野菜単作農業地帯の大気中農薬汚染
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(2) 16. 図2 大気中農薬採取装置. の常用農薬類MEP,クロルピクリン,DDVP,へブ. ドレールなどに固定して操作する。その方式を図2. タタロル等に比べてかなI)低く算定されているが,. に示す。. 食品からの摂取許容量は0.007mg/kg/dayと決められ. この手動ポンプ方式は軽量,簡便であり,一定濃. ており,他の農薬に比べて安全性が高いことを示し. 度以上の多数点調査や緊急時の試料採取に有効であ. ていない。例えば,その人体,環境に対する蓄積毒. ることが確かめられた。. 性のため生産使用が禁止されたDDTの摂取許容量. 水質試料は1£の褐色ガラスびんに採取した。. は0.0051Ⅵg/kg/dayとなっている㌘慢性毒性として,. 分析方法は以下の通りである。. 催奇性,発ガン性が指摘されていて,長期曝露にお. 状況によって高濃度が予想される大気試料はGC/M. ける危険性については,これを否定できるデータは. S−SIMによって,その他はGC−ECDによって分析. 誰も持っていない。大量の農薬散布に依存する農法. 定量した。. は,環境破壊と人体被害の両面から,その災害が警. GC/MS−SIM法:. 告されて久しいが,事態は益々悪化の一途をたどっ. 測定機器 島津LKB−9000. ているように見える。本研究者らは,農薬に対する正. 質量数 h/z=295. しい対処は現実の汚染状態の把握が不可欠であると. カ ラ ム OV−1012%,Chromosorb W HP. の考えの下に,今日まで放置されて釆た農薬の大気. lOO−120mesh,3.4mrn¢×1m。. 汚染の科学的調査を進める計画を立てた。その1つ. 50Oc(10min.)→150Oc→100c/mjn.. の対象が野菜単作地帯として,集中的にPCNBが投. 昇温→2100c。ヘリウムガス30ml/. 与されている嬬恋村の環境調査である。すなわち,. mln.。. これらデータは現在進行しつつある日本農山村共通. 試料導入 カラム直前に,Tenax捕集管をつけ,. の農薬汚染の典型を明らかにするものとして,野菜. 2800cで加熱導入する。. 地域,ハウス地域,果樹地域,山林および水田地域 の中の1つとして選んだものである。. 2.調査方法 本実験では稀恋村キャベツ栽培地帯を中心に4回. GC−ECD法: 測定機器 HP−5840A. カ ラ ム HP社UPCC(Crosslinked Methyl Silicone),フイルム厚0.53pm,内径 0.31mm¢,長さ25m。カラム庄0・5kg. にわたって大気中PCNB濃度を測定し,また1部水 系への汚染を測定した。PCNB散布前に1回,散布. /cm2。N2キャリアーガス。. 後に3回で,その中1回は嬬恋村全域にわたって濃. 0c→50c/min昇温→2600c。. 度分布をとった。. 試料採取は現地でTenax管に大気5∼30恩を吸引 し,PCNBを吸着濃縮したTenax管を実験室に持ち 帰った。大気の吸引には自動車等で電源が得られる 場合は真空ポンプと積算流量計を用い,電源が得ら. れない場合は1月の手動ポンプを必要回数引いて用 いた。手動ポンプはアクリル製気体試料採取混合容. 800C(1min.)→100c/min昇温→Ⅰ60 試料導入 カラム直前に,Tenax捕集管をつけ, 2800Cで加熱導入する。. 3.環境調査結果 3.14月4日の調査. PCNB散布前のバックグランドをチェックして置 くつもりで数点であるが試料を採取した。キャベツ. 器(ガスクロ工業製)で,使用に当っては吸引口に. 畑の中央部で大気濃度0.007/ノg/m3であった。前年度. Tenax管を装着し,容器の片方を樹木あるいはガー. の散布以後1年近く経過していて,環境中では最も.
(3) 17. 図3 バックグランド値およびキャベツ栽培地(大気:鵬/m3,水質:斜体鵬/〟) 水準が低い時点に当り,恐らくは不検出であろうと. の散布後景初の大気測定となった。4月のバックグ. 期待したのだが,残留が認められた。これによれば,. ランド値より大幅の上昇が認められた。つぎに,8. PCNB汚染は1年間継続していると云うことになる。. 日に田代小学校において連続測定した結果を表1に. 田代湖岸大気は0.036/Jg/m3とより高い値であった。. 示し,PCNB濃度変動を図4に示した。. これについては,同時に採取した小池川と田代湖の. これによれば,この日は晴で日中一応の水準で変. 水が0.40〃g/恩,0.07/瑠/£を示したことから,多分. 動があったが,夕方になって大気がやや安定して濃. 水系の残留が長期続き,とくに田代湖は径約1km. 度上昇傾向が認められた。大気分布調査の結果は,. の発電用ダム湖でかなりの容量があり,水系と大気 との平衡関係が考えられた。ただ,検体が少くてバ ックグランドと水系と大気の関係は次の課題とする。. l. 0. 1. 5. 2. 5. 2. 0. 2. 5. 2. 5. 2. 0. 2. 5. 2. 0. 2. 0. 2. 0. 2. 0. 2. 0. 1. 1. 1. 2. 0. 1. 2. 2. 0. 1. 2. 0. 1 1. 2 4. L22222L. 4. 3. 3 5. L21. 5. L L2333445532. 2. 0. 1. 1. 1. 田代小学校. 883﹂10221841740912. l. 1. 田代小学校 田代小学校 田代小学校 田代小学校. 0. 1. 0. 分と16時14分,気温17.00cであった。この時が今年. 1. 池川沿い畑の中で散布している地域の風下に当る2 地点で1.9/∠g/m3と0.77/瑠/m3を得た。時刻は15時47. 田代小学校. 1. で,5月8日は昼間の時間変動を測定した。3日は小. 田代小学校 田代小学校. 0. れたので,予備調査として,5月3日に散布隣接地点. 田代小学校. 1. 5月初日あたりからPCNB土壌注入作業が開始さ. 1. 3.2 5月3日および5月8日の調査. 1. れはPCNB不検出だった。. 田代小学校 田代小学校 田代小学校 田代小学校 田代小学校 田代小学校 田代小学校 田代小学校. q/. 下流の中之条町内で1点大気を採取しているが,こ. 田代小学校 1. じである。大気と水質は濃度単位が異るのでストレ. ートの濃度対比にはならない。また,この日30km. 時刻 気温 濃度(〃g/m3) 0ノ. なお,水質濃度は斜体で表示した。これは以下同. 場 所. 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 0 3 0 3 0 3 0 3 0 3 0 3 0 3 0 3. 地の大よその位置も同時に示した。. q/∩フ︵ソO. 調査地点は図3に示した。その周辺のキャベツ栽培. 表1 嬬恋村の大気中PCNB濃度時間変化 調査日:1986May8.
(4) 18. 〃g/m3. 濃 度 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 時刻. 図4 田代小学校におけるPCNB時間変動. 採取日,採取時刻の気象条件に差があって一率に比. この日は晴時々曇,東寄り風1∼4m/sの穏やかな. 較できないことも起こるが,これは環境試料では常. 天候であった。PCNB濃度は最大が小池川沿い畑の. に付随することでやむをえない。多数点を繰り返し. 1.36〃g/m3,最小が鳥居峠の0.07〟g/m3で平均は0・61. 測定してデータの代表性を高める以外ないわけであ. 〃g/m3となった。図によれば測定地域全体が汚染さ. る。. されていることが分かる。なお,鳥居川,小池川と. 3.3 5月10日の調査. 田代湖は水質を測ったが,これは翌11日の採取であ. 鳥居峠から田代湖の6kmの間,大気13検体を採 取した。測定値と地図上濃度分布を表2および図5 に示した。. る。田代湖の値はバックグランド値と変らず,水質 汚染は時期が多少遅れて現われるのかも知れない。 3.4 5月27日の調査. 図5 5月10日のPCNB濃度分布. (大気:〃g/m3,水質:斜体鵬/ゼ).
(5) 19. 表2 嬬恋村の大気中PCNB濃度分布. 表3 嬬恋村の大気中PCNB濃度分布. 調査日:1986MaylO 場. 所. 気温 濃度(〟g/m3). 時刻. 鳥居川 南側畑3170015.0 鳥居川 南側畑6 小池川沿い畑2 小池川沿い畑3 小池川沿い畑4. 5 5 0ノ. 5. 5 2. 7. 1. 8 8. この時も前回同様鳥居峠から田代湖の間で,大気. 1. 5 1 父U 8. 4 0 00 4. L L O O. ■. 田代小学校. 1 つJ. 1. l. 小池川沿い畑7. 7 8. つJ. 0. 小池川沿い畑5 小池川沿い畑6. 1715 1720 1732 1742 5 0. l. 小池川沿い畑4. 小池川沿い畑5 1640 小池川沿い畑6 1650 小池川沿い畑7 Ⅰ700 田代小学校 1720 11.0. 濃度(〃g/m3). 鳥居峠. 一■l l. 4 5 ∩フ 7 0 0 0 0 0. 0. l. 小池川沿い畑2 小池川沿い畑3. 34. 鳥居川 南側畑5 鳥居川 南側畑6. 時刻 気温. 所. 9 3 3 2 9 5 6 1 8 9 2 2 7 0 3 0 0 2 L 6 3 L O. 0.15 2 2 0 0. 鳥居川 南側畑11455 鳥居川 南側畑3 1505 鳥居川 南側畑4 1520 14.0. 0ノ 3 5 0 5 3. 0.07. l. 144517.0. 鳥居峠. 調査日:1986May27 場. 置は前回と同じであった。平均値は2・13〟g/m3とか なり高くなっていた0この両日は気温や風の状況な ど気象情況は大体同じようであり,ただ採取時刻に 差があることから,濃度水準の相違は時刻の差が関. 10検体を採取した。測定値と地図上濃度分布を表3. 係あると推定される。この両日の間に・PCNBの散. および図6に示した。 〟. 布が行なわれたかどうかは不明であるが,この広大. この日は晴で,東寄り微風1∼3m/sであった。た. な面積に短期間に散布が終了するとは考えられない。. だし,採取時刻が夕方にかかー),大気は前回よr)さ. この点,発生源の情報が足りないため,濃度の差を. らに安定と考えられる0最大値は小池川沿い畑の. いちいち理由付けることは難しい。また,土壌中の. 6・93pg/m3,最小値は鳥居峠の0・29pg/m3で,この位. 分解について研究3)−4)はあるものの,散布後水系移行.
(6) 20. 表4 嬬恋村の大気中PCNB濃度分布. を含んだフィールドにおける物質収支の実態はなお. 調査日:1986June17. 多く未知の領域に属し,今後の課題である。. っJ qノ 父U qノ qノ. 0 0. 8 4. 0 5 5. 2. 5. 5. 2. 0. 2. 5. 7. 0. 8 3. 3. 5. 2 /b 3. ′b. O. 5. 3 l. 7 ﹂. 6. /b. 9. 1. 5. 2. 3. 0. ﹂. 1. 5. 7 7. 5 4 l l. ∩︶. l. 7. l4 l. 3. qノ. 3. 7‘︶. 2. 3. 5. l. ﹂ 5 0 5 8. 7. O. 3 0 0 0. 1. 0. 0. 1. 0. 0. 0. 4. 2. 0. 2. L. 2. 4. 1 1. つム. O. 2. O. っJ. 2 2. O. っJ. O. 3. O. 1 1 1 1 1. 2. 布されたPCNBの揮発による大気汚染は,長期間継. な解答をえたいと思っている。. O. ある故,さらにこれらの検討を加えた上でより正確. 3. で共通して云えることは,土壌殺菌剤として注入散. L. つJ. O. 3. O. つJ. 2 0. つJ 4. 0 0. 5 0 5 1. 1 1 1. 4. 分布図で注目すべき傾向として吾妻川下流に低濃. 落の比較的多い,標高700m前後で嬬恋村では最も. 4. 2. 大気安定度つまり上下拡散作用の方に大きく左右さ. 4. 地形や風向風速等の変動の影響を受けることは少く,. 度域がある。嬬恋橋,大前,万座鹿沢口と云った集. 00 1 つJ. 0. 2. 00 8 5 7 5 2 ′b O 1. l. 1 1. l. 0. 0. l. 時間変動など気象要素に対する詳細な解析は未完で. 2 7一0 1. O. 1. れると云うことであろう。年変動,週変動あるいは. 濃度上昇の主要原因と考えられる。前後3回の調査. 1 0 / 0b. 3 1. 0. O. 1. O. 5. O. 0 2 8 2 l ′l l l7l l l l. 1. つムーJ. qノ. 6. 0. 1. 0. のために大気上下拡散が抑えられていたことが大気. 続し,かつ極めて広面積からの発生のために,局地. 4. 5. O. 4. 1. 田代農場. 田代農場 北 田代 南. っJ. 田代小学校. 鬼押し出し 南. つム. 鬼押し出し 北. 1. 西窪開拓 小池川沿い畑7. ●1. 小池川沿い畑5 小池川沿い畑6. /b. 1. 1. 5. 白根火山ルート 小池川沿い畑4. 時より高い濃度水準の分布図と考えてよい。散布時 PCNIi含有量が多いわけでなく,この日の天候が曇. 4. ′ト池川沿い畑2 ′ト池川沿い畑3. 4.60〟g/m3となった。従って全体として5月27日の 期からすでに相当日時が経過しているので,土壌中. 4. 居峠から田代湖の間の12地点について平均をとると. l. 月に調査した地域に含まれるので比較の意味で,鳥. 2. 400倍である。その中,大きい方であるが,ここは5. 1. 川下流袋倉の0.03〟g/m3となっており,その差は約. 0. との証左となる。第3には大気中濃度値であるが,. 5. 万座鹿沢口. 最大値は鳥居川南側畑の12.7〃g/m3,最小値は吾妻. つJ. 発生地は3つのブロックに分けられて,そこから大 は,気象,時刻など色々変化要因を含みつつも全体. 一−▲. 中原開拓. 鳥居川 南側畑6. 的にはこの調査方法が農薬汚染把握に有効であるこ. 2. 鳥居峠. 鳥居川 南側畑1. 較的明瞭な濃度分布図がえられたことである。汚染 気汚染が拡がっている状態が認められた。このこと. 1. 2は汚染の高い地域と低い地域とに区分けできて比. 1. なかったことがあげられる。つまり嬬恋村の大気は 全域にわたってPCNBによって汚染されている。第. 大笹関所跡. 姥ヶ原 南. 1. ば,まず第1に調査地全域についてPCNB不検出が. 嶋岩橋. 新鹿沢温泉. 0. 分布図は濃度別に色分けして示した。これによれ. 0. より一定した傾向はなかった。. 鹿沢国民休暇村. 古永井 北 姥ヶ原 北. 0. 1. 多かった。風はほとんどが0∼3m/sと微風であった. 5. 田代 北 藤原. ∩︶. 5. も大きく,高原地点では霧があー),低地では小雨が. はやや東寄り,吾妻川下流は無風と,場所,時刻に. 北西. l. 鹿沢温泉. l. ためやむをえないものであった。調査地城の標高差. が,風向は浅間山麓ではやや北寄り,小池川沿いで. l. から,最終は16時23分までかかった。これは広域の. る状況となった。気温はこの時期としては低目であ って,むしろ前回に近かった。採取時刻は9時47分. 北 東 西. 0. l. 上の貝. 北山開拓 北山開拓 北山開拓 大笹 南 北山間拓. この日は,曇のち雨の天候で5月の調査時と異な. O O O O J J J ﹂ 4 5 9 4 5 2 ﹂ 1 ﹂. 0. 仁田沢. 0 0 5 5 0 5 0 5 5 0 5. 0. 大沼. 干俣. l. よび図7に示した。. l. ことができた。測定値と地図上濃度分布図を表4お. l. にわたる大気濃度分布調査を実施した。試料採取地 点は42ヶ所,山岳地帯を除いて,濃度分布図を作る. 大前. 嬬恋倍. 0 2 つJ 4 4 0 1 つム 4 5 0 0 1 2 2 2 4 4. まり変らない中と云う理由で,6月17日に嬬恋村全域. 947. 羽根尾. 袋倉. l. PCNBの散布後約1ヶ月経過し,梅雨も近付いた ので,大雨等で散布地の土壌中のPCNBの状態があ. 所 時刻 気温 濃度(鵬/m3). 場. 0 0 5 1 5 0 7一l 5 5 2 10 1 10 −・ l 5 l 5l 4l. 3.5 6月17日の調査. 0. 4. 2. 4 5. L. 5.
(7) 図7 嬬恋村のPCNB大気濃度分布(pg/m3).
(8) 22. 低い渓谷沿いとなっている。ここはキャベツ畑から. もう1つ昨年と同じように環境庁告示による残留. 遠く,標高差もあるため汚染影響が少なく出ている. 農薬基準値0.08ppmをとると,今回の濃度平均値に. のであろう。. 対しては,基準内で最大に汚染された野菜約430gを. 以上3回の測定結果についてPCNB汚染の程度を 考察して見る。人体に対する農薬の影響は長期にわ. 毎日食べる量に相当し,この場合も肺からの吸収の 危険性は同様にさらに加算されよう。. たる発がん性,催奇性にあると思うが,勿論これら. 以上は,人間に関する直接の障害に限ってのこと. 直接のデータはない。従って,今仮りに残留農薬に. で,この外この広大な地域での生物の損害,とくに. 対する食品摂取許容量を目安とすると,前に記した. 水源地域の水生生物に対する損害ははかー)知れない。. ようにWHOにより体重kg当りの1日当り摂取許容. これらについては別途報文で扱うことにする。. 量は0.007mg/kg/dayとなっているから,これを体重 50kgの成人として〟gで表わすと350pg/dayである。 一方,嬬恋村の大気汚染の水準を今鳥居峠から田代. なお,6月17日には吾妻川水系について11検体水質 の分析を行った。参考データとして図8に示した。. 河川水中PCNB濃度は,最高値が新田代橋の3.30. 湖間について全検体を平均すると,2.44/Jg/m3とな. 〃g/旦,最小値が渋川市で0・004〃g/£であった。田. F),これを一応現在までえられた代表値と考えて,. 代湖は5月27日より減少しているが,これは著しく. 1日普通人が14m3の大気を呼吸するとして,2.44×. 水かさが増していたためである。キャベツ畑よr)さ. 14=34.16pg/dayの摂取量となる。これは前記許容. らに上流に当る旧鹿沢温泉でわずか出ているのは大. 量の約l/10である。この量が健康にどのように影響. 気汚染による拡散があるのかも知れない。. するかは検討の余地のあるところである。幾つかの 参考を述べると一般に大気汚染の場合は水質等より 変動が著しく,平均値の10倍程度の幅は地域や日に. 4.結 語 野菜単作農業地の1典型として,群馬県嬬恋村の. よって普通に認められる。現に本調査の範囲でも5. 高原キャベツ栽培地城の大気汚染を調査した結果,. 倍の値が測定されている。従って,条件によって1. 嬬恋村全域の大気がPCNBによって長期間汚染され. 日許容量を超える場合は容易に想像される。つぎに. 続けている実態が明らかになった。この地域で生活. 大気汚染による肺からの摂取は食品として腸からの. する住民に対する慢性作用,および土壌微生物,水. 摂取に比べて毒性が強いことであって,10倍以上数. 生生物,昆虫,鳥,動物等広領域わたる生態系破壊. 100倍にもなることが指摘されている。PCN別こはこ. が危倶される。PCNBは塩素系の農薬であって,才. れら大切なデータが出されていないが,少くとも同. でに1969年米国健康教育福祉省から勧告された謂ゆ. 列に扱うことはできない筈で,仮りに10倍としてす. るムラク報告の中で,その発がん性と催奇性が指摘. でに許容量に相当する。. されている毒物である。PCNBに関して引用すればヲ). 図8 河川水中PCNB濃度(pg/老).
(9) 23. 発がん性は動物実験の結果,陽性:「マラリヤ,チ. フスの予防のような公衆衛生上緊急時のDDT使用 のように,絶対必要な場合以外は使用を制限すべき で,通常の農業用や重要でない蚊の防除などはでき るだけ早急に廃止すべきである」と云う最も危険な ランクに載せられている。このランクには使用禁止 のアルド))ン,p,p′−DDTなどが属する。また催奇性. 文. 献. 1)花井義道・加藤龍夫・槌田 博:農薬による大 気汚染 一基礎実験と実態調査−,横浜国大環 境析紀要,12,47∼59(1985). 2)富沢長次郎・上路雅子:農薬データブック,ソ フトサイエンス社,昭和57年 3)須田鉄弥・峰岸恵夫・山田 要:農薬の作物お. についても,「催奇性が見出され直ちに使用制限すべ. よび土壌残留に関する研究,群馬県農業試験場. きであると判定された」部類にあげられていて,こ. 報告,18,65∼74(1978);20,39∼46(1980);. の中には水銀化合物,キャブタン,NACが属して. 21,55∼62(1981). いる。農薬毒性に関しては,本研究者はこれにつけ. 4)大沢貫寿・宮本 徹・山本 出:マスフラグメ. 加えるべき立場にはなく,農薬公害あるいは農薬に. ントグラフイ一によるpentachloronitrobenze−. よる環境破壊となれば,多方面の専門分野が協力し. ne(PCNB)および関連化合物の土壌残留分析,. て研究されるべきことは当然で説明するまでもない。 この場合,環境における農薬の存在状態に関する知 識が極端に欠落していることが,まず大問題なので ある。本報告は従って農薬による汚染状況をできる だけ詳しく提供する作業の一環であって,これら知 識を充実することが生命の危機と国土の荒廃をもた らす農薬乱用を抑止するために今不可欠と考えるも のである。 本調査結果から結論される重要な知見は,現在農 薬多用農村地帯は,大気汚染(水質汚染でも)から 見て,その酷さはかつての化学工業地帯や大都市と 同じと云えることである。むしろ,NOxや化学薬品 や自動車排気は廃棄物としてやむなく出していた点 を考えると,農薬は殺傷能力を研究し,自身毒とし て散布している訳だから,その影響はより大きくな って当然である。従って,工場公害,都市公害の経 過から見て,農薬の環境への排出規制措置を可及的 速やかに進めることが必要である。. 日本農薬学会誌9,339−344(1984). 5)渋谷政夫・山添文雄・尾形 保・能勢和夫:環 境汚染と農業,博友社,昭和50年.
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