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外来治療におけるシタフロキサシンの位置づけ

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Academic year: 2021

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ニューキノロン系薬の現状と問題点

【二木(司会)】本日はお忙しい中お集まりいた だきましてありがとうございます。ただ今から, 「外来治療におけるシタフロキサシン(STFX)の位 置づけ」というテーマで座談会を開催させて頂き ます。 STFXは,昨年6月に発売され,ちょうど一年 を迎えました。近年,ニューキノロン系薬のバリ エーションは豊富になりましたが,その中でも STFXは多くの優れた特徴を有しており,この薬 剤を私達がいかに臨床現場で役立てていくのかは 非常に重要なテーマだと思います。そこで,本日 は各科領域のエキスパートである3人の先生方と ともに,STFXの感染症治療薬としての位置づけ 並びに今後の方向性について考えていきたいと思 います。 最近ニューキノロン系薬は以前に比べて使用頻 度も増えており,そのため使い方や問題点につい ての話題も多くなっています。そこで,STFX 話の前に,各科領域におけるニューキノロン系薬 の使用状況や問題点について確認しておきたいと 思います。まずは呼吸器領域について青木先生か らお願いします。 【青木】現在,呼吸器領域で最も問題になって いるのは耐性菌です。代表的なものにはペニシリ ンおよびマクロライド耐性肺炎球菌,BLNAR どの耐性インフルエンザ菌があり,最近ではマク ロライド耐性マイコプラズマも注目されています。 これらの耐性菌に対してニューキノロン系薬,特

《座談会》

外来治療におけるシタフロキサシンの

位置づけ

二木芳人(司会)

昭和大学医学部臨床感染症学講座教授

青木信樹

信楽園病院内科部長

鈴木賢二

藤田保健衛生大学坂文種報徳曾病院耳鼻咽喉科学教授

松本哲朗

産業医科大学泌尿器科教授

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にレスピラトリーキノロンが 有効であることから,使用さ れる機会も増えています。 市中肺炎の治療について考 えますと,日本呼吸器学会の 市中肺炎ガイドラインでは, エンピリック治療の第一選択 はアモキシシリンとなっており,多くの場合,高 用量投与が必要となります。しかし,現実にはペ ニシリン系薬がこうした高用量で使用されること はほとんどありません。特に開業医の先生方では 安全性を重視しますから,下痢等の副作用を心配 されるためだと思います。そのため,近年のペニ シリン系薬の売上を見ても減少傾向にあるほどで, 必ずしもガイドラインに沿った治療が行われてい るわけではないのが現状です。 こうした状況下において,先に述べた耐性菌の 関与が疑われ,かつ初期治療が予後を大きく左右 するような患者,たとえば高齢者や呼吸器疾患, 心疾患を基礎疾患にもつ患者に対しては,第一選 択薬としてレスピラトリーキノロンを選択すべき だと考えています。ただし,その際にはPK-PD 論を十分に考慮して使用する必要があり,短期間 の治療であれば耐性菌が出現する危険性は低いと 考えています。 【二木】私も呼吸器内科医として青木先生と同 様の考えを持っております。耐性菌の増加に伴い ニューキノロン系薬の出番も増えるだろうけれど も,頻用・濫用につながらないよう,症例を選ん で使うことが大切だと思います。 【青木】いずれの領域でもそうですが,必要で あれば最初からニューキノロン系薬を使用するこ とが重要です。最初はニューキノロン系薬以外の 抗菌薬を使用して,無効であればニューキノロン 系薬に変更するという方法は,患者の満足度ある いは医療経済性からみて問題があると考えていま す。 【二木】初期治療で確実に感染症をコントロー ルすることが大切だということですね。 鈴木先生,耳鼻科領域は耐性菌の問題など比較 的呼吸器領域と似ていますが,年齢など患者背景 が違う部分もあると思います。先生のところはい かがでしょうか。 【鈴木】耳鼻科領域では,急性疾患を中心に小 児の患者が多いという特徴があります。小児の急 性疾患の初期治療には,b-ラクタム系薬,特にペ ニシリン系薬が主に使用され,ある程度高用量を 投与するというのが一般的です。成人の場合の初 期治療も同様です。 ただし,肺炎球菌やインフルエンザ菌でb-ラク タム系薬に対する耐性菌が増加しているため,成 人で耐性菌感染が疑われる場合にはレスピラト リーキノロンが選択されます。さらに,慢性中耳 炎や慢性副鼻腔炎の急性増悪は,原因菌が多彩で ペニシリン,セフェムなどのb-ラクタム系薬だけ で対処するのは難しいため,レスピラトリーキノ ロンが第一選択薬となるケースが多くなります。 したがって,ニューキノロン系薬の位置づけとし ては,基本的には成人の急性疾患,慢性疾患に対 する第二選択薬ですが,慢性疾患の場合には第一 選択薬に近い位置づけにあるというのが現状です。 【二木】慢性疾患の場合には緑膿菌などが多く なるわけですか。 【鈴木】緑膿菌も検出されますし,黄色ブドウ 球菌も多くなります。 【二木】レスピラトリーキノロンは,どちらか といえば肺炎球菌などをターゲットにして開発さ れています。緑膿菌についても優れた抗菌活性を 示すSTFXは,耳鼻科領域において有用な薬剤の 一つとなるかもしれませんね。 松本先生,泌尿器科領域は呼吸器や耳鼻科領域 とはかなり状況が異なると思うのですが,いかが でしょうか。 【松本】泌尿器科領域でのニューキノロン系薬 二木芳人 博士

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の適応範囲は広く,単純性および複雑性尿路感染 症,クラミジアやマイコプラズマ・ジェニタリウ ムなどが原因となる尿道炎,性器感染症である前 立腺炎,精巣上体炎など,広範囲の疾患に使用さ れています。泌尿器科領域におけるキノロン系薬 の歴史は古く,オールドキノロンの時代から使用 されてきましたが,ニューキノロン系薬が開発さ れグラム陽性菌までカバーできるようになったこ とで,さらに汎用されるようになりました。ただ, 長年にわたり広範囲の疾患に汎用されてきたこと で,耐性菌の増加は避けられない状況となってい ます。 【二木】泌尿器科領域で問題になっている耐性 菌にはどのようなものがありますか。 【松本】最も問題となるのは,大腸菌における キノロン耐性です。単純性尿路感染症から検出さ れる大腸菌の約10%,複雑性尿路感染症から検出 される大腸菌の約30%はキノロン耐性であり,こ の耐性菌に対してどう対処していくかが今後の大 きな課題だと思います。この他にも,緑膿菌はす べての領域に共通する耐性菌ですし,複雑性尿路 感染症で高頻度に検出される腸球菌でも,ニュー キノロン系薬に対して感受性が低下した菌が増加 しており,二峰性の感受性分布を示すようになっ ています。 【二木】続いて,ニューキノロン系薬の安全性 の話を伺います。青木先生,ニューキノロン系薬 には他の系統にはない特有の副作用があると思う のですが,最近問題になっているものはございま すか。 【青木】最近では,血糖値異常やQT延長など の副作用が比較的注目されています。この他に も,肝機能障害には注意が必要ですし,非ステロ イド性消炎鎮痛剤(NSAIDs),テオフィリン,ア ルミニウム等金属イオン含有の制酸剤などとの薬 物相互作用の問題もあります。ただ,こうした副 作用,相互作用は,同じニューキノロン系薬でも 個々の薬剤によって発現しや す さ に 差 が あ り ま す の で , 個々の薬剤で検討していく必 要があると思います。 【二木】最近のニューキノ ロン系薬は,安全性の面でも 改善されているようですが, ニューキノロン系薬共通の問題として,青木先生 が述べられた副作用や相互作用については注意が 必要だと思います。

STFX

の抗菌活性

【二木】ここからは,本日のメインテーマであ STFXの話に入ります。まず青木先生,STFX は抗菌活性の強さが大きな特徴となる薬剤ですが, 呼吸器領域の原因菌に対する抗菌活性はどのよう な位置づけになりますか。 【青木】STFXは,グラム陽性菌,グラム陰性 菌,嫌気性菌,非定型病原菌の全てに対して強い 抗菌活性を示しています(図1)。呼吸器感染症 において重要な肺炎球菌はもちろんのこと,腸球 菌属や緑膿菌に対しても強い抗菌活性を示してい ます。 【二木】鈴木先生が注目されている菌はござい ますか。 【鈴木】今はMRSAに対して注目しています。 耳鼻科領域の慢性疾患ではMRSAも含めた黄色 ブドウ球菌が原因菌となることが多いのですが, STFXMIC0.06mg/mL以下と優れています。 さらに緑膿菌に対する抗菌活性も強く,その他の 菌のMIC90もほとんどが0.5mg/mL以下ですから, 耐性肺炎球菌,耐性インフルエンザ菌も含めて, 耳鼻科領域感染症の大部分の原因菌はカバーでき ると思います。 【二木】松本先生,泌尿器科領域での抗菌活性 はいかがですか。 青木信樹 博士

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【松本】泌尿器科領域でも同様で,大腸菌をは じめとする尿路感染症の原因菌に対して抗菌活性 が強いと考えています。さらにSTFXにはキノロ ン耐性菌に対する効果も期待しており,in vitro 成績をみる限りは, レボフロキサシン(LVFX) 性の大腸菌に対しても強い抗菌活性を示すことが 確認されています。 【二木】青木先生,キノロン耐性肺炎球菌にも 抗菌活性は強いと考えてよろしいですか。 【青木】LVFX耐性肺炎球菌に対するSTFX MICは,全ての株で0.5mg/mL以下ですから,強 いと言えると思います。また,標的酵素の変異が 重なり耐性化が進行した菌に対しても,MICの上 昇はわずかであり,強い抗菌活性が維持されてい ます(図2)。

STFX

の体内動態

【二木】呼吸器領域ではPK-PD理論に基づいて 抗菌薬を使用するのが一般的になっていますが, STFXPK-PDからみた評価はどうですか。 【 青 木 】 肺炎球菌の場合には,AUC/MIC 25⬃30以上あれば有効性が期待できるとされてい ます。抗菌薬で実際に抗菌力を発揮するのは蛋白 結合していない遊離体の部分であり,STFXの遊 離体でのAUC/MIC95という成績がでています 1.臨床分離株に対するSTFXの抗菌活性(MIC90 方法:NCCLS 標準法(寒天平板希釈法,104CFU/spot),ただし,肺炎球菌は NCCLS 標準法(寒天平板希釈法,105CFU/spot), インフルエンザ菌は日本化学療法学会標準法(寒天平板希釈法,104CFU/spot)。

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から,十分に有効性が期待できるレベルに達して います。 【二木】STFXの標準的な用法・用量は50 mg⫻ 2/日であり,投与量としては少ないわけですが, 抗菌活性が強くMICが低いために,PK-PDの有 効基準値を超える優れた成績が得られたというこ とだと思います。 体内動態を考える場合には,組織移行性も重要 だと思いますが,STFXの呼吸器病巣への移行性 についてはいかがでしょうか。 【青木】呼吸器領域では喀痰への移行性をみて います。100 mg単回投与の成績では血中濃度の 50%の濃度に達していますので,50 mg投与で も治療に必要な喀痰中濃度は得られると思います (図3)。 【二木】鈴木先生,耳鼻科領域での組織への移 行性はいかがですか。 【鈴木】耳鼻科領域では,中耳粘膜,上顎洞・ 篩骨洞粘膜,口蓋扁桃で検討していますが,血中 濃度を超える組織内濃度が得 られており,呼吸器と同様に 移行性は優れていると思いま す(図3)。 【二木】松本先生,尿路系 組織への移行性や尿中排泄率 はいかがですか。 【松本】尿中排泄率でみますと,最近のレスピ ラトリーキノロンと呼ばれる薬剤の多くは尿中排 泄率が低いのですが,STFXの場合には50 mg 100 mgを空腹時単回経口投与した場合,投与後 48時間までにそれぞれ投与量の約70%が未変化 体のまま尿中に排泄されたとの報告があり,従来 のニューキノロン系薬に近いタイプだと思います。 ただ,今まで尿路感染症では,尿中排泄を中心 に体内動態を考えてきたわけですが,今後は血中 濃度,つまりPK-PDに主眼を置いて検討してい くことが必要だと考えています。PK-PD理論が尿 路感染症にも適用できるかどうかについては,ま 松本哲朗 博士 2.肺炎球菌の標的酵素変異数とMICの関係 

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だ十分なエビデンスがなく, 今後の検討を待つ必要があり ますが,PK-PDの考え方を基 本として尿中排泄率も参考に しながら,体内動態を理解し ていくことが望ましいと思い ます。

STFX

の臨床効果

【二木】今までの話を総合すると,STFXは抗菌 活性が強く,病巣への移行性も優れているという ことで,当然臨床効果も高くなることが予想され ます。そこで,実際の臨床効果がどの程度かを確 認したいと思いますが,はじめに青木先生,呼吸 器領域からお願いします。 【青木】第III相臨床試験において,呼吸器感染 症は患者の約90%50 mg⫻2/日投与でした が,有効率は急性気道感染症群,肺炎,慢性呼吸 器病変の二次感染いずれも90%以上であり,全体 でも92.8%でした(図4)。他剤無効例に対する有 効率も95.3%と高く,ニューキノロン系薬無効例 にも81.3%ですから,臨床効果は優れています (図5)。 【二木】鈴木先生,耳鼻科領域ではいかがです か。 【鈴木】第II相臨床試験において,中耳炎,副 鼻腔炎に対して50 mg⫻2/日と100 mg⫻2/ の用量別での効果が検討されました。急性中耳 炎・副鼻腔炎の有効率は50 mg⫻2/日と100 mg⫻2/日がほぼ同程度でしたが,慢性中耳炎・ 副鼻腔炎の急性増悪での有効率は50 mg⫻2/ 61.5%100 mg⫻2/日が80.0%と,50 mg⫻2 /日の効果が十分ではありませんでした(図6)。 そのため,第III相臨床試験において,中耳炎, 副鼻腔炎に対して100 mg⫻2/日投与で検討した 鈴木賢二 博士 3STFXの体液・組織内濃度 対象:慢性呼吸器疾患患者及び耳鼻咽喉科手術実施予定患者 方法: STFX 50 mg 又は 100 mg 空腹時単回経口投与後に,各種検体を採取し体液・組織内濃度を測定した。 シタフロキサシン承認申請資料

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4STFXの呼吸器感染症に対する臨床効果(有効率) 5STFXの直前抗菌化学療法無効例に対する効果(呼吸器感染症) 対象:呼吸器感染症患者 389 例(咽頭・喉頭炎 8 例、扁桃炎 12 例、急性気管支炎 14 例,肺炎 247 例,慢性呼吸器病変の二次感染 108 例) 方法: STFX 50 mg1 日 2 回又は 100 mg1 日 1⬃2 回,3⬃7 日間経口投与 シタフロキサシン承認申請資料 対象:呼吸器感染症患者 389 例(咽頭・喉頭炎 8 例,扁桃炎 12 例,急性気管支炎 14 例,肺炎 247 例,慢性呼吸器病変の二次感染 108 例) 方法: STFX 50 mg1 日 2 回又は 100 mg1 日 1⬃2 回,3⬃7 日間経口投与 シタフロキサシン承認申請資料

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と こ ろ , そ れ ぞ れ87.8%89.4%, 全 体 で は 88.5%の有効率が得られており,慢性中耳炎・副 鼻腔炎の急性増悪にも有効でした(図7)。した がって,急性疾患であれば50 mg⫻2/日,慢性 疾患の急性増悪には100 mg⫻2/日投与を行え ば,十分な臨床効果が得られると考えられます。 【二木】松本先生,泌尿器領域はいかがですか。 【松本】第III相臨床試験は,複雑性尿路感染症 と性感染症を対象に実施されました。有効率は, 複雑性尿路感染症が95.0%,非淋菌性尿道炎が 88.6%と非常に高く,通常は注射薬の適応となる 有熱性腎盂腎炎に対しても,高い有効性が認めら れました(図8)。さらに,複雑性尿路感染症患者 を対象にLVFXとの比較試験が実施されています が,有効率はSTFX 50 mg⫻2/日の96.1%に対 して,LVFX100 mg⫻3/日では82.7%STFX 6STFXの耳鼻咽喉科領域感染症に対する臨床効果(有効率) 7STFXの耳鼻咽喉科領域感染症に対する臨床効果(有効率) 第一三共株式会社 社内資料 対象:耳鼻咽喉科領域感染症患者 96 例(中耳炎 49 例,副鼻腔炎 47 例) 方法: STFX 100 mg1 日 2 回,7 日間経口投与 シタフロキサシン承認申請資料

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の方が有意に高いという結果でした(p⫽0.002) これらの結果から,STFXLVFXで足りない部 分をカバーできるのではないかと考えています。 その足りない部分の主な原因と考えられるのが大 腸菌に代表されるキノロン耐性菌をカバーできる のではないかと期待しています。 STFXのキノロン耐性菌に対する有効性を考え る上で,面白いデータがあります。キノロン耐性 大腸菌は,標的酵素であるトポイソメラーゼIV およびDNAジャイレースの変異によって出現し ますが,変異箇所が増えるほど消失率は低下しま す。STFX投与時の大腸菌の消失率も,変異のな い野生株や1ヵ所変異株では100%ですが,3ヵ所 が変異した高度耐性株では66.7%しかありません。 しかし,この消失率は投与量によって大きな差が あ り ,50 mg⫻2/日 投 与 で は45.5%で す が , 100 mg⫻2/日投与では81.3%が消失しています (p⫽0.053)(図9)。 【二木】 大腸菌の複数変異株に対しては100 mg⫻2/日投与が有効であるとのお話でしたが, 青木先生,肺炎球菌でも同様のことが言えるので しょうか。 【青木】肺炎球菌も耐性機序は大腸菌と同様で, キノロン耐性菌はトポイソメラーゼIVおよび DNAジャイレースの変異によって出現し,変異 箇所が増えるほど抗菌活性は低下します。ただ, 肺炎球菌の場合には,複数箇所が変異した菌自体 が極めて少ない上に,STFXは変異株も含めて肺 炎球菌に対する抗菌活性が強いという特徴があり ます。さらに,最近よく使われるPK-PDパラメー タにMPC(変異株発現阻止濃度)がありますが, 肺炎球菌の臨床分離株でSTFXMICMPC 検討した成績では,MIC900.06mg/mLMPC90 0.25mg/mLとどちらも低く,MICMPCの間 8STFXの尿路・性感染症に対する臨床効果(有効率) 対象:尿路感染症患者 318 例(複雑性膀胱炎 252 例,複雑性腎盂腎炎 66 例) 非淋菌性性感染症患者 75 例(尿道炎 35 例,子宮頸管炎 40 例) 方法:尿路感染症患者には STFX 50 mg 1 日 2 回又は 100mg 1 日 2 回,7 日間経口投与 非淋菌性性感染症患者には STFX 50 mg 1 日 2 回,7 日間経口投与 シタフロキサシン承認申請資料

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MSW(耐性菌選択域)も狭いため,耐性菌を 出現しにくいことも確認されています(図10)。 次にPK-PDからSTFXの投与量を考えてみる と,50 mg⫻2/日投与ではMIC0.25mg/mL 肺炎球菌まではAUC/MIC30以上になります が,MIC0.5mg/mLの菌では100 mg⫻2/日投 与しないとAUC/MIC30以上になりません。し たがって,MIC0.5mg/mLの菌に対しては100 9.標的酵素の変異箇所とSTFXにおける大腸菌消失率との関係 10.肺炎球菌に対するMICおよびMPC(臨床分離64) 方法:大腸菌 84 株を用いて,キノロン標的酵素(DNA ジャイレース及びトポイソメラーゼⅣ)のキノロン耐性決定領域(QRDR)の アミノ酸置換部位を特定し,アミノ酸置換数別に STFX の菌の消失率について検討した。 シタフロキサシン承認申請資料 方法:肺炎球菌の臨床分離株 64 株において、STFX の MIC(最小発育阻止濃度)及び MPC(変異株発現阻止濃度)を測定し,MIC と MPC の 間の MSW(耐性菌選択域)を検討した。 第一三共株式会社 社内資料

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mg⫻2/日投与が必要ということになりますが, その分離頻度はわずかですから,ほとんどの場合 50 mg⫻2/日投与で対応できることになりま す(図11)。 【二木】耐性菌の出現を抑制するためには,肺 炎球菌の場合にも複数変異株には100 mg⫻2/ 投与が必要だということですね。

STFX

の安全性

【二木】今までのお話から,STFXの臨床効果 は優れているということがわかりましたが,やは りニューキノロン系薬で問題となるのは安全性だ と思います。鈴木先生,STFXの安全性に関して 注意すべき点はございますか。 【鈴木】特に重篤なものはありませんでしたが, 主な副作用は下痢などの消化器症状です(表1)。 承認前の臨床試験において下痢の発現率は5.8% であり,その他の副作用や相互作用に関して特に 問 題 と な っ た 副 作 用 は 発 現 し ま せ ん で し た 。 STFXは,発売されてから使用症例数が少ないた め,今後,症例の蓄積を待つ必要はあると考えて います。 【二木】下痢の副作用発現が多いというのは, 嫌気性菌に対する抗菌活性が強いことも影響して いるのでしょうか。 【鈴木】その影響はあると思います。しかし, 下痢の副作用が発現しても,投与継続中あるいは 投与終了後には回復しています。 【二木】青木先生,肝機能障害についてはいか がですか。 【 青木】 承認前の臨床試験の成績では,ALT GPT)上昇が5.5%ASTGOT)上昇が4.2% でした。今後も症例を蓄積し肝機能障害に対する 安全性をさらに検討していくことで慎重に見極め たいと思います。 11STFXの投与方法別AUC/MICと肺炎球菌に対する有効性

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【二木】STFXの安全性については,今後も継 続して検討していきたいと考えています。

STFX

の投与対象

【二木】今までSTFXの特徴をみてきましたが, これらを総合的に判断して,STFXをこういう病態 や疾患に使用したいかというお考えを各先生方に 伺いたいと思います。青木先生からお願いします。 【青木】呼吸器領域では,高齢者におけるキノ ロン耐性肺炎球菌の検出頻度が高く,札幌医大の 横田先生の最近のデータでは20%がキノロン耐性 との報告もあります。したがって,高齢で肺炎球 菌感染が疑われる症例に対しては,STFXのよう な抗菌活性が強く,耐性菌を選択しにくい薬剤が 検討されると思います。また,緑膿菌に対する抗 菌活性も強いので,高齢者の慢性気道感染症にも STFXの使用が検討されると思います。その他で は,非定型肺炎患者にエンピリック治療を行う際 に,慢性呼吸器疾患や心疾患を基礎疾患に持って いる患者や高齢者の場合には,STFXが選択肢の 中に入ってくると思います。 【二木】STFXは嫌気性菌に対する抗菌活性が 強いことから,嚥下性肺炎にも使用できる可能性 はありますか。 【青木】嚥下性肺炎を発症するのは,高齢で脳 血管障害などを合併している方がほとんどですか ら,外来で治療できる患者は少ないと思います。 ただ,高齢者がいらっしゃる施設に往診に行った ときに,徴候があるような方に対して投与する可 能性は考えられます。 【二木】鈴木先生,耳鼻科領域ではいかがです か。 【鈴木】耳鼻科領域では,急性疾患にはb-ラク 1STFXの安全性

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タム系薬を選択しますが,慢性中耳炎や慢性副鼻 腔炎の急性増悪になるとb-ラクタム系薬では効果 がみられない症例も多くなりますので,STFX 使用する機会が増してくると思います。その際の 投与量は,軽症であれば50 mg⫻2/日投与でも 効果が期待できますが,効果不十分と思われる症 例には100 mg⫻2/日投与が選択肢と考えられる と思います。 【二木】松本先生,泌尿器科領域はいかがです か。 【松本】泌尿器科領域では,比較的広範囲の投 与対象があると考えられます。ただし,単純性尿 路感染症については,LVFX500 mg*⫻1/ 投与で対応できると思います。STFXに期待する のは複雑性尿路感染症で,ニューキノロン系薬等 の抗菌薬による治療歴を有し,耐性菌感染が疑わ れる再発性および難治性の症例に使用できると思 います。また,通常は注射薬の適応になる有熱性 複雑性腎盂腎炎などの発熱を伴う重症度の高い症 例も投与対象と考えており, 注射薬の一部を STFXで代用することで入院期間を短縮できる可 能性があります。 【二木】STFXの投与量については,今後さらに 治療域を拡大したり,耐性菌を出現させない治療 を行うということになると,高用量投与のデータ を揃えていくことが必要と感じましたが,その考 えでよろしいでしょうか。 【松本】複雑性尿路感染症では,検出される大 腸 菌 の 約3 0 %が キ ノ ロ ン 耐 性 で す か ら , 100 mg⫻2/日投与を必要とするケースが増える と思います。また,STFXの位置づけとしては, LVFXの効果が及ばないところの治療薬として期 待していますので,STFXの特徴を生かすという 意味からも,100 mg⫻2/日投与が選択肢と考え ています。

STFX

LVFX

の使い分け

【二木】松本先生からLVFXの話が出ましたが, 20094月,LVFX500 mg*⫻1/日投与が承 認されました。STFXをこれから様々な領域で使 用すると同時に,LVFXの使い方についても見直 す必要があり,STFXLVFX500 mg*⫻1/ を今後どのように使い分けていくかについて,先 生方の考えをお聞きしたいと思います。まず,青 木先生からお願いします。 【青木】LVFX500 mg*⫻1/日投与は,これ 以上耐性菌を増やしたくないという考えのもと開 発されました。肺炎球菌では,LVFXMIC 2mg/mLの株は100 mg⫻3/日投与では完全に除 菌することが難しく,MICがさらに上昇した高度 耐 性 菌 を 選 択 す る 危 険 性 が あ り ま す が , 500 mg*⫻1/日投与にすることで2mg/mLまで の株には除菌効果が期待できます。しかし,それ 以上のMICの株には500 mg*⫻1/日投与でも除 菌は難しくなります。肺炎球菌に対するLVFX MICは,ほとんどの株が2mg/mL以下ですから, 通常はLVFX 500 mg*⫻1/日で対応できますが, 4mg/mL以上の株もわずかに検出されていること か ら ,LV F X耐 性 菌 が 検 出 さ れ る 可 能 性 の 高い症例に対しては,STFXが必要ということに なります。したがって,一般的にはLVFX 500 mg*⫻1/日で対応可能ですが,効果不十分症 例,あるいは最初からLVFXの効果が疑問視され る症例にはSTFXを使用することになると思いま す。 【二木】鈴木先生はいかがですか。 【鈴木】耳鼻科領域では,急性疾患の場合には, b-ラクタム系薬を最初に使用し,無効であれば LVFX500 mg*⫻1/日,その次にSTFXという 順番になると思います。 ただし,慢性中耳炎,慢性副鼻腔炎ですでに ニューキノロン系薬での治療歴がある場合や,反

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復感染症例などでは,耐性菌感染の確率が高くな り,緑膿菌やMRSAが原因菌となることもありま すので,STFXを使用したいと思います。 【二木】松本先生は,先ほど単純性尿路感染症 にはLVFX 500 mg*⫻1/日というお話がありま したが,この投与方法は従来の100 mg⫻3/日や 200 mg⫻2/日投与よりも優れた効果が期待でき ると考えてよろしいですか。 【松本】LVFX 500 mg*⫻1/日投与は,PK-PD 理論とも合致しており,治療効果の向上,耐性菌 の出現抑制という点で,従来の投与方法よりも優 れています。したがって,通常の尿路・性器感染 症であれば,LVFX 500 mg*⫻1/日投与で十分 治療効果が期待できると思います。STFXは, LVFX 500 mg*⫻1/日投与でも効果が及ばない 可能性がある重症例や再発例あるいはニューキノ ロン系薬での治療歴のあるような症例に対して使 用したいと思います。

今後の検討課題

【二木】今までの話から,STFXへの期待感もわ かりましたし,LVFX 500 mg*⫻1/日投与との 使い分けについてもある程度回答が出たと思いま す。最後になりますが,今後STFXについてどの ようなデータを収集する必要があるのかについて お聞きしたいと思います。青木先生から順番にお 願いします。 【青木】やはり,高用量投与による有効性と安 全性の確認は必要だと思います。もう一つは,製 造販売後調査の実施により,STFXを広範囲の疾 患や患者に使用したときの安全性を確認していく 必要があると思います。 【鈴木】私も同感です。投与対象が増えてきま すと,思わぬ副作用が出てくる可能性もあります ので,使う側としては慎重な姿勢が必要だと思い ます。また,高齢者や超高齢者に対する用法・用 量についても,きちんと考えていくべきだと思い ます。 【松本】先生方が述べられた通りですが,あえ て付け加えれば,STFXはニューキノロン系薬で ありながら,緑膿菌も含めてキノロン耐性菌まで カバーできるのではないかという期待感がありま す。そのためには,有効性の裏付けとなるデータ を蓄積し,検証していく必要があります。また, STFXでキノロン耐性菌を治療することは,さら に耐性化を進行させる方向に働かないかどうかと いう点も危惧されますので,この点に問題がない こともきちんと確認すべきだと思います。 【二木】ありがとうございました。本日は3 の先生方に,各科領域での外来感染症の治療の現 状や問題点についてまとめていただくとともに, STFXを臨床の現場でどのように活用すべきかに ついてご教示いただきました。今後,解決しなけ ればいけない課題も少なくありませんが,将来 STFXが臨床の現場において役立つ薬剤になるこ とを強く望んでおりますし,この座談会の内容が 多少なりともその手助けになればと考えています。 本日はどうもありがとうございました。 LVFX 500 mg*500 mg(錠500 mg1錠,錠250 mg2錠,もしくは細粒10%5 g

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2009年4月7日帝国ホテルにて開催

図 4 . STFX の呼吸器感染症に対する臨床効果(有効率) 図 5 . STFX の直前抗菌化学療法無効例に対する効果(呼吸器感染症)対象:呼吸器感染症患者389例(咽頭・喉頭炎8例、扁桃炎12例、急性気管支炎14例,肺炎247 例,慢性呼吸器病変の二次感染 108 例)方法:STFX 50 mg1日2回又は100 mg1日1⬃2回,3⬃7日間経口投与 シタフロキサシン承認申請資料 対象:呼吸器感染症患者 389 例(咽頭・喉頭炎8 例,扁桃炎 12 例,急性気管支炎14 例,肺炎247 例,慢性呼吸器

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