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生態補償地

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Academic year: 2021

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生態補償地 ― 73 ― 73 近くに生態補償地を造ろう 生態補償地は1990 年代初頭,スイスで集約農業を脱 し環境に配慮する農政改革の中で「Ecological Compen-sation Area(ECA)」として初めて登場した。そのころ から食糧増産を目指した肥料・農薬・労働力の多投入に よる集約農法や農地転用などによる「生物多様性の減少」 を阻止し,希少生物を保全するために,粗放的農業を推 進し農地周辺にグリーンベルトを造り始めた。2004 年 に は16 タイ プの モデ ル ECA を公表 した。その結果 2013 年には粗放的草地 9 万 ha,伝統果樹園 2.5 万 ha, 生け垣3 千 ha が ECA に認定され,全農地の 11%にな った。最近公表されたECA 効果のアセスでは,生態的 に適正管理された草生果樹園や生け垣で野生植物と鳥類 の多様性が改善されている。このECA のアイデアは英 国の広域麦畑や草地に設けたビートルバンクやヘッジロ ーに共通している。いずれの国でも生態補償地を造成し た管理者には直接支払いされている。このECA のアイ デアは我が国ではあぜ道や農道の植栽管理,害益虫保全 地,各種生物の保全活動等に見られる。 本報では近くの農地の一隅に多様な植物を植栽した ECA を設置し生き物を増やした例を紹介する。ECA 設 置により鳥類,小動物,天敵,植物等が植生内で明らか に増加した。一例としてわかりやすいテントウムシの動 態を見よう。早春,3 月下旬にまずユキヤナギが新芽を だしアブラムシが寄生する(主な寄生種はユキヤナギア ブラムシ),次いでオオミグミ(ゴボウクギケアブラム シ),ケヤキ(ケヤキブチアブラムシ),コデマリ(ユキ), ムクゲ(ワタアブラムシ),そしてパイオニアプラント のトウネズミモチ(トウネズミモチハマキワタムシ)な どにナミテントウが多く集まった。6 月前半までは,早 春からの植生で産卵・繁殖した。それ以降はアブラムシ が多発する植物は少ないが,ナミテントウはコデマリ, トウモロコシ,ダイズ,エノキ,オミナエシ,トウワタ, バラ,シロザ等に棲みついて生息した。ただしECA の アブラムシ類が近くの野菜類を加害するかは今後の調査 課題である。 ECA の華やかな立役者たち 次にECA を訪問する大きめで華やかな昆虫類の代表 としてアゲハやタテハを見よう。周知のようにアゲハ, ナガサキアゲハ,クロアゲハはミカンやユズ,キアゲハ はニンジン,セリ,アカボシゴマダラはエノキ,ツマグ ロヒョウモンはパンジー,ビオラ等に集まってくる。こ れらは各植物の食葉性害虫になる。 その中で一つ,オキクムシの異名があるジャコウアゲ ハは安心できる。農作物の害虫にならず,幼虫や蛹の格 好はユニークだが不快とは思えない。成虫は5 月に越冬 蛹から出始め,早朝からウマノスズクサの草叢をふわり ふわりと数頭飛び回る。見るたびにわくわくしクリーン な生態環境に安堵する。寿命は約1 か月,10 月まで世 代を繰り返す。さらによいのは,ほかの蝶と違い遠くに 逃げず定着性に富むことである。ECA とその周辺のク リーンな生息環境の証にもなる。ポイントはウマノスズ クサ(コショウ目ウマノスズクサ科)を決して切らさな いことである。 ただし,幼虫は近くの葉を食べ尽くすと,上方に新鮮 な葉が茂っていても食べに向かわず,脚元の茎をかじっ て枯らしてしまうので要注意である。とはいえ2 年間の 観察では草丈1 m 以上のウマノスズクサを常時 100 本 ほど植栽しておくと,ジャコウアゲハは十分楽しめる。 地域の指標昆虫に加えクリーンな環境と生活の質を高め るのはどうだろうか。 参考資料:アグロ虫,No.18(2014)(植物防疫に携わ った昆虫愛好者の会報),話のたねのテーブル No.233  (2014)(http://www.zennokyo.co.jp/table/index_table. html)

コラム

予察灯

東京農業大学昆虫学研究室 客員教授

生態補償地

平井 一男

(ひらい かずお) 図−1 春のユキヤナギ上のナミテントウ

参照

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