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特集にあたって(特集 バチェレ新政権誕生とチリ政治経済の再評価)

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Academic year: 2021

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特集にあたって(特集 バチェレ新政権誕生とチリ政

治経済の再評価)

著者

北野 浩一

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

ラテンアメリカレポート

23

1

ページ

2-3

発行年

2006-05-20

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00006054

(2)

2

バチェレ新政権誕生と

チリ政治経済の再評価

特 集

特集にあたって

今回のチリ大統領選挙のカギは2点ある。いう までもなく,候補者個人の政治的資質に対する判 断は一つのポイントであるが,同時に,過去3期 15年間にわたる中道左派連合(コンセルタシオン) 政権に対する,チリ国民の審判という側面も併せ もつ。 コンセルタシオン政権は,軍事政権の継続に対 して「No」を叩きつけることで1990年に誕生した。

北 野 浩 一

(3)

ラテンアメリカ・レポート Vol.23 No.1■

3

【特 集】 バチェレ新 政 権 誕 生 と チリ政 治 経 済 の 再 評 価 しかしながら,政策でみるときわめて現実的な対 応を行ってきたといえる。政治面では,軍政期の 人権侵害の解明につとめる一方で,各政治グルー プの利害調整による民主主義の安定が重視された。 一方経済では,公共政策の役割を強調するものの, 自由化政策は大枠で継承されたといってよい。社 会政策面での公的教育・医療の充実は,常に高い 優先順位が置かれていたが,けっして財政面での 制約の範囲を越えることはなかった。はたしてチ リ国民は,これまでの民主政権にどのような判断 を下したのか。 折りしも昨年から今年にかけて,ラテンアメリ カ諸国で大統領選挙が相次いで実施されている。 その行方については,欧米系のメディアでも注目 を集めているが,日本でも異例といっていいほど 広く報道されている。今回これほどまでにラテン アメリカの大統領選挙に関心が高まっているのは, 政治におけるナショナリズムの高まりが天然資源 の国際貿易に影響を与える可能性が出てきた,と いう側面が指摘できる。すでに,天然資源の国有 化の動きが,ベネズエラの石油やボリビアの天然 ガス事業にみられる。進出する多国籍企業への影 響や,資源の供給に与える懸念は大きい。 左派政権の樹立は,同時に,所得格差の問題が 先鋭化してきていることの反映ともいえる。雇用 不安や社会保障政策に対する不満は,特に経済自 由化の進んだ1990年代から民衆の間に強い危機感 を生み出し,大衆運動が頻発する状況を生み出し ている。 チリの大統領選挙の過程でも,民衆の支持を取 りつける左派と,富裕層が支持する右派の対決と いう構図が明確になった。2005年12月の一次投票 では決着がつかず,翌年1月に実施された決選投 票にて,左派連合で社会党のバチェレ氏が当選し た。財界から強い支持を受ける候補を破っての当 選ということで,一部からチリの政治の左傾化を 指摘する意見も出ている。 選挙に先立って,昨年終わりからチリにおいて 議論が巻き起こったテーマとして,チリの経済が 過度に集中している,というものがあった。これ は,有力経済団体であるSOFOFAの元代表が辞任 の際に提起した問題で,M &Aの行き過ぎでチリ の経済がごく少数の企業によって担われている現 状を懸念して提起されたものであった。また,所 得分配の面での集中も指摘されている。これまで 左派グループから経済権力の集中に関する批判が なされることは多かったが,産業界の中枢にいる 人物の発言はより重く受け止められ,政・財・学 の各界で「チリ・モデル」再考の必要性が強く認 識されるに至った。 バチェレ新政権は,このような状況のなか,ど のような期待を背負って誕生したのか。また,あ り得るとすればどのような政策転換が考えられる のか。本特集は,チリの政治・経済を1990年代か ら再検討することで,このような疑問に答えるこ とを目指したものである。 特集の内容は,四つの論文によって構成されて いる。まず,安井論文は,政治状況を中心にラゴ ス前政権の評価と,バチェレ政権の課題を分析し ている。続く岡本論文は,チリの貿易政策をアジ アとの経済的つながりに注目して展望している。 民営化政策を扱う道下論文は,特に1990年代から 導入された「コンセッション方式」ですすめられ た水道事業の民営化を中心に,その仕組みと問題 点を探っている。最後の高橋論文は,所得分配の 問題点について,輸出主導型経済発展にその原因 を求めている。いずれも,バチェレ政権の今後を 占う上で,重要な論点を提起しているといえる。 (きたの・こういち/地域研究センター副主任研究員)

参照

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