• 検索結果がありません。

狂犬病抗体検査の性能向上に関する研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "狂犬病抗体検査の性能向上に関する研究"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

Title 狂犬病抗体検査の性能向上に関する研究( 内容と審査の要旨(Summary) ) Author(s) 白石, 力也 Report No.(Doctoral Degree) 博士(獣医学) 乙第145号 Issue Date 2016-09-26 Type 博士論文 Version ETD URL http://hdl.handle.net/20.500.12099/55522 ※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

(2)

氏名(本(国)籍) 白 石 力 也(神奈川県) 推 薦 教 員 氏 名 岐阜大学 教授 杉 山 誠 学 位 の 種 類 博士(獣医学) 学 位 記 番 号 獣医博乙第145号 学 位 授 与 年 月 日 平成28年9月26日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第3条第2項該当 研 究 科 及 び 専 攻 連合獣医学研究科 獣医学専攻 研究指導を受けた大学 岐阜大学 学 位 論 文 題 目 狂犬病抗体検査の性能向上に関する研究 審 査 委 員 主査 岐 阜 大 学 教 授 杉 山 誠 副査 帯広畜産大学 教 授 鈴 木 宏 志 副査 岩 手 大 学 教 授 村 上 賢 二 副査 東京農工大学 教 授 水 谷 哲 也 副査 岐 阜 大 学 教 授 浅 井 鉄 夫 学位論文の内容の要旨 狂犬病は,神経症状を主徴とする致死性の人獣共通感染症であり,日本を含む一部の国を 除き世界的に確認されている。本病の原因となる狂犬病ウイルスは全ての哺乳動物に感染 し,特にヒトへの感染源としてイヌが最も重要であり,次いでネコがヒトへのリスクとな っている。このため,我が国では狂犬病の侵入に備え, 輸入動物に対してワクチン接種及 び狂犬病の抗体検査を義務付け,ヒトへのリスクが想定されるイヌとネコが主な対象とな っている。 狂犬病抗体検査において, ワクチンを接種したにもかかわらず抗体価が合格値未満とな った理由に関する問い合わせが多くみられる。また,ウイルス中和試験過程において, 被験 血清に由来する細胞毒性が発生し, 判定を困難にする場合がある。このように被検血清の 中和抗体価が測定できない場合, 測定不能との検査結果となり,本検査の信頼性を損なう 可能性がある。そこで本研究では, 規定に従って狂犬病ワクチンを接種されたイヌ及びネ コについて, 中和抗体価の推移を調べ, 最適なワクチン接種間隔及び採血時期の設定につ いての検討を行った。また, 被験血清に由来する細胞毒性の発生要因を追求し, その除去 法について検討した。 第 1 章では, 実験用イヌ及びネコ各 5 頭に狂犬病不活化ワクチンを接種後,中和抗体価の 推移を検討した結果, イヌ及びネコともに 2 回目のワクチン接種後, 概ね 7~14 日付近に 抗体価のピークがあることが明らかとなった。その後, 1 年以内に 3 回目のワクチンを接 種することにより, このワクチン接種から1年以上, 感染防御に必要な抗体価が維持され ることが示された。これまでに検査施設に送付された被験血清を用いて,そのワクチン接 種履歴から同様な検討したところ, イヌ及びネコともに, ワクチン接種間隔が 30~40 日 の場合にみられる抗体価のピーク(2 回目ワクチン接種後, 概ね 8~14 日付近)は, 実験 用イヌ及びネコにおける抗体価のピークと同様であった。以上より, 狂犬病抗体検査にお いて,イヌ及びネコともに, 狂犬病ワクチンの接種間隔が 30~90 日程度の場合, 2 回目の (1)

(3)

ワクチン接種後, 7~14 日を目安に採血すること,狂犬病ワクチンの接種間隔が 91 日以上 の場合, 2 回目のワクチン接種後, 14~21 日を目安に採血することが提案された。 第 2 章では, 狂犬病中和抗体測定の行程ごとに細胞毒性の発生要因を検証し, 細胞毒性 を未然に防止する方策について検討した。また, 実用性の観点から,本検査の実情に即し た効果的な細胞毒性除去法についての検討を行った。フッ化ナトリウム, EDTA-2 ナトリウ ム, EDTA-4 ナトリウム, EDTA-2 カリウム及び EDTA-3 カリウムの血液凝固阻止剤は, 推奨 使用濃度において増殖阻害型細胞毒性を誘導した。また,採血後の検体(全血, 血清, 血 漿)を 25℃以上で少なくとも 24 時間保管した場合には接着阻害型細胞毒性が発生した。 増殖阻害型細胞毒性に対しては本中和試験に用いる BHK-21 細胞による吸収処理が, 接着 阻害型細胞毒性に対してはゼラチン処理プレート, 次いでコラーゲン処理プレート使用が 高い細胞毒性抑制効果を示した。一方で, BHK-21 細胞による吸収処理により中和抗体価の 低下がみられたことから, 本処理は高い抗体価が見込まれる検体に限定して有効であるこ とも明らかとなった。以上, 被験血清の細胞毒性型に応じ, 細胞毒性除去法を選択するこ とにより, 細胞毒性を示す多くの被験血清についてその毒性を軽減することが可能となっ た。 第 3 章では, 被験血清の保管不備を原因とする接着阻害型細胞毒性の軽減を目的とし, 保管以前の処置及び保管時の適正温度について検討した。さらに, 保管不備により生じた 細胞毒性に対し, その発生機序を解析し,迅速, 簡便かつ低コストな毒性の除去法につい ての検討を行った。その結果, 採取直後の被験血清を加熱(56℃以上)又はプロテアーゼ インヒビターで処理することにより, 細胞毒性の発生を一定期間抑制できることが示され た。また, 抗体価の低下がみられるものの,細胞毒性を有する被験血清に対して, 65℃での 加熱処理が細胞毒性の除去に有効であった。さらに, 被験血清を未処理のまま 14 日以上室 温保管する場合においては, -30℃以下での保管が必要であることも示された。これらの 試験結果より, 接着阻害型細胞毒性の発生には,被験血清に由来する易熱性プロテアーゼ の関与が示唆された。この現象は, 狂犬病の BHK-21 細胞だけでなく, MDBK, MDCK 及び Vero 細胞でも認められた。したがって, 今回の細胞毒性除去法は,さまざまな細胞を用いるウ イルス中和試験に応用が可能であると考えられた。 以上, 本研究により, 狂犬病に対する中和抗体検査にあたり, イヌ及びネコにおける適 正な採血時期を設定することができた。また, 同検査において障害となる細胞毒性に関し て, その発生機序を解析し,細胞毒性型に応じた対応法について提案することができた。 これらの知見により, 狂犬病抗体検査の信頼性及び性能が向上し, さらに他のウイルスの 中和試験の改善への応用も期待できる。 審 査 結 果 の 要 旨 狂犬病は,致死性のウイルス性人獣共通感染症であり,日本を含む一部の国を除き世界的 に確認されている。我が国では,狂犬病の侵入に備え, 輸入動物に対して狂犬病のワクチ ン接種及び抗体検査を義務付けている。一方で,狂犬病抗体検査において, ワクチンを接 種したにもかかわらず抗体価が合格値未満となる,あるいは被験血清に由来する細胞毒性 のため中和抗体の測定ができないといった問題がみられている。そこで本研究では, 規定 に従って狂犬病ワクチンを接種されたイヌ及びネコについて, 中和抗体価の推移を調べ, 最適なワクチン接種間隔及び採血時期の設定についての検討を行った。さらに, 被験血清 に由来する細胞毒性の発生要因を追求し, その除去法について検討した。 第 1 章では, 実験用イヌ及びネコ各5頭に狂犬病不活化ワクチンを接種後,中和抗体価

(4)

の推移を追跡し,さらに,これまでに検査施設に送付された被験血清を用いて,そのワク チン接種履歴から同様な検討を行った。その結果から,狂犬病ワクチンの接種間隔が 30~ 90 日程度の場合, 2 回目のワクチン接種後, 7~14 日を目安に採血すること,ワクチンの 接種間隔が 91 日以上の場合, 2 回目のワクチン接種後, 14~21 日を目安に採血することが 提案された。 第 2 章では, 狂犬病中和抗体測定の行程ごとに細胞毒性の発生要因を検証し, 細胞毒性 を未然に防止する方策と効果的な細胞毒性除去法についての検討を行った。多くの血液凝 固阻止剤により 増殖阻害型細胞毒性が,採血後の不適切な保管の状況では,接着阻害型細 胞毒性がみられた。増殖阻害型細胞毒性に対しては細胞による吸収処理が, 接着阻害型細 胞毒性に対してはゼラチン処理プレートの使用が高い細胞毒性抑制効果を示した。以上よ り,被験血清でみられる細胞毒性型に応じた対応により,その毒性の軽減が可能となった。 第 3 章では, 被験血清の採血後の処置,保管時の適正温度,保管不備により生じる細胞 毒性の発生機序及びその対応法について検討した。採取直後の被験血清を加熱又はプロテ アーゼインヒビターで処理することにより, 細胞毒性の発生を一定期間抑制できることが 示された。また, 65℃での加熱処理が細胞毒性の除去に,-30℃以下での保管が有効であ ることが示された。これらの試験結果より, 接着阻害型細胞毒性の発生には,易熱性プロ テアーゼの関与が示唆された。この現象は他の株化細胞でも認められたことから, 今回の 対応策は,さまざまなウイルス中和試験に応用が可能であると考えられた。 以上, 本研究により, 安定的な狂犬病に対する中和抗体検査が可能となった。これらの 知見により, 狂犬病抗体検査の信頼性及び性能が向上し, さらに他のウイルスの中和試験 の改善への応用も期待できる。 以上について,審査委員全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合獣医学研究科の学位論 文として十分価値があると認めた。 基礎となる学術論文

1)題 目: Determination of critical factors causing cytotoxicity in the virus neutralization test

著 者 名: Shiraishi,R., Nishimura,M., Nakashima,R., Enta,C. and Hirayama,N. 学 術 雑 誌 名: Journal of Virological Methods

巻・号・頁・発行年:199(4):46-52,2014

2) 題 目: Neutralizing antibody response in dogs and cats inoculated with commercial inactivated rabies vaccines

著 者 名: Shiraishi,R., Nishimura,M., Nakashima,R., Enta,C. and Hirayama,N. 学 術 雑 誌 名: The Journal of Veterinary Medical Science

巻・号・頁・発行年:76(4):605-609,2014

3) 題 目: Cytotoxicity associated with prolonged room temperature storage of serum and proposed methods for reduction of cytotoxicity

著 者 名: Shiraishi,R. and Hirayama,N. 学 術 雑 誌 名: Journal of Virological Methods 巻・号・頁・発行年:225(12):16-22,2015 既発表学術論文

1)題 目: Priming of dolphin neutrophil respiratory burst by recombinant tumor necrosis factor alpha

(5)

Sakai,T.

学 術 雑 誌 名: Developmental and Comparative Immunology 巻・号・頁・発行年:26(7):675-679,2002

2)題 目: The respiratory burst activity of bottlenose dolphin neutrophils elicited by several stimulants

著 者 名: Shiraishi,R., Itou,T., Sugisawa,H., Shoji,Y., Endo,T. and Sakai,T. 学 術 雑 誌 名: The Journal of Veterinary Medical Science

巻・号・頁・発行年:64(8):711-714,2002

3)題 目: Validation and standardization of virus neutralizing test using indirect immunoperoxidase technique for the quantification of antibodies to rabies virus

著 者 名: Ogawa,T., Gamoh.K., Aoki,H., Kobayashi,R., Etoh,M., Senda,M., Hirayama,N., Nishimura,M., Shiraishi,R., Servat,A. and Cliquet,F. 学術雑誌名:Zoonoses and Public Health

巻・号・頁・発行年:55(6):323-327,2008

4)題 目: Detection of highly pathogenic avian influenza virus infection in vaccinated chicken flocks by monitoring antibodies against non-structural protein 1 (NS1)

著 者 名: Takeyama,N., Minari,K., Kajihara,M., Isoda,N., Sakamoto,R., Sasaki,T., Kokumai,N., Takikawa,N., Shiraishi,R., Mase,M., Hagiwara,J., Kodama,T., Imamura,T., Sakaguchi,M., Ohgitani,T., Sawata,A., Okamatsu,M., Muramatsu,M., Tsukamoto,K., Lin,Z., Tuchiya,K., Sakoda,Y. and Kida,H. 学 術 雑 誌 名: Veterinary Microbiology

巻・号・頁・発行年:147(3-4):283-291,2011

5)題 目: Comparison of commercial enzyme-linked immunosorbent assay kits with agar gel precipitation and hemagglutination-inhibition tests for detecting antibodies to avian influenza viruses

著 者 名: Shiraishi,R., Nishiguchi,A., Tsukamoto, K. and Muramatsu, M. 学 術 雑 誌 名: The Journal of Veterinary Medical Science

参照

関連したドキュメント

2回目の接種を受けて7日程度経ってからで、接

 高齢者をはじめ、妊娠期から子育て期までの行政サ

戦略的パートナーシップは、 Cardano のブロックチェーンテクノロジーを DISH のテレコムサービスに 導入することを目的としています。これにより、

平成 14 年( 2002 )に設立された能楽学会は, 「能楽」を学会名に冠し,その機関誌

日本の生活習慣・伝統文化に触れ,日本語の理解を深める

断面が変化する個所には伸縮継目を設けるとともに、斜面部においては、継目部受け台とすべり止め

Safety and immunogenicity of a high-dose quadrivalent influenza vaccine administered concomitantly with a third dose of the mRNA-1273 SARS-CoV-2 vaccine in adults aged ≥65 years:

② 特別な接種体制を確保した場合(通常診療とは別に、接種のための