2016 年熊本地震から 2 年経過した益城町市街地の被災建物の現況調査
角田功太郎
1),五十田博
2),井上涼
3),森拓郎
4),田中圭
5),佐藤利昭
6) 1) 学生会員 京都大学大学院農学研究科森林科学専攻,修士課程 e-mail : [email protected] 2) 正会員 京都大学生存圏研究所,教授 博士(工学) e-mail : [email protected] 3) 広島大学大学院工学研究科建築学専攻,修士課程 e-mail : [email protected] 4) 広島大学大学院工学研究科建築学専攻,准教授 博士(工学) e-mail : [email protected] 5) 大分大学理工学部建築学コース,准教授 博士(工学) e-mail : [email protected] 6) 正会員 九州大学大学院人間環境学研究院,准教授 博士(工学) e-mail : [email protected] 要 約 2016年熊本地震において悉皆調査が実施された建物を対象に,2年後の調査を実施した.調 査の目的は,被害レベル,建築年,構造種別などと2年後の使用状況の関係を定量化するこ とである.益城町の調査範囲において,約半数が現存しないことがわかった.加えて,当然 ではあるが,被災した建物の建築年が新しいほど,あるいは被災した住宅の被害レベルが 低いほど,継続的に使用されている割合が高かった.また,継続使用されている建物であ っても,そのうちの37%には補修が施されており,外観調査上は無被害と判定された建物で も補修されている例も多くみられた.建替え後の構造は84%が木造であり,階数は平屋建て が最も多く,71%を占めていた. キーワード: 熊本地震,建物被害,悉皆調査,復旧,継続使用,修復 1. はじめに 熊本県上益城郡益城町は,2016年熊本地震において4月14日の前震と4月16日の本震の2度にわたって 震度7の揺れに見舞われ,木造住宅を中心に多数の建物が大きな被害を受けた.これを受け,日本建築学 会九州支部では,熊本地震災害調査委員会を設置し,図1に示す益城町の中心市街地を対象とした悉皆調 査が同年5月3日~8日に実施された1).調査結果は,被災した建物の被害レベル,建築年代,構造種別な どに応じて整理され,図2に示す各建築年代別の被害レベルが報告1)されており,建築年が新しいほど被 害が小さかったことなどが明らかとなった.この調査における被害レベルの判定は,岡田・高井が提案 している破壊パターンの分類2)に則っている.この分類は,外観上調査に基づきおこなわれ,被害レベル D5・D6を倒壊,D4全壊,D3を半壊,D1・D2を一部損壊,D0を無被害と分類している. 21 -日本地震工学会論文集 第19巻, 第1号, 2019ある程度の時間が経過した後に現地を訪れると,感覚的ではあるが,更地の多いこと,平屋での建て 替えが多く見られた.そこで,この感覚的な状況を定量化すべく,前回悉皆調査を実施した地域を対象 に,地震発生より2年後の建物の補修・建替え・更地などの状況を調査した.そして,その状況と地震直 後に調査した被害レベル,建築年,構造種別などとを関連付けた. 本関連付けの結果は,今後建替えをせずに継続使用できる損傷レベルや,被災後どのような補修がな されているかの実態を示す貴重な資料であり,ここに報告することした.なお,外観上無被害と判定さ れた建物も補修がされている状況や,地域によって異なる傾向の把握については,内部の被災状況を把 握やヒアリング調査など,継続して研究が必要であることをひとこと申し添える. 2. 調査概要 調査は2018年4月16日~17日の2日間で,京都大学,大分大学,広島大学,九州大学の合同で2人1組14 チームにて実施した.調査地域は熊本県上益城郡益城町の町役場周辺の安永,宮園,木山,辻の城,寺 迫,馬水の各地域で2年前に実施された2016年悉皆調査の範囲を対象とした.2016年悉皆調査で調査が行 われた建物総数は2,652棟であったが,このうち簡易な倉庫,車庫,神社の祠や寺院の山門,鐘撞堂など を除外した2,340棟について結果が整理されている1).今回の調査ではこの2,340棟に加え,敷地が分割さ れて新築されるなどした建物を加えた計2,350棟を対象とした.調査は,対象建物の外観を目視で確認し ていく方法であり,外観から判断できる項目のみの評価である.調査項目としては,図3に示すように, 主に当該敷地が更地になっているか,または建物が建替えられているか,その場合はその構造種別は何 か,被災建物が残存している場合には,補修がされているか,住民が住んでいるか,である. 3. 調査結果の整理 本調査の集計結果と前回の悉皆調査の結果をクロス集計することにより,益城町市街地における被災 建物の地震2年後の状況を定量的に明らかにした. 図 2 被害レベルと建築年代 (2016 年悉皆調査の資料を基に再作成) 図 1 2016 年悉皆調査での対象地域 (参考文献1)より引用) 22
-3.1 被災建物の2年後の使用状況 図4に今回の調査対象建物における使用状況を,更地,建替え,補修,無補修の割合で示す.補修建物 は,屋根,外壁,基礎のいずれかを補修したものとした.調査対象建物の33%が更地,16%が建替えら れており,被災した建物のうち約半数が現存していないことがわかった.補修と無補修を合わせた残り の約半数の建物は残存していたが,補修されていた建物より無補修の建物の割合が高い状況であった. 図5に全調査建物の被害レベル別の使用状況を割合で示す.図中の数値は該当棟数を示している.当然 の結果ではあるが,D0からD6まで被害レベルが高まるごとに,更地と建替えの割合が高い.また,どの 被害レベルにおいても建替えよりも更地のままの割合が高かったことから,2年では建物の再建がそれ ほど進んでいないことがわかった.残存建物については,外観上は無被害と判定されたD0の建物では無 補修の建物の割合が補修された建物の割合より高かったものの,被害を受けたD1からD3までの建物で は補修される割合が増加する傾向にあった.無被害と判定されたD0の建物でも補修がなされていた理由 については次節「既存建物の補修状況」にて後述する.また,一部損壊に区分される被害レベルのD1, D2の建物でも,それぞれ29%,54%は取り壊され残存していないことがわかった.実際の罹災証明との 関係は明らかではないが,地震被害をD2程度の損傷に抑えなければ,約半数の建物は地震後に継続使用 されない傾向がみられた.また,当然ではあるが,倒壊に相当するD5,D6の被害を受けた建物の残存割 合は0%であった.図6に木造住宅のみの被害レベル別の建物状況を示す.調査対象地域での建物の木造 割合がもともと84%程度1)と非常に高いため,全体の傾向は図5と変わらない結果となり,D0からD6まで 被害レベルが高まるごとに更地と建替えで示されている割合が高くなる傾向がみられた.ただし,D0区 分の建物でも17%は補修されていることがわかった.D1では残存建物の56%,D2では77%が補修されて おり,被害レベルが高まるほど,無補修で継続使用される割合が低くなることが確認された.図7にRC, S造建物の被害レベル別の建物状況を示す.こちらは被害を受けた棟数が少ないことに留意する必要が あるが,全体的な傾向は木造と大きく変わらなかった.これも同様に地震被害をD2程度の損傷に抑えな ければ,約半数の建物は地震後に継続使用されない傾向がある. A. 更地かどうか 1. NO ↓ 2. YES → 写真を撮り終了 B. 新築(更新された)かどうか 1. NO 2. YES↓(建設中も含む) C. 構造の種類は何か 1. W or 2. S or 3. RC D. 建設会社はどこか ( ) → H. へ進む E. 補修されているかどうか 1. NO↓ 2. YES↓ F. どこが補修されているか 前回の調査の被害度( ) 1. 屋根 2. 外壁 3.基礎 4. 間取り 5. ブロック塀 6. 擁壁 7. その他( ) ↓ G. 住人が住んでおられるかどうか 1. NO↓ 2. YES↓ H. 聞き取り調査を受けたかどうか 1. NO 2. YES↓ 聞き取り調査シート(裏面)へ移る 写真を撮り終了 図 3 調査項目 23
-図8に被害レベルがD4以上の建物の分布1),図9に被災後更地となった建物と建替えられた建物の分布 を示す.これらの図では,緯度経度の位置情報により調査地域を100m×100mの計160個のグリッドに分 け,各グリッド内に存在する当該建物の棟数を調査建物の総数で除したものの百分率を示している.な お,グリッド内の対象建物は最小で1棟,最大で40棟,平均的には15棟であった.図8,9より,被害が大 きかった地域では建物が取り壊され更地か建替えとなっているところが多く,一方で被害が小さかった 地域でもその割合が増加していることから,D3以下の被害を受けた建物も取り壊されている傾向が確認 できる. 図10に各グリッド内での建物取り壊し割合を示す.建物取り壊し割合は,調査建物に対する更地建物 と建替え建物を合わせた割合として算出した.この図での横軸は被害レベルがD4以上の建物のグリッド 内での割合であり,その割合が高いほど被害が大きかったことを表す.D4以上の建物の割合が高くなる ほど取り壊し割合が増加する極めて自然な傾向がみられた.つまり,被害の大きかった地域ではそれに 伴って建物の継続使用が困難であった.さらに,D4以上の建物の割合が0%の地域でも取り壊し割合が高 い地域があることが確認できた.図11に各グリッド内での建物再建割合を示す.建物再建割合は,取り 壊された建物に対する建替え建物の割合として算出した.横軸は建物取り壊し割合である.図をみると, 建物再建割合はグリッド内での取り壊し割合に関係なくばらついており,地域によって差があることが 確認できる.各々の建物が建替えられるかどうかの決定には,周辺地域での取り壊し割合は影響しない という傾向がある. 図 4 被災建物の 2 年後の使用状況 図 5 被害レベル別の被災建物の使用状況 図 6 木造建物の被害レベル別の使用状況 図 7 RC,S 造建物の被害レベル別の使用状況 24
-図 8 被害レベル D4 以上の建物の分布 (参考文献1)より引用)
図 9 被災後に取り壊された建物の分布
-図12に木造住宅の建築年代別の使用状況を示す.建築年代が新しくなるに従って建物の残存割合が高 いことがわかる.旧耐震・新耐震の建物においては無補修より補修建物の割合が高いが,2000年以降の 建物においては無補修のままである割合が高くなった.建築年代が新しく,新しい基準で建てられた建 物ほど耐震性能が高く,被害が少なかったことが大きな要因の一つであると考えられる.しかし,2000 年以降に建てられた建物であっても全体の18%は被災後に取り壊されていることがわかった.また,旧 耐震の建物が建替えられることなく更地となっている割合が高いことがわかった. 図13-15に建築年代・被害レベル別での比較を示す.D0およびD4以上の被害レベルにおいては,建物 の残存割合は年代によって大きく変わらない傾向を示し,建物の継続使用の判断に建築年代はあまり関 係がないことがわかった.しかし,一部損壊区分であるD1・D2,半壊区分であるD3では,建築年代の違 いによって傾向に差がみられた.D1では,旧耐震建物の42%が取り壊されているのに対して,新耐震・ 2000年以降の建物はそれぞれ24%,26%となっている.D2では,旧耐震建物の59%が取り壊されている のに対して新耐震建物は50%,2000年以降の建物は42%に留まった.D3では,旧耐震建物の89%,新耐震 建物の約79%が取り壊されているのに対し,2000年以降の建物は50%に留まった.旧耐震建物は他と比 べて,被害レベルが低い場合でも建物を取り壊す割合が高い結果となった.一方,新耐震と2000年以降 の建物は旧耐震建物よりも残存割合が高かった.また,新耐震・2000年以降の建物の比較では,2000年 以降の建物の方が同じ被害レベルであっても無補修で継続使用される割合が高くなる傾向がみられた. 被災建物全体の使用状況のまとめとして,図16に被害レベル別の取り壊し建物の割合を,図17にその 取り壊し建物と補修建物を合算した割合を示す.当然ながら,被害レベルが低いほど取り壊される割合 が低くなることが確認出来る.また特にD1~D3においては建築年代の古い建物の方が継続使用されに くい傾向がみられた.建築年代が新しくなるに従って建物の残存割合が高まる傾向が示された.建築年 が新しいほど被害レベルが小さく,結果的に継続使用される傾向が高いことが示された. R² = 0.6352 0% 20% 40% 60% 80% 100% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 建物取り 壊し 割合 ( 取 り壊し 棟数 /全棟 数) グリッド内でのD4以上の建物割合 図 10 被害の大きさに対する取り壊し割合 R² = 0.0968 0% 20% 40% 60% 80% 100% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 建物再建 割合 ( 建 替え棟 数 /取り壊 し棟数 ) 建物取り壊し割合 図 11 取り壊し割合に対する再建割合 26
-0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 旧耐震 新耐震 2000年以降 D0 D1 D2 D3 D4 D5 図 16 被害レベル別の取り壊し建物の割合 図 17 被害レベル別の取り壊し+補修建物の割合 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 旧耐震 新耐震 2000年以降 D0 D1 D2 D3 D4 D5 図 12 木造建物の建築年代別の使用状況 図 13 旧耐震建物の被害レベル別の使用状況 図 14 新耐震建物の被害レベル別の使用状況 図 15 2000 年以降建物の被害レベル別の使用状況 27
-3.2 既存建物の補修状況 図18に補修建物の項目別の棟数を示す.なお,1棟で複数の補修がなされている建物が多数存在し,こ の場合は複数の回答を単純加算した.補修の有無は,前回の調査写真との比較で行い,変更点があるか どうかで判断した.例として,前回の調査写真と比べて,壁が塗り替わっている場合は,「外壁の補修」 に含めている.建物本体については,外壁の補修が最も多く,補修された建物のうちの半数を占めた. 次いで,瓦の葺き替えやスレート等への材料の変更といった屋根の補修,基礎の補修が多い結果となっ た.なお,塀などに遮蔽され建物の状況が十分に確認できないものも含まれている.建物以外の補修内 容については,ブロック塀の補修が20%,擁壁の補修が6%を占めた.その他にあたる補修としては,玄 関周りの補修,外構の補修や変更,駐車場の補修といった例が多数みられ,全体として22%を占めた. また,内装,構造躯体,間取りなどについての詳細な補修状況は判別できないものがほとんどであった. 図 18 補修された建物の補修内容内訳 132 (22%) 36 (6%) 120 (20%) 5 (1%) 108 (18%) 303 (50%) 168 (28%) 610 0 200 400 600 800 その他 擁壁 ブロック塀 間取り 基礎 外壁 屋根 全体 棟数 図 19 補修建物の被害レベル別の補修内容内訳 35 (37%) 52 (23%) 16 (18%) 5 (15%) 0 (0%) 108 (24%) 58 (62%) 162 (72%) 55 (63%) 23 (70%) 5 (100%) 303 (69%) 16 (17%) 71 (31%) 61 (70%) 17 (52%) 3 (60%) 168 (38%) 94 226 87 33 5 445 0 200 400 600 D0 D1 D2 D3 D4 全体 棟数 いずれか補修 屋根 外壁 基礎 図 20 補修建物の建築年代別の補修内容内訳 14 (23%) 75 (17%) 17 (17%) 106 (24%) 46 (77%) 174 (74%) 76 (74%) 296 (68%) 8 (13%) 111 (41%) 46 (45%) 165 (39%) 60 273 103 436 0 100 200 300 400 500 2000年以降 新耐震 旧耐震 全体 棟数 いずれか補修 屋根 外壁 基礎 28
-建物躯体の詳細な補修状況については,外観調査からは判別が難しいため,聞き取りなどの追加調査を 実施する必要があり,今後の課題とする. 図19に補修建物の被害レベル別の補修内容内訳を示す.ここでは屋根,外壁,基礎のいずれかが補修 された建物の集計を示す.全体としては,補修された建物のうち,屋根が38%,外壁が69%,基礎が24% 補修されている状況であった.それぞれの補修内容を見ていくと,屋根においてはD0の建物のうち17% は補修されていたのに対し,D2とD3ではそれぞれ70%と52%となっており,被害レベルが高まるにつれ 補修割合が高まる傾向が見られた.外壁においては,各被害レベルでそれ程大きな変化はなく,またD0 でも62%の建物が補修されていることから,僅かな被害を被っただけで補修をする必要性がありそうで ある.基礎においては,被害レベルが小さくなるにつれて補修率が上がる傾向がみられたが,この理由 については後述するように,基礎の損傷は被害レベルの判定基準に含まれておらず,被害レベルが低い 建物では基礎に損傷を受けている割合が外壁の損傷などと比べて相対的に大きくなることが可能性とし て挙げられる. 図20に補修建物の建築年代別の補修内容内訳を示す.屋根が補修されたものは旧耐震と新耐震でそれ ぞれ45%,41%であったが,2000年以降では13%であった.前述の通り,被害レベルが大きくなるほど屋 根の補修率が増加する傾向がみられたことから,2000年以降の建物の被害レベルが小さかったので屋根 の損傷が少なく,結果的に補修される割合が低かったと考えられる.外壁と基礎の補修に関しては,年 代ごとに大きな差はみられなかった. 前述の通り,2016年調査時に被害レベルが無被害であるD0と判定された建物であっても屋根,外壁, 基礎に補修がなされていた建物が少なからず存在した.写真1にD0と判定され屋根と外壁が補修された 建物の例を,写真2にD0と判定され外壁と基礎が補修された建物の例を示す.今回の調査では,写真1の 建物のように,損傷があったかどうか定かでなくても変更があれば補修とみなしたので,このようにD0 であったにもかかわらず補修されているとした結果があった.一方で,写真2に示すように外壁や基礎に 明らかな損傷があったがD0と判定されていたために,補修がなされていたという建物が存在した.2016 年の悉皆調査では参考文献2)の分類に従って被害レベルが判定されたが,写真2(a)に示す程度の外壁の剥 落は無被害と調査員が判定したことや,写真2(b)に示す基礎の損傷はこの分類では判定基準に含まれて いないことが理由として考えられる. 写真 1 D0(無被害)と判定され屋根と外壁が補修された建物の例 (a)2016 年調査時 (b)2018 年調査時 29
-3.3 建替えられた建物の構造形式 表1 に建替えられた建物の構造種別について,木造,S 造,RC 造の割合を示す.建設中であったため 判別できなかった場合については,不明として分類し除外した.ここでのS 造には,工事用の仮設プレ ハブも含まれる.また,工事用のプレハブを2~3 棟つなげて住宅としている例も見られた.その他の構 造には木造とRC 造の混構造などが含まれる.結果として全体の 8 割以上の建物が木造で建替えられて おり,そのうち 9 割以上が建て替えられる前の 2016 年時において木造であったことがわかった.建替 え建物に木造が多い理由として,調査対象地域が戸建て住宅の多い地域であったこと,もともと集合住 宅などの S 造・RC 造の建築物で,取り壊しになるような被害を受けた建物が少なかったことが要因と 考えられる.一方,木造住宅からRC 造や S 造に建て替えられているものもみられた. S 造で建替えら れた建物のうち,元が木造だった割合は54%(15 棟/28 棟),RC 造で建替えられた建物のうち,元が木 造だった割合は69%(11 棟/16 棟)であった.しかし,建替えられた建物全体における S 造と RC 造の 割合はそれぞれ10%と 6%に留まり,元々の 4%と 1%から増加しているものの依然として木造の需要が 高いことが伺える. 表2 に全ての構造種別を含む建替え建物の階数の割合を示す.建設中であったため判別できなかった 場合については,不明として分類し除外した.全体の割合には先に述べたようなプレハブ建物も含んで いる.割合としては平屋建てが最も多く約71%を占める結果となった.2 階建ては約 29%,3 階建て以 上の建物はほぼみられず,3 階建ての建物が 1 棟だけ存在した.元は 2 階建てであった建物が平屋とし て建替えられる例が目立った.熊本県が推進する「くまもと型復興住宅」のモデル化住宅3 棟の内,2 棟 が平屋建てであること,高齢の居住者が増加していること,2 階建の耐震性能に不安を抱いている人が 多いことなどが影響していると考えられるが,今後ヒアリングなどの追加調査が必要である.調査地域 には木造住宅が非常に多いため,構造種別を木造に限定した階数の割合も同様の傾向であった. 写真 2 D0(無被害)と判定され外壁と基礎が補修された建物の例 (c)2018 年調査時:外壁の補修 (b)2016 年調査時:基礎の損傷 (a)2016 年調査時:外壁タイルの剥落 (d)2018 年調査時:基礎の補修 30
-2018 年 建替え後 2016 年 建替え前 構造種別 棟数 (%) 構造種別 棟数 (%) 木造 236 (84) 木造 226 (96) S 造 8 (3) RC 造 1 (0) その他 1 (0) S 造 28 (10) 木造 15 (54) S 造 1 (4) RC 造 0 (0) その他 12 (43) RC 造 16 (6) 木造 11 (69) S 造 2 (13) RC 造 3 (19) その他 0 (0) 全体 280 (100) 木造 252 (90) S 造 11 (4) RC 造 4 (1) その他 13 (5) 2018 年 建替え後 2016 年 建替え前 階数 棟数 (%) 階数 棟数 (%) 1F 219 (71) 1F 61 (28) 2F 158 (72) 3F 0 (0) 2F 89 (29) 1F 7 (8) 2F 81 (92) 3F 0 (0) 3F 1 (0) 1F 0 (0) 2F 1 (100) 3F 0 (0) 全体 308 (100) 1F 68 (22) 2F 240 (78) 3F 0 (0) 表 1 建替え前後の建物の構造種別 表 2 建替え前後の建物の階数 31
-4. まとめ 2016年熊本地震発生より2年後の被災建物の補修・建替え・更地などの状況を把握し,被害レベル,建 築年,構造種別などとの関係を明らかにした.結果は以下のとおりである. ・ 調査対象建物の33%が更地,16%が建替えられており,被災した建物のうち約半数が現存していな い.補修と無補修を合わせた残りの約半数の建物は残存していたが,補修されていた建物より無補 修の建物の割合の方が多い状況であった.当然の結果ではあるが,被害レベルが高まるほど,更地 と建替えの割合が高くなる傾向がみられた.被害レベルがD2程度の損傷であっても,約半数の建物 は地震後に継続使用されていなかった. ・ 地域ごとにみると,被害の大きい地域ほど取り壊し割合が増加する極めて自然の結果となっていた が,地域によって建物再建割合に差があることも確認できた. ・ 建築年代が新しくなるに従って建物の残存割合が高い.これは,建築年が新しいほど被害レベルが 低くなっていることが大きな要因である.とはいえ,2000年以降に建てられた建物のうち,18%が取 り壊されていた. ・ 建物そのものの補修に関しては外壁の補修が最も多く,外観上は被害レベルがD0と判定された建物 であっても屋根,外壁,基礎が補修されている例が少なからずみられた. ・ 建替え後の構造は,84%が木造であった.階数は平屋建て多く71%を占めた.平屋建てが多くなる 傾向については今後ヒアリングなど,追加調査が必要である. 謝辞 被災されたにもかかわらず本調査への協力を惜しまれなかった益城町の方々に改めてお礼申し上げま す.また本調査の実施に際しては,京都大学五十田研究室,大分大学田中研究室,広島大学森研究室, 九州大学佐藤研究室の学生諸氏に協力を得ました.調査データの入力,図の作成にあたっては大分大学 の藤岡翼君の協力を得ました.ここに謝意を表します. 参考文献 1) 日本建築学会: 2016年熊本地震災害調査報告, pp.29-53, 2018. 2) 岡田成幸, 高井伸雄: 地震被害調査のための建物分類と被害パターン, 日本建築学会構造系論文集, 第524号, pp.65-72, 1999. 3) 高井伸雄,岡田成幸,高井博雄,宮野道雄,鈴木有:建物破壊パターン分類に基づく1995年兵庫県 南部地震における北淡町富島地区の建物被害調査,日本建築学会技術報告集,第10号,pp.305-308, 2000. 4) 大月俊典,境有紀,小杉慎司:2004年新潟県中越地震における川口町川口震度計周辺の建物被害の 分析と強震記録の対応,日本地震工学会論文集,第7巻,第3号,pp.40-59, 2007. (受理:2018年10月11日) (掲載決定:2018年11月22日) 32
-Survey of Construction Situation in Mashiki Town
Two Years After the 2016 Kumamoto Earthquakes
SUMIDA Kotaro
1), ISODA Hiroshi
2), INOUE Ryo
3), MORI Takuro
4),
TANAKA Kei
5)and SATO Toshiaki
6)1) Student Member, Graduate Student, Kyoto University 2) Member, Professor, Kyoto University, Dr. Eng.
3) Graduate Student, Hiroshima University 4) Associate Professor, Hiroshima University, Dr. Eng.
5) Associate Professor, Oita University, Dr. Eng. 6) Member, Associate Professor, Kyushu University, Dr. Eng.
ABSTRACT
The survey was carried out again two years later on buildings that were completely surveyed just after the 2016 Kumamoto earthquake. The purpose of the survey is to quantify the relationship between damage level, construction year, structure type, etc. and the usage of the buildings after two years. This study revealed that about half of the buildings surveyed areas in Mashiki town do not exist. In addition, it was found that the continuous use rate of buildings is higher as the construction year of the affected building is newer, or the damage level is lower. Also, 37% of the continuously used buildings have been repaired, and some of buildings judged to be no damage by the exterior survey have also been repaired. 84% of newly constructed buildings were wooden structure and 71% were single story.
Keywords: The 2016 Kumamoto earthquakes, Building damage, Complete survey, Restoration, Continuous use, Repair