液晶テレビ製造企業のグローバル競争と競争優位性
著者
明石 芳彦
雑誌名
経済学論究
巻
63
号
1
ページ
31-53
発行年
2009-06-15
URL
http://hdl.handle.net/10236/2712
液晶テレビ製造企業の
グローバル競争と競争優位性
Global Competition and Competitive
Advantage of LCD-TV Manufacturers
明 石 芳 彦
The most remarkable aspect of the LCD-TV industry is the dual structure of display panel production and TV set assembly. To make the newest panel, companies must frequently invest large sums of money in the building of panels themselves, as well as in high-technology-based manufacturing equipment. Companies are therefore inclined, or forced, to make and sell more and more display panels in order to re-coup their investment. Since the price of an LCD-TV set decreases more than 20% each year, it seems that engaging in competition in such a market would be unlikely to yield any profits. Companies outsourcing their panel production from another may not be able to reduce their costs in time to adapt to changes in the business environment. The nature of the ‘dual production structure’ business model appears to be a main reason behind the creation of such a difficult business condition.JEL:L68, O32, M21
キーワード:テレビ産業、液晶パネル、競争優位
Key words: TVs Industry, TFT-LCD, Competitive Advantage
I はじめに
日本の薄型パネル表示(Flat Panel Display)テレビ産業は図1に示された 通り、2000年頃に産業として本格的に立ち上がった感がある。国内カラーテレ ビの出荷台数でみると、2005年に薄型パネルテレビ469万台(LCD : Liquid Crystal Display液晶422万台、PDP : Plasma Display Panelプラズマ47万
台)はブラウン管(CRT: Cathode-Ray Tube)テレビ出荷台数(398万台)を 上回った。出荷金額で見ると、2003年に、薄型テレビ3400億円(液晶2100 億円、プラズマ1200億円)はブラウン管テレビ3100億円を上回った1)。 液晶テレビの基幹部品は液晶ディスプレイ・パネル(しばしば、パネルと略 称)であるが、パネル製造に多額の投資が必要な反面、ブラウン管テレビに比 べて最終的な彩色調整等を施す必要が少なくモジュール化したパネルを購入す 図 1 カラーテレビの国内出荷動向 ᢙ บ ⩄ ౝ ࿖ 䊎 䊧 䊁 䊷 䊤 䉦 㪇 㪇 㪇 㪉 㪇 㪇 㪋 㪇 㪇 㪍 㪇 㪇 㪏 㪇 㪇 㪇 㪈 㪇 㪇 㪉 㪈 㪎 㪇 㪍 㪇 㪌 㪇 㪋 㪇 㪊 㪇 㪉 㪇 㪈 㪇 㪇 㪇 㪐 㪐 㪏 㪐 㪎 㪐 㪌 㪐 㪇 㪐 ᐕ ਁบ 㪫 㪩 㪚 㪛 㪚 㪣 㪧 㪛 㪧 㗵 ㊄ ⩄ ౝ ࿖ 䊎 䊧 䊁 䊷 䊤 䉦 㪇 㪇 㪇 㪇 㪉 㪇 㪇 㪇 㪋 㪇 㪇 㪇 㪍 㪇 㪇 㪇 㪏 㪇 㪇 㪇 㪇 㪈 㪇 㪇 㪇 㪉 㪈 㪎 㪇 㪍 㪇 㪌 㪇 㪋 㪇 㪊 㪇 㪉 㪇 㪈 㪇 㪇 㪇 㪐 㪐 㪏 㪐 㪎 㪐 㪌 㪐 㪇 㪐 ᐕ ం 㪫 㪩 㪚 㪛 㪚 㪣 㪧 㪛 㪧 出所)『家電産業ハンドブック』2008(平成 20 年)、家電製品協会、から筆者作成。 1) 金額で見たその輸出比率は 2001 年から 2004 年まで 32%から 28%であり 2005 年 17%、 2007 年 8%と低下している。
ればすむせいか、パネルを製造していないテレビ供給者が多い。パネル供給者 は韓国、台湾、日本、中国の製造企業だけである。さらに、内作を除く外販市 場資料で見る限り、液晶テレビ用パネルの製造部品材料やパネル製造装置を提 供するのは日本企業が多く、日本の部材・部品供給メーカーと韓国や台湾のパ ネルメーカーは事業拡大に対応した能力確保や継続的技術開発などの面で緊密 な相互依存関係にある。また、液晶テレビ産業の特徴はテレビという最終製品 での競争だけでなく、液晶テレビ用パネルの生産・供給競争も激烈である。液 晶テレビ産業は高度技術依存の新興産業だが、多くのテレビメーカーは利益を 出せていない。本稿では、液晶テレビ産業における産業組織の特徴を生産工程 と製品特性の両面から整理し、テレビ製造企業の競争優位の源泉は何かを検討 する2)。
II 液晶テレビの生産工程と生産システム
(1) 液晶・液晶技術開発とシャープ 液晶は固体と液体の中間状態であり、1888年ライニツァ(Reinitzer)が発 見し1904年ドイツのメルク(Merck)社が初めて販売した。また熱・電気・ 磁気を与えて液晶の分子配列(形状、色等)が変化することを利用して、液晶 を表示用材料として具体的に応用したのは米国RCA社である。1964年、同 社ハイルマイアー(Heilmeier)がDSM液晶を発明し、1968年同社が液晶表 示のデジタル置き時計(クロック)を報道発表した。シャープはそれに目を付 けたが、1969年当時の新規開発課題をLED(発光ダイオード)と液晶のいず れにするかの社内議論を経て1970年半導体工場・総合開発センター建設他、 2) 1 枚のガラス基板は用途別に必要な液晶ディスプレイ・パネルの大きさ(型=インチ規模)に切 断される。2006 年の市場規模(849 億ドル)で見て、液晶テレビ 32%、モニター 23%、携帯 電話 17%、ノート PC11%である(内田 [2007] 300 ページ)。モニター用、PC 用以外の製 品用途は、①(2008 年基準での)大型テレビ 32 型以上、中小型テレビは 30 型以下、②携帯 電話 2.2 型、③カーナビ 7-10 型、④デジタルカメラ 3-4 型、⑤ゲーム機 10 型以下、⑥パー ソナル・ナビゲーション・デバイス(PND)4.5-7 型、⑦自動車計器板 3.5 型などであろう。 パネルの 4 割は携帯電話、カーナビ、ゲーム機など中小型パネルであるが、これらの用途では 高い技術力を要するという。液晶に多大の経営資源を投入してきた。1973年 ディスプレイ・パネルに液晶
を使った携帯式COS(chip on substrate)化液晶表示電卓「エルシーメイト」 (EL-805)を発売し、その後、1987年5月、3型TFT(薄膜トランジスター:
Thin Flat Transistor)液晶ディスプレイ搭載のカラーテレビ(10万画素)を出 荷した。また、1988年6月、14型カラーテレビの試作品を開発し発表した3)。
シャープは1980年代に松下電器産業から液晶の基本特許を購入し、2005年に は富士通の子会社を買収しMVA(Multi-domain Vertical Alignment)とい う液晶分子を垂直に並べる配向制御技術を獲得し、「液晶のシャープ」の地歩 を進めてきた。 (2) 液晶テレビ表示用ディスプレイの生産工程 TFT型液晶ディスプレイの生産は、光学フィルムで挟んだ2枚のガラス基 板を貼り合わせた間に液晶を封入したパネルに偏光板や光源を組み付ける。図 2に示した通り、液晶ディスプレイ全体の構成は、表示画面側から見て、反射 防止板、偏光板、補償板、ガラス基板、カラーフィルター、液晶とスペーサー、 ガラス基板、偏光板、バックライト・ユニットの順である。液晶表示は、2枚の ガラス間(セル)に染料付き液晶物質を封入し電圧をかけて色や形状が変化す る機能を活用する。液晶を挟むガラス基板を液晶セル(液晶パネル)と呼ぶ。 厚さ0.5∼0.4mmのガラス基板2枚の間隔は数µm(第8世代の場合、3µm) であり、液晶パネル(セル)の厚さは2mmにも達しない(第8世代の場合、 1.4mm)。 各生産工程を整理しておく。①パネル基板の元となるガラスは表面の粗さ (凹凸)、うねりや反りがないこと(無欠陥、平坦、異物除去)がガラス基板の 平面研磨技術として求められ、その品質がパネル性能とパネル生産面での歩留 まりを規定する。 ②1枚の液晶封入側のガラス基板の表面には、光が定められた方向に光を出 3) シャープは 14 型テレビをすぐには事業化しなかった。学会では松下電器産業が 12.5 型を 1986 年に発表し、セイコー電子工業が 14 型を 1987 年に発表していた(船田 [2007] 13 ページ)。 また、シャープは 1994 年に TFT 液晶テレビ 21 型を試作した(武田計測先端知財団編 [2004] 54 ページ)。
すように配向膜が配置され、酸化インジウムスズ(ITO)材で透明電極が形成 される。ガラス基板にTFT回路、フレキシブル回路基板(FPC)を貼り付け、 それを層間絶縁膜で被覆しTFT側ガラス基板(背面板)を作る。ガラス基板 に取り付けた駆動回路(ドライバIC)が、着色された液晶画素の1つ1つに 対応しており、TFT・電極が液晶分子の動きを制御するスイッチの働きを担 う4)。 ③もう1枚のガラス基板上にもITO酸化膜と配向膜を付け、カラーフィル ター層を形成し層間絶縁膜で被覆しカラーフィルター側ガラス基板(上面板) を作る。カラーフィルターは、3原色(RGB)空間に区分けし、そこから出る 光の量を混合して色相を表現する5)。カラーフィルター製造(塗布方式の場合) 図 2 TFT ディスプレイの構造 䊷 䉺 䊦 䉞 䊐 䊷 䊤 䉦 ᧼ శ 䌏 䌔 䌉 䊶 ⤑ ะ ㈩ 䊷 䉰 䊷 䊕 䉴 䊶 ሶ ಽ ᥏ ᶧ ᧼ ၮ 䉴 䊤 䉧 శ 㓒 㑆 㪊䊚䉪䊨䊮 ว ႐ 䈱 ઍ 䋸 ╙ ␜↹㕙 శ ዉ 䊶 ᧼ 䊃 䉟 䊤 䉪 䉾 䊋 ᧼ ᢔ శ 䊛 䊦 䉞 䊐 ะ ᐲ ノ ᧼ శ 䌏 䌔 䌉 䊶 ⤑ ะ ㈩ 䋩 ᧼ ᱛ 㒐 䋨 䉴 䊷 䉬 ᧼ ၮ 䉴 䊤 䉧 ሶ ⚛ 䌔 䌆 䌔 ᧼ Ꮕ ⋧ 䊃 䊷 䉲 䊛 䉵 䊥 䊒 䊷 䉰 䊷 䊕 䉴 ▤ శ Ⱟ ᭂ 㒶 ಄ 䋨㪚㪚㪝㪣䋩 出所)各種資料から筆者作成
4) TFT(Thin Flat Transistor)=薄膜トランジスターが画素スイッチ素子として機能するア クティブマトリックス型 LCD=液晶ディスプレイが大半であり、液晶ディスプレイはビジネス 面では「TFT ディスプレイ」と呼びうるという(船田 [2007] 4 ページ)。
5) サムスン電子はカラーフィルターを用いない(LED を用いた)32 型液晶パネルを開発し、2006
年から量産している。それは材料費とプロセス時間を削減し、パネルの歩留まり率を向上させる (『Semiconductor FPD World 増刊号』21 ページ)。
は、ガラス基板上に酸化インジウムスズ(ITO)材で透明導電膜を蒸着させ、 RGB顔料配置を適切な間隔に仕切るため基板上に黒色の格子(ブラックマト リックス)層を作る。電極基板の片側にカラーレジスト材料を塗布、露光・現 像、エッチング、レジスト剥離、R層塗布、露光・現像、G層塗布、露光・現 像、B層塗布、露光・現像、形成されたRGB層全体を被覆するオーバーコー ト剤の塗布したうえ、セル製造工程へ送る6)。 ④液晶セル(またはパネル)製造工程は、配向膜塗布後にITO酸化膜を形 成し、配向処理、シール材塗布、液晶注入、真空貼合わせ、紫外線照射/熱硬 化炉での焼き固めなどの順である7)。つまり、 2枚のガラス基板間に入れる液 晶の位置と間隔を一定にする材料としてフォトスペーサーを均一に散布してお き、2枚のガラス基板を圧着させ、紫外線硬化型接着剤を塗布し、紫外線を照 射し硬化させる。レーザーでガラス基板を切断後、基板間に液晶を滴下工法で 注入し封止する(滴下方式は第5世代以降)。 その後、TFT側ガラス基板(背面板)の背後に、偏光板、視野角拡大フィ ルム、輝度向上フィルム、プリズムシート、光拡散フィルムをはさみ、バック ライト・ユニットを取り付ける。⑤バックライト・ユニットは、輝度向上フィ ルム、プリズムシート、拡散板、導光板、光源(CCFL=冷陰極蛍光管または LED=発光ダイオード)、反射板からなる8)。導光板はアクリル板にドット印 刷したりV溝加工したりする(プリズム加工)。LEDの厚みが0.6mm、ポリ カ導光板の厚みは0.4mm以下にする。 他方、カラーフィルター側ガラス基板(上面板)の表示画面側にも位相差 フィルムや偏光板を貼りつける。ここで偏光板はポリビニルアルコール(PVA) フィルムを染色・延伸した偏光子フィルムの両面に保護層として三酢酸セル ロース(TAC: Tri Acetyl Cellulose)を貼り合わせたものである9)。位相差 6) 『Semiconductor FPD World 増刊号』20 ページ。 7) 『Semiconductor FPD World 増刊号』59 ページ、内田 [2006] 60-69 ページ参照。 8) 『Semiconductor FPD World 増刊号』24 ページ、金光ほか [2007]、内田 [2006] 48 ペー ジ。なお、17 型以下のパソコンでは、冷陰極蛍光管(CCFL)1 つを片側に設置した「エッジ ライト型」である。また、高級機種に LED バックライト搭載が進む予想もあるが、2009 年 3 月現在、CCFL との費用差は小さくない。 9) 偏光板について、杉本 [2006] 21、87、244 ページ、内田 [2006] 84-87 ページ参照。
フィルムは液晶の光学的な歪み(複屈折)を補償する機能を持つ。なお、偏光 板と位相差フィルムを貼り合わせた厚さは0.3-0.4mmである。 液晶テレビの製品としての基本機能・特性が定まった今、表示品位の向上は パネル品質に依存するが、それはおおむね解決した広視野角、高速応答、黒色 表示のコントラスト・バランスなど、画像の美しさをさらにどれほど要求する か、かつ、画像品質(製品技術)と販売価格の水準がどれほどの対応関係にあ るかに依存している。 (3) 部材・部品の供給 テレビ用液晶ディスプレイ生産の主要な部材や部品の供給者を、日本メー カーを中心に一例を挙げる。①パネル用ガラス基板用のガラス生産(コーニン グ、旭硝子)10)・ガラス加工(倉元製作所)、②液晶表示駆動回路(ドライバ IC)設計(オムロン、NECエレクトロニクス等)、③カラーフィルター(凸版 印刷、大日本印刷)、偏光フィルム(日東電工、LG化学、力特光電科技、住 友化学)、視野拡大フィルム(富士フイルム)、④液晶(独メルク、チッソ)、 赤緑青に着色された液晶表示用レジスト材(JSR、東洋インキ工業等)、オー バーコート材(JSR)、⑤バックライト・ユニット(Radiant、HeeSung、オム ロン)など11)。なお、偏光子フィルムは、クラレのボパール(ポリビニルア ルコール製)樹脂を原反として、日東電工や住友電工が偏光板を、富士写真フ イルムやコニカミノルタオプトが偏光子膜保護フィルムを作っている。また、 液晶は1000-500種から顧客用途に合わせて10-20種を絞り混合される。配向 膜はJSRなどが提供し、配向膜印刷版はコムラテックが製造する。プラズマ CVD装置、露光装置、洗浄・ウェット処理装置などの液晶ディスプレイ用製 造装置、その他、純水や特殊化学薬品、工業用ガスなどが必要となる。 東アジアに集中するディスプレイ・パネルメーカー等もこれらの有力部材供 10) LG 化学がドイツ・ショット社と技術提携し、液晶ガラス基板の製造開始計画を表明した(『日 刊工業新聞』2009 年 2 月 12 日)。またサムスン・コーニングは CRT ガラスバルブを製造す るためコーニング・グラスワークスとの合弁で 1973 年に設立されたが、90 年代には液晶用ガ ラス基板を製造している。 11) 『2007 年 液晶ディスプレイ構成材料の市場』により整理した。
給メーカーに多くを依存している。実態から見れば、これら日系企業は、日本 国内の取引先よりも、世界シェア上位企業である韓国や台湾の取引先の近隣に より大きな生産能力規模の工場を有している。関連して、パネル製造の設備・ 装置メーカーも日本企業が多いけれども、取引先は世界市場シェアに応じて韓 国や台湾に比重がある。韓国と台湾の現地企業は日本企業との合弁形式で現地 企業が生産することも少なくない。つまるところ、特定材料を高度微細・精密 に加工した部材や部品は日本企業と韓国企業、台湾企業もほぼ同様であり、使 用する製造装置もほぼ同様ということである。製品技術に違いがあるとすれ ば、材料を素材メーカー側の標準品から選択するか独自の技術仕様を提示しつ つ両者が共同で材料開発するかという面と、最終製品に用いる品質の許容限界 (技術仕様)などであろう。 液晶テレビ用パネルに使用されるガラス基板は、(マザーガラスと呼ぶ)元 の大きなガラス基板を切断して得られる。液晶テレビパネル用ガラス基板の規 模はインチ数(日本では型数)で32型、47型と呼ばれるが、画面規模が大き いほどガラス基板の製造面で歪みや反りや可視角などの課題が出て、技術的に は製造が難しくなる。だが従来はプラズマテレビに適性があると見なされた規 模を超えて、液晶用パネル規模の生産・実売製品規模も拡大している。液晶パ ネル用ガラス基板1枚からとれる面数を32型で言えば、第5世代では3面、 第6世代では8面、第7世代は12面、第8世代 は15面となる。技術発展と ともに生産できるマザーガラス規模が拡大し、それから切断できる面数が増加 し、生産性は向上する。表1に例示すると、8世代ガラス基板を42型、60型 で見ると、8面、3面がとれた。第10世代は60型で6-8面である。 表 1 液晶テレビパネル用ガラス基板 ᆎ 㐿 ↪ ᢙ 㕙 䉎 䉏 䈫 䉌 䈎 ᨎ 䋱 ᧼ ၮ ᧼ ၮ 䉴 䊤 䉧 䊷 䉱 䊙 ᐕ ဳ 㪇 㪍 ဳ 㪎 㪌 ဳ 㪉 㪌 ဳ 㪎 㪋 ဳ 㪉 㪋 ဳ 㪎 㪊 ဳ 㪉 㪊 䉵 䉟 䉰 ઍ 㪉 㪇 㪇 㪉 㕙 㪊 㪉 㪅 㪈 㬍 㪇 㪅 㪈 ⚂ ઍ 䋵 ╙ 㪊 㪇 㪇 㪉 㕙 㪉 㕙 㪉 㕙 㪊 㕙 㪊 㕙 㪍 㕙 㪏 㪌 㪏 㪅 㪈 㬍 㪌 㪅 㪈 ઍ 䋶 ╙ 㪌 㪇 㪇 㪉 㕙 㪊 㕙 㪊 㕙 㪍 㕙 㪍 㕙 㪏 㕙 㪉 㪈 㪉 㪅 㪉 㬍 㪎 㪏 㪅 㪈 ઍ 䋷 ╙ 㪍 㪇 㪇 㪉 㕙 㪊 㕙 㪊 㕙 㪍 㕙 㪏 㕙 㪏 㕙 㪉 㪈 㪌 㪉 㪅 㪉 㬍 㪌 㪐 㪅 㪈 䋵ઍ 㪅 䋷 ╙ 㪍 㪇 㪇 㪉 㕙 㪊 㕙 㪊 㕙 㪍 㕙 㪏 㕙 㪏 㕙 㪇 㪈 㕙 㪌 㪈 㪍 㪋 㪅 㪉 㬍 㪍 㪈 㪅 㪉 ઍ 䋸 ╙ 㪏 㪅 㪉 㬍 㪋 㪅 㪉 ઍ 䋹 ╙ 㕙 㪏 㪄 㪍 㕙 㪏 㩷 㪋 㪅 㪊 㬍 㪌 㪐 㪅 㪉 ઍ 㪇 㪈 ╙ 㩿㫄㪀 出所)『Semiconductor FPD World 増刊号』60 ページ、武田計測先端知財団編 [2004] 75 ページ、内田 [2007] 69 ページ他から筆者作成。
(4) 競争戦略:協力・提携と競争 液晶テレビ生産にはディスプレイ・パネルを必要とするが、ディスプレイ生 産では、パネル(液晶セル)に偏光板や光源を取り付ける、パネルに使うICド ライバーを設計・開発するなどの必要がある。その際、事業戦略としてパネル を自社内製するか外部調達するかの選択がある。つまり、パネルを「作るか、 買うか」である。 i)パネルを「作る」には大規模な設備投資が必要だが、①量産できれば単位 費用が低下し、また②部品設計変更や部材改良などで原価低減できれば、販売 競争上、有利となる。他方、工場の生産稼働率低下は費用増加に直結し収益性 を圧迫する。こうして、「パネルを生産し、テレビを組立販売する」メーカー は、パネル生産規模の経済性を追求し、薄利多売でもパネルもテレビも販路を 確保しなければならない。例えば、川上・川下の統合型生産では自社でパネル を作り、テレビを組み立て、販売する。ここには友達光電(AUO)とBENQ などエイサー企業集団内の垂直的分業や、また製品販売では競合するライバル 企業と共同でパネルを作るソニー(S-LCD)などの事業形態も含む。 ii)パネルを「買う」場合、a)設備投資に対応する固定費の負担はない。パ ネルと制御系部品をモジュール部品として調達できれば、事業参入が可能とも 言える。パネルを韓国・台湾メーカーから調達して中国で最終組立する形態も ある。一方、b)予め買い取り契約を交わすが、①必要パネルの安定調達問題、 とくに好況期に商機を逃がす危険をはらむ。②製造原価の7割を占める部品材 料費の管理面で自由度が少ないのでテレビ価格の下落に比べてパネル価格が下 がらないとき、調達費用が割高となりうる。 他社(国内では販売市場のライバル)が作ったパネルを買い、テレビを組み 立て、販売する。パネル製造を外部に委託しテレビを組み立てる場合でも、① 制御部品を自社開発し、極めて低費用で量産する船井電機型OEM(委託側設 計、委託企業ブランド名での請負受託生産)12)、②受託者が委託者の指示に基 12) 船井電機はパネルを TMO や LG 電子等から大量に購入し、それに独自の制御部品を付けて中 国広州の生産委託工場で組立て、その 80%を米国ウオールマート等、日本ではヤマダ電機で販 売する。パネル安定確保のため船井電機は TMO に 4 億ドルの資金協力をした。
づき開発等を代行し生産するODM(受託側設計、委託企業ブランド名で生産) 型、③標準仕様パネルを購入するなどの、パネルもテレビ組立も外部委託する (工場を持たない生産委託)ファブレス型に企業類型は分かれる。 (5) シャープの液晶テレビ用パネル生産 シャープは1995年三重県多気町ほかで液晶テレビを生産開始し、2001年 「AQUOS」(13, 15, 20型)を発売した。また、2004年三重県亀山市で液晶パ ネル製造から42型級液晶テレビ組立までを一貫生産したが、画質の美しさか ら量販店で「亀山産」の札が付いた。シャープ・亀山第2工場は第8世代のマ ザーガラス基板をもとに液晶テレビ用パネルを生産している。同工場の液晶テ レビ用パネル生産は、歩留まり95%を誇る自動化工場として、きわめて高度な 工程管理を実現しているようである。それを新聞報道(『日本経済新聞』2006 年1月10日)からまとめてみると、以下のようになる。 1)微細生産技術 液晶駆動回路を正確にガラス基板上に形成、カラーフィ ルターを張り合わせ、基板全体に液晶を均一に封入。 2)無人搬送システム ガラス基板の厚みは0.7mmであり、人間が持て ば基板の自重で真ん中が30cm以上たわむほど薄い。1トンの台車が揺れずに 疾走するが、ガラス基板は回路形成だけでも5回以上工程間を移動する。搬送 速度と搬送中の振動や停止時の衝撃が不良品発生の原因となる。その影響を制 御するため、ガラス基板を数カ所のポイントで下支えし搬送するトレイ形式の 無人搬送システムを独自に開発した。例えば270メートルの直線軌道やその 他複雑に走るループ上の軌道がある。 3)チリ、ほこり対策 チリは液晶の画素欠損につながる。パネル1枚を 無駄にする。亀山のクリーンルームは「クラス100」だが、限りなくゼロに近 い。「クラスゼロ」への挑戦が大目標のようである。そのためにも、工場内の 気流管理として、搬送台車の運動に伴う気流変化、チリを吸い込む仕組みや吸 い込み口の形状などがすべてノウハウという。 4)設備メーカーへの技術流出防止策 製造装置の分割発注、搬入後も大幅 な独自改良が加えられた。ラインは区画ごとに立ち入り制限される。納入メー
カーの担当者は自社の装置しか目にすることができない。 ガラス基板に電極をペーストして焼き上げる工程は時間と温度のバランス 管理が重要で、自動化ラインであるが、ある種の職人技を必要とする。関係者 は毎日情報交換し、生産技術を日々高めていく必要がある。 以上、ガラス基板パネルの生産には、各種の特性(機能)を備えたフィル ムやシートを貼り合わせていく技術が要求される。一方、液晶テレビの組立自 体は、液晶テレビ用パネルに制御部品を組み付けるだけで、スクリュードライ バー型生産(あるいはモジュール生産)に近く、液晶テレビを生産するには、 液晶テレビ用パネルを入手できればよいともいえる。また、液晶産業に関す る日本の部材・部品、製造装置メーカーは韓国や台湾のパネルやテレビの組立 メーカーに製品を積極的に供給している、いや供給せざるを得ないのである。
III 液晶テレビ産業における産業組織と収益性
液晶テレビ産業というとき、生産面から見て、①テレビ製品を作る多数メー カー、②テレビもパネルも作るメーカー(サムスン電子、LG、シャープ、パナ ソニック)、③グループ企業として動いているが統計上は主にパネルだけ作る 少数メーカー(友達光電(AU Optronics Corp.:AUO)、奇美電子(Chi Mei Optoelectronics:CMO))に分かれる。つまり、競争の次元も、液晶テレビ 製品市場と液晶テレビ用パネル市場での「2段階の競争」となっている。 (1) 液晶テレビ産業の市場シェア 1)液晶テレビ販売市場シェア 2007年の液晶テレビ市場のグローバル・シェア(金額ベース)は、サムス ン電子18.7%、ソニー17.1%、シャープ11.7%、フィリップス9.9%、LG電 子8.0%、東芝8%などの順である。生産台数では韓国の主力メーカー2社が 圧倒的に多い。また、北米市場の台数シェアは、2008年第1四半期に、サム スン電子13.5%、ヴィジオ12.2%、ソニー11.3%、LG8.9%、シャープ7.8%、 など、2008年第4四半期に、サムスン電子20.4%、ソニー14.2%、ヴィジオ12.3%、LG8.1%、東芝7.9%などとなり、ヴィジオが第2∼3位である13)。同 社は開発や設備投資をせず、中国生産パネルを集めてテレビを組立、販売する ファブレス・ベンチャー企業である14)。 2)液晶テレビ用ディスプレイ・パネル供給市場シェア パネルの世界出荷市場の状況を2007年出荷金額ベースでみると、サムスン 電子27%、LGフィリップスLCD(現、LGディスプレイ)22%、友達光電 (AUO)19%、奇美電子(CMO)13%、シャープ12%などとなる。ソニーが 単独で液晶パネルを生産しておらず液晶テレビの世界市場シェア状況とは異 なる。また、サムスン、LGで48%、AUO、CMOで33%と韓国、台湾両者 のパネル生産シェアが圧倒的に高い。その後、AUOが台湾企業(廣輝電子: QDI)の吸収合併等によりサムスン電子の生産量と競うなど、台湾企業だけで シャープの3倍近い量のパネルを生産している。液晶テレビ用パネルを生産 する企業には需要側企業との契約関係など世界への販売を想定した生産規模、 投資規模、投資資金回収に求められる速度の見極めが重要となっている。 (2) 価格低下と事業収益 1)価格低下 32型液晶テレビを事例にする。図3にはシャープとソニーの国内販売価格 の推移を示している。シャープの場合、2004年4月に43万円以上、1年後に 約33万円、2年後に約22万円、3年後も約22万円、4年後に約13万円、2009 年2月に約9万円となっている。ソニーについても同様であるが、2004年4 月に40万円台、半年後に新機種を投入したが1年後に約30万円、2年後に約 22万円、3年後に約21万円、4年後に約13万円、2009年2月は約9万円で ある。機種・型式変更はあるが、5年間で販売価格帯は5分の1の水準に低下 している15)。 13) シェアは『日本経済新聞』2008 年 2 月 23 日、5 月 30 日、2009 年 2 月 13 日。 14) ヴィジオ(本社カリフォルニア州アーバイン)は従業員数 120 人だが 2008 年 350 万台超の 薄型テレビを販売した(『日本経済新聞』2006 年 4 月 1 日)。 15) 『日本経済新聞』日経プラスワンの「価格情報/価格定点観測」による。シャープの場合 LC-32DG1, 32GD3, 32AD5, 32BD1, 32GH3, 32D30 の価格、ソニーの場合 KDL-L32HX2, L32RX2, L32HVX, S32A10, 32S1000, 32V2000, 32V2500, 32J3000, 32J1 の価格。
北米市場では2007年1-3月、ヴィジオの32型液晶テレビ価格は約550ド ルで、サムスン電子や日系企業のテレビ平均価格は865ドルであった。2007 年6月、ヴィジオの製品は597ドル、エマーソンのテレビは498ドルであっ た。平均店頭価格は2008年4-6月までの約1年間で23%下落し、2008年末、 それは524ドルまで1年半で40%下落すると予想されていた。同年11月、サ ムスン電子は499ドルで販売していたが、2009年初、ヴィジオのテレビは397 ドルで、ソニーやサムスン電子の製品より約200-100ドルも安い16)。 図 3 日本における 32 型液晶テレビ市場販売価格の推移 䊒 䊷 䊞 䉲 䋩 䋱 䋨 䊷 䊆 䉸 䋩 䋲 䋨 䊒 䊷 䊞 䉲 㪇 㪇 㪇 㪈 㪇 㪇 㪉 㪇 㪇 㪊 㪇 㪇 㪋 㪇 㪇 㪌 㪇 㪇 㪍 㪉 㪅 㪐 㪉 㪅 㪏 㪉 㪅 㪎 㪈 㪅 㪍 㪎 㪅 㪌 㪉 㪅 㪌 㪉 㪈 㪅 㪋 㪇 㪈 㪅 㪋 㪎 㪅 㪋 㪋 㪅 㪋 ᐕ ජ ᩰ ଔ ᦸ Ꮧ ᩰ ଔ 㜞 ᩰ ଔ ૐ 䊷 䊆 䉸 㪇 㪇 㪇 㪈 㪇 㪇 㪉 㪇 㪇 㪊 㪇 㪇 㪋 㪇 㪇 㪌 㪇 㪇 㪍 㪇 㪇 㪎 㪇 㪇 㪏 㪉 㪅 㪐 㪉 㪅 㪏 㪉 㪅 㪎 㪈 㪅 㪍 㪎 㪅 㪌 㪉 㪅 㪌 㪉 㪈 㪅 㪋 㪇 㪈 㪅 㪋 㪎 㪅 㪋 㪋 㪅 㪋 ᐕ ජ ᩰ ଔ ᦸ Ꮧ ᩰ ଔ 㜞 ᩰ ଔ ૐ 出所)『日本経済新聞』日経プラスワンの「価格情報/価格定点観測」から筆者作成。 16) 『朝日新聞』2008 年 10 月 16 日、『週間ダイヤモンド』2008 年 11 月 22 日、『日刊工業新 聞』2009 年 2 月 3 日。
ヴィジオの事業システムはパネルと制御部品の製造および組立工程を外部依 存し、同社は開発や販売に注力する。販売面では、標準的テレビを求める中低 所得層を対象に、大手メーカーのテレビ価格を「傘状価格(umbrella price)」 として参照価格にし、それ以下の価格設定で割安感を訴求する。工場を持たず 最終製品の標準機能を出す部品をとり集めて組み立てるため、人件費を含め固 定費負担が少ない17)。ただし、パネル価格とテレビ製品価格の低下が速く激 しいため、製造[委託]経費と販売価格との差が縮小し、傘状価格モデルが崩 れ、低価格販売だけを訴求する競争形態が支配的になると競争優位の要は資金 調達力に移り、この事業システムは持続できないかもしれない。 図4には新聞情報から32型液晶テレビの価格とパネル価格を図示している。 製品価格は06年9月に1300-1500ドルであったが、09年2月に約400ドル に低下しており、パネル価格は05年5月に650ドルであったが、09年2月 に170ドルまで低下している。パネルと製品価格が4年間で約4分の1に低 下していることが伺える18)。 図 4 米国市場における 32 型液晶テレビ関連価格の推移 ᩰ ଔ 䊎 䊧 䊁 ᥏ ᶧ ဳ 䋲 䋳 䉎 䈔 䈍 䈮 ႐ Ꮢ ࿖ ☨ 㪇 㪇 㪇 㪉 㪇 㪇 㪋 㪇 㪇 㪍 㪇 㪇 㪏 㪇 㪇 㪇 㪈 㪇 㪇 㪉 㪈 㪇 㪇 㪋 㪈 㪇 㪇 㪍 㪈 㪉 㪈 㪅 㪏 㪌 㪅 㪏 㪈 㪅 㪏 㪐 㪅 㪎 㪈 㪅 㪎 㪈 㪅 㪍 㪌 㪅 㪌 ᐕ 䊄 䊦 䊦 䊈 䊌 ᩰ ଔ 㜞 ᩰ ଔ ૐ 出所)『日本経済新聞』『日経産業新聞』から筆者作成。 17) 中国の液晶テレビシェア上位は廈華電子(江蘇省無錫、600 万台)、TCL 集団(広東省惠州、 130 万台)である。当初、パネルは韓国、台湾から品質落ちの物を安く調達した(『日本経済新 聞』2005 年 11 月 2 日)が、現在は SVA、BOE、IVO など現地メーカーが第 5 世代を生産 している(『アジア半導体/液晶ハンドブック 2008-2009』)。 18) 『日本経済新聞』2004 年 11 月 9 日、2007 年 9 月 24 日、2008 年 5 月 27 日ほか。
2)パネル調達と事業収益性 テレビ販売価格はほぼ年2-3割低下しているが、パネルや主要部品等のコス トがそれ以下の速度で低減しないとすれば、収入以上の経費負担を強いられる 状態が継続する。日本の薄型テレビメーカーではパナソニックとシャープ以外 は赤字という(『日本経済新聞』2006年7月1日、同08年2月6日)。世界 市場シェア第2位のソニーもテレビ事業部門が赤字である。大量販売の経済 性が実現していない。液晶パネル費用はテレビ製造原価の約7割(テレビ販売 価格の約4割)を占め、またパネル原価の約7割を部品材料費が占めている。 例えば、32型テレビ用TFT-LCDパネルの費用構成(2005年)はバックライ ト21%,カラーフィルター16%,プリント基板10%、配向膜・塗料9%、偏 光フィルム7%,ガラス基板6%,ドライバーIC 4%,液晶2%と部品材料費 が75%、また、減価償却費7%、変換器6%、人件費5%、間接費4%、その他 3%である19)。パネル生産費用のうちバックライト・ユニットやカラーフィル ターの比率が2割前後と相対的に高い。バックライト・ユニットは必要機能の 一部をフィルムに移管する開発や光源をLEDに転換する動きなどがある。カ ラーフィルターも機能向上の技術開発が進んでいるが、サムスン電子のように 使用しない企業もある。 費用構造は各社ごと異なるとはいえ、テレビ市場価格の低下速度が劇的に速 く、低下幅が大きいので、一定量のパネルを調達購入する契約時に価格条件を 制御しにくいこともある。例えば、ソニーは薄型テレビへの本格的事業展開に 出遅れたため、パネル生産設備投資に「コミットメント」し投資のリスクと資 金の共同負担をし、委託生産方式でパネルを確保した。ソニーはサムスンとの 合弁会社S-LCDを2004年4月に設立し、韓国・忠清南道牙山市のS-LCD第 19) 『2007 年 液 晶 デ ィ ス プ レ イ 構 成 材 料 の 市 場 』シ ー エ ム シ ー 出 版 、142 ペ ー ジ に よ る 。 他資 料 で も 、テ レ ビ 用 パ ネ ル の 費 用 構 造 は 部 品 材 料 費 が 7 割である(『Semiconductor FPD World 増 刊 号 』44 ペ ー ジ )。そ し て 、LCD パ ネ ル 製 造 コ ス ト の 内 訳 は ,バ ッ ク ライト 28%,カラーフィルター 21%,偏光板 13%,ガラス基板 8%,液晶 6%,ドライ バー IC4%,その他 20%などがある(『Semiconductor FPD World』2007 年 7 月号)。 http://www.pressjournal.co.jp/magazine/backnumber/2007 07.html(2009 年 3 月 4 日アクセス).
1工場で2005年4月からパネル生産し、愛知県・稲沢テックに運んで半完成 品まで組み立てた後、輸出し、市場近くの工場でチューナー取り付けと最終調 整をして完成製品としていた。2006年7月には第8世代パネル用第2工場の 建設を決定し2360億円を折半した。「内部製造」で需要変動に応じたパネル調 達とテレビ供給の機動性が出来、コスト削減や画質向上につながったという。 一方、ソニーは08年度にサムスン電子とAUOのパネルを用い、台湾の鴻海 精密工業グループやシンガポールのフレクトロニクスから約200万台のテレ ビを調達した。それでもテレビ事業は黒字でない。ソニーが契約していたサム スン製パネル(32型パネル換算)は韓国ウオン安で5%相当の利益を生じさせ たが、台湾メーカー製より最大で2割ほど高く、「パネル調整戦略の失敗」と 見なされている。その他、開発人材が他社より多い、パネル生産・中間組立・ 最終組立の拠点間物流で費用がかさむ、より安価な部品調達はブランド依存の 販売方針と整合性がないと消費者に見られることもあり販売水準が伸び悩んで いる(『日刊工業新聞』2009年1月19日他)。 なお、図5にはパネルの費用構成を示している。古い資料であるが特徴は つかめる。①費用の地域間格差は全体で約20ドル以内である。②人件費の差 図 5 製造原価の構成 ᚑ ᭴ 䈱 ଔ ේ ㅧ 㪇 㪇 㪉 㪇 㪋 㪇 㪍 㪇 㪏 㪇 㪇 㪈 㪇 㪉 㪈 㪇 㪋 㪈 㪇 㪍 㪈 ⾌ ▤ ⽼ ⾌ ⊒ 㐿 ⓥ ⎇ ⾌ ઙ ੱ ⾌ ළ ఘ ଔ ᷫ ⾌ ຠ ㇱ 䊶 ᢱ ᧚ ☨ 䊄 䊦 บḧ ࿖ 㖧 ᧄ ᣣ 㪏 㪐 㪐 㪈 ᐕ䈱⾗ᢱ ╙ 㪌㪊㪅 ઍ䈱႐ว 注)製造原価総額は、台湾 235 ドル、韓国 240 ドル、日本 258 ドル。 出所)赤羽 [2004] 7 ページから筆者作成
は約10ドル前後である。現状のように製造原価が年20%の低下を余儀なくさ れたとき、競争力には材料部品費や為替相場が大きく影響すると考えられる。
IV 液晶テレビメーカーの競争優位の源泉
(1) 事業規模格差 業界トップのサムスン電子は先行的に技術開発し、大量に製造し、価格低下 も他社に先駆けて戦略的に実施している20)。業界第 2位のソニーは上述のと おり、自社の「強力な」ブランドで販売しようとしたが計画通りに進まず、費 用管理が課題のようである。同3位のシャープは同社製品を「高品質品」と 理解して購入してくれる顧客数の増加と、円高基調のなか普及価格帯の製品販 売をいかに両立させていくかが課題のようである。同4位のLGグループは、 標準機能に近い商品品質製品を低価格で販売し、割安感を訴求しているように 思われる。 市場シェアトップのサムスン電子は総合的な力量を発揮して、多売薄利の安 売り攻勢・戦略をとっている。例えば、2008年11月に米国市場で50型の従 来製品の価格をサムスン電子は1399ドル99セントから500ドル割り引いて 発売した。それを契機に市場販売価格が大幅に下落した。同社は32型製品を 499ドルで販売しており、ヴィジオの製品価格と大差ないと攻勢を強めている (『週間ダイヤモンド』08年11月22日)。 パネル生産は装置産業であり大規模な(第8世代は約2000億円)投資を要 する。そこで、パネル生産企業はより早期の投資資金回収を目指すため、パネ ルを量産し、パネルの社内自己使用だけでなく、多少利益率が下がっても外販 して、工場稼働率を引き上げようとする。他方、テレビ製品価格の下落が速く 大きい。パネルの外販が通常となった液晶テレビ産業において、製品であるテ 20) 2008 年春に辞任した李健熈サムスン元会長は「機会を逃せば途方もない損失が生じ、これを挽 回しようとすれば途方もない時間がかかる」「時間産業」という経営哲学をもっていた(キム/ ウ [2004] 177 ページ)。また、大型液晶パネル調達のテレビメーカーにおける全社研究開発費 (2007 年度)は松下電器産業 5800 億円、サムスン電子 6930 億円(63 億ドル)、ソニー 5500 億円、シャープ 2030 億円であった。サムスン電子の研究金額は頭抜けて多い。レビに必ずしも顕著な差異が認められず、費用格差が販売条件を左右するなら ば、販売規模(または市場シェア)トップの企業が競争上有利となる。資金調 達力の大小から、相対的に小規模な企業は価格競争に限界が生じるのである。 図6には、各社の大型液晶パネルの事業規模と市場シェアを示している。友 達光電(AUO)、サムスン電子、LGフィリップス(当時)はシャープの1.5 倍以上の売上高であり、パネル市場シェアは約3倍である。また、図7で連結 決算での全社的な事業規模を見ると、サムスン電子はシャープの3.5倍の売上 高であることが分かる。また、2007年度のサムスン電子の(連結)売上高営 業利益率は10.5%であり、シャープの6%より相当に高い21)。 図 6 大型液晶パネル売上高と市場シェア 㪇 㪌 㪇 㪈 㪌 㪈 㪇 㪉 㪌 㪉 㪇 㪇 㪇 㪃 㪍 㪇 㪇 㪇 㪃 㪌 㪇 㪇 㪇 㪃 㪋 㪇 㪇 㪇 㪃 㪊 㪇 㪇 㪇 㪃 㪉 㪇 㪇 㪇 㪃 㪈 㪇 ం 䋦 㔚 శ ㆐ 䉴 䊒 䉾 䊥 䉞 䊐 䌇 䌌 ሶ 㔚 ⟤ ᄸ 䊒 䊷 䊞 䉲 ሶ 㔚 䊮 䉴 䊛 䉰 注)2007 年 10-12 月の市場シェア。 出所)『日本経済新聞』2008.2.2 から、筆者作成 (2) 外部生産委託と社内一貫生産 半導体DRAM市場は512MのDRAM1個が市場の76%を占めるが、液晶 ディスプレイ(LCD)市場は32インチ用テレビ、17と19インチのモニター 用がそれぞれ14-19%と「中核がない」製品市場であり、市場セグメントごと 21) 2006 年度の自己資本利益率を見ても、サムスン電子 16.5%、シャープ 8.9%、松下電器産業 5.6%、ソニー 3.8%、LG 電子 2.2%と開きは大きい(『日本経済新聞』2008 年 3 月 6 日)。
図 7 各社の連結売上高と利益率 㪇 㪉 㪋 㪍 㪏 㪇 㪈 㪉 㪈 㪇 㪇 㪇 㪃 㪇 㪉 㪈 㪇 㪇 㪇 㪃 㪇 㪇 㪈 㪇 㪇 㪇 㪃 㪇 㪏 㪇 㪇 㪇 㪃 㪇 㪍 㪇 㪇 㪇 㪃 㪇 㪋 㪇 㪇 㪇 㪃 㪇 㪉 㪇 ం 䋦 ሶ 㔚 䌇 䌌 䊒 䊷 䊞 䉲 ሶ 㔚 䊮 䉴 䊛 䉰 ེ 㔚 ਅ ᧻ 䊷 䊆 䉸 注)2006 年 12 月および 2007 年 3 月決算期。 出所)『日本経済新聞』2008.3.6 から、筆者作成 に差別化した企業が存在するという(朴・ト[2007] 8ページ)。事業遂行能力 や事業戦略は各社ごとに異なるため、パネル調達と製品の競争において大型・ 中小型テレビで事業戦略を使い分けることもありうる。 例えば、日本の液晶テレビメーカーは1990年代末から中小型(当時は10.4 型未満)TFT-LCD製品を台湾メーカーに外部生産委託した。1997年以降、三 菱電機が中華映管(CPT)に、日本IBMが達碁科技(宏碁=エイサー集団) に、東芝と日立が瀚宇彩晶(HannStar)に、シャープが廣輝電子(廣達電脳集 団)に、松下電器が聯友光電(聯華電子集団)に技術移転した。ところが、2001 年、達碁科技が聯友光電と合併し友達光電(AUO)が設立され、2006年、友達 光電が廣輝電子を吸収合併した。廣輝電子はその設立時(1999年)にシャー プも出資して製造技術を提供しPC用パネルを調達してきた22)。シャープの 場合、中華映管とノートPC用で2002年クロスライセンスしたが、テレビ用 でも2004年クロスライセンスし、2006年に、奇美電子(CMO)、友達光電 22)『中華民国台湾投資通信』[2004] 4 ページ、赤羽 [2004] 4 ページ、各社ホームページ、『日本 経済新聞』2005 年 11 月 5 日による。なお 1998 年当時、日本の電機メーカー各社の財務体質 (キャッシュフロー状況)は悪く、投資余力がなかった。サムスン電子はこのとき積極的に設備 投資をし、一気に市場シェアを高めた(キム/ウ [2004] 177 ページ)。
(AUO)等と中小型(30型以下)でクロスライセンスし技術提供した。同社 は2006年にこれら企業から年間200万台程度(全体の3分の1)の中小型テ レビ用パネルを調達し、欧米市場向け商品に使用した。2005年末、パネル数 不足とブランド力の弱さのため、液晶テレビの世界市場シェアでソニーに抜か れた生産能力不足を補うためと理解されている。ともかく、パネル生産の外部 委託に際して技術移転を受けた台湾メーカーは製造能力と開発力を向上させ、 中規模パネルでの受発注関係のみならず、規模の大きなパネルでも市場競争力 を徐々に向上させているように思われる。こうしてOEM先の能力が素早く 向上したとき、中小型製品を外部生産委託し、大型製品(またはハイエンド製 品)は自社内部開発・製造するという「水平分業」計画はジレンマに遭遇しや すく、一時しのぎの性格が強くなっている23)。 言うまでもなく、大半の企業は材料を内部製造していないが、パネル生産に 必要な材料や部品を日系企業等から入手し、かつ、それらを生産工程で処理す る技術を向上できるとすれば、パネルをOEMで生産する能力はある程度高ま る。材料・部品を供給する日系企業も標準的技術で大量の注文を得ることがで きるので、これら東アジア企業の技術開発に協力する。 液晶テレビ産業は「モジュール」部品組み立て生産型となっており、「オー プン・イノベーション」という視点からヴィジオや船井電機型が好ましく、パ ネル生産・テレビ組立一貫企業などは「囲い込み型」で市場変動に柔軟に対応 できないという見解がありうるが、サムスン電子もシャープもパネル生産とテ レビ組立を自社内で進めており、パネル生産上で重要な取引先と緊密な取引関 係を構築している24)。それは、パネルを内部生産する事業システムがパネル を外部企業から調達する事業システムと比較して、製造費用面でなく技術開発 や生産管理ノウハウ蓄積の面で重要となるからであろう。発注企業が要求する 製品・技術内容とその生産費用条件の実現に向けて、発注企業と受注企業が共 23) テレビ用以外の液晶ディスプレイでは、中小型パネルがローエンドとは限らない。 24) 材料の生産から加工組立を内部で実施することを「垂直統合」と解釈すれば、液晶ディスプレ イ・パネルにおける垂直統合とは半導体とパネルの生産、テレビ組立の自社(グループ)内実施 となり、それはパナソニック、サムスン、LG の 3 グループである(シャープは半導体を共同 開発ゆえ含めない)。
同して技術・費用面での課題を解決していくことは材料開発では日常的事業形 態であり、材料や技術内容を取引先ごとにサプライヤーが作り分けることはカ スタマイズ(=特注型)生産の通常形態である。とはいえ、そうしたカスタム 生産方式がいかなる点で製品の非価格競争力を高めているかは別問題である。 (3) 低価格と独自機能 「薄型テレビはコモディティー(汎用品)商品になった。一定の数をあげな いと利益が出ない。そのためには原価低減、開発スピード、生産リードタイム の短縮などが重要となる」(『日刊工業新聞』2009年1月5日)。 液晶テレビにおける機能向上に関して「これ以上の高画質化は対価が見込 めない」という見解もある。しかし、液晶テレビはブラウン管テレビと比べて 画像は高精細で占有空間での変化はあるが、デジタル情報処理機能を利用しな い消費者に「基本機能に大差がない」と認識される限り、液晶テレビは従来型 テレビの高価な代替物でしかない。つまり、①基幹部品の液晶ディスプレイ・ パネルを特定企業から調達する事業システムは、液晶テレビに消費者が納得で きる製品差別化または商品機能差がないか、少ないと認識され、価格にしか違 いを求められなくなる傾向を強める。②標準的商品品質を適度な価格で求める 価格対機能という消費者購買基準から見ると、ホームシアターや日本企業が目 指す「美しい画像」の商品は過剰品質となりうる。③録画再生や静止画像表示 をはじめとする液晶テレビ固有の機能であるデジタル・コンテンツ情報処理や ネット接続などを利活用するメリット感が費用対効果の観点を含めて消費者に まだ浸透していない。 競争優位性と事業領域の関係についての形式的論点は、基本機能だけもつ低 価格商品を求めている消費者を対象とするか、少し高価でも付加機能付き商品 を求めている消費者を対象とするかという市場セグメント論である。だが、産 業展開に関する別の論点は、液晶テレビ産業内の上工程におけるパネル生産と その販売促進という内在的特質が低価格競争を加速する大きな要因となってい ることである。
V まとめ
液晶テレビ産業では、テレビ組立工程はパネルに「モジュール」部品を組み 付ける性格が強く、パネルを入手できれば、液晶テレビ生産はそれほど難しく ない。パネルは製造費用の約7割を占めるが、上位5社で世界の9割以上の テレビ用液晶パネルを生産している。パネル量産とそこから派生してくる供給 過剰体制を市場関係者も消費者も予測しているためか、製品価格の急速な下落 が続いている。液晶テレビ産業の特徴は、かつての寡占的市場価格論が示した ように、市場シェアが高い支配的企業数社を除くと、利益が出にくい市場構造 になっている。低価格競争が支配的となった市場のリーダー企業サムスン電子 の量産・量販事業システムと薄利多売戦略には、パネル生産世代の交代期や液 晶テレビの基本技術転換期を除くと、第2位以下の企業が対抗できないであろ う。そうであれば、追随企業は競争優位形成の要素として画質や画像コンテン ツ処理機能もしくはブランド・イメージなど事業規模以外の独自の商品価値を 訴求するしか活路はない。 生産費用削減に関わる論点として、粗収益率の低い生産工程を段階的に外 部委託しようと委託先企業に生産技術を提供した結果、委託先企業が生産能力 のみならず開発能力を向上させ、ほぼ類似の製品を生産・販売してくるかもし れない。また、少数企業がパネル生産している状況下において、ある企業が製 品・技術開発した結果を市場に出すと、各社が速やかにそれを取り込み、製品 は企業間で同質的となる。結局、液晶テレビ自体の顕著な差異が消費者には 見えない。他方で、企業財務体質の差から、少数派が開発した結果を多数派が 「待機」し「活用する」という構図がさらに進展するかもしれない。 それらはパネル製造費用管理の限界と市場対応の柔軟性と速度という短期課 題の克服だけにとどまらず、次世代技術開発に関わる組織的ノウハウの蓄積に 関わる問題である。他方、液晶テレビ生産のキーデバイスであるパネル製造の 前工程・後工程に関する部品材料や各種製造装置は多くの日系サプライヤー企 業が韓国・台湾メーカーに供給している面もある。韓国政府は電子部品・液晶 関連の装置・材料産業の振興を念頭に置き、韓国産の調達率40%から70%に 引き上げることを政策課題としている。逆に言えば、特定企業との間の材料や部品の共同開発・製造協力関係から得られるノウハウの蓄積等が中長期的な競 争力の維持・向上に重要な意味を持っていると理解されているのである。しか し、それが液晶テレビ組立企業にとり、液晶テレビの差別化にいかなる役割を 果たすかの検討などは今後の課題としたい。 参考文献 赤羽淳 [2004]「台湾 TFT − LCD 産業」『アジア研究』50(4)、10 月。 赤羽淳・張書文 [2008]「超越追随策略遇向共創–探索 TFT-LCD 産業的日台合作模 式」劉仁傑主編『共創』遠流博識網。(中国語) 『2007 年 液晶ディスプレイ構成材料の市場』シーエムシー出版、2007 年。 「台湾のフラットパネルディスプレイ産業(その 1)」『中華民国台湾投資通信』January 2004 vol.101, 4-5 ページ。 電気・電子材料研究会編・杉本榮一監修 [2006]『図解エレクトロニクス用光学フィ ルム』工業調査会。杉本 [2006] と表記。 船田文明 [2007]「TFT 研究開発ことはじめ」『シャープ技報』96 号、11 月。 金光昭佳・坂本隆・井山浩暢 [2007]「液晶 TV 用光拡散板の開発」『住友化学(技 報)』2007-Ⅰ。 キム・ソンホン/ウ・インホ著(小川昌代訳)[2004]『サムスン高速成長の軌跡–10 年改革–』ソフトバンクパブリッシング。 日債銀総合研究所調査部編・岩井善弘 [2000]『液晶産業最前線』工業調査会。 朴成培・ト得圭 [2007]「半導体・LCD 産業の競争の現状」『SERI Economic Focus』
(サムスン電子研究所)169 号、2007.11.26。 『アジア半導体/液晶ハンドブック 2008-2009』産業タイムズ社、2008 年。 『Semiconductor FPD World 増刊号 06∼07 フラットパネルディスプレイ製造 プロセス技術&プロダクトデータ』プレスジャーナル、2006 年。 武田計測先端知財団編 [2004]『MOT 事例研究 注目先端技術成功の理由』工業調 査会。 内田龍男監修 [2006]『図解電子ディスプレイのすべて』工業調査会。