合では、労使双方にその者の合意あることが必要とされる。だから企業譲受人が旧労務者の引受     スイス労働契約法改正法案について       四九

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けを拒絶したときは.労働関係の承継は行なわれないこととなる。全労務者をその儘.あるいはその一部を受入れる かどうかは、事業主の自由である。だが労働関係がそのまま承継されず.職場を失うことは、労務者にとっては.解 雇保護規定の基本観念に反し.冷酷すぎる結果である。  これに反し新事業主にたいし.経営組織のなかで経営に協力し.経営の維持発展のために労務に従事して労務巻を 受続ぐことを法が要求しても、甚しい不公正な措置とはいわれまい.労務者の交替について事業主は.たかだか.幹 部労務嚢の交替についてだけ.特別の利害関係をもつに過ぎないのが通例である.厨︶れらの問題のよぎ解決は.社会 的国家の理念に基づぎ労働関係が経営にたいして、準物権的拘束力をもたせる立法が考慮されねばならぬ.  二 企業における労働関係の場合には、複雑な組織関係があることがわかる.そこには.両当事者のたがいにから み合った権利義務の総体がある.企業譲渡の場合に労働の関係がその儘に同一性を保持する馳﹂とは.当事者の私法上 の関係ばかりでなく、公法上の関係︵労働者の保護.労働市場.経済上の安定等︶においても.望ましい.新企業所有者 が.自動的に労働関係に立入ることが要請される、        ︵解︶  この総括的債権関係の移転をみとめるのが契約承継︵証鋒おω欝。唖部繊、導。︶の理論である、  民法の規定する債務の引受または移転は.債務関係から発生した個々の講求権の処分に関する問題である、だが当 事者に代り第三者が債務関係に立入ることは、一般的に法律の規定が明規していない。しかしながら.当事者の双方 における債権的請求権および義務の錯綜は、債務関係から生ずる当事者のすべての地位を.そのまま総括的に移転す る必要が生ずる、近代の立法はこれをみとめる︵例・伊太利民法典第一四〇六条乃至一四一〇条は9隆。琴階囲8簿藁齢。

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      ︵28︶ を規定し、特種の性質をもつ法律行為とし、契約承継の制度をみとめた︶。  近世における債務拘束性の相対性の観念からすれば、新たに債務関係を設定せずして、債権関係を伝承的に譲渡取 得することを妨げるものではない。一つの債務関係から生ずる法的地位を総括に移譲することは、われわれの法体系 の中で決して不可能でもなく、また許されぬものでないことは、法が個々にみとめた実例 ︵営業譲渡、保険契約の総括 移転、相続、会社合併等︶ に徴しても明らかである。契約自由の原則は契約関係の総括移譲にたいし、十分な可能性と 合法性をあたえるものだ。だから多くの学説も契約承継をもって、三当事者における法律行為的行為であり、総括的       ︵弱︶ に債務法的地位を移譲する統一的行為であるとみるに至った。  移譲あるも、新旧の契約関係が法律的に同一性︵喜膝ぎ竃疑。馨凶聾︶をもつことは、相続や会祉合併の場合と同様 である。いづれの場合でも法律関係の内容は、依然として同様なものである。  契約承継説は企業譲渡の場合における、労働関係の移譲につき最も利用される説であるが、この法律行為的な契約 承継には、総ての当事者の同意が必要とされ、当事者の一方が契約承継に反対すれば、承継の効果は不完全となる。  三 こうした不満足をさけるためには、労働関係の移譲を契約的基盤から解放するほかない。そして企業譲渡の場 合には、新経営者は自動的に労働関係に立入るとの説が新たに高調される。  労働関係は、けっして単なる債権関係ではない。労働関係は、経営における労務者の法的地位として考えられるべ きである。そして経営所有者の単なる交替は、経営の同一性をかえるものではない。経営中にあり、労務に従事する 労務者の法的地位には変りがない。     スイス労働契約法改正法案について       五一

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 新しく、何等特別の合意を要することなく.継続中の労働関係に立入ってくる従前の労働条件.および労務者が経 営に従事することによって獲得すべぎ期待権も.そのまま存続する。新所有者が労務者との労働関係を存続させるこ       ︵3 0︶ とを欲しない場合には.法定または約定の解雇期間をおき.解雇の申入れをされればよい.  この所説には裁判所や.有力な学説は容易に賛成することを躊躇している.だからドイッ法においても.夙にその 立法による明確化がもとめもれている.一九三八年発表された労働契約法草案第九〇条では.次のような規定が提案 された.  ﹁経営が総体として他人の手に移譲された場合には.仮令その一部が取除かれ.あるいは個々の経営が廃棄された としても.新企業者は移譲の鷺とともに、既存の労働関係に立入る。旧来の企業者と新企業者間との合意により.右 と異る定めをしても無効である.﹂。       ︵溢︶  この草案は遂に成立にいたらなかったが.当然に現行法のなかにも生きていると説く学者もある。       ︵認︶  しかしこの草案の規定を.直ちに現行法上も同様とみることには反対者が多い。  フランス法においてはこの点に関し.一九二八年七月一九β法︵霧・鐸9留黛酵鍵琶二︶をもって、明確に積極 的規定をもうけた。  ﹁事業主の法的地位が変更した場合.殊に相続の結果、売買.合併、企業の変転.会社えの編入が行われた場合に        ︵3 3︶ は、変更の溝まで継続した総ての労働契約は、新規の企業者と企業従業員との間で、その儘存続する。  四 スイス労働契約法改正草案第三三三条は、新たに労働関係の移転につき.中止的な規定を設けようと試みる。

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